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ドタバタかいご備忘録㉞ ドアノブのない部屋
2018.4.18

精神科の病院に緊急入院した最初の数日間、母は、救急患者用の部屋に入りました。

ここは、ドアノブのない、つまり、自由に外に出ることができない部屋。

家具も洗面所もなく、部屋の隅に扉のないむき出しの便器が一つ。

部屋の真ん中にベッドだけが置かれ、

ナースセンターから中の様子を確認できるカメラが設置されていました。

精神的に不安定な患者が自らを傷つけるなどの危険がないように、とのことですが、

治療とはいえ、この部屋に一日中居る母を思うといたたまれなかったです。

すぐにでも退院させて、家に連れて帰りたい気分でしたが、

「男たちが追ってくる」「盗聴器が仕掛けられている」など、

妄想にとらわれ続けている母を見るとやむを得ませんでした。

最もつらかったのは、面会の帰り際。

「のぶえ!お願い!ここから出して!お願い!」と懇願する母を振り切って帰る時でした。

自分がとんでもなく冷酷なことをしているようで、とはいえ、どうすることもできず、

私は毎日泣きながら帰路につくのでした。

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