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昨日は、74回目のヒロシマ、原爆の日でした。
被爆者の平均年齢は82歳を超え、記憶の継承は待ったなしの課題です。
JR広島駅のすぐ近くに「被爆ポンプ」と呼ばれる手押しポンプがあるのをご存知ですか?
猿猴橋町の道端に静かに存在しているので、気づかずに通り過ぎているかもしれません。
広島に原爆が落とされる前からそこにあったと思われるそのポンプは、
錆びつき、壊れ、もう水は出ませんが、
「被爆ポンプです 残してください」と書かれたブリキの板がかけられています。
メッセージを書いたのは、被爆体験伝承者でもある永原富明さん。
原爆で苦しむ人々、戦後の街の復興など、ポンプが見つめてきた広島の歴史を
忘れてはいけないとの思いからでした。
その被爆ポンプが、去年、絵本になりました。
描いたのは、なんと当時9歳の女の子、児玉美空さんです。
お母さんからポンプのことを聞き、親子で調べ、永原さんを訪ねました。
「みんなに、子供たちに、伝えてあげてね。」と声をかけられ、
「私がしなきゃ。」と、子供でも読める絵本作りを思いついたそうです。
先日、私は、美空ちゃんに会い、直接、絵本を読んで聞かせてもらいました。
ポンプ自身があの日のことを語り、平和な世の中を願う物語。
ポンプに心があるようで、かわいらしい絵と相まって、あたたかい気持ちになります。
被爆ポンプのことを「ポンプさん」と呼んでいた、純粋な美空ちゃんらしい絵本です。
私は、絵本を描き上げた美空ちゃんの感性はもちろん、
それをサポートしたお母さんの行動もまた、すばらしいと思いました。
「広島で生まれ育ち、いつか娘に、原爆の話をしたいと思っていた」というお母さん。
美空ちゃん自身が知りたいと言った機会を逃さず、
永原さんを探し、資料を集め、親子で協力して絵本を完成させました。
私も、わが子に戦争や原爆のことを伝えたいと、
絵本やテレビを見せ、資料館に連れて行くなどしてきましたが、
それでどこか満足してしまっていました。
もう一歩踏み込んで、子供と一緒に調べたり勉強したりすることが大切ですね。
絵本を読んだ永原さんは、「嬉しくて嬉しくてたまらない。
バトンが次の世代につながった。」とおっしゃっていました。
永原さんの「伝えたい」は、美空ちゃんの「伝えたい」になりました。
「想い」が受け継がれるのが継承…そう感じた、今年の8月6日です。