テレビ派

コーナー紹介

俳句道場

放送日:2018年1月12日(金)

第80回 お題「鏡餅・鏡開」(選と評 谷村秀格先生)
<谷村秀格(たにむらしゅうかく)プロフィール>

句の「スケール感」や句の背後の「詩情の広がりや深さ」を重要視する『宇宙流俳句』のパイオニア。『宇宙流俳句会』主宰。1976年広島県東広島市安芸津町木谷生まれ、同町在住。句歴26年

総評

今回のテーマは「鏡餅・鏡開」。
ユニークな句、この道場で推奨している「託し詠み」がしっかりなされた句、さまざな力作をいただきました。
それに新年ということもあってか、今回も新しい方からのご応募を沢山いただきうれしく思っています。

新しい方も増えたので、この俳句道場での方針を改めて書いておこうと思います。
この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです。
以下(1)~(4)を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

(1)原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
(2)俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
(3)仮名遣いは現在使われ将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
(4)原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句は、解釈を読者にゆだねた俳句名人らしい奥深い句で見事でした。
入賞句も、やる気を具足餅や靴の軋む音に託して詠みあげた男らしい一句でした。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「鏡餅ふるさとに落つ雲の影」(ペンネーム「あや」さん 49歳)【広島俳句名人】

正月の田舎の田園風景を詠んだ句であろう。
「落つ(終始形)」に軽い切れがあり、「ふるさとにぽつんと座る鏡餅」と「雲の影」という両者の気分を重ね見た句と解釈してもいいが、連体形「落つる」の「る」を省いた形と取るのが自然であろう。
このほうがリズム感や強さなどが出て、気分がより出ているようである。
俳句は何より韻文であるので、一句が醸し出している「気分」が感じ取れれば、文法や活用形の正しさうんぬんはあまりやかましく言う必要はないというのが私の立場。
いずれにしても「ふるさとに落つ雲の影」から感じ取れる作者のなんらかの心境・事情を感じ取りたい。
それは、何らかの決意であろうか、さみしさであろうか、ふるさとを思う気持ちであろうか。
解釈を読者の想像にゆだね、想像をかき立て、ひきつける奥深い詠みになっているところがさすがである。
「俳句は気持ちや言いたい事を直接言葉で伝えるものではない」というあたりのことがよく分かっている方である。
家の内外、鏡餅と雲の大小、動静などの対比も効いた宇宙流の一句でもある。
大賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
俳句は沈黙の芸術。モノに託して詠み、解釈は読者にゆだねる。

入賞

「新しき靴のきしむや具足餅」(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)

「具足餅」というのは、正月に鎧兜を飾って、その前に供える鏡餅のこと。
「具足餅」は「鏡餅」とは別の季語だという方もおられようが、この程度のことはまあ許容範囲であろう。
何より、実感ある世界を詠んでもらうことが大事である。
句は、切れ字の前後のモノの取り合わせが、つかずはなれずよくつりあっていて、「心機一転やるぞ!」というような気分、強い決意が見事に伝わってきて、共感を覚える。
まさに気持ちをモノに託して詠んだ「託し詠み」の一句である。
入賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募下さい!
<作句のポイント>
テーマの説明にならないモノとモノの関係性が詩を生む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・鏡餅開き差し込む子らの声(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※鏡開きの日、始業式があったのか、子どもの声が道路から響いていた様子を句にしました。
→鏡餅を中心とした日常を詠んでいるのであるが、そのまま詠んでしまってはタダゴト句になるので「差し込む」と印象的に詠んだ。そのあたりが平凡をさけたさすがの表現である。「開き」はすこし中途半端な表現。

入選句

特選

・亡き祖父の声が聞こゆる鏡餅(ペンネーム「you」さん 10歳)
→鏡餅に大好きだった祖父のイメージを重ねているのであろう。気分のよく出た句である。10才でこれだけ詠めたらたいしたものである。この方向で。次回も挑戦を!

・鏡餅夕暮に読むニーチェかな(ペンネーム「コバルトブルー」さん 32歳)
→応募句の中ではこれがいい。鏡餅にニーチェでは少し飛躍した印象であるが、日常を日常のまま詠む句よりよっぽどよい。ただし「神は死んだ」というニーチェの言葉と神に供える鏡餅の対比というような理屈で作った句とすれば浅くなる。作者の課題としておこう。

・曇天を切り裂く鏡開きかな(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→気分の出た句であるが、切り裂くは少し直接的で惜しい。というよりも鏡開きのイメメージにつきすぎなようである。そのあたりが課題であろうか。

・鏡割り横目に走る郵便夫(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→いわゆる俳味(滑稽)を感じる句である。面白いシーンをとらえた。

・鏡餅狐に化ける玉三郎(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
→全体的に理屈っぽいのが惜しいが、正月の気分を独特の切り口で伝える句で面白い。

・東京の月澄み渡る鏡餅(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
→月の季重なりというよりも、月と鏡餅の丸さの露骨な対比が少しあからさまで惜しい。しかして清々しさのよく伝わる句で気分もよく出ている。これはこれで一句であろう。正月の大きな月が美しかった。

・鏡割り地球の裂け目広がりぬ(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
→あと一歩という句である。「割・裂け」はイメージの重なりなので目をつむってでも避けなければならないところ。たとえば「鏡割り地球まだまだ広がりぬ」など。次回も挑戦を!

・掛軸の落款隠す鏡餅(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
→いいたいい発見の句である。惜しいのは「隠す」。これがしてやったりの表現なのであるが、だからこそ言い過ぎで惜しいのである。「言いたい事は俳句にならない」。ここから素材を活かして句にしたりところである。例えば「掛軸の落款ゆれる鏡餅」くらいなら詩になっている。日常を日常のまま詠んだところで詩にならないが、日常ゆれない「掛軸・鏡餅」が揺れるから詩(非日常)になるのである。参考にされたい。

・寒中の見舞いしたため鏡餅(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
→寒中見舞いと鏡餅の季重なりが気になるが、余計なことをいわず軽く句にしているところがよい。次回も挑戦を!

・仕込水汲む列長き鏡開(ペンネーム「しじみ」さん 68歳)
→少し盛り込みすぎのようであるが、酒の街らしく気分の出た句で清らかな句である。ポイントをしぼって「仕込水汲み終えている鏡餅」など。次回も挑戦を!

・鏡餅装い脱ぎて星となる(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→視聴者からの全応募句の中でもっともモダンな句である。中七が説明的でもたついているが、鏡餅を星にするとは詩人である。

・鏡餅老舗の帳場黒光(ペンネーム「吞田」さん 70歳)
→白と黒の対比はわかるが、空間の広がりに乏しく日常を日常のままよんだ平凡な句になっていいて惜しい。内外を対比させるなど攻めてほしい。次回も挑戦を!

・蝋燭に朱く頬染め鏡餅(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
→説明的なのが惜しいが、言いたい事をいわずなんとかモノに託そうとしている姿勢が感じ取れる。少女のイメージが湧き上がる少し幻想的な句である。

・父の背の向こうに大き鏡餅(ペンネーム「めがねバーバ」さん 72歳)
→父と鏡餅の関係性が平凡なのが惜しいが、大きがよく効いていてのびやかな句になっているところがよい。次回も挑戦を!

・朝粥に迫る波濤や鏡餅(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→海辺の光景であろう。この句の場合、朝粥と鏡餅が兄弟喧嘩している印象である。どちらかにポイントを絞りたい。次回も挑戦を!

・御鏡や歳時記胸に入院す(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→出来事を詠んだ句なのが惜しいが、無駄なくまとめたところが見事で慣れている。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

二歳児みかん取り合う鏡餅(ペンネーム「しののかあさん」さん 30歳)
鏡餅かかとのひび割れ比べけり(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
越えて一気に老けた鏡餅(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
貫禄が妻に似ている鏡餅(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
職員室にどっかと据わる鏡餅(ペンネーム「そら」さん 57歳)
膝小僧かさぶたをかく鏡餅(ペンネーム「コンスタンチン」さん 12歳)
ひび割れた地球は春を鏡餅(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
鏡餅ひびゆく程の夫婦かな(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
隙間から見えし結晶鏡餅(ペンネーム「三滝のべべ」さん 37歳)
病床の空打ち破る鏡割り(ペンネーム「謎の生命体」さん 37歳)
我が頬をそっと撫でるや鏡餅(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
鏡餅前を横切る黒野良猫(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
パック開け餅出す鏡開きかな(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
鏡餅下げてできたる隙間かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
鏡餅白白明けに列車消ゆ(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
鏡餅猫と添い寝の焼け畳(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
鏡開の揚げ餅を食む園児五人(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
鏡餅お椀の中で笑み映す(ペンネーム「やっちゃん」さん 58歳)
鏡開き母のぜんざい描く味(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
鏡餅五百羅漢の隅っこ(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
縁側でカビ取る母の鏡餅(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
鏡餅夫のうたた寝独楽ひとつ(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
球春に夢を託して鏡開き(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
鏡餅開けば小餅の転げ出る(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
戌年も夫婦円満鏡餅(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
竹はじけ真っ赤な頬の子鏡餅(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
眠らない街のモニター鏡餅(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
床の間の三方に載る鏡餅(ペンネーム「古志清右衛門」さん 77歳)
境内にエイッセイッ響く鏡餅(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)

入選B

・鏡餅今年は一層早いひび(ペンネーム「大山悠人」さん 15歳)
・鏡開き来る頃には体重が(ペンネーム「けいとる」さん 18歳)
・鏡餅開き差し込む子らの声(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
・あちこちで蜜柑ころころ鏡餅(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・おやつ時いつ食べれるの鏡餅(ペンネーム「けみこ」さん 40歳)
・プラモデルお年玉から鏡餅(ペンネーム「犬蔵の王」さん 42歳)
・鏡餅浮世絵描く年の頃(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・パック開け餅出す鏡開きかな(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・鏡開きこれがオカンの底力(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・我が腹とどちらが立派?鏡もち(ペンネーム「たるみ」さん 49歳)
・鏡餅七日過ぎたらリサイクル(ペンネーム「なお」さん 50歳)
・今年こそ思うばかりの鏡開き(ペンネーム「アルパカ」さん 53歳)
・鏡餅日々の数だけ幸願う(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・鏡餅パックのおもちは味気ない(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・鏡餅無病息災梅香る(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・ひと年の餅食べ尽くす鏡割(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・鏡餅割られて焼かれ肉となる(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・黴るまでじっと待つ日々鏡餅(ペンネーム「西尾良二」さん 59歳)
・鏡餅目鼻をつけて雪だるま(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・平成の鏡開きは蓋開ける(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・鏡餅持参の人が妻となり(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・孫の手は鏡餅よりお年玉(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・鏡餅プラスチックの香りする(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・スクランブル人波もどり鏡割(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・おしるこをお裾分けして鏡餅(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・わが家にも神の宿って鏡餅(ペンネーム「グリーン マウス」さん 69歳)
・鏡餅試行錯誤に飾りをり(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・小なれど一人前や鏡餅(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・鏡餅障子に穴の置き土産(ペンネーム「音爺」さん 71歳)
・鏡餅くずす子ら母小豆炊く(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・二段腹一年の計ストレッチ(ペンネーム「かっちゃん」さん 72歳)
・好走の歳時記駅伝鏡餅(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・ひび割れし向き変えつつや鏡餅(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・鏡餅割る我が指もひび割れし(ペンネーム「くみ婆ば」さん 79歳)
・鏡開きは知るまいに百八つの夢(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)
・弾き初めは身を引きしめる鏡餅(ペンネーム「楽弓」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

◎次回のお題は「駅伝」
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