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ドタバタかいご備忘録⑫ 閉塞感
2017.5.29

先日、世界的なアーティスト、オノ・ヨーコさんが、レビー小体型認知症であるという

報道がありました。

よく知られるアルツハイマー型と違い、幻視(実際にはないものが見える)や

幻聴(聞こえるはずのない音が聞こえる)が特徴的な症状です。

私の母は、パーキンソン病の発症から12年ほどで、認知症を発症しました。

「パーキンソン病に伴う認知症」という診断でしたが、レビー小体型に似た症状が多く、

幻視、幻聴、妄想が強く出ました。

「たった今、家の中に泥棒が入ってきた」「車の後部座席に人が挟まっている」

「盗聴器が仕掛けられている」…

母だけが見えているものにどう対応したらいいのか、悩んだ日々が、

オノ・ヨーコさんの報道でよみがえりました。

いずれまた、この備忘録で書きたいと思います。

 

 

母が広島に来て2か月が過ぎた頃。

毎晩3、4回のトイレ介助に加え、1歳に満たない娘の夜中の授乳もあった私は、

眠れない日々にストレスを感じ始めていました。

母に呼ばれたら、また何十分も寝かせてもらえない。

酷いうつ症状に付き合わなければならない。

そんな恐怖が強くなり、いつのまにか母に笑顔で接することができなくなっていました。

恥ずかしい話ですが、母の前であからさまにため息をついたり、

介助自体に丁寧さを欠いたりと、イライラした態度をとるようになりました。

さらに、「何回呼べば気が済むわけ?」「私まで病気にする気?」などと嫌味を口にし

「便が出ないくらいで死ぬわけないでしょ!」と声を荒げることも増えていきました。

広島に来てくれと頼んだのは自分なのに、本当にひどい娘ですよね。

一方の母も、「親不孝者!」「そんな冷たい娘、あんたくらいやわ!」などと

感情を露わにし、私と母の関係は日に日に悪くなっていきました。

育児休暇中だったこともあり、日中もいつ動けなくなるか分からない母から

片時も離れられず、私は24時間、逃げ場のない閉塞感に陥っていきました。

 

そんなある日、マンションの14階に住んでいた私は、ふとベランダに目をやりました。

(ここから飛び降りたら、この日々から抜け出せるのかな。)

 

そんなことを考えるなんて、今となってはどうかしていますが、

あの時の私は、ただただ、先の見えない苦しいループから逃げ出したかったのです。

 

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