テレビ派

コーナー紹介

俳句道場

放送日:2017年8月11日(金)

第62回 お題「盂蘭盆会」(選と評 谷村秀格先生)
<谷村秀格(たにむらしゅうかく)プロフィール>

句の「スケール感」や句の背後の「詩情の広がりや深さ」を重要視する『宇宙流俳句』のパイオニア。『宇宙流俳句会』主宰。1976年広島県東広島市安芸津町木谷生まれ、同町在住。句歴26年

総評

今回のテーマは「盂蘭盆会」。
はっきりしたモノではないので少し難しかったようである。
いろいろな句が送られてきたが、今回はこの季節としての「盆」が入っているか、そのあたりの句であればよいことにした。

この道場で鍛えていただきたいことは、感性であり、芸術性そのものなので、盂蘭盆会は行事の季語で、盆の月は天文の季語で、、、というような季語や知識の勉強ではないからである。
ちょっと調べればわかるようなことを、わざわざこの道場で学ぶ必要はない。

宇宙流俳句は、特に前提や常識にとらわれない自由な俳句観である。
俳句を詠むときは「実感・無意識」から。
俳句を鑑賞するときは「説明できなくとも、いいものはいいなーと、一句の芸術性をただ『感じる』」。
他に何が必要であろうか。
季語が中心に来ているとかいないとか、季重なりがどうだとか、まず前提や常識ありきというような浅く狭い俳句観ではないのである。
少々おかしくてもよい、あなたの感性・自分の感性を信じて、その実感をモノを通して詠んでほしいのである。

ご投句いただいた皆様、放送をご覧いただいた皆さまどうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂するこなく、毎週の学びの機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人5句程度まで、どなた様もまずは気軽に「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからチャレンジください!

大賞

「盆休み両手広げる白道着」(ペンネーム「雅」さん 54歳)

「盆休み」で軽く切れている句。
句意としては「盆休みだな。白道着がのびのびと干されているな」という感じであろう。
休みなく活動していた剣道部などの部活動も、お盆でようやく一休みといったところであろうか。
「盆休み」とだけ聞くと、帰省や家族の集いや笑顔のイメージであるが、この句の見どころは、「白」の醸し出すイメージがよく効いていて、死に装束ではないが、どこかしら先祖を偲ぶ気分も感じとれてくるところ。
「盆休み」のほっとした気分を詠みつつ、「盆休み」をとりまく透明な空気感のようなものまでも伝えているところが上手い。
モノに託して詠まれた美しい一句です。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募下さい。
<作句のポイント>
モノの色の効果。

入賞

「送り盆色入れ替わる商店街」
(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 51歳)

一般に13日が迎え盆、16日が「送り盆」。
「送り盆」で切れている句で、句意としては「送り盆だな、商店街の色が入れ替わっているな」という感じであろう。
「お盆」の行事や遠方からの親戚演者との時間を終え、街を歩いているとき、夏から秋へ移行してゆく下町の「商店街」の気配を感じとったのであろう。
特に洋服店の服が夏物から秋物へ商品を入れ替わっている様子などがイメージされる。
この句のいいところは、頭で言語操作しておらず、ふいにできたような「実感」が感じられるところ。
この方、最近主張の激しい(言い過ぎ・直接的)表現が多かったのであるが、この度はしっかりとモノに託し、なおかつ肩の力の抜けた「自然流」の句で上手かった。
俳句になれてくると、17音で何か言おうとして、表現に身を削るような苦労をするのであるが、俳句はそもそも短歌などの他の詩と違って短いので、そうすればするほど、実感の表現から遠ざかり逆効果なのである。
最近よく、俳句と短歌など他の詩型との区別がついていないのではないか思われるような「文章を省略したような舌足らずな句」や、「安易な倒置の句」「リズムの悪い字余り字足らずの句」などが平気な顔をして歩いているが、困ったものである。
「上五」に対して「中七下五」がややつきすぎではあるが、気分のよく出た句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
俳句という舟は、他の詩型と違って、皆さんが思っているより、はるかに脆弱。
気持ちを伝える・出来事を伝える・表現の技法を駆使する、など過重の荷は積めません。
肩の力を抜いて、自然流で。

「盂蘭盆会全てが魚に見えてくる」
(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)

「盂蘭盆会」は盂蘭盆やお盆ともいい、 先祖を供養したり偲んだりして仏法に遇う行事。
先祖の霊を祀る行事だけに、ある種神秘的というか、幻想的な気分も漂う。
句意はそのまま「盂蘭盆会だなー、すべてが魚に見えてくるなー」というもので、「盂蘭盆会」の時一瞬浮かんだ心象風景を無意識のままに表現した句である。
この句、表面的には「盂蘭盆会」の神秘的幻想的な気分を、水中の透明感に託して美しく詠んだ句であるが、思えば先祖は何も〇〇家何代だけとは限らない。
生物学にくわしくはないが、人類、哺乳類、ひいては、陸に上がる前の遥か何億年も前の魚として海で暮らしていた頃も、先祖といえば先祖であろう。
いわば、そのような遥か昔の祖先にまで思いを馳せる圧倒的な時空のスケール感・実感が感じ取れてくるのがこの句のよさで。
「全てが魚に見える」という表現だけでは、「祖先としての魚」をイメージすることは困難であるが、先祖を祀る行事である「盂蘭盆会」だけに、リアリティがある。
散文的で、「魚」のモノとしての存在感がやや希薄なのが少々惜しいが、無意識からの実感・表現を見事に掬い取った宇宙流の一句です。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募下さい。
<作句のポイント>
俳句は約束事や理屈、言語操作ではない。無意識からの表現こそを信じる。

<ユニーク>※入賞に届かなかった句の中からちょっとホッとする面白い句をご紹介!

「前隠すお盆回して花火咲く」
(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 36歳)

「今年ムリラインで一言盆帰省」
(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 60歳)

「鯉祭りマジック数えて盆踊り」
(ペンネーム「ートン」さん 69歳)

今週は、今話題のアキラ100%さんを詠んだ句、若い人などに流行しているラインを詠んだ句、そしてまだお盆前なのにマジックがともったカープを詠んだ句と、今ドキな3句をご紹介。

入選句

特選

・盆過ぎて風に絡まるおもちゃ箱(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 36歳)
→全体的に説明的になってしまったのが惜しいが、盆過ぎの気分がよく伝わる。この方向で。

・町工場雨音の舞う盆休み(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 36歳)
→動物はどこにも出てこないのであるが、何かが集っているような神秘性の感じられる句で面白い。モノに託して詠むこの方向で。

・盆休み他県ナンバー並びおり(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→これはコト句で惜しいのであるが、詠み方が上手く「わかるわかる、いいところをついている」という句である。このような上手
いこという句ではなく、モノに即す句の方向にシフトしたい。

・盂蘭盆の水満ちてゆく祖父の喉(ペンネーム「あや」さん 49歳)
→この句について「上手く説明できない」とのコメントであったが、それゆえこの句がいいのである。琴線に触れるとはこういうことで、説明できない感動なのである。「水・喉」がイメージの重なりでやや気になるのが惜しい。この方向で。

・盆の月厨にひびく総踊り(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→いわゆる俳句では「踊」は盆踊りのことになっているが、何より全体的にイメージが近いのが惜しい。モノに託す方向はよい。

・変わりゆく湖底のかたち盂蘭盆会(ペンネーム「一斤染乃」さん 53歳)
→中七の尻切れ蜻蛉のような表現が惜しい。俳句は韻文なので、こういう散文の切れはしのような中途半端な表現は避けたい。どうしてそうなったかというと上五を言いたかったから。言いたい事は俳句にならない。ただし「湖底のかたち」は大手柄。世の中の浅く甘い俳句観に流されず、しっかりモノに託した深い世界を表現してほしい。「湖の底のかたちの盂蘭盆会」などとすればすっきりする。できる方である。

・初盆や白い便箋風を待つ(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
→少し散文的で惜しいが、「初・白」とよく調和していて気分がよく出ている。韻文となるよう心がければさらによくなる。

・盂蘭盆会時を刻まぬ腕時計(ペンネーム「きいたん」さん 67歳)
→中七に対して下五はつきすぎで惜しいが、モノに託して詠む方向はよい。宇宙は調和なので、イメージが重ならないように気をつけていただければさらに良くなる。

・一切の運河飲み込む盆供かな(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)
→上五が少々主張が強すぎるのと、下五が合わないのが惜しい。「盆の月」などのほうが外の光景となって合いそうである。しかし「運河」「盆供」という飛躍を意識した詠み方は大変よい。課題はつかずはなれずの感覚を掴むことであろう。

・盆がねや空き家の井戸の地蔵さま(ペンネーム「ふー」さん 70歳)
→「盆・家・井戸・地蔵」すべて家周辺のモノでつきすぎとなって惜しいのである。しかしカッチリした韻文を意識した詠み方がよい。この方向で。

・盆休みひたすら眠る深海魚(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
→「盆・深海魚」はよいキャスティングなのであるが、「休み・眠る」があたりまえでイメージの重なりで惜しいのである。イメージの重なりが分かるようになえばさらによくなる。

・家系図の何故か気になる盂蘭盆会(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
→「家系図・盆」の類句が多そうなところと、中七が安易な心情吐露で惜しい。詠みは上手い。

・盆波や遠退いて行く石炭船(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→「波・舟」「船・遠退く」とややイメージの重なりが惜しいが、去ってゆく船と先祖を送る気分がよくマッチしていて気分のよく出た句である。モノに託すこの方向で。

・盂蘭盆や卒塔婆の文字の黒々と(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
→「盆・卒塔婆」「卒塔婆・文字」「文字・黒」と飛躍が全くないのが惜しいが、しっかりした詠みが心地よい。宇宙は広いし5句応募できるので思い切って飛躍すればさらによくしてみたい。

入選A

・盆休みプリント雪崩る机かな(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
・いつになく声に張り出る盆の祖母(ペンネーム「ルビー」さん 17歳)
・輪の中に誰かを探す盆踊り(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 36歳)
・漣のごとき鉦なり盂蘭盆会(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・盆休み炎天下まで続く道(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・手に闇を残し流灯離れ行き(ペンネーム「笑美子」さん 43歳)
・玄関のチャイム鳴りたる盂蘭盆会(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・献灯に揺れる大仏盂蘭盆会(ペンネーム「御衣黄」さん 47歳)
・盂蘭盆会ほどく間のない旅鞄(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
・パイプイス間を駆け抜ける盆会(ペンネーム「すずらん村」さん 55歳)
・返事なき父母と語らう盆三日(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・ひとりごと猫に聞かせて盆休み(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・名も知らぬ子がまた増えて盂蘭盆会(ペンネーム「有漏路」さん 60歳)
・満月や盆踊りするクジラの群れ(ペンネーム「ひなじいさん」さん 62歳)
・盆帰り語り明かせば白い月(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 65歳)
・夕焼けの涅槃に帰る送り盆(ペンネーム「おちえもん」さん 69歳)
・仏にも序列のあるや盂蘭盆会(ペンネーム「呑田」さん 70歳)
・盆踊り三代そろい下駄の音(ペンネーム「のぶさん」さん 70歳)
・盆踊りしゃがんで休む子供かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)
・初盆や煙が繋ぐ天の道(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・橋架けて島引き寄せし盆の月(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
・盂蘭盆や草木に埋もる無縁仏(ペンネーム「古志清右衛門」さん 76歳)

入選B

・盆休みは暑いから甘いかき氷を食べてすごす日々(ペンネーム「あーちゃん」さん 16歳)
・盆踊り秋の知らせかまた来年(ペンネーム「ちゃん」さん 26歳)
・会いたくて盆提灯の道しるべ(ペンネーム「ウメ桃さくら饅頭」さん 37歳)
・盆休み先祖の声が浸みた梁(ペンネーム「夏川ゆう」さん 40歳)
・盆休み何故か銀行に縁無し(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・盂蘭盆会だれか呼ばれる待合室(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・盆休み日本列島やじろべえ(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
・お供えのゼリーに映す盂蘭盆会(ペンネーム「角森」さん 49歳)
・初盆の母の口ぐせ真似てみる(ペンネーム「つぶあんこ」さん 54歳)
・盆楽し雑魚寝でワイワイかやの中(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 54歳)
・白灯篭弧を描き鳶初盆や(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・守りたき人の顔見て盆休み(ペンネーム「sora」さん 57歳)
・爆竹に心震えて盂蘭盆会(ペンネーム「インゴット」さん 57歳)
・良妻とよい子に化ける盆帰省(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・初盆や高ぶる子らと室外機(ペンネーム「ヨシ整体」さん 59歳)
・カラフルにご先祖もてなす盆灯籠(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 60歳)
・ぐるぐるる昔を廻る盆燈籠(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・声しぐさ父似と住持墓参り(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・盆休み祖母の願いは孫の顔(ペンネーム「八重桜」さん 66歳)
・盂蘭盆会義母想いおり茜雲(ペンネーム「ヒロリン」さん 68歳)
・墓参り子供に託す盆期間(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・集う盆又一人欠け宴寂し(ペンネーム「めぐちゃん」さん 76歳)
・在りし日のよきことばかり盂蘭盆会(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・道直しより始まりし里の盆(ペンネーム「ありんす」さん 81歳)
・人ごみに声見つけてる盂蘭盆会(ペンネーム「ワイ」さん)

広島俳句名人詠 ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメントとともにご紹介。入賞の場合は入賞欄でも紹介します。

・盆休み友の訛りも帰りおり(ペンネーム「大福ママ」さん 53歳)
→福山出身の友人は「自分は標準語で訛りが出ない」と、いつも言うのですが、私には標準語には聞こえませんし帰省の度に完璧に広島県民だなと感じます。。

選者詠:谷村秀格

・肩に降る街の匂いや精霊会

入賞入選の皆様おめでとうございます。

◎次回のお題は「葡萄」。
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過去の放送内容