ANNOUNCER
精神科の病院に緊急入院して1週間が経った頃、母は、一般病室に移ることができました。
一般病室は、他の科の病院の部屋と何ら変わりなく、出入りも自由。
入院患者が集って食事をしたりテレビを見たりできる大広間もありました。
母がお世話になって初めて知ったことですが、近年の精神科病院は、
施設などで介護することが難しくなった重度の認知症高齢者が多く入院しています。
一方で、気のいいお兄さんや、勉強している若者など、一見、患者とは分からない人も多く、
私の持っていたイメージとは随分違っていました。
母の症状は一進一退でした。
妄想発言が減ったかと思えば、今度は「食事に毒が入っている」と言って口にしなくなったり、
まるで子供に戻ったのではないかというくらい他の患者さんと戯れていたかと思えば、
無表情でほとんど言葉を発しなくなったり…。
いずれにせよ、母がどんどん母らしさを失っていくように見え、不安でたまりませんでした。
当時を思い出す時、面会の行き帰りにいつも車の中で聞いていた「嵐」の曲がよみがえります。
「明けない夜はない」という歌詞にどれだけ励まされたか。
今も嵐が大好きなのは、精神的に最も辛かった時期のよりどころだったからに他なりません。