テレビ派

【7月18日(水) 俳句道場・コーナー休止のお知らせ】

この度の西日本豪雨災害により犠牲になられた皆さまに深く哀悼の意を表しますとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

「俳句道場」を楽しみにされている全国の皆さまに、お知らせとお詫びです。
広島では今もなお、行方不明者の捜索や道路の復旧、生活再建に向けての懸命な活動が続いています。「テレビ派」では来週以降も災害情報を主に放送する予定です。そのため、7月18日(水)に予定していましたコーナーの放送を休止させていただくことになりました。皆さまから寄せられました「金魚」の作品の放送及び講評の発表は、8月1日(水)にいったん延期させていただくことになりました。また、今後の状況によってはさらに延期となる可能性もある旨、ご了承くださいますよう、何卒お願い申し上げます。

コーナー紹介

俳句道場

放送日:2018年6月20日(水)

第94回 お題「蟻」(選と評 谷村秀格先生)
<谷村秀格(たにむらしゅうかく)プロフィール>

句の「スケール感」や句の背後の「詩情の広がりや深さ」を重要視する『宇宙流俳句』のパイオニア。『宇宙流俳句会』主宰。1976年広島県東広島市安芸津町木谷生まれ、同町在住。句歴26年

総評

今回も全国から沢山の句を頂き感謝を申し上げます。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです。

以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句は、大小の対比の効いた詩的真実の句。
入賞句の「マスゲーム」は、批評精神と俳味の効いた句。
入賞句の「病床」は、希望・喜びを美しくさわやかに読み上げた一句。
特選Aは入賞候補として残っていた句。
特選Bは原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「俯せの太陽背負う蟻の首」(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)

多くの人はこのような句を見たときに、「俯せなのは蟻だ」とどうしても現実に引き寄せて解釈するのであるが、もしそうであれば「太陽背負う俯せの蟻の首」と詠めばよい。
そうすれば意味もしっかり通り、内容にあった破調の迫力も出て一般的には立派な句になる。
このような俳句が出てきたときに、上記のように添削してしまう先生もいるであろう。
しかしながらそうすると、意味や内容の分かりやすさ(論理)と引き換えに、詩としてもっとも大事な「感動・実感」が失われ、抜け殻のような傍観の句になってしまう。
この句の場合、何と言われようと「俯せ」なのは書かれてあるとおり「太陽」でなければならない。
地面にべったり貼りつく熱く大きな「太陽」、それを一身に背負うか細い「蟻の首」だからこそ、「夏のすさまじさや小さな命の生命力」が実感されるのである。
さらに注目すべきは、人間が感覚的に把握できるもっとも大きなものの象徴である「太陽」を、もっとも小さなものの象徴である「蟻の首」がしっかり受け止めている点である。
すなわち現実的には釣り合うはずのない力関係を一句の中で拮抗させている「詩的真実」である。
これによって句から、「カタチあるすべてのモノは仏となる性質をもっている(空海)」ではないが、例えば大も小もなくその「本質は同じ」というような真理のようなものまでもが感じ取れてきて、共感を誘う。
見えるもの(太陽・蟻・A)を詠むことで見えない世界(真実・非A)を伝える奥行きのある宇宙流の見事な一句。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
俳句は詩であり韻文。論理や意味にとらわれず「無意識からの表現」を大切にする。

入賞

「マスゲーム東へ西へ蟻走る」(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)

「マスゲーム」とは多くの人が集まってダンスや体操などを行う一斉競技のこと。
集団行動の象徴のような「蟻」に思いを馳せていたら「マスゲーム」が不意に浮かび「これだ」と思われたのであろう。
「マスゲームと蟻たちのイメージの重なりの面白さ」、そこまで実感できれば俳句は詠めたも当然で、575の器にポンと盛ればよい。
すると後はただ読者がイメージを楽しむ時間、となるわけである。
「蟻の様子をマスゲームのように捉えた句」ととれなくもないが、そうであればいかにも浅い。
そうではなく、人間社会を「マスゲーム」と捉え、何かに翻弄されるそのせわしなさを「走る」あたりで詠んだ「批評精神」の句ととりたいし、この句のよさもそこにある。
また「東へ西へ」と、現実から飛躍して空間を大きく表現した「大胆な詩的把握」にある。
表面的には、「マスゲーム」をする人間たちと集団行動をとる「蟻」の様子が似ていることのおかしさが詠まれているのであるが、味わっているとおかしさを通り越した人間社会の愚かさまで感じ取れてきてドキッとさせられる。
自分の意志で行動していると思っている人間たちであるが、流行や広告などに流されているだけだったり、欲望のままに走り回っているだけだったりと、それは例えば無条件に甘いものに群がってせわしなく動き回っている「蟻」たちの様子とあまり変わりがないのかもしれない。
平凡な句のようでいて批評精神と俳味(おかしさ)に溢れた真実を伝える軽妙な一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
俳句のおかしさ面白さは詠もうとして詠むものではなく、結果として滲みでる。

「病床の風を入れ替ふ蟻の道」(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)

なんともさわやかで美しい一句である。
現実的には衛生的な病室に蟻の列はそぐわないので、自宅療養あたりでの句となりそう、などと、必死に現実に寄せて解釈したがる方も多いであろうが、「上五中七」と「蟻の道」を取りあわせた句として味わえばどちらでも問題ない。
解釈というものは良いと思うほうにとればいいので、ここでは、「蟻」の黒が生きる白のイメージが強い病室での句ととる。
作者はどちらかと言えば現実に即した手堅い伝統的な詠み方をする方。
過去の選評でも「詩にもかかわらず現実を現実のままに詠んでいて惜しい」などと厳しいことを述べてきたのであるが、この句には大変な進境が見てとれる。
気持ちが塞いでしまいがちになる病室、その窓がパッと開かれ風が入れかわるさわやかさ。
窓や「風」のイメージによるものであろうが、「蟻の道」が床や地面などではなく、なぜか部屋の窓から天のかなたに向けて続いてゆくような気分が感じ取れてきて、実に明るい。
「入れ替ふ」という響きも「蟻の動き・鼓動・生命力」に合っている。
直接感じることのできない「生への希望・喜び・生命力というような(虚)」を、しっかりと見える「蟻の道(実)」によって、美しく伝えている世界観が共感を誘う。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
実(見える世界)は虚(見えない世界)のためにある。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・蟻の道少し先行く父の顔(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※昔は似ていないと思っていましたが、だんだん似ている事に気づき、同じ道を通っているのだと思います。
→進境が感じられる句。作者の意図のように解釈するのは少々厳しいがそうとれなくもない。いずれにしても上五・下五のつり合いがよく、中七の詠みなど甘いところが影を潜めた。このようにモノとモノの関係性に重心を置いて詠まれるとよいであろう。佳句。

・夏空や蟻の這い出す人工島(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※子供時代、私の町では瀬戸大橋を作る工事が長年に渡り行われました。大きな事故もありました。土を掘り海を埋め巨大な建造物を作り出す。容赦ない夏空、労働者の姿。
→「夏空」に象徴される古今なく悠遠な風景から一転、「人工島」から這い出す「蟻」がなんとも考えさせられる。役者(モノ)はそろっているので、解釈はそれぞれの読者にゆだねればいいであろう。ちなみに「夏空」も「蟻」も季語なのであるが気にならない。上手い句である。佳句。

・蟻の列明朝体で絡まりて(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※蟻のお題が出たので観察していたら蟻の集団が明朝体の集まったものに見えてきてまるで幼児番組のアニメみたいだと思いました。
→面白い把握である。私の句の「うすごおり明朝体の乳房かな」が思い起こされた。この句の場合どこか座りが悪い。「蟻・明朝体」と役者はそろっているので舌頭千転してみたい。「明朝体からまっている蟻の列」など。参考に。

入選句

特選A

・蟻塚に射し込む星の停留所(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→星が蟻塚を停留所としているというような意味の句であろうか。いずれにしてもそのメルヘンチックな世界観が美しい。好句。

・緑青や蟻かたわらに蔦のびて(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
→緑青は銅が酸化し生成される青緑色の錆のこと。銅像をそのようにうに表現したのはたしかに面白いのであるが、やはり少し抽象的なようである。しかしそうかと言って「銅像や」では味気ない。このあたりの関係性をどうするか。作者の課題としておこう。ちなみに「蔦」は秋であるが問題ない。

・黒蟻の行きつ戻りつ朝刊紙面(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→大変おもろい句である。下五の字余りも大変気分が出ている。どこかしら類想感があるのが惜しかったか。好句。

・蟻や影映して夜の枕もと(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
→上五あたりの把握など、借り物ではない自分の実感・自分の表現を大事にしようとしている姿勢が伝わるすばらしい句である。このように役者がそろった(蟻・影・夜・枕)場合は、言いたい事にとらわれず舌頭千転したい。「蟻の影はりつく夜の枕かな」あたりでも気分が出そう。

・蟻の列飛騨天領へ続く道(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→「蟻・列・道」の重なりがつきすぎというか現実に重心をかけてしまっていてやや惜しかったが、骨格のしっかりしたカッチリした詠みぶりに安心感がある。佳句。

・たまに狂う母が見ている夜の蟻(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→認知症の母を詠んだ句なのであろうが、何かしら女の情念のようなものまで感じられてくる。「母が」は「母の」くらいのほうがよさそうであるが、このくらいの詠み手であればその好みにまかせよう。

・一匹の蟻に傾く大伽藍(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→大小の対比の句。どことなく「蟻の穴から堤も崩れる」ということわざが連想されてくるところや類想感が少し気になる。で詠み方は上手い。

特選B

・大蟻の黒くひかりて夏の空(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
→季重なりがどうこうというより、どうも全体的に類想感があるところが惜しい。自分だけの実感を掬うようにしてみたい。

・病室のこぼれ薬に蟻二匹(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
→なかなか象徴的な句である。中七が「~に」と説明的なので、作者の意図とは少し違うかもしれないが「病室の薬こぼるる蟻二匹」など響きを整えてみたい。

・蟻の穴言いたいことが溢れ出す(ペンネーム「登るひと」さん 35歳)
→面白い把握で成立している句であるが、やはりこのような直接的な表現は俳句では控え、モノに語らせるようにしたい。

・蟻の道飲み込んでゆく飛行船(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→蟻の道と飛行船、実風景か心象か取り合わせか、いずれにしてもこののびやかな気分が楽しい一句。

・蟻の列完成したるピラミッド(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→ピラミッド建設に向かう列を蟻の列と重ね見たという句であろうが、そういった理屈的・意図的・作為的なところを引っ込めたい。俳句は短いので作為を出すとそれが鑑賞の邪魔になってしまうのである。無意識から詠むようにすればさらによくなりそうである。

・太陽の色を吸い込み蟻の穴(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→なかなか面白い世界観である。sかし「穴。吸い込む」はやはり日常の言葉の展開で飛躍がない。少し類想感があるのも気になるところ。そのあたりが課題であろうか。

・蟻の列見つめ続けて午睡して(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→どことなくぎこちない詠み方であるが、借り物ではない自分の言葉で表現しようとしているところが大変よい。しかしながら「~して~する」と普通の文章のような表現をとっているところをどうにかしないといけない。こういう方は詠んだ句の意味にとらわれず、句中のモノで再度リズムを整えるとか、取り合わせを試してみるとよいであろう。

・スタートラインゆるり横切る蟻の列(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
→なかなか気分の出た句であるが、「ゆるり横切る」が惜しい。「ゆるり」などを持ち出すところに作為が感じられて鑑賞の邪魔になる。「スタートライン横切ってゆく蟻の尻」など素直に詠むほうがよさそうである。

・大空のエンジン音や蟻の群れ(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→天地の対比であるが、この場合エンジン音の存在が具体性に乏しく惜しい。「戦闘機空にはりつく蟻の群れ」などしっかりとモノを打ち出して詠むようにしたい。

・蟻の列またいで鬼女の帰る家(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
→どことなく昔ばなしのワンシーンのような句で、蟻の列と鬼女、その関係性を読み解く面白がある。しかしながら「~して~する~」と、モノのキャスティングではなく脚本を書いてしまっているところがこの句の弱さ。俳句は短いので短歌的発想を捨てなければいけない。そのあたりが課題。

・独り居に雲の流れて蟻の列(ペンネーム「そら」さん 58歳)
→気分の出た句である。説明をさけ響きやムードを優先した韻文の立場で句を詠んでいるところがよい。「独り居の」とすればさらによくなりそうである。この方向で。

・サバンナの空行く風や蟻の道(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→私の随分昔の句に「サバンナを駆ける旅ありホウセンカ」があったと思うが想起された。「サバンナ・蟻」まではなかなかのキャスティングなのであるが「サバンナ・空・風」とたたみかけられるとイメージが重すぎである。そのあたりのつり合いがとれるとよくなるであろう。

・天穹の継ぎ目に向かう蟻の列(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→大きな句なのであるが、俳句で大事なのは何が詠まれてあるかではなく、詠み方・効果である。その意味で「列・向かう」という措辞の展開が、どうにもあたり前で詩にならず惜しい。「天穹の継ぎ目はためく蟻の列」などなら言葉の展開に意外性があり詩になる。参考に。

・足跡を万里に残す蟻の群れ(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→どことなくできているようで全体的に惜しい句である。やはり「万里」だけでは具体性に乏しいので、意図とは違うかもしれないが「万里の長城」など具体的なモノを出したい。「足跡・残す・群れ」などの言葉の展開も当たり前なので気をつけたい。このあたりが分かるようになれば進歩である。ここからの句である。

・奇兵隊の案内板に蟻九匹(ペンネーム「東広島の七十爺」さん 75歳)
→なかなかしっかりしたモノ句である。句としてはここまでできたら「奇兵隊の案内板や」と切って整えてみたい。この方向で。

入選A

・ありのすやむしぱん切っただんめん図(ペンネーム「モッツァレラ2号」さん 8歳)
→発見の句である。この方向で。

・太陽を背負う就活蟻の列(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
→気分はよく出ているが、意図的・作為的で惜しい。無意識からの作句を心掛けたい。

・蟻の列眠らない都市の住人(ペンネーム「皓月」さん 18歳)
→俳句は短歌ではないので言いたい事や気持を詠むのは苦手である。何かを言おうとせず、モノに語らせること。モノに託して詠むようにすること。

・通学路どこに向かうや蟻の列(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
→「どこに向かうや」は作者の言葉、これをなんとなくでもモノに語らせたのである。「通学路東に向かう蟻の列」など。

・苔茂る石段に蟻来たる去る(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
→「下五」の詠み方が面白い。しかして現実をそのまま報告したようなところが惜しい。詩なので飛躍したモノの関係性をみてみたい。

・独房の畳の隙間蟻の列(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→俳句で大事なのは、何が詠まれてあるかではなくどういう効果を生んでいるかである。その意味で独房であろうとレストランであろうとそれは問題ではない。この句の問題は詠み方である。「独房の畳の隙間(をゆく)蟻の列(がある)」とすれば分かるであろうか。このような舌足らずな措辞は散文の省略であり韻文ではない。「独房の畳の匂う蟻の列」などなら分かる。そのあたりの感覚をつかむことが急がれよう。

・山蟻や花を手向ける空近し(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→美しい世界であるが、大事なのは一句の効果である。その意味でモノに託して詠むというよりは脚本的になっているところが惜しい。

・栄誉礼受ける女王と蟻一頭(ペンネーム「中岡秀次」さん 42歳)
→かっちり詠んであるのであるが、感動の在処がどうもよく伝わらない。傍観ではなく対象とひとつになって詠むようにしたい。

・首傾げ蟻は空へとひとりごと(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→全体的に説明的・脚本的で惜しい。作者が蟻を語るのではなく、蟻(モノの様子)に語らせるようにしたいのである。

・波止釣りの竿先に蟻潮を待つ(ペンネーム「今日も晴れ」さん 43歳)
→全体的に説明的なのが惜しかったが、楽しい気分がよく出ている。

・だまし絵の階段静か蟻の列(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
→だまし絵と蟻はよいキャスティングであるが、詠みが韻文になっていないのと、作者が「静か」と語ってしまっているのが惜しい。「だまし絵の階段沈む蟻の列」など。モノ(モノの様子)に語らせたい。

・走る蟻赤き夕空見上げずに(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
→モノのキャスティングではなく脚本になっているところが惜しい。

・晴天やコンクリ砕く蟻の顎(ペンネーム「おんちゃん。」さん 51歳)
→「顎・砕く・コンクリ」の関係性が日常的であたりまえで惜しい。

・五月雨の子守唄聴く蟻の家(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
→やはり一句の世界観が観念的であるのと説明的であるところが惜しい。何かを言うのではなく、モノを据えて詠むようにしたい。

・廃線の枕木を行く蟻の列(ペンネーム「「雅」みやび」さん 55歳)
→「廃線・枕木・行く・蟻・列」この言葉の関係性が圧倒的に近く詩にならない。詠んだ翌日などにこういうところを整理してみるとよい。

・沙漠行くキャラバンの影月の蟻(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→「砂漠(を)行くキャラバン(隊)の影(がある)月の(表面にすむ)蟻(のようだ)」的な詠み方は散文の省略の連続であって韻文ではない。それにいろいろ思いや様子を述べるのは短歌までならよいが、短い俳句には向いていないので避けるようにしたい。

・軍服の足並み高し蟻の列(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→句の響きはよさそうであるが、やはり「蟻の列・軍隊」はイメージが近く類想感があり惜しい。

・潮解けて溺れる蟻は捨てておく(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→独自の世界観を持っておられるようである。この句はやや観念的で惜しいが、もっと見たみたい方である。

・蟻塚や暑きドバイのビル眩し(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→「蟻塚・ドバイ」はなかなかのキャスティングであるが、「眩しい・暑い」と作者が語ってしまったのが惜しい。こういうところをなんとなくでもモノに語らせるようにしたいのである。「蟻塚やドバイのビルの黒き窓」など。参考に。

・蟻の塚見てたまんまの膝で寝る(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→観念的というか短歌の上の句のようで惜しい。何かを言おうとせず、モノを据えるようにして詠みたい。

・黄昏に蟻の群行く家路かな(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
→こういうところは目をつむっても「黄昏の」としたい。これだけで説明的な気分から解放され詩情磁場が強くなる。

・木もれ陽の清けし線を蟻の列(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→中七など言い過ぎであろう。。原句のような発想は短歌に近い。「木漏れ日をふちどってゆく蟻の列」くらいで詠むのが限界ではないか。

・ぎんが行待合室や蟻の国(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→メルヘンチックな句であるが、俳句で大事なのは何を詠むかではなくどう詠むかである。その意味でこの窮屈な上半身はどうにかしたい。何かを言おうとしないことである。句中の素材を活かすなら「蟻の国たゆたっている銀河かな」などもあるであろう。参考に。

・酩酊の蟻掬ひだす砂糖壺(ペンネーム「あいむ李景」さん 66歳)
→「蟻・砂糖」「壺・掬う」など、世界観が日常的で詩になりにくく惜しい。そのあたりを整理したい。

・絶望の果てに旅立つ蟻の船(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
→気持ちや気分はよく出ているが、やはり言い過ぎである。直接語るのではなく、モノやモノの様子で伝えるようにしたい。

・ビスケットの空缶蟻の城となる(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→「ビスケット・空缶・蟻・城」と並べてみれば、語から語への展開があたり前であることが見て取れよう。もう少し飛躍したモノとモノの関係性で詠むようにしたい。

・甲冑を着込んで蟻のアマゾネス(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→やはり説明であるし、頭でこしらえた意図的な句である。それに「蟻・甲冑・アマゾネス」と並んでしまうとどうしても世界観が近くものたりない。熱心な作者であるので、自分の世界を模索されているのであろうか。

・蟻の道なんとややこしこの世かな(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→前回の大賞句の方向とはちがって全くいただけない。俳句は何度も申し上げているように作者ではなく「モノで語る」ものなのである。

・蟻載せて種子島から飛び立つ日(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
→出来事を述べているのが惜しい。俳句は脚本ではなく、モノとモノのキャスティングと思いたい。

・蟻千匹背負いつ草引く梅雨晴れ間(ペンネーム「みよこ」さん 71歳)
→気分のよく出た句である。このような把握で問題ない。やや日常的なのが惜しいが、まずはこの方向で。

・蟻んこやヒップホップの娘たち(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→独自の把握が光っている。この方向で。

・青天の一日始まり蟻の列(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
→詠みはカッチリしているが中七など説明的でよくない。「青天の先頭を行く蟻の顔」など。参考に。

・蟻の道入校児らの登校路(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→「蟻・道・路」んどイメージの重なりが惜しかった。そのあたりを気をつけたい。

・蟻の列飛行機雲に続きおり(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→「続いている」というのは説明である。「蟻の列吸い込まれゆく飛行雲」くらいか。

・峠に建つ道路標石蟻走る(ペンネーム「木村善光」さん 82歳)
→少し世界観が日常すぎるがカッチリした詠み方に安心感がある。

・通りすがりのアリ一匹や水曜日(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)
→軽く詠まれてありいいのであるが、感動の在処がよく伝わってこないのが惜しい。水曜日の必然性が感じられない。そこを攻めたい。

・就活や働らき蟻を見るベンチ(ペンネーム「華みづき」さん)
→類想感があるのが惜しい。「働らき」は「働き」でいいだろう。

入選B

・かまきりもアリの大群かなわない(ペンネーム「青りんごくん」さん 13歳)
・虫眼鏡蟻雨宿り梅雨の路地(ペンネーム「ヨーダ」さん 19歳)
・風甘し一万匹の蟻の糞(ペンネーム「竹伍」さん 26歳)
・蟻列すスイカ頬張る子らの下駄(ペンネーム「くまくま」さん 32歳)
・掃きたての畳の上の忙し蟻(ペンネーム「さきのすけ」さん 36歳)
・立ち止まりゆたゆたゆれる蟻の顔(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
・蟻たちがつなぐ未来と思い出よ(ペンネーム「なお」さん 40歳)
・掃除時蟻の活動見つけたり(ペンネーム「HK」さん 42歳)
・蟻の性格は甘い物落とすと違ってくる(ペンネーム「タケちゃん」さん 43歳)
・蟻の句に一生懸けた男達(ペンネーム「マリオネットキヨタカ」さん 43歳)
・賑わいの蟻巣に集い夢語り(ペンネーム「橋田ちゃげ子」さん 43歳)
・蟻動くアイスの棒に群がって(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・足場熱蟻も一匹通さない(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・睡蓮の蟻の声にも雨が降る(ペンネーム「放送きよたか」さん 43歳)
・見かけるよありさんたちって何なのか(ペンネーム「わた」さん 44歳)
・争いの日や知恵比べ蟻の勝ち(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・巣のまわり働き蟻の勇み足(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・蟻浮きし水たまりの波紋かな(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
・甘い罠見つけて集る蟻一派(ペンネーム「ジジププ」さん 48歳)
・スクランブル交差点のなかの蟻(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
・石段や天の届くか蟻の列(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
・見くびるな蟻の一途さひたむきさ(ペンネーム「ナギさん」さん 54歳)
・蟻の巣を壊してみては半笑い(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・大寺や気色だつ蟻ものがたし(ペンネーム「白湯」さん 56歳)
・動くもの吾子追いかけて蟻の穴(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・秋口にせみに亡き骸運ぶ蟻(ペンネーム「やっちゃん」さん 58歳)
・引き抜いた根から吹き出す蟻千匹(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・ちゃぶ台の蟻ひとすじに夏みかん(ペンネーム「ミーママ」さん 60歳)
・砂利の蟻歩みを止める終電車(ペンネーム「ヨシ整体」さん 60歳)
・蟻座どこ首もたげみる風呂上がり(ペンネーム「ラジャーナイン」さん 61歳)
・アリ上る取り残したる梅の実よ(ペンネーム「川柳太郎」さん 61歳)
・あの日旧中島町は蟻も死す(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・紫陽花にアリ雨宿りしとしとと(ペンネーム「ウルトラヤン晃」さん 63歳)
・猛暑日に木陰で涼む蟻一匹(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・蟻の愚痴ひねもすひとり聞いてやる(ペンネーム「松廣李子」さん 63歳)
・蟻たちが元気くれそな昼休み(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・蟻の巣の自由研究ガラス鉢(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
・どうしても蟻にはなれぬ吾であり(ペンネーム「ぐずみ」さん 68歳)
・大蟻が勝手口にて集団で(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・どこまでも夫の仕業アリの行列(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・吾子の眼のこぼれるほどに蟻の列(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・忙しなく競歩よろしく蟻の道(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・首かしげ南国ホテル蟻の大群(ペンネーム「のぶさん」さん 70歳)
・リーダーの資質いかんや蟻の列(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・Baliの蟻帯なる先に飴ひとつ(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・我が畑蟻這い回り地上絵かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・青函や昭和の蟻の遺産かな(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・洗い桶滑りはせぬかはぐれ蟻(ペンネーム「蛍子」さん 75歳)
・勤勉を家訓とするや蟻の道(ペンネーム「かっちゃん」さん 77歳)
・青畳蟻一匹の迷路かな(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
・我も又ふと立ち止まり蟻の道(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・蟻の列蝶浮かべて急ぐかな(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)

ユニー句(句)

・背は高いだけど度胸はありんこよ(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・元気有有田優里香とここに蟻(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・蟻が寄る我が加齢臭甘いのか(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
・イケメンの甘いマスクや蟻まみれ(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・蟻御殿レアなスイーツいただきたい(ペンネーム「青りんごママ」さん 48歳)
・サイン会並ぶ様子は蟻みたい(ペンネーム「はっちゃん」さん 53歳)
・アーリーちゃん 女王蟻には逆らえず(>_<)(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・蟻のよう母に手抜きの無い暮らし(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・駅弁についてる蟻の移動距離(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・ありさんはイヤだ目指すはキリギリス(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・蟻たちに教えて貰う人生観(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・アリ浴びの烏その後アリを喰い(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 73歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

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