アナウンサー

ANNOUNCER

西日本豪雨から5年 
2023.7.7

 

昨日、7月6日は、西日本豪雨から5年。

犠牲になられた方へ哀悼の意を表するとともに、まだ行方がわかっていない方が一日でも早く見つかる事をお祈りします。

 

広島出身ですが、当時私は、大学生で、カンボジアに住んでいたので、インターネット上のニュースの写真や映像を見て、本当にこれが地元で起こっていることなのかと目を疑いました。

昨日はじめて、お仕事で、広島県内でも最も多くの犠牲者をだした坂町の小屋浦地区に取材でいかせていただきました。

テレビ派は、西日本豪雨災害に特化してお伝えする中で、小屋浦から中継でお伝えしました。

私にとってははじめての被災地取材。

中継では伝えきれなかったけれど、住民の皆さんから聞いたお話や感じたことをこちらに記させてください。

 

朝から強い日差しが照りつけ、立っているだけでも汗が流れるような気温の中、坂町小屋浦地区に整備された「坂町自然災害伝承公園」では、小屋浦小学校の皆さんによる追悼集会が行われました。

追悼集会の中では、6年生が自身の体験を元に作った紙芝居の読み聞かせを披露。

「雨の音が怖かった」「友達は大丈夫かな」

そういった台詞があり、小学校低学年で体験した豪雨はどんなに怖くて、不安だったんだろう、と、子供たちの思いを想像すると胸が苦しくなりました。

〈災害のおそろしさを知ってもらい、素早く避難して欲しい〉との思いで、

これまで、地域の保育所や、ほかの学年・保護者に読み聞かせをしてきたそうです。

ほかの小学校から、今年、小屋浦小学校の校長に赴任した校長先生は、「小屋浦のこどもたちの防災意識の高さに驚いている。子供たちから学ぶことばかりです」と話してくださいました。

子供たちは地域の宝で、その子供たちの防災意識が高いということは、大人たちにとっても刺激になり、地域を災害から救うことにつながると感じました。

 

坂町自然災害伝承公園には、去年4月に完成した「災害伝承ホール」あります。

ホール内には、土砂や流木が流れ着いて茶色く濁った海の写真や、家屋の一階部分が土砂で埋まっている写真、その土砂をボランティアの方々が撤去している写真、流れてきた大きな岩を重機で砕いて撤去させている写真など、当時を知ることができる資料や写真を見ることができます。

 

小屋浦地区では、15人の方が犠牲になり、今も1人の方の行方がわかっていません。

公園の中央部分には水害碑もあり、裏には、西日本豪雨や過去の水害で犠牲になった方の名前が刻まれています。

追悼に来られた地域の方は「名前を見て顔が浮かぶのはつらいね」と話してくださいました。

水害碑の隣には、土石流で流されたという大きな岩。高さ180センチ、重さ16トンの巨大な石が流されてしまう、当時の土石流の恐ろしさを伝える場所になっています。

 

西日本豪雨から5年となった昨日は、献花台が置かれ、犠牲になった方の親族の方、地域の方、当時からボランティアとして携わってこられた方など、多くの方が花を手向けにいらしていました。

気温が30度以上の真夏日になったこの日は、暑い中でも、当時のことを聞かせて欲しいと話しかけると、皆さん足を止めて話を聞かせてくださいました。

当時3歳だった娘さんがいるというお父さんは、娘さんが小学二年生になったいまでも、「サイレンが鳴るとリュックサックに必要なものを詰めて、自分で二階に持って上がるんだ。梅雨のこの時期は今も怖いばかり」と話してくださいました。

畑仕事に精を出すお父さんは、水も出ない、食料も十分にない被災当時に、「畑で作っていた小玉スイカを、みんなで分け合って食べたんよ、あのときのスイカの話は今でも話題にのぼる」と話し、

土砂に埋もれてしまった家から行方不明になった方を探した時の様子や、濁流に流され、自分の車が垂直になってしまっているのを見つけたときの心境、そして、この5年で、18基の砂防ダムが完成したことについては「安心はない。当時よりひどい雨が降ったら、砂防ダムの脇から土砂がふれてきてしまうんじゃないかと不安もある」と話してくださいました。

災害で崩れてしまった川の護岸や橋、ガードレールの整備など、「復旧はほぼ完了しているが、次の災害に備えた設備や道の整備など、まだまだ課題があるんじゃないか」というお話も、地元の方から聞かれました。

 

いつどこで起こってもおかしくない、豪雨による災害。

小屋浦の方が口をそろえて話してくださったのは〈早めの避難〉です。

「あの日、たまたま早めに避難していたから命が助かった」と言うおばあちゃんは、近所の方の連絡から自宅の浸水被害に気づき、避難所へ向かう事につながったそうです。

避難所に向かうだけが避難ではありません。非常時に持ち出すものを用意しておいて、いざというときは建物の2階に避難する、大切なものや必要なものを家屋の2階以上に持って上がる。

当時も、2階にいたから助かったという方も多くいらっしゃったようです。

 

今回、小屋浦の皆さんにお話を聞いて、報道に携わる一人として、災害が起きる前に、テレビの前の皆さんの 一人でも多くの命を救える放送を届けられるようにと、災害報道への気持ちが改めて強くなりました。

これから大雨の注意を呼びかける度に、この日お話を聞かせてくださった皆さんの顔が浮かびます。

「災害が起きても、避難できるように、命を落とさずにすむように、災害の怖さを伝えていきたい」

小屋浦の小学生が話してくれたように、過去の災害の怖さを語りつぎ、次の被災地を生まないための放送を届けていきたいです。

 

お話を聞かせてくださった小屋浦のみなさん、本当にありがとうございました。

この場をお借りして御礼申し上げます。

 

そして、8日の午後から9日にかけて、県内でも大雨が予想されています。

避難ルートの確認や避難時に持ち出すものの確認など、早めの備えをしておきましょう。

すこしでも安全な場所でお過ごしくださいね。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

 

 

アーカイブ
月を選択