テレビ派

コーナー紹介

俳句道場

放送日:2018年11月7日(水)

第100回 お題「新米」(選と評 谷村秀格先生)
<谷村秀格(たにむらしゅうかく)プロフィール>

句の「スケール感」や句の背後の「詩情の広がりや深さ」を重要視する『宇宙流俳句』のパイオニア。『宇宙流俳句会』主宰。1976年広島県東広島市安芸津町木谷生まれ、同町在住。句歴27年

総評

俳句道場は今回で100回を迎えます。
これも毎回楽しく興味深くご覧くださっている視聴者の皆さん、熱心にご応募くださっている参加者の皆さんのおかげと深く感謝を申し上げます。
最初の頃の投句は広島県内の方がほとんどだったのですが、口コミで知られるようになり、最近んでは全国からも多くの句を頂けるようになりました。
全国の皆様におかれましてはこの縁を通じて、広テレの活動や平和都市広島のこと、西日本豪雨災害の現状や広島の文化・自然・観光なども広く周知いただき理解を深めていただければ幸いです。

この道場では一貫して「俳句は詩、詩は芸術」という立場にたち、季語や国語の知識といった小手先の技術ではなく「感性を磨く」という方向性を大事にしています。
俳句を頭(理屈・論理・テクニック)で追いかけるという立場もあるようですが、それは日常いろんなところでなされているわけで、わざわざ俳句でしなくてもよいことです。
身近な芸術である俳句に触れることで、自分の中のもう一つの自分(無意識・感性)のすばらしさに気づいていただき、普段あまり意識されない「無意識世界」に光を当ててみてほしいと願います。

無意識・感性に初心者もベテランもありません。
よって俳句に初心者もベテランもありません。
数値で宇宙の真実を掴もうとするのが科学者なら、モノ(情景)からの実感「そんな気がする(無意識・直観」で宇宙の真実を掴もうとするのが俳人です。
これからも俳句を楽しみ、自分の感性・可能性を磨き、自分と自然(宇宙)とのつながりに気づき、志高くよりよい人生を歩んでいただければと願います。
これからもよろしくお願いを申し上げます。

この道場では、「託し詠み(私の造語)」を推奨しています。
「託し詠み」とは、俳句の短さを活かした詠み方で、言いたいコト・ココロ・気持ちを言葉で直接詠まず、モノ(情景)に託して詠むことをいいます。
以下①~④を踏まえ、無意識からの表現「そんな気がする」を大切に、「託し詠み」にチャレンジして頂ければ難しいことはありません。
気分(ムード)が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の「朝日割る」は、新米の運ばれてゆく喜びを大胆に表現した句。
入賞句の「男文字」は、農家の自信を堂々と表現した句。
入賞句の「北半球」は、新米を食べる幸福感をスケール大きく表現した句。
特選Aは入賞候補に残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高い句。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

今回は、「新米」が「新人」の意味にしかとれないような句、新米(今年米)がきちんと入っていない句は、ユニーク(句)欄は別として、残念ながら選外とさせていただきました。

今回も全国から沢山の句を頂き、重ねて感謝を申し上げます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「朝日割る貨物列車や今年米」(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)

「今年米」は新米のこと。
収穫を終えた「今年米」が袋詰めにされ「貨物列車」で全国へ運ばれてゆく様子を詠んだ句である。
見ての通り「朝日割る」という表現が見事。
「朝」から感じ取れる、今スタートを切ったばかりというような時間性、「朝日を割って」進んでゆく「貨物列車」という圧倒的な迫力・スケール感に、言葉にならないあふれんばかりの喜びや期待感が託されているのが余すところなく感じとれてきて共感を覚える。
まさに無意識からの実感(そんな気がする)を迷わず掴んできた佳句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
朝日は、朝という時間性、形態のスケール感を同時に伝える。

入賞

「新米とでっかく記す男文字」(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)

宅配便で送る「新米」、その送付状の品目欄に記される文字を詠んだ句である。
農業をしている旦那さんが下宿している息子などに新米を送るため、宅配便の送付状を書いている様子が浮かんでくる。
全体的にやや詠み方が甘いのであるが、手塩にかけて育てた「新米」への自信、相手にきっと喜んでもらえるだろうという自信が、一句全体にみなぎっており共感を覚える。
農家の旦那の気持ちと一体となって詠まれた「新米」の充実感を伝える堂々たる一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
頭でこしらえるのではなく、ハッとした実感を掴んでくる。

「新米や北半球もこんもりと」(ペンネーム「たけのこ」さん 59歳)

茶碗に盛られた「新米」の様子と「北半球」の形状を重ね見た句である。
茶碗に盛られた「新米」を味わっている時に、ふと浮かんだ「北半球もこんもり」という「そんな気がする(実感)」をさっと掴んだ。
茶碗に盛られた「新米」と「北半球」の形状を詠んでいるだけなのであるが、あたたかでつやつやした香りうまみたっぷりの「新米」を味わう幸福感が、「北半球(地球全体)」に広がってゆくようなのびやかな気分には誰もが共感を覚えよう。
このように「新米」を味わえるその大変な幸福感・喜び・感激を、スケール感のある「北半球」というモノ(情景)に託すことで、余すところなく伝えたところが大変見事である。
そのような「託し詠み」の波及効果ともいえるが、どことなく「平和」への祈りの気分までをも引っ張ってきているようなところも味わい深い。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
モノからの気配(そんな気がする)をつかまえるのが俳句。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・吾子の歯の香りたちたる今年米(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※なし
→草田男の万緑の句が想起される。米粒と小さな歯の見た目、子どもの生命力と「今年米」の新鮮さなどがつかず離れずのとりあわせで調和を生んでいる。意味にもたれず「そんな気がする」という無意識からの詠み方を大切にし「今年米」の気分をいきいきと詠みあげた。佳句・好句である。

・新米の一粒ずつの肺呼吸(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※毎日お米を炊いていると感じるお米の呼吸を俳句にしました。
→少し理屈っぽいが「新米の肺呼吸」という実感はなかなかなかのもの。「新米の肺呼吸する●●」「新米や肺呼吸する●●」など舌頭千転して自然な姿を見つければさらによくなりそうである。

・新米の色を奏でる電子音(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※新米のご飯が炊き上がった時、炊飯器の電子音を格別な思いで聞き、詠みました。
→味ではなく色や音の実感をつかんできたオリジナリティがなかなかである。「電子音」も面白いのであるがこの場合やや抽象的。「新米の色●●の炊飯器」など舌頭千転して自然な姿を見つけたい。

入選句

特選A(入賞候補)

・髪一本抜けて新米炊き上がる(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 19歳)
→「髪・新米」はなかなかのキャスティング。なぜ「髪一本抜けて・炊き上がる」のか。米作りの苦労を象徴しているのか、収穫までの時間性を象徴しているのかなど、解釈が読者に委ねられ広がってゆくような詠み方がのびやかで面白い。

・今年米日向の色に炊き上がる(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
→「炊き上がる」米が「日向(ひなた)の色」だという実感(そんな気がする)を詠んだ。「日向の色」という表現はあまり聞かないが、香ばし気な気分がよく出ている。言われてみれば納得の表現である。好句・佳句。

・新米や棚田は星を吸い尽くし(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
→新米のつややかな気分その背景が美しく表現されている。しかしながら「吸いつくし」が惜しい。こういうところは「演説調」にせず、「吸い尽くす」など情景・状態にして、読者に感じてもらえるように詠みたい。参考に。

・新米や神楽の里の空青し(ペンネーム「もじこ」さん 49歳)
→「新米」の清々しい気分を伝える句である。しかしながら「青し」がモノ(情景)ではなく作者が「言っていること・気持ちの直接表現」で惜しい。俳句詩なのであるから「演説調」にせず、「空の青」などモノ(情景)で詠むようにしたい。参考に。

・新米を溢せば山の水の音(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
→「新米」から「山の水の音」がするという実感を上手くつかんできた。こちらも「新米」の清らかさを伝える句である。「新米」の手触りや音、そこに大きな自然を感じている作者ののびやかな心境に共感する。好句・佳句。

・新米や富士山嶺の綿帽子(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 53歳)
→「新米」に「富士山」をキャスティングしてきたことで神々しさのようなものを美しく感じさせる句になった。「綿帽子」を季語とする立場もそうでない立場もあるようであるが、いずれにしても雪の季節感を前面に打ち出した光景が「新米」の白さとあいまって美しい。佳句。

・新米や空のにおいの宅配便(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)
→届けられた「新米」の気分がよく出た句である 。「そんな気がする」という実感を迷いなくつかんだ。好句・佳句。

特選B

・新米や雲の高さを映しをり(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→仮名遣いは現代仮名遣いを採用して不足はないはずなので、惰性で旧仮名を使わず現代仮名遣いを用いるようにしたい。句は「新米」の喜びやのびやかな気分が出ているのであるが、この句の場合「何」に映すのかそのあたりが抽象的なのがやや惜しいのでそこをはっきりさせたほうがいいだろう。

・新米や母のノートを読みかえす(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→作者の意図とは違うかもしれないが素材から思うに、現在農業をしている作者が亡くなった「母」が記した「農業記録」を読み返しているような句に取れる。親の跡を次いで農業をすることになった作者の感慨がしみじみと感じ取れる一句である。好句。

・鉄釜の揺るる武州の今年米(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
→「武州」は現在の東京・埼玉・神奈川あたりのこと。武の響きも相まって雄々しいイメージ。その地の米を昔ながらの「鉄釜」で炊くというのであるが、その様子を「揺るる」と抑制的に詠んだところが力のこもった冴えた表現。素朴ながらも生命力のようなものまで伝わる佳句。

・新米や水の重さの空の雲(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→気分の出た句で面白い。ただし「新米・水、水の重さの雲」とくればやや意図的でつきすぎ、そのあたりを攻めたい。

・添状の文字やわらかに今年米(ペンネーム「邯鄲」さん 57歳)
→入賞句が男文字ならこちらは女文字といったところか。あたたかさとやさしさの伝わる句である。少し世界観がありきたりなところがやや惜しいが、出来た句である。

・新米の俵積み上げ相撲部屋(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→俳味(おかしさ)の句である。新米の喜びや期待感がよく出ている。好句。

・新米を供える仏間やや広し(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
→家族が外に住むようになり、お参りするものが減り寂しくなった気分を詠んだものか。どことなく世界観がありきたりであるが出来ている。素朴ながら「やや広し」という実感がよく効いている。

・手びねりの夫婦茶碗や今年米(ペンネーム「りりこ」さん 60歳)
→夫婦仲良く新米をいただく。その少し特別な気分が「手びねりの夫婦茶碗」というところによく出ている。幸福感が滋味深く表現されている。

・新米の磨ぎ汁牛の走り来る(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→あ作者によれば牛にとぎ汁をやっていた実体験の句という。「新米のとぎ汁」だけに風味がよいのだろうか、「牛の走りくる」というところに「新米」のおいしさや喜びがよく出ている。好句。

・校庭の脇たけなわに今年米(ペンネーム「松廣李子」さん 64歳)
→田舎の学校の一部を一時的に農家が借りて米袋を積ませてもらっているのであろうか。あるいは校庭の隣の田を詠んだものか。「脇たけなわ」が分かるような分からないような表現であるところは課題であるがなかなか面白い。好句。

・新米や光を纏う道祖神(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→田舎の気分や感謝の気分がモノ(情景)に上手く託されている。「新米・光・道祖神」は、光繋がりでややつきすぎなのでそのあたりは注意したい。好句。

・新米のとれた棚田に夜の月(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 67歳)
→新米の喜びを美しく詠みあげた。しかしながら「とれた」が言わずもがなでやや惜しい。全体的に舌頭千転して落ち着きのいい姿を探したい。

・鍋にうつす新米の透きとおる音(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→「新米」の美・神秘性のようなものを伝える句。できているのであるが、この定型感のなさとつぶやきの切れ端のようなすっきりとしない詠み方は改善したい。575の「定型感」というものは、「母音+子音」で構成される日本語の生理にあったリズムなので、俳句の短さを活かすバネにもなるので大事にしたい。

・手で掬う新米ぬくし稚児の指(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→こちらも一般的には出来た句となるのであろうが、私としては「ぬくし」が惜しい。これはモノ(情景)というよりは作者の感想になるからである。例えば「手で掬う新米白き稚児の指」などとすれば「モノ(情景)」になる。参考に。

・新米の一合増やし夕支度(ペンネーム「寿人大好きばあば」さん 70歳)
→「新米」をおいしくいただくその気分が素直に詠まれた句である。この句も「増やし」ではなく「増やす」としたい。「増やす」とすれば説明ではなく「モノ(情景)になろう。参考に。

・高速船どんと積まれる今年米(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→今年米が各地へ運ばれてゆくその様子を詠んだ。中七がやや安易な表現に感じられところが少し気になるが俳味がある。

入選A

・手を合わせ炊く新米や七五三(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
→おめでたい気分がよく出ているが、この場合「新米」と「七五三」の両季語が喧嘩している印象である。そのあたりを整理したい。

・新米や風の抜けたる築百年(ペンネーム「登りびと」さん 35歳)
→大変気分は出ているのであるが詠みが追い付いていない。舌頭千転し「百年の梁の重さや今年米」など落ち着く姿を見つけたい。

・新米のおにぎり澄んだ高気圧(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→「新米・おにぎり」「澄んだ・高気圧」とややごちゃごちゃして落ち着かない。「等高線すきとおりたる今年米」などもうすこしポイントを絞って詠みたい。参考に。

・今年米積み上がる空高く行く(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)
→新米の感激は伝わるのであるが、「高く行く」が惜しい。このような決意「演説調」をを詩にわざわざ持ち込む必要があるのかを考えてみてほしい。詩でしかできない表現・俳句でしかできない表現をするからその詩型の価値があるのである。「今年米積み上げてゆく空のいろ」などと素直にモノ(情景)で詠んでみたい。参考に。

・新米を頬張る夜の夫婦箸(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 43歳)
→新婚のような気分が楽し気である。「新米・夫婦箸」のキャスティングが世界観が近いながらも面白い。

・新米の甘い香りに包まれて(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
→やさしさの伝わる句である。ありきたりの世界観ではあるがそれなりにできている。

・新米や赤子を抱く若い人(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
→「新米」が新人とも米のこととも両方にとれる。命の喜び・収穫の喜びの感じ取れる句である。

・ふわふわと踊る新米喉の奥(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→舌頭千転「喉の奥ふわふわ踊る今年米」とすれば一段スッキリする。口中ではなく喉の奥というところが面白いが、米を食べるというよくある世界観の延長なのでやはり惜しい。取り合わせなどで飛躍して詠んでみたい。

・新米に野菜を刻む園児かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
→「園児」たちが秋の素材で調理している様子であろうか。「に」をもってくるところが大変上手いのであるが、いかんせん「米・野菜」のキャスティングの近さが世界を狭くしていて惜しい。

・新米や産まれたての笑くぼかな(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→「新米」の何らかの様子を詠んだものか、赤子の顔を詠んだものか少々抽象的なところと、「や・かな」と切れ字が二つ入ってやや落ち着かないところを整理したい。どことなく笑顔のイメージで「新米」の気分を醸し出しているところは面白い。

・新米や瑞穂の国に生を受く(ペンネーム「斎乃雪」さん 56歳)
→一見できているのであるが、「新米・瑞穂」「瑞穂・国」「新・生」がつきすぎであるし何より「受く」が惜しい。「受く」はモノ(情景)ではなく作者自身が語っている直接表現だからである。句の内容(言いたいコト・出来事)ではなく、語と語の効果に敏感になってほしいと願う次第である。

・幸せも炊き込んでいる今年米(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
→言いたいことはよく伝わるのであるが、上五がいかんせん直接で惜しい。「炊飯器高らかに鳴く今年米」など、何らかのモノ(情景)に託して詠めるようになれば違うであろう。

・胸に尚母の山河や今年米(ペンネーム「吉良水里」さん 57歳)
→心情吐露というか観念的で惜しい。例えば「ふるさとの山河炊かるる今年米」などならわかる。もう少しモノ(情景)を打ち出して詠むようにしたい。参考に。

・新米や金文字の湧く米袋(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→「新米」の袋のデザインを詠んだ句であろう。期待感・喜びの気分の出た句である。しかしながら「湧く」とまで言ってしまえば少々言い過ぎ。このあたりの塩梅が難しい。キャスティングにはアクセル、詠みにはブレーキといったところか。

・新米や父が選んだ景徳鎮(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
→「新米」への特別な思いがよく出た句である。詠みが少々ぎこちないので舌頭千転し「新米や父の選べる景徳鎮」あたりとしたい。参考に。

・新米の椀は色々大家族(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→待ちに待った「新米」を家族それぞれが好きな器で食べる様子。「色々」が少々安易な表現ではあるが、食卓の活気がよく出ている。

・板長の水の加減や今年米(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
→新米は「水」の加減が難しいという。「板長」なら大丈夫という期待感を少しおかしく詠んだ句か。世界観は少しありきたりで惜しいのであるが、俳味が感じられて愉快である。

・曲がり角新米の匂い待ち伏せる(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→こちらも俳味の句であろう。「曲がり角新米の香の待ち伏せる」とすればリズムが整う。

・新米の星屑ほどに煌めけり(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
→「ほどに」が惜しい。「星屑」の存在感が希薄だからである。例えば「星屑の煌いている今年米」などなら「星屑」の存在感が出よう。そもそも俳句は一句そのものが隠喩のようなものなので、そこにあえて比喩を用いるのは原則避けるほうがいいだろう。

・夫の居て新米を磨ぐ朝かな(ペンネーム「藤田政枝」さん 66歳)
→ほのぼのとした句である。このあたりは好みであろうが「夫と居て」としたい。

・手に掬う越後の香り今年米(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
→「今年米」の実感を素直に詠んだ。やや直接的なところが惜しいが、米そのものではなくそこに土地の匂いを感じたところにムードがある。

・新米の焦げのむすびや薪弾く(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→「新米」を「薪」で炊くとは今では贅沢である。この句の場合「新米の焦げの香りや」など炊くシーンに特化したほうが感動のポイントが明確になってよさそうである。参考に。

・新米や広島菜漬けの重石上げ(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)
→待ちに待った「新米」どうおいしく食べるか楽しんでいる様子が伝わる。少々説明的であるが、「重石を上げ」というところに実感が出ている。

・新米や縁故米てふ荷物来る(ペンネーム「ようちゃん」さん 70歳)
→「縁故米」とは親戚や縁者に配る米のことか。「新米・縁故米」「新米・荷物」であるから世界観がありきたりではあるが、余計なことを言わず詠んだところがよかった。ここからどういう想像をめぐらせるかは読者に委ねられている。

・新米を下げて湯治の客となり(ペンネーム「秋月なおと」さん 71歳)
→一句の素材だけから解釈すれば、長い「湯治」にゆくのに際し「新米」を持参したという句。いきいきとした「新米」の句は多いがどことなく千鳥足のような気分の句でそこにオリジナリティと俳味が出ている。

・新米やキラリ一粒ピアス揺れ(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→取りあわせの句であろうか。美しいのであるが詠み方が甘い。「新米の粒立ち上がるピアスかな」など、舌頭千転し、定型感を活かして詠んでみたい。

・神様と共にいただく今年米(ペンネーム「『コウちゃん』のじいじ」さん 73歳)
→感謝の気持ちの句である。意味は伝わるのであるがつぶやきの延長のようでもあるので、もうう少しモノ(情景)を打ち出して詠むといいだろう。

・新米の愚痴も詰めおく宅急便(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→モノ(情景)を詠むというよりも出来事を詠んでいるところが惜しいが、「新米の愚痴」とはどういう愚痴かひきつける。一句全体を貫く俳味が面白い。

・園児らと育った新米塩むすび(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→「園児らと育った新米(が今や)塩むすび(となっている)」という報告・説明を省略したようなところが惜しいが、喜びや成長の喜びが感じられるあたたな句である。

・新米が神座にどんと大胡坐(ペンネーム「チックちゃん」さん 77歳)
→「新米・神座」はイメージが近いのであるが、「大胡坐」が俳味となっていて少し愉快である。

・ごうごうと刈り取る音や今年米(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→「刈り取る」音を「ごうごう」とはどのような実感であろうか。大収穫のイメージであろうか。音に託して迫力あるイメージを伝えているところが上手い。

・新米のお代わりつづく釜のぞく(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→句意は明瞭。一句の世界が食卓で完結しているところが飛躍に乏しく惜しいのであるが「釜のぞく」に俳味と実感が出ていて愉快である。

入選B

・新米や甘みほのかにてかる朝(ペンネーム「モッツァレラ二号」さん 9歳)
・夜な夜な奮闘す画面と目目と新米と(ペンネーム「しょうた」さん 19歳)
・おかわりの用意もあって新米よ(ペンネーム「大野美波」さん 31歳)
・今年米一から探す水加減(ペンネーム「ころりん」さん 35歳)
・秋味覚うまさ際立つ新米で(ペンネーム「ツッシー」さん 36歳)
・新米の季節がきたら母が呼ぶ(ペンネーム「ナルナル」さん 36歳)
・新米で五分がゆ作る新米ママ(ペンネーム「まゆまま」さん 39歳)
・新米を食べて感じる秋の風(ペンネーム「ふくもち」さん 42歳)
・新米や街におはようございます(ペンネーム「しかもり」さん 44歳)
・新米やこの美しき地の恵み(ペンネーム「マネレ」さん 44歳)
・新米や八十八手の漢字かな(ペンネーム「ゆうちゃん」さん 45歳)
・成長の吾子に新米握りけり(ペンネーム「さらさん」さん 46歳)
・新米で炊いたご飯の艶やかさ(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・旧知から新米届く獣道(ペンネーム「海音寺ジョー」さん 47歳)
・新米や朝ドラ歌う炊飯器(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
・新米や稲の命に礼を言う(ペンネーム「風のシルフ」さん 48歳)
・新米を盛る仏壇に食卓に(ペンネーム「洒落神戸」さん 51歳)
・新米の水を減らして炊きにけり(ペンネーム「田辺 ふみ」さん 52歳)
・ひっちゃかめっちゃか四割小米の今年米(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・新米を娶りて欲しい炊飯器(ペンネーム「ナギさん」さん 55歳)
・新米で握ったおにぎりツヤツヤだ(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・新米のとぎ汁瓶へ白き指(ペンネーム「さゆりん」さん 56歳)
・新米の炊きあがり待つわくわく感(ペンネーム「かっぱ」さん 57歳)
・新米をスプーンで食べる二歳の子(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
・新米や一合多く炊いたのに(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・新米の宅配重い冬近し(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 62歳)
・ひと杓文字掬ひて香る今年米(ペンネーム「安田 蝸牛(やすだ かぎゅう)」さん 62歳)
・虹かかり亡き母に届けよ今年米(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・新米の香り解凍老いた母(ペンネーム「瑠緒まま」さん 62歳)
・倉隅に夜の静かを今年米(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
・寒空に母を想いて新米の夜(ペンネーム「ひなじいさん」さん 64歳)
・新米のおにぎり食べて笑い顔(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・新米の危ふい姿未知の味(ペンネーム「是多」さん 64歳)
・新米の炊ける薫りに注ぐお茶(ペンネーム「虹の玉」さん 64歳)
・羽釜にて炊く新米の甘きこと(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
・空大地おいしい新米里感謝(ペンネーム「グラン グラン」さん 70歳)
・新米を研ぐ指先も楽しかり(ペンネーム「ヤチ代」さん 70歳)
・親戚の新米とどく潮の香も(ペンネーム「おちえもん」さん 71歳)
・新米やおどり炊き釜無洗米(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・新米のむすび口にし夢心地(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・臨月の新米流す大震災(ペンネーム「まあちゃん」さん 73歳)
・今年米蔵に積みしや主なし(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・段ボール手紙と野菜と新米と(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
・田の恵みすそわけしたる今年米(ペンネーム「かっちゃん」さん 78歳)
・東京へ元気と添えし今年米(ペンネーム「めぐちゃん」さん 78歳)
・旅の宿女将自慢の今年米(ペンネーム「三眠」さん 80歳)

ユニー句(句)

・新米はお水加減が大切だ(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・新米を狙うカラスの腹黒さ(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
・新米に威張られ古米肩狭し(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
・新米はレトルトカレーとやって来る(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・新米におかずはいらぬと父が言い(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・新米や夫拘り土鍋噴く(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
・今年米古米となってから食べる(ペンネーム「是多」さん 64歳)
・古米食べ何時になれば新米か(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
・味よりもブランド競う今年米(ペンネーム「秋月なおと」さん 71歳)
・新米の卵かけごはん世界一(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・新米や聞くと聞かずで味違う(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・新米の香りが美味いと妻が云う(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・クラス会あのころ新米いま古米(ペンネーム「まきちゃん」さん 73歳)
・新米やお洒落な案山子まだ立ちぬ(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・新米に両足揃える祖父の癖(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
・新米を人には与えわれ古米(ペンネーム「アルミ・カン」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

◎次回のお題は「落葉」
大賞の方には3,000円分のクオカードをプレゼント!奮ってご応募ください!
次回は11月21日の放送です。作品の締切は11月14日水曜日です。

過去の放送内容