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老人ホームでの母の問題行動はその後も続きました。
施設の冷蔵庫を勝手に開けるとか、
自分の物があるのに他の入居者さんのティッシュペーパーを
「これくらいいいでしょ」と言って使うなど、
周りの人に迷惑をかけることも目立ってきました。
ただ、記憶力は正常だったので、この頃はまだ認知症の症状とはみなされず、
「あなたのお母さんの頭の中は一体どうなっているんですか?」と言われてしまうことも
ありました。
そんなある日、決定的な事件が起きました。
当時、母にはボーイフレンドがおり、よく老人ホームを訪れてくれていました。
施設の方々も、準家族のようにとらえていて、
母の介護についてその方に相談することも増えていきました。
自分のいないところでケアマネージャーとボーイフレンドが話すことを
苦々しく思っていた母は、驚きの行動をとりました。
ケアマネージャーの自宅に電話をし、ご主人に向かって
「あなたの奥さんは、浮気をしています。」と訴えたのです。
私は、恥ずかしいやら申し訳ないやらで、
この時ばかりは、施設に合わせる顔がないと思いました。
後で分かったことですが、この嫉妬も実は認知症からくるものでした。
認知症の症状の一つに「妄想」があり、
自分がどこにしまったかわからなくなった物を「盗まれた」と思いこむ物盗られ妄想や、
被害妄想、そしてこの嫉妬妄想などがあげられます。
しかし、それを理解していなかった私は、母に対して
「お母さんの事を真剣に考えてくれているのに、なぜ分からないの?
恩を仇で返すようなことをして信じられない!」と強く非難したのでした。
この頃から、母は、別の老人ホームへ移ることを考えるようになり、
自ら、新たな入居先を見つけてきました。
こうして、初めての老人ホームでの生活は、わずか数カ月で終わりを迎えたのです。