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母が2度目に入居したのは、自宅から車で1時間ほどのところにある、
部屋数が300室以上の大規模な有料老人ホームでした。
母が自ら資料請求をし、見学もし、どうしても入居したいと訴えたその施設は、
高級感のあるロビーに、売店、レストラン、温泉施設、サロンまで備え、
まるでホテルのようでした。
当時の母は、一人での外出が難しかったので、
施設内に様々な設備やアクティビティがあるこの老人ホームなら、
外出に代わる楽しみが得られると思ったようです。
高額な入居一時金は、母自身の貯金を当てました。
母は若い頃から節約家で、ブランド品には目もくれず、買うのはもっぱらセール品。
海外旅行にも行ったことがなく、お酒も飲まない、貯金が趣味のような人でした。
そんな母にとって、この老人ホームへの入居は、初めての贅沢と言っていいかもしれません。
施設の転居は、何かとお金がかかります。
入居に関わるお金以外にも、引っ越しの費用や、
前の施設で使っていた家具が使えず買い直したり、買い足したりも必要になってきます。
また、引っ越しの片づけ、入居に必要な様々な資料の準備、手続きなど、労力も伴います。
さらに、入居する本人も家族も、新たな環境や介護の仕方、人間関係などに
一から慣れていかなければならない大変さがあります。
私は、「どうか今回の施設は、長くお世話になれますように。」と願うばかりでした。