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「本来なら自分がするべき介護を、人様にお願いしている」
家族を介護施設に預けている人は、きっと誰しも
このような申し訳なさと感謝の気持ちを抱いていると思います。
私もそうでした。
見ていただけるだけでありがたい。
これ以上何かを求めたり、介護に口を出したりするのはおこがましいと…。
しかし私は、いつの頃からか、お世話になっている老人ホームの
ある対応が気になり始めました。
ホームでは、お年寄りがダイニングルームに集まって、一緒に食事をします。
ある日、食事の時間にお邪魔すると、一人の認知症のお年寄りが、
食べ終わった食器を片付けようとしていました。
すると、介護士の方が
「そんなことしなくていいんですよ。私の仕事ですから…。」と制しました。
お年寄りは、「あなたも大変だから。手伝わせて。私、申し訳なくて…。」と言います。
介護士の方は「本当に、しないでください。転んだら大変!私が怒られます。」と言って、
さっと食器を下げました。
お年寄りが、少し寂しそうに見えました。
私は、お年寄りに手伝わせてあげてほしいと思いました。
人の役に立ちたいという気持ちを満たしてあげることも、心の安定につながるのではないか。
また、自分でできることはできる限り自分でやってもらったほうが、
認知症の進行を遅らせるのでないかと。
こうして少しずつ、私の中で、求める介護の形が見えていきました。
そして、母の介護に対しても、要望が生まれていったのです。