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もし人工呼吸器を装着しなかったら、親戚に親不孝だと責められるのかな。
医師にも、冷酷な娘だと思われるのではないか…
親の命を前にしたこんな時にまで、悲しいかな、人は体裁を気にしてしまうのです。
皆さんは「アドバンスケアプランニング」という言葉をご存知でしょうか。
自分で自分のことが決められなくなった時に備えて、どんな医療やケアを受けたいかなど、
自分の考え方、価値観を身の回りの人に伝えておくことです。
母に足の切断や胃ろうの危機が訪れた時もそうでしたが、
私は母が元気なうちに「もしもの時にどうしたいのか」を聞いていなかったために、
重い選択が自分一人にのしかかり、悩み苦しむことになりました。
普段から将来のことや自分の希望を、家族と話し合っておくことが必要なのです。
結局、私は、人工呼吸器をつけない判断をしました。
母を病気から解放してあげたかった、
それが一番の理由でした。
母の口から酸素マスクが外され、自然に訪れる最期の時を待つ間、
母と二人きりになった時間がありました。
私は、母に抱きついて泣きました。
母は目を開けなかったけれど、
「お母さん、長い間しんどかったね。私たちのために施設でがんばってくれたんよね。
今まで本当にありがとう。」と声をかけました。
20年前、私は父の死に目に会えたものの、父が亡くなることがどこか信じられず
感謝の言葉を伝えることができませんでした。
あのまま会えなくなるなら、ちゃんと「ありがとう」が言いたかった…、
母には必ず伝えよう…と思っていました。
母は聞いてくれていたかな…。
2016年8月28日、午前8時55分、
母、馬場かをるは、急性心不全でこの世を去りました。
68歳でした。