テレビ派

コーナー紹介

俳句道場

放送日:2019年2月6日(水)

第106回 お題「風船」(選と評 谷村秀格先生)
<谷村秀格(たにむらしゅうかく)プロフィール>

句の「スケール感」や句の背後の「詩情の広がりや深さ」を重要視する『宇宙流俳句』のパイオニア。『宇宙流俳句会』主宰。1976年広島県東広島市安芸津町木谷生まれ、同町在住。句歴27年

総評

「何でもありの俳句から、俳句の【深み】へ」。
ホンモノを求める広島の皆さまや、現在の俳句に飽き足らない全国の皆さまからの強い支持を頂き今回も沢山のご投句をいただきました。
どうもありがとうございます。

今回は〆切が2/4、発表が2/6と大変短い期間であったため、特選以下の寸評については来週中までに、改めて掲載させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

この俳句道場で心掛けていただきたいことは、「託し詠み(私の造語)」です。
「託し詠み」とは、俳句の一番の特徴である「短さ」を活かした詠み方で、言いたいコト・ココロ・気持ちを言葉で直接表現せず、モノ(情景)に託して詠むことです。

以下①~④を踏まえ、モノからの気配「そんな気がする(実感・感動)」を大切に、「託し詠み」にチャレンジして頂ければ、「俳句の深み」を楽しんで頂けることと思います。
俳句は「詩語」ですから、気分(ムード)が出ておれば、文法・季重なり・教条など、細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則、有季定型(季語を入れた「定型感」のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②原則、仮名遣いは現在使われ将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を使用する。
③原則、俳句は余白を空けたり多行書きにせず「一行」で書く。
④原則、テーマをきちんと入れて詠む。

大賞句の「空を吸い直す」は、心で捕らえた実感を上手く掬った句。
入賞句の「瀬戸内」は、前向きな気分を感じさせる句。
入賞句の「サーカス団」は、対比の上手く効いた句。
特選Aは入賞候補に残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高い句。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もクスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。
「風船」がきちんと入っていない句などは、ユニーク(句)欄は別として、残念ながら選外としました。

今年も全国から沢山の句を頂き、重ねて感謝を申し上げます。
目先の結果に一喜一憂することなく、将来のびのびと俳句の奥深さを楽しめることを目指して、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度(多作の方は自選で絞ることも大切、寡作の方は詠む癖をつけることが大切)、どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「紙風船突かれて空を吸い直す」(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)

紙風船を手で大きく弾いているときの一句。
子供の頃、口を開けた紙風船を叩いてもなかなかしぼまないので大変不思議に思ったことがあるが、同じように感じていた方も多いであろう。
その理由を調べるでもなく今日に至っているわけであるが、この句を詠んで見事に合点がいった。
その理由の一つは、「紙風船」は物ではなく呼吸している生き物であるということ。
もう一つは、その紙風船なる生き物は、叩かれるたびに空気ではなく大きな「空」を吸っているということである。
ベルヌーイの定理だとか、圧力の関係で、、、といわれてもなかなか専門家でないと理解しにくいが、このようにいわれるとストンと納得できるのが詩の力というものであり、これはこれで一つの真実であろう。
これは「いつから春か」という問いに、「4月から」と答えるのと「桜が咲いたら」と答えるのとの違いに似ている。
すなわち、法則や数字で宇宙の真理を掴もうとするのが科学者なら、モノからの実感(モノの見えたる光・そんな気がする)で宇宙の真理を掴もうとするのが俳人なのである。
よく知られたアニメのキャラクターが、そのポケットの中からいろんなモノを取り出したりしまったりしているのを見かけることがあるが、それよろしく紙風船の中には空気ではなく「空」が入っているというような次元を超えた感覚も実に詩的でみずみずしい。
こういうところに詩を感じない人にはなんのことやらであろうが、紙風船のその瞬間の煌きを見事に把握した一句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
詩にしかできない表現を。

入賞

「瀬戸内の港張り出す紙風船」(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)

瀬戸内の港に少々古風なイメージの「紙風船」であるから、尾道や安芸の小京都といわれる竹原市あたりの情景がイメージされてくる。
この句のポイントは「張り出す」。
見ての通り「張り出す」のが「港」とも「紙風船」ともとれるような詠み方が大変働いている。
こういうところが俳句独特の文法・詩語と言うべきものであろう。
春の明るさ・ポジティブな気分を伴って海に向かって広がってゆくような港の情景、広々とした海に向かって飛んでゆくような紙風船の気分が大変のびやかで心地よい。
物理的に港などが張り出している情景を詠んだのか、あるいは現実的にはそうではないが心象風景として張り出していると見えた情景を詠んだものかは定かではないが、いずれにしても作者の心情がしっかりと反映されているのが見てとれる力強い一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
「詩語」を理解する。

「風船やサーカス団の白き象」(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)

サーカスの様子、あるいはサーカスの会場周辺の様子を詠んだものであろう。
象徴的に詠まれてあるので、具体的なシーンは読者に委ねられるが、サーカスの明るさ楽しさのような気分が素直に感じとれてくる句である。
この良さは「風船」「象」の対比。
風船の鮮やかな色彩と象の白さ、風船の軽やかさと象の重量感、風船の明るさと狭い所で飼われている象のどことない寂しさなど、これらの対比がつかず離れず見事に決まっているところがまずもって素晴らしい。
そして、さらに素晴らしいのは、そういった効果そのものを句の表面的なところで全く感じさせていないところ。
モノ(情景)からの実感をただ無意識的に詠んだところ、結果として対比が効いていたというような詠み方(あり方)が実に冴えている。
そもそも俳句というものは、この句のようにモノの力(ものの見えたる光・真実)をしっかり引き出して詠んでおれば、小手先の技法をすべて無力化してしまうほどの強さを放つものであり、最初から比喩や破調や○○法の類、季語の本意に依らなければ鑑賞に耐えられないような句は、それ故弱いのである。
モノ句の本領という一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
技法は後からついてくる。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・風船の浮いては沈むダム湖かな(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※心象風景です。
→夢の中のシーンのような光景である。常識的には「風船=空」のイメージであるところ「ダム湖」というのであるからやや屈折している。心理学では水は無意識の象徴という。作者の何かしらの不安な真理を投影したものか。中七の詠みがやや甘いが心情表出の充分に出来た句である。好句。

・未来図を詰めて風船肩車(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※春祭りで賑わう人混みの中、風船を持った幼児を肩車して行く若い父親、子供への夢が垣間見えました。
→やや思いが先行した散文の省略のような印象の句だが、明るい気分を増幅させて詠んだ春らしい世界観である。

入選句

特選A(入賞候補)

・風船の真下暮れゆく赤い街(ペンネーム「登りびと」さん 35歳)
→当たり前のことを詠んでいるようであるが、風船と一体となり風船目線で詠んであるところが惹きつける。伝えたいことがまずありそれを句に盛り込むにはどうしたらいいかと頭(意識)で試行錯誤するような言語操作の詠み方とは異なり、無意識から湧き上がってきたままを詠んだところを評価したい。「風船=下」「暮=赤」「風船=赤」などイメージの重なりが一句のスケール感を小さくしているところがやや惜しいが、幻想的で夢うつつな気分の好句である。

・風船や機械油の港町(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→応募句の中では掲句が断然優れている。他句はどれも意識的な言語操作で句の表面を飾ったり見せかけの面白さを詠んであるにすぎない。この句は一句の表面に描かれた世界は地味であるが、モノの力が実によく働いていて滋味深い。油にまみれて働く人達の空に一つ明るく浮き上がる鮮やかな風船が印象的である。「風船↔機械油↔港町」と一語一語は日常語であるがその前後の語と語の関係性に意外性(飛躍)があり、しっかり「詩語」に昇華できている。見せかけの面白さや言語美にとらわれず、このようにモノの力を引き出し自分の詩を詠い上げてほしい。好句・佳句。

・不揃いの風船並ぶクレヨン画(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→幼い子の描いた風船の絵を詠んだものであろうか。風船そのものの存在感がやや乏しいのが惜しいが、明るいプラスイメージの「風船」を「不揃い」というややマイナスイメージにずらして詠んみ、眼前の風景かと思わせ「画」に着地するいうような意外性が成功した。句は「不揃いの」というところに作者の何かしらの慈しみの心情のようなものが反映されているようで共感を覚える。このようにしっかりとモノに託して詠みたい。好句。

・風船の天井に尽く寝床かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
→俳味の効いた句である。寝床で風船を眺めているという目線、そして自由なイメージの風船が天井にはりついて行き場を失っているような光景を詠んできたところが独特である。この風船のようになかなか思うように飛べない(生きられない)ことを皮肉っているのか、あるいは達観しているのか。いずれにしても風船に自己を投影しているような世界観が共感を誘う。好句。

・ねじられて風船犬になりにけり(ペンネーム「田辺 ふみ」さん 53歳)
→風船が生き物の「犬」になったという「詩的真実」の句である。これは縄を見て蛇だと思った瞬間を捉えたのと同じ感覚である。作者のココロにはその瞬間「犬・蛇」が浮かんだのであるから「これは隠喩の句だ」というのは間違いであり俳句がわかっていない。頭で隠喩と感じる前段階の句なのである。いずれにしても作者の意識(生物的な眼)ではなく、無意識(ココロの眼)がとらえた瞬間を詠み込んだところが詩として大変光った。この方向で。好句・佳句。

・やわらかく歪む地軸や紙風船(ペンネーム「りりこ」さん 60歳)
→春の実感を大きくのびやかに把握した。小さな紙風船と大きな地球のイメージをつかずはなれず重ね見たところが大変優れている。少々類想感もあるが連想に無理のない明るく強い一句である。好句・佳句。

・風船の息のかすかに匂う夜(ペンネーム「けい子」さん 72歳)
→恋人が膨らませた風船が少しづつ縮んでゆく様子を詠んだものか。あるいは風船が生物としての呼吸していると感じた「詩的真実」を詠んだものか。いずれにしても「ココロの嗅覚」がとらえた世界を詠んでいるところが見事。なかなか切なく美しい一句である。好句・佳句。

・沈みつつ夕陽吐き出す赤風船(ペンネーム「まあちゃん」さん 73歳)
→「沈む=夕陽」「夕日=赤風船」とイメージをやや重ねて詠んであるところが句のスケール感を小さくしていて惜しいが、「吐き出す」という実感が句に命をあたえた。現実的感覚にとらわれず「赤い風船は夕日が吐き出しているものなんだ」という「詩的真実」を堂々と詠みあげているところが見事である。実感を大切にするこの方向で。好句。

特選B

・発熱の日の風船の重さかな(ペンネーム「ルビー」さん 19歳)
→風邪などの様子を詠んだ句であろうが、発熱・風船とくれば恋の微熱のような印象も受ける。風船のことを重いだ軽いだと普段は意識しないものであるが、こういう日だからこそしっかり実感したというところに作者の繊細な心情が見て取れ共感を覚える。好句。

・目の奥の闇の吸い付くゴム風船(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 19歳)
→あざやかなゴム風船がなぜかしら目に残る、あるいは心が風船にもっていかれるような心境であろうか。その少し屈折したような心境が感じとれれば鑑賞は成功であろうしそこに共感を覚える。対象の風船を自分の身体感覚にしっかり落とし込みきちんと消化して詠み上げているところがよい。

・風船の浮く高さまで海の中(ペンネーム「青海也緒(あおうみやお)」さん 37歳)
→モノとモノの関係性が近いので波に浮かんだ風船を詠んだものともとれるし、空に浮かんだ風船の実感を詠んだものともとれる。前者では当たり前で詩にならないので後者にとる。浮きを見上げる魚の心境ではないが、「風船の浮く高さ=海の高さ」という「詩的真実」を詠み込んでいるようなところが面白い。「~は~である」というような演説調は詩なのであるからもっと引っ込めなければならない。

・大海や風船ゆらゆら舵を切る(ペンネーム「よこたん」さん 42歳)
→船のような風船のようなどちらともつかないが、そのたゆたうような気分に詩的なムードがよく出ている。無意識からの詠みが光った一句である。

・風船や大きく歪みゆく地球(ペンネーム「かつたろー。」さん 43歳)
→「風船・地球」の取り合わせ。気分の出た句である。このあたりの素材なら私なら「風船の大きくゆがむ地球かな」くらいで詠むであろうか。ゆがむのがとちらがいいかというような問題ではなく、あり方として原句のもの言いたげなところや尻すぼみなリズムがやや惜しいのである。このあたりの違いを比較いただだければと思う。

・きしきしと啼き風船は犬となり(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→特選Aにも風船が犬になるという句があったが、それとの比較でいうとこの句は「きしきしと啼き」が表現過剰で惜しい。こう詠むと「きしきしと啼いたというコト(出来事)」のほうに重心がかかってしまい「風船犬となる」という詩的真実がかすんでしまうのである。こういう「出来事・説明・言語美」に目もくれず、ただモノからの実感を掴みにいくようにしたい。

・風船売りの声伸びたり縮んだり(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
→風船の題意とよくあった気分の出た句である。春の明るさ楽しさが音でも感じとれるようなところがいい。俳味(おかしさ)も効いた実にのびやかな世界観である。好句。

・風船や死海に魚およぐ春(ペンネーム「ラーラ」さん 60歳)
→「風船・死海」の対比が効いた句である。やや詠み方が固いので舌頭千転「風船の死海にゆがむ魚影かな」あたりで詠むのもあろうか。この固さは俳句型式をまだ消化しきれていないところからくるのであろうか。俳句は「詩語」なので現実に寄せて詠む必要もないし、正しく詠む必要もないし、何かをきちんと伝える必要もない。ただムードが出ておればいい世界なのである。詩はそもそも独特の言語だという認識を持って俳句にのぞんでいただくとよいだろう。ちなみに風船は春の季語なのでこの場合「春」は必要なさそう。

・そぼ降るや大樹に隠る紙風船(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→なかなか象徴的で滋味深い句である。「降る・隠る」と動詞が二つあるのがくどく惜しい。「そぼ降るや大樹の肩の紙風船」あたりだとまだ座りがよさそうである。舌頭千転したい。

・紙風船破れ欠けゆく地球かな(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→紙風船・地球の対比の句である。中七の「破れ欠けゆく」が重たい表現というかもの言いたげな表現で惜しい。しかしながら「破れかけたる地球かな」くらいだとあまり気にならない。こちらも舌頭千転し句を整えるといいだろう。

・風船のふわふわ過ごす帆舟かな(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→風船と帆舟のとりあわせ。空中と海中の対比がなかなか心地よい句である。いずれにしても「ふわふわ過ごす」という中七がやや安易に流れているところが惜しい。特にオノマトペの類は句を弱くする方向に働くことのほうが多いので注意が必要である。

・風船の離れて光る海へ向く(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→風船が海へ向くのか、作者が海へ向くのかどちらにもとれる。いずれにしても「向く」というところに作者の強い意志が感じとれる若々しい句である。

入選A

・風船や肺のねばねばする曇り(ペンネーム「古田秀」さん 28歳)
→自身の何かしらの不穏な心境を詠んだものであろう。このように実感をしっかり掬い取っているところがよい。「風船=肺」「風船=(空)=曇り」「曇り=ねばねば」と一句の語と語の関係が飛躍に乏しいところがイメージのスケールを小さくしてしまって惜しいのでそのあたりを気をつけたい。

・風船を配るピエロの薄笑い(ペンネーム「南風の記憶」さん 34歳)
→一応定型におさまり俳句らしいのでAにとった。しかしながら作者もお気づきだろうが「風船=ピエロ=笑い」では宇宙は広いのにピエロのイメージばかりに執着していてココロの凝り形である。詩なのであるから現実を現実らしく詠むことにとらわれずアタマ(意識・大人らしさ)を空っぽにしてのびのび詠い上げてほしい。

・風船の発泡している野球場(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
→現実らしさにとらわれる人にはこのような表現は我慢ならないのであろうが、私は野球場の実感(そんな気がする)を見事につかんできた詩的真実の句として評価したい。こういう表現が詩でできなくてどこでするのであろうか。ただし全体的に詠みが甘いので「俳句を詠む」というあり方で詠むようにしたい。

・幼子と一緒に吹き入る紙風船(ペンネーム「いぬふぐり」さん 38歳)
→紙風船を楽しむ気分のよく出た句。「一緒に吹き入る」は「息を吹きこむ」などのほうが自然な印象。

・風船やくじらの浮ぶ空の青(ペンネーム「ぎんの雨」さん 43歳)
→美術の世界で羊や豚が空をとぶように俳句でも何が飛んでもいい。惜しいのは「風船=浮く=空=青」と全く語と語の関係性に飛躍がないこと。こういうところに敏感になりたい。

・風船や追いつ追われつ波の花(ペンネーム「林檎嬢」さん 45歳)
→。応募句の中ではこれが無意識的な詠みでよい。定型のバネをしっかり活かして詠んだ強みはあるのだが、「風船(春)」と「波の花(冬)」が兄弟喧嘩している印象。肝心の感動のありかがよくわからないのである。そのあたりが課題となろう。

・風船を束ねて虹の遊園地(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
→実感を詠むというよりはやや頭でこしらえたような世界観が少し惜しいが、なんとも華やかな句である。

・七色に染まる風船夕まぐれ(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
→色で攻めた句であるがどこか作り物っぽいところと「七色・夕」のイメージがちぐはぐなところがやや惜しい。やはり頭ではなく無意識からの実感を詠むようにしたい。

・風船や土産ぶらさげ朝帰り(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→軽やかで俳味の効いた詠み方が面白い。中七以降が安易に流れたのが惜しかった。

・風船の紙にはみだす願い事(ペンネーム「でこ」さん 52歳)
→風船の紙がどうもよくわからない。また紙に願い事を書いたのであろうからそれが月並である。そのあたりを攻めたい。

・保育器のおなら転がり紙風船(ペンネーム「いようさぎ」さん 55歳)
→作者にとって保育器はポイントであったのであろうが出来た句を見るとどうも中途半端。「幼子のおなかころがる紙風船」などのほうが自然に入り込めそう。

・風船や空へと残す影一点(ペンネーム「斎乃雪」さん 56歳)
→モノ(情景)で詠もうとしているところはよいが、世界観が月並みの域を出ておらず惜しい。

・風船や胸に膨らむものひとつ(ペンネーム「M雪ノ下」さん 57歳)
→風船であるから明るさのはずであるが、どこか悩み事のような気分も感じとれる。少し観念的なのでモノにしっかり託して詠むようにしたい。

・ゴム風船告知の朝の空に居る(ペンネーム「あじさい」さん 58歳)
→病気の告知であろうか。ゴム風船の無表情な様子が一句の気分に合っているが句でモノを言いたげなところが惜しい。「癌告知されたる朝やゴム風船」などモノを打ち出して詠みたい。

・赤い風船天井にへばり付く(ペンネーム「国代鶏侍」さん 58歳)
→特選Aにも天井の風船を詠んだものがあったが、こちらはやや傍観的なところが惜しい。対象と一体となって詠むようにしたい。

・身の内を吐いて風船ふくらます(ペンネーム「ハイカー」さん 61歳)
→慣れた詠み方が句を救っているが、やはり世界観が月並みである。そこを抜け出したい。

・風船は売り切れ風船売りひとり(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 61歳)
→俳味の句である。またこの売れたにもかかわらずこの寂し気な気分が印象的でひきつける。どこかしらモノ(情景)ではなくストーリーを詠もうとしている気するが、そうなら改めたい。

・モノクロの町を彩る風船売り(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 67歳)
→モノクロと風船の色彩の対比の句である。少々あからさまな対比が惜しいが、自身の気持ちの変化のようなものが詠み込まれており共感する。

・眠る子の赤い風船大空へ(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)
→乳母車あたりの情景であろうか。モノを詠むというよりも「~となった」というストーリーを詠もうとしているところが惜しい。「風船の大空へゆく乳母車」などならモノが生きて句がしっかりする。

・風船は日めくりのごと痩せていく(ペンネーム「寿人大好きばあば」さん 70歳)
→面白い感覚の句である。しかしながら俳句で「~のごとく」は句を弱くするほうに傾くことが多い。この句もそうで「風船のやつれておりしカレンダー」くらいにモノをしっかり打ち出して詠むようにしたい。

・幼子の柳行李や紙風船(ペンネーム「三次のユーイーエル」さん 71歳)
→カッチリした詠み方が心地よくゆるぎない。行李の中の紙風船であるからやや月並みなキャスティングでありそこが惜しかった。

・ゴム風船舂く海へ飛んでゆく(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→俳句は短いので「ゴム風船=飛ぶ」このようなありきたりの措辞を避けるようにしないと詩にはなりにくい。言語美にもたれずそのあたりを気をつけたい。

・手紙付き風船揺れる崖の枝(ペンネーム「ななそじ」さん 75歳)
→モノ(情景)で詠もうとしているところはよいがどこか傍観である。もっと対象に入り込んで実感を掴みにいくようにしたい。頭で詠まないことである。

・下弦月舞う風船とならびおり(ペンネーム「コスモス」さん 76歳)
→夜の句であろうか。キャスティングはいいのであるが詠みが追い付いていない。「風船や下弦の月のぶらさがる」など、素材を活かして詠むようにしたい。

・風船と孫の手に引かれ宮参り(ペンネーム「チックちゃん」さん 77歳)
→何かを言うでもなく淡々と詠んだのはいいのだが、やはりスト―リー(出来事)を詠んでいるところが惜しい。「風船の空を引き込む宮参り」などモノで詠むようにせねばならない。

・紙風船残る富山の薬箱(ペンネーム「かっちゃん」さん 78歳)
→詠み方としてはやはり世界観が月並みであるところがどうにも惜しいが、どこか懐かしい気分になる句で共感する。

入選B

・浮き上がる気持ちとともに風船も(ペンネーム「atan」さん 18歳)
・風船よ鐘に乗りゆけ婚よゆけ(ペンネーム「中村遥季」さん 29歳)
・紙風船時の狭間を舞い落ちる(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
・風船をじいじにあげる墓の隅(ペンネーム「高田祥聖」さん 32歳)
・赤い風船や日本一を願う(ペンネーム「なしりんご」さん 33歳)
・風船を解き放つ子や大ニュース(ペンネーム「夏舟」さん 37歳)
・永遠の友バルーンリリースまたいつか(ペンネーム「セキセイインコ」さん 39歳)
・風船は他力本願夢袋(ペンネーム「はなちゃん」さん 43歳)
・風船に巻かれた手紙百度読む(ペンネーム「花紋」さん 43歳)
・赤青黄風船空を旅をする(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・黄風船crowすり抜け誰が為に(ペンネーム「かたちゃん」さん 44歳)
・風船を引き留めようか離そうか(ペンネーム「マネレ」さん 44歳)
・夢燃やし夜空赤染風船灯(ペンネーム「ゆうちゃん」さん 45歳)
・熱き息ファンの風船空を舞う(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 45歳)
・夢見児の頬風船をさすりゆく(ペンネーム「堂林心太」さん 45歳)
・風船やお天道様の下に2個(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
・青空へ青い風船飛んでいく(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・事務室の窓をふうせん午後のお茶(ペンネーム「けーい○」さん 49歳)
・イタリアの空に風船見失う(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
・おばあちゃん白い風船食べてゐる(ペンネーム「伊藤正美」さん 50歳)
・風船や航海図なき羅針盤(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 53歳)
・一つづつ子に笑み満ちて風船売り(ペンネーム「さゆりん」さん 56歳)
・ハイテクはなしや孫らと紙風船(ペンネーム「ジャオ」さん 56歳)
・赤色の風船飛ばす冬の空(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
・五枚めは風船となる新聞紙(ペンネーム「邯鄲」さん 57歳)
・風船よかなわぬくじら逃避行(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・風船に充満させる願い事(ペンネーム「たけの子」さん 59歳)
・おんぶして風船手もと離れゆく(ペンネーム「としまる」さん 60歳)
・風船や行く当てのない片思い(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
・涙目でピエロにもらうゴム風船(ペンネーム「おくにち木実」さん 61歳)
・置き土産の風船と寝る今宵かな(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
・風船のアーチを潜るパパママと(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・雪解けの山に向かって飛ぶ風船(ペンネーム「9月の雨順子」さん 62歳)
・幼子の手を擦り抜けし黄風船(ペンネーム「安田 蝸牛(やすだ かぎゅう)」さん 62歳)
・風船や小さき手離れ風まかせ(ペンネーム「ほの花」さん 63歳)
・風船に園児の手紙の熱きこと(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 64歳)
・風船は離せば逃げるはなさぬように(ペンネーム「是多」さん 64歳)
・風船に思いを詰めて大空へ(ペンネーム「ひろしです」さん 65歳)
・風船にあの娘の名を書き大空へ(ペンネーム「みさんが」さん 65歳)
・楽しみで薬屋の置く紙風船(ペンネーム「虹の玉」さん 65歳)
・風船を手放し大人になってゆく(ペンネーム「さつき子」さん 66歳)
・風船やサハラの駱駝のキャラバン隊(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
・紙風船一つ富山の置き薬(ペンネーム「彩楓」さん 66歳)
・ご褒美の赤いふうせん家路まで(ペンネーム「藤田政枝」さん 66歳)
・風船にふたり暮らした部屋の鍵(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
・デイサービス風船バレーのレクかな(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
・丸が去り強い東風吹け赤い風船(ペンネーム「グラングラン」さん 70歳)
・吹き入れて萎むや肺の風船は(ペンネーム「比々き」さん 70歳)
・風に舞う風船に託す春の色(ペンネーム「Boston Duck」さん 71歳)
・紙風船宇宙遊泳無重力(ペンネーム「おちえもん」さん 71歳)
・その音に母との記憶紙風船(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 71歳)
・風船を膨らます孫鬼のよう(ペンネーム「あしながおじさん」さん 73歳)
・花のたね秘めて風船空の旅(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
・風船を飛ばして早や五十年(ペンネーム「彩の助」さん 77歳)
・風船を膨らませるたびパトの中(ペンネーム「彩の助」さん 77歳)
・飛ばしたいラッキーセブン4連覇(ペンネーム「めいじさん」さん 78歳)
・放たれし赤風船と赤き目と(ペンネーム「めぐちゃん」さん 78歳)
・風船が笑顔広げる青き空(ペンネーム「テッちゃん」さん 81歳)
・野山越え花種配るゴム風船(ペンネーム「伊藤順女」さん 81歳)
・風船の下平和のあかり千羽鶴(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)
・風船が部屋いっぱいのバースディ(ペンネーム「ちぁあ」さん)
・風船に願いを込めて放す空(ペンネーム「モッチャン」さん)
・紙風船孫が手にのす七色の夢(ペンネーム「ゆうびん太郎」さん)

ユニー句(句)

・風船が赤く舞う空鯉跳ねる(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・丸ならず長く野をゆく赤風船(ペンネーム「堂林心太」さん 45歳)
・縁側で 猫がうたたね 鼻風船(ペンネーム「防潮堤 満ち潮」さん 47歳)
・腹風船シュンとしぼめば楽なのに(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・真っ赤っかほっぺ膨らます風船(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
・球場のジェット風船持て余す(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
・顔パック風船ガムが笑ってる(ペンネーム「伊藤正美」さん 50歳)
・風船に夢を乗せたら重くなり(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
・自らを制して舞うはジェット風船(ペンネーム「あじさい」さん 58歳)
・風船にへのへのもへを書いてみた(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
・熱々はフーフーせんと火傷する(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・ラッキー7ジェット風船解き放つ(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 64歳)
・赤風船雲を突き抜け日本一(ペンネーム「虹の玉」さん 65歳)
・カープ女子風船飛ばし四連覇(ペンネーム「あしながおじさん」さん 73歳)
・三万の呼気 七裏の赤風船(ペンネーム「ななそじ」さん 75歳)
・気持ち良い 風船飛ばそ 七回裏(ペンネーム「彩の助」さん 77歳)
・夢のせてとばした風船今どこに…(ペンネーム「モッチャン」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

◎次回のお題は「受験(入学試験・受験生など)
大賞の方には3,000円分のクオカードをプレゼント!奮ってご応募ください!
次回は2月20日水曜日の放送です。作品の締切は2月13日水曜日です。

過去の放送内容