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母は、きまって、夜中に3、4回トイレに行きたくなりました。
しかし、夜中は薬が飲めず、最も体が動かない時間。
そのため、トイレの度に介助が必要になります。
母はトイレに行きたくなると、向かいの部屋で寝ている私を呼びました。
私は目を覚まし、母の部屋へ。
ベッドの上で固い人形のように動けなくなっている母を起こし、
向かい合う形で母の両手を持ち、倒れないよう気をつけながらトイレまで連れて行きます。
トイレに着くと、手すりに捕まってもらっている間にズボンをさげ、便座に座らせ、姿勢を正します。
これで用を足して一件落着、といけばいいのですが、実は大変なのはここからでした。
母は、パーキンソン病の症状の一つ、極度の便秘でした。
夜中にトイレに行くと必ず便意をもよおし、一方でなかなかな便が出ず、
そのままトイレに1時間近くこもることもしょっちゅうでした。
その間、私は、ずっとトイレのそばで母を待つことになります。
というのも、母は姿勢を自分で保つことができず、10分くらいすると
便座の上で体がくの字に曲がり、便座からずり落ちそうになってしまいます。
そのため、私が母の体を起こしたり、座り直らせたりしなければなりません。
また、夜中のうつ症状は特に激しく、
「このまま便が出ず、腸が詰まって死んでしまう」と思いこんでしまうため、
「大丈夫だよ」となだめたり、時には便が出るようお腹をさすったりが必要になるのです。
それでも便が出ることはあまりなく、母が「もうやめる」とあきらめた時が終わりのタイミング。
母を便座から立たせ、手すりに捕まってもらい、手が動かない母に代わっておしりを拭き、
ズボンをあげて、また両手を支えてベッドに連れて行き、横になってもらいます。
これでようやく、私は自分のベッドに戻ることができるのですが、
また1、2時間ほどすると私を呼ぶ声が聞こえるのでした。
(この頃の母は、病気で変わった自分を写してほしくないと言って、写真がほとんど残っていません。)