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不定期連載 ヒロシマ日記<38>黒い雨
2021.8.4

広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」を巡る裁判で勝訴し、

被爆者と認められた原告への被爆者健康手帳の交付が、

一昨日、始まりました。

76年前、放射性物質を含んだ黒い雨を浴びながら、

国の援護対象区域の外にいたため救済されず、苦しんできた原告の願いが

やっと形になりました。

今後は自己負担なしで医療や介護が受けられます。

 

国が援護対象区域(大雨地域)を定めたのは1976年。

しかし、その線引きの元になったのは、被爆直後の混乱期に、

少ない人手で行われた聞き取り調査でした。

広島市は2008年の再調査で、黒い雨が降った範囲は、

国の援護区域の約6倍に及ぶとする結果をまとめています。

「黒い雨」の原告が広島地裁に提訴したのは2015年。

長い闘いの間、原告のうち14人は提訴後に亡くなっています。

 

私が最も印象に残っているのは、広島高裁の原告全面勝訴の判決後に

原告が発した言葉。

「自分たちが真実を言っていたと認めてもらえた」

黒い雨の被害に苦しんできただけでなく、

自分の言葉を信じてもらえない辛さをずっと抱えてこられたのだなと

胸が痛みました。

国側の上告断念で、原告84人全員の勝訴が確定。

死亡した原告にも、被爆者健康手帳の申請時にさかのぼり、

医療費などが支払われるそうです。

 

76年目の広島原爆の日を前に、一部の方とはいえ

「黒い雨」被害者の救済という大きな一歩が実現したことを

心から嬉しく思います。

ただ、これはあくまで最初の一歩。

黒い雨に遭いながら手帳を持っていない人の推計は、

1万3千人ともいわれます。

「訴訟への参加・不参加にかかわらず、認定し救済できるよう、

早急に対応を検討します」という菅首相の言葉がどう実行されていくのか、

注目したいと思います。

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(今日の広島平和記念公園(広島テレビの情報カメラより))

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