テレビ派

コーナー紹介

俳句道場

放送日:2018年10月17日(水)

第99回 お題「林檎」(選と評 谷村秀格先生)
総評

「知に働けば角が立つ、情に棹させば流される、意地を通せば窮屈だ、とかく人の世は住みにくい」これは夏目漱石の『草枕』の冒頭。
ふとこれは俳句のことではなかと感じました。
俳句は自由でどう詠んでもいいと思っている方も多いようですが、それぞれの形式には向き不向きがあり、それ故にそれぞれの存在意義があります。
一言で言ってしまえば、俳句はまさに、知(意識・論理・理屈による表現)・情(感情・ココロの直接表現)・意(我・個性的であろうとすること)、を排して詠まなければならない「託し詠み」の詩型なのです。

「託し詠み」とは、言いたいコト・ココロ・気持ちを言葉で直接詠まず、モノ(情景)に託して詠むことです。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分(ムード)が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の林檎汁は産後の感激をあますところなく伝える句。
入賞句の朝市は音で攻めた句。
入賞句の稚児の頬は視覚で攻めた句。
特選Aは入賞候補に残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高い句。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

俳句道場は、調べればわかるような季語や言葉の知識を教える場ではなく、一句そのものの芸術性(感性)を鍛える場ですから、モノ「林檎」周辺を詠んでいただいておれば、夏の季語である「青林檎」などでも良しとしました。

今回も全国から沢山の句を頂き感謝を申し上げます。
ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「林檎汁口いっぱいの産後かな」(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)

作者によると、初めての妊娠・出産の緊張感、帝王切開前後の絶食・絶飲を経て、初めて口にした林檎汁(ジュース)のおいしさ、その感激を詠んだ句とのこと。
特に解説の必要もない大変気分の出た分かりやすい句である。
「口いっぱいに広がる林檎汁の甘酸っぱさ」に、出産時の言葉にならない感激・母親になった喜びや初々しさなどが、あますところなく象徴されていて共感を誘う。
特に優れているのは「口いっぱいの産後かな」という表現。
句の意味(頭・意識・理屈)だけを優先するのであれば、「初産後口いっぱいの林檎汁」とでも詠めばよいのであるが、これでは「初産後←→口いっぱいの←→林檎汁」という語と語の前後関係があたりまえ(散文的・説明的)で詩にならない。
無意識から湧き上がってきた表現(そんな気がする)を大切に「口いっぱいの←→産後かな」と、「←→」の前後の語と語の関係性にメタモルフォーゼ(変容・意外性・飛躍)を持たせて詠んだことで詩になった。
句は「口いっぱいの産後かな」をひと続きのフレーズとしても解釈できるように詠んであることで、直接的な意味のほか「赤ちゃんが大きな口を開けて泣いているような気分」や、言葉では言い尽くせない「出産前後のもろもろの感動の様子・空気感」のようなものまでをも引っ張ってくることに成功しており、イメージ豊かで味わい深い。
詩という言語はこのように、通常の言語・散文の感覚では伝えられない感動、言葉で説明しきれない感動、もろもろの空気感などを、一瞥で象徴的に表現できるのが強みであり、まさしく存在理由なのである。
無意識からの実感をモノ(情景)に託して詠んた佳句。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
語順以前に、無意識からの表現を大事にする。

入賞

「朝市の木箱のならぶ林檎かな」(ペンネーム「でこ」さん 52歳)

この句、意味(頭・知識・理屈・論理)にもたれて「正しく」詠むのであれば、「朝市の木箱の中の林檎かな」「朝市に林檎の木箱並べられ」などのほうがいいのであるが、これでは意味が伝わるだけでどうにもならない。
「木箱の並ぶ林檎かな」という表現は、先の案に比べて、「意味が」分かるような分からないような表現であるが、大変「気分」が出た表現である。
この句もこのように無意識からの表現(そんな気がする)を大切に詠んであるところがよい。
私はこの句は特に「音」が印象的に表現されているなと思って、大変共感を覚えた。
「朝市」の賑わい、そこに並べられてゆく「林檎の木箱」の音、そして「木箱」の中でコロコロと転がる「林檎」の音。
これらのハーモニーがいかにも明るく楽しく活気があり、「場」の臨場感が伝わってくる。
上手いのは「ならぶ」という動詞。
動きをイメージさせることによって、モノとモノがぶつかるような音、ひいてはイキイキとした生命力を引き出すことに成功している。
字面的には大きな情景から小景の林檎へズームアップされるような詠み方をしているだけなのであるが、このようにモノ(情景)をチョイスされると(関係性)、視覚より「音」の印象の方が伝わって引き立ってくるのであるから、詩というものは不思議である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
モノの並べ方(キャスティング・配置)で、世界が決まる。

「稚児の頬朝日に透ける林檎かな」(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)

先の木箱が「音」ならば、この句は「視覚」の句である。
まず一句の気分として、「朝日に透ける」のが「稚児の頬」「林檎」両方にとれるような詠み方が働いている。
そして、現実的・日常的には「透ける」ことのない「稚児の頬・林檎」を、詩的真実として「透かして」見せた手腕が見事である。
といっても、詩は突拍子もないことを言えばいいのかと言われればそうではない。
やはりこのあたりが「つかず離れず」のバランス感覚である。
例えば「朝日に溶ける」とまで言っていたら、やはり「言い過ぎ・飛躍のしすぎ」になろう。
すがすがしい「朝日」に照らされて、より輝きと透明感を増す「稚児の頬」と「林檎」。
その両者のイメージが次第に重なってゆくような気分に、秋の突き抜けるようなすがすがしさやさわやかさ、ひいては生命の輝きのようなものが感じ取れてきて、共感を覚える。
モノ(情景)を全面に打ち出して象徴的に詠んだ美しい一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
俳句は詩。言いたい事や意味ではなく「気分」が伝わればよい世界。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・北の空ひび割れている林檎かな(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※なし
→「北の空」「林檎」はイメージが近いが、何らかの不穏な空気を感じているのであろうか。「ひび割れている」に屈折した心境がよく表れている。好句。

・冬林檎父の秒針震えおり(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※去年、父のお見舞いに行った時、病室の林檎を見て浮かんだ句です。
→「冬・秒針・震える」はややつきすぎに感じられるが、お父さんの体調を気遣う気分の出た句。好句。

・姫林檎ハープ奏者の白き胸(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※我が家に姫林檎の鉢植えがあり、今が見ごろで真赤な実を付けています。そして、ハープの演奏者が胸に付けていた銀色のネックレスの輝きを想い浮かべ、詠みました。
→何かのメッセージ(意味)を伝えるでもなく、作者の言葉にもあるように「姫林檎」からの実感をただ掬ってきたところが大変よい。象徴的な美しい非日常感が惹きつける。佳句・好句。

入選句

特選A(入賞候補)

・太陽の指絡み合う林檎かな(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→「太陽の指」とは見事。赤い「林檎」が「太陽」の恩恵を充分に受けている気分を生々しく伝えていて共感を覚える。無意識からの実感を大切にするこの方向で。佳句・好句。

・絵ハガキのかすかに香る林檎かな(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「絵ハガキ」が香るのか、「林檎」が香るのか、「絵ハガキの林檎」が香るのか、いろいろにとれるところに詩としての夢うつつの気分がよく出ている。やや「林檎」の存在感が薄そうではあるが、これはこれで大変気分の出た一句であろう。佳句・好句。

・ヴィーナスの乳房の重み白のリンゴ(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
→意味・意図が伝わるように「正しく」詠んであるところが惜しい。詩は「気分」なのであるから「重み」などと「正しく」言う必要はなかろう。「ヴィーナスの乳房重たき林檎かな」など、ぼんやりと詠んでくれたほうがムードが出ると思うのであるがいかがであろうか。

・病床の白きシーツや林檎剥く(ペンネーム「洒落神戸」さん 51歳)
→世界観はいたってありありきたりなのであるが心を打つ。印象的な「白」の効果であろう。秋の気分も相まって生命の美しさ・透明感のようなものが伝わってきて共感を覚えるなかなか奥深い句である。佳句・好句。

・新りんご村ごと届く宅配便(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→「村ごと届く」というところに「りんご」の気分や感激がよく出ている。こういう無意識からの実感を大切に詠みたい。佳句・好句。

・籠盛の林檎窓辺に光編む(ペンネーム「斎乃雪」さん 56歳)
→「光編む」のは編み物をしている作者であろうか。籠から漏れる光であろうか。「光編む」という無意識からの表現が大変すばらしく詩になっている。しかしながら短い句の中でモノを言おうとしている在り方がやはり気になるのでそこをどうにかしないといけない。コト(出来事)ではなくモノ(情景・象徴)の方向に入ってきてほしい。好句。

・林檎落つ地軸の軋み遠く聞き(ペンネーム「吉良水里」さん 57歳)
→「落つ」→「聞き」が因果関係にあるようで、その意味で作為的・論理的なところが惜しいが、「林檎→地軸」の飛躍が素晴らしく詩になっている。目の前のモノによって普段意識されない何かを感じるというまさしく「詩的真実」の句である。好句。

・海行きのベンチに一つ青林檎(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)
→海の青・空の青・青林檎と青で攻めた。青春の一句であろうか。「海行きのベンチ」が絶妙の無意識表現。「海行きの/ベンチ」でもいいし「海行きのベンチ」とワンフレーズでもいいし、「海行きの(駅の)ベンチ」と解釈してもいい。こういうところに限定されない詩の気分が出ている。好句・佳句。

・すり林檎一匙分の命かな(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
→介護の句なのか、病気の人とのことを詠んだ句なのか、小さな子どもとのことを詠んだ句なのか。いずれにしても「匙一杯分の命」に眼前の人に対する言葉にならない気持ちが凝縮されていて心を打つ。好句。

・林檎狩り夕日の国の小人たち(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→「林檎」を「夕日」に見立てたという句であれば浅い。「夕日の国の小人」が「林檎狩り」を楽しんでいるという心象句ととる。俳句は嘱目でも心象でもいいので、このようにモノ(情景)に託して詠んでくれればいい。楽しい気分の託された句である。佳句・好句。

・芳香のふる里詰める林檎箱(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→「林檎」を送っているときの心境であろうか。「芳香・林檎」がややつきすぎで惜しいが、「ふる里詰める」に大変ムードが出たあたたかな句である。

特選B

・林檎摘む大き袋を持ち帰る(ペンネーム「登りびと」さん 35歳)
→大変実感の伴った句である。一句全体の世界観がありきたりなのところが少し惜しい。

・太陽の首はねる女子りんご狩り(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
→「太陽の首はねる」とはドキッとする。屈折した心境の句であるが、こういう無意識からの実感を大切に詠んでいただければ間違いない。できている。

・青りんご噛んで白衣の保健室(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→「青りんご・保健室」はなかなかの取り合わせなのであるが、「青りんご→噛んで」「白衣→保健室」とどんどん句を平凡にしていっているところが惜しい。キャスティングが成功しているのであるからはじめの発想に執着せず「青りんご風ふきぬける保健室」など素材を活かして詩にもっていきたい。参考に。

・仏壇の林檎袋に沈みけり(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)
→仏壇の林檎を袋に入れて持って帰ったという句であろうか。「沈みけり」に何かしらの実感が出ているのであるが、「仏壇・林檎・袋」のモノの関係性が近くありきたりで詩になりにくい。はじめの発想にとらわれず「曼荼羅の夜風に沈む林檎かな」などモノのキャスティングを大事に詠みたい。

・鋭角の画家の描いた林檎かな(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→独特の心情表出の表現がユニークである。少々観念的でもあるが「鋭角の」が「画家・林檎」両方に掛かるようなところがなかなか味わい深い。

・息止めて林檎を掴む象の鼻(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
→動物園での句であろうか。「息止めて」がよく効いている。意味的には「象」の様子を伝えているのであるが、その様子をまさしく「息止めて」作者が見ているような「気分」が出ているところが大変面白い。「~して~する〇〇」と説明的なところは改めたい。好句。

・齧られた林檎残る田舎駅(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→象徴的なムードが味わい深い。「齧られた林檎」がどうして「田舎駅」にあるのか、いろいろ想像を掻き立て面白い。「齧られた→林檎→残る」「林檎・田舎」など、関係性に飛躍がないところは改めたい。

・林檎落つ遥かな星の呼ぶ方へ(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→短歌の上の句のようなところが俳句としてはモノたりない。モノ(情景)ではなく、コト(出来事)を詠んでいるところが惜しいのである。短歌までの詩はコトやココロを詠めるのであるが俳句は短いのでそれが向いていない。よってモノ(情景)を全面に打ち出して託して詠む(情景・象徴)のである。参考に。

・林檎熟れローカル線の老夫婦(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→「林檎熟れ・老夫婦」と「熟」のイメージで攻めたところが少しくどいが、「O」音のうねりが大らかで楽しい。

・青空に両手差し入れ林檎もぐ(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→世界観がありきたりで惜しいが、実感を上手くつかんできてくれた。大らかでのびやかな気分に共感を覚える。好句。

・ジーパンに擦る林檎や夜行バス(ペンネーム「りりこ」さん 60歳)
→青春の一句という感じの句である。原句は「に」となっているが「ジーパンで」のほうが素直であろう。好句。

・林檎園星の数ほど星明り(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→幻想的な句である。やや作為的なところが惜しいが「星明り」を「星の数ほど」と感じたことはないので新鮮。感性の冴えた句である。

・リンゴ園一番星が煌々と(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)
→上の句とたまたま「林檎・星」で重なったが、こちらは素直。「星→煌々と」では言葉の並びがありきたりすぎて惜しいのであるが、何かを伝えるでもなく、心に留まった情景をさらりと詠んでくれたのがよい。希望のようなものが感じ取れる句になっている。

・大連の林檎畑や眠る父(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
→戦中戦後あたりの時代性を感じる地名をもってきた大きな句である。「眠る父」は「父眠る」のほうが座りがよさそうである。好句。

・日本海軋む船底林檎箱(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
→「日本海」を通って運ばれる「林檎」を詠んだ句であろう。荒波に運ばれてゆく「林檎箱」の気分を上手くつかんでいる。やや句が窮屈なので「日本海軋んでおりし林檎箱」などもあろうか。参考に。好句。

・まなざしに紅深みゆく林檎園(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→林檎農家の「まなざし」の気分であろうか。濃くなる赤に感慨がよく出ている。好句。

入選A

・林檎落つ枝の月夜へたゆとうて(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 19歳)
→幻想的であり詩的で美しい。ただし詠みが短歌の上の句のようになっているので、コト(出来事)ではなく、モノ(情景)で詠むようにしたい。

・雨宿りスタバでかじるリンゴかな(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
→「スタバでかじるリンゴ」は、なかなか非日常感。しかしながら「雨宿り」がくると、タネを明かされた手品を見るようで感激が薄い。「雨宿りした」というコト(出来事)ではなく、「夜の雨」などモノ(情景)にすると一段象徴的になろう。参考に。

・くるくると回る林檎の銀ナイフ(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
→「銀」が効いていて何かしらの緊張感が感じられる句である。と言っても一句の世界観がややありきたりで惜しいので、はじめの発想にとらわれず「地軸かな」など飛躍してみるのもいいだろう。参考に。

・林檎剥くあしたの午後のデビュー戦(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→「デビュー戦」前日の高ぶった気持ちがよく感じ取れる。モノ(情景)を詠むというよりは、思いを詠んでいるようなところが惜しいので、そのあたりを気をつけたい。

・宇宙ごと丸かじりする林檎かな(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→「宇宙・リンゴ」を重ね見た句で大らかである。飛躍しているのであるが飛躍しすぎた感じが安易に受け取られやすく惜しい。俳句はそのあたりのつかずはなれずが難しい。

・買い物カゴ林檎沢山集まって(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
→買い物のうきうきとした気分が感じ取れるが、一句の世界観がありきたりで惜しい。そのあたりを攻めたい。

・林檎売り見上ぐ高層タワーかな(ペンネーム「マネレ」さん 44歳)
→軽トラで田舎から林檎を売りにきた人を詠んだ句であろうか。あまりない世界観ではあるが「見上ぐ→高層タワー」となっては表現がありきたり。そのあたりを攻めたい。

・喧騒に林檎の香り紛れおり(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→ふとした香りに秋を感じたいう句である。「~に~が~した」という説明になっているのが惜しいので、そのあたりを気をつけたい。

・走り書の林檎と読める送り状(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
→小さな実感を掬ってきた。やや「林檎」の存在感が乏しいのと感動の在処がよくわかないようなところが惜しいが、詠み方は慣れている。

・重い口開き始める林檎ジヤム(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
→人の口かと思えばジャムの口だという驚き。なかなかユニークな句である。しかしながら「口・ジャム」はあたりまえの関係。そのあたりを攻めたい。

・りんご齧る集団就職生きた父(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→「父」への思いの伝わる句であるが、概念ではなく、モノ(情景)で詠むようにしたい。

・彼からの指輪を外し林檎切る(ペンネーム「大槻税悦」さん 50歳)
→少々ドキッとする意味深な句である。コト(出来事)を詠んでしまっているところが惜しいのでモノ(情景・象徴)に持っていきたい。好句。

・大鍋に煮て金色の香の林檎(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
→台所の鍋で煮る林檎なので全体的な世界観がありきたりなのであるが、大らかな気分の句。「金色の香」という無意識からの表現が光っている。好句。

・太陽のしあわせ浴びている林檎(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
→喜びの感じられる句である。「しあわせ」などは言葉で直接いうものではなく読者にイメージしてもらうものなので、「太陽の包み込んだる林檎かな」などモノ(情景)に託して詠むようにしたほうがいいだろう。

・去年よりすこし小さく切る林檎(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→介護などの句であろうか。なかなか意味深である。モノ(情景)ではなくコト(出来事)を詠んでいるところが惜しいので、そこを気をつけたい。

・大道芸林檎のひとつをずっと追う(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→不思議がる気持ちを詠んだ句である。モノ(情景)というよりも、「林檎のひとつをずっと追う」というコト(出来事)を詠んだところが惜しいので、そのあたりを攻めたい。

・朝日射し厨の林檎紅き艶(ペンネーム「是多」さん 64歳)
→朝見た林檎の美しさ、その感激の伝わる句である。「~し~の〇〇がどんなだ」というコト(出来事)を述べた句になっているのが惜しいので、「朝日さす厨の籠の林檎かな」などモノ(情景)にもっていきたい。

・童謡に赤子の寝息りんご剥く(ペンネーム「藤田政枝」さん 66歳)
→この手の詠み方の句をよく見かけるがこれは俳句というよりも散文の切れ端である。「童謡(が流れているところ)に赤子の寝息(がしている。それを聞きながら私は)りんごを剥く」という引き算の構造だからである。私であれば最初の発想にとらわれず出てきたモノ(素材)を活かして「リンゴ剥く音にもたれる赤子かな」などと詠む。俳句は引き算というよりもかけ算(モノ×モノ)くらいに思いたい。

・下り立てば一面染めし林檎園(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→リンゴ園の非日常感を詠んだものか。下り立ったというコト(出来事)の句になっているところが惜しい。「林檎園染めつくしたる靴の音」など、モノ(情景)にもっていくようにしたい。

・資本論の第一部読む林檎売る(ペンネーム「ぐずみ」さん 68歳)
→ユニークな切り口の句。「資本論」故に「売る」という表現が出てきたのであろうが、そういうところが作為的で惜しい。「資本論閉じられてゆく林檎かな」など、モノ(情景)で詠むようにしたい。

・リンゴ食べ思い出歌謡曲口ずさむ(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
→「~して~する」というようなところが説明的で惜しいがこれはこれで一句という感じであろうか。実感を素直に詠んだ。、気分の出た句である

・風やんで花筵めく林檎園(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→切り口が詩的で美しいが、「して~する」というような因果関係で詠んでいるようなところが説明的で惜しい。これはやはりモノ(情景・象徴)の句というよりもコト(出来事・報告)の句である。そのあたりを攻めたい。

・長く長く今日を占い林檎剥く(ペンネーム「ヒロリン」さん 70歳)
→林檎占いの句であろうか。「占った・剥いた」というコト(出来事)を述べた句になってしまっているので、「星占い剥かれつつある林檎かな」などモノをデンと据え象徴に詠むようにしたい。

・青い空真っ赤な林檎かぶりつく(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
→「青空の下林檎にかぶりついた」という句である。これはある意味ありきたり。これを「晴天にかぶりついたる林檎かな」などと林檎に空をかぶりつかせれば詩になる。参考に。

・林檎もぐ枝引いて空磨くごと(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→空を磨いているのかと思えば磨いていない。「ごとく」というのは「意識・大人・常識」の世界。詩なのであるから「青天を磨きつつもぐ林檎かな」など無意識からの実感をそのまま出すようにしたい。参考に。

・大空の星になるなり落ちりんご(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→祈りの気分の出た句である。「大空・星」などどうも言葉の重複なので「星になる林檎もありて陸奥の国」などとしてみたい。参考に。

・りんご園実ひとつ残るお燈明(ペンネーム「チックちゃん」さん 77歳)
→一見寂し気な気分であるがどこか明るい。「燈明のようだ」という比喩の句と取りたくはないが、中七の言い回しから比喩にしかとれないので「お燈明ひとつ消えゆく林檎園」などとしてみたい。消えるのが林檎園ともお燈明ともとれて詩情になろう。参考に。

・謎めける歯型残してリンゴ園(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→何かの動物にかじられた林檎であろうか。コト(出来事)というか報告の句になってしまっているので、モノ(情景・象徴)にもっていくようにしたい。

・赤りんご皮に秘めたる黒き闇(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
→意味深な句である。「赤・黒」のあからさまな対比がやや作為的で惜しいが、林檎の皮に着目するとは並々ならぬセンス。

・飛びさうな書類に一つ青林檎(ペンネーム「バイキンマン」さん)
→文鎮代わりに林檎をつかったという句であろうか。「書類にひとつ青林檎」まではいいが、そこに「飛びそうな」がくっくつと言い過ぎ・説明のしすぎになってしまう。仮名遣いは現在使われ将来も使われるであろう現代仮名遣いを使用して不足はないはずなのでここでは現代仮名遣いをお勧めしたい。

入選B

・遠くより訪れし林檎苦笑い(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
・青春の思考回路に浮く林檎(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 43歳)
・見切り品流されていく林檎の山(ペンネーム「沖縄キック」さん 43歳)
・名産品林檎配送忙しく(ペンネーム「新武相乱」さん 43歳)
・落下隊堕ちてく林檎危ないぞ(ペンネーム「溥儀清流」さん 43歳)
・ふるさとは遠くウサギに剥く林檎(ペンネーム「わこまま」さん 44歳)
・りんご熟れ真っ赤な箱のカープかな(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・林檎園来た子の頬が実のごとし(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・林檎の選び方なら知ってるのに(ペンネーム「小田寺登女」さん 47歳)
・ボディビルのシックスパックやリンゴ照る(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
・林檎の木とおせんぼして落ちもせず(ペンネーム「コンセプシオン6」さん 55歳)
・病なりりんご降ろしで母の愛(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・風邪ひいて祖母がこっそり擂り林檎(ペンネーム「西区のぺんぺん草」さん 55歳)
・隠し味ひと手間加えて擦る林檎(ペンネーム「いわえもん」さん 56歳)
・ひとり身に大玉りんご友を待つ(ペンネーム「さゆりん」さん 56歳)
・樹木希林林檎噛ってお別れに(ペンネーム「また駄目じゃろ」さん 56歳)
・籾殻も木箱もしらぬ林檎かな(ペンネーム「邯鄲」さん 57歳)
・黒檀に五線紙立てて姫林檎(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・赤りんご秋の夜長の丸かじり(ペンネーム「りんの」さん 58歳)
・バラ売りの林檎のほうから売れてゆく(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・孫の熱りんごの赤さ同じ頬(ペンネーム「けい」さん 60歳)
・泣きじゃくる赤子に見する林檎かな(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
・林檎剥き皮の長さを競いけり(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・満月や林檎うさぎが夜跳ねる(ペンネーム「9月の雨順子」さん 62歳)
・茶室へと露地の姫林檎ひかる雫(ペンネーム「瑠緒まま」さん 62歳)
・薬より祖母の笑顔と擦りりんご(ペンネーム「よさなしけ」さん 63歳)
・歳の差はなくて林檎の四つ割(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
・りんご剥き皮を持ち上げ拍手受け(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・生かされしゆえにシャキシャキ林檎めく(ペンネーム「松廣李子」さん 64歳)
・猛ダッシュリンゴのほっぺ孫とハグ(ペンネーム「グラン グラン」さん 70歳)
・罪深き男女の齧る林檎かな(ペンネーム「ヤチ代」さん 70歳)
・おいしいねひ孫のほっぺと赤りんご(ペンネーム「よっちゃん」さん 70歳)
・りんご熟れ青い地球も齧りたし(ペンネーム「寿人大好きばあば」さん 70歳)
・披露宴寿りんご配る父(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
・赤い服着れぬ継子の青りんご(ペンネーム「まあちゃん」さん 73歳)
・岩木山りんご可愛いと言う女房(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・信濃路や帰り待つ君紅林檎(ペンネーム「めぐちゃん」さん 78歳)

ユニー句(句)

・母さんのりんごかなでるヘビのたけ(ペンネーム「モッツァレラ二号」さん 8歳)
・鏡越し私の腹は毒リンゴ(ペンネーム「すいかレンジャー」さん 30歳)
・カープ勝ち街中まるで林檎園(ペンネーム「ころりん」さん 35歳)
・青りんごまるかじりして歯が折れる(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・赤林檎うさぎとなりて御供する(ペンネーム「ふくろう」さん 40歳)
・リンゴスタードラム叩いて林檎食う(ペンネーム「ディエゴきよたか」さん 43歳)
・ニュートンとりんご逢引き大宇宙(ペンネーム「ゆうちゃん」さん 45歳)
・林檎食う健康チェック出血なし(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
・今もまだ林檎と僕は青いまま(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・りんご狩り採った分だけ重くなり(ペンネーム「ピンチピンチチャンスチャンスランランラン」さん 47歳)
・毒林檎私に良い人連れて来い(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・剥きりんご酸化止まらぬ五十路かな(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
・どの林檎富士陸奥つがる僕椎名(ペンネーム「いわえもん」さん 56歳)
・キティちゃん体重リンゴ3個分(ペンネーム「たけの子」さん 59歳)
・給食にインド林檎の出た世代(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・ぶさいくな林檎もジャムでプレミアム(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
・子供らのリンゴ・スターは椎名さん(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・見かけないりんごほっぺの女の子(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・断乳の作戦その一りんご擂る(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・理髪店髭剃りあとの林檎肌(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・でこぶつけぶつけぶつけて林檎園(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
・庭のリンゴ人より先にカラス喰い(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 73歳)
・インプラント試しはリンゴ丸齧り(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
・りんご風呂美容にイイと母は言う(ペンネーム「ぼくちゃん」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年10月3日(水)

第98回 お題「運動会」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回も全国から沢山の句を頂き感謝を申し上げます。
この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたいコト・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです。

以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分(ムード)が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の「大空をゆく担架」は、英雄の気分のよく出た句。
入賞句の「五臓六腑」は、運動会全体の気分を体内感覚として実感した面白い句。
入賞句の「父走る」は、俳味(おかしさ)の句。
特選Aは入賞候補に残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高い句。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

気になったことは「運動会」を運動会らしく詠んだ句が大変多かったことです。
詩もニュースも日記もつぶやきも同じ日本語を使うので混同しがちですが、「俳句はあくまで詩」であり詩の原点は感動ですから、ニュースや日記のように「運動会」をただ説明したり、報告したりという世界とは似て非なるものと心得なければなりません。

感動は何も大きなことを詠む必要はありません。
無意識から湧き上がってきた実感(そんな気がする)、オリジナルな感動や気づき、小さな感動気づきを、モノ(情景)に託して詠んでいただければよいのです。
その意味で特選A以上の句などは大変参考になるかと思います。
どのような切り口・どのようなオリジナルな実感を掴んでいるのか味わってみていただければと思います。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「運動会大空をゆく担架かな」(ペンネーム「中山月波」さん 55歳)

リレーなのか騎馬戦なのか、熱戦の末負傷し「担架」で運ばれてゆく少年を詠んだ句。
句はなんといっても無意識からの実感を大事にし、運ばれてゆく少年を「大空をゆく担架」とモノの様子(情景)で詠んだところが光った。
句の表面には担架で運ばれる少年(モノ・情景・A)が詠まれているが、大きく・明るく・透明感ある「大空」のイメージが効果的に働いて、痛々しさなどではなく空に胴上げされるヒーローのようなイメージ(非A)を引っ張ってきているところが大変よい。
俳句の本領はこのように、句に書かれてある文言(A)が、字義的な意味を超越した豊かなイメージ(非A)を引っ張ってくるところにあるというのが私の「宇宙流俳句」の立場。
負傷した少年の頑張りで競技を制したのではないかというような様子、痛々しさに耐えながら運ばれてゆく少年が見せる笑顔、その笑顔に対する会場の拍手のようなものが感じとれてきて、共感を覚える。
俳句は何も難しげな言葉や凝った技法などを用いる必要はなく、この句ように自分のオリジナルな気づき・無意識から湧き上がった表現を大切に詠んでくれればいいのである。
Aが非Aを導く佳句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
状況(高々とゆく)より、情景(大空をゆく)のほうが象徴性(詩性)が高まる。

入賞

「運動会五臓六腑の大掃除」(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)

「運動会」の競技がつぎつぎに展開されてゆく(準備・競技・片づけ)せわしない様子を見て、「これは五臓六腑の大掃除だ」と感じ、迷わず詠んだ句である。
食物繊維や乳酸菌の豊富なものをとると腸の蠕動運動が意識されることがあるが、運動会の展開(ザーと準備され、ワーと競技が行われ、サーと片付けられる動き)の繰り返しは、腸の蠕動運動のようで、言われてみれば妙に納得感がある。
「運動会」のステレオタイプ(何らかのシーンを詠んだ句)がほとんどの中、「運動会」に新しいイメージ(おかしさ・俳味)を与えたところが大変光った。
無意識から湧き上がってきたオリジナルな実感(そんな気がする)を、自身の肉体感覚と上手くからめて詠んだ佳句である。
こういう時「体内を掃除するごと運動会」など、わざわざ「~のごとき」などを用いて詠む方がいるが、そうすると「体内」はあきらかな比喩になり、モノの存在感(パワー・位置エネルギー・ポテンシャルエネルギー)が乏しくなる。
詩なのであるから現実にとらわれず、実感したモノ(情景)の存在(ポテンシャルエネルギー)をしっかり打ち出して詠むようにしたい。
ちなみに「大掃除」は春の季語とする立場もあるが、この句の場合問題ではなかろう。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
俳句はモノ(情景)で詠む詩。モノにはポテンシャルエネルギーがある。

「運動会前夜密かに父走る」(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)

句意は明瞭。
お父さんは、当日恥をかきたくないから走る練習をしているのか、リレーなどの保護者競技でいいところを見せたいので練習しているのか、はたまた体を最近動かしていないのでウォーミングアップしているのか、いずれにしても子供が主役の運動会で、お父さんが必死になっているようなところが面白い。
「俳句で日常を詠む場合は批評精神が必要である」と私はよく言うが、やはり俳句は詩であり作者の感動ある世界に読者が感動する(共感)する世界なのであるから、あたりまえのことをあたりまえに言われたところ(日記的・説明的・報告的・出来事)で感動にも何にもならない。
例えばこの句のように「運動会」をどういう切り口で詠むかというところが大事になってくる。
多くの人が「運動会当日・昼・子供・応援する親」を詠む中で、「運動会前日・夜・練習する父親」というオリジナリティある切り口で詠んだところが、新しさや俳味(おかしさ)につながり光った。
さて、このお父さんの「運動会」当日の結果はどうだったのであろうか。。。
気になるところである。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
対象をどういう切り口で詠むか。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・運動会ガタガタ騒ぐ夫婦箸(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※わりとあちこち大変
→運動会のお昼休憩、家族でお弁当を食べるシーンであろか。頑張る子供に対して夫婦の意見が食い違っている様子を詠んだものか。中七の詠みが少々荒いところが気になるが、気分は出ている。

・太陽も畳んでかえる運動会(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※運動会が終わってテントやシートを片付け終えると太陽もいつの間にか日暮れている、まるで一緒に畳み込んだのかと思う瞬間です。
→運動会終わりの気分が印象的に伝わる句。楽しさ・寂しさをモノ(情景)に上手く託し象徴的に詠んだ。佳句。

・運動会位置についたり日章旗(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※運動会は開会式が済むと、一番目は百メートル競走、その時の合図は位置についてである。「日の丸」はすでに掲揚台の位置についている光景。
→位置についたのが子供ではなく「日章旗」という切り口が面白く光った。俳句は短いので他の詩型のようにあれこれできない。こういう風にオリジナルな切り口を見せることも効果的である。

入選句

特選A(入賞候補)

・大空に運動会の吊られけり(ペンネーム「登りびと」さん 35歳)
→例えば政治家の会話で「今年の夏はまだまだ暑くなりそうだ」というのがあれば、夏の暑さのことを言っているのではなく、何かしらの「政変」を言っているのだなということが読み取れてくる。それと同じで、心象であれ実風景であれ何が詠まれてあろうとまずはそのまま受け取り、その事情を感じてみようとすればいい。吸い込まれるような「大空」の下での「運動会」の気分、空にたゆたうようなのびやかな晴れ晴れとした気分が感じ取れてくる。佳句・好句。

・雨だけが走るグランド運動会(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→当然のにわか雨に襲われた「運動会」のイメージであろうか。「運動会」へのワクワク感、「雨」が止むことへの期待感が「雨が走っている」と実感させているのであろう。こちらも切り口の光った句である。佳句。

・運動会白帽こっそり裏返す(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
→「俳句は小さな小さな気づき(実感)、それもできるだけオリジナルな気づき(実感)を拾ってきてくれればいい」とは私が前からよくいう言葉。必然的にそれが独特の切り口になり、詩になるのである。この句もまさにそのとおり。「こっそり裏返す」というところに、好きな子がいる赤組になりたい心情なのかななど、何かしらの事情が感じ取れてきて共感を誘う。佳句・好句。

・一匹が風に逆らう運動会(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→ダンディズムというかハードボイルドというか「一匹」がすばらしい。現実の「運動会」の句とすれば男を意識する高校生あたりの気分か。団体競技を少し斜に見ている男子の気分がよく出ている。佳句・好句。

・発車ベル里に近づく運動会(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→子供の住む「里」の「運動会」に向かう祖父母の気分の句であろうか。「運動会」そのものを詠むでもなく切り口の光った句である。「里」のイメージだろうか、どこかしら落ち着いた空気感が懐かしい。好句。

・車椅子押す夫と見る運動会(ペンネーム「大槻税悦」さん 50歳)
→「夫」は「つま」と読む。入賞候補の中でも賞と大変迷った句である。賞との差は「運動会」を見る」という切り口がやや月並みであったところ。しかしながら句からは様々な思いややさしさ、さみしさなどが次つぎと感じ取れてきて大変味わい深い。俳句はこのようにモノ(情景)に託して何かしらの気分をそれとなく感じさせてくれたらいいのである。象徴的な感じさせてくれる一句である。この方向で。佳句・好句。

・運動会リレーに沈む夕日かな(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→少々類想感があるところが惜しいが、「運動会」の終わってゆく寂しさを情景に託し上手く詠んだ。この方向で。

・運動会の輪を抜け広き運動場(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→無意識から詠んだというよりは、「~したら~だった」というような理屈っぽいところが惜しいが、斬新な切り口(気づき・発見)を詠んだところが光った。言われてみれば納得の世界である。こういう小さな気づき・できるだけオリジナルな気づきを掬ってきてくれればいいのである。

・捨て猫に餌やる朝や運動会(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→「運動会」の固定概念からすればウキウキとして学校へ一直線であろうが、こう詠まれるとはどうも屈折した心境が感じ取れる。運動が苦手なのか、事情で家族が応援にこれなくなったのか。いずれにしても少し寂し気な気持ちを句の表面の言葉で直接詠まず、モノ(情景)に上手く託して詠んだ。佳句・好句。

・一筋の雲湧き昇る運動会(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→やや月並な世界観が惜しいが、いよいいよ待ちに待った「運動会」が始まる気分、それを上手くモノ(情景)で託し詠んだ。「湧き昇る」では少し舌に引っかかるので、素直に「湧き上がる」でよさそう。モノ(情景)に託して詠む方向は大変よい。

特選B

・運動会青空ゆれる祖父の声(ペンネーム「モッツァレラ二号」さん 8歳)
→「運動会」らしい世界観がやや月並みで惜しいが、「青空ゆれる」というモノの様子(情景)に、「運動会」の賑わいや「祖父」の声援の様子が上手く託されている。

・液状の空の吸う砂体育祭(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 19歳)
→心象風景ととる。その湿っぽくドロドロした重力をものともしないブラックホールのような空、モノ(情景)に託しされたのはな作者の何かしらの不穏な心情であろうか。やや飛躍した詠み方であるが、俳句はこれくらいでいい。もう少し具体性があってもよさそう。

・運動会どっと崩れる父兄の顔(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
→何らかのハプニングであろうか。その一瞬の情景を素直に詠んだ。俳味(おかしさ)の句。

・母の手の駆け抜けてゆく運動会(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→普段は静かな母親が「運動会」の競技で存在感を示しているシーンであろうか。一句の気分としては「手」より「腕」のほうが迫力が出そうであるが、好みかもしれない。

・ざらざらとタワー崩れる運動会(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)
→上五中七の措辞がどうもあたりまえ、そしてそれを「運動会」のイメージが受け止めるのであるが全体的につきすぎで物足りない。また一般論であるが俳句においてオノマトペの類は安易に流れるので積極的な使用はお勧めしない。大賞経験者であるから素材から再考したい。

・黴臭き綱の匂ひや運動会(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
→小さな実感を素直に掬ってきた。しかしながらこの句の場合「黴・綱」「綱・運動会」とならぶとやはりつきすぎになってしまう。その意味では素材を変え飛躍して「黴臭き女の匂う運動会」あたりもあろうか。参考に。

・靴紐の軋み重なる運動会(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→小さな実感を素直に掬った。「軋み重なる」が言い過ぎというか物をいいたげなのでもう少し軽く詠んでもよさそうである。

・山神へとどき運動会の声(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→俳句は定型でなくともよいが「定型感」は必要である。このわざとらしい演説調の定型崩れのリズムをどうにかしないといけない。これでは散文崩れ・キャッチコピーくずれの尻切れトンボのような句になってしまう。素材は悪くないので「山神の声響き合う運動会」(「の」は軽い切れくらいの気分で)などと575の定型のバネをしっかりと活かして素直に詠めば味わい深い句になる。参考に。

・運動会火薬の匂い風に乗り(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→一句全体の世界観がありきたりで惜しいが、何を言うでもなく、心に留まったモノ(情景)をさらりと句にもってきたところがよい。ココロというものは出そうとしなくともすでにここにあるもの。モノを二つ選べばそれだけでココロは表現できるのである。次は切り口、すなわちオリジナルな気づきを掬うようにされるといいだろう。

・石灰の匂いのひざの運動会(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
→一句の世界観が月並みで惜しいが、小さな実感を上手く掬ってきた。共感できる句である。

・運動会果ててミレーの夕日あり(ペンネーム「吉良水里」さん 57歳)
→俳句は短いので他の詩のようになかなかモノをいうことができない。よって必然的にモノ(情景)に託すのである。その意味でなかなかできた印象的な句なのであるが、モノ言いたげなところがやや惜しい。仮名遣いについてのご質問であるが、総評に毎回書いてあることが原則すべて。「いる・ゐる・居る」ではたしかに気分は違うが、まずそれ以前に仮名遣いを懐古趣味・ファッション・流行・単なる俳句らしさ・気分などで使用しているのか、しっかりとした信念に基づいて使っているのか問うてみてほしい。「けり・かな」などは仮名遣いとは別問題。参考に。

・運動会雨天中止の墨の文字(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
→全体的な世界観がありきたりで惜しいが、余計なことをいわずモノ(情景)で攻めたところがよい。雨で「墨」が流れるのではとかいうようなことは邪推。手書きの「墨の文字」に急に中止になったその事情がよく現れている。好句。

・分校の空色の風運動会(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)
→「分校・運動会」の舞台装置だけですでに成功してしまった句。そこに「空色の風」であるからかわいらしい。小さな小学校の一時の賑わいの気分がモノ(情景)に託されているのがよく伝わる。好句。

・万国旗外して終わる運動会(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→言われてみればそのままなのであるが、わざわざこう言われてみれば詩になっているのも俳句の面白いところ。賑わいからのさみしさを「万国旗」が象徴しているといった気分。好句。

・人妻を縛り抱きしめ運動会(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→切り口が光った句。このような句もあるのであるがやはり面白い。「人妻・運動会」の舞台装置で非日常的な気分はたっぷりと出ているので、「人妻の肩抱き走る運動会」など、もう少し軽く抑制して詠んだほうがバランスがとれそうである。

・運動会リレーの背中押す夕日(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→「運動会」の終わりかけの気分がよく出た句。特選Aにも似たような句があるのであるが、こちらは少しリズムが引っかかるのが惜しい。舌頭千転、何度も口にだして落ち着きのよい姿を探すようにしたい。

・運動会田んぼの中の万国旗(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→田舎の運動会の気分か。「田んぼの中」とは面白い。「運動会」の世界観をよくあるグラウンドから少しずらした切り口が光った。

・廃校に決まる母校の運動会(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→575に慣れてた方なので出来ている感じはあるのであるが、句の表面で何かを伝えようとするあり方をどうにかしたい。俳句は短いのでモノが言えない。だからモノ(情景)に託してイメージされてくる世界を大事にするのである。全体的にモノ(情景)にもっていくようにしたい。

・街中に音を零して運動会(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→運動会の音量で近所からクレ−ムが出るという話もたまにきく。世知辛くなってきたものである。「零して」が美しい。水の波紋のようにひろがる音の響き。それが街を美しく響き包み込んでいるような光景が絵本世界のようで、その非日常感がひきつける。これも切り口が光った句。

入選A

・おじいちゃん空から見ててねうんどう会(ペンネーム「つきちゃん」さん 7歳)
→つぶやきのような気分の句であるが、観念的でも何でもなく、「おじいちゃん」を「空」にしっかり感じている(存在感がある)ところがいい。

・唐揚げの乾いた匂い運動会(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→「唐揚げ・運動会」であるからどうやっても昼食シーンになる。モノ同士のイメージが近すぎるのである。取りあわせとするのであれば、モノ同士の関係性にさらに敏感になって飛躍を試みなければならない。

・運動会父と母との道標(ペンネーム「新武相乱」さん 43歳)
→どことなく亡くなった両親の跡をたどっているかのような気分の句である。「運動会・道標」のとりあわせが斬新である。

・運動会女子の成長早きかな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
→小学校高学年・中学校あたりだと女子の体つきのほうが大人っぽい。そのようなドキッとした実感を詠んだ句でよくわかる。575にも慣れているのでさらりと詠んでおられるのであるが、「早き」と直接作者が語っているとこが惜しい。こういうところを「女生徒の影のまろみや運動会」などモノ(情景)に託して読者にイメージしてもらうように詠みたい。

・運動会校庭駆けるライン引き(ペンネーム「洒落神戸」さん 51歳)
→子供ではなく「ライン引き」を詠んだ切り口がいい。しかしながら「運動会・校庭・駆ける」と並ぶと世界観がつきすぎで、詩というには微妙である。そのあたりの「あたり前の語と語の関係を越える」ことが大きな課題であろう。

・校庭をカラーテントや運動会(ペンネーム「斎乃雪」さん 56歳)
→写真としてはカラフルで美しいのであるが、句としては平凡でどうにもならない。やはり「校庭・テント・運動会」と素材が近すぎだし、すべて「運動会」に収斂される。そのあたりを攻めてほしい。

・ご馳走の並ぶ夕餉や運動会(ペンネーム「都乃あざみ」さん 56歳)
→お弁当ならありきたりすぎて話にならないが、時間を「夕餉」にずらした切り口が光った。一日の充実感が感じ取れるあたたかな句である。

・運動会二日前から空を見る(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→ワクワク感を詠んだ。こちらも時間軸を当日から前々日にずらした切り口が光った。

・運動会そこはかとなく群青へ(ペンネーム「インゴット」さん)
→なんとなく「運動会」が盛り上がってきたようなムードを詠んだものか。ややか観念的・抽象的なのでもう少し具体的に詠むようにしたい。

・朝日受け運動会の万国旗(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→余計なことを言わず、モノ(情景)に「運動会」への高まる気分を上手く託し詠んだ。

・大将へ五騎一斉や運動会(ペンネーム「りりこ」さん 60歳)
→ややモノ言いたげなところが惜しいが、臨場感がよく出ている。

・鉢巻の背中にちから運動会(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
→これは散文に近く俳句と呼ぶには惜しい。「鉢巻をした子供の背中にやる気を感じる運動会だな」というような文章を短くしただけだからである。こういう場合は「鉢巻」か「背中」かポイントを絞ったほうがよい。「鉢巻の結び目小さき運動会」など。参考に。

・ゴール前身をのり出して運動会(ペンネーム「9月の雨順子」さん 62歳)
→インパクトあるシーンである。しかしながら「運動会」そのもののシーンともいえるのですべてが「運動会」に収斂されてゆくようで惜しい。飛躍して詠みたい。

・運動会崩れたおにぎり先生と(ペンネーム「瑠緒まま」さん 62歳)
→世界観が切なくてひきつけるが、モノ(情景)を詠むというよりはコト(出来事)を詠んでいるようなところが惜しい。俳句は短いので言いたい事「崩れた」は詩になりにくい。俳句としては「先生と食むおにぎりや運動会」くらいで詠むのがぎりぎりであろう。

・籾くずの母のエプロン運動会(ペンネーム「松廣李子」さん 64歳)
→「籾くず・運動会」の取りあわせが中途半端で惜しい。「運動会」のシーンとしてもお弁当を作っているシーンとしても、どう解釈していいかわからない。素材から再考したい。

・運動会おなご先生ライン引く(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
→「運動会」の中のはっとした実感なのであるが、よくある情景なのでやはり月並の域を出ておらず、それが惜しい。日常を詠む場合は切り口を大切にしたい。

・楕円軌道えがく星の子運動会(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→運動会の気分と宇宙の惑星の気分をリンクしたような句であるが、少々窮屈。また意図的(作為)な側面が目立ってしまっていて惜しい。一句にいろいろ盛り込もうとせず、「惑星の公転つづく運動会」などさらに要点を絞って詠みたい。参考に。

・運動会古屋の鼠騒がしや(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
→「運動会」と「古屋の鼠」の気分を取りあわせた句。世界観がよくありそうなところと何より「騒がしや」と直接感想を言ってしまったのが惜しい。やはりこういうところはモノ(情景)に託して、読者に想像そいてもらうように詠みたい。

・声連れて風吹き抜ける運動会(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→「運動会」の気分をなんとなく感じさせる句であるが、「声・風・運動会」であるからやはり抽象的。むしろ声か風にしぼって「紅白の声もつれあう運動会」など、もう少し具体的に詠んでみたい。

・流星群夜空の走者運動会(ペンネーム「まあちゃん」さん 73歳)
→「夜空」と「運動会」の取りあわせととる。「流星群→夜空」「走者→運動会」はいわずもがな。そのあたりを整理して「流星群追い越してゆく運動会」くらいか。参考に。

・風掴み夕星仰ぐ運動会(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→動詞が二つありややもたもたした感じが気になるが、ナンバーワンよりオンリ―ワンというような充実・満足な気分が感じ取れてきて味わい深い。

・廃校に歓声宿る運動会(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→地域の「運動会」であろうか。久しぶりに使う懐かしのグラウンドや校舎、その気分が出ている。

・最前列獲った家族の運動会(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
→家族としては席取りそのものがまさしく「運動会」であろう。世界観がありきたりなのが惜しいが、俳味の出た句である。

入選B

・子ども達運動会の汗涙(ペンネーム「納豆キング」さん 10歳)
・運動会赤ヘル色に願かけて(ペンネーム「ルビー」さん 19歳)
・運動会てるてる坊主逆さ吊り(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・紅白に球が飛び交う運動会(ペンネーム「ディエゴきよたか」さん 43歳)
・靴を履く皆んなで遊ぼう運動会(ペンネーム「沖縄キック」さん 43歳)
・父写す晴れの舞台の運動会(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・かえちゃん運動会だバタバタと(ペンネーム「わた」さん 45歳)
・運動会カメラ越しに見る我が子(ペンネーム「下り坂47」さん 47歳)
・運動会転び泣く子に大声援(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・運動会たすき繋いだあの右手(ペンネーム「もじこ」さん 49歳)
・紅白の紙の花咲く運動会(ペンネーム「でこ」さん 52歳)
・運動会一等の子へ赤いリボン(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
・暗算の集計微妙運動会(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・吹く風に秋を見つけし運動会(ペンネーム「ナギさん」さん 55歳)
・運動会クックパッドを検索す(ペンネーム「都乃あざみ」さん 56歳)
・運動会秋が詰まったお弁当(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
・運動会我が孫いずこに赤い靴(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・運動会みかん頬張る涙顔(ペンネーム「よさなしけ」さん 63歳)
・「天国と地獄」駆け出す運動会(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・運動会昼食囲んで和気和気あいあい(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
・天国と地獄が駆ける運動会(ペンネーム「ヒロリン」さん 70歳)
・ドンと鳴る花火で起きた運動会(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
・運動会親も心で走りをり(ペンネーム「おちえもん」さん 71歳)
・青空に歓声届く運動会(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・むかで競争声かけあって運動会(ペンネーム「かっちゃん」さん 77歳)
・吾子追いてカメラが走る運動会(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
・赤と白空浮遊する運動会(ペンネーム「めぐちゃん」さん 78歳)
・子や孫に渡すバトンの運動会(ペンネーム「ネコチャン」さん 85歳)

ユニー句(句)

・目に見える我が家は毎日運動会(ペンネーム「さーしゃ」さん 30歳)
・運動会モテるあの子の見学会(ペンネーム「大野美波」さん 31歳)
・運動会場所取る親に敢闘賞(ペンネーム「ころりん」さん 35歳)
・戦国武将の顔で参観運動会(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
・かけっこで1番うーんどうかいな(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・場所取りで競う保護者の運動会(ペンネーム「よしゅん」さん 41歳)
・運動会隣の弁当気になって(ペンネーム「マネレ」さん 44歳)
・甥達の運動会を梯子する(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・場所取りへ子より早起き運動会(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
・万国旗運動会をデコレート(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・女生徒に見える先生運動会(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
・借り物競走現金と書いてをり(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・おむすびの海苔のべちゃべちゃ運動会(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
・唐揚げも落ちて転がる運動会(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・運動会綱ひくパパに魔女の一撃(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
・運動会巻き寿司食べ過ぎドンベなり(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・場所取りで疲れて眠る運動会(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 67歳)
・パパの脚もつれて転ぶ運動会(ペンネーム「ようちゃん」さん 70歳)
・結ぶ手に胸キュンとなる運動会(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
・孫よりも興奮の妻運動会(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・運動会爺じ喜び杖放る(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・早朝の場所取りに沸く運動会(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
・運動会じいじもパパも縺れ足(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
・席取りに茣蓙が徹夜の運動会(ペンネーム「チックちゃん」さん 77歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年9月19日(水)

第97回 お題「胡麻」(選と評 谷村秀格先生)
総評

全国から沢山の句を頂き感謝を申し上げます。
この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたいコト・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです。

以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分(ムード)が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の「首を拭く」は、モノ(情景)に託し愛情がよく感じとれる句。
入賞句の「豚カツ屋」は、いろいろなお客さんの人間模様が感じ取れる一句。
入賞句の「夕星」は、
特選Bは原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

俳句で大事なのは季語の厳密な知識・扱いではなく一句そのものの芸術性ですので、モノとしての「胡麻」周辺のことを詠んでくれていれば「胡麻の花(夏)・胡麻豆腐(季感が弱い)」などでもここではよしとしました。
だたし「開けゴマ!」などは、流石にモノとしての胡麻の実感がないので、残念ながら選外としました(ユニー句を除く)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「やわらかな胡麻の香りの首を拭く」(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)

このような句に出会えるのは選者冥利に尽きる。
子どもの首を拭いているときの句か、家族を介護しているときの句か、恋人を詠んだ句か、実景か、心象かなど、想像や解釈は読者に委ねられさまざまに膨らむが、「胡麻」の食べる・収穫する・弾けるといった固定概念から飛躍し、「胡麻の香り」を通して愛情・慈しみ・あたたかさという新しいイメージを引っ張ってきているところが大変よい。
句には、「胡麻の香り→首」、「香り→拭く」などの措辞の展開にほどよいメタモルフォーゼ(変容・飛躍・意外性)がありひきつける。
読者はこういうメタモルフォーゼによって、それはどういう事情を表しているのかと一句の世界に入ってゆこうとするのである(真実の探求)。
こういう句は俳句本だとか何かしらの型やテクニックによって生まれてくるものではない。
自分の中から湧き上がってきた「無意識からの実感・表現」をしっかり掴んできた結果による。
無意識というものは夢に近く、現実離れしていたりバカバカしいことも多いのであるが、それもたしかに自分を通して出てきたものなのであるから大事にしたい。
そもそも俳句は詩であり詩は芸術なのであるから、頭・意識(作為・技術・文法・教条・意味・学習・作るもの)ばかりで追いかけないことである。
「やわらかな」が直接表現のようでやや気になるが、この句の場合そこまでの傷でもなく、逆に一句全体の情景にふくらみを与えているようである。
参考にメタモルフォーゼのある比較的最近の私の句をあげてみる。
・大ひまわり悶死している鍵の束 秀格
・志野茶碗まずしき声の花前線 秀格
・文字書きの花の指紋や世界山 秀格
・鬱の地の花冠にまたがりぬ 秀格
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
モノ(胡麻の香りの首・A)を通して、真実(愛情・非A)を伝える。このように突き抜けてゆける言語のことを「詩」と呼ぶ。

入賞

「それぞれがゴマする昼の豚カツ屋」(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)

句意は明瞭。
「豚カツ屋」というひとつところに、いろんな会社、いろんな立場、いろんな事情を抱えた人たちが集まって、それぞれがそれぞれの擂り方でゴマを擂って豚カツを食べているという情景。
ゆっくり擂る人、早く擂る人、しっかり擂る人、軽くしか擂らない人、しゃべりながら擂る人、笑いながら擂る人、泣きながら擂る人、、、。
この何気ない動作に、その人その人の生きざままで感じ取れてくるようであるし、ひいては「みんないろいろあるだろうけど頑張ってね」と言うような作者のメッセージが聞こえてくるようである。
大変素朴な句であるが、「いつ(昼)・どこで(豚カツ屋で)・誰が(それそれが)・何を(ゴマを)・どうした(すった)」という情報伝達のポイントが自然と入っているところも上手い。
結果的に「ゴマをする」がお世辞の意味にもとれる句になっているが、そういうユニークさ(俳味)は、出そうと思って出すものではなく、この句のように後からついてくるもの。
シンプルでありながら味わい深い人間愛に満ちた一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
情報伝達のポイント(5W1Hなど)が自然に入ると句が分かりやすくなる。

「胡麻叩く夕星間近に来ておりぬ」(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)

「胡麻叩く」というのは収穫し数本毎に束ねて乾燥させた胡麻の実を莢から出す作業のこと。
「夕星(ゆうつづ・ゆうづつ)」は、宵の明星(金星)のこと。
こちらも句意は明瞭で、胡麻を叩いて実を出す作業をしていたらいつの間にか日が暮れていた(金星を近くに感じた)という句にとれる。
作業に没頭する無心の境地からふと現実に戻った驚きを、言葉で直接言わず、「夕星間近」という眼の前30センチに夕星が来ていたかのような実感(モノ・情景)で伝えているところが大変よい。
やはりこのように「託し詠み」することで、光景も美しく面白く伝わり同時に意味も伝わるので、言葉が働いている(俳句型式を働かせている)のである。
こちらも無意識からの実感を上手く掴んだ一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
無意識からの実感を大切にする。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・胡麻煎る夜隣の鸚哥の低き声(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※鳥は飼ったことがないのですが、ふとした時に鳥の存在を感じることがあります。
→「胡麻を炒る」だけなら普通の光景であるが、そこに「夜」がくっついてくると一転して重たい印象。そこに高いはずの「鸚哥(いんこ)」の声を低く実感したというのである。モノ(情景)に託して不穏な心境を上手く伝えた一句である。佳句。

・キリストの寝乱れている胡麻の皿(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※自分の小さな世界が整然としていて欲しいですが、散らかるのなんの。
→「寝乱れるキリスト」と「胡麻の転がる皿」の取り合わせのように取れる。「キリスト」をこのように詠んだ句は古今なかろう。「キリスト」や「胡麻」に新しいイメージを与えているところがまず上手い。小さいながらも栄養満点の黄金色の粒と、清らかなイメージの「キリスト」であるから、どことなく重なってきて連想にも無理がない。佳句。

・胡麻の香や火星連れ添う水の星(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※今年の夏から秋にかけて、15年ぶりに地球に大接近して赤く輝いている火星。ちなみに地球は水の惑星と言われているので、「水の星」と詠みました。
→惑星同士が、恋人同士・夫婦同士のような気分で詠まれているところがユニーク。眼前の「胡麻の香」に大きな宇宙の営みを覚えたスケールの大きい句である。佳句。

入選句

特選A(入賞候補)

・胡麻を振る振った手を触る女の子(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→畳みかけるような「HURU」の響きが心地いい。胡麻を振る恋人の手に触れたという光景と取れる。日常の何気ない小さな実感を上手く掴んだ句である。気分は出ているのだが少し作為的でもあるので、はじめの発想にとらわれず「胡麻をふるふった手をふる女の子」など、意図をぼかして読者の想像がさらに膨らむように詠むのもいいだろう。好句・佳句。

・白胡麻や胸に張りつく星の砂(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
→「白胡麻は胸に張りつく星の砂のようだ(比喩)」と解釈したがる人は多いがそうするとモノ(星の砂)の存在感がなくなる。作者は「星の砂」と言い切っているのであるから、そのまま素直にモノ「星の砂」として受け取りたい。そうすると観念的でも何でもなく、白くきらめく美しい光景に身を置く作者の澄んだ心境が感じとれてくる。比喩だ隠喩だとすぐに教条的側面から鑑賞しようとする小賢しい精神の在り方は改めなければならない。好句・佳句。

・胡麻香る老舗の屋根のあかねいろ(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
→何をいうでもなく、ただ心に留まったモノ(情景)を無意識のままに一句に持ってきたのが成功した。皆ココロを伝えたいと表現の鏤骨に身を削るのであるが、この短い形式は凝れば凝るほどに作為が目立ち逆効果になってしまう。俳句を型や教条やテクニックで追いかけても徒労に終わることが多いのはこのためである。ココロはわざわざ込めなくとも世の中にあるあまたのモノのから「胡麻の香・老舗の屋根」を選択したところ(キャスティング)にすでにある。憧憬の句であろうか、下町の和菓子屋から漂う香ばしい香りを、夕方の大きく鮮やかな色彩がさらに引き立てている五感を刺激するしみじみとした一句。好句・佳句。

・胡麻筵牛のふぐりの行き過ぎる(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
→筵の上で胡麻の束を棒で叩き胡麻の実を取り出す作業を黙々と続ける人々(作者)。ふと気づけば「牛のふぐり(陰嚢・睾丸)」がゆらゆらゆれながら通り過ぎていったという句。作者によると、「胡麻」の栽培や闘牛が行われている鹿児島の奄美群島に思いを馳せた句ということらしいが、そのとおりどこか南国の田舎の情景が浮かんでくる。何より「ふぐり」が上手い。「ふぐり」を句の表面に堂々と打ち出したことでおおらかさがよく出ているし、「ふぐり」がゆれながら遠退いてゆく様子に、南国の田舎独特のゆっくりと流れてゆく時間性がよく表されている。情景に託し大きくのびやかな気分を伝える一句である。好句・佳句。

・黄金となるまで胡麻をふりかける(ペンネーム「斎乃雪」さん 56歳)
→この作者については散文的な発想(技術ではなくあり方)について随分と指摘してきた。しかしながらこのところ散文的な表現ではあるがその嫌味が消え、よい意味で俳句型式をわが物とされてきている印象である。やはり俳句の詠み方というのは本や技術で学ぶものではなく自分の体で見つけてゆくものなのである。一見箸にも棒ににならないありきたりな表現であるが出来ている。一句全体を貫くしつこいまでの言い回しに作者の情念が感じ取れてくる。それは句の表面(見える世界・A)のきらびやかさとはうらはらに、きらびやかにせざるを得ない作者の深い悲しみ、何かを忘れたい気持ちなどではないか。見える世界(A・モノ・情景)を詠みつつ、見えない世界(非A・ココロ・真実)を伝える見事な一句である。好句・佳句。

・胡麻かけて夕餉の皿に独りゐる(ペンネーム「吉良水里」さん 57歳)
→「皿に独りゐる」とは、現実べったりの方や学校的な国語感覚では違和感のある表現であろう。幽体離脱ではないが、椅子に座って眼の前の皿の中にもう一人の自分を見たという句、あるいは、自分がどんどん小さくなり皿の中にいるという句どちらにもとれる。いずれにしても圧倒的な孤独感を感じてる作者の心情がよく表されている。「これが夕餉の部屋に独りゐる」ではあたり前で話にならない。「皿に独りゐる」という無意識から浮かんだ実感を、バカバカしいものとして捨てず、きちんと拾ってきたところが見事であった。詩はつまりこういう世界なのである。ちなみに俳句の表記は「現在使われ将来も使われるであろう表記を採用していて不足はないはず」なので、ここでは今後「現代仮名遣い」お勧めたい。好句・佳句。

・胡麻はぜる星の匂いの時刻表(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)
→やはり「胡麻・星」の展開は類想が多いのが惜しいが、こちらの句も比喩(隠喩)などではなく、一句全体のモノ「胡麻・星の匂い・時刻表」の存在感がしっかりしており、そこから非日常的な気分を引っ張ってきているところが美しい。モノに託して詠むこの方向で。好句・佳句。

・胡麻叩く髭の胡人の兵馬俑(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→「胡人」は中国北方西方の民族を指す語。「兵馬俑」は古代の中国副葬品で兵士や馬をかたどったもの。胡麻を叩きながら髭の胡人の兵馬俑を感じている句、あるいは兵馬俑が胡麻をたたいているような心象風景か。いずれにしてそのオリエンタルな気分が胡麻によくあっていて楽しい。
好句。

・村百戸むらさきうすき胡麻の花(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→「胡麻の花」は夏の季語になるのだあるが、大事なのはまず句を詠むことでありその芸術性なので、ここではそのあたりをうるさくいう必要はなかろう。小さな村全体が「胡麻の花」によって明るい雰囲気につつまれている様子が美しく表されている。「むらさきうすき」というのは作者の気持ちであり言葉なので、「うすむらさきの」などモノの様子(情景)に託して詠むとさらによいであろう。好句。

・胡麻の束抱えきれない大太鼓(ペンネーム「寿人大好きばあば」さん)
→「抱えきれない」のが「胡麻の束・大太鼓」両方のように受け取れるところが面白い。収穫の喜びを両腕の感覚や響き渡る音に上手く託して詠んだ。まさにとりあわせの妙である。このように俳句はモノとモノのイメージを取り合わせ楽しむこともできる。この方向で。好句・佳句。

特選B

・胡麻畑空にささやく風の唄(ペンネーム「モッツァレラ二号」さん 8歳)
→透明感ある世界観が美しい。「畑・空・風・唄」あたりの関係性が近いのでそのあたりを整理されるとさらによくなるであろう。好句。

・胡麻爆ぜる青天の原型として(ペンネーム「登りびと」さん 35歳)
→「胡麻爆ぜる青天の原料として」も投句されていたのであるが、それでは一句が完全に理屈の句になってしまうのでこちらがよい。胡麻が爆ぜるかたちは青天の原型なのだという真実を伝えているところに詩がある。ただし定型感に乏しいところが気になる。季語についていろいろ気にする反面、定型についてルーズな人も多いが、定型には定型のバネ(力)があるのでそれを多いに使っていただければと願う。好句。

・胡麻干せば星のこぼれるような音(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
→手慣れた詠みぶりが上手いが少々観念的である。「胡麻・星」の類想と「~ような(直喩)」と詠むことで「星の音」の実在感・存在感を希薄にしているところが大変惜しい。俳句のような短い詩型は一句の存在自体が象徴・隠喩なので、あえて「~のような・~のごとき」を持ち出すこと自体が問題なのである。詩なので「現実らしさ(~のような)」にとらわれず、「星のこぼれる音がする」などと瞬間の実感をしっかり言い切り、モノを据えて詠むようにしたい。参考に。

・地平線ごま駆け回る稚児の声(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→気分の大変出た句で「はじける胡麻と稚児」の取り合わせには無理がない。ただしどうも感覚的に「地平線/ごま駆け回る/稚児の声」と三段切れ的なリズムで落ち着かないので、さらに舌頭千転して整えてみたい。

・保育器に並ぶ乳児や金の胡麻(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→期待感のよく出た句である。しかし「保育器・乳児・金」とここまで近いイメージを畳みかけられると少ししつこい。「保育器に並ぶ乳児や胡麻爆ぜる」くらいの気分で詠むほうが読者の解釈を限定せず味わいが広がりそうである。俳句はそのあたりのバランスのとり方が難しい芸術である。参考に。

・金胡麻や異国訛りの修行僧(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→お寺で精進料理をいただいているときのイメージであろうか。ユニークな把握の句である。「胡麻」はそのルーツや栽培地に外国の印象があるからか「異国訛りの修行僧」の気分がやや近いが合う。日本の情景を読みながらオリエンタルな気分を引っ張ってきているのびやかな一句である。

・胡麻の花頭傾げるそよ風に(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→「傾げる」のが「胡麻の花」とも「作者」ともとれるような詠み方で面白い。広い胡麻畑の中で夢うつつの気分に包まれている作者の恍惚感がよく表されている。「そよ風に頭かしげる胡麻の花」でも不足はないのであるが、下五に「~に」と置き上五にはね返るような詠み方がその夢うつつの気分をさらに増幅させる効果を生んでいるようで心地よい。理屈や技術・文法などではなく無意識からの湧出を大切に詠まれている姿勢を評価したい。このような句を見てその気分や芸術性ではなく「胡麻の花」は夏の季語うんぬん、「傾げるのは花か作者か明確にしなければいけない」など教条(国語的・正しさ)的なことが気になってしまう方は、その小賢しさこそを問題にしなければいけない。好句・佳句。

・新胡麻や掌さらさら陽の匂ひ(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
→全体的なイメージが近いのがやや惜しのであるが、こちらも上の句のように無意識からの湧出が光った一句である。「陽の匂い」は、「陽の匂い」とずばりそう書いてあるのであるから、胡麻の匂いの比喩(隠喩)などではなく、「陽の匂い」そのものと受け取めその気分を感じればよい。「新胡麻」の喜び・や生命力がありありと伝わる力強い一句である。好句・佳句。

・胡麻のつぶ黒きラインのホルスの目(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→「ホルス」はエジプト神話に登場する空と陽の神。隼の顔が印象的である。異国から運ばれて広まった「胡麻」の気分と神の目のかたちのイメージを重ねみて、その胡麻の秘めたパワーというようなものを印象的に引き出した句である。中七あたりなどやや説明的なところが引っ込めばさらによくなりそうである。好句。

・胡麻を干す島やこがねの風を生む(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
→かっちりとした詠み方に安定感がある。「胡麻・黄金ね」「島・風」とイメージが近いこととやや作為的なところが惜しい。モノに託す方向はよいのでさらなる飛躍ある取りあわせ、思い切った表現を期待したい。

・金の胡麻すり抜けてゆく母の指(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→俳句は別に大きな感動を詠む必要はなく、むしろ自分だけの小さな気づきを詠んでくれればいい世界である。この句もそのような気分の一句。オリジナル性にやや乏しいのが惜しいが、いきいきとした金胡麻を詠み込むことで、その新鮮さやや喜びのようなものがありありと伝えることに成功している。

・仏前の日射しほのかな胡麻むすび(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)
→故人をしのぶ気分の出た句である。「ほのかな」が「日射し」にも「胡麻むすび」にもかかるような面白い詠み方。ほのかな日射し(視覚)とほのかな胡麻むすび(嗅覚)が、眼裏にぼんやり浮かんでくる故人の気分を引き立てていて上手い。モノ(情景)に託して詠むこのほうこうで。好句。

・胡麻刈るや畑にラジオ聞きながら(ペンネーム「ようちゃん」さん 70歳)
→「胡麻」の収穫がどのような作業なのか具体的な様子を知らない方も多いであろう。しかしながらこのように詠まれると実に大らかで楽し気である。この情景に託されたのびやかな気分が共感さそう。好句。

・胡麻和えの色とりどりの夕餉かな(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→「色とりどり」とは楽しい。新胡麻を皆でおいしく味わっている気分がよく出ている。笑顔や会話などは直接詠み込まれていないが、イメージされる世界にしっかりと立ち上がってくる。それはモノ(情景)の切り取り方が適切であるということにつきよう。モノ(情景)に託して詠むこの方向で。好句。

・胡麻の実や黒白茶色の花火粒(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
→どことなく詠みがぎこちないところや「胡麻の実・花火粒」あたりの類想感が気になるのであるが、余計なことを言わず「胡麻・花火粒」のとりあわせによって象徴的に句にもってきているところがよい。この句の場合「花火粒」は「火薬」のことのように受け取れる。「胡麻の実」が花火となっていずれ空で花ひらくというようなモノの流転・変化の気分を伝えているようで味わい深い。

入選A

・胡麻干すやカラスの低く飛ぶ軽さ(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 19歳)
→「軽さ」と作者が述べているところが惜しい。こういうところを読者に感じてもらえるようにモノ(情景)に託して詠むのが俳句なのである。

・胡麻二粒飛び出すキャンプファイアー(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→熱いものをもっている方なのであるがまだまだ俳句型式を自分のものにせんと模索中のようである。句の表面であれこれ工夫をと思っておられるようであるが俳句は短いので工夫すればするほど作為が感じられて逆効果なのである(よって無意識からの作句)。またこの堂々とした「定型感のなさ」が大変気になる。俳句の特徴が「短さ」であることはご理解いただけると思うが、それを補い活かすため様々な工夫が「季語・定型・切れ・喩・省略」などである。季語については必要以上に意識する人は多いが、定型に関しては大変ルーズな方が多い。言いたい事た優先して定型を崩すのではなく、定型のバネに頼ることによってしかだせない味わい、意味を超越した気分というものを大事にしてみたい。

・五十日晴天ありて胡麻爆ぜる(ペンネーム「豊田すばる」さん)
→大きな気分の句で一般的には上手いのであるが、上五中七を頭・理屈・作為で詠んでいるようなところがやはり惜しい。俳句は短いので頭でつくるとその作為が目立ってしまい鑑賞の邪魔になってしまうのである。このあたりは作者の宿題としておこう。

・金の胡麻八光年の星の蜜(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→こちらの句も上の句と同様である。俳句は短いので句の表面で何かを言おうとせず、モノ(情景)をしっかり据えて、句からイメージされる世界が豊かになるように詠みたい。

・胡麻爆ぜる幼子でんでん太鼓振る(ペンネーム「マネレ」さん 44歳)
→いきいきとした気分の句である。取り合わせの句であるが、両者のイメージが近いところや激しい動詞が二つあり一句が落ち着かないところが惜しい。そのあたりを整理したい。

・城跡は山の中なり胡麻叩く(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
→安心感ある詠み方で雄大な気分が心地いい。ただし「なり」と説明・報告しているところが惜しいのでそのようなところをさらにモノ(情景)に託して詠むようにしたい。

・胡麻爆ぜて新米農夫の慌てたる(ペンネーム「洒落神戸」さん 51歳)
→俳味の一句であるが、モノ句(モノ〔情景〕で託し詠む)というよりは、コト句(出来事・報告・説明)になってしまっいるところ、また「爆ぜて→慌てる」と一句の世界観が当たり前になってしまっているところが惜しい。批評精神をもって日常を詠むことが大事であろう。

・胡麻豆腐ぷるんと母を想い出す(ペンネーム「こんぺいとう」さん 52歳)
→寂しくなりがちな母への気持ちを明るく詠んであるところがユニークであるが、「胡麻豆腐・ぷるん」「母・想い出す」あたりのイメージが近く惜しい。また「想い出す」は直接表現なので「胡麻豆腐少しふるえる母の背ナ」などモノ(情景)に託して詠むようにしたい。

・胡麻香る重機の跡の住宅街(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→「重機の跡の住宅街」とは先の豪雨災害を詠んだものであろう。しかしながら「胡麻香る」では合わない。こういう場合は最初の発想にとらわれず「胡麻爆ぜる重機の跡の住宅街」などと素材を活かして詠み直したほうがいいだろう。参考に。

・胡麻豆腐つるりと喉を滑り落ち(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
→定型のバネを活かした飾らない軽い詠みぶりが心地よい。しかしながら芸術性という観点でいえば「豆腐・つるり・喉・滑り」とありきたりの語と語の関係性が惜しい。ありきたりを避けるように詠みたい。

・駅弁の裏蓋の胡麻の並び方(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
→小さな発見を掴んできており面白い。少々説明的なので、「駅弁の蓋へばりつく胡麻の腹」などモノ(情景)に託して詠むようにしてみたい。参考に。

・胡麻の香と夕日たゆたう厨かな(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→夕方の気分がよく出た句である。しかしながら「胡麻・厨」「夕日・厨」では少しイメージがつきすぎ。ここまで詠めればなかなかであるが、さらにそのあたりを整理してみたい。

・古庭に胡麻の香りと水の音(ペンネーム「9月の雨順子」さん 62歳)
→芭蕉の有名な句が浮かんだ。その分やはりパロディのようになってしまい大変不利である。ユニークであるが、やはりオリジナルな実感を詠むようにしたい。

・海原に熟れて飛び散るうごまかな(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
→「うごま」は胡麻の異名。中七下五があたり前の語の展開で惜しいといえば惜しいが、のびやかな気分・勢いが感じとれる句でもあり若々しい。

・胡麻叩く後ろ姿は祖母のごと(ペンネーム「松廣李子」さん 63歳)
→落ち着いた詠みぶりに安心感がある。一句の世界観がやはりありきたりなのが惜しいのでそこをどう抜け出すか。日常を詠むときは批評精神をもって詠むようにすることが大事であろう。参考に。

・日傘揺れ避暑地に白く胡麻の花(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 67歳)
→透明感ある美しいムードである。「日傘・避暑地・胡麻の花」と少し窮屈なのでポイントを絞って「胡麻の花吐き出している避暑地かな」あたりで詠んでもいいだろう。参考に。

・胡麻刈りて風を蹴散らす鬼瓦(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→「胡麻・鬼瓦とは農家の家の前の気分であろうか。なかなか印象的な句である。ただどうもモノとモノが合わない(胡麻・鬼瓦)。このあたりの素材で詠むとすれば「鬼瓦風つむぎ出す胡麻の花」くらいになろうか。ちなみに「胡麻の花」は夏になる。

・新ごまや古民家の風右左(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→少々舌足らずな詠みになってしまっている下五がやや惜しいが、「新胡麻」の喜び嬉しさの気分がよく出ている。好句。

・故郷や擂鉢の胡麻かき出しぬ(ペンネーム「ヒロリン」さん 70歳)
→「擂鉢」を使う機会も減っているが「故郷」の親たちはあたり前のように使っている。というような気分の句。「故郷や」でもいいのであるが、少しざっくりしすぎているので「擂鉢の胡麻を掻き出す里の空」など、大きな情景を打ち出してみてもいいかもしれない。参考に。

・能き日なり牛も引かれて胡麻絞り(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
→定型を活かしたかっちりした詠み方が心地よくさわやかである。「能き日なり」などと
作者が直接語らず、読者に感じてもらえるようにモノに託して詠むようにしたい。そうすればさらによくなるであろう。

・女学生パチパチ弾ける胡麻の声(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→「女学生」の気分・「胡麻」の気分を重ね見た句でなかなか楽しい。両者のいメージが少し近いので分かりやすいが、その分世界(宇宙)が浅くなるのが悩ましいところ。いずれにしてもこのように取合わせ・キャスティングといったモノを打ち出す方向でイメージの妙味を堪能いただければ嬉しい。

・金胡麻の香り際立つ吐息かな(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→華やかな気分の句である。しかして一句に飛躍がないのが物足りない。最近の作者の方向性なのかもわからないが、俳句型式を働かせる方向で大胆に詠んでいただければと願う。

・古戦場胡麻叩く音や昼の月(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→モノをしっかり打ち出しながらイメージされてくる世界の非日常感を高めているところが大変よい。ただ少しモノが多く窮屈ななので「胡麻叩く・昼の月」「古戦場・胡麻叩く」あたりで、もうすこしポイントを絞って詠んでみたい。

・黙々と胡麻刈るさきに一つ星(ペンネーム「蛍子」さん 76歳)
→胡麻を刈っているといつの間にか夜になってきたという気分の句。星が印象的である。「~に」と限定されると解釈の幅が限定されるので「刈られゆく胡麻の向こうや星ひとつ」など、味を残して詠んでみたい。参考に。

・胡麻叩く働き者の老農夫(ペンネーム「かっちゃん」さん 77歳)
→定型のバネの効いた句で「U」音の響きが心地よい。「働き者の」はモノ(情景)ではなく作者の思い・概念なので、こういうところを「胡麻叩く音高らかに老夫婦」など、さらに情景に託して詠むようにしてみたい。参考に。

・遠足や母の天塩の胡麻むすび(ペンネーム「チックちゃん」さん 77歳)
→素朴であるが、上五の切れ・定型のバネがよく効いた句である。大きな光景・概念から目の前のむすびへの展開の仕方が上手い。「遠足」は春の季語であるがそれは問題ではない。ただ「遠足・むすび」「天塩・胡麻・むすび」など少し語同士のイメージが近いところが惜しいのでそのあたりは気をつけたい。

・ぱさぱさと胡麻打つ音や日の暮れる(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→この手の句は類想が多いのでどうにも惜しいが「胡麻打ち」の気分がよく出ている。日常の光景をそのまま詠んでいるようであるが、他の類想とは少し違ってさらに抑制して詠んであるところがよい。こう詠むことで逆に真摯に生きる人々の様子がより引き立って感じ取れてくる。好句。

入選B

・すり鉢の胡麻から彩る食の香(ペンネーム「競馬大好き」さん 25歳)
・縁側で暑中お見舞い胡麻香る(ペンネーム「ASARINA」さん 31歳)
・婆ちゃん家爽やか胡麻の中華蕎麦(ペンネーム「よこたん」さん 41歳)
・眠る前胡麻の国からファンレター(ペンネーム「ダビデ王きよたか」さん 43歳)
・胡麻を摺り背中で仕事母の味(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・分かったか此れが味噌胡麻母の味(ペンネーム「真改しんかい」さん 43歳)
・爪楊枝胡麻が踊る世界かな(ペンネーム「放送きよたか」さん 43歳)
・鍋のゴマ跳ねて宇宙に飛んでいけ(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・ごま食べる仙人めざしなれるかな(ペンネーム「わた」さん 45歳)
・胡麻の種ひとつひとつが香ばしく(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・擂り鉢を被る行進胡麻香る(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
・差し込む陽胡麻ひとつまみさっと乗せ(ペンネーム「もじこ」さん 49歳)
・胡麻たたきつつ歌いつつ風の谷(ペンネーム「でこ」さん 52歳)
・胡麻爆ぜて関わり持てず八年間(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・スタジアムに笑う胡麻たちは赤き声(ペンネーム「コンセプシオン6」さん 55歳)
・大入日胡麻刈る子らの声はじく(ペンネーム「梅こんぶ」さん 56歳)
・新米に胡麻塩ふって食べる秋(ペンネーム「りんの」さん 58歳)
・胡麻菓子を迷う夫の背を笑う(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・ゴマはじけ個人差のある放物線(ペンネーム「たえの子」さん 59歳)
・還暦を過ぎても知らず胡麻の花(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
・胡麻叩きいくつか飛んで見失う(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・ごま団子四川料理を鎮めけり(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・入歯の下胡麻取る夫愛おしや(ペンネーム「瑠緒まま」さん 62歳)
・胡麻塩が縁を取り持つ老夫婦(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・凩や胡麻すり込みて味噌ラーメン(ペンネーム「是多」さん 64歳)
・胡麻を煎る母の姿のおぼろげに(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
・待ったなしの畑仕事や胡麻爆ぜる(ペンネーム「ぐずみ」さん 68歳)
・胡麻爆ぜて死後の世界は有るという(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
・胡麻打ちやリズムにまかせ身もまかせ(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・胡麻爆ぜる鏡に向かひあゐうゑを(ペンネーム「ヤチ代」さん 70歳)
・胡麻を炒る三万三千躍動す(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・あんパンのてっぺんに胡麻誇らしげ(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・胡麻づくし和洋折衷はずむ箸(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・胡麻炒るや怒る大地に泣く人ぞ(ペンネーム「めぐちゃん」さん 78歳)
・新胡麻の味見一粒母の顔(ペンネーム「義」さん 79歳)
・胡麻はぜて静寂破る震度七(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)

ユニー句(句)

・胡麻みたいネチネチゆうのマジで無理(ペンネーム「リリィ」さん 16歳)
・この胡麻の数だけ恋をしてみたい(ペンネーム「大野美波」さん 31歳)
・細々とうるさい嫁にゴマをする。(ペンネーム「そっぺ」さん 34歳)
・独楽駒も粉々胡麻は大騒ぎ(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・切ないねゴマじゃないのよシミなのよ(ペンネーム「クロワッサン」さん 39歳)
・水曜日素敵なスリーにごまスリー(ペンネーム「まんまるちゃん」さん 39歳)
・カッコいい秀格先生ゴマをする(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・ごまかさず君ならできる最後まで(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・担々麺白胡麻の味良く似合う(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・擂ったゴマ料理に使わず上司へと(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
・できたシミメイクでごまかす47歳(ペンネーム「テレビ派ソラシド」さん 47歳)
・ヤジに耐え胡麻行鍛え今がある(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・猫になり記念日前にゴマをする(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
・黒胡麻に白胡麻金胡麻へそのゴマ(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・思い出すカップ麺の胡麻味を(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
・ゴマプリン聡太が寄せで差す一手(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
・遠足で慣れぬ弁当ゴマだらけ(ペンネーム「ぜんしょう」さん 71歳)
・会うたびに白ごま増える古希の父(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
・炎暑待つ新井護摩行ホームラン(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・刈り取りは胡麻塩頭和えは妻(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
・胡麻擂りて初めて栄養効果出る(ペンネーム「小林宏一」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年8月29日(水)

第96回 お題「バッタ」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回も全国から沢山の句を頂き感謝を申し上げます。

俳句の詠み方は、写真のように情景を切り取る(カメラ的)、眼前の出来事を切り取る(動画的)というだけではありません。
何らかのテレビCMのように映像Aに映像Bがかぶさり、融合されてゆくような世界も表現できますし、語(バッタ)と語(他のモノ)の関係性によって新しいイメージ(真実)をつむぎ出すということもできます。
そもそも俳句は詩であり、詩は芸術なのですから、俳句や国語的な常識(情景・映像・写生・文法・辞書的な意味・季語を主役にする)にしばられず、無意識からのオリジナルな表現を大切にし、短い俳句形式の可能性を追及してほしいものです。

例えば「季語」。
季語は季節のライトで世界を見る有力な象徴機能ですが、「俳句 = 季語」ではありませんし、「季語 = 一句の主役」でもありません。
今では「季語」は、「切れ」「喩」「省略」などのように、俳句の短さを補い活かすための工夫のひとつと捉えたほうがいいでしょう。
季語を中心に据えたところで一句の芸術性が低ければ、季語がない(中心に来てない)芸術性の高い句に劣るのは当然ですし、「季語の有無」や「季重なり」・「季語の中心性」・「何を詠むか(素材・出来事)」よりも、「短さをいかした詠み方(語と語の効果)」の方が圧倒的に大切です。

そもそも俳句というものは「季語を主役にする」というような単純なものではありませんし、良句というものは、モーツァルトの音楽のように無意識の大波にモノたちが主従なくたゆたっているような気分を醸し出しているものです。
頭(知識・意識)ではなく、もっと素直な心でモノ(季語・モノ・対象)や一句に向き合いたいものです。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです(これも俳句の「短い」形式が生理的に要求している原則的な詠法のひとつといえます)。

以下(1)~(4)を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

(1)原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
(2)俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
(3)仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
(4)原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の「東西」は情景に託した作者の心の充実感・満足感が感じられる句。
入賞句の「耕耘機」は、農作業の「楽しさ」の感じられる一句。
入賞句の「金属バット」は、高校野球の気分のよく出た、「会心・満足感」の感じられる一句。
特選Aは入賞候補として残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「東西に風の肥えゆくバッタかな」(ペンネーム「あや」さん 50歳)

小さな「バッタ」が、「東西」に広がる草原の大パノラマを我が物としているかのような気分・光景である。
もちろんこの「バッタ」は作者自身でもある。
何と言っても「風の肥え行ゆく」というオリジナルで意外性のある表現が秀逸。
「風」も「肥えゆく」も、それ単体ではありきたりなのであるが、「風の」→「肥えゆく」と言葉を並ばせたことで一気に化学変化が生じ詩になった。
作者のなんらかの「充実感・満足感」を、眼前の情景に上手く託して詠んだひきつける一句である。
大賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
詩の神は、オリジナルな表現(意外性のある語と語の展開)に宿る。

入賞

「きちきちや空の名前の耕耘機」(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)

「きちきち」は、飛ぶときに「キチキチ」と音を立てるショウリョウバッタのこと。
秋の野菜を受け付ける前の家庭菜園での土作りのシーンであろうか。
夏の野菜を取り終え、雑草の伸びてきた畑に「耕運機」を走らせ、草ごと鋤いているときに、バッタが眼の前を逃げるように跳んでいっている様子が目に浮かぶ。
この句の手柄は「空の名前の耕運機」。
「耕運機」の商品名なのか、作者が「耕運機」に「あおぞら」などの固有名詞を与えたものか。
いずれにしても、「耕運機」への愛着、ひいては農作業を楽しんでいる気分というものがありありと感じ取れてきて共感を覚える。
戯れながら跳んでいるような「きちきち」ののびやかさ・かろやかさ」も、「楽しさ」の増幅に大変役に立っている。
ちなみに、「耕運機」は春の季語でもあるが、一句の気分(ムード)がよく出ており問題なかろう。
また、上五が「蝶々や」でも「ひまわりや」でも成立しそう(動く)なのでよくないのではないか、という方もおられようが、「動く・動かない」表現というものは、芸術的な立場から言えば、その時作者が「これだ!」と思えたのならそれでいい世界なのであって、後から他人が無理に「動かす」必要はなかろう。
入賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
耕運機の名前、動き、色、音など、どの実感(モノの切り口)を掴むか。

「キチキチや金属バットの音高く」(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)

「キチキチ」のいる河原での草野球の様子ともとれるが、それはどうも一句の気分に合わない。
「キチキチ」が高らかに跳ぶ様子と、高校野球の応援しているチームの打者が大きな当たりを打ったときの様子を重ね見た句、ととるほうが自然であろう。
この句の良さは「瞬間・タイミング」。
キチキチが追手から逃れて跳ぶタイミングと、狙いすまして打球を打つタイミング、この両者の「今だ!」という会心のタイミングを一句の中に上手く重ねて詠んである。
全体的にややイメージが近いのが惜しいといえば惜しいが、これはこれで気分の出た、連想に無理のない一句であろう。
入賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
つかず離れずのモノ同士を重ね見る(取りあわせる)。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・バッタとぶ5時のチャイムの子どもたち(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※道を急いでいるときに足元から飛び出したバッタに驚いて出来た句です。バッタが飛ぶのは何か周りで起こったからという小さなドラマです。
→「バッタの飛ぶ様子」と「5時のチャイムで一斉に家路に向かう子どもたち」の両者の気分を重ね見た句であろう。「バッタ・子ども」のイメージが近いのがやや惜しいが、この句も両者の関係性に無理がない。

・天空やバッタの目指す剱岳(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※先日、放映された「北アルプス・ドローン大縦走(剱岳・立山)」の断崖絶壁や天空の尾根歩き等の絶景映像を見て詠みました。
→剱岳は飛騨山脈の立山連峰にある山。バッタの気分で詠んだ一句であろうか。「天空・剱岳」のモノとモノのイメージが近いところ、「バッタ」→「目指す」→「剱岳」と→前後の飛躍(意外性)がなく、説明的であるところが惜しいが、大きな気分の句である。

入選句

特選A(入賞候補)

・バッタ飛ぶペットボトルの凹みかな(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→さりげない光景であるがこれでいいのである。「飛んだ」かと思えば「凹み」を発見したというようなところに作者の何らかの心情表出がなされている。この場合だと不安定な心境のようなものであろうか。「バッタ」→「飛ぶ」の関係性が当たり前といえば当たり前であるが、全てはケースバイケースで、この句の場合「凹み」と呼応しているようである。無意識からの実感を優先するこの方向で。佳句・好句。

・轍越え真鍮色のバッタかな(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→「バッタ」が「轍」を越えた瞬間「真鍮色」になったと感じた実感を詠んだ句か。「バッタ」に金属的な「真鍮色」を感じたというところに十分に心情表出がなされている。それはふいに人生を機械仕掛けのように感じたというような心境か。俳句はこのように小さな、オリジナルな実感を捕まえてくれば自然と成立してくる世界なのである。この方向で。佳句・好句。

・天気図の北にひしめく飛蝗かな(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「飛蝗」はばったと読む。「北」は涼しいから「飛蝗」がそこに集まっている様子などと、頭で意図的に解釈するのは無粋。情景べったりの人にはわからない世界であろうが、「天気図」の等圧線 と「飛蝗」のイメージの取り合わせによって、なんとも言えないざわざわした心境のようなものを伝えている。「現実を現実らしく詠むだけが俳句ではない」と今回も総評で申し上げてたが、そのようなタイプの良句である。

・黙祷の額の汗やばったとぶ(ペンネーム「雅」さん 55歳)
→秋とは言えまだ暑い季節、黙祷している人間たちと虫の自由さのようなものを対比した印象の句にとれる。どことなく俳味(おかしさ)が出ている。「汗」も夏の季語であるが特に問題なかろう。小さなオリジナルな実感を上手く捕まえてきた。

・はたはたや娘は結い髪を今朝降ろし(ペンネーム「吉良水里」さん 56歳)
→散文的・説明的で句の表面で何か言いたげなところがどうにも惜しいが、上五と中七下五との飛躍が句を詩にしている。何らかの心境の変化のようなものを上手くモノ(情景)に託して詠んだ。

・米搗きばった引き揚げ船の着く港(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→「引き揚げ船」・港を詠んだ句。「米搗きばった」であるからその動きのユニークさなどもあり、喜びや嬉しさのような心情が感じ取れてくる。こちらも上手くモノ(情景)に託して詠んだ一句である。

・バッタ翔ぶ空に一本飛行雲(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)
→「バッタ」→「翔ぶ」→「空」→「飛行雲」であるから、→前後の語の関係性に意外性が少なく、ややつきすぎで惜しいが、そこまでの傷ではない。それよりも一句を貫くのびやかな気分が共感を誘う。好句。

・飛蝗とぶ星を拾いに行く河原(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→賽の河原ではないがどことなく「祈り」の気分が感じ取れる句である。日常と非日常世界を彷徨うようなムードがこの句の見どころ味わいどころであろう。好句。

・鍬入れの鍬にバッタの跳び付けり(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→出来ている上手い句であるが、よくある「韻を踏んだ詠法」、「鍬・バッタ」のイメージの近さ、「バッタ」→「跳びつけり」という→前後の語の意外性のなさ、などが「意外」に気になり惜しい。やはり「俳句はこう詠むもの」というような考え、「現実を現実らしく詠むもの」というようなスタンス、教条重視などをとっぱらう必要があろう。そこが課題。

・はたはたやくるくる廻る風の音(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→最近急に言葉の斡旋にたけてこられた高段者。今回も独自の世界を披露され心強い。「はたはた」はバッタのこと。「はたはた・くるくる」と句の表面で言葉の響きを面白がっているようなところが少し惜しいが、軽やかで楽し気な気分が共感を誘う。

・はたはたの絵手紙届く日曜日(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
→句意は明瞭、出来た句良い句なのであるが、「はたはたの絵手紙」だと「はたはた」の実在感が乏しいところが惜しい。「はたはたの/絵手紙」で切れている句ととれば存在感は出るが、この句場合切りづらい。そのあたりを考えてみてほしい。

特選B

・片脚の飛蝗しずかな薄緑(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→「片脚の飛蝗」が佇む様子を詠んだものか。「じずかな薄緑」が「片脚の飛蝗」を説明してしまっているようで惜しい。「片脚の飛蝗」とくれば「しずかな薄緑」あたりのイメージはいわずもがなので、何かを取りあわせるなど素材から詠み直してもいいだろう。参考に。

・きちきちや機械仕掛けのこの世界(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→「きちきち」の実感を詠んだ句であろう。虫に機械仕掛けを感じるというのはある意味ありふれているが、下五の収め方が上手くなんとか詩にもってきている。「機械仕掛けのこの世界」と作者が語ってしまっているところが惜しい。こういうところをモノに語らせる(モノに託して詠む)ようにするとさらによくなるであろう。

・難しい漢字着せられ螇蚸とぶ(ペンネーム「ゆうちゃん」さん 45歳)
→「難しい漢字着せられ螇蚸とぶ」と作者が語っているところが惜しいが面白い句である。こういうところをモノ(情景)に託せるようになればもっとよくなりそうである。

・梵鐘やバッタの羽音打ち消して(ペンネーム「Dr. でぶ」さん 46歳)
→句の後半が「~して~する」と説明的で惜しいが、実感のこもった情緒ある句である。ここまで詠めれば、どんどん多作されるのがよいであろう。モノ(情景)に託すこの方向で。好句。

・次々とバッタ緑の風を跳ぶ(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→詠み方がどことなく情緒があるのが救いであるが、すべて「バッタ」の一語に収斂される。全体敵に「~と~が~の~を~する」と散文で説明的なのが惜しい。脚本(説明・叙述・出来事・短歌的発想)ではなく、如何にキャスティング(象徴・モノ・情景)に入るか。それが大きな課題。

・野をゆけば独白のごとバッタ発つ(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→俳句以外の詩であれば、このような意味性の強い言葉を出してきても詩になるのであるが、俳句は短いので基本的にそれが向いていない。モノ(情景)に託して気持ちを詠まざるを得ない世界なのである。また俳句は俳句そのものが隠喩(象徴)なので比喩を安易に持ち出さないようにしたい。「独白すバッタの影や鰯雲(季重なりだが)」など、ここから俳句にしてゆきたい。参考に。

・バッタ飛び補色の空に溶けていく(ペンネーム「たけの子」さん 59歳)
→「補色の空」が面白い実感。惜しいのは「バッタ」→「飛び」、「空に」→「溶けてゆく」がありきたりな措辞になってしまったところ。そのあたりを整理したい。

・海へ行くバッタ地雷を踏まぬよう(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→詩的な表現でもっているが句としては弱い。俳句は短いので説明・叙述・出来事・心情などの表現は向いていないのである。よって脚本ではなくモノ(情景)のキャスティングに徹するようにしたい。熱いものはもっておられるようなので、そのあたりの転換を期待したい。

・オンブバッタ横切ってゆく面構え(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→一句の中で世界が堂々巡りしているようなところが惜しいが、それが俳味にもなっている。スローモーションでも見せられているかのような感覚がひきつける。好句。

・水溜まりの空の高さを跳ぶ飛蝗(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→なんとなく出来ている句であるが、「水溜まり・空・跳ぶ・飛蝗」と、すべてのモノの関係性が近いのと、「~の~を~する~」と説明的であるところが気になる。そのあたりを攻めたい。

・捕虫網バッタの周りを飛び跳ねる(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→飛び跳ねるのがバッタではなく「捕虫網」というところが面白い。俳味(おかしさ)の句である。俳句はこのように小さくオリジナルな実感を掴んできてくれればいいのである。「捕虫網」は夏の季語であるがこの場合気にならない。好句。

・きちきちや将軍杉に住む天狗(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→「将軍杉」は、新潟県東蒲原郡阿賀町岩谷にある国の天然記念物に指定された1400年の杉のこと。大きな気分の句である、この句は非日常的な「将軍杉・天狗」の両者が喧嘩している印象。「きちきちや将軍杉の影匂う」など、どちらかを外して句に持ってゆきたい。

・絵日記のはみ出すバッタの薄緑(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→面白い詠み方である。絵日記に書かれたバッタの絵がはみ出しているのか、「はみ出す/」で切れた句で、絵日記と実在のバッタを重ね見ているのか両方にとれる。惜しいのは「バッタ」→「薄緑」のあたり前の関係性。そのあたりを整理したい。参考に。

・キチキチの跳んで青空凹ませる(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→バッタの強いジャンプ力を詠んだ句であろうか。「青空凹ませる」は面白い発見。惜しいのは「~の~して~を~させる」と説明的なところ。また「跳んで」は言わずもがな。そのあたりを攻めたい。好句。

入選A

・影法師肩に寄り添う飛蝗かな(ペンネーム「ショコラ」さん 44歳)
→大変落ち着いたムードの出た句である。原句の場合、「影法師」の「肩」なのか、自分の「肩」なのかいまいちわかりにくいので、「キチキチの肩に寄りそう影法師」などと整えたい。モノ(情景)に託して詠む方向はよい。好句。

・黙祷の隙見に逃げる飛蝗かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
→俳味(おかしさ)の句であるが、全体的な詠み方が作為的であり、コト句(出来事句)の気分であるところが惜しい。安定した託し詠みの世界に入ってきてほしい方である。

・バツタ飛ぶ包み込む空バター色(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
→詠み方がまだ追い付いていないが、自分のオリジナルな実感を打ち出してきているところが大変よい。詩なので「きちきちの空包み込むバターかな」などもあろう。この方向で。好句。

・靖国の木陰で休むバッタかな(ペンネーム「もじこ」さん 49歳)
→「靖国」であるからいろいろ背景が見えてきそうであるが見えてこないのが惜しい。俳句はこのような素材を詠めばなんとかなるというのではなく、自身のホンモノの実感を掴みにいくようにしたい。

・球児らの影なき芝生バッタ翔ぶ(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→ムードある表現であるが、言葉の美にもたれているところが句を弱くしている。句の表面で何かをしようとせず、モノ(キャスティング)に徹して、そこからイメージされる世界を大切にしたい。ここまで詠めたら「球児らの影の行き交うバッタかな」など最初の発想にとらわれずモノの存在をしっかり打ち出して詠んでみたい。参考に。

・バッタ飛ぶ父は転んでよう起きぬ(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
→高齢のお父さんを詠んだ句のように受け取れる。事実とすれば大変な状況なのであるが、どこか滑稽である。すなわちそのような俳味を醸し出しているところがこの句の魅力。お見舞い申し上げます。

・座布団の上に殿様ばつたかな(ペンネーム「鯉こころ」さん 55歳)
→なかなか俳味の感じられる句であるが、どこか作り物っぽいところが惜しい。やはり「座布団」→「殿様」ではつきすぎであろう。そのあたりを攻めたい。

・バッタとぶ男子は女子のじゃまをする(ペンネーム「眠る烏龍茶」さん 55歳)
→こちらも俳味の句。「バッタ」の気分になかなかよく合っている。作者が語るのではなくモノ(情景)に語らせるようにすればさらによくなる。好句。

・朝の空霧晴れわたりバッタ飛ぶ(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
→一句全体が時間にそった説明句になってしまっているところが惜しい。素材は悪くないので「早朝の空の高さやバッタ飛ぶ」など。参考に。

・サーカスのテントが立つやバッタ跳ね(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→「サーカス」の気分と「バッタ」の跳ねる様子を取りあわせた連想に無理のない句である。どことなく詠みがもたもたしているところが惜しいので「サーカスのテントの並ぶバッタかな」などもあろうか。参考に。

・飛んでったバッタ右脚忘れてる(ペンネーム「おくにち木実」さん60歳)
→気分の出た句であるが、「飛ぶ・バッタ・脚」のつきすぎや、「忘れてる」とモノ(情景)ではなく作者が語っているところが惜しい。そのあたりを整理されるとよい。

・おぼろ雲墓前の菊に飛蝗かな(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
→「雲・墓。菊・バッタ」とモノが多くて窮屈なので、そのあたりを少し整理して「バッタ跳ぶ墓前の雲の白さかな」などと整えたい。参考に。

・夏の夕虹色に染まるバッタかな(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
→素直な実感でよいのであるが、やはりやや表現がストレートすぎて惜しい。「虹色に吾の影染まる飛蝗かな」など。参考に。

・ページ繰る風にバッタと遊びおり(ペンネーム「松廣李子」さん 63歳)
→俳句はモノ(情景)を詠む詩なのであるが、出来事を詠んでしまっているところが惜しい。「ぺージ繰る風の重さの飛蝗かな」などとすればグッとムードが出そうである。参考に。

・サーカスの小屋の杭打ちバッタ跳ぶ(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
→「サーカス小屋」と「飛蝗」の句は上にもあったがなかなかの素材の取り合わせ。このような詠みもあろうか。好句。

・陽に遊びバッタ一飛び月の影(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→メルヘンチックなであるが全体的に観念的なところが惜しい。無理に大きな時空を詠もうとせず、昼か夜か、眼前の小さなモノ(情景)の実感をつかまえにいくほうがよいかもしれない。

・高原の星の真下をバッタ二羽(ペンネーム「ぐずみ」さん 68歳)
→詠みが素直で俳句らしいが、「高原・星・バッタ」と並ぶとどうもイメージが近くて詩になりにくい。下五まで言うとかなり説明的なので、せめて「飛蝗かな」くらいにしてみたい。

・螇蚸飛び童貞の足怖気づく(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→なかなかユニークな把握なのであるが、「螇蚸飛び」どうして「童貞の足怖気づく」のか、解釈の取り付く島がないところが惜しい。俳句には確かに句の解釈を読者に委ねるという性質があるが、それは俳句が句になっている(象徴)の場合のこと。象徴の場合は解釈の複数性があるので(原因と結果が一対複数)それでもよいのであるが、「螇蚸飛び」どうして「童貞の足怖気づく」のか推理小説のように原因と結果が一対一の関係性の場合、そのひとつの解を探しにゆくのは大変窮屈である。よってモノ句なのである。これは俳句型式の「短さ」が生理的に要求しているものと言えよう。

・満天に飛蝗集まり能舞台(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)
「飛蝗・能舞台」このキャスティングはよい取り合わせである。あとは器にどう盛り付けるか。「はたはたの影ふるえだす能舞台」などと詠めば、より気分が出そうである。参考に。

・小さき風に飛蝗跳ね飛ぶ無人駅(ペンネーム「ようちゃん」さん 70歳)
→「飛蝗・無人駅」もなかなかの舞台装置である。上の句ではないがどう器に盛るか。「きちきちの風の運ばる無人駅」など。参考に。

・墓石のおんぶバツタに母重ね(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
→気持ちは大変よくわかるが、「母重ね」まで言ってしまうと言いすぎであろう。「母の声」くらいか。参考に。

・バッタ見てふる里想う母想う(ペンネーム「ぜんしょう」さん 71歳)
→こちらも郷愁の気分の句であるが、ここまで畳みかけられると少し重たい。「ふるさとのバッタの影や母の顔」lくらいか。参考に。

・日が暮れて精霊バッタ草揺らす(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
→夜になると「バッタ」が動き出すというのは現実の反対の光景なので少しドキッとさせられる。「~して~が~する」というところが惜しいので、そのあたりを今一度せめてみたい。

・バッタ取り原っぱ駆ける子供たち(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
→素直な実感が詠み込まれた句であるが、やや素直すぎて物足りない。日常を詠む場合は、そこに批評精神がほしい。

・バッタ舞う草の胡弓に風の笛(ペンネーム「まあちゃん」さん 72歳)
→美しい世界観なのであるが、作為的であり観念的、頭でこしらえたようなところが惜しい。素材は悪くないので「キチキチの影や胡弓の弦のいろ」など、ここから素材を活かして句にもっていきたい。参考に。

・夕間暮れ家路を急ぐバッタかな(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→全体的な世界観がどうも日常的で飛躍に乏しいのが惜しいが、句になっている。「夕間暮れ・家路を急ぐ」のイメージが近いので、「キチキチの家路を急ぐ子供かな」などもあろうか。参考に。

・釣り舟や黄金の波に乗るバッタ(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→「風鈴」との季重なりがどうのいうのではなく、説明的で詠みが追い付いていない「風鈴の口ひらきつつ黒出目金」など、最初の意味や発想にとらわれず素材を活かして整えたい。参考に。

・短距離走スタート練習見るバッタ(ペンネーム「東広島の七十爺」さん 75歳)
→ユニ―クな句である。どことなく説明的なので「陸上選手駆け出すバッタかな」などでは。参考に。

・バス待つ間ふいに飛び来る飛蝗かな(ペンネーム「かっちゃん」さん 77歳)
→実際の出来事であろうか。ほとんどできた句なのであるが、当たり前であることや説明的なところが惜しいので「バス停のバス走り出すバッタかな」など説明を避けて詠んでみたい。参考に。

入選B

・踏み切ったバッタの足もやけどかな(ペンネーム「まいみょん」さん 17歳)
・日本晴震える屋根のバッタかな(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 18歳)
・廃駅や飛蝗と世捨て人のうつつ(ペンネーム「竹伍」さん 26歳)
・太陽に飛び込むバッタ夏半ば(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
・きちきちの跳んで世界は熟れてゆく(ペンネーム「ぐ」さん 35歳)
・尻高く諸手被せるバッタかな(ペンネーム「登るひと」さん 35歳)
・バッタ来る無言の庭や青い空(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
・禿鷹の行く晴天の背の飛蝗(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・客船の窓にバッタがへばりつく(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)
・バッタ紙飛行機のごと草むらへ(ペンネーム「ふくろう」さん 40歳)
・バッタ止まり葉が揺れたりし手の中へ(ペンネーム「よこたん」さん 41歳)
・飛蝗飛ぶ秋の風情漂いたり(ペンネーム「HK」さん 42歳)
・騙し合い蜥蜴とバッタの背比べ(ペンネーム「マリオネットキヨタカ」さん 43歳)
・見え隠れトノサマバッタ何処へ行く(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・自販機に精霊バッタやって来て(ペンネーム「放送きよたか」さん 43歳)
・ぎょろり目でゆっくり休むバッタかな。(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・見かけますバッタは何を思うのか(ペンネーム「わた」さん 45歳)
・夕涼みバッタ飛ぶ飛ぶ秋の庭(ペンネーム「テレビ派ソラシド」さん 47歳)
・焼け野原芽吹いた緑バッタの子(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
・ファミレスの窓にバッタや青信号(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
・帰り路の後部座席にバッタかな(ペンネーム「洒落神戸」さん 51歳)
・平成の夏も終わりとバッタ鳴く(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・平和公園バッタも叫ぶ核なき世界(ペンネーム「西区のぺんぺん草」さん 55歳)
・夕の畦袖にバッタや草を刈る(ペンネーム「梅こんぶ」さん 56歳)
・きちきちの居そうな繁み出勤す(ペンネーム「都乃あざみ」さん 56歳)
・踊り場やバッタを追い越す孫と息(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・砂漠飛ぶバッタの群や砂嵐(ペンネーム「9月の雨順子」さん 61歳)
・捕まえた飛蝗に機を織らす母(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・バッタ捕りいつの間にか迷子なり(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・夏枯れの草原行くかバッタかな(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
・菜園に住まうバッタのにくらしき(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・磨かれし渡り廊下をバッタ飛ぶ(ペンネーム「ヤチ代」さん 69歳)
・夕暮れに注意払わずバッタ飛ぶ(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
・古希迎え気弱なバッタ若葉の上(ペンネーム「グラングラン」さん 70歳)
・赤ちゃんをおんぶのバッタに金メダル(ペンネーム「はなママ」さん 71歳)
・草茫々錆びた線路にバッタ跳ぶ(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 73歳)
・きちきちと祈るさだこの像の哀(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・バッタ追う子らの声消え野は真っ赤(ペンネーム「チックちゃん」さん 76歳)
・残したる青の一筋バッタにと(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・どら猫の不意打ちかわすバッタかな(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
・バッタ飼うデパートの昼午後八時(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

ユニー句(句)

・日々情報バッタバッタと届けます(ペンネーム「まんまるちゃん」さん 39歳)
・鳴きバッタ共にいと美しケンタギター(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・夏休み宿題終わらずバッタバタ(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・バッタ跳ぶホップステップ大ジャンプ(ペンネーム「はなちゃん」さん 43歳)
・恐妻家オンブバッタを羨望し(ペンネーム「Dr. でぶ」さん 46歳)
・バッタ追いホップステップ孫も跳ぶ(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・キチキチを捕り過ぎ籠はキッチキチ(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・庭仕事猛暑で手抜き葉にバッタ(ペンネーム「キューちゃん」さん 62歳)
・風に乗り君の背中にオンブバッタ(ペンネーム「是多」さん 64歳)
・跳びバッタ信号無視の交差点(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・田んぼ道置いた図鑑にバッタ乗り(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・バッタ捕り子は後ろから父は前(ペンネーム「東広島の七十爺」さん 75歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年8月1日(水)

第95回 お題「金魚」(選と評 谷村秀格先生)
総評

この度の西日本豪雨災害のお見舞いを心より申し上げます。
災害報道を優先させていただいた関係で、放送及び結果の発表が、延期になりましたことをお詫び申し上げます。

今回も全国から沢山の句を頂き感謝を申し上げます。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです。

以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の「星の信号機」はモノ(情景)にしっかり託し詠んだ8才の秀作。
入賞句の「青空」は立体感あるのびやかな句。
入賞句の「反戦画家」は、取り合わせのつり合いのよい句。
特選Aは入賞候補として残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
実在の「金魚」ではなく、あきらかに洋服の柄などの金魚などを詠んでいると思われるものなどは、残念ながら選外にさせていただきました。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「琉金や夜空に星の信号機」(ペンネーム「モッツァレラ2号」さん 8歳)

金魚鉢の置かれた夏の夜の窓辺からの情景を詠んだ句であろうか。
優雅な「琉金」と「星」の織りなす絵本世界のような光景やイメージが美しく、作者、あるいは金魚鉢に閉じこめられた「琉金」が、かなたの「星」をしみじみと感じている夏の夜のムードが趣き深い。
どこかしら、眼前の「琉金」に自分自身を重ね見て、遠くの好きな人(星)を思っているという恋の句のようにも感じ取れる。
この句の良いところは「星の信号機」。
これが「星のきらめき」などであれば、好きの人に憧れているのかなという程度であるが、「信号機」であるから、作者はそこに「進める・進めない」など、なんらかのメッセージ性を覚えているのである。
「進める」としても、金魚鉢の中の「琉金(作者)」にとっては、飛び出すことは命がけ。
それは、恋の葛藤・告白を迷う気持ち・好きな人を思う気持ち、などではないか。
一見、幻想的な句のようであるが、句をめくってゆくたびにそのような事情が感じ取れてきて、その最奥に置かれた作者の恋の葛藤のような心情が共感を誘う。
句の表面の言葉に直接気持を表さず、モノ(情景)に上手く「託し詠み」した将来恐るべしの8才の佳句。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
はっとした実感を迷わず掴む。

入賞

「青空に雲ひとつあり金魚玉」(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)

さわやかでのびやかな一句である。
「金魚玉」はまるいガラスの金魚鉢のことで、軒に吊るして金魚をめでたり涼やかさを演出したりするもの。
縁側にひっくりかえって、田舎の広い夏空に心遊ばしている作者の様子が浮かんでくる。
背後に広がる「青空」、ぽっこり浮かぶ綿菓子のような白い「雲」、そして近景の「金魚玉」、というふうに眼前の世界に、自由自在に心を行き交わせている作者ののびやかな心境が、共感を誘う。
この句のよいところは絵画的な世界観。
背景の空(青・静)、遠景の雲(白・動)、近景の金魚玉(赤・ちらつき)、の織りなす立体感・色彩感が実に明瞭で美しい。
かっちりとした構図の写生句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
立体感をもたせる。

「和金魚や反戦画家の旅続く」(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 70歳)

「和金」は金魚掬いで見られる一般的な金魚。
「反戦画家」の描いた「和金」の絵を詠んだ句ともとれるが、それでは季語の実在が希薄なので、夏祭りの金魚を眺めているとき、ふと広島の夏を実感し詠んだ句ととる。
8月となり、広島も今年も原爆の日を迎えるが、広島に住む人々にとっては何年たっても夏と原爆のイメージは切り離せない強烈なものである。
そのような気分や、全世界から戦争がなくなるまで活動を続けてゆくというという画家の気概、そしてそれに共感する作者の気持ちなどが、「続く」という現在形の表現(動き・活動)にうまく託されている。
また、華やかな琉金ではなく素朴な「和金」なので、「反戦画家」の地道な息の長い活動との釣り合いもよくとれている。
ちなみに、「和金魚」という言葉は「和金」に対する作者の造語であろう。
この句の場合そこまでの傷ではないが、できるだけ造語は避けるようにしたほうがいい。
平和な世が訪れ「旅」が終わることを祈るばかりである。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
つかずはなれずのイメージ(モノ)を取りあわせる。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・ブラジャーを外し昼寝の金魚かな(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※大阪北部地震の後、夜も服を着て休んでいます。夜中に続いた余震が怖かったので。朝、着替える時の一瞬の光景を詠みました。水害の日に東広島に帰る予定でした。新幹線が運休になっていなかったら、私も被害に遭っていました。今度、いつ、俳句道場を見られるほど広島に穏やかな生活が戻るのかと今日も祈り続けます。
→続く災害で、眠るときも不安な方も多かろう。しかしながら俳句は一句そのものから立ち上がるイメージを味わうもの。その意味では大変コケティッシュな世界観である。「ブラジャー・金魚」などの女性的なイメージが強すぎるところがやや惜しいがオリジナルな実感が大変すぐれている。お元気で次回の投句もお待ちしております。

・琉金やゆらり逃げゆく山手線(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※「金魚」、3音の季語でつくるの難しい・・。
→山手線に金魚が泳いでいるという句ではなく、「金魚」と「山手線」のそれぞれのイメージを取り合わせた句である。異質なモノ同士ながら両者の揺れながら進む姿がよく似ており、そういうところが「つかず離れず」の気分をかもしだしていて上手い。しかしながら、「琉金↔ゆらり↔逃げ行く↔山手線」のそれぞれ前後の言葉の関係性がありきたりで。そのあたりが今後の課題になろう。

・引越して玻璃に戸惑う金魚かな(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※我が家の近くの新築住宅に7月1日に引っ越して来た家族、荷物を運んでる状況の句です。
→名人に至るまでさまざまな世界観や詠みぶりを見せてくれた作者であるが、この句は大変控えめであり素朴。俳味(おかしさ)の世界であるが、「~して~する」というような説明表現を避け「琉金の玻璃に戸惑う新居かな」などとすれば一段スッキリしそうである。参考に。

入選句

特選A(入賞候補)

・鱗から藻に隠れたる出目金魚(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→一見平凡な写生句のようであるができている。「鱗から藻に隠れたる」が素晴らしい発見である。俳句は何も大きな感動や変わったことを詠まなくともいい。このように小さな発見、できるだけオリジナルな発見を掴んでくればいい世界なのである。佳句。

・緋の金魚その色水に溶けるまで(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→この方の弱点はどこまでいっても散文的発想(イメージを言葉にする)から離れられないことであるのだが、この句の場合はできている。大変進境の感じられる句である。しつこくたたみかけるような表現妖が艶な世界観とよくマッチしており、女の情念のようなものがしっかり感じ取れてきて共感を誘う。やはり借り物ではない自分の実感を自分の言葉で表現することが大切である。無意識から詠むこの方向で。好句・佳句。

・金魚描く色鉛筆を買いに行く(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→金魚の存在感が少し乏しいところが惜しいが、俳句の短さを逆手にとって軽快に詠んであるところに進展がみられる。俳句は何も大きな感動を詠まなくともいい。このように小さな発見、できるだけオリジナルな発見を掴んでくれはいい世界なのである。この方向で。好句。

・ガラス鉢膨張してゆく黒出目金(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→膨張してゆくのは「ガラス鉢・出目金の腹・出目金の目」。夏の楽し気な気分・期待感をモノの様子(情景)に上手く託し詠みした一句。好句。

・ジャズバーのしずかに泳ぐ金魚かな(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
→「ジャズバー・金魚」、このキャスティングだけでおおよそ成功している句である。「しずかに」が一句の気分として意外性がなく安易なので、そこを攻めたい。好句。

・白無垢に淡き紅さす金魚かな(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→結婚式の句というよりは、「白無垢・金魚」の取り合わせの句ととりたい。女性的な気分が出すぎているところが少々くどいがなかなか美しい。これも一句であろう。 好句

・金魚玉付箋の増える旅の本(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→軒につりさげられた「金魚玉」を眺めつつ旅行の本をめくっているのであろう。「金魚玉」その向こうに見える大きな空に、高まる旅へのワクワク感が上手く託されている。好句・佳句。

特選B

・金魚の目うみの鯨の黒さかな(ペンネーム「青海也緒」さん 36歳)
→「金魚・鯨」の取り合わせの句であるが、やや意図的な対比が惜しい。俳句は短いので作為やテクニックで詠むとそれこそが鑑賞の邪魔になってくる。頭で作らず無意識からの作句を心掛けるようにしたい。モノに託す方向はよい。

・金魚飼う空になりおる祖母の家(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→俳味の句であろうか。「なりおる」と作者が言っているところが惜しい。こういうところを「金魚飼う空にぶつかる祖母の家」など、モノ(情景)に語らせるのが俳句なのである。そこが課題。

・琉金の尾鰭に透る仁王門(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→大きな気分の句で詠みもなかなか。ここまでくると舌頭千転「琉金の鰭すきとおる仁王門」などすっきりとさせたくなる。なかなかの佳句。

・献血やパッチワークの金魚たち(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→「献血・パッチワーク(キルト)・金魚」この三者の意外性ある組み合わせが手柄。惜しいのは布の「金魚」と捉えられてしまいそうなところ。「琉金やキルト模様の献血所」など、実在の「金魚」をしっかり打ち出して詠みたい。

・灯されてもみ合う真夜の金魚かな(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→エロス・情念の気分がよく出た句。上五が抽象的というかいわずもがななので「真夜中の匂いもみあう金魚かな」などと整えたい。参考に。好句。

・屋敷跡記憶失くした金魚かな(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
→ムードのある句なのであるが、どこか詠みがやや追い付いていない印象である。脚本(言いたい事)よりも「キャスティング(モノ)」に重心を置くようにしたい。そこが課題。

・金魚吊る軒に岩雲泳ぎけり(ペンネーム「松廣李子」さん 63歳)
→のびやかな気分の句。上五は金魚玉のことであろうがやや強引な印象。「金魚玉岩雲ひとつ」などと素直にうちだす方がよいだろう。しかし「金魚」ではなく「岩雲」を泳がせたのは手柄。モノ(情景)に託すこの方向で。

・金魚飼うダンスホールの腓かな(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→なかなかムードの出た句であるが、「金魚・ダンスホール・腓」という女性的なイメージで押しすぎなところがややくどい。「琉金やダンスホールの靴の音」など、もう少し軽く詠んで、イメージのバランスを取りたい。参考に。

・金魚鉢施設の母のひとり言(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
→言いたい事はよくわかる。「金魚鉢・施設」の意外性は詩になる条件をもっているが、後半にゆくにしたがって大変ありきたりな表現になっているところが惜しい。「金魚鉢施設の母のくちひらく」など、大胆に把握してみたい。参考に。

・金魚売り遠く流れて子守唄(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
→どこか懐かしい気分の句。中七が言葉に溺れているというかたるんだ表現で惜しい。「聞こえてきたる」など実感を素直に詠んでみたい。参考に。

・一葉の机の脇の金魚鉢(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
→「一葉」は樋口一葉のことであろうか。気分はよく分かるのであるが「一葉・机・脇・金魚鉢」この隣合う語と語の関係がどれも平凡になってしまっていて惜しい。「一葉の机欠けたる金魚鉢」など、日常を詠む場合は、意外性・批評精神をもって詠むようにしたい。語と語の関係性のどこかに飛躍がんないと詩になりにくいであろう。参考に。

・雨の夜や素顔に戻る金魚売(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→私は「俳句にならない語はない。俳句にならない語と語の関係性があるだけである」とよく言うが、やはり語と語の関係がありきたりであるところが惜しい。「雨の夜の素顔もみ合う金魚かな」など、最初の発想にとらわれず、素材を活かして詩にもっていきたい。参考に。

・帯締に留まる金魚の尾鰭かな(ペンネーム「ありんす」さん)
→現実的には「帯締」に金魚が「留まる」はずはないのであるが、「金魚」はをデザインのことだと現実に引き寄せて解釈するのは早急である。こう詠まれて違和感がないのが面白い。この日常と非日常のはざまに心遊ばせている作者ののびやかな心境が楽しい。詩的真実の句ととる。

入選A

・けだるさや祭りの後の金魚鉢(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
→ストレートな詠み方である。「けだるさや」など作者が直接語るのではなく、「波打つや祭りの後の金魚鉢」など、モノ(情景)に託して詠むようにしたい。参考に。

・蝉時雨水草かき分け舞う金魚(ペンネーム「アップル」さん 35歳)
→全体的に言葉に酔いしれているような詠み方が一番惜しい。「蟬時雨」との季重なりもやや気になるがので素材から再考したほうがあろう。実感をしっかり持っているところはよい。

・兵児帯のほどけるごとに金魚ゆれ(ペンネーム「さきのすけ」さん 35歳)
→「俳句はこう詠むもの」という先入観で詠んでいるような飛躍しきれないもどかしさをどうも感じる。何よりモノ(情景)ではなく「~した」という出来事を詠んでいるところが惜しい。脚本(出来事)からキャスティング(モノ・情景)への視座の転換が急務である。

・ゆらゆらと天女の如く舞う金魚(ペンネーム「へやま」さん 37歳)
→金魚を金魚らしく詠みましたという句で、そこが物足りない。俳句は「イメージ(現実・らしさ)を言葉にする」のではなく「言葉がイメージを導く世界(言葉が先)」の世界なのである。金魚と何かを取りあわせて詠むなど、視座の転換が必要であろう。

・しづかなる猫の眼光出目金魚(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→韻文ではなく散文の強引な省略であること、一句の世界観がありきたりであることが惜しい。このあたりは作者の宿題としておこう。仮名遣いは現在使われ将来も使われる仮名遣いを採用して不足はないはずなので、俳句道場では「現代仮名遣い」を使うようにしてほしい。

・他国から集まる仲間金魚君(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
→「異国から仲間あつまる金魚かな」などと詠めば、一段すっきりする。子供っぽさ・散文的な詠み方を改めたい。参考に。

・金魚飼うをんな撫でをり硝子越し(ペンネーム「蓼科川奈」さん 43歳)
→ムードの出た句。少々詠みに慣れていないようなところが惜しい。「金魚飼う女の撫でる窓ガラス」などと整理すると一段よくなりそうである。参考に。

・三歳児金魚掬いて空を見る(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
→タダゴトのようであるが「空を見る」というところによく実感が出ている。脚本(出来事)ではなく、キャスティング(モノ)で詠む方向に重心を移すとさらによくなりそうな方である。

・水草の木漏れ日の下金魚棲む(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
→金魚を金魚らしく詠んだ句である。ということは逆に言えばすべて「金魚」のイメージに収斂されてくるということ。「らしく詠む」ことは俳句(詩的言語)においてあまりメリットがない。季語を説明せず、モノのキャスティングにチャレンジされたい。

・吹く風や水面たゆたう金魚玉(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→なかなか詩的な表現なのであるが、「金魚玉」を「金魚玉」らしく詠んだだけの句ですべて「金魚玉」のイメージに収斂される。「らしく詠む」ことは俳句においてメリットがないので、「取り合わせ(モノのキャスティング)」などにチャレンジされたい。

・ブイアールゴーグル覗く金魚かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
「ブイアールゴーグル」はVR体験のできるゴーグルで斬新である。しかしながら「ブイアールゴーグル→覗く→金魚」と並べると、→前後の語と語の関係性に飛躍がなく平凡で詩になりにくい。例えば「ブイアールゴーグル枯れる金魚かな」あたりだとまだ詩になりそう。要は「俳句にならない語はない。俳句にならない語と語の関係があるだけである」ということになる。参考に。

・南仏の窓辺にそよぐ金魚かな(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
→場所や光景などの情報が過不足なく入ったきちんとした明るい気分の句であるが、どうも詩の命である実感がどこにも感じられないのであるず惜しい。例えば一文字一文字が下手でも思いっきり書いた書の作品が心を打つように、技法や型やテクニックなどではなく、無意識からの実感こそを(小さくともいいので)大事にしたい。

・大気圏窓にはりつく金魚かな(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→ロケットの中の「金魚」を詠んだ句であろうか。あるいは大胆な取り合わせであろうか。前者の句とすればやや説明的だし、後者だとすればやや離れすぎな印象。これに懲りず、自身の実感を自身の言葉で大胆に詠んでいってほしい。

・水面揺れ□き口の金魚かな(ペンネーム「洒落神戸」さん 51歳)
→俳句の本領は言葉からイメージされる世界にあるのであって、ファッションではないのだから、記号を多用したり多行にしたり旧仮名にしたりなど見た目にこだわらないことである。しかしながら「四角き口」というオリジナルな発見は見事。「水面ゆれ」はいわずもがななので「飛行雲四角き口の金魚かな」など、最初の発想(脚本)にとらわれず、大胆に詩にもっていきたい。

・金魚ぷかり星屑ひとつはきだして(ペンネーム「オカ・カシオ」さん 53歳)
→詩的な表現ではあるが散文的である。俳句は短歌のように長さがないので脚本・説明・出来事は苦手なのである。よって最初の発想にとらわれず「星屑のひとつ死にゆく金魚かな」など、もっとモノ(情景)に重心をかけて、象徴的に詠むようにしたい。

・窓の鉢空と金魚が浮遊する(ペンネーム「さゆりん」さん 56歳)
→窓辺の光景を詠んでいるのはわかるが「窓・鉢、空・金魚」とモノが多いからかので少し整理してポイントを絞りたい。

・抜け殻となりて金魚の浮く朝(ペンネーム「都乃あざみ」さん 56歳)
→死んだ金魚の様子を詠んだ句であろう。少し説明的なので、「琉金の腹さかさまの昼の月」など、その抜け殻のような気分をモノ(情景)に託して詠みたい。参考に。

・バス停のビニール袋の金魚かな(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→情報は過不足なく入っているのだが、傍観であるところが惜しい。やはり実感が置いてけぼりになっているようである。「バス停の忘れられたる金魚かな」など、実感ある世界、あるいは対象と一体となって詠みたい。参考に。

・想い出を数多手に乗せ金魚埋む(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
→優しさの出た句であるが、前半が観念的・主観の出すぎで惜しい。「白雲のひとつ手に乗せ金魚埋む」など、俳句はこういうところをモノ(情景)に託したい。参考に。

・片隅の金魚に餌やりつつ母偲ぶ(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
→寂しさが出ているのであるが、「偲ぶ」は作者が直接語っているところ。「流金の影しずみゆく母の顔」など、こういうところをなんとかモノ(情景)に託したい。参考に。

・金魚連れ単身赴任する男(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→ドラマのワンシーンのような光景が印象的でひきつけるが、出来事(脚本)を詠んだ句であるところが惜しい。モノ(キャスティング)に重心をもっていくようにしたい。

・琉金の振袖揺らしゆらゆらと(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→気分は出ているのであるが、詠みが追い付いていない。「振袖のゆらめいている金魚かな」くらいなら整うが全体的にありふれたイメージ。やはり「らしく詠む」のではなく、ありきたりをさけて詠むようにしたい。

・プールから金魚連れ去る土曜市(ペンネーム「東広島の七十爺」さん 75歳)
→少しはっとするできた句なのであるが、「~から~する」という説明表現になっているところが惜しい。「少年の金魚連れ去る土曜市」など、最初の発想にとらわれず 思い切り詠んでみたい。

・金魚田や江戸の風情の残る場所(ペンネーム「かっちゃん」さん 77歳)
→雰囲気・響きは俳句らしいのであるが、すべてが「金魚田」に収斂され惜しい。特に「江戸の風情の残る」というのは、作者が語っているところなので、「下町の街の匂いや金魚池」など、モノ(情景)に語らせるようにしたい。参考に。

・一人居の祖母になつきし金魚かな(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
→こちらの句も上と同様である。「らしく詠んいる」句なので、ありきたりであるところがどことなく惜しい。取り合わせなどを用いてもう少し大胆に詠みたい。

・縁日の記憶は黒の金魚かな(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
→実感がしっかりあるのであるが、表現が追い付いておらず惜しい。「縁日の影たどりつつ黒出目金」など、その気分をなんとなくでいいので、モノ(情景)に語らせるようにしたい。

・風鈴の音にでめ金も顔を上げ(名前なし)
→「風鈴」との季重なりがどうのいうのではなく、説明的で詠みが追い付いていない「風鈴の口ひらきつつ黒出目金」など、最初の意味や発想にとらわれず素材を活かして整えたい。参考に。

入選B

・庭先いぬ吠え迫る夏金魚(ペンネーム「オビ=ワン」さん 20歳)
・カップルで金魚すくい恋すくう(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
・落とし物テントいき苦しき金魚(ペンネーム「竹伍」さん 26歳)
・金魚鉢通さぬ世界に恋い焦がれ(ペンネーム「大福ママ」さん 28歳)
・金魚鉢終点駅に紅を差し(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
・金魚鉢スイスイ泳ぐ金魚かな(ペンネーム「一幸」さん 31歳)
・神泡に金魚の宴ぷぷっぴどぅ〜♪(ペンネーム「すいかレンジャー」さん 30歳)
・金魚には鉢の広さが地球です(ペンネーム「大野美波」さん 31歳)
・思春期の恋に似たるや金魚の尾(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
・花魁の金魚化粧の濃き金魚(ペンネーム「ぐ」さん 35歳)
・靴音はすでに表の金魚売(ペンネーム「登るひと」さん 35歳)
・金魚跳ね闇の境内石畳(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・隠微なる尾の金魚いる診療所(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
・金魚ばち3匹仲良く水曜日(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・赤ヘルの金魚の尾ひれ悠々と(ペンネーム「ふくろう」さん 40歳)
・金魚達浴衣いっぱい泳いでる(ペンネーム「よこたん」さん 41歳)
・金魚鉢涼やかなるが伝われり(ペンネーム「HK」さん 42歳)
・アロワナに食われる金魚生きる理由(ペンネーム「中岡秀次」さん 42歳)
・夏休み金魚すくい楽しいな(ペンネーム「タケちゃん」さん 43歳)
・水槽に出目金並ぶ仲間達(ペンネーム「マリオネットキヨタカ」さん 43歳)
・艶やかな金魚掬いて浴衣美人(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・君想い水面にあぶく恋金魚(ペンネーム「ショコラ」さん 44歳)
・キラキラと穴からのぞむ金魚波(ペンネーム「りりー」さん 44歳)
・かず君が金魚の世話上手だ(ペンネーム「わた」さん 45歳)
・青空の特別付録金魚玉(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・長生きは幸か不幸か金魚玉(ペンネーム「腹胃壮」さん 48歳)
・軒下のガラスの金魚見上げる目(ペンネーム「もじこ」さん 49歳)
・触れそうで触れもしないで金魚かな(ペンネーム「でこ」さん 52歳)
・生き残り良く言われない金魚かな(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・夏の夜の秘密隠すよ金魚の尾(ペンネーム「茉莉花」さん 54歳)
・らんちゅうやスポットライト朝六時(ペンネーム「雅」さん 55歳)
・夏祭り金魚すくいはお手のもの(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・ただいまの声に躍れよ屑金魚(ペンネーム「吉良水里」さん 56歳)
・金魚埋め忘れてしまふ庭のあり(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
・金魚草更紗ゆらゆら我が心(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・ライト浴び尾ゆらす金魚客誘う(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・金魚飼う物干し二段おしめ揺れ(ペンネーム「徳」さん 58歳)
・耳残る昭和の風情金魚売り(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
・フィルム越し流し目誰に金魚かな(ペンネーム「ラジャーナイン」さん 61歳)
・追ひ詰めて心苦しく得し金魚(ペンネーム「安田 蝸牛」さん 61歳)
・飼えなくて川へ流したあの金魚(ペンネーム「瑠緒ママ」さん 62歳)
・金魚姫空飛ぶ鯉に大変身(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・神の手にあっと掬われ夜の金魚(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・眠れなく夜半涼取る金魚玉(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
・蘭鋳をまじまじ見てる他人の顔(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
・らんちゅうは稚魚から1年ベビーまだ?(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・金魚さんあばれる河川沈めてよ(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・くず金魚ポイを破いて逃げ回る(ペンネーム「ヤチ代」さん 69歳)
・路地沿いの金魚と風鈴吊しのぶ(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
・試験月上田秋成金魚玉(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・サッカーの勝ち負け決める金魚かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・ポイ突破大河で龍となれ金魚(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 73歳)
・金魚には泳いでみたき海のあり(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
・寄り道の夜店に咲いた朱い金魚(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
・綿菓子と金魚とポイと踊りの輪(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・水槽の金魚留守番駄菓子屋に(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
・ボウフラが金魚鉢で餌になり(ペンネーム「隣のばあちゃん」さん 77歳)
・浴衣着て汗びっしょりで金魚追う(ペンネーム「tokusansan」さん 83歳)
・大海は逃した魚金魚にし(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

ユニー句(句)

・金魚飼う名前付けるがみな同じ(ペンネーム「きりん」さん 30歳)
・お祭りで金魚すくえずポイをポイ(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・金魚すくい思いきりはねてお隣さん(ペンネーム「彩の助」さん 44歳)
・優雅だな金魚2匹の恋ダンス(ペンネーム「テレビ派ソラシド」さん 47歳)
・今日の愚痴金魚にこぼす四畳半(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・ゆらゆらと金魚まいにち日曜日(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・餌もらい金魚にもある人見知り(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
・金魚鉢見上げ金魚に見下ろされ(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・縁日の金魚にジョッキ乗っ取られ(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・金魚掬い浴衣の娘が気にかかり(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・幼子やポイ破れても金魚追う(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年6月20日(水)

第94回 お題「蟻」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回も全国から沢山の句を頂き感謝を申し上げます。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです。

以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句は、大小の対比の効いた詩的真実の句。
入賞句の「マスゲーム」は、批評精神と俳味の効いた句。
入賞句の「病床」は、希望・喜びを美しくさわやかに読み上げた一句。
特選Aは入賞候補として残っていた句。
特選Bは原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「俯せの太陽背負う蟻の首」(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)

多くの人はこのような句を見たときに、「俯せなのは蟻だ」とどうしても現実に引き寄せて解釈するのであるが、もしそうであれば「太陽背負う俯せの蟻の首」と詠めばよい。
そうすれば意味もしっかり通り、内容にあった破調の迫力も出て一般的には立派な句になる。
このような俳句が出てきたときに、上記のように添削してしまう先生もいるであろう。
しかしながらそうすると、意味や内容の分かりやすさ(論理)と引き換えに、詩としてもっとも大事な「感動・実感」が失われ、抜け殻のような傍観の句になってしまう。
この句の場合、何と言われようと「俯せ」なのは書かれてあるとおり「太陽」でなければならない。
地面にべったり貼りつく熱く大きな「太陽」、それを一身に背負うか細い「蟻の首」だからこそ、「夏のすさまじさや小さな命の生命力」が実感されるのである。
さらに注目すべきは、人間が感覚的に把握できるもっとも大きなものの象徴である「太陽」を、もっとも小さなものの象徴である「蟻の首」がしっかり受け止めている点である。
すなわち現実的には釣り合うはずのない力関係を一句の中で拮抗させている「詩的真実」である。
これによって句から、「カタチあるすべてのモノは仏となる性質をもっている(空海)」ではないが、例えば大も小もなくその「本質は同じ」というような真理のようなものまでもが感じ取れてきて、共感を誘う。
見えるもの(太陽・蟻・A)を詠むことで見えない世界(真実・非A)を伝える奥行きのある宇宙流の見事な一句。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
俳句は詩であり韻文。論理や意味にとらわれず「無意識からの表現」を大切にする。

入賞

「マスゲーム東へ西へ蟻走る」(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)

「マスゲーム」とは多くの人が集まってダンスや体操などを行う一斉競技のこと。
集団行動の象徴のような「蟻」に思いを馳せていたら「マスゲーム」が不意に浮かび「これだ」と思われたのであろう。
「マスゲームと蟻たちのイメージの重なりの面白さ」、そこまで実感できれば俳句は詠めたも当然で、575の器にポンと盛ればよい。
すると後はただ読者がイメージを楽しむ時間、となるわけである。
「蟻の様子をマスゲームのように捉えた句」ととれなくもないが、そうであればいかにも浅い。
そうではなく、人間社会を「マスゲーム」と捉え、何かに翻弄されるそのせわしなさを「走る」あたりで詠んだ「批評精神」の句ととりたいし、この句のよさもそこにある。
また「東へ西へ」と、現実から飛躍して空間を大きく表現した「大胆な詩的把握」にある。
表面的には、「マスゲーム」をする人間たちと集団行動をとる「蟻」の様子が似ていることのおかしさが詠まれているのであるが、味わっているとおかしさを通り越した人間社会の愚かさまで感じ取れてきてドキッとさせられる。
自分の意志で行動していると思っている人間たちであるが、流行や広告などに流されているだけだったり、欲望のままに走り回っているだけだったりと、それは例えば無条件に甘いものに群がってせわしなく動き回っている「蟻」たちの様子とあまり変わりがないのかもしれない。
平凡な句のようでいて批評精神と俳味(おかしさ)に溢れた真実を伝える軽妙な一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
俳句のおかしさ面白さは詠もうとして詠むものではなく、結果として滲みでる。

「病床の風を入れ替ふ蟻の道」(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)

なんともさわやかで美しい一句である。
現実的には衛生的な病室に蟻の列はそぐわないので、自宅療養あたりでの句となりそう、などと、必死に現実に寄せて解釈したがる方も多いであろうが、「上五中七」と「蟻の道」を取りあわせた句として味わえばどちらでも問題ない。
解釈というものは良いと思うほうにとればいいので、ここでは、「蟻」の黒が生きる白のイメージが強い病室での句ととる。
作者はどちらかと言えば現実に即した手堅い伝統的な詠み方をする方。
過去の選評でも「詩にもかかわらず現実を現実のままに詠んでいて惜しい」などと厳しいことを述べてきたのであるが、この句には大変な進境が見てとれる。
気持ちが塞いでしまいがちになる病室、その窓がパッと開かれ風が入れかわるさわやかさ。
窓や「風」のイメージによるものであろうが、「蟻の道」が床や地面などではなく、なぜか部屋の窓から天のかなたに向けて続いてゆくような気分が感じ取れてきて、実に明るい。
「入れ替ふ」という響きも「蟻の動き・鼓動・生命力」に合っている。
直接感じることのできない「生への希望・喜び・生命力というような(虚)」を、しっかりと見える「蟻の道(実)」によって、美しく伝えている世界観が共感を誘う。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
実(見える世界)は虚(見えない世界)のためにある。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・蟻の道少し先行く父の顔(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※昔は似ていないと思っていましたが、だんだん似ている事に気づき、同じ道を通っているのだと思います。
→進境が感じられる句。作者の意図のように解釈するのは少々厳しいがそうとれなくもない。いずれにしても上五・下五のつり合いがよく、中七の詠みなど甘いところが影を潜めた。このようにモノとモノの関係性に重心を置いて詠まれるとよいであろう。佳句。

・夏空や蟻の這い出す人工島(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※子供時代、私の町では瀬戸大橋を作る工事が長年に渡り行われました。大きな事故もありました。土を掘り海を埋め巨大な建造物を作り出す。容赦ない夏空、労働者の姿。
→「夏空」に象徴される古今なく悠遠な風景から一転、「人工島」から這い出す「蟻」がなんとも考えさせられる。役者(モノ)はそろっているので、解釈はそれぞれの読者にゆだねればいいであろう。ちなみに「夏空」も「蟻」も季語なのであるが気にならない。上手い句である。佳句。

・蟻の列明朝体で絡まりて(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※蟻のお題が出たので観察していたら蟻の集団が明朝体の集まったものに見えてきてまるで幼児番組のアニメみたいだと思いました。
→面白い把握である。私の句の「うすごおり明朝体の乳房かな」が思い起こされた。この句の場合どこか座りが悪い。「蟻・明朝体」と役者はそろっているので舌頭千転してみたい。「明朝体からまっている蟻の列」など。参考に。

入選句

特選A

・蟻塚に射し込む星の停留所(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→星が蟻塚を停留所としているというような意味の句であろうか。いずれにしてもそのメルヘンチックな世界観が美しい。好句。

・緑青や蟻かたわらに蔦のびて(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
→緑青は銅が酸化し生成される青緑色の錆のこと。銅像をそのようにうに表現したのはたしかに面白いのであるが、やはり少し抽象的なようである。しかしそうかと言って「銅像や」では味気ない。このあたりの関係性をどうするか。作者の課題としておこう。ちなみに「蔦」は秋であるが問題ない。

・黒蟻の行きつ戻りつ朝刊紙面(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→大変おもろい句である。下五の字余りも大変気分が出ている。どこかしら類想感があるのが惜しかったか。好句。

・蟻や影映して夜の枕もと(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
→上五あたりの把握など、借り物ではない自分の実感・自分の表現を大事にしようとしている姿勢が伝わるすばらしい句である。このように役者がそろった(蟻・影・夜・枕)場合は、言いたい事にとらわれず舌頭千転したい。「蟻の影はりつく夜の枕かな」あたりでも気分が出そう。

・蟻の列飛騨天領へ続く道(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→「蟻・列・道」の重なりがつきすぎというか現実に重心をかけてしまっていてやや惜しかったが、骨格のしっかりしたカッチリした詠みぶりに安心感がある。佳句。

・たまに狂う母が見ている夜の蟻(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→認知症の母を詠んだ句なのであろうが、何かしら女の情念のようなものまで感じられてくる。「母が」は「母の」くらいのほうがよさそうであるが、このくらいの詠み手であればその好みにまかせよう。

・一匹の蟻に傾く大伽藍(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→大小の対比の句。どことなく「蟻の穴から堤も崩れる」ということわざが連想されてくるところや類想感が少し気になる。で詠み方は上手い。

特選B

・大蟻の黒くひかりて夏の空(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
→季重なりがどうこうというより、どうも全体的に類想感があるところが惜しい。自分だけの実感を掬うようにしてみたい。

・病室のこぼれ薬に蟻二匹(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
→なかなか象徴的な句である。中七が「~に」と説明的なので、作者の意図とは少し違うかもしれないが「病室の薬こぼるる蟻二匹」など響きを整えてみたい。

・蟻の穴言いたいことが溢れ出す(ペンネーム「登るひと」さん 35歳)
→面白い把握で成立している句であるが、やはりこのような直接的な表現は俳句では控え、モノに語らせるようにしたい。

・蟻の道飲み込んでゆく飛行船(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→蟻の道と飛行船、実風景か心象か取り合わせか、いずれにしてもこののびやかな気分が楽しい一句。

・蟻の列完成したるピラミッド(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→ピラミッド建設に向かう列を蟻の列と重ね見たという句であろうが、そういった理屈的・意図的・作為的なところを引っ込めたい。俳句は短いので作為を出すとそれが鑑賞の邪魔になってしまうのである。無意識から詠むようにすればさらによくなりそうである。

・太陽の色を吸い込み蟻の穴(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→なかなか面白い世界観である。sかし「穴。吸い込む」はやはり日常の言葉の展開で飛躍がない。少し類想感があるのも気になるところ。そのあたりが課題であろうか。

・蟻の列見つめ続けて午睡して(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→どことなくぎこちない詠み方であるが、借り物ではない自分の言葉で表現しようとしているところが大変よい。しかしながら「~して~する」と普通の文章のような表現をとっているところをどうにかしないといけない。こういう方は詠んだ句の意味にとらわれず、句中のモノで再度リズムを整えるとか、取り合わせを試してみるとよいであろう。

・スタートラインゆるり横切る蟻の列(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
→なかなか気分の出た句であるが、「ゆるり横切る」が惜しい。「ゆるり」などを持ち出すところに作為が感じられて鑑賞の邪魔になる。「スタートライン横切ってゆく蟻の尻」など素直に詠むほうがよさそうである。

・大空のエンジン音や蟻の群れ(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→天地の対比であるが、この場合エンジン音の存在が具体性に乏しく惜しい。「戦闘機空にはりつく蟻の群れ」などしっかりとモノを打ち出して詠むようにしたい。

・蟻の列またいで鬼女の帰る家(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
→どことなく昔ばなしのワンシーンのような句で、蟻の列と鬼女、その関係性を読み解く面白がある。しかしながら「~して~する~」と、モノのキャスティングではなく脚本を書いてしまっているところがこの句の弱さ。俳句は短いので短歌的発想を捨てなければいけない。そのあたりが課題。

・独り居に雲の流れて蟻の列(ペンネーム「そら」さん 58歳)
→気分の出た句である。説明をさけ響きやムードを優先した韻文の立場で句を詠んでいるところがよい。「独り居の」とすればさらによくなりそうである。この方向で。

・サバンナの空行く風や蟻の道(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→私の随分昔の句に「サバンナを駆ける旅ありホウセンカ」があったと思うが想起された。「サバンナ・蟻」まではなかなかのキャスティングなのであるが「サバンナ・空・風」とたたみかけられるとイメージが重すぎである。そのあたりのつり合いがとれるとよくなるであろう。

・天穹の継ぎ目に向かう蟻の列(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→大きな句なのであるが、俳句で大事なのは何が詠まれてあるかではなく、詠み方・効果である。その意味で「列・向かう」という措辞の展開が、どうにもあたり前で詩にならず惜しい。「天穹の継ぎ目はためく蟻の列」などなら言葉の展開に意外性があり詩になる。参考に。

・足跡を万里に残す蟻の群れ(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→どことなくできているようで全体的に惜しい句である。やはり「万里」だけでは具体性に乏しいので、意図とは違うかもしれないが「万里の長城」など具体的なモノを出したい。「足跡・残す・群れ」などの言葉の展開も当たり前なので気をつけたい。このあたりが分かるようになれば進歩である。ここからの句である。

・奇兵隊の案内板に蟻九匹(ペンネーム「東広島の七十爺」さん 75歳)
→なかなかしっかりしたモノ句である。句としてはここまでできたら「奇兵隊の案内板や」と切って整えてみたい。この方向で。

入選A

・ありのすやむしぱん切っただんめん図(ペンネーム「モッツァレラ2号」さん 8歳)
→発見の句である。この方向で。

・太陽を背負う就活蟻の列(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
→気分はよく出ているが、意図的・作為的で惜しい。無意識からの作句を心掛けたい。

・蟻の列眠らない都市の住人(ペンネーム「皓月」さん 18歳)
→俳句は短歌ではないので言いたい事や気持を詠むのは苦手である。何かを言おうとせず、モノに語らせること。モノに託して詠むようにすること。

・通学路どこに向かうや蟻の列(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
→「どこに向かうや」は作者の言葉、これをなんとなくでもモノに語らせたのである。「通学路東に向かう蟻の列」など。

・苔茂る石段に蟻来たる去る(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
→「下五」の詠み方が面白い。しかして現実をそのまま報告したようなところが惜しい。詩なので飛躍したモノの関係性をみてみたい。

・独房の畳の隙間蟻の列(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→俳句で大事なのは、何が詠まれてあるかではなくどういう効果を生んでいるかである。その意味で独房であろうとレストランであろうとそれは問題ではない。この句の問題は詠み方である。「独房の畳の隙間(をゆく)蟻の列(がある)」とすれば分かるであろうか。このような舌足らずな措辞は散文の省略であり韻文ではない。「独房の畳の匂う蟻の列」などなら分かる。そのあたりの感覚をつかむことが急がれよう。

・山蟻や花を手向ける空近し(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→美しい世界であるが、大事なのは一句の効果である。その意味でモノに託して詠むというよりは脚本的になっているところが惜しい。

・栄誉礼受ける女王と蟻一頭(ペンネーム「中岡秀次」さん 42歳)
→かっちり詠んであるのであるが、感動の在処がどうもよく伝わらない。傍観ではなく対象とひとつになって詠むようにしたい。

・首傾げ蟻は空へとひとりごと(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→全体的に説明的・脚本的で惜しい。作者が蟻を語るのではなく、蟻(モノの様子)に語らせるようにしたいのである。

・波止釣りの竿先に蟻潮を待つ(ペンネーム「今日も晴れ」さん 43歳)
→全体的に説明的なのが惜しかったが、楽しい気分がよく出ている。

・だまし絵の階段静か蟻の列(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
→だまし絵と蟻はよいキャスティングであるが、詠みが韻文になっていないのと、作者が「静か」と語ってしまっているのが惜しい。「だまし絵の階段沈む蟻の列」など。モノ(モノの様子)に語らせたい。

・走る蟻赤き夕空見上げずに(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
→モノのキャスティングではなく脚本になっているところが惜しい。

・晴天やコンクリ砕く蟻の顎(ペンネーム「おんちゃん。」さん 51歳)
→「顎・砕く・コンクリ」の関係性が日常的であたりまえで惜しい。

・五月雨の子守唄聴く蟻の家(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
→やはり一句の世界観が観念的であるのと説明的であるところが惜しい。何かを言うのではなく、モノを据えて詠むようにしたい。

・廃線の枕木を行く蟻の列(ペンネーム「「雅」みやび」さん 55歳)
→「廃線・枕木・行く・蟻・列」この言葉の関係性が圧倒的に近く詩にならない。詠んだ翌日などにこういうところを整理してみるとよい。

・沙漠行くキャラバンの影月の蟻(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→「砂漠(を)行くキャラバン(隊)の影(がある)月の(表面にすむ)蟻(のようだ)」的な詠み方は散文の省略の連続であって韻文ではない。それにいろいろ思いや様子を述べるのは短歌までならよいが、短い俳句には向いていないので避けるようにしたい。

・軍服の足並み高し蟻の列(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→句の響きはよさそうであるが、やはり「蟻の列・軍隊」はイメージが近く類想感があり惜しい。

・潮解けて溺れる蟻は捨てておく(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→独自の世界観を持っておられるようである。この句はやや観念的で惜しいが、もっと見たみたい方である。

・蟻塚や暑きドバイのビル眩し(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→「蟻塚・ドバイ」はなかなかのキャスティングであるが、「眩しい・暑い」と作者が語ってしまったのが惜しい。こういうところをなんとなくでもモノに語らせるようにしたいのである。「蟻塚やドバイのビルの黒き窓」など。参考に。

・蟻の塚見てたまんまの膝で寝る(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→観念的というか短歌の上の句のようで惜しい。何かを言おうとせず、モノを据えるようにして詠みたい。

・黄昏に蟻の群行く家路かな(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
→こういうところは目をつむっても「黄昏の」としたい。これだけで説明的な気分から解放され詩情磁場が強くなる。

・木もれ陽の清けし線を蟻の列(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→中七など言い過ぎであろう。。原句のような発想は短歌に近い。「木漏れ日をふちどってゆく蟻の列」くらいで詠むのが限界ではないか。

・ぎんが行待合室や蟻の国(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→メルヘンチックな句であるが、俳句で大事なのは何を詠むかではなくどう詠むかである。その意味でこの窮屈な上半身はどうにかしたい。何かを言おうとしないことである。句中の素材を活かすなら「蟻の国たゆたっている銀河かな」などもあるであろう。参考に。

・酩酊の蟻掬ひだす砂糖壺(ペンネーム「あいむ李景」さん 66歳)
→「蟻・砂糖」「壺・掬う」など、世界観が日常的で詩になりにくく惜しい。そのあたりを整理したい。

・絶望の果てに旅立つ蟻の船(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
→気持ちや気分はよく出ているが、やはり言い過ぎである。直接語るのではなく、モノやモノの様子で伝えるようにしたい。

・ビスケットの空缶蟻の城となる(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→「ビスケット・空缶・蟻・城」と並べてみれば、語から語への展開があたり前であることが見て取れよう。もう少し飛躍したモノとモノの関係性で詠むようにしたい。

・甲冑を着込んで蟻のアマゾネス(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→やはり説明であるし、頭でこしらえた意図的な句である。それに「蟻・甲冑・アマゾネス」と並んでしまうとどうしても世界観が近くものたりない。熱心な作者であるので、自分の世界を模索されているのであろうか。

・蟻の道なんとややこしこの世かな(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→前回の大賞句の方向とはちがって全くいただけない。俳句は何度も申し上げているように作者ではなく「モノで語る」ものなのである。

・蟻載せて種子島から飛び立つ日(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
→出来事を述べているのが惜しい。俳句は脚本ではなく、モノとモノのキャスティングと思いたい。

・蟻千匹背負いつ草引く梅雨晴れ間(ペンネーム「みよこ」さん 71歳)
→気分のよく出た句である。このような把握で問題ない。やや日常的なのが惜しいが、まずはこの方向で。

・蟻んこやヒップホップの娘たち(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→独自の把握が光っている。この方向で。

・青天の一日始まり蟻の列(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
→詠みはカッチリしているが中七など説明的でよくない。「青天の先頭を行く蟻の顔」など。参考に。

・蟻の道入校児らの登校路(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→「蟻・道・路」んどイメージの重なりが惜しかった。そのあたりを気をつけたい。

・蟻の列飛行機雲に続きおり(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→「続いている」というのは説明である。「蟻の列吸い込まれゆく飛行雲」くらいか。

・峠に建つ道路標石蟻走る(ペンネーム「木村善光」さん 82歳)
→少し世界観が日常すぎるがカッチリした詠み方に安心感がある。

・通りすがりのアリ一匹や水曜日(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)
→軽く詠まれてありいいのであるが、感動の在処がよく伝わってこないのが惜しい。水曜日の必然性が感じられない。そこを攻めたい。

・就活や働らき蟻を見るベンチ(ペンネーム「華みづき」さん)
→類想感があるのが惜しい。「働らき」は「働き」でいいだろう。

入選B

・かまきりもアリの大群かなわない(ペンネーム「青りんごくん」さん 13歳)
・虫眼鏡蟻雨宿り梅雨の路地(ペンネーム「ヨーダ」さん 19歳)
・風甘し一万匹の蟻の糞(ペンネーム「竹伍」さん 26歳)
・蟻列すスイカ頬張る子らの下駄(ペンネーム「くまくま」さん 32歳)
・掃きたての畳の上の忙し蟻(ペンネーム「さきのすけ」さん 36歳)
・立ち止まりゆたゆたゆれる蟻の顔(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
・蟻たちがつなぐ未来と思い出よ(ペンネーム「なお」さん 40歳)
・掃除時蟻の活動見つけたり(ペンネーム「HK」さん 42歳)
・蟻の性格は甘い物落とすと違ってくる(ペンネーム「タケちゃん」さん 43歳)
・蟻の句に一生懸けた男達(ペンネーム「マリオネットキヨタカ」さん 43歳)
・賑わいの蟻巣に集い夢語り(ペンネーム「橋田ちゃげ子」さん 43歳)
・蟻動くアイスの棒に群がって(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・足場熱蟻も一匹通さない(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・睡蓮の蟻の声にも雨が降る(ペンネーム「放送きよたか」さん 43歳)
・見かけるよありさんたちって何なのか(ペンネーム「わた」さん 44歳)
・争いの日や知恵比べ蟻の勝ち(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・巣のまわり働き蟻の勇み足(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・蟻浮きし水たまりの波紋かな(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
・甘い罠見つけて集る蟻一派(ペンネーム「ジジププ」さん 48歳)
・スクランブル交差点のなかの蟻(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
・石段や天の届くか蟻の列(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
・見くびるな蟻の一途さひたむきさ(ペンネーム「ナギさん」さん 54歳)
・蟻の巣を壊してみては半笑い(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・大寺や気色だつ蟻ものがたし(ペンネーム「白湯」さん 56歳)
・動くもの吾子追いかけて蟻の穴(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・秋口にせみに亡き骸運ぶ蟻(ペンネーム「やっちゃん」さん 58歳)
・引き抜いた根から吹き出す蟻千匹(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・ちゃぶ台の蟻ひとすじに夏みかん(ペンネーム「ミーママ」さん 60歳)
・砂利の蟻歩みを止める終電車(ペンネーム「ヨシ整体」さん 60歳)
・蟻座どこ首もたげみる風呂上がり(ペンネーム「ラジャーナイン」さん 61歳)
・アリ上る取り残したる梅の実よ(ペンネーム「川柳太郎」さん 61歳)
・あの日旧中島町は蟻も死す(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・紫陽花にアリ雨宿りしとしとと(ペンネーム「ウルトラヤン晃」さん 63歳)
・猛暑日に木陰で涼む蟻一匹(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・蟻の愚痴ひねもすひとり聞いてやる(ペンネーム「松廣李子」さん 63歳)
・蟻たちが元気くれそな昼休み(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・蟻の巣の自由研究ガラス鉢(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
・どうしても蟻にはなれぬ吾であり(ペンネーム「ぐずみ」さん 68歳)
・大蟻が勝手口にて集団で(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・どこまでも夫の仕業アリの行列(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・吾子の眼のこぼれるほどに蟻の列(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・忙しなく競歩よろしく蟻の道(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・首かしげ南国ホテル蟻の大群(ペンネーム「のぶさん」さん 70歳)
・リーダーの資質いかんや蟻の列(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・Baliの蟻帯なる先に飴ひとつ(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・我が畑蟻這い回り地上絵かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・青函や昭和の蟻の遺産かな(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・洗い桶滑りはせぬかはぐれ蟻(ペンネーム「蛍子」さん 75歳)
・勤勉を家訓とするや蟻の道(ペンネーム「かっちゃん」さん 77歳)
・青畳蟻一匹の迷路かな(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
・我も又ふと立ち止まり蟻の道(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・蟻の列蝶浮かべて急ぐかな(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)

ユニー句(句)

・背は高いだけど度胸はありんこよ(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・元気有有田優里香とここに蟻(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・蟻が寄る我が加齢臭甘いのか(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
・イケメンの甘いマスクや蟻まみれ(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・蟻御殿レアなスイーツいただきたい(ペンネーム「青りんごママ」さん 48歳)
・サイン会並ぶ様子は蟻みたい(ペンネーム「はっちゃん」さん 53歳)
・アーリーちゃん 女王蟻には逆らえず(>_<)(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・蟻のよう母に手抜きの無い暮らし(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・駅弁についてる蟻の移動距離(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・ありさんはイヤだ目指すはキリギリス(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・蟻たちに教えて貰う人生観(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・アリ浴びの烏その後アリを喰い(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 73歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年5月30日(水)

第93回 お題「バナナ」(選と評 谷村秀格先生)
総評

この道場では、いわゆる従来的な俳句・教条的な俳句・大衆的な俳句を退け、俳句形式をより働かせようとする清新な句を選んできました。
そしてその芸術性を言語美や発想など表面的なところではなく、モノの本質つまり「句からイメージされる世界(宇宙)」に求めてきました。
私はそのような俳句観を「宇宙流」と呼んでいますが、それが従来の「季語・映像・出来事・日常」べったりの俳句に飽き足らない全国の俳句ファンの受け皿になってきて、小さいコーナーながらも全国各地から投句をいただけるようになってきました。
広島テレビは今春広島駅北口に新社屋が完成し、平和都市広島の新たな情報発信地となったわけですが、俳句での出会いを機に、このコーナーのみならず広島テレビの活動や広島のことを全国の皆さんに知っていただければうれしく思います。

今一度この道場のキーワードを整理しておきましょう。
より以上を目指すから道場の意味があります。
「季語や文法・かなづかいに目くじらを立てるなら国語と変わらない」
「映像だけなら写真と変わらない」
「出来事を詠むだけなら日記と変わらない」
「思いや心情を述べるだけなら演説と変わらない」
「句のよさが説明しきれるものなら、わざわざ句にする必要はない(感じることが大切)」

心得としては、以下となるでしょうか。
「俳句は言いたい事や気持ちをモノに託して詠む『託し詠み』の世界」
「俳句は作者ではなくモノが語る『モノ語り』」
「理屈・論理・意識・作為・教条・常識は天敵」
「俳句は無意識の芸術(無意識が味方)」
「俳句は瞬間芸術」
「見なれた日常の中でも発見はある」
「モノからの気配(そんな気がする)をつかまえる」
「人や本ではなくモノに学ぶ」
「すべてのモノが句材」

この俳句道場で今年マスターしてほしいことを一言で言えば「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の「日照雨」は、日常のふとした非日常感を上手くとらえた句。
入賞句の「機関室」は、海の上の高揚感を上手く詠み込んだ句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

今回も気になったのは、「バナナ」の日常・現実のままに詠まれた句が圧倒的に多かったことです。
何度も申し上げますが、俳句は「詩・芸術」ですから日常・現実にとらわれる必要はありません。
次回は、ステレオタイプにとらわれず「そんな気がした」という瞬間・気分を迷わず句にしていただきたいと願う思う次第です。
また句が出来たら詠みっぱなしにしないことも大切です。
一晩寝かせて改めて読み返してみると、そのとき気づかなかったイメージの重なりなどに気づくこともあるでしょう。
句に問題があった場合、はじめの発想にとらわれず句中のモノを活かして再度詠んでみるのもよいでしょう。
また一句の世界観が日常や現実べったりだなと感じたら、はじめの発想にとらわれず「取り合わせ」で詠んでみるのもよいでしょう。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「ひと房のバナナ吊られて日照雨かな」(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)

「日照雨」は別名「狐の嫁入り」などとも呼ばれ、雨が降っているのに晴れているという気象現象のこと。
私の手元の歳時記には載っていないが、たしか夏の季語とする立場もあるときく。
家族で食べるために買ってきた「バナナ」が部屋に吊るされているのであろう。
家族が仕事や学校などに出かけ、洗濯などの家の掃除も一通りすんだ昼下がり、部屋に吊られた「バナナ」の房越しに窓の外の「日照雨(そばえ)」を眺めている様子を詠んだ句である。
この句の上手いところは立体的な情景描写。
部屋の中に吊るされたバナナ、その向こうの窓、さらにその向こうの雨、そして太陽の光という遠近法のような視覚的世界を、短い文字数の中で美しく描けており、まずもって見事である。
さらに「吊られて」と受け身で抑制的に詠まれてあるところが大変効果的で、これによって作者とバナナが一体となっているかのような気分までをも醸し出しており読者をひきつける。
こういうところに、作者と世界とがひとつに溶け合うような昼下がりのまどろみ、ぽっかり空いた一人の時間に身をゆだねている作者の恍惚感のようなものがよく表れていて共感を誘う。
「俳句はモノ(A)を通して真実(非A)を伝えるもの」とよく言うが、その手本のような象徴性の高い一句である。
句で何かを言いたくて仕方がない方、句をいちいち作り込まなければ気のすまない方もおられようが、俳句はこのように「モノ(バナナ)とモノ(日照雨)の関係に何らかの美を発見したら、そのままポンと放り投げておけばよい」世界なのである。
むしろ、そのほうが読者がイメージして楽しめる句になる。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
俳句は、モノとモの関係に何らかの美を発見したら、そのまま放り投げておけばよい。

入賞

「機関室のバナナ三本膨らめり」(ペンネーム「みなと」さん 74歳)

「機関室」はエンジンルームのこと。
船や飛行機の両方が想起されるが、「バナナ」は海のイメージが合いそうなので、ここではそうとっておく。
船の大小や種類などは読者にゆだねられているが、「機関室」という推進力(パワー)を生み出す場所と「バナナ」という栄養の塊のイメージの取り合わせが絶妙で、海の上の高揚感が大変力強く描かれているところが魅力的である。
それは例えば漁へのやる気や期待感などではないか。
また「バナナ三本膨らめり」という把握も大変よい。
バナナの色についていくら述べられても日常・現実べったりで全く詩にならないが、バナナが息をしているかのように「膨らめり」と詠んだことで詩になった。
「膨らむ幸せ」「膨らむ夢」ではないが、ポジティブな気分や幸福感をあますことなく伝えることに成功している。
このような句を見て「機関室にバナナはおかしい」とか「バナナが膨らむのはおかしい」という現実べったりの方もおられようが、「船室のバナナ三本黒くなり」などと詠んでしまえば、あたりまえのことがあたりまえに伝わるだけで、詩にも何にもなるまい。
詩的真実を上手くつかんだ一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
現実にとらわれず、モノからの気配(そんな気がする・バナナ膨らむ)を迷わず句にする。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・折紙のゾウの駆けだすバナナの日(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※バナナの日、調べたら実際あるみたいですね。これはおやつがバナナの日、ぐらいの気持ちで。幼少期の楽しい世界を。
→バナナの日は8月7日だそうである。句はバナナそのものの存在が希薄であるところが惜しいが「バナナ」がテーマでなければ一句がしっかり成立している句なので、応募句の中ではこれを採った。句を直観的に把握した場合「象・バナナ」のイメージが近いが、一句全体の気分が絵本中の世界のようで楽しませる。いずれにしてもモノの力の生きた句である。この方向で。佳句好句輝句。

・青バナナ幼なじみの家の跡(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※久しぶりに実家に帰り、スーパーやご近所巡りをしていたら、すっかり変わった街並みに幼なじみの家の跡を見つけました。そのときの句です。
→憧憬・さみしさの気分の句であろうか。「青・幼」のイメージが近いといえば近いが、それにも増して「青(陽)・跡(陰)のイメージ対比が絶妙。イメージ世界の調和がとれた象徴的で深い句になっている。モノに託すこの方向で。佳句好句輝句。

・木漏れ陽のバナナの幹の戦闘機(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※戦争を知らない世代が増えてきても、知ろうとする若者もおり、まだまだ平和への光はあるなと感じております。
→ある世代の方にとっては「バナナ」は「戦争」のイメージになろうか。その意味で「バナナ・戦闘機」はやや直接的で惜しいが、緊張感の伝わる一句である。

入選句

特選

・島バナナ基地の向こうの青い空(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
→「島・基地・空・バナナ」はイメージの関係性が近いので、一句のイメージのふり幅(横幅)が狭くなり惜しい。モノに託して詠む方向性は大変よいのでこの方向で。いずれにしてもオリジナルな実感(小さくてもよい。蚊の羽音で宇宙を表現できるのが俳句である)をつかむようにしたい。佳句好句。

・南国の甘い夜風やバナナ船(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
→モノをしっかりと据えて「南国」からやってくる「バナナ船」をムードよく詠んだ。少しメルヘンチックで嗅覚に訴えたのもなかなかである。しかし「南・甘」は「バナナ」のイメージの重なりで惜しい。次回はそのあたりを気をつけたい。

・バナナ熟る満点続く小テスト(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→学校でのシーンか。ご機嫌な気分が「熟る・満点」で伝わる。しかし惜しいのもそこで、気分が出すぎのようである。気分の出すぎは「直接表現」につながるので警戒が必要。まだ「青バナナ満点つづく小テスト」など、イメージのふり幅(対比)を広く取るほうが読者が想像力を刺激されて楽しめそうである。参考に。

・バナナ熟れ南国の夜は星ばかり(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→絵本のような「南国」の「夜」の気分が伝わる句である。しかしこの句も「バナナ・南国」「星・夜」「バナナ・熟れ」と、あちらこちらにイメージの重なりがあり惜しい。俳句は短いのでイメージが重ならないほうがいいのである。こういう句は一晩寝かせて整理してみるとよいかもしれない。また最初の発想にとらわれず「取り合わせ」で詠んでみるのもよいだろう。

・旅先の夜に満ちたるバナナの香(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→どんな旅かはわからないが艶っぽい気分の句である。「夜・満ちる・香」が女性的なイメージのステレオタイプで惜しい。また「香」を一番言いたかったのであろうが俳句は言いたい事を言ってしまうと句にならない。私の感覚ではせめて「旅先の夜満ちてくるバナナかな」くらいにもう一段象徴的に詠んでみたいところ。参考に。

・満ちてゆく青きバナナや昼の風(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
→気分はよく出ているのであるが、少し抽象的というか観念寄りなのが惜しかった。こういう場合は最初の発想にとらわれず「取り合わせ(二物衝突)」などで詠み直してみるとよさそうである。

・バナナ船水平線に浮きあがる(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→荒波を乗り越えてやってくるバナナ船の期待感がよく出ている。しかして惜しいのは「船・水平線・浮く」の近しい関係。二つくらいなら他のモノとの関係でつかず離れず位にはなりそうだが、三つ重なるとどれかは避けなければイメージが凝ってしまうであろう。そのあたりを攻めたい。やはり一晩寝かせてみるのがよいか。好句。

・路地裏の窓を照らしぬバナナかな(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→日常の中のふとしたシーンをつかみにいったが、「路地・窓・バナナ」の関係性がやはり近いので感動があまり伝わらず惜しい。また「照らしぬ」と主張を出して強めに詠んでいるのであるが、俳句は意志や作為をできるだけ出さないほうが感情移入できてよい。よって「照らせる」など抑制的に詠んでみたい。

・アトリエの猫の隣のバナナかな(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→「猫」がモデルか「バナナ」がモデルか、いずれにしてもおおらかな気分が共感を誘う一句である。しかしながらすべての世界が「アトリエ」で完結しているのが少し惜しい。俳句は詩なので、現実・日常寄りではなくもう少し飛躍した世界を見てみたいのである。モノに託して詠んでいるところはよい。

・バナナ熟れ南周りの貨物船(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→なんともいえない高揚感の出た句である。全体的にはモノ同士のイメージが近いのが惜しいが、イメージの奥で「バナナ」の曲がりと「貨物船」の航路のイメージがつかず離れず上手くリンクしておりそこまでの傷にはなっていない。佳句好句。

・猫抱くようにバナナ抱くバス通り(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→昼下がりの気だるい気分がよく出た句で面白い。独特の世界観が魅力である。

・落陽やバナナ畑に長い影(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
→余計なことを言わず「バナナ畑」からの実感を素直にとらえた。「長い影」はバナナなのか作者なのかと想像する楽しみがある。惜しいのは「落陽・影」のイメージの関係性が近いところ。こういう場合は詩になりにくいので「落陽・影」どちらかを捨てることも大事であろう。

・一本のバナナ残して母わらう(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→解釈は読者にゆだねられるが実体験を詠んだ句とすれば「介護」などの句になろうか。年を重ね子どものようになってしまった母の様子をただ「バナナ・母わらう」だけで象徴的に伝えていて上手い。意志を加えず対象に託して詠んだところが成功した。この方向で。佳句好句。

・バナナ一枝出張の父持ち帰る(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→お土産のようなバナナであろうか。「出張・父・帰る」あたりの言葉のイメージの重なりが気になるが、「父」がかえってきた喜び・高揚感がよく出ている。

・山盛のバナナ南極観測隊(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→「南極観測隊」が「バナナ」を食べているのであろうか。あるいは「山盛りのバナナ」と「南極観測隊」の取り合わせの句であろうか。後者にとる。「山盛りのバナナ」の様子と「南極観測隊」が基地に寄り集まっている気分との取り合わせが絶妙である。南国のフルーツだけに寒い地との対比もほどよく効いている。二者を強引にぶつけたようなところが少し惜しい気もするがそこまでの傷ではなかろう。好句。

・お見舞いのバナナの房のセロハン紙(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
→着眼が見事な句である。その透明感が句のイメージに軽やかやさ美しさを与えていて、日常を詠みつつも非日常的な気分に誘ってくれる。この方向で。佳句好句。

・シベリアの上空に剥くバナナかな(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→南国のイメージの強い「バナナ」に対極のイメージの「シベリア」をぶつけてきた句である。しかしながらこの句の場合、どうも作為見え惜しい。また感動の在処もよくわからない。もう少し実感のある世界を詠むようにしたい。そこが課題であろう。

・炎天をバナナの並ぶせりの声(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→「炎天」をもってきているので季重なりになるのであるが、「炎天・バナナ・せり」とたたみかけるような詠み方で真夏の「せり」のあつい気分をよく伝えていて上手い。いわゆる上手く託し詠みした句である。この方向で。佳句好句。

・温室の真ん中照らすバナナかな(ペンネーム「ありんす」さん)
→バナナのある温室とは植物園での一句であろうか。やや類想を抜け出ていないもどかしさがあるのが、たわわに実るバナナをシャンデリアのように詠んであるところが面白い。この方向で。

入選A

・黄昏のバナナに聞く夏のこえ(ペンネーム「ペペロンチーノ」さん 19歳)
→寂寥感がよく出ていて共感できる。季重なりは気にならないがリズムが少々気になる。何度も口の中で転がしてみるとよい。

・蒼い海旅立つバナナ風が撫で(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
→旅立ちの気分の句か。詠みが追い付いていないが作者の中にきちんと感動があるのがよい。句のリズムは古今の名句を詠むなり道場の過去の入賞句などを味わうなどしておればそのうち整うであろう。

・カーラジオバナナの踊る潮の風(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→海辺へのドライブでの一句であろうか。中七の詠みが安易というか甘い。そのあたりを攻めたい。

・月へゆくゴンドラとなるバナナかな(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→「月・バナナ」を重ね見たのであるが類想が多い。また言葉は詩的であるが「~へゆく~となる」が散文的・説明的で惜しい。そのあたりを攻めたい。

・実芭蕉をわけあい見せる歯の白さ(ペンネーム「なお」さん 40歳)
→「実芭蕉」はバナナの別名。なんとなく美しい気分であるが「実芭蕉・白さ」など、やや言葉の美・句の表面的な美にもたれて詠んでいるところが惜しい。作者ではなくて、モノに語らせたい。そこが課題であろう。

・ゾウの鼻差し伸べる手のバナナ抱く(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→「ゾウ・バナナ」の関係性が近いので句にするのが難しかったか。しかし中七の「差し伸べる手」に実感が感じられる句になっている。大きい感動でなくてもよいのでこのように自分の本物の実感を詠むようにしたい。

・陽光や照らすバナナの影伸ばし(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→「陽光・照・影」「影・伸」とイメージがひどく重なっていて惜しいが、モノに託して詠んでいるので何とかカタチになった。そのようなイメージの重なりに敏感になることが大事であろう。一晩句を寝かせて翌日眺めてみるのもよいだろう。参考に。

・寛ぎと賑わいの街バナナ行く(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→前半抽象的に詠んでいるところが惜しいが、一句の気分はよく出ている。「バナナ→行く」という言葉の関係が成功している。この方向でよい。

・ボクシング発祥の地やバナナ熟る(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→切れ字で切って感慨を示しているのであるが、俳句では作者が感慨を直接述べるうような表現はさけたい。こういう助言はパラダイムの転換になるのであろうが、モノからの気配(そんな気がする)にカタチを与えるようにしたいのである。

・バナナ裂く飛行機雲の右曲がり(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
→上から詠んでゆくと非日常感があっていいのであるが、下五「右曲がり」がどうにも惜しい。「バナナ・曲がり」が当たり前の関係だから、手品のタネあかしをされたようでがっかりしてしまうのである。こういうところは目をつぶっても「曲がる」など「バナナ」との近しいイメージは避けるようにしたい。方向性はよい。

・独り敗戦の報せバナナは甘く(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→兵士の気分であろうか。しかし「敗戦の知らせ・バナナ」だけならまだしも「独り・甘く」とそれぞれを修飾するようにさらに言葉がくっついてきてるので盛り込み過ぎ・言い過ぎになって惜しい。やはり作者が言いたい事を言うのではなくモノに託すようにしなければいけない。そこが課題である。

・引率の腰丈並ぶバナナかな(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→先生の立場での遠足の気分を詠んだものか。しかし「引率の腰丈」が分かりにくく惜しい。素直に「遠足の子供ら並ぶバナナかな」などのほうがいいであろう。

・あぐらかきバナナほうばる二歳の児(ペンネーム「「雅」みやび」さん 55歳)
→全体的に「~して~する」と説明的なところが惜しいが、抑制の効いた俳味のある句である。モノ同士の世界観が近いのでそれを避けるようにしたい。

・波に乗るウクレレの音バナナの香(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→倒置法のような句であるが、俳句は短いので結局その作為が鑑賞の邪魔になって成功しない。こういう場合、目をつぶっても「ウクレレの音波に乗るバナナかな」くらいで詠むべきであろう。韻文の世界に入ることが大事である。

・バナナ剥き孫に昔を語る母(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
→短歌の上五のような句であるが気分はよく出ている。実感をしっかり詠んでいるからであろう。このようにまずは実感である。それをモノに託して詠んでゆけばよい。

・一陣の風にバナナよもぎとられ(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
→どうも実感が弱い傍観の句であることと、一句の世界観が日常的なのが惜しい。もう少し詩であることを意識して大胆に詠みたい。「取り合わせ」などを試されるのもよいであろう。

・バナナ乗せ島の女の髪豊か(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→南国の気分の句である。下五が手品のタネあかしというか作者の主観的表現で惜しいので、そこを少しセーブして詠んでみたい「バナナ乗せ島の女の髪のいろ」など。

・白い部屋無言で呑み込むバナナかな(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
→解釈はいろいろできそうであるが病室での句であろうか。美しい風景とはうらはらに作者の何かしらの満たされぬ思い、あるいは運命を受け入れざるを得ないような気分が感じ取れてきて共感を誘う。少し思いが先行しすぎた感はあるが心情表出がよくできた句である。詩は自身の中に熱いものをもっていることこそが大事である。それがテクニックや知識や教条などよりも優先される。この方向で。好句。

・受話器越し父にバナナをねだりし日(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
→素直に詠んだ。短歌の上の句のような句であるところと「バナナ」の存在が希薄であるところが惜しいが、まずはここからといったところか。期待したい。

・南国の空ぶら下がるバナナの木(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→気分はあるが、なんせ類想が多いのでどうにもならない。難しい題であったかもしれないが、小さくともよいのできちんと感動のある世界を詠むようにしたい。

・バナナ着く閉じ込められたる陽の香り(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→「バナナ」の気分は出ているのであるが少し中途半端。こういう場合ははじめの発想にとらわれず舌頭千転して詠むようにしたい。「陽の香り閉じこめられてバナナかな」くらいか。

・お見舞いの言葉掛けつつ剥くバナナ(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
→「剥くバナナ」のほうがモノに重心がかかってくるのであるがどうも作為的。そうかといって「バナナ剥く」とすれば「言葉掛けつつ」が言い過ぎに感じられてくる。何かしらの実感が句を救っているようであるが、本質的な問題は日常ありきたりな世界観にありそうである。「取り合わせ」などを試みてもよいかもしれない。

・空港の荷物受けとるバナナ売り(ペンネーム「李子」さん 63歳)
→「空港・荷物・受けとる」と三つ同じようなイメージが重なると詩にもってゆくのはなかなか厳しい。最初の発想にとらわれず、イメージの重なりを避けるて詠むようにしたい。大胆に取り合わせを試みるのもよいであろう。

・実芭蕉や北緯10度の十字星(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→なかなかの句である。惜しいのは中七。説明的な割に「北緯10度」の必然性が読者に伝わらないのである。まだ「実芭蕉の北にかたよる十字星」あたりなどなら詩になりそうである。俳句の難しいところである。

・病葉に我が身重ねて青バナナ(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
→作者自身と病葉を重ね見た句であろうか。「病葉」が季重なりで惜しいというよりも「我が身重ねて」が説明的で惜しい。最初の発想にとらわれず「病葉の影にかさなる青バナナ」などとしてみたい。俳句は言いたいことを伝えるには短いので不向き。気分・雰囲気を伝える、象徴的に詠むということができればそれでよいと思いたい。

・掌の大樹の鼓動青バナナ(ペンネーム「葦たかし」さん 67歳)
→韻文のような見た目をしているがこれは「掌の(中に)大樹の鼓動(を感じる)青バナナ(だなあ)」という散文を強引に省略した句である。つまり「バナナ(モノ)」の本質をよんでいるモノ句ではなく、「鼓動を感じているというコト」を詠んでいるコト句なのである。このような詠み方は流行なのか多いが、韻文の世界に入ってきていただきたいと願う次第である。

・店先の青きバナナの無表情(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→なんとなく出来ていそうな句なのであるが、下五が手品のタネあかしというか上五中七をここですっかり説明してしまって惜しい。こういう場合は「店先の青きバナナや飛行雲」など、切れなどを効果的に使って取りあわせて飛躍したいところである。

・熟れバナナ幼の口のよく動く(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
→楽しい気分はよく出ているのであるが、モノではなく「よく動く」という出来事を詠んだ「コト句」になってしまっていて惜しい。「幼子の口よく動く熟れバナナ」あたりだとバナナに重心が掛かってはくるが、まずは「幼児・バナナ・口」の日常的なモノの世界を飛躍するように詠みたい。「取り合わせ」などを試みてみるのもよいであろう。

・食卓にバナナ四本輪になって(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→楽し気な気分の句であるが「それがどうした」というわれればどうにも説明ができない弱さがある。それはやはり「食卓・バナナ・本」のイメージが近いからである。モノとモノとの飛躍が必要である。「取り合わせ」などを試みてみるのもよいであろう。

・バナナ剥くドレスが靡く飛行雲(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
→華やかな気分の句であるが、「剥く・靡く」と動詞が二つ入ってもたもたしているのが気になる。そのあたりを整理させるといいであろう。

・教室で輸入バナナの嵩比べ(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 75歳)
→楽しい気分の句であるが、説明的なところと教室の日常のままに詠まれてあるところ。もう少し取りあわせて飛躍を楽しみたい。

・祖父の忌や供物の中の房バナナ(ペンネーム「かっちゃん」さん 77歳)
→忌日の句であるがどことなく明るい気分である。課題は仏壇の日常のままに詠まれてあるところ。もっと大胆に飛躍して詠むようにしたい。

入選B

・南国のあまいバットはバナナかな(ペンネーム「you」さん 10歳)
・房で買い家族で頬張るバナナかな(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・朝の光甘いバナナとそよぐ風(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
・砂風呂の育むあんよバナナの香(ペンネーム「竹伍」さん 26歳)
・石畳からんころんとチョコバナナ(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
・汗拭いバナナ頬張る出番前(ペンネーム「蛍風 雫鳥(ケイフウ ナトリ)」さん 29歳)
・幼児がバナナバナナと連呼する(ペンネーム「はますけ」さん 32歳)
・なかよしのバナナの皮と遊びをり(ペンネーム「登るひと」さん 35歳)
・野良の声バナナの皮に滑りけり(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・三日月をみてはたべたくなるバナナ(ペンネーム「青い鳥」さん 38歳)
・とうかさん甘さ引き立つチョコバナナ(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・バナナを食後のデザート楽しめり(ペンネーム「HK」さん 42歳)
・鮭咥え熊の親にもほらバナナ(ペンネーム「マリオネットキヨタカ」さん 43歳)
・朝バナナ母の元気と俺の顔(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・棚並ぶバナナの天使揃い踏み(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・学帽の色は食欲バナナかな(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・お供えのバナナの色が変わるまで(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・画用紙をはみ出るバナナ笑う君(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
・台湾と神戸を繋ぐバナナの香(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
・バナナ剥くどこでもドアの奥に闇(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
・ダイエットバナナブームに効果なし(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・バナナ熟れ帰ってこないブーメラン(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・仏壇のバナナ一本また一本(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
・モノクロの見舞いのバナナパナマ帽(ペンネーム「ラジャーナイン」さん 61歳)
・養生にバナナ一つと祖母見舞う(ペンネーム「安田蝸牛」さん 61歳)
・孫目線空にバナナが浮かんでる(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・好物はバナナよと義母今は亡き(ペンネーム「つくしんぼ」さん 64歳)
・嘘では無いよバナナは昔高級品(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・バナナ止めカリウム値の数値超え(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・手のひらの程のバナナや植物園(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・グローブのごときバナナやいまむかし(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・バナナ一本五人で分けた昭和かな(ペンネーム「みよこ」さん 71歳)
・バナナむく無邪気な孫の手つきかな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・国籍の違いかバナナ格差あり(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・黒ずんだバナナ病室の窓辺に(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 73歳)
・八十四歳バナナの上はなかりけり(ペンネーム「武田弘子」さん 84歳)
・バナナ熟る緑の国が幕間に(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

ユニー句(句)

・半額のバナナ我が手をすり抜けて(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
・バナナ持つもりもりコンビ絵になるね(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・苦かった校庭の芭蕉偽バナナ(ペンネーム「今日も晴れ」さん 43 歳)
・猿といえバナナ好きとは限らない(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・食べながらそのまま寝ちゃう子のバナナ(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・バナナバナナ素直に曲がる成長期(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・雨上がりバナナ重ねて虹ふたつ(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・腸かつ朝の一本バナナ良し!!(ペンネーム「ムッチー」さん 63歳)
・バナナ売りゆるむ腹巻きのぞく臍(ペンネーム「李子」さん 63歳)
・本当だよバナナは昔高級品(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・バナナ一本食べて満塁ホームラン(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
・青空に皮ごと食すそんなバナナ(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・バナナ有りうまい具合に熱の出る(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
・空腹をまずはなだめるバナナ食ぶ(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・国民のそんなバナナと怒る声(ペンネーム「山の手夫人」さん 71歳)
・青バナナ熟成するまで熟睡す(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年5月16日(水)

第92回 お題「薔薇」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「薔薇」。
今回は史上最多の投句を全国各地からいただき、うれしい悲鳴でした。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の「廃線」は、栄枯盛衰を「薔薇の香り」と「廃線」というモノで見事に「モノ語り(託し詠み)」した句。
入賞句の「つるばら」は、「つるバラ」に上手く心情表出できた句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

今回気になったのは、「薔薇」の固定概念・先入観・常識・日常のままに詠まれた句が圧倒的に多かったことです。
何度も申し上げますが、俳句は詩ですから、ステレオタイプ(先入観・固定概念)や現実・事実にとらわれる必要はありません。
むしろ「事実は真実を遮断し、真実は事実を超越する」ものとも言えます。
次回は、ステレオタイプにとらわれず「そんな気がした」という瞬間・気分を迷わず句にしていただきたいと願う思う次第です。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「廃線や薔薇の香りの昼さがり」(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)

ぶらりと訪れた廃線の駅でのシーンが連想される。
かつてにぎわっていた路線・駅、その近くに植えられた薔薇の香りが漂っているという句である。
秀逸なのは、「薔薇の香り」。
「香り(臭覚)」を全面に打ち出し、薔薇の視覚的なイメージを一段奥に引っ込めて詠んでいるところが面白い。
詠まれてみればこのとおり、田舎の寂しげに広がる風景と、あたりに広がってゆく香りの気分とが、とてもよく調和しているのが感じ取れる。
またこう詠まれると、読者としては必然的に「薔薇の香り」をイメージしたくなるのであるが、そうすればするほど「廃線」との対比で、寂しさやもの悲しさが余計に引き立ち、一句の雰囲気にひきつけられる。
これが「廃線や薔薇咲き誇る昼下がり」など、視覚中心に詠まれておれば、原句に比べてどうも作為的・意図的である。
人の世の栄枯盛衰の気分を、堂々とモノに語らせたイメージの調和のとれた「モノ語り(託し詠み)」の一句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
主観を排して抑制的に詠む。

入賞

「つるバラや長方形の庭ざわざわと」(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)

「庭のつるバラ」を読んだ句である。
しっかりしたカタチのある「長方形の庭」と、カタチの曖昧な「つるバラ」が「ざわざわと」アメーバーのように増殖してゆく という対比がよく効いた句で、その効果により、無限に増殖してゆく「つるバラ」の強い生命力を鮮やかに描いているところが見事である。
なかでも「ざわざわと」が効果的で心情表出が充分。
表面的には「庭のつるバラ」の生い茂る生命力、その不穏な空気・あやしいまでの妖艶さ・神秘性を詠んでいるのであるが、ひいては作者の胸騒ぎ・落ち着かない様子・強い衝動のようなものまでも感じ取れてきて共感を誘う。
それは、作者が対象と一体となってを句に詠んでいるからにほかなるまい。
若々しい一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
カタチの曖昧なもの(つるバラ)としっかりしたカタチ(長方形の庭)の対比。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・呼鈴の震わす空や薔薇の垣(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※呼び鈴を押す時はいつもドキドキします。それは、家の中だけではなく辺り一面に響き渡るから。まるで空まで届きそうな気がします。
→初代俳句名人。身辺にいろいろあったようで久しぶりの登場。この句の意図を読めば分かるように非常に繊細でデリケートな方。だからこそその鋭敏な感性が読者をひきつける。「呼鈴の震わす空」とはなかなかの詠めない実感である。しかし「震わす」と意志を打ち出して詠むよりも「ふるえる」とモノの様子に託して軽く詠んだほうが読者が感情移入しやすそうである。舌頭千転といったところか。「呼鈴のふるえる空や垣の薔薇」「呼鈴の空ふるえだす垣の薔薇」など。俳句の古い体質に染まらず清新な世界を今後も是非見せていただきたい。

・廃娼の街へもたれる薔薇の雨(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※近隣にある古い歓楽地にて退廃的な女性の香りのイメージで。
→二代目の俳句名人で私の立場に近い方。名人になられてからもますます措辞の斡旋に長けてきており将来恐るべしの存在である。この句は「薔薇」に女性的なイメージをかぎつけるとこがややステレオタイプであるが、この句の場合直接女性は出てこないのでそこまでの傷ではなさそうである。何より「もたれる」が絶妙で心情表出が充分。佳句好句である。

・校庭の風上に向く蒼き薔薇(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※思春期の子どもの真っすぐさと純粋さを句に込めました。
→三代目の俳句名人。素直な詠み方が得意である。この句の場合「校庭・風・薔薇」のモノとモノのイメージが日常べったりというかありきたりでやや惜しい。宇宙は広いので、もう少し飛躍した取りあわせを楽しんでみたいものである。しかし俳句は中七で崩れるものが圧倒的に多いが、その点はさすが俳句形式に慣れていてしっかりしている。

入選句

特選

・やわらかき光さすバラ番外地(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
→「番外地」がよく効いている。「番外地」はその響きからか少し寂しいイメージであるが、反対のイメージの「バラ」をもってきたことでイメージの世界の調和がとれた。全体的に言葉の選択が安易に感じられるところが惜しいのでそこが課題だろう。次回も挑戦を!

・裏路地の空を打ち抜く赤き薔薇(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→散歩道での一句であろうか。中七の実感が一句を救っているが、「路地・空・赤・薔薇」など、モノとモノの関係性に飛躍がないのが惜しい。それが課題であろう。次回も挑戦を!

・姿勢よきバラ新体操のリボン(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→「バラ・新体操」の取り合わせの句。なかなかなのだが、「姿勢よき」と主観を出したのが惜しかった。俳句ではこのような主観的な表現は避けたほうがいい。そこが課題である。次回も挑戦を!

・夕川に薔薇の花束揺蕩いぬ(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→夕方の光景でなかなか気分の出た句であるが、「夕・薔薇(赤)、川・揺蕩う、薔薇・花束」あたりのイメージの重なりが味わいを浅くしてしまっているところが惜しい。それが課題であろう。次回も挑戦を!

・死して尚薔薇を左胸に抱き(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→心象風景・英雄のイメージの句であろうか。強い実感が力を与えている。「薔薇」に「死・抱く」はややステレオタイプ。課題はもう少し自己主張を押さえ、モノをしっかり据えて詠むことであろう。好句。

・薔薇一輪色乱れゆく江戸切子(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
→恋心だろうか繊細な女性心理が美しい。モノを全面に据えており頼もしい。俳句がどういう芸術がよくわかっている方である。「薔薇・一輪、薔薇・色、色・切子」などイメージの重なりが気になるといえば気になるがこれも一句であろう。この方向で。佳句・好句。

・衛兵の影踏みにじる薔薇の園(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→外国旅行での句であろうか。中七などの詠み方はなかなかで屈折した心境が上手く表現されている。少し全てのモノ同士の距離・イメージが近く、世界観が現実的すぎていて惜しいが、これはこれで一句。この方向で。佳句。

・薔薇散ってサハラへ沈む日の真っ赤(ペンネーム「でこ」さん 52歳)
→心象句であろうか。「薔薇・サハラ」の取り合わせはなかなかで全体的な気分に共感したので採ったが、とにかく最後の「真っ赤」が惜しい。このような舌足らずな散文的直接的な表現は目をつぶってでも避けなければならない。作者の課題としておこう。

・薔薇の香の散らばっている回り道(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→散歩の句であろうか。中七の表現が秀逸で心情表出がよくできている。しかし「薔薇・道」の関係性がありきたりで惜しい。語と語のありきたりの関係を如何に避けるかが課題。好句。

・詩集読む少女の瞳バラの園(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→一句の気分が美しいので採ったが、見たことのある油絵の風景のようでステレオタイプを抜け出しておらず惜しい。「俳句はだいたいこんなもの」という感覚で詠んでいるようなところがもどかしい。蚊の羽音に宇宙を感じるのが俳句である。モノや言葉の表面的な美に惑わされず、自分の本物の感動を詠むようにしたい。そこが課題であろう。

・薔薇の赤セピアの写真抜けだしぬ(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→昔の写真を見ているときの句であろうか。なかなか手慣れた詩的な表現なのであるが、「赤」がいかにも意図的で惜しい。無意識からの表現を心掛けたい。それが課題であろう。

・薔薇香る望遠鏡の大銀河(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→大胆な取りあわせを試みようとする姿勢は大変よい。ここでは「薔薇香る/望遠鏡の大銀河」の取り合わせの句ととる。「銀河」も秋の季語であったと思うが、切れ前後の取り合わせがちぐはぐなところが惜しい。「薔薇」と「銀河」の必然性(感動のポイント)がよくわからないのである。そのあたりを今一度整理されたい。次回も挑戦を!

・文机の薔薇一輪や夜の風(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→句意は明瞭、やや寂し気な気分の句である。モノに託したカッチリとした詠み方に安心感がある。しかし「文机・薔薇・夜風」という世界観が日常の域を出ておらずステレオタイプで惜しい。宇宙は広いのでもっと大胆な取り合わせを見てみたい。

・薔薇風呂や古代ローマの空の色(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
→心象句であろうか。何より時空を超えてのびやかな気分が心地よい。「風呂・古代ローマ」がやや近しく、一句全体がどことなくつきすぎなところが惜しいが、そこまで傷ではなかろう。もっと句を見てみたい方である。この方向で。佳句好句。

・枯れし薔薇元安川を流れゆく(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→実風景か心象句か。しっかりモノに託して詠んだ意味深で感情移入できる句であるが、「枯れし薔薇」がやや作為的に感じられて惜しい。私見ではせめて「薔薇枯れて」くらいにしてみたい。舌頭千転が課題であろう。参考に。佳句。

・垣根越す真紅の薔薇のその行く方(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→自宅か近所の光景を詠んだ句か。「行く方」と方向性というか動きを持たせたようなところが面白く解釈の楽しみがある句である。散文的な詠み方はなんとか改めるようにしたい。

・薔薇咲くや聖母の白き像のもと(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
→おとなしくも大変滋味深く味わい深い句である。「像・薔薇」と来た場合、絶好の詩的素材なので「薔薇・像・心臓」「遠近法」などを振りかざして格好よく詠もうとする場合が多いが、そのような作為・虚栄心のようなものを脇において、ただ対象を写生することに徹して実感をつかもうとしているところがよい。そういうところに作者の人柄や生きざまが感じ取れてくるようで共感を覚える。一番の手柄は「~のもと」。これがよく効いていて、あたかもそこにめがけて「薔薇が咲きに寄ってきている」ようなイメージを醸し出していて神秘的である。一句全体を包み込む宗教的な雰囲気にもよくマッチしている。薔薇の様子に天使の姿が重なってくるようでもある。やや類想感・ステレオタイプであるところ、「薔薇・咲く」「薔薇・白」「聖母・白」などのイメージの重なりが気になるところが惜しかったが、この方向でよい。輝句佳句好句。

・雨粒に紅白混じる薔薇の花(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→庭の光景であろうか。自分なりの実感をなんとか捕まえに行こうとしているところがよい。しかし全体的にややつきすぎなところが惜しいので、もっと大胆に詠むようにしたい。そのあたりが課題であろう。

・薔薇の庭秘密をひとつ葬りぬ(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→詩的で印象的で上手い。世に中にはこのような詠み方もあるのであろうが、観念的な方向に流れそうでやや心配である。例えば後半をどうモノに託すか、そのあたりを課題としておこう。

・母ゴリラ半日目を閉じ薔薇の雨(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→動物園での句であろうか。アンニュイな気分が面白いし独自の視点が生きている。惜しいのは「半日」。作者にとってはしてやったりの発見なのであるが、そういう作為が裏目に出るのが俳句形式の短さ。どこまでも無意識からの作句を心掛けたい。あるいは一晩寝かせてみるのもいいあもしれない。そのあたりが課題であろう。好句。

・宵過ぎの薔薇は逆さに吊られけり(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
→「薔薇」花瓶から抜かれ逆さまに吊られ、ドライフラワーになることによって、永遠の美へ生まれ変わることができる。その「薔薇」の様子に、心身ともにさらなる美・高みを求める女性のイメージや気持ちが重ね合わさるようで、実に妖艶である。「日常を詠む場合はそこに批評精神がなければならない」ということをよくいうが、まさしくそのような一句で、人が見逃してしまいがちなシーンを上手く捉えた。句の調子からどこかしら芭蕉の「道のべの木槿は馬にくはれけり」が想起されるが、他意はあるまい。佳句好句。

・蔓薔薇やアルファベットの郵便受け(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
→蔓薔薇の絡まる郵便受けを見ての句であろうか。卒なくまとめた。しかし対象を傍観して詠んでいるので感動が伝わってこない。モノを詠むのは頼もしいが対象と一体となった実感を詠むのがモノ句である。そのあたりが課題であろう。

・掻き落とす薔薇星雲になる蕾(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→ありきたりを避け批評精神をもって独自の切り口を詠んだ若々しい句である。しかし「~になる」というような強い主観、無理やり前後を対比させたような作為的なところ、「薔薇・蕾」によりイメージが堂々巡りしているところが惜しい。作句とはいうものの、俳句はやはり頭(意識)でこしらえるものではなく、無意識からこみ上げてくるものと心得たい。読者は作者のテクニックを見たいのでも技法に感心したいのでも意図を知りたいのでもなく、ただ感じたいのである。句の表面で変わったことをしようとするのではなく、対象からの「そんな気がする」に迷わずカタチを与えてほしいのである。「掻き落とす薔薇の蕾や大星雲」くらいで詠む方が素直な印象であるし、原句の気分も出ているであろう。舌頭千転といったところか。

・薔薇園やア−チをくぐる車いす(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
→句意は明瞭。惜しいのは世界観がどうもありきたりで平凡の域を出ていないこと。日常を詠む場合はそこに批評精神がほしいの。そこが課題であろう。

・夕薔薇や月のしずくをひそと吸い(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
→心象句であろうか。なかなか詩的な気分である。しかして「夕・薔薇・月・しずく・吸う」など盛りだくさんなので少し情報を整理したい。「枯れてゆく薔薇の雫や夕の月」など。

・白薔薇の頬染めてゆく朝日かな(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→実感の伴ったはつらつとしたなかなかの句である。「白薔薇の」で軽く切れた句と解釈してもいいし、「白薔薇の頬」と続いている句とってもよい。いずれにしても自分なりの感動をしっかり読んでいるところが大変よい。この方向で。佳句好句。

・薔薇香る庭の向こうに杖ひとつ(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
→三句前の「車椅子」の句と近い世界であろうか。卒なく詠んでいるのであるが、平凡ありきたりな日常詠で説明的なところが惜しい。もう少し大胆に詠んでみたい。

・つるばらやクリーム色の夕まぐれ(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→実風景からの句であろうか。「クリーム色」というオリジナルな実感が素晴らしい。眼前の光景と溶け合っていくような作者の気分やまどろみをよく捉えている。この方向で。佳句好句。

入選A

・赤い薔薇ハート型したイヤリング(ペンネーム「モッツァレラ2号」さん 8歳)
→なかなかの句である。語順を「イヤリングハート型した赤い薔薇」にするとさらに印象的になりそう。

・赤い薔薇しあわせ運ぶ青い鳥(ペンネーム「モッツァレラ1号」さん 17歳)
→「赤・青」の対比が作為的で惜しい。また中七のような直接表現は避けて、モノに託して詠むようにしたい。

・薔薇風呂や肩より下の闇隠す(ペンネーム「竹伍」さん 26歳)
→なかなか面白い句。後半が少し説明的なので、モノをもっと打ち出して詠むようにしたい。

・君去りて一輪残る薔薇祭り(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
→さみしさがよく出た句。「~して~する」と説明的なところが惜しい。

・薔薇咲いた笑顔も咲いた通学路(ペンネーム「はますけ」さん 32歳)
→楽しい句であるがリフレインが惜しい。テクニックに溺れず無意識からの作句を心得たい。

・バラさんにハイハイしよる子とおせんぼ(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
→俳句形式に慣れてくるとさらによくなりそう。「しよる」という方言風の言い回しに臨場感が感じられる。

・教室の一輪挿しの薔薇かな(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
→印象的な句。全体的に薔薇のステレオタイプで詠まれてあるところが惜しい。モノとモノの関係性をもっと飛躍したい。

・薔薇開くときを待ちたり今朝の水(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→期待感が伝わる句。全体的に薔薇のステレオタイプであるところと、モノではなくで出来事を詠んだコト句であるところが惜しい。「今朝の水薔薇それぞれに動き出す」など、参考に。

・一輪の薔薇翻車魚のフラメンコ(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→「薔薇・翻車魚(まんぼう)」の取り合わせは絶妙なのだが、「一輪・薔薇・フラメンコ」のイメージの重なりが惜しい。そのあたりを整理したい。

・おしゃべりの異国めく鳥薔薇の花(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→「おしゃべりの異国めく鳥」は、響きは美しいがイメージの重なりであり言い過ぎの表現であろう。句の表面で何かのをするのではなく、モノに託して象徴的に詠み、イメージされる世界に美を置きたい。

・歌声は異国の香り薔薇の垣(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
→華麗な句である。薔薇を薔薇らしく詠むことに終始するのではなくて、薔薇を通して真実を詠むようにしたい。

・曇天の咽ぶ薔薇の香砂利の道(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
→思いのこもった句であるが、舌頭千転。もう少しモノを整理して詠んでみたい。

・碧い惑星六十億の青い薔薇(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→青で押した句。美しいが作為的・説明的なところが惜しい。入賞句あたりが参考になろう。

・ワンルームの薔薇1厘のコップかな(ペンネーム「腹胃壮」さん 48歳)
→どうも部屋の中の日常をそのまま詠んだだけの傍観の句のようで感動がない。対象と一体となって自分の感動を詠むようにしたい。

・薔薇一輪引越し業者の忘れ物(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
→宇宙は広いのにすべての物が部屋の中のイメージで構成されているので、世界観が狭くどこか物足りない。そこを攻めてほしい。

・玄関のすみに一輪薔薇の花(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
→何らかの感動は感じられるが、薔薇のステレオタイプの句である。また宇宙は広いのにすべての物が部屋の中のイメージで構成されているので、世界観が狭くどこか物足りない。そこを攻めてほしい。

・下駄箱で揺れて微笑む薔薇二輪(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
→傍観の句で感動があまり伝わらない。また宇宙は広いのにすべての物が部屋の中のイメージで構成されているので、世界観が狭くどこか物足りない。そこを攻めてほしい。

・一輪の薔薇と語らい一人膳(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
→寂しさはよく出ているが、説明的である。また宇宙は広いのにすべての物が部屋の中のイメージで構成されているので、世界観が狭くどこか物足りない。そこを攻めてほしい。

・パレードやフラ舞い踊る薔薇の海(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
→華やかさは伝わるが、「パレード・フラ・薔薇」はやはりステレオタイプ。大胆にモノを取りあわせて詩をつむぎたい。

・桃色の薔薇の花香る梅雨の空(ペンネーム「りんの」さん 58歳)
→季重なりや盛り込み過ぎが少し気になる。そのあたりを避けたい。

・つる薔薇の中に忘れた花鋏(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→なんらかの実感を感じるが、宇宙は広いのに「薔薇」周辺のことばかりが詠まれていて物足りない。詩なので事実より真実を詠うようにしたい。「つる薔薇の中にはびこる地軸かな」など。

・三日月の贄なる薔薇の尖りおり(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→一見美的な表現であるが、薔薇(A)をA’あたりでで詠んでいるので、薔薇のステレオタイプ・ありきたりを出ていない。句の表面で何か言おうとするのではなく、モノの力を信じて象徴的に詠むようにしたい。

・ティラノサウルス踏ミツケル薔薇ノ棘(ペンネーム「ラジャーナイン」さん 61歳)
→大胆な句であるが、何を詠むかではなくどう詠むかが大事である。その意味で「ティラノサウルス→踏ミツケル→薔薇→棘」という→前後の語と語の関係性がいたって平凡で惜しい。蚊の羽音に宇宙を感じるのが俳句と心得たい。

・母想い便りに添えた薔薇の花(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
→母を恋う気分の出た句であるが、説明的なところが惜しい。

・抱かれてなければ狂う真夜の薔薇(ペンネーム「李子」さん 63歳)
→なまめかしい句であるが、全体的に直接的な表現が惜しい。そういうことを直接言わずにモノに託して詠むようにしたい。

・白薔薇や今ウエディングフォト届く(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→おめでたい句である。しかし薔薇のステレオタイプであり、世界観が日常平凡で惜しい。句は事実を詠んだものかもしれないが、読者は事実を知りたいのではなく、句からただ何かを感じたいのである。日常を詠む場合はそこに批評精神がほしい。「ウエディングフォトすきとおる白薔薇」あたりなら何とか詩になりそう。

・朝露の宝石まとい赤き薔薇(ペンネーム「戦国命」さん 65歳)
→「朝露・宝石・赤・薔薇」と並んでしまうとすべてきらびやかなイメージだらけになってしまいつきすぎである。「朝露(秋)」との季重なりがどうこうというより、イメージの重なりを避けるように詠むようにしたい。

・野ばら咲く弾んで通るランドセル(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
→なかなか気分の出た句である。どこかしら類想感が漂うところが惜しいが、この方向でよい。

・薔薇垣に羽音と赤い三輪車(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→なにかしらの実感がともなった句であるが、詠みが追い付いていない。「赤」は不要であろう。モノを放り投げたようなところが惜しいのでもうすこしそのあたりを整理して詠みたい。

・バラ祭り老若男女の集う街(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
→素直なのであるが、やはり傍観の句でそこが惜しい。もう少し自信の感動を詠むようにしたい。

・白薔薇が母の残り香消して行く(ペンネーム「みよこ」さん 71歳)
→実感の句なのであるが、詠みが説明的で追い付いていない。「母の香の消えてゆきたる白薔薇」くらいか。

・薔薇の門くぐり再婚話来る(ペンネーム「吞田」さん 71歳)
→おめでたい句であるが、「再婚話来る」は出来事を詠んだコト句であり惜しい。モノに託した世界で詠むようにしたい。

・一輪の薔薇食卓に飾りけり(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
→傍観の句で感動があまり伝わらない。また宇宙は広いのにすべての物が部屋の中のイメージで構成されているので、世界観が狭くどこか物足りない。そこを攻めてほしい。

・ベランダにばらの蕾空明けて(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
→なかなか気分の出た句であるが、全体的に散文的なところが惜しい。

・生き生きと友の晩年薔薇育つ(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→咲くでも香るでもなく「育つ」が独自の把握でよい。こういう詠み方もあるが、ここでは原則直接詠みは採用しない。モノにしっかり託して象徴的に詠むようにしたい。

・病室の窓いっぱいの薔薇そよぎ(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→こういうところは目をつむっても「そよぐ」としたい。中七がやや安易なので「病室の窓の四隅や薔薇香る」など。参考に。

・爆心地アンネの薔薇の息遣い(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
→広島の気分の出た句。「息遣い」がやや作為的。「脈打てり」くらいの実感で詠んでみたい。

・一本の白きバラ剪る息づかい(ペンネーム「ありんす」さん)
→美しい薔薇を切る緊張感であろうか。しかし「息づかい」と言われては、上五中七のタネあかしをされたようで惜しい。「一本の白きバラ剪る飛行雲」あたりで句にしたい。参考に。

・一時間に一本のバス白薔薇(ペンネーム「木村善光」さん)
→一時間薔薇を眺めていたのであろうかゆったりした句である。しかし説明的・散文的な舌足らずな表現が惜しいので改めたい。

入選B

・初夏に咲くあなただけに薔薇1輪(ペンネーム「ケロロ」さん 19歳)
・美しき赤い薔薇にはトゲがある(ペンネーム「ぴょんこ」さん 19歳)
・雲流れ噂話と午後の薔薇(ペンネーム「藤堂星羅」さん 21歳)
・初夏に咲く色とりどりの薔薇の花(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・薔薇の花棘が心を踊らせる(ペンネーム「マルソルニティアース」さん 24歳)
・赤い薔薇世界を結ぶ聖火の炎(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
・バラの花手が届きそう福山の(ペンネーム「彼女大好きな彼氏」さん 24歳)
・あの人は見返り美人薔薇の様(ペンネーム「俳句君」さん 31歳)
・幸せな薔薇色の人生歩みたい(ペンネーム「ねうら」さん 32歳)
・バラの街今年も楽しみ福山市(ペンネーム「なお」さん 36歳)
・初恋は向こうに薔薇とワンピース(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・薔薇を見て、笑顔で写る、ばらまつり(ペンネーム「きみどり」さん 38歳)
・母の日に花束あげたい薔薇の花(ペンネーム「リジ」さん 41歳)
・薔薇の香が初夏の空気運べけり(ペンネーム「HK」さん 42歳)
・バラの苗初めて植えた3人目(ペンネーム「かおりん」さん 43歳)
・薔薇に指す泥にまみれた土俵かな(ペンネーム「マリオネットキヨタカ」さん 43歳)
・猫騙し薔薇の香りハイキック(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・へばりつくチーズの底の薔薇の花(ペンネーム「真改しんかい」さん 43歳)
・ピンク鯉薔薇の香りの贈り物(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・卒業や薔薇の花束広がる希望(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・花屋にて一際目立つ薔薇花弁(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・一方通行の人に薔薇を買ふ(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・薔薇くわえジヤンヌダルクやいざ行かん(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・去年より一輪多い薔薇の束(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
・薔薇花とげを取る手に涙する(ペンネーム「チッチ」さん 56歳)
・ガラスペンきのうの薔薇に色添えて(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・女王が散る革命や赤き薔薇(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・染まる道あかね空から薔薇花べん(ペンネーム「ヨシ整体」さん 60歳)
・五月雨に打たれ麗し薔薇の花(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
・ヒール折れ美しき薔薇の女のゐる(ペンネーム「松廣李子」さん 63歳)
・早起きしあの娘の机に薔薇束を(ペンネーム「さんちゃん」さん 64歳)
・薔薇のよう君頬染めし華やぎて(ペンネーム「つくしんぼ」さん 64歳)
・薔薇の花びら噛んだが失恋し(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・ほろ酔いの男の右手薔薇の束(ペンネーム「葦たかし」さん 67歳)
・咲き誇る庭の薔薇には母の香が(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・野薔薇原甘い香りに虫憩う(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・シャンプー台かのバラの香空かける(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・紅バラや紫煙に映えてフラメンコ(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・紅薔薇やナンバーワンを主張せり(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・墓参り主無き庭にも咲くや薔薇(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・薔薇園のゲート潜りて息を吸う(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
・幼子や傘のしずくと紅いばら(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・五年振り駅のホームで咲いたバラ(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 75歳)
・薔薇の露アンネの日記にじませり(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・借景の緑に映ゆる薔薇の園(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)
・バスを待つ薔薇のパラソル子の寝息(ペンネーム「華みづき」さん)

ユニー句(句)

・差し出され頭は真っ白赤い薔薇(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
・いつも薔薇たまにはお金で大丈夫(ペンネーム「さひーん」さん 30歳)
・薔薇の花森本ケンタそのものだ(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・薔薇という漢字をあなたは書けますか(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・とうかさん出店の薔薇に迷う下駄(ペンネーム「今日も晴れ」さん 43歳)
・バラのとげなんであるのかなぞだらけ(ペンネーム「わた」さん 44歳)
・薔薇と書く途中諦めカタカナで(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
・薔薇よりも刺々しオカンの小言(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・愛人のピロートークや薔薇の棘(ペンネーム「腹胃壮」さん 48歳)
・家計簿に薔薇一本の文字躍る(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・蔓薔薇や手の付けられぬ吾が娘(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・花束はやっぱり薔薇が最高でーす(^o^)(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・美しい薔薇と妻には棘がある(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・紅き薔薇棘より痛し黒毛虫(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・薔薇組と漢字で書いてる園児かな(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・薔薇の数より棘の数だけの愛(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・夢叶う試行錯誤の青い薔薇(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・我が妻は薔薇に劣らずトゲを持ち(ペンネーム「さんちゃん」さん 64歳)
・誕生日薔薇より団子と妻が言い(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・門の薔薇まず褒められて回覧板(ペンネーム「葦たかし」さん 67歳)
・薔薇祭り笑顔あふれる子供たち(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・金婚の泣いた数だけ薔薇を抱く(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
・豪邸を斜に見ている庭の薔薇(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 75歳)
・バラの花美人の店に買いに行く(ペンネーム「赤ヘル一直線」さん 62歳)
・紅か差す薔薇も待ちわぶホームラン(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年4月18日(水)

第91回 お題「蛙」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「蛙」。
今回も大変多くの投句を頂き、うれしい悲鳴でした。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず、原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句は、作者の強い実感が共感を呼ぶ一句。
入賞句の「朝刊」は、象徴的な詠み方がイメージや解釈の広がりを生んでいる一句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

「蛙」は春の季語、「雨蛙・蟇蛙」などは夏の季語になりますが、ここは季語の知識を問う場ではなく、「お題」周辺を足掛かりに詠んでもらい、一句の芸術性を追及する場と考えますので、いわゆる両生類の「蛙」を詠んであれば、そのあたりはうるさく問うていません。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「雨がえる去年の匂いの白いシャツ」(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)

窓の外は雨なのであろう。
「雨がえる」の声が聞こえる部屋で夏本番に向け「白いシャツ」を取り出したところ、去年の匂いを感じたというのである。
この句の面白さは、読者を自在に現在・過去・未来に行き来させてくれるところ。
「去年の匂い」とあるので、過去がイメージされてくるのはあたり前なのであるが、「雨がえる・白シャツ」の鮮やかな色彩の取りあわせの効果により、大変充実した去年の夏の気分がイメージされてくる。
また、「雨がえる」の元気のよい鳴き声のイメージによるものと思われるが、「白シャツ」を前に、今年の夏のイメージを思い描いている作者の前向きな気分というようなものも、しっかりと感じ取れてくる。
一見落ちついた句のようでいて、実にポジティブなイメージを伝える句である。
このような句を見たとき、俳句の技法本や文法書・歳時記など、「外から与えられた知識」で頭の中が出来上がっている方は、「蛙」は春なのに「雨がえる」という夏を詠んでいいのかとか、「雨がえる」と「白シャツ(夏)」は季重なりではないのか、というようなことが気になって仕方ないであろう。
あるいは、このような句ができた場合、投句せずに引っ込めるという方も多かろう。
しかしながら、詩としてまず求められるのは、「自分の表現で自分のしっかり感じたことが出せているか」であるし、道場で鍛えていただきたいのもそういうセンスである。
この句の場合、この表現でなければ、上記のような豊かなイメージ世界は運ばれてこないわけで、そこを評価したい。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
歳時記など「外から与えられた知識」ではなく、自分の表現を大切にする。

入賞

「朝刊のすみに蛙の指の跡​」(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)

句意は明瞭。
「朝刊」の隅に見つけた「小さな蛙の指の跡」を詠んだ句である。
句には「蛙(春)」と書かれてあるが、イメージとしては「トノサマガエル」などではなく、家の近くでもよく見られる「雨蛙(夏)」の気分であろう。
この句のよいところは、気持ちを直接述べるでもなく、その感動を、ただ光景(モノ)に託して詠んであるところ。
これによって、句に託された事情や作者の心境を読者が自由に探ることができ、楽しい。
また、「蛙の指の跡」という、ありそうでなさそうななさそうでありそうな、その境界線上の光景を見せてくれているところも面白く、それによって読者が、現実世界と非現実世界の二大世界に心遊ばせることができ、のびやかである。
蛙の指跡を見つけた驚き、指跡を見つけた喜び、小さな指跡をかわいらしく思う気持ち、指跡から感じる不穏な気分などはもちろん、その忍者のような蛙の足跡がドラマの始まりのような気分などまで感じさせており、想像は尽きない。
提示された世界(指の跡)は小さいが、イメージされてくる世界のスケールが実に豊かな、象徴性の高い秀格好みの「宇宙流」の一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
日常と非日常の境界を詠む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・氷嚢に夜の揉みあう蟇蛙(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※たぷたぷっと。
→「氷嚢・蟇蛙(夏)」の形態のイメージを重ね見た句であろうか。上五・中七の措辞が優れている。なんらかのエロスのようなものが感じ取れるなまめかしい句である。好句佳句。

・ネクタイの緩んだ空や初蛙(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※急に仕事が休みになり、子どもと公園に行った時の事を句にしました。
→緊張と緩和のある世界観が絶妙である。何かを言うのではなくいわゆる「そんな気分」をうまくつかんだ。「初蛙」もよくあっている。共感を誘う一句。好句。

入選句

特選

・ヒキガエルまだ開けてない貯金箱(ペンネーム「モッツァレラ2号」さん 8歳)
→「ヒキガエル(夏)・貯金箱」の形態を重ね見たものであろうか。この取り合わせのイメージのバランスがいい。惜しいのは「開けてない→貯金箱」という当たり前の言葉展開。しかしてこれだけ象徴的に詠めればよいであろう。この方向で。佳句。

・痩せ蛙飛び出て島が鳴動す(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 37歳)
→「蟻の穴から堤が崩れる」ではないが、小さな現象が大きな結果をもたらす何らかの実感・衝動を詠んだ。中七から下五にかけての意外性がポイントである。やや散文的・説明的なところが引っ込めばさらに良くなるであろう。次回も期待したい。

・蛙鳴く庭に佇む三輪車(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→何かもの悲しい気分の感じ取れる句である。象徴性の高い詠み方でこれはこれで一句なのであるが、欲を言えば「蛙・鳴く・庭・三輪車」と、全てのモノの関係性が日常的なところが詩としては少し物足りない。今後はそのあたりを攻めたい。

・雨蛙ぴょこんと月にへばりつく(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→メルヘンチックな楽しい気分の句である。惜しいのは「雨蛙(夏)・ぴょこん」「雨蛙・へばりつく」が、あたりの当たり前の措辞の展開であるところ。大胆な展開という点は詩の命なので大事にしたい。次回も挑戦を!

・がまカエルぴょんと飛んで自由人(ペンネーム「マリオネットキヨタカ」さん 43歳)
→下五の飛躍・意外性が愉快で詩になった。ただし「ガマガエル(夏)・ぴょんと飛んで」は言わずもがなの表現なので避けたい。俳味の感じられる一句。

・夕蛙じんわり張ったふくらはぎ(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→「今日も一日よく頑張った」という気分がよく出た句。「蛙・ふくらはぎ」「夕・じんわり張る」あたりの語の関係性が近しいところが惜しいといえば惜しいが、これはこれで一句であろう。好句。

・墓石の愛のくぼみにあまがえる(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→「愛」という文字が掘られた現代風の墓での句であろうか。そう解釈したいが少ししんどそう。素直に「墓石の文字のくぼみや雨蛙(夏)」あたりで詠むほうが自然体であろう。参考に。

・ひんやりと蛙張り付く大動脈(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→実体験だろうか心象風景だろうか、首筋あたりに飛んできた「蛙」がイメージされる。「ひんやり・蛙」の関係性が当たり前なのが惜しいが、首筋などざっくりといわないで「大動脈」とディテールを打ち出したところが上手かった。この方向で。好句。

・夕蛙島のはずれの喫茶店(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→郷愁を感じる句で入賞句の「指の跡」と似た象徴性の高い句である。「夕・はずれ」あたりの言葉の関係がやや近いのが惜しいが、これはこれで一句。佳句

・大輪の薔薇を寝所に青蛙(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
→嘱目句であろうか。こう世界を切り取られるとゴージャスでメルヘンチックな世界観となりで楽しい。「寝床・青蛙(夏)」の関係性が近いのと、「~を~に」と説明的なところがやや惜しい。また俳句では擬音語や擬態語はあまり成功しないものだが、この場合「大輪の薔薇とろとろと青蛙」などだと効果的なようである。「薔薇(夏)」との季重なりは全く問題ない。好句・佳句。

・大空の胎動待つや青蛙(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→なんらかの衝動のようなものを詠み込んだものか。しかして句の上半身がやや観念的で惜しい。「大空の波打っている青蛙(夏)」など、しっかりモノの存在を打ち出して詠みたい。参考に。

・夕蛙線路に重き鞄引く(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
→どういう旅であろうか。句の後半に何らかの屈折した心情や満たされぬ思いがよく出ている。その世界観に共感を覚える。好句。

・水の田の金の眼の蛙かな(ペンネーム「猫またぎ65→66」さん 66歳)
→この方の詠み方や対象の把握は大変優れていて、並々ならぬ才能を感じる。この句も「目」に執着したような詠み方がたまらなくひきつける。ただこの度は全体的にあたりまえのモノとモノとの関係性がやや惜しいかった。好句・佳句。

・鳴き声に夜闇泡立つ蛙かな(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→「夜闇泡立つ」というところがこの句の命。そこに何らかの情念のようなものが表れている。惜しいのは全体的な語と語の関係性が近いとところ。何を詠むかではなくてどう詠むかが大事である。もう少し言葉と言葉の関係性に敏感になるとよくなりそうである。

・蛙鳴く少年は今声変わり(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
→モダンな詠み方なのであるが、下五で手品の種明かしをしてしまっているところが惜しい。また「蛙・声」の関係性は近すぎて詩にならない。そのあたりを再考したい。してみたい。

・東屋に潮の香しきり山蛙(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→大変気分の出た句である。惜しいのは「しきり」の言い過ぎ・力みすぎ。「東屋の潮の香のする山蛙」。このくらいで詠むほうが自然体の印象。参考に。佳句。

・星ゆらしそっと顔出す蛙かな(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→大変みずみずしい感性の句で素晴らしい。この場合「~し~する」と散文的なのところが惜しいが、「星ゆらしそっと顔出す蛙」の天と地の関係性を読者が探れる構造なのがなんとも楽しい。このような飛躍有る展開を今後も期待したい。好句・佳句。

・セロファンの空をひとなめ蛙鳴く(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
→「セロファンの空」が実にみずみずしい感性で優れた把握である。惜しいのは「ひとなめ・蛙」の関係性の近さ。そのあたりを攻めるとワンランクUPしそうである。しかして全体的には大変気分の出た佳句。

・蛙いまグリム童話を飛び出せり(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→「カエルの王様」などを詠んでいる時の実感(心象風景)であろう。この句の良さは、童話から「蛙」が飛び出す「意外性」、想像を裏切って展開する意外性・非日常性。作者の驚きや夢うつつの気分、次元を超越した世界に遊ぶのびやかな心境などが自然と感じ取れてきて共感を誘う。当然のことながら、土の中から飛び出すのではあたり前で詩にならない。多少類想感があるところが惜しいのであるが、このみずみずしい感性をいつまでも大切にしたい。好句。

入選A

・くじびきでいっとうとったよかえるくん(ペンネーム「なほ」さん 5歳)
→「かえるくん」に報告しているのであろうか。「かえるくん」への愛の感じられる句である。この調子でどんどん詠んでほしい。

・祈りにも似たる姿勢の蛙へ陽(ペンネーム「住鳥未来羽」さん 18歳)
→何らかの表現したいものをもっておられるのであるが、俳句形式をまだ自分のものにできていないもどかしさがある。一番気になるのは詩を現実べったりの感覚で捕らえているところ。「蛙・陽」という関係性もあたり前であるし、「祈りにも似たる姿勢」というのは結局は祈っていない普通の蛙。どうして「祈る蛙」ではないのか。こういう場合少なくとも祈ってないと詩にならないであろう。そのあたりが課題。定型でなくてもいいが定型「感」はやはりほしい。流行や俳句界の体質に染まらず自分の詩をうたってほしい。

・玉響夕なる裾野蛙かな(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
→こちらも何らかの表現したいものをもっておられる方である。それをこの短い俳句形式でどうつかむか。「夕蛙」なる季語もあるし、今一度整理されるとよいであろう。次回もみてみたい方である。

・廃校のあさ校長に鳴く蛙(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→「廃校・朝・校長・蛙」少し盛り込みすぎである。俳句は説明するものでも言いたい事をいうものでもなく、何らかの気分が伝わればいい世界なので「廃校・蛙」あたりにしぼって詠んでみたい。

・遠蛙詩吟講座の父帰る(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→この方は、昔は実にのびのびと自分の詩を詠んでおられたように記憶しているのであるが、最近はいわゆる俳句らしくなって詩を失っているようである。俳句らしさや現実世界にとらわれず自分の心がとらえた実感を自分の言葉で詠むようにしてみてほしい。大いに期待。

・新品のランドセル負う蛙の子(ペンネーム「かおりん工房」さん 43歳)
→明るく楽しい句でメルヘンチックである。「ランドセルを負う」のが人間の子とも「蛙の子」ともとれ面白い。俳句らしさにとらわれない、このようなのびやかな方向をまたみてみたい。

・蛙鳴く沼の畔の夕まぐれ(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→「沼」の気分がよく出ている。しかし「蛙・鳴く・沼・畔」などすべてあたり前の関係性で惜しい。そのあたりを今後どうしてゆくのか。そこが課題である。

・廃校の静けさになく昼蛙(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
→廃校の寂しい気分がよく出た句であり、なおかつそれに反してどこかあたたかさが感じられるところがよい。惜しいのは「静けさ」という直接的な表現、こういうところをモノやモノの様子に託すようにしたい。「廃校の校舎の影や夕蛙」など。「夕・影」も近しいが参考に。

・民宿の硬き寝床や遠蛙(ペンネーム「有瀬こうこ」さん 45歳)
→民宿の気分のよく出た句で詠み方もしっかりしているが、世界観が現実的でややものたりない。さらに飛躍した大胆な詩を詠んでほしい。次回も挑戦を!

・初蛙今年の庭に戻り来る(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→俳味の感じられる句である。全体的にありきたりな世界観であるところが惜しい。また「蛙・戻りくる」はダジャレのようにとられやすく気をつけたい。

・白き腹見上ぐモリアオガエルかな(ペンネーム「しゃれこうべの妻」さん 49歳)
→旅行吟か。蛙の白い腹が発見。しかして全体的にその感動が今一つ伝わってこないのが惜しい。俳句は目ではなく心に映ったものを詠む世界なので、もっと実感のある飛躍した世界を見てみたい。次回も挑戦を!

・園バスの黄色い帽子初蛙(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→春の楽しい気分が伝わる句である。惜しいのは少し光景がありきたりなところ。常識・現実にとらわれず大胆に詠んでみたい。次回も挑戦を!

・初蛙池に波紋の広がれり(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
→どこか魅かれるのは実感の強さがあるからであろう。「初・波紋」の新鮮さ、のびやかさがよい。いずれにしてもありきたりは避けて詠むようにしたい。好句。

・大海へ千の棚田の蛙かな(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
→海へ向かう棚田の気分がよく出ている。惜しいのは感動に詠みがついていっていないこと。「大海へのびる棚田や青蛙」など。参考に。好句。

・つややかな青磁ふくらむかのかえる(ペンネーム「インゴット」さん 57歳)
→青磁と蛙の気分を重ね見たものであろうか。大変気分がよく出ている。もう少し楽に「つややかに青磁膨らむ蛙かな」などでも気分が出そう。この方向で。好句。

・蛙啼く水ヨーヨーの振るえる燈(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→心情表出の出来た句で印象的。お祭り帰りが思い起こされる。好句。

・雨蛙土俵の上で四股をふむ(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
→鳥獣戯画の気分の句である。蛙のルックスはどこか親しみやすい。散文的なのが惜しい。

・ワグナーの行進曲や雨蛙(ペンネーム「ラジャーナイン」さん 61歳)
→鳴き声のイメージを重ね見た句であろう。両方音繋がりなので、そこが少し物足りない。もう少し世界観を見てみたい方である。次回も挑戦を!

・星ふりて八分音符で蛙啼く(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→メルヘンチックでかわいらしい。惜しいのは「ふりて~で~する」と作為的なところ。そのあたりを気をつけるようにしたい。次回も挑戦を!

・蛙鳴きふるさとの母達者かな(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
→素朴ながら母を想う気分の出た句である。下五がやや直接的であるがこの句の場合はあまり気にならない。無理なく詠むこの方向で。

・五箇山や式台に臥す初蛙(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→感動の在所がよくわからないのが惜しい。「五箇山・式台・初蛙」の必然性がよく見えないのである。そのあたりが課題であろうか。カッチリした詠みぶりは心地よい。

・慰霊碑の「霊」の字に貼りつく蛙(ペンネーム「葦たかし」さん 67歳)
→全体的に作為的なところが惜しい。また俳句は見せかけにこだわるものではないから「 」などの記号は原則不要。何より散文の切れ端のような句姿をどうにかしたい。俳句は定型でなくてもよいが定型「感」はほしいのである。そのあたりを留意され作為(頭・理屈)ではなく無意識からの実感を掬い取るよう心掛けてみたい。次回も挑戦を!

・田植え終え幼子の手に雨蛙(ペンネーム「みよこ」さん 71歳)
→田植えを手伝う子の様子楽しさがよく伝わる。惜しいのは「終え~に~」と散文的なところ。また「田植え・雨蛙・手・幼子」の言葉のイメージが全部近いところ。そのあたりを気をつけてみたい。

・バスが行き椅子に蛙と忘れ傘(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
→田舎のバス停の様子であろうか。惜しいのは全体的に説明的なところ。ものに託して詠もうとする姿勢には共感を覚える。

・恐竜の足音鈍し蛙飛ぶ(ペンネーム「矢浦詠正」さん 73歳)
→心象風景であろうか。慣れた詠みぶりである。惜しいのは「恐竜・蛙・足・飛ぶ」など関係性が近いところ。また「鈍し」などは直接的に言わないほうがいい。そのあたりを攻めたい。次回も挑戦を。

・三江線廃駅ベンチの蛙かな(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→寂しさが感じられる句である。モノをならべたような詠み方がぎこちなく惜しい。こういう場合はポイントを絞るとよくなりそうである。「廃駅のベンチにまじる蛙かな」など。参考に。

・ダムの音浴びて産卵あお蛙(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→旅の句であろうか。感激を上手くとらえている。全体的に報告説明になっているのが惜しい。次回はそのあたりを留意されたい。

・泣きじゃくり孫眠りゆく遠蛙(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
→孫と賑やかに過ごした一日の気分であろうか。「遠蛙」がうまく受け止めている。説明的なところが惜しいので、次回をそのあたりを留意されたい。

入選B

・田の中で合唱してる蛙かな(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・サラリーマン今日明日へと夕蛙(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
・ぴょこぴょこと跳ねる子供ら蛙かな(ペンネーム「からまる」さん 27歳)
・新人の女子アナ達のカエルぴょこ(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
・帰り道我が子見守る蛙達(ペンネーム「はますけ」さん 32歳)
・宵闇に蛙集まりコンサート(ペンネーム「fivesevenfive」さん 36歳)
・居酒屋のラストオーダー遠蛙(ペンネーム「へやま」さん 37歳)
・川の中、蛙のなき声、春の声(ペンネーム「よつば」さん 38歳)
・埋立て地安全靴に蛙かな(ペンネーム「三滝のベベ」さん 38歳)
・腐葉土のねぼけまなこの蛙かな(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・桜しべ降る雨そぞろ初蛙(ペンネーム「豆助」さん 39歳)
・蛙の目借りどきヒトには目が二つ(ペンネーム「櫻井葉子」さん 41歳)
・前肢は無心蛙の泳ぐとき(ペンネーム「中岡秀次」さん 42歳)
・物干しでカエルと遭遇睨み合い(ペンネーム「うさぎっく」さん 43歳)
・赤信号黄色い傘と雨蛙(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
・がまカエル車に轢かれ土になる(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・東野でかえると仲良くなりました(ペンネーム「わた」さん 44歳)
・ガアガアと雨夜の蛙や賑やかな田(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・雨音に蛙の声が混じる夜(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・新堀や蛙呼び込む雨の音(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
・散布され蛙一匹日に当たる(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・子ガエル楽し春の虹の滑り台(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・いざ行かん慣れぬスーツのやせ蛙(ペンネーム「暇床屋」さん 51歳)
・よふかしやゲロゲロ恋歌夏の庭(ペンネーム「みぽりんりん」さん 52歳)
・蓮の葉にはねる水玉蛙鳴く(ペンネーム「テルテル」さん 53歳)
・モーモーと食用ガエル泣いている(ペンネーム「はっちゃん」さん 53歳)
・受話器から帰ってこいと蛙鳴く(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・異常気象暑き小川や青蛙(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・一枚の辞令の重み蛙鳴く(ペンネーム「そら」さん 58歳)
・声ひろう旅番組の遠蛙(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・紫外線返す蛙の薄まぶた(ペンネーム「ヨシ整体」さん 60歳)
・初蛙さがを個性と呼ぶ校舎(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・眠りから目覚めた蛙喰われけり(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・蛙の子我先にとテープ切る(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・四足の揃えきちりと葉の蛙(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
・山の池主役はテノール青蛙(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・蛙鳴きふるさと思い手紙書き(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・突然の三人の客遠蛙(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
・田んぼなき都会の畦で蛙鳴く(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
・初蛙歓喜の歌のプロローグ(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・合唱は昔の事に蛙の声(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・青ガエル水輪拡がる七重八重(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・水を得て声を限りに夕蛙(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・独り言帰る者無き夕蛙(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・畦道をのんびり散歩蛙かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・下り坂銀輪飛ばし蛙飛ぶ(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・眠りから覚めた蛙の大あくび(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・おぼろ月水田(みずた)の中の大合唱(ペンネーム「花咲爺」さん 76歳)

ユニー句(句)

・かえり道かえるがゲロゲロふり返る(ペンネーム「わしゃわしゃ」さん 12歳)
・かえる鳴く新生活に帰り泣く(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・揚げ油跳ね返りたる蛙かな(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
・スロットでカエル揃うと良い感じ(ペンネーム「犬蔵の王」さん 43歳)
・合唱団探すはテノール牛蛙(ペンネーム「今日も晴れ」さん 43歳)
・がまカエルマリオネットに騙される(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・ゲコと言う飲めない蛙の歓迎会(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・ため池に蛙飛び込み運動会(ペンネーム「ジジププ」さん 48歳)
・独り言多い夫です蛙です(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
・畦端の蛙狂恋ラプソディー(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・初蛙眠くて眠くてストレッチ(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・昼蛙羨ましきやスクワット(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
・蛙の子蛙の親に似ていない(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・カエル泣き主人いびきで不眠症(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・公園のカエルの遊具に乗る蛙(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・転勤で徹夜荷造り蛙鳴く(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・ザリガニを釣る糸なれど痩せ蛙(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
・庭に住む殿様蛙孫帰る(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・古希かえるカープ連敗沼の中(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・墓守を殿様蛙に託し行く(ペンネーム「みよこ」さん 71歳)
・夜もすがら蛙の合唱ケロリンパ(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・メダル獲りぴょんぴょん跳ねる初蛙(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・やせ蛙掘り起こされて目パチクリ(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)
・子らがいう雨冠を呼ぶ蛙(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年4月4日(水)

第90回 お題「蛤」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「蛤」。
今回も大変多くの投句を頂き、うれしい悲鳴でした。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず、原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句は、「大きな母性」の感じられる句。
入賞句の「蓋傾ぐ」は、心で写生できた句。
入賞句の「乳歯」は、「視覚・聴覚が効果的な句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「蛤やふくませおれば張る乳房」(ペンネーム「比々き」さん 69歳)

全応募句を一読したときからの文句なしの大賞。
俳句ではよく写生だ映像だと言われるが、大事なのはカメラ的風景ではなく、そこからどう「モノの気配を捕まえる」かなのである。
そういうところに「ものの見えたる光(芭蕉)」がある。
句であるが、実景か心象風景か、「蛤」に思いを馳せていたところ、そのふくよかな殻の形態と乳房の形態がどこかでリンクした(取り合わさった)のであろう。
かつての授乳時の身体感覚が湧き上がってきたのを迷わず自分の言葉で句に掬い取ったところが成功した。
といっても、句中の「蛤」は海中で心臓のように脈動している呼吸している「蛤」ととりたい。
古代中国では大きな「蛤」が空中に吐いた息によって作られた楼閣を蜃気楼と呼んでいたというが、「蛤」のイメージは意外に幻想的で雄大でもある。
だからこそ、「ふくませおれば張る」という寄せては返す波のような詠み方、たたみかけるような動詞の強いうねりと呼応してくるのである。
この取りあわせによって、単なる身体感覚だけではなく、母としての実感、生きているという実感・母なる海・大いなる母性・生きている感動など、何層もの豊かなイメージを伝えているところが大変見事である。
このような句を見たときに、上五が向日葵でも春風でも成立するので「季語が動く」、すなわちよくないのではないかと言われる方もおられようが、問題ない。
この句の場合、この取りあわせによって、句からイメージされる世界の豊かさが上記のようにきちんと担保されているからである。
「ふくませおれば張る乳房」の上五に、そもそも何らかの正解があるわけではないし、俳句の取り合わせは正解探しでもないし、俳句は「動かぬ表現」をとらなければならないものでもない。
ネクタイの色違いのようなもので、紺色も似合えば赤色も似あう、それでいいのである。
句を鑑賞するときに「ただその一句の世界を感じる」のではなく、「俳句はこういうもの」と教条から理解してゆくような小賢しい態度のほうが芸術鑑賞としては問題である。
これからも俳句の常識にとらわれず、自分の感覚を自分の言葉で表現してほしい。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
モノの気配(なんとなくそう感じる)を迷わず詠む。

入賞

「乳歯の子白蛤の音が鳴る​」(ペンネーム「今日も晴れ」さん 43歳)

「白蛤」を「うむき」と詠めば、蛤の古名のことになるが、この句の場合音数的に「しろはまぐり」と詠ませたいのであろう。
「白蛤」は「ホンビノス貝」といういわゆる本来的な「蛤」よりやや大きめの外来種だそうだが、最近よく出回っているようである。
「白蛤」はいわゆる本来の「蛤」ではないのであるが、大事なことは知識・教条ではなく芸術性であって、道場ではこれくらいのことはうるさくいう必要はないであろう。
ようやく生えてきた子どもの「乳歯」の音と、「白蛤」の殻がコツコツぶつかる音を重ね見た句である。
この句のよいところは、「色と音」。
「乳歯・白蛤」という一句全体を包み込む「白」のイメージに「命の清らかさ」のようなものが感じ取れてくるし、「音が鳴る」ところに、「軽やかさ・楽しさ」がよく出ている。
いわば、それらの相乗効果で、子どもの成長の喜びが、感覚的に伝わってくるところがよい。
「乳歯・子」「音・鳴る」などのイメージの重なりなどの詠みの甘さがないではないが、そういう技術的なところより、オリジナルな実感を自分の言葉で詠んだところが成功した。
明るい一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
視覚・聴覚を効果的に使い、感覚に訴える。

「塗椀の大蛤や蓋傾ぐ」(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)

この作者は私の目に留まっている作者で、過去の句を読み返していても感じるのであるが、本質的な写実のできる人である。
ただカメラ的に風景を捉えるのではなく、実感のあるところをきちんと掬い取っているし、一見カメラ的に見える句でも、目だけではなくきちんと心に映った世界を詠んでいて大変頼もしい。
入賞句も同様である。
何気ない光景のようであるが、なかなか詠めそうで詠めない。
「蓋傾ぐ」という把握が素朴ながら大変光っている。
こうよむことで「蛤」の大きさが伝わってくるだけでなく、どこかしら「大蛤」が両腕でグーと「蓋」を持ち上げてるような気分までも感じ取れてきて、いわばその強い生命力が伝わってくる。
古代中国では大きな「蛤」が空中に吐いた息によって作られた楼閣を蜃気楼と呼んでいたという伝説もあるくらいであるし、感じようと思えばいくらでも感じ入ることのできる構造の句になっていて見事である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
写生は目だけで詠まないこと。目と心両方に映った気配を詠む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・蛤や樹々となりゆく昼の月(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※私と海と月がとても近かった帰り道で。
→幻想的・神秘的で美しい響きの句である。海中の神秘性と抜け殻のような昼の月がつかずはなれず美しい世界を伝えている。しかし決して観念的でもなく、しっかりモノに即して詠んでいて心強い。他の応募句「蛤やヌード眩しきサンディエゴ」はやや直接的であるが、「蛤の拾われてゆく手紙かな」はこれまた気分の出た句。

・はまぐりや聞き耳立てる山の音(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※春が身近に来ている事が山の木々や鳥の声で感じられる様子を詠みました。
→これは楽しい取りあわせである。「耳・音」の重なりが少し気になるが、蛤の殻が開いたイメージと耳のイメージが面白い。聴覚が効果的な句である。

入選句

特選

・はまぐりや鏡に映る母の顔(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→「母」の女性らしさを詠んだ句であろうか。「はまぐり・母」という女性的なイメージの重なりがやや気になるが、気分の出た句である。

・蛤や収まりきらぬおもちゃ箱(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→楽しい気分の句である。この場合、貝の蓋と箱の蓋のイメージが近すぎる(直接的)というか、少し頭でこさえたような作為がやや感じ取れるところが惜しい。自分だけの実感を自分の言葉で詠みたい。

・蛤や月の匂いのする浜辺(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→「海の匂い・蛤の匂い」なら平凡だが、「月の匂い」を嗅ぎつけたことで一気に詩になった。「蛤・浜」と共に海のイメージが重なっているところはもう少し整理したい。「蛤や月の匂いの砂の音」など。この方向で。

・蛤や犬吠埼の浜荒れて(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→全て「海」つながりだからであろうかどこかしら飛躍に乏しいところが惜しいが、大変気分の出た句で上手い。

・惑星の墜ちて蛤となる夜(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→「~して~となる」と説明的なのが惜しいのであるが、熱い詩心をもった方のようである。他の詩型と俳句が全く違うことを体得されると一気に花ひらきそうである。次回も挑戦を!

・蛤や時間の軸に捩じり出る(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→貝の隙間から体をのぞかせる気分を上手くとらえた。海中の蛤、そのなんらかの神秘性・生命力が伝わる句である。佳句好句。この方向で。

・蛤の丸みや海を孕みたる(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→「丸み・孕む」がイメージの重なりで惜しいのであるが、「海を孕みたる」が生きた。そこに海があったという詩的真実。蛤の神秘性を上手くつかんでいる。

・蛤や開くページの空の色(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「開く」がややつきすぎで惜しいが、一句全体を貫く明るさに共感を覚える軽やかな句。この方向で。

・蛤の椀に打ち寄す瀬戸内海(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→やや直接的であるが「蛤の椀」の実感を大胆に表現したところがよい。大きな句。

・蛤の星につぶやく厨かな(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→「厨」は台所のこと。メルヘンチックながら春の夜の息吹く気分やしじまをよく表している。

・蛤や百五十度のカバの口(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→「蛤・カバの口」の開く形態を重ね見た句であるが、その意図がすぐ読み取れるのでその分浅い。「蛤・カバ」とくればそれだけで「開く・角度」はイメージされるので言わなくてよいのである。作者の意図とは違うのであるが「蛤の少し重たきカバの口」あたりならイメージを紐解く楽しみがまだ残る。しかして一句のおおらかさが俳味となっているともいえる句である。

・蛤や岬に白き灯がひとつ(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→「蛤・白き灯」を重ね見て気分の出た句である。作者のやや沈んだ心情のようなものを上手くつたえている。

・蛤やとびらの重き歯科医院(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→「蛤・とびら」のイメージの重なりが惜しいが詠み方は上手い方。例えば「蛤や灯かり重たき歯科医院」などならさらに気分が出そうである。

・巨大船大蛤に浮かされて(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→説明的で惜しい。まだ散文的な感覚が強いようである。しかしてモノの選択はよいのでここから俳句にしたいところ。「大蛤煮られつつある巨大船」など。もちろん煮られるのは「巨大船」である。そうでないと詩にならない。参考に。

・コンテナにはまぐり眠る深夜便(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→全体的に散文的・説明的なのと、「コンテナ・便」「眠る・深夜」などのイメージの重なりが気になるが、何かというでもないその静かな光景になんらかの心情表出ができている句である。好句。

・蛤や廃船置場の空バケツ(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
→「蛤・船・バケツ」が海(水)のイメージの重なりで惜しい。まだ「廃車」のほうがイメージとしてはバランスが取れる。しかしてモノに託して詠もうとする姿勢、キャスティングに徹する姿勢はよく、一句になんらかの切なさのようなものが感じ取れてきて共感を覚える。

・蛤や朱の塗椀の金蒔絵(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→入賞句の「蓋傾ぐ」が連想されるが、入賞句に比してやはり当たり前感が強いところが惜しかった。日常を詠む場合はそこに批評精神がほしいのである。しかして春の華やぎが美しい。

・蛤やとっぱずれゆく熱気球(ペンネーム「葦たかし」さん 67歳)
→「とっぱずれゆく」は「端のほうをゆく」という意味であろう。取りあわせの飛躍が生きている。俳味の感じられる句である。この方向で。

・蛤の影足もとに解体船(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→実際の風景か心象風景か。モノに上手く託して心情表出のできた句でよい。読者が感じ取る楽しみが与えられている。俳句は物を言わなくてもいいという意味で大変参考になる句である。この方向で。

・蛤のひとつ入った介護食(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→これは実際の光景であろうか。喜びとも切なさとも両方に感じ取れる句になっているところがよい。「蛤・介護食」の取り合わせが効いている。

・蛤の二つ寄り添う夫婦かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
→つきすぎなのであるが、これはこれで無理のなく気分を出している句である。もう一段上にいくには、日常べったりではなく、批評精神をもって句を詠むようにしたい。

・蛤の屋台の客にへばりつく(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
→俳味の句である。おもしろい。「蛤の/屋台の客にへばりつく」なら、蛤が客にくっついているという面白さであるし、「蛤の屋台の客に/へばりつく」なら、作者が客にへばりついているのであろう。ユニークというものは詠もうとして詠むのではなく、結果としてユニークになるといういい見本のような句である。好句。

・蛤や桜重ねの千光寺(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)
→「千光寺」であるから「蛤・桜」の季重なりの句であろう。しかして春の華やいだ雰囲気がよく伝わる措辞で美しい。

入選A

・はまぐりやそっとささやく海の声(ペンネーム「モッツァレラ2号」さん 8歳)
→ささやくとは、気分の出た句である。しゃべるとかだまるなどだとやりすぎであろう。

・はまぐりやバケツの中をかくれんぼ(ペンネーム「ヤマトたいが」さん 10歳)
→はまぐりの気分をうまくとらえた。「を」は「の」でもよさそう。

・里帰り祖父のお椀の蛤や(ペンネーム「新米ママ」さん 27歳)
→蛤の好きなお祖父さんなのであろうか、里帰りの気分の出た句。

・はまぐりにそっと口づけ磯の恋(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
→少々直接的・説明的なところが惜しいが、海辺の恋愛の気分の伝わる句。

・壊さぬように蛤の身を剥がす(ペンネーム「野良古」さん 32歳)
→つぶやき・散文・説明文で韻文になっておらず惜しい。しかしながら表現への熱が感じられるのでとった。「季語・575」が俳句と思わないこと。句に書かれてある出来事ではなく、句からイメージされる世界を大事にすること。俳句形式を働かせたものが俳句だということ。を課題としたい。

・蛤の顔に合わせる器かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→なぞときのよう句で面白い。あるいは蛤料理の皿を選ぶ気分の句であろうか。これがもう少しスーとイメージの世界に入り込めるようになるとよいのであるが、少し抽象的か。

・蛤や七輪囲む島根の午後(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
→旅行吟であろうか。芸術性としては少し物足りないがこれはこれで旅の気分の出た一句。

・蛤つゆの手毬麩数ふ子供かな(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
→どこかしら小林一茶の句のような気分が感じ取れる優しさヒューマニズムの句である。しかして芸術性という観点からすれば、日常を詠むのであれば現実にとらわれずもっと批評精神をもって詠んでみたい。「蛤つゆの手毬麩しずむ子供かな」など。

・蛤のひとつにふたつ潮汁(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
→詠み方としては無理なく上手いのであるが、日常的な域を出ていないところが惜しい。そこを攻めてほしい。

・蛤の鬱憤を聞く夕日かな(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
→中七のような直接表現は避け、何としてもモノやモノの様子に託して詠んでほしいのである。「蛤の開ききったる夕日かな」など。

・塗りの椀はまぐり海を従えて(ペンネーム「雅」さん 55歳)
→少々盛り込み過ぎて舌足らずになっているところが惜しいが、おおらかな気分が感じられる好句。

・蛤や初めて空ける耳ピアス(ペンネーム「徳」さん 8歳)
→少女の心境の変化のようなものを上手くモノに託して詠んでいる。

・蛤や物言いたげに空を見る(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
→蛤・言がやはりつきすぎなのであるが、下五が上手い。このように飛躍することでイメージが広がる。句からは何らかの満たされぬ思いのようなものが感じ取れてきて共感をおぼえる。

・蛤の育つ浜辺で網を編む(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
→説明的なところが惜しいのであるが、自分の実感をよく表しているので迫ってくる。俳句の形式に慣れてくれば自分の世界が広がりそうな方である。古今の名句や入賞句を参考に。

・蛤や何もかもが椀の中(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→やけくそな気分の句であろうか。中七がやや直接的で惜しいが、俳味の感じられる句である。

・お吸い物蛤の殻光りおり(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→まだまだ俳句形式を自分のものにせんと模索中。素朴な表現ながら素直に実感を詠んだところがよい。

・蛤と木の芽の香り大漁旗(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
→漁村の食事風景であろうか。モノに託して詠んである好感がもてる。この方向で。

・魚河岸にならぶ蛤ひかりおり(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
→「光る」がよくある表現だという方もおられようが、そう思ったものはしかたない。まずはこのように自分の実感をモノに託して詠んでみたい。生命力の感じられる句である。

・蛤や浜辺の宿で海掬う(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→全部のモノが海つながりなのと、「海掬う」の類想性が惜しいのであるが、海ごと味わっているような気分が大きく楽しい。

・蛤の里静かなり潮満ちて(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→全体的に説明的なのが惜しいが、里の気分がよく出ている。

・蛤の里の花嫁ラクダ行く(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
→全体的にイメージがちぐはぐなのが惜しいが、華やかな気分の感じられる句である。

・蛤の内緒話や灯のともる(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→「蛤・話」がやはりつきすぎでおしいが、女子会であろうか。どこかしらほほえましい。

入選B

・はまぐりの音ぷのような目は二つ(ペンネーム「クシナダかのん」さん 9歳)
・蛤や引っ越し後のからの家(ペンネーム「コンスタンチン」さん 12歳)
・はまぐりや中身は意外と小さいね(ペンネーム「はる」さん 17歳)
・蛤の中にもいるよ天才が(ペンネーム「彼女大好き彼氏」さん 23歳)
・蛤を必死で探す家族達(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・蛤の貝殻重ねだるま落とし(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
・蛤となると信じた初恋か(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
・蛤や夫婦仲良くペアルック(ペンネーム「はますけ」さん 32歳)
・蛤が夢で見た街蜃気楼(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 37歳)
・蛤や負けず劣らず吾子の尻(ペンネーム「へやま」さん 37歳)
・蛤にぎゅうぅぅっと海が掴む子ら(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・蛤で春を感じる機会無し(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・地獄蝿蛤と窓に何思う(ペンネーム「犬蔵の王」さん 43歳)
・風が吹く桜と共に蛤を(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・蛤の開くときの音聞こゆ(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・蛤や子は鎹の貝柱(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・蛤を探す波間に潮風が(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・蛤の砂を吐くかと眺めたる(ペンネーム「有瀬こうこ」さん 45歳)
・蛤やネクタイ締めて椀の中(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
・縁ありてあなたと共に貝合わせ(ペンネーム「暇床屋」さん 51歳)
・蛤や漁師に囲まれ食いにけり(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
・春うらら蛤酒蒸し楽しけり(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・蛤や返信メールできぬまま(ペンネーム「そら」さん 58歳)
・陸に出て土星を仰ぐ蛤よ(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・蛤やうどんを枕に大あくび(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・義母作の餅はまぐり汁ほんわかと(ペンネーム「広島レモン」さん 63歳)
・蛤の開くを待ってるカープ党(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・旅の町焼き蛤に足向いて(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・東北道はまぐり販売点々と(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・いとしい人心ひそかに貝合わせ(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・蛤のため息星をまたたかせ(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・蛤のお椀にひたる笑顔かな(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・蛤に娘の幸せ祈る母(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・桂浜蛤焼いて水平線(ペンネーム「みよこ」さん 70歳)
・小蟹連れ椀に潮騒蛤や(ペンネーム「華みづき」さん 70歳)
・焼蛤の匂いに鼻のうごめけり(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・蛤や煮るなと焼くなとしておくれ(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・はまぐりや十二単の華やいで(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・蛤や式部と納言に囲まれて(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・粒選りの蛤つぶやく店頭に(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
・蛤や娘の艶やかに紅引きて(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・初孫のお食い初めや蛤椀(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
・蛤酔うフレンチキッスのTKO(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

ユニー句(句)

・焼き蛤思わずよだれ滴らし(ペンネーム「山越えセレナ」さん 30歳)
・はまぐりや霞ヶ関の書類棚(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
・ハマグリや高くも探す国産を(ペンネーム「まんまるちゃん」さん 39歳)
・すすったらうまみ凝縮ハマグリさん(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・チラシ見て蛤お得どうしよう(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・蛤や煮ハマ焼きハマ胃の海へ(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・蛤の詰め放題や物産展(ペンネーム「有瀬こうこ」さん 45歳)
・蛤や長き祝辞に大欠伸(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・蛤は潮干狩りではみつからず、(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・記念日に焼き蛤で妻と酒(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・孫が聞くあさり成長はまぐりに(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・蛤に似てる℃℃℃のグラウンド(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・蛤は何も言はぬが海掃除(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・おずおずと手を伸ばし取る焼き蛤(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・バーベキュー遠慮のかたまり焼き蛤(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・蛤を買う決断に小半時(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
・蛤は汁か焼くかで争いぬ(ペンネーム「みよこ」さん 70歳)
・炉端焼き焼き蛤で焼いた口(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・蛤の小口融資に口閉ざす(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・蒸蛤頂いていま見合い中(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・蛤鍋や笑い転げるバスの旅(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・焼き蛤カスタネットやフラメンコ(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年3月23日(金)

第89回 お題「春風」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「春風」。
今回もいつになく多くの投句を頂き、うれしい悲鳴でした。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず、原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句は、「春風」の勢いと輝きの感じられる一句。
入賞句の「原爆ドーム」は、オリジナルにとらえた「春風」の実感が生きた句。
入賞句の「転校生」は、「春風」の気分を明るく無理なくとらえた共感を誘う一句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「春風となりて馬上の少女かな」(ペンネーム「吞田」さん 71歳)

馬上の少女が春風となって(草原をかけ抜けてゆく)という意味の句ととりたい。
類想句もありそうであるが、なんといっても「春風・馬・小女」、この三つモノの織りなす「輝き(ハーモニー)」が美しい。
ここでいう「輝き(ハーモニー)」というのは、一句の景色(A)のことを言っているのではなく、そこから感じ取れる「イメージ世界(非A)」のことを言っている。
この三者がイメージ世界で違和感なく溶け合って、のびやかさ・スピード感・透明感などの輝き(もののみえたる光)を生み出しているところが見事なのである。
この句からもどこか、荘子の「胡蝶の夢」、仏教的な「無常観」のような世界がイメージされてくる。
テクニカルなことを言えば、「ようだ・ごとく」などの比喩ではなく、「となりて」と直接詠んであるところが特によい。
これによって、「春風」の存在感が全面に出てきて、詩に昇華されている。
これが「春風のごとく」などであれば、「馬上の少女」は少女のままであるし(現実べったり)、「春風」のモノとしての存在感も希薄で話になるまい。
またこの句、いわゆる575の定型のリズムではない「句またがり」の句であるが、実に「定型感」が感じられる句である。
世には、理論上は「句またがり」でも、感覚的に「定型感」を失っている句も多い。
その意味でも参考になろう。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
定型感は、感覚的なもの。

入賞

「原爆ドーム雁木に春の風籠る​」(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)

「雁木」は、川に降りる階段、船着き場のことで、市内の川では多くみられる。
「原爆ドーム」を望む川に佇む作者による「春風」の実感をとらえた句と思われるが、何よりこの独特の把握が光った。
こういうところに、作者のなんらかの作者の心情が(無意識的に)託されているのであって、こういうところをめくってゆくのが俳句の鑑賞の楽しみである。
喜びの象徴である「春風」が「原爆ドーム」全体に吹きわたっているという句であれば、「平和の喜び」であるが、こう詠まれると「今は本当に平和なのか」と問いかけられているような気がして、ドキッとさせられる。
世界を見渡せば確かに各地でまだ争いが続いている。
「原爆ドーム」に真実の「春風」が吹きわたるそのときを広島の一人として祈る。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
先入観にとらわれず自分の実感を詠む。

「春風や転校生の髪香る」(ペンネーム「雅」さん 55歳)

新学期の中学校もしくは高校の様子を詠んだ句であろうか。
誰しもが経験したことのあるようなシーンである。
その分類想句も多そうであるが、「時期・場所・状況・ポイント(香り)」が実に、卒なく綺麗に詠み込まれていて上手い。
ハッとするような印象的な洗練された「髪の香り」。
それは都会から転向してきた髪の長めの女生徒ではなかったか。
一目ぼれとまでいかずとも、その女性徒へのドキドキ感のようなものを直接いうことなく「春風によって香る髪」に上手く託して詠んだ青春の一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
直接詠まずモノやモノの様子に託す。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・春風や肌にはりつく友の墓(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※彼岸の入りでした。
→「春風」というポジティブなイメージに、「友の墓」という相反するイメージを取りあわせて詩にした。何と言っても中七の表現が秀逸である。これだけでその友達と作者がどれほどの関係性であったかがありありと感じ取れる。共感を覚える一句である。

・春風やインクさまよう物理学(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※春に受け取った物理学の教科書をめくるとパッと見ただけでもさっぱり理解不能なものが並んでおり、これから学ぶ事が気が遠くなる気持ちでした。
→「物理学」だけに「さまよう」がやや近しいが、「インク」に重心を置いているのがユニークである。「春風」の気分ともつかずはなれずの面白い世界観の句。これが「秋風」ならつきすぎになろう。この方向で。

入選句

特選

・早朝の春風と行く新幹線​(ペンネーム「スネイク​」さん 14歳)
→旅行であろうか。颯爽とした気分の感じられる句である。

・春風に色を尋ねる風ぐるま​(ペンネーム「ケロロ​」さん 18歳)
→「春風・風車」ともに季語であるがそこまでの傷ではない。中七のような独自の把握を大事にしたい。楽しい気分の一句。この方向で。

・春風や研修中の文字揺れる​(ペンネーム「藤堂星羅​」さん 21歳)
→「春風の生命力で文字が息吹いた」という詩的真実の句と解釈したい。この実感を大切に。

・無人駅少女駆け込む春の風​(ペンネーム「じゅんこバズ​」さん 37歳)
→上五が無ければ楽しいだけの句であるが、「無人駅」を置いたので句に深まりが出た。「無」の漢字のイメージによるものか「少女」の表情もどことなく見ないところも詩的である。

・ブーケトス春風の元少女A​(ペンネーム「胃痛​」さん 37歳)
→「春風のような」ではなく「春風の」なので詩になった。これが「春風やブーケトスする女A」などなら、言いたい事は明確になるが、その分詩を失う。

・春風や上棟式のパイプイス​(ペンネーム「かつたろー。​」さん 42歳)
→春の気分がよく出ている句である。句の世界がやや日常よりなところが平凡で惜しい。

・春風やレンガの壁を壊す人​(ペンネーム「ギザギザ仮面​」さん 46歳)
→今までの自分を破るような心境、自我を破るような気分句であろうか。「春風」のイメージと中七下五のイメージが飛躍しており詩になった。同情申し上げる。

・岩を割る春風となる化石かな​(ペンネーム「ブルージャスニン​」さん 47歳)
→たたみかけるような詠み方に殻を破りたいような己の気分が感じ取れる。ただし上五は不要なようである。そのあたりで一考してみたい。好句。

・モノクロの連理の枝よ春の風​(ペンネーム「もじこ​」さん 48歳)
→「連理」とは別の木の枝と枝とがくっついていることを差し縁起がよいとされる。全体的にイメージのバランスがとれてないところが惜しい。ここから句にしてゆきたいという気分の句である。

・春風に記号とびだす海図かな​(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん​」さん 50歳)
→好句である。「春風に」といっているが、こういうところは最初の発想にとらわれず舌頭千転、「春風の」としたい。 この方向でいい。

・ひとつめのピアスホールや春の風(ペンネーム「洒落神戸​」さん 50歳)
→春らしく楽しい句でムードがある。これはこれで一句なのであるが、いかんせん類想が多いのが惜しい。大賞受賞経験者。さらに少し飛躍した世界を見てみたい方である。

・春風に卵はみ出すパンの耳​(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
→まさに春の気分が目いっぱい出た句である。「春風(大)」→「パンの耳(小)」の自然な対比が活きた。

・付箋紙を二枚残して春の風​(ペンネーム「鯉こころ​」さん 54歳)
→なんらかのやり残したことがあるまま季節が過ぎていったのか、満たされぬ心境のようなものが感じ取れる句である。上五中七で十分に心情表出できている。佳句。

・デボン紀の魚に前足春の風​(ペンネーム「中山月波​」さん 54歳)
→素材は悪くなく詩的で世界観もなかなかなのだが、「前足がある」という散文の安易な省略がすぐに読み取れ惜しい。「デボン紀の爪もつ魚や春の風」「デボン紀の魚の足なる春の風」あたりなら賛成できる。原句のような詠み方も他ではよく見かけるが、韻文として未熟というのが私見。センスがある方なので俳句形式に慣れてほしい。

・春風や合格の絵馬響き合う​(ペンネーム「やんちゃん​」さん 56歳)
→喜びの気分のよく出た句である。下五がややつきすぎで惜しいが、この方向でよさそう。好句。

・春風や車道で踊るポリ袋​(ペンネーム「ハラペコ​」さん 57歳)
→ポリ袋でも句になる。惜しいのは「風・踊る」のややつきすぎな言葉の関係性。「詩にならない語はない。詩にならない語と語の関係性があるだけである」。この方向で。好句。

・春風や大地を駆けるランドセル​(ペンネーム「ゆきんこ​」さん 59歳)
→「春風・ランドセル」は、素材としてはよくあるが、中七を大きくとらえて独自の詩にした。この方向で。好句。

・春風に仲間広げる芝桜​(ペンネーム「孫4人じぃじ​」さん 61歳)
→「春風・芝桜」の季重なりは大した傷ではない。ここから句にしたい。「仲間」がいるかどうか、「芝桜ひろがってゆく春の風」このあたりで詠む方が感じる句になりそうである。

・春風に背中押される耕運機​(ペンネーム「是多​」さん 63歳)
→春の畑仕事の気分を自然体で詠んだ句であろう。やや直接的なところが惜しいが実感がよく感じられるところはよい。

・春風や遊覧船のデッキチェア​(ペンネーム「じゃすみん​」さん 65歳)
→春の楽しい気分がよく伝わる一句。無理に盛り込もうとせず、このように心に留まったモノに託して詠めばいい。好句。

・春風へ水車は光撒き散らす​(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→全体的に説明的なところと、下五あたりの荒い詠み方が惜しいが、熱いものを内にもっている方。それを直接ださず詠んむようにするとよい。「春の風光吐き出す水車かな」など。

・春風やパステル色の物干して​(ペンネーム「猫またぎ65​」さん 65歳)
→なかなか詩的な好句である。ただし「物干して」はやや言葉足らず。普通に「服干しぬ」あたりでよさそうである。

・春風やぴくりと動く河馬の尻​(ペンネーム「葦たかし​」さん 67歳)
→なかなかモダンな好句だが、中七の詠みが甘い。舌頭千転「河馬の尻少しずれたる春の風」など。しかしてこの独特の視点・詩心は大事にされたい。

・ランドセルまだひんやりと春の風(ペンネーム「さくら​」さん 68歳)
→まだ学校に通う前のランドセルであろうか、中七の把握が面白い。このギャップが詩を生んでいる。対比を大切に。佳句。

・春風や北から西へ飛行雲​(ペンネーム「うり、ぴーママ​」さん 69歳)
→進境の見られる句である。「飛行雲」は「飛行機雲」のことだが「飛行雲」と詠むと機体のイメージが消えていかにも雲らしい。中七の大きな把握にのびやかな心境が感じ取れて共感を覚える。

・屋上の吸殻入れや春の風​(ペンネーム「比々き​」さん 69歳)
→冬が終わり「春の風」だからか「屋上」にも人が多く集い楽し気である。そんな季節感を上手く詠み込んだ。これだけの舞台装置でドラマが感じられるのであるから、俳句は脚本ではなく、「モノのキャスティング」であると心得たい。好句佳句。

・春風や線路が走るたなごころ​(ペンネーム「柱時計​」さん 75歳)
→「たなごころ」とは、どこか孫悟空の釈迦の手のひらをイメージさせる。次元を超越したような詠み方が実に面白い。現実を現実らしく詠むのであれば詩でなくてもいい。これこそが詩である。好句佳句。この方向で。

・百匹の猫うら返る春の風​(ペンネーム「ハイカー​」さん 60歳)
→これまた愉快な俳味の句である。「春の風」のぬくもりがそうさせるのであろうか。世界に対して心を広げているおおらかさがたまらない。好句佳句。

・駅舎出て屋台を覗く春の風​(ペンネーム「坂の浜ちゃん​」さん 77歳)
→「春の風」も腹が減るのである。この把握が面白い。少し説明的なところが惜しいが、比喩などを使わずに心の実感のままに詠んだところが共感を呼ぶ。俳味の一句。

入選A

・うっすらと光のかげを春の風​(ペンネーム「モッツァレラ2号​」さん 8歳)
→やや抽象的なのが惜しいが、繊細な気分の感じ取れる句。

・春の風潮薫りゆく大鳥居​(ペンネーム「競馬大好き​」さん 24歳)
→おおらかな気分の句。大胆な詠み方で詩にした。この方向で。

・春風に花びらおどる異国の地​(ペンネーム「新米ママ​」さん 27歳)
→明るい気分の句。春風・花びらの季重なりがやや気になる。そこを整理したい。

・春風の悪戯遊ぶ少女達​(ペンネーム「ASARINA​」さん 29歳)
→楽し気な気分の句、何度も読み返してリズムを整えるとよさそう。

・春風や進水見守る子供達(ペンネーム「はますけ​」さん 32歳)
→わくわくする気分がよく出た句。好句。

・春風をお好み焼きの上に敷く​(ペンネーム「モッツァレラえのくし​」さん 42歳)
→あたたかな気分の句である。「お好み焼きかぶさるように春の風」など。出来事ではなく、モノを詠むようにしたい。

・春の風練乳とろりパンにのせ​(ペンネーム「マネレ​」さん 43歳)
→とろりで気分は出ているのだが、やはり中七の詠み方が甘い。そのあたりが課題か。

・晴天の春風伸びて空を飛ぶ(ペンネーム「武相乱​」さん 43歳)
→明るい気分の句。全体的にもたもたしているのと余分を省きたい。

・春風に背中押されてラブレター​(ペンネーム「Dr.でぶ​」さん 45歳)
→甘い気分の句である。全体的に散文的なので古今の名句をただ詠み感じ、韻文の感覚をつかむようにしたい。

・春風や行くあてもなくバスに乗る​(ペンネーム「有瀬こうこ​」さん 45歳)
→逃避行のような気分であろうか。春風の暖かさがそうさせるのか。出来ゴトではなくモノを詠むようにすうrとさらによくなる。

・左見て右見て渡る春の風​(ペンネーム「菊池洋勝​」さん 46歳)
→楽し気な気分の句。春はおでかけも増えそうである。

・やんわりと春風まとう女学生(ペンネーム「日向ぼっこ​」さん 47歳)
→すこし詠みが甘いが、ふくらみある季節感を上手く把握した句。

・春風と力くらべのシャボン玉(ペンネーム「ジジププ​」さん 48歳)
→中七がやや直接的で惜しいが、楽し気な気分の句。

・春風や行方知れずの日記帳​(ペンネーム「モリババと40人の盗賊​」さん 52歳)
→意味深な気分の句。中七がやや直接的なので一考するとよさそう。

・春風のレジにワインが滑り込む​(ペンネーム「いようさぎ​」さん 54歳)
→春だから買うモノも少し増えるのであろうか。下五に実感がある。

・春風の空プリーツを泳がせて​(ペンネーム「すずらん村。​」さん 55歳)
→春のあかるさがよく出ている。プリーツを具体的に詠むとさらによい。

・春の風黄色一色空の旅​(ペンネーム「蓮子​」さん 56歳)
→春を黄色と実感したところが面白いが、もう少し具体的に詠むとさらによい。

・春風や下駄箱残る部長の名​(ペンネーム「アヒル艦隊​」さん 57歳)
→春のワンシーン。句が少し窮屈なのでモノを整理するとさらによくなりそう。

・春風や第二ボタンになびく髪​(ペンネーム「インゴット​」さん 57歳)
→男子生徒の胸にもたれている様子ととるのが印象的であろうか。気分の出た句。

・春風やカフェカーテンに掛け替える​(ペンネーム「徳​」さん 58歳)
→心機一転の気分の句。中七の言い方が少し窮屈ので一考するとよさそう。

・春風や地球岬に雲の船​(ペンネーム「かすみ草​」さん 59歳)
→非日常感の出た句。下五がやや観念的なので「雲のいろ」などさらりとよみたい。

・ハコスカの右側追い越す春の風​(ペンネーム「ヨシ整体​」さん 60歳)
→ドライブの楽しさの出た句。「ハンドルの右を追い越す春の風」などのほうがわかりやすそう。

・春風や川面に浮かぶ花筏​(ペンネーム「9月の雨...順子​」さん 61歳)
→綺麗な句。しかし「春風・花筏」の季重なりが強いのでさけるとさらによくなりそう。

・春風や花びらフリル揺らしおり​(ペンネーム「そよそよ​」さん 62歳)
→かわいらしい気分の句。「春風・花びら」の季重なりが強いのでさけるとさらによくなりそう。

・エンジンを吹かす農小屋春の風​(ペンネーム「痺麻人​」さん 64歳)
→活動的な春の気分の句。全体的に盛り込みすぎのようなので、出来ゴトでななくモノを詠むようにしてみたい。

・春風にゆられ音戸の渡し舟​(ペンネーム「クリスマスローズ​」さん 66歳)
→春らしい気分がよく出た句。無理のない詠み方がたのしい。好句。

・春の風児のポケットはおもちゃ箱​(ペンネーム「きいたん​」さん 68歳)
→子どもの雰囲気がよく伝わる句。詠み方が尻切れトンボなので韻文にするとよくなりそう。「ポケットにおもちゃつめこむ春の風」など。

・春風と旅立つ君の髪香り​(ペンネーム「えみちゃん​」さん 70歳)
→分かれのさみしさの出た句。香りが印象的。

・春風やビルの谷間の夜勤明け​(ペンネーム「みよこ​」さん 70歳)
→なかなか気づかない時間を捉えた。上手い一句。好句。この方向で。

・春風やラメ入りの靴選びおり​(ペンネーム「ふー​」さん 71歳)
→春風がそうさせるのである。明るい気分の共感をさそう句。

・校門の記念写真に春の風​(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ​」さん 72歳)
→春風が写真にうつったという句と取りたい。詩的な句。この方向で。好句。

・春風の土踏みしめる散歩道​(ペンネーム「あしながおじさん​」さん 72歳)
→なんらかの実感が感じ取れる句。

・打球音河原の子らに春の風​(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
→活動的な気分の句。

・両の手をふわりと抜ける春の風​(ペンネーム「水彩少年​」さん 72歳)
→春風にカタチを感じたのが手柄。出来ゴトではなくモノを詠むとさらによくなりそう。

・薄暗きオランダ坂に春の風​(ペンネーム「匿名じいさん​」さん 72歳)
→明け方のイメージである。期待感か屈折した心境か。

・新築の屋根の赤色春の風(ペンネーム「めがねバーバ​」さん 73歳)
→明るい句である。中七の詠み方が惜しいので「新築の屋根の色づく春の風」あたりで詠んでみたい。

・文机の創擦りゆく春の風​(ペンネーム「みなと​」さん 74歳)
→なかなか心情表出の出来た句。「文机の傷をなめゆく春の風」などでも。

・春風や老人ホームの赤い屋根(ペンネーム「コスモス​」さん 75歳)
→どのような気分か想像する楽しみの与えられた句。好句。

・春風をいっぱい詰めたランドセル​(ペンネーム「だいさん​」さん 75歳)
→希望に満ちた句。「詰めた」より「詰める」と詠む方がリアルで臨場感が出そう。

・春風や恋文かすかに匂いけり​(ペンネーム「めぐちゃん​」さん 77歳)
→少しせつない気分の句。実感がよくでている。この方向で。

・春風をまつピカピカのランドセル​(ペンネーム「古志清右衛門​」さん 78歳)
→希望の感じられる句。「春風・ランドセル」は類想が多いの気を付けたい。

・そそり立つ豪華客船春の風​(ペンネーム「テッちゃん​」さん 80歳)
→句のリズムがブツ切れになって惜しいが、雄々しい句。好句。

・送り出すわが子の背なに春の風​(ペンネーム「ひょっこ​」さん 76歳)
→親心の句。少し説明的なので「子の背なを送り出したる春の風」くらいでも。

入選B

・恋の花春風と共にやってくる​(ペンネーム「クランキー​」さん 24歳)
・そよ風や来たれと想えばさくら道​(ペンネーム「ジンジャーハイ​」さん 27歳)
・初めてを向かおう貴方と春一番​(ペンネーム「あや​」さん 28歳)
・春風が吹くたび思う恋心​(ペンネーム「馬場さんみたいになりたいです。​」さん 31歳)
・骨折の日の春風よ青天よ​(ペンネーム「野良古​」さん 32歳)
・娘発ち寂しく走る春風や​(ペンネーム「ケロママ​」さん 40歳)
・春風で浮かぶ花びらさくら酒​(ペンネーム「しまっかーとにー55​」さん 40歳)
・春風を集めて温し日曜日​(ペンネーム「HK​」さん 41歳)
・春風や漢方薬の効き目まだ​(ペンネーム「伊藤亮太​」さん 41歳)
・春風や桜に吹くのは違反だよ​(ペンネーム「手桶​」さん 42歳)
・春風や一、二、三番徒競走​(ペンネーム「成虫​」さん 42歳)
・春風や洗濯物も嬉しそう​(ペンネーム「壁画​」さん 42歳)
・春風に乗って来ました開花宣言​(ペンネーム「彩の子猫​」さん 44歳)
・春風が土筆を撫でて菜の花に​(ペンネーム「彩の助​」さん 44歳)
・春風に桜の花弁流されて​(ペンネーム「稲葉高飛郎​」さん 45歳)
・春風に吹かれ舞い散る桜かな(ペンネーム「いちご​」さん 46歳)
・春風に調子はどうだいバオバブよ​(ペンネーム「暇床屋​」さん 51歳)
・ふわふわと春風にのり綿毛舞う​(ペンネーム「やまかぜファイブ​」さん 55歳)
・春風の土手ドクターイエロー撮る​(ペンネーム「たけの子​」さん 58歳)
・春風に誘われしゆく花見かな​(ペンネーム「りんの​」さん 58歳)
・春風にそそのかされてキップ買う​(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん​」さん 63歳)
・おさな児と抜きつ抜かれつ春風よ​(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん​」さん 63歳)
・暴君が春風に乗り北国へ​(ペンネーム「ひなじいさん​」さん 63歳)
・扉開け肩をすくめる春風に​(ペンネーム「広島レモン​」さん 63歳)
・春風に託し届け愛のメッセージ​(ペンネーム「さんちゃん​」さん 64歳)
・春風に誘われ旅する老夫婦(ペンネーム「みっちゃん​」さん 64歳)
・春の風山が黄色く菌がとぶ​(ペンネーム「DIYじじ​」さん 66歳)
・山景色香り漂う春風や​(ペンネーム「aniesu​」さん 68歳)
・梅林に春風吹いて花が舞う​(ペンネーム「リュー​」さん 68歳)
・ちょっと待っていたずら春風青いシート​(ペンネーム「グラン グラン​」さん 69歳)
・春の風映画帰りの喫茶かな​(ペンネーム「ヒロリン​」さん 69歳)
・春風や補助輪とれてすいすーい​(ペンネーム「田中ようちゃん​」さん 70歳)
・春風や花散りぬるを怨み顔​(ペンネーム「あこうちゃん​」さん 71歳)
・春風や期待も背負うランドセル​(ペンネーム「かっちゃん​」さん 77歳)
・春風に思いをはせる恋心​(ペンネーム「彼女大好きな彼氏​」さん 23歳)
・春風が女の髪にイタズラレ​(ペンネーム「三日酔い​」さん 45歳)
・春風や逆転カープ駅の道​(ペンネーム「東広島の七十爺​」さん 74歳)
・春風が呼ぶ早く来いよと波頭​(ペンネーム「コンセプシオン6​」さん)

ユニー句(句)

・春風が運ぶ涙のスギ花粉​(ペンネーム「うえぽん00​」さん 23歳)
・春の風肌で感じる薄い髪​(ペンネーム「Dr.でぶ​」さん 45歳)
・飽きもせず春風女子に付きまとう​(ペンネーム「日向ぼっこ​」さん 47歳)
・春風や目覚まし時計の二個並ぶ​(ペンネーム「モリババと40人の盗賊​」さん 52歳)
・春風に花見弁当 砂まみれ​(ペンネーム「やまかぜファイブ​」さん 55歳)
・待っている寒い北国春風を​(ペンネーム「まあくんの祖母​」さん 62歳)
・春風に乗せて誠也の場外弾(ペンネーム「⑦パパ​」さん 62歳)
・春風に乗って来そうな好景気​(ペンネーム「まあくんの祖父​」さん 64歳)
・春風とともにたわぶる花粉症​(ペンネーム「昔の神童​」さん 74歳)
・春風や公式戦の幕開けぞ​(ペンネーム「テッちゃん​」さん 80歳)
・「春風の二人」を歌う二人かな​(ペンネーム「ありんす​」さん 82歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年3月16日(金)

第88回 お題「蝶」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「蝶」。
今回も大変多くの投句を賜り光栄でした。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず、原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句は、五感を刺激する春のワクワク感がよく感じられる句。
入賞句の「猫」は、常識にとらわれず大胆に詩的真実を詠みあげた句。
入賞句の「少年」は、強い決意のようなものが感じられる若々しい句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「初蝶やカレーの国のコンテナ船」(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)

春の気分を感じさせる「初蝶」が舞う中、「カレーの国のコンテナ船」が到着したという句であろうか。
あるいは「初蝶」と「カレーの国のコンテナ船」のイメージを重ね見ている句であろうか。
どことなく「初蝶」が「コンテナ船」を引っ張ってきたというような詩的真実も感じとれ面白い。
特定の国名ではなく、「カレーの国」と象徴的に詠んであるところも臭覚や味覚を刺激するし、楽しさのような側面をより強調して伝えており効果的である。
また単なる船ではなく「コンテナ船」とあることで、「コンテナ」の中を想像する楽しみもあるし、その形態も「初蝶」の形態と、つかず離れずの関係性で調和がとれている。
カタカナが多いところも、どこかしらコミカルでメルヘンチックで親しみやすく、これもよく効いている。
新しい名前の方であるが、措辞の斡旋に長けたしっかりしたモノ句の一句である。
一句に託された楽しい気分・ワクワク感のようなものが感じ取れれば鑑賞は成功であろう。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
カタカナを効果的に使う。

入賞

「抱かれたる猫ひらひらと蝶になる​」(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)

蝶舞う春の昼下がり、猫を抱いた作者がうとうとしているときの一句であろうか。
句意は明瞭「抱かれている猫が蝶になる」でよい。
中国の戦国時代の宋国の思想家で、道教の始祖の1人とされる荘子の説話『胡蝶の夢』が思い出される。
『胡蝶の夢』とは、「夢の中で蝶になって飛んでいた所、自分が蝶になった夢をみていたのか、それとも今の自分は蝶が見ている夢なのか、分からなくなった」というものである。
この説話は「無為自然」というの荘子の考え方をよく現すものとして知られている。
このような句は、伝統的な俳句観にすっぽりはまっている方にはお手上げであろうし、俳句は日常・現実を詠むのもと思っている方には、全くついてゆけないであろう。
以前にも述べたが、俳句は現実を現実らしく詠むことでもないし、何かの出来事を過不足なく伝えることでもない。
眼ではなく、心に映った真実(そんな気がする)を、句にすればよいのである。
その意味で、春の昼ののびやかな気分の中、眼の前の猫と蝶が溶け合う夢うつつの瞬間をよく捉えている。
自他の区別もなくすべてのものがつぎつぎに形を変えながら変化してゆくなんらかの境地を伝えるような句で見事である。
生物学的な観点(理屈・意識・知識)からすれば、哺乳類の猫が昆虫の猫になるなどありえない話であるが、作者の心(無意識)がそれを実感したのである。
仏教の「無常」を持ちだすまでもなく、一切は常に変化し不変のものはないのであるから、その意味でも、実体のある猫が他のものに姿を変えてゆくという「真実を射止めた句」と受け取れば何の不足もない。
「ひらひらと」→「蝶」がつきすぎの表現とも言えるが、のびやかな春の空気に向かって変化してゆく気分はまさしく「ひらひら」でなければ言い表せなかったようにも感じられる。
こういうところは「無意識からの表現」と受け取りたい。
頭(世間体・常識・理屈・教条)に惑わされず、無意識からの実感・詩的真実を見事に詠みあげた気分の出た一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
「その馬鹿らしさに気がついた場合、それを捨て去ることを急いではならない。かりそめにもその馬鹿らしいことは存在したのだ……どうして、そんなことがあり得たのか?ちょっと待った。」
詩人ポール・ヴァレリー

「初蝶や少年の肩そそりたち」(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)

一読して、高浜虚子の「春風や闘志いだきて丘に立つ」が思い起こされる。
春の暖かさを感じある日の強い決意のようなもの、男らしさのようなものを直接のべるでもなく、しっかりモノに託して詠んであり見事である。
しかしながら「初蝶・少年」だからであろうか、どことなくピュアでもろい心境のようなイメージも同時に運んできており、そのような相反するイメージが詩の厚みになっているようである。
虚子の句が頭にあったがどうかは不明であるが、虚子の句の詠みぶりに従うなら「そそりたつ」としてもよさそうであるが、そうするといかにも言い切った気分が強すぎて一句の気分に合わない。
この句の場合、原句のほうがバランスがよさそうである。
対象に自己を重ね見て詠んだ若々しい一句。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
言いたい事ではなく、何かしらの気分を伝える。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・初蝶や首ほっそりと薬瓶(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※イメージです。
→浮かんだままの句のようであるがそれでよい。何らかの気分を詠めばいいのである。切れ字前後のとりあわせが実に絶妙のバランスである。女性的ななまめかしさが美しい。これはこれで一句なのだが「初蝶の首の細さや」などもあろうか。

・初蝶や彩りの増すベレー帽(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※春が来て、外でスケッチをしている絵描きさんのキャンバスも彩り豊かになっている様子を句にしました。
→「増す」がやや直接的な表現で賛否ありそうであるが、春の気分をよく伝える句で楽しい。この方向で。

入選句

特選

・海峡を渡るフェリーや蝶の群れ(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
→海辺の風景を遠近法で美しくまとめた。後半にゆくにしたがって非日常感が出てくる詠み方が効果的で読者をひきつける。この方向で。

・踏切の開けば蝶行く明けの空(ペンネーム「コバルトブルー」さん 32歳)
→通勤でのはっとした一風景を捉えたものであろうか。少々類想が多いのと少し理屈っぽいのが玉に瑕であるが、これはこれで何らかの明るい気分を上手く託し詠みした一句。

・城跡の井戸より出づる春の蝶(ペンネーム「野良古」さん 32歳)
→吟行での句であろうか。詠み方はカッチリしているのであるが、世界観がどうにも古めかしく惜しい。気持ちはよくわかるのであるが、伝統的な俳句観にとらわれずのびのび詠んでほしい。日常を詠む場合はそこに批評精神がほしいのである。俳句を詠もうとせずぜひ詩を!

・蜜といふ喫茶に憩う蝶の口(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→面白い把握の句である。「蝶が花の蜜という喫茶に憩う」という句なら意図的で浅い。しかし、「蜜という名前の喫茶」であればなんとか詩になっている。ここでは後者と解釈しておく。その意味では「蜜という喫茶の窓や蝶の爪」くらいで詠んでみたいところである。次回もぜひ挑戦を!

・初蝶の浮き沈みゆく白帆かな(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→港での眺めであろうか。「浮き沈みゆく」のが「初蝶・白帆」両方にとれる詠み方で働いている。あたたかな春になりたてののびやかながらやや不安定な気分のようなものを上手く託し詠みしている。この句の場合「浮き沈みする白帆」と言っているが、船が危険にさらされているという状況ではなく、波に揺られてのんびりしているというような気分である。句の表面そのものではなく、こういう「気分」を感じとることが大事である。この方向で。

・初蝶の空に溶けゆく歩道橋(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→散歩のときの一句であろうか。「空に溶けゆく」のが「初蝶・歩道橋」両方にとれる詠み方で働いている。「初蝶・歩道橋」という無理ない把握がいい。春の陽気が自他を超えた一体感のようなものを感じさせるのであろうか。そういった気分を上手く伝える句である。

・紋白蝶たゆたう午後の遊覧船(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→どこかの公園、あるいは旅行などでの句であろうか。「午後」が言わずもがななのが惜しいが、上の句同様、春の気分をほのぼのと伝える一句で美しい。

・初蝶ややわらかき風つまずいて(ペンネーム「雅」さん 55歳)
→「初蝶」そのものの実感を句にした。「初蝶」だけにやや弱弱しいというか動きがまだぎこちないイメージである。意味にもたれるならば「やわらかき風につまずく紋白蝶」などのほうが自然であるが味気ない。原句のような無意識からの詠み方のほうが、何かしらの実感を強く伝えているようで心を打つ。こういうところが私のいう「俳句は気分・ムード」なのである。決して俳句らしさに溺れてはいけない。

・あたたまるペンで話が蝶になる(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
→入賞句の「猫」の句に近い世界観である。「話が蝶になる」など常識的な感覚では太刀打ちできないであろうが、無意識からの実感を上手くくみ取っている。「話」という実体をもたないものが実体のある「蝶になる」。この句も春の幻想性・生命力を詠み込んだ詩的真実の句である。

・白壁を汚す紋白蝶の影(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→ビルの壁がイメージされる。常識的にはプラスイメージでとらえられる「蝶」を、「汚す」というマイナスイメージでとらえているところが収獲である。「日常を詠む場合はそこに批判精神がなければならない」ということを私はよく言うが例えばこういうことである。 惜しいのは類想が多いところ。しかしてそれは多くの詩人の詩心と通じるということでもある。この方向性を期待したい。

・斑蝶鏡の中から抜け出せり(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→蝶の幻想性と鏡の取りあわせはよく釣り合っている。非日常的な気分が楽しませる。これくらいに把握しないと詩にならない。少々類想が多くのであるが、この方向でよい。

・初蝶やホスピスの窓磨く朝(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
→嘱目の句であろうか。心象風景であろうか。いずれにしてもこのさわやかな気分が共感を誘うやさしい一句である。この方向で。

・蝶々に窓を大きく開きたり(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→大らかな気分の感じ取れるのびやかな句で好句。下五は「開きおり」などのほうが座りがよさそうである。

・蝶々や空に飛びつくゴリラの子(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
→動物園の光景であろうか。「蝶々・ゴリラの子」とくれば、多くの方は 頭や先入観が働いて「青空や蝶にとびつくゴリラの子」などと詠んでしまいがちであるが、「ゴリラの子」が「蝶々」ではなく「空」に飛びついていると詠んでいるのである。赤ちゃんゴリラならではのぎこちない動きを先入観なくとらえている見事な写生句である。実にほのぼのとしたのびやかな気分が感じ取れる輝句好句。この方向で。

・蝶になり来世の父母に逢いにゆく(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→「蝶になりたい・逢いにいきたい」ではなく、「蝶になり逢いにゆく」となんとか観念をさけ実存に重心を置いて詠み句にした。ただし世界観が「蝶」のステレオタイプであるところがどうにも惜しい。熱いものをもっているのはよくわかるので、そこをモノをしっかり通して詠んでみてほしい。

・国境の天地を跨ぐ蝶々かな(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
→国境での風景であろうか。人間が国境をまたぐのは覚悟が入りそうであるが、蝶々にもそのような気分が感じ取れる句である。少し理屈っぽいが手慣れた詠み方が上手い。

入選A

・青々と芽吹く大空蝶の風(ペンネーム「ケロロ」さん 18歳)
→全体的につきすぎなのが惜しいが、春の生命力を上手く託した。

・初蝶や髪留め落ちてる停止線(ペンネーム「三滝のベベ」さん 38歳)
→発見の句である。中七の詠みが甘いところ「停止線」が必要かどうか。そのあたりを一考したい。

・黄と黒のロープのあちら春の蝶(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→「春の蝶」程度の季重なりはどうということはない。問題は「あちら」。「軋む」などとしっかり心情表出して詠んでみたい。

・大輪に集まる蝶々乳母車(ペンネーム「オリオン」さん 42歳)
→大らかな春の気分の出た句である。「大輪」は何かの花のことなのであろうが中途半端。ポイントを絞って「乳母車車輪につどう蝶々かな」くらいに詠んでみたい。

・春の蝶プレーボールの手が上がる(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→どうも最近コト句寄りで惜しい。この句も少しそのような気配。常識的な俳句観に惑わされず、自分の感性を信じて、無意識からの実感に素直に詠むようにされたい。

・蝶々や陽だまりに本忘られて(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→公園での一句であろうか。軽やかな詠み方はよいのであるが、世界観がどうにも常識的で惜しい。そこを攻めてほしい。

・モンシロチョウ団地の空で羽ばたいて(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
→いろいろな人・いろいいろな考え・年代の人が住む団地の上を蝶が羽ばたいたので詩になった。しかして全体的には平凡。そこを攻めたい。

・しじみ蝶アスファルトから咲く花に(ペンネーム「さおりっち」さん 44歳)
→小さな春の発見を確実にとらえた。惜しいのは散文の倒置のような詠み方。古今の名句に触れるとよいであろう。

・てふてふ跳ぶコンクリートジャングルを(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→この道場では特に強い主張がない限り、現在使われ将来も使われるであろう現代仮名遣いをお勧めしたい。後半の詠み方に批評精神というか心情表出がよくできている。観念的な句も多いが、このようなモノをしっかり据えた句を希望したい。

・七階にある病室や白い蝶(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→日常の域を出ておらず惜しい。日常を詠む場合はそこに批評精神がなければタダゴトである。例えば「病室の壁にひびある白き蝶」あたりなら何らかの心情表出が感じられる。

・春の蝶ドンキホーテの散歩道(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→「ドンキホーテ」はスペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスの小説の世界ととりたい。なかなか楽し気な気分の感じられる句である。

・春風に揺られる蝶のランニング(ペンネーム「ジジププ」さん 48歳)
→「蝶のランニング」が手柄。心象風景であろうか愉快である。「春風に揺られ蝶とランニング」などでは当たり前で詩にならない。「春風・蝶」の季重なりはそこまでの傷ではない。

・蝶々や白き個室をひと回り(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
→惜しいのはやはり何の「個室」が中途半端なこと。「病室」など具体的に詠むほうがイメージが湧きやすい。

・初蝶の影絵のように消えにけり(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
→初蝶のはかなさを詠んだ句であろう。気になるのは「ように」。「影絵の中へ」「影絵となりて」などと詠んでみたい。詩の磁力が違う。心に「影絵」が浮かんだのであるから、その実感のままに詠めばいい。

・幾億の蝶を放てる大樹かな(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
→入賞の「猫」の句の気分に近い。この句の惜しいのは「幾億」こういうところは「百億」など具体的に詠んでみたい。

・蝶々や親指姫の眠る花(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
→絵本の世界のような句であるが観念的で弱い。また「蝶・花」はつきすぎである。言葉に溺れずモノからの実感を詠むようにしたい。

・六人の鼓の舞台蝶生まる(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→私の句に「六人の美女いて白き石切場」がるがそれを思い出した。野外の能の句であろうか。しかして全体的に平凡でおしい。上五中七のフレーズに下五を無理やりくっつけたような散文崩れな舌足らずな詠み方はどうにかしなければいけない。俳句は引き算ではなくむしろモノとモノの掛け算と心得たい。

・蝶々の羽音密かに噴火口(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
→対比の効いた句で好句である。惜しいのは「密かに」という直接表現・言い過ぎ。「噴火口ふちどっている蝶の羽」など。

・黒板の自己紹介や春の蝶(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→新学期の気分をモノに託していて気分の出た句である。惜しいのは「自己紹介」。こういうところをモノの様子に託したい。「黒板の文字まっすぐに春の蝶」など。

・蝶の舞幻想的な万華鏡(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
→きらびやかな気分の句である。惜しいのは「幻想的な」という直接表現。こういうところをモノの様子に託して詠みたい。「蝶の羽重なってゆく万華鏡」など。

・初蝶や旅荷は山のごと一座(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→春の旅の一座の気分の句。「山のごと」が言いたいのであろうが言いたい事は俳句にならない。盛り込もうとするとこのように散文の省略形で舌足らずになってしまう。「蝶の昼旅の一座の荷物かな」くらいか。

・スケッチの春に留まりし蝶一頭(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
→面白い把握である。「春・蝶一頭」が大変よい。全体的にやや抽象的なところが惜しいがこれはこれで一句であろうか。堂々たる春の気分をよく伝えている。季重なりというよりも「春」をドンと打ち出しているから「一頭」という気分と釣り合っているようである。この方向で。

・初蝶や日の匂いの子紅を買い(ペンネーム「不思議の国の兎」さん 66歳)
→体育会系の少女が化粧品を買う様子であろうか。面白い。惜しいのはモノではなく出来事を句にしていること。買ったというコトではなく、モノを打ち出して詠んでみたい。「初蝶や陽の匂いする子らの紅」など。

・初蝶や青春切符受け取りて(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→この句の上の句同様、コト句寄りなのが惜しい。「初蝶の受け取る青春切符かな」などとモノで詠むと切符のイメージが押し出されてさらに感じ入る句になりそうである。

・幼な子の指すり抜けて蝶笑う(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
→「蝶」と戯れる「子」の句であろうか。少々出来事寄りなのが惜しいが、春のほほえましさが感じられる一句である。

・病む母の窓辺にチラチラ蝶優し(ペンネーム「みよこ」さん 70歳)
→病気のお母さんを詠んだ句であろうか。あたたかさの感じられる句である。惜しいのは「病む・優しい」と直接的に詠んでいるところ。「床に臥す母や窓辺の蝶の影」など、もう少しモノに託して詠むようにしてみたい。

・初蝶や一輌電車高架過ぐ(ペンネーム「吞田」さん 71歳)
→散歩時の光景であろうか。少し平凡なところが惜しいが、一瞬の緊張感のようなものを上手くとらえた。

・青い空蝶と出くわす散歩道(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
→おおらかで俳味の感じられる句である。素直に「青空や」と切ってみたい。

・国境の空行き交う蝶放つ(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
→国境の気分の出た句である。もう少し舌頭千転して座りをよくしたい。「国境の空を行き交う蝶の影」など。この方向で。

・春の蝶走り始めた園児かな(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→いよいよ暖かな春になったという気分の感じ取れる句である。惜しいのは「始めた」と過去形で詠んであるところ。やはり「走り始める」など現在で詠むほうがパワーが感じられる。

・焦げ臭き午報の浦や蝶生る(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→浦のなんからの不穏な気分をよく伝えている。この方向で。

・県境多々羅大橋ペアの蝶(ペンネーム「七十爺」さん 74歳)
→モノ句へ向けて頑張っておられる様子がうかがえる。しかしよい傾向である。それが三段切れになって今はまだぎこちないのである。まずはモノを据えて詠むようにし、俳句形式を自分のものとされたい。

・初蝶や名残りの列車の写真展(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→消えゆくモノと生まれ出るものの対比が効いている。惜しいのは「名残り」という直接表現。ここを「三江線」などで詠んでみたい。

・流される蝶見て涼し瀬戸の海(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→なにかしらの満たされぬ思いのようなものが感じ取れる句である。惜しいのは措辞が整っていないこと。舌頭千転し「流れゆく蝶の背中や瀬戸の海」などとしたい。

・初蝶やポニーテールの黄リボン(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・春の蝶ポニーテールのリボンかな(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)

→上記2句はたまたま同じような気分。偶然なのが面白いが、オリジナルな把握を共に期待したい。

・青空の風に乗り来て蝶となる(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→春の喜びを自分の言葉で句にしようとしているが、少し措辞が整理されていない印象なのでモノを絞って詠んでみてもよいかもしれない。

・図書館に静かな刻や蝶の舞う(ペンネーム「卓ちゃん」さん 82歳)
→「図書館・蝶」とはそれだけで詩的である。惜しいのは中七の直接的な表現。「図書館の窓に重なる蝶の息」など。

入選B

・花散りて残り香に舞う蝶々(ペンネーム「あめ」さん 19歳)
・蝶舞って春到来を告げている(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・初蝶にエールもらいて新学期(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
・蝶々と保育園児の徒競走(ペンネーム「はますけ」さん 32歳)
・髪黒に老婆と蝶々再会す(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・蝶々の舞う姿見て春感じ(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・紋白蝶団地の声漂って(ペンネーム「犬蔵の王」さん 43歳)
・春風に乗ってやって来た二羽の蝶(ペンネーム「あやの子猫」さん 44歳)
・菜の花に紛れて飛び交うモンキチョウ(ペンネーム「彩の助」さん 44歳)
・初蝶や服を脱ぎ捨てうきうきと(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・蝶と風陽光浴びて戯れる(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・桜舞う花弁の間飛ぶ蝶々(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・蝶よ聞け吾の新しきペンの声を(ペンネーム「cava」さん 49歳)
・海の中訪ねてゆきたし蝶の家(ペンネーム「島根のぽん太」さん 50歳)
・オリーブの葉に薄緑並ぶ蝶(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・菜の花に蝶がひらひら春の風(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・花の香に蝶も舞えば気も踊る(ペンネーム「やっちゃん」さん 58歳)
・密林の瑠璃色の蝶ひらひらり(ペンネーム「徳」さん 58歳)
・蝶々や問わず語りで帰り道(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・蝶二頭螺旋に高く濃い青へ(ペンネーム「ヨシ整体」さん 60歳)
・終雪か初蝶舞いて冬じまい(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
・初蝶の行く手に優し光満つ(ペンネーム「安田 蝸牛」さん 61歳)
・初蝶や孫のヨチヨチ黄なる声(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・新幹線蝶迷い込み笑顔咲く(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・蝶よ花よと育てて貰ったが今は夜の蝶(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・てふてふや右に左に春を舞う(ペンネーム「てんつく」さん 67歳)
・鞆の浦乙姫様に蝶も舞う(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・蝶ふわり風の手のひらゆりかごに(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・菜の花に蝶々舞う夕暮時(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・南はるか舞いもさそうよ竹富のチョウ(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・亡き母や蝶になり来て嬉しさよ(ペンネーム「えみちゃん」さん 70歳)
・見え隠れ蝶がいざなうけものみち(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・マラソンの桜吹雪に蝶も舞う(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・初蝶や黄の波間に見え隠れ(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・梅椿乱れし後は蝶の幻(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・海原のはらはらしおる蝶の旅(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・錆びて磨かれ鎹が蝶になる。(ペンネーム「コンセプしおん6」さん)
・墓所へ行く坂道蝶とみちづれに(ペンネーム「赤毛のアン」さん)
・もつれあい上へ上へと恋の蝶(ペンネーム「善光」さん)

ユニー句(句)

・蝶が舞う昆虫館は超きれい(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・紋白蝶生まれた時からカープファン(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
・ひらひらとどこに飛び行く蝶と金(ペンネーム「暇床屋」さん 51歳)
・初蝶やスマホ構えて姿なし(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
・男子受けするパステルの蝶ヒラリ(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・てふてふは有名すぎてみな読める(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・吾の甘藍食い散らかして蝶羽化す(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・奇麗な娘ネオンが似合う夜の蝶(ペンネーム「さんちゃん」さん 64歳)
・寝坊助の虫よ起きろと番蝶(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・害虫と知るまで愛し紋白蝶(ペンネーム「善光」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年3月9日(金)

第87回 お題「桜餅」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「桜餅」。
全国各地から多くの投句を頂き、光栄に思っています。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず、原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

気になることは、句の語と語がどういう効果(イメージ)を生んでいるかということよりも、書かれてある出来事にもたれて詠まれた句が多いことです。
俳句が詩や芸術である以上、その効果というものに敏感になってほしいと願います。

大賞句は、春の季語「桜餅」に上手く幸福感を託して詠み、共感を詠む句。
入賞句の「左手」は、旅行のワクワク感を上手くうまく託して詠んだ句。
入賞句の「少女」は、テーマと少女とのイメージの取り合わせが生きた句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「桜もち小さき海の新居かな」(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)

「海辺」の「新居」で初めて迎える春、家族が「桜もち」を食べている光景がイメージされる。
この句の面白いところは「小さき」。
これが「海」「新居」ともに掛かるような詠み方で、いかにも「つつましやか」な気分を醸し出している。
この「つつましやかな気分」が、「桜もち」のたたずまい・あわい香り・素朴な味わい、ひいては春のぬくもりのようなものと、取り合わさることで、つかずはなれずの相乗効果を生んでおり、なんともいえない「幸福感」を醸し出している。
「もち」とひらかなで書かれてあるところもやわらかで効果的である。
滋味あふれる世界観が共感を誘う一句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
ひらかな・漢字のやわらかさ・かたさを効果的に使う。

入賞

「左手に富士の裾野や桜もち​」(ペンネーム「もじこ​」さん 48歳)

ピクニックか電車などでの旅行の句であろうか。
「富士の裾野」の広がりある風景を感じつつ、「桜餅」という春の味覚を味わってる様子が浮かぶ。
この句の面白いところは「左手」。
あえて「左」を強調することで、読者に自動的に右側の風景まで想像させる効果を生んでおり、空間把握が広い。
いずれにしても、旅行の「わくわく感・楽しさ」を直接言わず、大きな風景や「桜餅」の気分に、しっかり託して詠んであり、見事である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
左右の視点。

「桜もちほのかに匂う少女かな」(ペンネーム「匿名じいさん​」さん 72歳)

桜餅を食べている時に少女の匂いを感じたという句であろうか。
あるいは、「桜餅」「少女」を「取りあわせ」た句であろうか。
両方に解釈できる。
この句の面白いところは、「ほのかに匂う」。
ここが「桜餅」にも「少女」にも掛かるような詠み方で、言葉が働いており、詩の膨らみを生んでいる。
さらに、「桜餅」の薄いピンク色と、「少女」の服などのイメージでもあるピンク色の重なりも自然にイメージされてきて、色彩的にも美しい。
あたたかくなってゆく春の季節、少女の大人びてきたような気配を「かわいいだ、素敵だ」などと直接いわず、うまくモノに託して詠んであり美しい。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
モノとモノを取りあわせる。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・天の色ふくらんでゆく桜もち(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※この句は気分だけですが、、、。
→作者のいうように俳句は気分が伝わればいい世界である。中七の表現が上五下五に対して絶妙で、モノを通して春の生命力をうまく伝えている。この方向で。ちなみに「桜もち尼僧ウインク練習す」「 桜もち強めに夫の布団打つ」は出来事を詠んだコト句なので注意されたい。

・桜餅青空包む手紙箱(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※青春時代に貰った手紙は、桜餅のように甘くもあり、酸っぱくもあり、そんな気持ちを句にしました。
→「桜餅・青空・手紙箱」とモノがやや多めで窮屈そうなところが少し気になるが、さわやかな気分の感じられる一句。

入選句

特選

・桜もち目覚まし時計を買い替える(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
→春の新生活の楽しい気分が感じ取れる句である。「目覚まし時計買い替える」が出来事なのが少し惜しい。読者は作者がい買い替えたコトを伝えてほしいのではなく、ただ句から何かを感じ取りたいのである。よってモノをデンと据えたい。「桜もち目覚まし時計の針しなる」など。

・桜餅葉に包み込む笑顔かな(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
→「葉に包み込む」という当たり前な措辞が惜しいが、春の喜びの感じられるなかなかの句。「笑顔かな」が安易だという方もおられようが、そこは素直な実感なので尊重したい。次回も挑戦を!

・桜もち島と島とをつなぐ船(ペンネーム「はますけ」さん 32歳)
→大きな風景でのびやかな心境の感じられる句である。「とをつなぐ」がもたもたした印象なので「連絡船島から島へ桜餅」などとしたくなるが、このように下手にいじると句がやせ細って最初の実感から遠ざかる。俳句形式に慣れつつ、実感に正直に詠みあげてほしい。もっと句が見たい方である。次回も挑戦を!

・桜餅空駆け巡るランドセル(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→語と語の関係が少しざっくりとしずぎで惜しい。俳句はその塩梅が難しい詩である。大らかで楽しい気分の感じられる一句。

・ふるさとのかたちそれぞれさくら餅(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→「さくら餅」は地域によってさまざまな作り方があるということを詠んだ句、というよりは、あっちの「ふるさと」そのものの気分、こっちの「ふるさと」そのものの気分というふうに、旅してまわっているようなイメージの句と取りたい。かろやかさが楽しく軽みが生きた。

・桜もち休憩中のユンボかな(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→「ユンボ」はパワーショベルのことらしい。「桜もち・ユンボ」の取り合わせは、見た目のイメージからか絶妙。惜しいのは中七の直接表現。「休憩中」などと言わず「足を投げ出す」など、モノやモノの様子に託して詠めばさらによくなる。

・桜餅合はせ鏡をそつと閉づ(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→女性の複雑な心情を詠み込んだ句でなかなか味わい深い。三面鏡なら「閉づ」で分かるが、「合はせ鏡」「閉づ」はイメージが少しちぐはぐである。そのあたりを再考されるとよいかもしれない。また俳句は、現在使われ将来も使われるであろう表記を採用して不足はないはずなので、「現代仮名遣い」をお勧めしたい。

・青空とキャッチボールす桜餅(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
→春の明るい気分がよく出ている句である。感じてみたい。

・ラジカセの聴こえる窓や桜もち(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→昭和の気分であろうか。どこか懐かしい世界である。「ラジカセ」→「聴こえる」がイメージの重なりで惜しいが、しっかりモノに託して詠んであるところがよい。この方向で。

・母来る凮月堂の桜もち(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
→お母さんの好きなお店の桜もちであろうか。固有名詞はよく知られているものでなければ伝わりずらいが、この句の場合、実の店を知らなくとも句の気分が伝わるので問題なさそうである。定型のバネの効いた手慣れた詠法が心地よい。

・桜餅オープン戦の芝生席(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→実にリラックスした気分の句で桜餅の気分と芝生の緑がよく釣り合っている。盛り込もうとせずポイントを絞って詠んだのが成功した。

・打ち寄せる波の音する桜餅(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
→取りあわせの句であろうか。なかなかムードが出ている。「波・桜餅」がつかずはなれずの関係性なのは「桜餅」の葉の塩のイメージがあるからであろうか。

・桜餅包み込まれるオゾン層(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→「桜餅」から地球全体へイメージが飛んだのであろうか。「包む」が「桜餅・オゾン層」に対してあたりまえの語の関係性で少し惜しいが、世界観は大したもの。大きく把握して詩にした。

・胎動を初めて覚え桜餅(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→「胎動・桜餅」は絶妙の取り合わせであるが、詠み方が甘くそこが惜しい。「初めて」が作者の言いたい事なのであるが、言いたい事は俳句にならない。読者は作者の身辺の出来事を説明してほしいのではなく、句からただ何かの気分を感じたいのである。こういう場合は、句意は異なるが「胎動のしみこんでゆく桜餅」「胎動のほとりあかるき桜餅」など、最初の発想や出来事の伝達にとらわれず、詩に展開したい。

・桜もち毛繕いする猫二匹(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→やや日常よりな世界観がものたりないが、何かを詰め込むでもなく、軽やかに詠んだところが成功した。俳味の一句。

・桜もち京都の路地に下駄の音(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→全体的に古都のイメージでつきすぎなのであるが、春の京都の町屋の気分がよくあらわされていて、個人的にも京都に住んでいたころが連想されてきてなつかしい。

・絵手紙の色咲きてゆく桜もち(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→なかなか面白い句である。中七がよい。「色」が少し抽象的なので、「空」などとモノを置くと、句が引き締まりそうである。

・桜餅二つうわばみ呑みこめり(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→「桜餅」→「うわばみ」が飛躍のあるよい取りあわせ。春のあやしさのようなものを象徴しているようで意味深。独特の世界観。この方向で。

・桜餅スマホに集う天使かな(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→意外な語の展開が楽しませる。春の楽しそうな気分が感じ取れる。この方向性でよい。好句。

・桜餅我が身を飾る単衣(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
→「桜餅」の葉と「一重」を重ね見た句であろうか。やや自虐的な詠みぶりが俳味に繋がっている。

・旧軍港十万トンの桜もち(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
→スケール感・重量感のある面白い一句でなかなか。大きな数字をドンと提示すると場合によっては荒さにつながるので安易な使用は気をつけたい。非日常感あるこの方向で。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・給食の悔し涙や桜餅(ペンネーム「コンスタンチン」さん 12歳)
・桜餅口のなかにも春一番(ペンネーム「ケロロ」さん 18歳)
・桜餅一口ほおばる春少女(ペンネーム「ASARINA」さん 19歳)
桜餅食べたらウグイス鳴き始め(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・引越や見慣れぬ形の桜餅(ペンネーム「野良古」さん 32歳)
・桜もち戸棚の奥にひとつだけ(ペンネーム「櫻井葉子」さん 41歳)
・桜もち葉っぱに包まれ許される(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
葉の衣羽織りはにかむ桜もち(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・桜餅ゼロペプシコーラ飲み干せば(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
柔らかいスカートめくり桜餅(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・瑞垣の道を掃く人桜餅(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
すまし顔ほっぺについた桜もち(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
・子の試合ハーフタイムの桜もち(ペンネーム「cava」さん 49歳)
きっちりと並ぶ草履や桜餅(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
・来客を見つめる子らの桜もち(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
嘘泣きのうまい少女や桜もち(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
鶯の初鳴き聞こえし桜餅(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・桜餅母娘の会話色づきて(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
・桜餅揃いの湯呑み午後の庭(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
生まれくる恋の香りや桜餅(ペンネーム「是多」さん 63歳)
蘊蓄聞きつつ食べる桜もち(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・ハンガーのセーラー服や桜餅(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
・手に残る香り塩の葉桜餅(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
・同窓会塩の香甘き桜餅(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・カラス5羽墓には2個の桜もち(ペンネーム「七十爺」さん 74歳)
・桜餅そっとくるんだ稚児の笑み(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・桜餅包む母の手赤くはれ(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・桜餅ほおばる孫の笑顔かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・桜餅ワンボックスカーの旅の夜(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
あの人の面影追うて桜餅」さん(ペンネーム「8」さん)

入選B

・恋話に真白き桜もち染まり(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・桜もち濡れ手に泡や迷いせず(ペンネーム「三滝のベベ」さん 37歳)
・桜餅春の花色マッチして(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・桜もち貴方へ届け愛の唄(ペンネーム「犬蔵の王」さん 43歳)
・孫だっこ玄関で咲く桜もち(ペンネーム「今日も晴れ」さん 43歳)
・桜もち宝探しの恋人達(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・葉は取るの?桜と柏取り違え(ペンネーム「さおりっち」さん 44歳)
・葉の香り桜餅愛でる一日かな。(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・桜もち染み込んだ葉の風味良し(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・床に伏せ食べられなかった桜餅(ペンネーム「いちご」さん 46歳)
・桜餅甘い香りが詰まってる(ペンネーム「ジジププ」さん 48歳)
・桜もち笑顔の母を思い出す(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・風ふわり旅立ちの朝桜餅(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・辞令受くしづかな夜の桜もち(ペンネーム「そら」さん 58歳)
・さくらもち君とぺったり本通(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・春うらら春の葉香る桜もち(ペンネーム「りんの」さん 58歳)
・お裾分け春待ち人の桜餅(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
・桜餅辛党さえも葉が二枚(ペンネーム「安田蝸牛」さん 61歳)
・桜餅ひと葉まといてしとやかに(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・お母さん名前ペン置き桜餅(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・初恋のややしおはゆし桜餅(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・夕食後家族が賑わう桜もち(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・桜もち食べたらほっぺが桜色(ペンネーム「やんちゃばば」さん 65歳)
・珈琲はテイクアウトに桜もち(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
・春よ来いみんなで食べよう桜もち(ペンネーム「DIYじじ」さん 66歳)
・桜もち柱に憩いクイズ解き(ペンネーム「不思議の国の兎」さん 66歳)
・桜餅食べて思うは孫の顔(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・桜もち日本茶の友に一口で(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・葉脈の歯ざわりもよし桜もち(ペンネーム「boone」さん 70歳)
・茶飲み友カーテン替えて桜餅(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・手作りの桜もち母の墓参り(ペンネーム「みよこ」さん 70歳)
・こんな日は食べたい気分桜もち(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・昨年の香り纏って桜もち(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・一人住む姉へ土産の桜餅(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
・しっとりとお地蔵見てる桜餅(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・目力を緩めて桜もち食べる(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・母思う香りと笑顔桜餅(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・お悔やみ欄幼馴染や桜餅(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
・さくら餅今年届かぬ恩師から(ペンネーム「carpあーちゃん」さん)
・桜もち食む子へ残す夜核の傘(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

ユニー句(句)

・レジ横に目の泳ぎおり桜餅(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・恋敵は過去のお話桜餅(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・賞味期限守らず悪夢さくら餅(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
・桜餅葉を食べるのは昭和人(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・桜より桜色した桜餅(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・桜餅じゃんけん勝てばもう一つ(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・桜もちあらゆるもちの中でこれ(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・桜もち食べたいけれど明日検診(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・血糖値検査は休み桜もち(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・桜もち渋茶の似合うお年頃(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・オープン戦桜餅ほうばってカープ女子(ペンネーム「かぷこ」さん 68歳)
・桜もち寄り添う二人影ひとつ(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年3月2日(金)

第86回 お題「雛祭」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「雛祭」。
今回も全国各地から多くの投句を頂き、光栄に思っています。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

今回もいつものように応募は沢山いただきましたが、全体的な句のレベルはいつもに比べて低調でした。

大賞句は、心の葛藤を上手くモノに託して詠んだ一句。
入賞句も、陰鬱な心境を上手くモノに託して詠んだ一句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「吊るし雛グループホームの蛍光灯」(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)

最近道場でよく見かける名前で、活躍中の方。
応募句の中にはまだ甘いものや安易なものなどもあるが、この句はモノをしっかりと打ち出しており大変よい。
「吊るし雛」というのは、布で作った人形や鯛や蝶々など、めでたいものを天井などから吊るして飾ったもの。
「グループホーム」は、認知症の方などが、スタッフの介護を受け受けながら、小人数で生活する施設のこと。
「グループホーム」での雛祭りの時期の様子を詠んだ句であろう。
この句のポイントは、人工的な「蛍光灯」の光。
ここに焦点を当てているところが実に象徴的で意味深である。
これが太陽なら包み込むようなあたたいイメージであるが、「蛍光灯」なので、太陽とは違い「明るいけれど機械的」なイメージである。
こういうところに「愛しているけど、仕事などの事情で一緒に住むのは難しい」というような、作者の相反する気持ち、ツライ心境が託されているのが読み取れてきて、共感を覚える。
心をしっかりモノに託して詠んである「託し詠み」のできた一句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
無意識にモノを二つ選択する。
それだけでココロは表現できる。

入賞

「雛祭ふすま隔てて乱歩読む」(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)

「乱歩」はまさに怪奇幻想の推理小説作家江戸川乱歩のことであるが、「雛祭」の裏側で「乱歩を読む」とは奇妙な光景である。
作者によると、姉やその友人達が大騒ぎする「雛祭」の輪に入れなかった中学生の頃のことを句にしたとのこと。
女性たちの輪に入れなった作者の、落ち込んだ気持ち、いじけた気持ち、陰鬱な気持ちを、直接言葉で言わず、「乱歩」に託して詠んだところが成功した。
「乱歩」といえば、『屋根裏の散歩者』『人間椅子』などの、天井から覗いたり、椅子から覗いたりというシーンが印象的であるが、「ふすま」一枚隔てているといいう舞台設定から、隣の女性の世界も気になっているというような、同じような世界観がイメージされてくる。
命を帯びたような雛人形と怪奇幻想の「乱歩」との取りあわせが、「赤・幻想・陰鬱・エロス」などのつかず離れずの非日常的な気分を醸し出し、何か物語でもはじまりそうな緊張感や怪しさまで感じ取れてきて、味わいは尽きない。
こういったイメージの膨らみを生んでいるところが、まさに託し詠みの効果であり、俳句形式の本領である。
好句。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
自分の実感をモノに託して詠んでみる。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・雛の家海に消えゆくワンピース(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※行っちゃったなあ、と
→「ワンピース」が印象的な象徴性の高い句である。これが「少女かな」などだと「雛の家」につきすぎであるし句も作り物っぽくなる。「ワンピース」に女性の作者ならではの実感がよく出ている。世の中には句の出来事や句の表現に美をおいた句も多いが、句からイメージされる世界に美を置いてきている、「詩」がわかっている方である。句からはなんらかの屈折した心境、喪失感などが感じ取れてきて共感を誘う。

・十八の凛々しき空や雛祭(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※この春大学進学を控えた娘さんをもつ友人の成長の嬉しさと寂しさを句にしました
→挨拶句といった気分であろうか。ご友人方にもこの欄を楽しく見ていただければと思う。世の娘様方の健やかなるご成長を念じ上げます。

入選句

特選

・ひな祭余りの多い連絡帳(ペンネーム「コンスタンチン」さん 12歳)
→生活を充実させたい作者となかなか現実が追い付いてこないそのギャップを上手くモノに託して詠んだ。この年にしてモノにしっかり託して詠めていて心強い。中七は「余白の多い」などと素直に書いたほうが読者がイメージしやすそうである。この方向で。

・雛祭かばんに入れる治癒証明(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
→「祭・治癒」と全面的に喜びのイメージだけで押しているところが惜しいが、これはこれで一句であろう。「雛祭」というハレの日に間に合った喜びを上手く託している。

・工場の夕日へ溶ける流し雛(ペンネーム「コバルトブルー」さん 32歳)
→無意識から湧き上がった佳句である。この句を作者が自己添削したものが「流し雛向かう工場の夕日かな」であるが、意味が通るように頭・理屈で修正したため、それと引き換えに詩を失った。「読者は説明してほしいのではなく、ただ感じたい」のである。句は「夕日へ溶ける流し雛」に上手く心情表出が出来た句で、強い敵意や野心・満たされぬ思いのようなものが感じ取れ、共感を覚える。この二句を通して「俳句は無意識からの芸術」ということに、気づいていただけたのではないかと思う。

・雛の目の憂ひ海辺の社かな(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→作者が最も言いたいコトは「憂い」なのであるが、これが惜しいのである。「言いたいコトは俳句にならない」。俳句は「ココロ・憂い」を「コトバ・憂い」で表さず、「雛の目の沈む」など「モノ(モノの様子)に託して詠む詩なのである。そこが俳句と他の詩型との圧倒的な違いなのである。しかし「目・海辺の社」などモノの対比はよく効いており、全体としてはよい方向性。次回もぜひチャレンジを!

・雛祭酢の香漂う台所(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
→全体的には「雛祭→酢の香→台所」と「雛祭のちらし寿司」のイメージでつきすぎなのであるが、何かを言うのではなく「雛祭」の気分そのものをポイントを絞って詠んだところが詩につながった。短詩特有の詩型・定型のバネが味方してくれた句である。モノ×モノで象徴するこの方向で。

・人肌の残り湯に指雛祭(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→切断された指ととってもいいし、湯に手をひたすワンシーンととってもよい。いずれの解釈でもそれなりの非日常感が出ておりこれでよい。俳句は何かを明確に伝えるものではなく、気分を感じてもらうものなのである。なまめかしさがひきつける。

・雛祭り消しゴム薫る学習帳(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
・俳句では「雛祭り」は「雛祭」と書く場合が多いが、この程度はどうということもない。「薫る」であるが、句意からすると嗅覚で感じる匂いに使われる「香る」と書くべきなのであろうが、「雛祭」の非日常的な気分だけに、「薫る」という抽象的・概念的な把握も一理ありそうである。句からは雛人形に見守られながら小学生くらいの女の子が勉強している様子がイメージされる。かわいらしさ・楽しさを上手く家の中のモノに託して詠みあげた。楽しい句。

・ハングルの付箋をはずす雛祭(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→韓国の方の読書シーン、あるいは韓国語などを学んでいる人の風景であろうか。ユニークな取りあわせであるがなかなか面白い。韓国の鮮やかな街並みのイメージと雛人形の色彩感の重なりが幻想的な気分を生みだしているようである。

・買い物を二つ忘れて雛祭り(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
→「雛祭」の支度や用意で頭が一杯だったのであろうか。何かをいうではなく、俳味溢れる軽い滑稽な詠み方が面白く、生きた。

・雛あられポツリと抓むハワイ便(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→前半の「雛あられ→ぽつりと→抓む」が、あたりまえの語と語の関係性で惜しいが、「雛あられ・ハワイ便」はなかなかの取りあわせである。いよいよ暖かな季節に向かう気分を楽しく把握した。

・雛祭裁縫箱に赤き糸(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→糸は母親が残したものであろうか。「雛祭/赤き糸」の関係性を読者に想像させる句になっていて意味深である。しかし「雛祭・赤き」は女の子のお祭・毛氈の赤などのイメージが強くて大変なつきすぎ。そのあたりを少し留意されるとよいかもしれない。

・つるしびな廃線駅のベンチかな(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→なんともさみし気な句であるが、雛が吊るされてあるのであるから人のぬくもりも感じ取れる。また廃線の駅の錆びれた風景に一点の赤の景色も美しい。解釈を読者にゆだねた象徴的な把握の句である。

・雛遊び幼き一人を置き忘れ(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→雛祭がお題であるから、明るい句が多く届くのかと思っていたら、なかなか意味深な句も多かった。女の子の成長を喜ぶ場だけに、「置き忘れ」とはそのギャップは計り知れない。実際に置き忘れたコトというより、仲間外れかなにかのさみしさのような心情が伝わってくる。いずれにしても、悲しみを直接言葉にせず、冷静にモノに託して詩にもってきて見事。この方向でよい。

・息子くる老人ホームの雛祭(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→「雛祭」で久しぶりの親子の再会であろうか。全体的にありきたりな光景なのが惜しいが、余計なことを言わずに「息子くる」程度にとどめた抑制が生きた。

・だんだんに棚田を埋める雛祭(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
→類想も多そうであるが、雛段の気分と棚田の気分を重ね見てのびやか。俳句は何かを間違いなく伝えるようと努力する必要はない。気分が伝わればいいのである。

・雛飾る灯の中に母ひとり(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→「母」の背中をそっとみているような句で、どこかさみしげである。そのしみじみとした気分のなかに母の生きざまが感じられる。

・篠笛の音色に雛の躍り出し(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→類想もあろうが、これはこれでいいと私は思っている。こういうもの「雛祭」のひとつの気分である。しかし「篠笛・音色・踊る・雛」とすべて近しいイメージであるところは惜しいので飛躍したい。
また「踊り出し」ではなく「踊り出す」と、引きしめて詠んだほうが力強い。

・沓脱石小さき靴や雛祭(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
→そこまでかわいらしいことを述べている訳ではないが、とにかくかわいらしい気分の感じ取れる句である。「KUTU」の音の繰り返しや、独特のリズムの効果であろう。面白い。

・オルゴール鳴り出すひいな遊び出す(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→先の「篠笛」の句と似た気分の句である。両者のいいところは「ごとし」などと比喩にしていないことである。意図的なリフレインはわざとらしいのでじゃまになるが、このような無意識的な詠みの場合は別である。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・折り紙の女雛下校の手のひらに(ペンネーム「胃痛」さん 36歳)
・赤子抱く雨傘跳ねる雛祭り(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
・食卓に折紙の雛並べおり(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
・雛祭りキーボード弾く女の子(ペンネーム「犬蔵の王」さん 43歳)
・雛祭り家族集まるレストラン(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
デジカメで押さえる雛人形(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・雛祭を後に受話器置く(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
・雛壇の平和を守るウルトラマン(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
押し寄せた靴らを揃え雛祭り(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
・飾る手に皺刻み込む雛人形(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
ガラスケース割れて見下ろす雛人形(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
初孫に引かれ祖母の手雛祭り(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・豆雛や泣ける映画を探す夜(ペンネーム「そら」さん 58歳)
クフ王や千体のひな石段に(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
桐箱の母の遺品の雛かな(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
の夜の母ほんのりと桜色(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
雛まつり昭和な町を飾りをり(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・作業所の小さき雛を孫に買う(ペンネーム「みよこ」さん 70歳)
・南風旅立つ鴨の雛祭り(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
窓を開け雛人形と深呼吸(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・マトリョーシカショップに一人内裏雛(ペンネーム「東広島の七十爺」さん 74歳)

入選B

・雛人形飾りて家は華やかに(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・雛祭り我が家で過ごす最後の日(ペンネーム「はますけ」さん 32歳)
・雛祭帳簿と共にめくる袖(ペンネーム「三滝のべべ」さん 37歳)
・携帯の鳴るを待ちたり雛祭(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・泣きませぬ笑いもしませぬ雛飾る(ペンネーム「櫻井葉子」さん 41歳)
・玉眼の雛や静かな静かな夜(ペンネーム「桃猫」さん 43歳)
・宝入れ隠す雛飾りの箪笥(ペンネーム「さおりっち」さん 44歳)
・お雛様真似てるようなすまし顔(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・おさげ結い頬染め見つめる雛人形(ペンネーム「cava」さん 49歳)
・少年の膝落着かず雛祭(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
・雛人形しまい人気の消えた部屋(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
・雛祭りこっそり男雛とにらめっこ(ペンネーム「雅」さん 55歳)
・雛壇やショーウィンドウの向こう側(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・わんぱくも正座で歌うひなまつり(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・歳月や曾孫が飾る母の雛(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・白酒でお内裏様も赤ら顔(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・春の気分3月3日ひなまつり(ペンネーム「DIYじじ」さん 66歳)
・孫ができ初めて祝う雛祭(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・甘酒に夢見心地の雛祭り(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・雛遊び風の道くさ髪ゆらす(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・神棚にあられ供えて雛祭り(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・玄関に手造り雛がお出迎え(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・嫁行かず1日限り雛人形(ペンネーム「怜桜さん」さん 68歳)
・ぼんぼりもLED替え内裏の目(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・じじばばの会話弾ませ雛飾り(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・見上げれば宇佐の段ひなどこまでも(ペンネーム「のぶさん」さん 70歳)
・華やぎの少し欲しきや雛飾る(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・姉たちに飾りし雛や今いずこ(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・故郷を断捨離できず雛飾る(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・幼き日友の雛壇窓越しに(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・およばれの正座の男子ひな祭り(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
・桃節句古希迎えての個展かな(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・紙雛に色紙の天地教えられ(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
・桃の節句は旅立ちの日のシンデレラ(ペンネーム「コンセプシオン」さん 6歳)
・女房族グリーン車会席雛めぐり(ペンネーム「華みづき」さん)

ユニー句(句)

・飾らずにあられのみ食うひな祭り(ペンネーム「ちゃこぉ〜る」さん 18歳)
・ねぇあなた今日だけ雛よそばにいて(ペンネーム「のっぽちゃん」さん 21歳)
・雛たちの会話つぶやく雛飾り(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
・過ぎてなおわざと仕舞わぬひな人形(ペンネーム「あゆみっくす」さん 33歳)
・お雛様二人並んでスガシカオ(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 37歳)
・むすめさんわたしにおくれよひなあられ(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・雛あられポリポリ音の至福かな(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・雛人形小顔色白付けまつ毛(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・でこの似る女四代雛まつり(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
・雛あられ鼻に詰めてた奴が医者(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・有る袖も無い袖も振る雛人形(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・お雛様五人囃子も同じ顔(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・嫁に行き今日は寂しい雛祭り(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・防虫剤香り漂う雛祭り(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
・赤ヘルのお内裏様の雛祭(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・雛飾る賞味期限の近づきぬ(ペンネーム「吞田」さん 71歳)
・雛の目を盗みてあられポケットに(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・ふくよかな男女雛の体脂肪(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年2月23日(金)

第85回 お題「花粉症」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「花粉症」。
年が変わって、回を重ねるごとにたくさんの投句を頂き、全国各地からの投句も増え、人気を頂き光栄に思っています。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

「杉の花粉・杉の花」は「花粉症」とは概念が違いますが、近しい関係なので可としました。
しかし「花粉」だけの句や、お題が入っていないものもかなりありましたが、そのあたりは残念ながら選外としました。

大賞句は、男性的な俳味の句で迫力の一句でした。
入賞句は、託し詠みのよくできた一句でした。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

今回も大変応募数が多かったので、入選句は多めにとらせていただきました。
ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「花粉症朝刊の文字飛び散らし」(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)

ここまで大胆にのびやかに詠めたらなんと気分のよいことであろうか。
いわゆる男性的な俳味溢れる句で、特に解説も必要ない。
どなたもがただ感じ入り、楽しむことができる豪快な句である。
いわゆる「ユニーク俳句」が最初からユニークに詠もうという精神(意識)で詠まれているのに対し、この「大賞句」は、「花粉症」の実感をモノに託して詠んだ結果(無意識)として、ユニークな句になったという点が優れている。
またこのような句を詠むとき「飛び散らすごとく」などと比喩で詠みたがる人も多いであろうが、そうではなく、実際に「朝刊の文字飛び散らし」と詠んだところもまたよい。
こう詠むからこそ、「花粉症」の圧倒的な迫力・大変さ・気分が伝わるのである。
「ごとく」だと「朝刊の文字」は実際には飛び散っていないわけで、迫力に欠ける。
このような解説をしたときに、「紙に書いた文字」が散るのはおかしいという現実・常識べったりの方もおられようが、大事なのは心がどうとらえたかである。
「道を歩いているときに蛇だと思ってびっくりしたが、よく見ると縄だった」ということは、田舎暮らしではよくあるが、蛇だと思って逃げかえった者がその時のことを句に詠めば、蛇の句以外にはならないあであろう。
よって作者の心がとらえたとおりに「花粉症」が「朝刊の文字飛び散らし」でなんの問題もない。
無意識からの佳句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
ユニークは託し詠みの結果にじみ出るもの。

入賞

「花粉症コロのしっぽに朝の風」(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)

朝の犬の散歩時あたりの句であろうか。
「花粉症」のムズムズ感を実感したその目の先に、「飼い犬のしっぽが風に揺れていた」というような句と解釈できる。
すなわち、この句が伝えたいのは「花粉症」ではなく、「花粉症」「コロのしっぽに朝の風」というモノに託された「春の実感」なのである。
その「託し詠み」の波及効果で、あたたかな気分、ほのぼのした気分、やさしい気分などまで感じ取れる句になっており、詩になっているところが優れている。
「花粉症」のことを直接説明した句が多い中、「花粉症」とは直接関係のない「コロのしっぽの朝の風」に飛躍したところが「つかずはなれず」の関係性を生み成功した。
入賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
お題やテーマをだらだら説明せず、他のモノと取りあわせる。飛躍する。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・花粉症君が見ている海の音(ペンネーム「あや」さん 49歳)
この海をこえて君もいつか巣立つ。少しやるせない春
なんとも言えない気分の一句。少し気になるのはモノをデンと据えるモノ句から、表面の言葉の美に溺れる方向にシフトしてきているような印象である。句の表面の美ではなく、句からイメージされる世界の美をわすれず、自在であってほしいと願う。

・金メダル拳突き刺す花粉症(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
日本選手が金メダルを取る嬉しさと花粉症の辛さを詠みました
たしかに「金メダル・花粉症」は対比が効いているようであるが、少し飛躍しすぎのようにも感じられる。ここら辺のイメージのつり合いをとる塩梅が俳句の難しさ面白いところ。大胆な取り合わせを見せてほしい。

入選句

特選

・仕送りの空噛みしめる花粉症(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→苦学生の様子がイメージされ、少し切ない句であるが情感たっぷり。このような場合「仕送りや」と切ったほうがより気分が出そうである。

・押せば引く満員電車や花粉症(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→都会の通勤通学の様子がイメージされる。客を押し込む駅員さんの気分の句であろうか。少し説明的であるが、春の訪れを思わせる句で面白い。

・花粉症鞄の底で鍵揺れる(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→「花粉症/鞄の底で鍵揺れる」となんらかの飛躍が感じられ詩になっている。少しメルヘンチックな気分で面白い。このような素材で詠む場合「揺れる鍵」と出来事ではなくモノに重心をかけて詠むと句の厚みが少し増しそうである。飛躍のあるこの方向で。

・列島のビルゆすられる花粉症(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「花粉症」のすさまじさを大胆に把握した。この句で惜しいのは「ビル→ゆする→花粉症」の関係が大胆ながら当たり前なところ。寡作のようであるがもう少し沢山の句を見てみたい方である。

・花粉症ポケットティッシュ受け取りぬ(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
→類想・「花粉症→ティッシュ」のあたり前の関係などはやはり避けるようにしたものであるが、それにもかかわらず句になっているのは、 俳句形式そのものに対する明るさであろう。何らかの出来事を編集したり引き算していったりする作り方だとどうしても舌足らずな表現になるし、言いたい事を盛り込もうとすれば窮屈になる。「俳句とはこんなもの」というある種の達観が一句全体の軽やさに繋がっている。

・花粉症鋼鉄の鳥俯瞰せり(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→「鋼鉄の鳥」が分かるようなわからないようなやや観念的で惜しいが、力強い詠み方と気分が合っているようである。全体的に演説調・自己主張が強いのでそれは俳句では避けなけばならない。どうしてよいかわからないようであれば、写生に徹することをお勧めしたい。

・障子には愛犬の影花粉症(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
→春の気配をうまく掬い取った句であたたかで共感する。しかして「~には~の影(がある)/花粉症」というような、「舌足らずな表現(散文の強引な省略)」はどうにも避けなければいけない。このような散文削りの甘い詠みは避けたいものである。俳句は掛け算である。慣れている方なのであろうが、そこが課題であろう。

・嵯峨野路へ一緒に連れゆく花粉症(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→「花粉症」と仲良くやろうという句でのびやかな気分が感じられ大変よい。惜しいのは中七の詠み。俳句は短いので詩にしようと思ったら当たり前の語と語の関係を避けなければイメージが膨らまない。そこが自己添削の時の指標になろうか。

・霞みゆく黄色き電車花粉症(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
→「霞・黄色・花粉」とイメージが近いのがつきすぎ感があり惜しいのであるが、「電車」が愉快であった。この電車と花粉症の春のイメージを重ね見て春の躍動感が面白い。例えばテーマ・お題・季語・それを説明しないように詠むことを心掛ければさらによくなりそうな方である。期待したい。

・花粉症ポニーテールのたて結び(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→この様子をどう解釈するかは読者にゆだねられている。マスクをするためにポニーテールにしているのか、花粉症だけど活動的な春になりポニーテールにしているのか、いろいろに解釈できる。一句全体がつきすぎの感じはあるが、何かしらの気分を伝える句になっている。

・乳母車幌深くして杉の花(ペンネーム「安田蝸牛」さん 61歳)
→惜しいのは平凡なところであるが、やさしさに共鳴する愛情あふれる一句である。

・花粉症山が黒板消し叩く(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→把握は面白いのであるが意図的で惜しい。花粉の粉と黒板消しの粉というイメージが近すぎてなかなか詩にならないのである。「してやったり」というような表現が浮かんだらそれは意識の産物理屈の産物テクニックの産物なので、迷わず捨てることである。俳句は無意識からの芸術なのである。

・杉の花円空仏に手を合わす(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→句がやや大人しいが、余計なことを言わず「手をあわす」とブレーキかけたところが成功した。俳句は詩であるから、さらに飛躍した取りあわせで可能性を探っても面白い。複数句の応募も可なのであるから。

・花粉症象の瞼の重そうに(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
→象に花粉症があるのかどうかは知らないが、こう詠まれるとなるほどと思ってもしまう。全体的に春のイメージで押しているので、「春眠暁」ではないが「重そうに」はどうにも惜しい。そこはなんらかの飛躍をしてほしいところである。ここまで詠めるようになったのであるから、俳句の出来事ではなく語と語の効果にも敏感になってほしいのである。

・親元を訪ねし郷の花粉症(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
→多作の作者であるが、同じような気分をいくら詠んでも結果は同じである。その中でこの句は光っていた。行き着く先が「花粉症」というある意味滑稽であり情趣でもあるが、全体の郷を思う気分につかず離れずよくあっている。

・参観日一番乗りの花粉症(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→こっそり伺ったはずが一番乗りになってしまい、おまけに大きなくしゃみをして注目を浴びてしまったという親の立場での一句であろうか。詠み方がやや日常べったりで終始しているところが惜しいが、ユニークでかつ共感の生まれる句である。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

花粉症やわらかティッシュの箱を積む(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
男泣き花粉症やと言いわけす(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・抱え込む金太郎飴花粉症(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
・眠りつく息子もまた花粉症(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
杉花粉けふは高級ティッシュ買ふ(ペンネーム「天野姫城」さん 44歳)
杉花粉気になりつつも誘われて(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
日光に参る行列杉の花(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・花粉症ピエロの自分演じをり(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
花粉症受付に並ぶマスク増え(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
マスク越し笑顔を交わす花粉症(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・窓越しにタンポポゆくや花粉症(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・幾千の野山越ゆ旅杉花粉(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
赤鬼と呼ばれた先生花粉症(ペンネーム「是多」さん 63歳)
花粉症の苦き薬や春寒し(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
意のままにならぬ自分や花粉症(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
・陽光に山クシャミして花粉症(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
春一番列島駆ける花粉症(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
銀行へ行けぬ姿や花粉症(ペンネーム「吞田」さん 71歳)
じっくりと列島覆う花粉症(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
花粉症風にのたうつ目鼻かな(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・ガウディの未完の塔は花粉症(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
・山揺れて見えぬ魔物や花粉症(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
古池の湖面に浮かぶスギの花(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)

入選B

・僕以外全員花粉症らしい(ペンネーム「野良古」さん 31歳)
・花粉症二銃士揃い乱舞かな(ペンネーム「三滝のべべ」さん 37歳)
・涙目で認めたくない花粉症(ペンネーム「けみこ」さん 40歳)
・花粉症かからにゃ辛さ解らない(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・春平和花粉症になってもいい(ペンネーム「櫻井葉子」さん 41歳)
・親教え子供に学ぶ花粉症(ペンネーム「犬蔵の王」さん 43歳)
・花粉症貴方も迷う恋心(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・花粉症自覚が無ければ風邪でしょう(ペンネーム「さおりっち」さん 44歳)
・春の使者今年も来た来た花粉症(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・花粉症雨の降る日に恋焦がれ(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・ラプソディー日本列島花粉症(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
・耳痒し来たよ今年も花粉症(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・花粉症春の訪れやって来た(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・花粉症目に見えぬ敵そこにあり(ペンネーム「そら」さん 58歳)
・花粉症防御グッズで誰かいね(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・桜散るおさまる我が身の花粉症(ペンネーム「りんの」さん 58歳)
・花粉症予防完璧宇宙服(ペンネーム「徳」さん 58歳)
・泣いたのは花粉症だと嘘をつく(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
・失恋と誤解されそな花粉症(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・花粉症振られて泣いてる訳じゃない(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・なごり雪杉の花粉か白い波(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
・お出かけは美顔を隠し花粉症(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・今日の数値体感で判る花粉情報(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・コーヒーの飲みて涙の花粉症(ペンネーム「しじみ」さん 69歳)
・インフルかマスク姿は花粉症(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・スギ花粉しっかりガード花粉マン(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
・様々な涙かくすや花粉症(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・春風や近ずくけはい花粉症(ペンネーム「めがねバ−バ」さん 73歳)
・花粉症上りホームの母の目が(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・目鼻口で真田丸する花粉症(ペンネーム「七十爺」さん 74歳)
・花粉症マスクとともに目薬も(ペンネーム「ともとも」さん)

ユニー句(句)

・花粉症の元祖ハクション大魔王(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・杉花粉飛散と聞かず顔悲惨(ペンネーム「雅」さん 55歳)
・ノーメイクマスクで隠す花粉症(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・花粉症と風邪重なり顔グシャに(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・花粉症年金と共にデビューする(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・あんた誰メガネにマスク杉花粉(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・花粉症薬が出来たらノーベル賞(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・取り出して目ん玉洗ふ花粉症(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
・鼻と眼を入れ替えたくて花粉症(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・春だより花粉症が第一報(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
・狭き部屋さらに部屋干し杉花粉(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・スコアより花粉に苦しむゴルフ場(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・眼も鼻も洗濯したい花粉症(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・花粉症思考回路を破壊する(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・花粉症メガネマスクにあなた誰(ペンネーム「音爺」さん 71歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年2月16日(金)

第84回 お題「オリンピック」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「オリンピック」。
年が変わって、回を重ねるごとにたくさんの投句を頂き、今回も同じくうれしい悲鳴でした。
新しい参加者も確実に増え、うれしく思います。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

今回は放送でも申し上げましたが、「オリンピック」という言葉にとらわれず、競技名など、オリンピックの何らかの感動を詠んでいただければよいこととしました。

大賞句は、素朴な詠み方ながらも、自身そのものを対象に託して詠んだ(対象と一体となった)素晴らしい句でした。
入賞句は、季語を上手く生かして詠んだ句で幸福感が倍増されて伝わる好句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回はユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました。

今回も大変応募数が多かったので、入選句は多めにとらせていただきました。
ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「スキージャンプ眼下に揺れる万国旗」(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)

季語は「スキー」で冬である。
句意も明瞭で、「ジャンパーがスタートをきり、空中に飛び上がりそこで過ごす数秒間、目に入るのは色とりどりの『万国旗』が美しい」という句。
素朴ながらも、こののびやさが最高で、一読したときからの入賞候補であった。
「スキージャンプ・万国旗」で、間接的にオリンピックの気分を伝えているというところも上手いが、一番の素晴らしさは、「対象に自身のすべてを託す(自己と対象が一つになる)」して詠んでいるところ。
すなわち、ジャンパーでしか味わうことのできない景色、それをジャンパーと一体となって味わいジャンパー目線で詠み上げているところが見事である。
茶道の「主客一体」、禅の「自他を越える」境地などを持ち出すまでもなく、このような世界観こそが、日本の文化・芸術の目指す方向性であり、悟りの境地(達観)である。
にもかかわらず、俳句を「風景・季語・文法・技法・型」など、小手先の教条(勉強・学習・知識)など頭(意識)で追いかけようとする考えが多いのは、私にとってさみしい限り。
よく「写生(映像・景)で詠みましょう」などともいわれるが、対象をただ傍観して(自他が区別された世界)その風景を詠んだところで何の感動(真実)もない。
それは心象句でも同じことである。
詩はこのように、自身の感動に本物(真実)と偽物があることに、気づかせてくれるのである。
その意味で、この句は頭(意識・理屈・教条・常識)からではなく、ジャンパーに思いを馳せ、そこから無意識的に体の底から湧き上がってきたなんらかの感動を、モノに託し句にとどめたのが見事に成功した。
特に、宇宙に散らばるあまたのモノのから作者が無意識に選択した「万国旗」。
そういうところに、地球はひとつ・人々への愛情・暖かさなど、作者の生きざま・人間性・人柄が垣間見られ、強く共感を覚える。
世の中の俳句の常識にとらわれず、感動をただモノに託して、自分の世界を詠ってほしいと願う。
大賞おめでどうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
俳句は意識(頭)でななく「無意識」からの芸術。

入賞

「愛の日の凱旋メダルぶらさげて」(ペンネーム「でこ」さん 51歳)

「愛の日」はバレンタインデーのこと。
スキージャンプの高梨沙羅選手やモーグルの原大智選手が、銅メダルを持って14日凱旋帰国されたのは周知のとおり。
まさしくそこを詠んだ句である。
選手と一体となったその喜びを「凱旋メダル」に託したところも上手いし、「愛の日」という季語を余計なことを言わず事実のままさらりと置いたところがマッチした。
これらの託し詠み・取り合わせの効果によって、凱旋の喜びだけでなく「好きな人にメダルの喜びを伝えたい」というような恋愛の幸福感のイメージまで引っ張ってくることに成功して、読者を楽しませる詩になった。
託し詠みによって、喜び・幸福感の相乗効果が生まれた一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
二つのモノをつかず離れず取りあわせると、豊かなイメージが生まれる場合がある。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・冬帝や羽生結弦の降り立ちて(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※あやさん(49)は羽生結弦選手を応援しています。
→固有名詞は分かる人とわからない人の差が激しいので句にしにくいものだがさすが名人、堂々と詠んだ。選手のベビーフェイスにとらわれず、その奥にある迫力・男らしさのようなものをあぶりだした一句になった。

・ピザ囲みコトバとけ合う冬五輪(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※学生時代、留学生の仲間とオリンピックを観た時の事を詠みました。
→冬五輪を仲間と眺めているような句である。はじめは好みの選手や意見の対立もあったが、ピザを食べながら話してゆくと「とけあって」楽しめたのであろうか。気分の出た句である。

入選句

特選

・左義長やオリンピックの大ジャンプ(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→左義長は神明さん・とんどのこと。その炎が舞い上がる様子と大ジャンプの気分を重ね見た(取りあわせた)句でイメージがよく釣り合って成功している。取りあわせの方向を模索されても面白い。

・五輪の輪地上で燃ゆる冬銀河(ペンネーム「三滝のべべ」さん 37歳)
→ドロ―ンの描いた五輪の輪が印象的であったが、句は、地上で冬銀河が燃えているとも解され、それで詩になった。意外性が読者を引き込み詩を生んだ。

・春時雨オリンピックの旗揺れる(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→季語もあり写生句であり申し分ないのだが何かものたりない。それは感動を詠んでいないからであろう。句をテクニックで詠むのではなく、ただ感動ある世界をモノを通して詠んでみてほしいのである。

・春塵や揺り籠揺れるオリンピック​(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
→心象句であろう。「春塵」→「揺り籠」→「オリンピック」この意外性ある言葉の展開が詩を生み出している。

・五輪へと 集う選手の息白し(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
→五輪の開会式の気分の句であろうか。そつなく詠んでおられるのだがいまいち感動が伝わらず惜しい。「何らかの出来事」を引き算し編集して句にするのではなく、はっとしたことをただモノを通して詠んでみてほしい。俳句はかけ算である。世界が開けるはずである。

・半島や平昌五輪鱈干され(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→「半島・平昌」「平昌・五輪」とつきすぎであたりまえの言葉の斡旋が平凡で惜しいのだが、「鱈干され」となんとか飛躍して詩にもっていった。「半島・干鱈」の造形を重ね見たものと思われるが、「半島」という言葉からイメージされる南北の緊張感と、魂を抜かれたような「干鱈」の空虚なイメージとは、なんとも考えさせられる。心ここにあらずというか、オリンピックとは一線を引いているような作者の独自の観点・批評精神が活きた。

・たま風やオリンピックの海渡る(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→「たま風」は日本海沿岸で西北方から吹く暴風。実際の風とはうらはらに言葉の響きとしてはどこか明るい。「風・海渡る」と把握がややありきたりでざっくりしすぎているのであるが、楽しさと激しさの織りなすオリンピックの気分を個性的にとらえた。

・オリンピック白銀色の一行詩(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
→「一行詩」という置き方が比喩なのか実存なのか微妙である。スケート跡・スキーの跡の比喩と解釈すれば「一行詩」は実体のない浅い句になるので、「オリンピック」と「一行詩(紙面)」を重ね見たものととりたい。すると選手たちの織りなすさまざまな雪上のドラマと、いろいろな一行詩の世界を重ねみているような句になりユニークである。

・水たまり飛び越えたらオリンピック(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
→オリンピック選手が子どもと戯れているのであろうか。あるいは「遊びがオリンピックのようだ」という比喩の句なのであろうか。前者のような実際の「オリンピック」を重ね見た句としてならその把握が面白いので詩になっている。俳句で大事なのは作者のスピリットである。実際のモノを通して詠もう。

・春近し五輪選手のピアスかな(ペンネーム「クローバー」さん 54歳)
→「春近し・かな」と切れが共に強いのがこの場合少し気になるが、楽しい気分の出た句である。オシャレな選手が増え、世界を楽しませる。

・浅春や五輪選手の眉きりり(ペンネーム「そら」さん 58歳)
→「きりり」が舌足らずな直接表現で惜しいが、これも上の句と似た楽しい気分の句である。「眉のいろ」くらいか。

・青空に銀のピアスや冬五輪(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→こちらもまた上二句に似た気分の句である。どれも少しづつ雰囲気が違って面白い。

・オリンピック勇者飲み込む深雪かな(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→勇者が根雪を飲み込むのか、根雪が勇者を飲み込むのか両方の気分が感じ取れてきて面白い。勇者に飲み込んでもらってこそオリンピックの迫力ある気分が出そうである。

・ゼッケンの白き五輪を吐くシャンツェ(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→散文的に解釈しようとすれば難しいが、詩なので「シャンツェ(スキーのジャンプが行なわれる競技台)」から次つぎ飛び上る選手、その生命力・美しさの気分を伝える句、というふうにそのまま気分を味わえはいい。詩を論理で解釈したり片づけようとするのは無粋である。

・におやかやアイスダンスの春衣(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→全体的に女性的なイメージでつきすぎなのが惜しいが、アイスダンスの気分をやわらかくあたたかく詠みあげた。好句。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・五輪のいなせな空や風光る(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
凍土やオリンピックの来たる(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
熱戦に吐く息白き冬五輪(ペンネーム「けみこ」さん 40歳)
冬空にオリンピック旗はためけり(ペンネーム「HK」さん 41歳)
冬空へ五輪選手よ高く飛べ(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・春寒や五輪の遠き空仰ぐ(ペンネーム「cava」さん 49歳)
・凍空のオリンピックや鍋の音(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
・オリオンを見上げし子らが五輪舞台(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・オリンピック春一番の表彰台(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
・冬五輪夜空の先へ板の翼(ペンネーム「雅」さん 55歳)
・冬空を熱気で焦がすオリンピック(ペンネーム「やっちゃん」さん 58歳)
・オリンピック風狂の雪山となる(ペンネーム「徳」さん 58歳)
風掬うスキーの切っ先ジャンプ台(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
統一旗オリンピックの冬の(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
応援のコートのみ込むオリンピック(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
・夏の夜の聖火を映す勝者の(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
天高しオリンピックの金メダル(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・凍りつく宙飛ぶジャンプ五輪かな(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
ドローンの描く五輪や冬銀河(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・平昌五輪眩しく揺るる国旗かな(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・地球儀と眼鏡こたつで見る五輪(ペンネーム「七十爺」さん 74歳)
・五輪空風雪切るやスキー跡(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
聖火冴えオリンピックは万華鏡(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
・氷雪のオリンピックや声熱し(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)

入選B

・地をたたく五輪の壁は俺がこす(ペンネーム「you」さん 10歳)
・日の丸も五輪の旗も皆まんまる(ペンネーム「富士山」さん 31歳)
・スケートや四分ぶんの軌跡の銀(ペンネーム「野良古」さん 31歳)
・何度目のオリンピックかトワエモワ(ペンネーム「櫻井葉子」さん 41歳)
・チマチョゴリオリンピックに花が咲き(ペンネーム「犬蔵の王」さん 43歳)
・悪天候オリンピックの雪吹雪(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・メダル獲るヒーロー達のオリンピック(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・アメリカ人ショーンホワイトなぜ強い(ペンネーム「わた」さん 44歳)
・一番の敵は寒さだオリンピック(ペンネーム「モモ」さん 46歳)
・極寒の熱き血潮に北の陰(ペンネーム「デンボ」さん 51歳)
・才能と運を引き寄せ初五輪(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・白い息熱気で飛ばす五つの輪(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・オリンピック表彰台へ雪女郎(ペンネーム「中山 月波」さん 54歳)
・雪も無くオリンピックも政治色(ペンネーム「やっぱりダメじゃろ」さん 56歳)
・冬空にビックリ箱のハーフパイプ(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・平和問うオリンピックの北の風(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・冬五輪理科室で観た金銀銅​(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・大会は魔物が潜むオリンピック(ペンネーム「よしやん」さん 60歳)
・梅探しオリンピックもあと少し(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
・オリンピック泣いて笑った夢舞台(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・息白し紅き上衣で五輪開く(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・レジェンドに手合わせ祈る冬五輪(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・オリンピック皆の応援で盛り上がり(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・五輪の輪心と心世界の和(ペンネーム「DIYじじ」さん 65歳)
・極寒のオリンピックや滑る飛ぶ(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・夢を追う孫に期待のオリンピック(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・オリンピック目指せ頂点宇宙一(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・五輪宿老いた伯母いる横浜に(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・東京五輪冥途の土産に観戦じゃ(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・空高く何が友好ふゆ五輪(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・極寒の時差無き五輪花火飛ぶ(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・空仰ぎ男爵の声冬季五輪(ペンネーム「のぶさん」さん 70歳)
・平昌の五輪外交春の鳥(ペンネーム「田中ようちゃん」さん ​70歳)
・天翔り雪上に舞う冬五輪(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・春寒し夜空に五輪ドローン群(ペンネーム「音爺」さん 71歳)
・競技より政治優先冬季五輪​(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・冬晴れや舞うスノーボードオリンピック(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・氷上で極めし技は五色の輪​(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・厳寒の夢から覚めしオリンピック(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・オリンピック希うもれし氷雪に(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・凍てつけど五輪に賭けるレゼンドや(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・ドローンの描く五輪の輪夜寒空に(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)
・野火のよう彼女は走るジャンプ台(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)
・滑走路リアカーの後吹雪く坂(ペンネーム「華みづき」さん)

ユニー句(句)

・出てみたいオリンピックにそれが夢(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・四年越し重圧超えて堂々銅(ペンネーム「しまっかーとにー」さん 40歳)
・玉子酒メダルラッシュに熱上がり(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
・待合のテレビも冬の五輪かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・ゴーグルを取ればイケメン冬の五輪(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
・深夜五輪つまみ犇く炬燵かな(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・オリンピックカーリングまねて庭掃除(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・五輪中家族みんなが評論家(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・オリンピック見たいドラマは録画して(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・インフルのお陰で観戦オリンピック(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・オリンピック出場出来れば金メダル(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・オリンピック迫るテレビの高画質(ペンネーム「小市」さん 67歳)
・年老いた母にあげたい金メダル(ペンネーム「湯浅博明」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年2月9日(金)

第83回 お題「鬼」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「鬼」。
年が変わって、回を重ねるごとにたくさんの投句を頂き、今回もうれしい悲鳴でした。
新しい参加者も確実に増え、うれしく思います。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

今回は「節分の鬼」にとらわれず、とにかくなんらかの「鬼」を詠んでいただければよいことにしました。
よって「鬼瓦・鬼火」など、「鬼」の字が入っていおれば可としました。

大賞句は、ポエティカルな雰囲気ながら人生の滋味の感じられる深い句でした。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回はユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました。

今回も大変応募数が多かったので、入選句は多めにとらせていただきました。
ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「春の夜やわたしの中の鬼を飼う」(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)

「鬼」といえば、暴れん坊・恐ろしいもの・パワーなどのイメージであるが、思えば、誰の中にも「鬼」はいる。
中の「鬼」が言うこと聞かない、悪さをするのである。
なりたくないのに病気になる、言わなくていいのに余計なこと言ってしまうなど、鬼の仕業かもしれない。
「飼いならす」なら制圧した気分であるが、ただ「飼う」とあるので「共存共栄」の印象である。
どんな「鬼」なのか解釈は読者にゆだねられているが、いずれにせよおぼろげな「春の夜」という背景につつまれたある日、長年言うことを聞いてくれなかったなんらかの暴れん坊の「鬼」と、ようやく分かり合えたというような「悟りの境地」、そんなおだやかな心境が感じ取れれる句である。
このような句が提示されたとき、「鬼」はただ「鬼」と書いてあるのだから「実存の鬼」と解釈すればいいのであるが、「鬼」は想像上の生物だ妖怪だといって、「鬼」をなんらかの比喩と解釈しなければ気の済まない人は多い。
しかし、実景であれ心象であれ、受け取るところはただ「ココロ」であって、作者の「ココロ」が捉えた何らかの実感を詠んだ句と思えばどうということはない。
よって俳句に嘱目も心象もない。
作者が「鬼を飼う」と実感した事情、その心境にただ思いを馳せればいいのである。
「春の夜」というおだやかな舞台にはじまりながら、自身の中に「鬼」がいるという『意外性』。
そしてその「鬼」を追い出すでもなく「飼う」という『意外性』、が鑑賞者を引き込み、イメージを掻き立て詩に仕立て上げている。
どことなくコミカルでポエティカルであるが、滋味を感じる一句。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
俳句に嘱目も心象もない。
ただココロが受け止めた実感をモノに託して詠む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・満月のまだ濡れている鬼の口(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※皆既月食の夜に。赤い月でした。
→名人らしい世界観である。何らかしら妖艶な句でポエジー豊かである。「月食・鬼」なら、共に不穏な雰囲気でつきすぎであるが、「満月・鬼」であるからイメージのつり合いがよい。いうまでもなく「満月・狼」などならつきすぎである。このあたりのイメージのバランスが上手く取れるようになってこられた。

・寒き春風緩みゆく鬼瓦(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※まだまだ寒い春ですが、少し風が緩み、屋根の鬼瓦も若干表情が緩んだように見えました。
→作者にしては少し大人しい句である。「寒き春風」は兄弟喧嘩、「春風緩みゆく」はつきすぎの印象。このようなタイプの句は舌頭千転であろう。たぶん新境地を模索中なのであろう。快作祈念。

入選句

特選

・鬼瓦冬晴れの空にらめっこ(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
→「冬晴れ」とはいえ寒い。なので「鬼瓦・にらめっこ」なのであろう。「鬼瓦・にらめっこ」の関係性が当たり前で少し惜しいが、一句全体の素朴な句姿、空間把握ののびやかなさが気持ちいい。

・凩や鬼の捨てゆく煙草二本(ペンネーム「コバルトブルー」さん 32歳)
→「凩」の中悠然と煙草を吸っているというのは人間であればかなりのつわものであるが「鬼」なので納得できる。「鬼」も実在の「鬼」でいい。「鬼」のタバコ姿とはなんともダンディである。「二本」という時間性も面白い。なんらからのふみ切れぬ思いか何かであろうか、モノに託し心情表出のよくできた句である。

・轍なき空追い回す鬼やらい(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→「地を追い回す」では詩にならない。「空追い回す」と「鬼やらい」の世界観を大きく把握して詩にもっていった。どことなく自分の未来を模索しているような気分の感じ取れる句である。

・鬼の影冷たきままのベッドかな(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→「影・冷たい」の関係性が近しく惜しいのであるが、よくある暴れん坊のイメージの「鬼」ではなく、文字通り静かな冷たいイメージの「鬼」、この静的な世界が非日常感・緊張感をもたらして詩を生んでいる。

・雪溶けて顔をのぞかす鬼瓦(ペンネーム「橋田ちゃげ子」さん 42歳)
冬の間に積もった雪が、春になってとけ始めるという春の季語であれば、「溶」は「解」と書くほうが一般的であろう。あるいは冬の間に積もったりとけたりする雪(冬)のことを詠んだものであろうか。いずれにしても、一面雪に覆われたその寒さや不安感で過ごす中、徐々に雪が解けてきた喜びや安心感を、上手くモノやモノの様子(顔のぞかせる鬼瓦)に託して詠んであり、共感が迫ってくる。「~して~する」などと説明的であったり、詠み方が甘くも感じるのであるが、今年ようなの大寒波を思えば、だれもが共感できる実感の勝った一句であろう。

・鬼火持つ女に心覗かれて(ペンネーム「靖」さん 43歳)
→「鬼火」は「燐火・狐火」のことであろう。その「鬼火」を「持つ」といきなり非日常が展開され引き込まれる。「鬼火をもつ」のは作者とも「女」ともとれる句である。その両方のイメージが伝わってきて、句をひもとく楽しみが読者に与えられている。何かしらの秘密をのぞかれたのか。いずれにしても鬼気迫る心情を上手くモノに託した句である。

・鬼の顔凸凹してる春の闇(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
→鬼の顔はたしかに掘りが深い。しかしそのことを詩にしたという例はありそうであまり聞かない。着眼が光った句である。「春の闇」が「鬼」のイメージにつきすぎともいえるが、「闇」だけに「闇の中の手触りで「鬼の顔」をなぞっているような生々しさが出ており、不気味ではあるがそのリアリティがひきつける。

・鬼の目に目薬さして春隣(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
→「鬼」に比してこの軽やかささわやかさはなんだろう。「鬼」を「鬼」とも思わないようなおおらかさ、それが「春隣」というワクワク感のある季節とよく合っている。童心・ピュアな心を上手く託した。

・立春の雨に打たれる鬼の面(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
→「賑わった節分の後のさみしさを詠んだ句」というのであれば、理性・論理・理屈で詠んだ句ということになり非常に浅い。反対に「立春の雨に打たれる鬼の面」に、「ただただモノとしての情感・パワーを感じ、無意識からこみあげてきた句」というのであれば実に見事である。俳句は「つぶやきに季語をくっつける」というような安易で乱暴な作り方でも、形式の短さの恩寵にあずかって句に収まるものであるが、大事なのは作者のスピリットである。ぜひ後者と思いたい。

・春の夜ぽんと跳ねおる鬼海星(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
→俳句は何らかの気分が表されておればいいというあたりの呼吸がわかっている方である。絵本の中の世界のようでメルヘンチック。軽みの一句である。

・青鬼の毛布の匂い一つ星(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
→一般的なイメージの「赤鬼」でではなく、「青」「鬼」とチョイスしたところにすでに作者の心情が出ている。「青鬼」はどんな夢を見てどんな涙を流しているのか、「涙の匂い」がイメージされ「一つ星」のさみし気な気分によく合っている。感情移入できる一句である。

・右上の鬼歯のうずく春日かな(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→読者にとっては全くどうでもよい他人の歯のうずく位置をわざわざ説明してくれているところや、いよいよ躍動的な春になったというのに、自分の体の些細な場所の故障が活動のじゃまをしているというところ、こういうところに俳味・滑稽さがにじみ出ている一句である。ユニークさは出そうと思って出すのではなく、結果として出るといういい見本の句である。久しぶりに上質の俳味を感じた。

・探梅や優しき鬼の手紙あり(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→「や・あり」が両方強いのでひびきとして気になるし、「やさしき」は少し直接言い過ぎのの印象である。しかして、動的でわくわくとした楽しいイメージを引っ張ってくる「探梅」とは気分がいい。子どもの頃の冒険の楽しさ・下校時の道草などが思い返される。「鬼の手紙」を見つけたのであるからなおさら楽しかろう。好句。

・薄氷の上に転がる鬼の豆(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
→「上・転がる」「転がる・豆」と句の下半身の措辞の斡旋がありきたりで惜しいが、「薄氷・鬼の豆」というモノの関係性はつかず離れずで、句の骨格をしっかりさせている。じっくりモノに託して詠む方向にシフトしてきたので句が堂々としてきた。この方向で。快作祈念。

・冴返る鬼にも名前ありますか(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
→このような詠み方は20~30年ほど前のレモン俳句のようで、私は甘く感じるのであるが、上五にシャープなモノ(季語)をもってきて、後半のやわらかさとのバランスを取ろうとしているところに感性の煌きを感じる。直接表現ではなく心情をモノに託した方向の句をもっと見てみたい。

・鬼太鼓の天衝く桴や冴え返る(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
→句意は明瞭。全体的に「太鼓」のイメージでつきすぎなのが惜しいが、かっちりした詠み方で手慣れている。さらに大胆に詠んでみたい。

・満ち潮や鬼の拳のやはらかき(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
満たされた心境かと思えば、やわらかきという意外性。それは「鬼の眼にも涙」のようななんらかの事情を託したものであろうか。このあたりの関連性が程よく飛躍しているので、読者はその事情を探ろうと引き込まれる。こういう飛躍・意外性・フレーズの変容に詩は生まれてくるのである。モノとモノをぶつけて美を生み出す方向にシフトしてきたのであろうか。期待したい。

・福豆に打たれる鬼や冬銀河(ペンネーム「しじみ」さん 69歳)
→中七まではいたってありきたりな句なのであるが、下五でぱっと飛躍して詩になった。散らばる豆と散らばる冬銀河のイメージを重ね見て美しい。こう詠まれるといわゆる俗っぽさが消えて非日常の世界に引き込まれて楽しい。この句中の飛躍の感覚を大切にしたい。

・裏鬼門その延長の春の虹(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→「裏鬼門・春の虹」プラス・マイナスのような異質な取りあわせであるが、ともに実体がぼんやりした神秘的なイメージであり、そのあたりがつかず離れずでイメージをかきたてる。禍福は糾える縄の如しというような気分の句であろうか。しかしいかにも光景が美しい。

・金平糖鬼のばら撒く冬銀河(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
「金平糖・冬銀河」で句になっているようで「鬼」の必然性が乏しいのが惜しい。しかし「金平糖・冬銀河」のイメージを重ね見るような詠み方が幻想的である。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・宿題に心の中から鬼が出る(ペンネーム「うっつー」さん 13歳)
・鬼の目に映るは哀しき孤高かな(ペンネーム「りゅうせいとばらーど」さん 19歳)
・夕暮れの見上げた空に鬼やんま(ペンネーム「けみこ 40歳)
・春永やよく笑う鬼と晩酌し (ペンネーム「櫻井葉子」さん 41歳)
鬼儺夜空に散りし白き豆(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・鬼やんま夕焼け雲に重なりて(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
鬼遣らい面着ける子の通学路(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・立春や小鬼ほっぺにごはん粒(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
追懐や里で春待つ鬼一匹(ペンネーム「cava」さん 49歳)
赤鬼と青鬼落とす氷柱かな(ペンネーム「角森」さん 49歳)
・鬼瓦冬将軍を睥睨す(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・鬼やらい娘の開けない手紙かな(ペンネーム「クローバー」さん 54歳)
節分や身内に飼いし鬼騒ぐ(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
・菫咲く鬼と言われし教師(ペンネーム「砂山恵子」さん 58歳)
荒海に豆まく漁師の鬼やらい(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
絵付けする卒業記念の鬼の面(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
空一杯鬼が顔だし大寒波(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
・如月のは逃げ込む山の中(ペンネーム「是多」さん 63歳)
舞台立ちすくむ園児やの豆(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・巫女が焼く鰯千匹鬼は外(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・鬼は外園児にはずむ乳母車(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・園庭の冬の陽だまり鬼ごっこ(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・初孫に鬼の目光る根雪解け(ペンネーム「華みづき」さん 69歳)
・マンションの通路にこぼる鬼の豆 田中ようちゃん」さん 70歳)
鬼も出る迷路の如き人の世に(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・鬼酒に言わせて晴らす冬の空(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
・節分や老いたる鬼は杖を持つ(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・床の間のかざし鬼やらい(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・鬼は外豆の飛び出す裏通り(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
・朝まだき鬼怒川温泉冬の月(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・待春や錦を纏う鬼の(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・節分や鬼門に豆をそっと置き(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・暗闇に息ひそめるや鬼やらい(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)

入選B

・豆まきや鬼の先生走る走る(ペンネーム「むらさき(5さい)」さん 5歳)
・鬼は外投げる先には父の顔(ペンネーム「ゆき」さん 17歳)
・福外に追い出す母の怒り激(ペンネーム「舞ぴょん」さん 17歳)
・鬼の父今年も降る降る豆の雨(ペンネーム「ケロロ」さん 19歳)
・追いかける子どものさきに鬼の影(ペンネーム「ぴょんこ」さん 19歳)
・底深き未来の悩みに鬼笑う(ペンネーム「こたつの精」さん 21歳)
・節分や泣き虫鬼に傘をさす(ペンネーム「トメイト」さん 21歳)
・逃げだしたばあばの部屋の鬼の面(ペンネーム「まめきち」さん 22歳)
・うちに来た0歳の福鬼になる(ペンネーム「新米ママ」さん 27歳)
・鬼役は僕より君が合ってるよ(ペンネーム「やすよ」さん 34歳)
・垂れた目の赤いお面に鬼は外(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
・豆つかむ子鬼わらわら福は内(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・来年の春の事言や鬼が笑うかも(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・鬼迷うこの恋人偉いのか(ペンネーム「犬蔵の王」さん 42歳)
・邪気払え鬼が現る毘沙門天(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・テムズ川地獄めぐりか鬼退治(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
・本当はかわりたくない鬼の顔(ペンネーム「スーたん」さん 44歳)
・鬼ごっこ障子破れて顔のあり(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・鬼嫁の手のひらの上で鬼ごっこ(ペンネーム「テイラー伊太郎」さん 46歳)
・振りかぶる青き拳や鬼の豆(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・幼な鬼当たらぬように福は内(ペンネーム「ちーまる」さん 49歳)
・OLの辞表しのばす鬼やらい(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
・豆まきや鬼に持たせるワンカップ(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
・春浅し鬼と泣きたる読み聞かせ(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・鬼の面日々のしがらみ豆に乗せ(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・鬼怒り黒きまなこに雪景色(ペンネーム「雅」さん 55歳)
・豆を撒く心の中の小鬼にも(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・我鬼に駆り立てし物沈む闇(ペンネーム「そら」さん 58歳)
・泣きじゃくる園児も豆で鬼を追う(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・鬼払い福豆数え歳を知る(ペンネーム「やっちゃん」さん 58歳)
・鬼の豆主なくして枡の中(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・春の息吹鬼の目で見ろ耳で聞け(ペンネーム「ヨシ整体」さん 59歳)
・鬼面つけ寝たきりの母笑顔なり(ペンネーム「呉のカープ女子」さん 59歳)
・鬼の目に涙あふるるむすめ婚(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・初孫や鬼も角折るじじとばば(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・おには外今年一年福は内(ペンネーム「DIYじじ」さん 65歳)
・鬼の籍喪中の葉書冬の旅(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
・節分や鬼のお面の笑い顔(ペンネーム「小市(こいち)」さん 67歳)
・春近し鬼も引っ込み鯉が舞う(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・鬼は外今年も一つ豆が増え(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・鬼役に今年も務め古稀夫(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・ディサービス鬼に向かって豆を投げ(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・じゃんけんポン節分オニ役老夫婦(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・里帰り鬼のいぬまの張るうらら(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・鬼ヶ島追儺の鬼の電話受く(ペンネーム「吞田」さん 71歳)
・鬼やらい父さん鬼になりきれず(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・ストッレチして出番待ちたる鬼は外(ペンネーム「まさる」さん 77歳)
・面面面面兄弟げんかの鬼が泣く(ペンネーム「コンセプシ音6」さん)

ユニー句(句)

・節分やあかおにあおおにみどりおに(ペンネーム「ちま(3才)」さん 3歳)
・豆痛し嫁と書いておにと読む(ペンネーム「富士山」さん 31歳)
・鬼は外まいたお豆でビール飲む(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・赤鬼の青ざめし涙ビットコイン(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
・母が言う私が鬼かそっちだろ(ペンネーム「わた」さん」さん 44歳)
・鬼は外心の中では鬼が好き(ペンネーム「こまちん!」さん 50歳)
・うまいもの鬼のいぬまに盗み食い(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・赤鬼や吠えろよ吠えろ春キャンプ(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・鬼心すべてはカープの日本一(ペンネーム「カーターピーナッツ」さん 63歳)
・鬼嫁をおだてて見たが何も出ず(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・俺の嫁鬼より強いが外では淑女(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・節分の鬼へ振舞ふ鬼ころし(ペンネーム「桴」さん 65歳)
・鬼が来た家には違う鬼が居る(ペンネーム「やんちゃばば」さん 65歳)
・寄せ鍋の箸止めさせる鬼奉行(ペンネーム「不思議の国の兎」さん 66歳)
・入れ歯抜き鬼の面より怖いじじ(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・鬼嫁の鬼も追い出せ鬼やらい(ペンネーム「音爺」さん 71歳)
・鬼の面はずしたはずがそこにいる(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・豆撒きや鬼役の我ぎっくり腰(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・鬼の面取っても泣かれた父の顔(ペンネーム「なそじい」さん 74歳)
・早春や三たびペナント鬼コーチ(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年1月26日(金)

第82回 お題「雪」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「雪」。
今回はまた非常にたくさんの投句を頂いてうれしい悲鳴でした。
いつもように新しいお名前も見られ、うれしく思いました。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

今回は「淡雪」など春の季語や、「風花」などであっても「雪」が入ってあるものは可としました。
しかしどう詠んでもお題が入っていないものは残念ですが選外としました。

大賞句は、「託し詠み」の極致ともいえるモノと一体となった素晴らしい句でした。
入賞句は、ディテールを上手く詠み込んだ句でした。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。

今回は応募数が特に多かったので、入選句をやや多めにとらせていただきました。
ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「雪晴や街を見下ろす風見鶏」(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)

一読したときから大賞候補であった。
「上五中七」の大パノラマに比するに、下五に何をもってきてもそれなりに成立したであろうが、見渡すような動きの感じられる「風見鶏」を象徴的に配したことで句にさらなる広がりや動きが出て、見事に決まった。
それを思えば、六甲山・異人館などではどうにも大雑把な把握の吟行句のようになり平凡である。
この「風見鶏」」からは日和見主義うんぬんの意味合いは全く感じられない。
「雪晴」だからか「くるくる回っている」イメージでもないし、いかにも悠然とした堂々たる「風見鶏」である。
この「風見鶏」はどう感じても作者自身であろう。
その見渡すすがすがしさやのびやかさが圧倒的な共感を誘う。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
詩にならない言葉はない。詩にならない言葉の関係があるだけである。

入賞

「ランドセルの蓋はづませて雪晴れ間」(ペンネーム「不思議の国の兎」さん 66歳)

「はづませて」は旧仮名で書かれているのだが、特に強い主張がないのであれば、ここでは原則「現代仮名遣い」をお勧めしたい。
下校時の児童の様子がイメージされる。
雪晴れの美しい光景に、「ランドセルの蓋」をしめるのも忘れて外に飛び出し、楽しく下校する様子。
うれしいたのしいと直接詠まず、中七のディテールにすべて託して詠んだところが成功し、臨場感やリズム感、イキイキした様子など、様々なプラスのイメージを生み出して詩になった。
観察眼と「託し詠み」の光った句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募下さい!
<作句のポイント>
ディテールを詠む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・湯けむりや首に触れたる夜の雪(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※温泉に行こうかなあと。
→演歌の世界のような光景でなまめかしい。類想がありそうであるがカッチリと句にした。しかしこういう既成の俳句らしさに安住せず、自分の詩を詠っていってほしい。

・うなだれた背広に通す雪明かり(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※雪の重みではないが、くたびれてうなだれたスーツを着て再び頑張って仕事に向かう様子を詠みました。
→「背広に通す腕」ではなく「背広に通す雪明り」だから詩になった。このあたりの感性のきらめきがすばらしい。一方「うなだれた→背広」はありきたりの語の関係で惜しい。このあたりをさらに咀嚼したいところである。多くの参加者が写生口であるのに対して、作者は「コトバ口」、つまり言葉の関係性に美を見出す方向であり、私の立場と近い。期待したい。

入選句

特選

・積む雪やチャイコフスキー弾く少女(ペンネーム「コバルトブルー」さん 32歳)
→上手い句であり自分の言葉をもっている方である。どちらかというと頭で詠むタイプのようなので、体から(無意識)の実感を詠むようにしてみていただきたい。

・大雪や声を失う街の空(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→「声を失う」のは作者ではなく「街の空」だから詩になった。しかしこれは俳句の世界では類想が多そうで、そこが少し惜しかった。

・新しき消しゴムの角深雪晴(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→なかなかなのであるが、「新しき」がどうも効いていない。すでに気分の出ている句を添削するのは好きではないが「消しゴムの角濡れている深雪晴」などと比較していただければ何か気づきがあるかもしれない。作者への宿題としたい。

・雪かきに足跡残す明日かな(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
→平凡な「雪かき」の句かと思えば下五に「明日」を置き、詩になった。現在と未来を重ね見ているような次元の句で神秘的である。

・ボタン刺すか細き針や今朝の雪(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→全体的に世界観が平凡というか見なれた日常を日常のまま詠んだようなところが惜しいが、「刺す・細い・針・朝」あたりの繊細な音韻や細やかさが詩を生んでいる。鋭敏な感性を感じる句である。

・放課後のグランドで泣く雪まろげ(ペンネーム「cava」さん 49歳)
→「雪まろげ」は雪転がしのこと。雪の遊びは一般には楽しいものだが「泣いた」から詩になった。句意としては子供が泣いているのであろうが、どうもその顔が見えず「雪まろげ」こそが泣いているように取れる。そのあたりがこの句の面白いところ。

・淡雪や両手で包む缶コーヒー(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
→ドラマのワンシーンのような世界で感情移入して味わってしまう。雪のぬくもり、手のぬくもり、缶コーヒーのぬくもり、心のぬくもりなどが、折り重なって感じられてくるようなあたたかな句である。まずはこのように自分の感じたよう世界を写生的に多作すればいい。その地平に新しい境地が見えてくる。好句。

・細雪空いっぱいの滑り台(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→雪に綺麗に覆われた公園の風景か。白世界に一つ象のように盛り上がる滑り台。一面の雪が「滑り台」を「空いっぱい」に感じさせたという句で共感できる。これが「雪が滑り台のように降ってきた」という句なら「滑り台」は単なる比喩にしか使われておらず存在感が希薄で句にならない。

・雪の朝輪郭のなきぬりえかな(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
→「雪の朝は輪郭のない塗り絵のようだ」という比喩の句であれば詩にならない。「雪の朝」と「輪郭のなき塗り絵」の取り合わせの句と解するべきである「輪郭のなき」などに心情表出が感じられる非日常感のある佳句である。

・過疎の村笑顔を照らす雪明かり(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
→「笑顔を照らす」はよくある表現うんぬんというのは簡単であるが、私はこれはこれでいいと思う。一句に醸し出されているほのぼのとした気分がぬくもりを与えている。

・雪道やおもちゃ屋前のポチ袋(ペンネーム「ヨシ整体」さん 59歳)
→モノを打ち出して象徴的に詠む方向にシフトされてきた。余計なことを言わず「雪道・ポチ袋」に絞って詠んだところがよい。どういう事情と解するかは読者にゆだねられている。

・雪明り主亡き部屋の柱かな(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→伝統的な詠み方であるが、柱にポイントがしぼられてそこに作者の思いが感じ取れる句である。俳句という形式をよくわかっている方なのであるが、さらに飛躍して詠んでみたい。

・雪催いマジックインキの匂いかな(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
→応募句の中では圧倒的にこれがよい。俳句の初心者の方はよく何らかの教条や俳句らしさ小手先のテクニックで詠もうとするのであるが、それが俳句だと思うと先を見誤る。この句のように自分の実感をきちんと詠むことが先決である。そこに詩としての値打ちがあるのである。「雪催い」と「マジックインキの匂い」この関係性がつかず離れずで美を生み出している。何らかの衝動・不穏な心境の感じられる句で共感できる。私は「俳句はモノとモノをぶつけてそこから生まれる芸術」と言ったりもするが、そのような方向の句である。この方向を期待したい。

・雪時雨俺を残して列車ゆく(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→中七が面白い。「我」などと気取らずに「俺」と置いたことで生々しさが出て成功した。ダンディズムというかハードボイルドな雰囲気の詩になり個性が出た。これはこれで一句なのだが、私なら下五を「ゆく列車」としてみたい。重心の置き方が「出来事」よりか「モノ」よりか少し変わる。提案は「モノ寄り」である。

・大雪やアナウンサーの今朝の紅(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→ポイントを絞って詠んで句になった。何があろうとアナウンサーは情報をいち早く伝えるが、このたびは「紅」を差す余裕があったのか、あるいは、いかなる事態でも女性としてキリリとしていたいという作者の心境を重ね見たものか。

・降る雪や宍道湖に立つ三角波(ペンネーム「しじみ」さん 69歳)
→少し盛り込む過ぎなのであるが、何とか「雪の宍道湖」をまとめた。「三角波」になにがしかの作者の心境が投影されているようで共感を覚える。

・春雪や大地ゆつくり弛みゆく(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
→「春」だから「弛む」のはあたりまえなのであるが、大きな把握が効いてそれほどつきすぎが気にならない。これだけ寒い日が続くと本当に春が待ち遠しい。

・手のひらに雪降る午後の根付展(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
→平凡な句のようでいて、しっかりと自分の実感を詠んでいる上手い句である。どこかしら手のひらの「雪」と手に乗るサイズの「根付」を重ね見ているような句で、その幻想性が詩情を生んでいる。奥ゆかしい好句である。この方向を期待する。

・しんしんと雪積む音や墨匂う(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→上手い句である。しかしてこのような句は沢山あるので、どう飛躍するかそこを見てみたいのである。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・雪礫悲鳴をあげるランドセル(ペンネーム「you」さん 10歳)
・雪の窓むかしのレゴを作り出す(ペンネーム「コンスタンチン」さん 12歳)
雪原に白いウサギの絵を描く(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 37歳)
あちこちにこどもの声と雪だるま(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・雪割って咲くものたちや新一年(ペンネーム「櫻井葉子」さん 41歳)
・大雪にペンタウルスの星光り(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
・南天の身震いするやしずる雪(ペンネーム「角森」さん 49歳)
・風花スキップで行く新婦かな(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
・牡丹色埋めつくすビニール傘(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
・牡丹雪受験の朝の音のなき(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・雪あかり手紙の文字のにじみけり(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
用件を伝えぬ電話雪の声(ペンネーム「そら」さん 58歳)
・雪降るや三次に古墳四千基(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・山茶花の花びら散らし赤い雪(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
・クレヨンの白だけ減りし雪景色(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・影ながく一人たたずむ雪だるま(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・夕暮れの吹雪に揺れるビル明かり(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・雪兎別れを告げず去りゐたり(ペンネーム「吞田」さん 71歳)
・公園で雪を蹴散らす園児かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・大雪の母の便りにキップ買う(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・低くジャズ流るるカフェ雪椿(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・降る雪や頁繰るテイータイム(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・雪国の窓に温もりあるような(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・降る雪や児の自転車風受けて(ペンネーム「古志清右衛門」さん 77歳)
・雪富士に目元ぬぐうや異国(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
・駅吹雪予期せぬ父の笑顔に泣く(ペンネーム「いっぺい」さん)

入選B

・雪景色一人見ながら春を待つ(ペンネーム「優菜」さん 11歳)
・雪に病む寝ているばかりのうどんかな(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
・雪の日や路面が凍ってすべり台(ペンネーム「ぴょんこ」さん 19歳)
・忘れ柿雪化粧にも紅をさす(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
・極楽だ温泉入って雪見酒(ペンネーム「やすよ」さん 34歳)
・道に落つ雪は白さを失えり(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・しんしんと雪降り積もる冬の空(ペンネーム「けみこ」さん 40歳)
・雪景色綺麗と同時危険あり(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・旦那と子玄関先の雪だるま(ペンネーム「よこたん」さん 41歳)
・かまくらにはしゃぐ子供雪の精(ペンネーム「犬蔵の王」さん 42歳)
・屋根の上うっすら変わる雪化粧(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・窓越しの白をまとった蠟梅愛づ(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
・雪枝さん雪のように亡き祖母が(ペンネーム「わた」さん 44歳)
・しんしんと降る音聞こゆしずり雪(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・新雪や獣の足跡ぽつりぽつ(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・雪かきで雪解け水に混じる汗(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・襷巻き無駄汗掻いて雪掻いて(ペンネーム「カープV預金」さん 46歳)
・往診の患者は知らぬ外の雪(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・一夜してスピード美白や雪景色(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・夜の雪警報に笑む高校生(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
・湯けむりに落つむつのはな肌に消ゆ(ペンネーム「きのぴー」さん 49歳)
・赤き実の弾けて揺れる雪しづり(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
・雪掻きをしてる隣で雪合戦(ペンネーム「こまちん!」さん 50歳)
・充電の切れる東京雪野原(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
・その先にすすまぬ童歌雪の道(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
・山道でヘッドライトに雪吹雪(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・雪かきを誰がしたのかありがたき。(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・雪降りてやっと出番のスノ−タイヤ(ペンネーム「彩の介」さん 55歳)
・ツルツルもザラザラもある雪ダルマ(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・しんしんと雪降る朝の静寂さ(ペンネーム「りんの」さん 57歳)
・月曜の都会の朝に雪だまり(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・尾をふりて我に向かいし雪野原(ペンネーム「メリーゴーランド」さん 58歳)
・落葉樹小枝に咲くは雪の華(ペンネーム「やっちゃん」さん 58歳)
・雪ですね旅のをんなが窓を見る(ペンネーム「砂山恵子」さん 58歳)
・南天の赤い実キラリ雪うさぎ(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
・積雪にてんてこ舞いの都心かな(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・前を行くあなたの肩に雪積もる(ペンネーム「バーガー父ちゃん」さん 62歳)
・南国に雪をもたらす憎い奴(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・大雪や気象衛星勇みおり(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・朝おきてまどをあければ大雪だ(ペンネーム「DIYじじ」さん 65歳)
・初雪に孫より先に外に出ん(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・雪が降り見慣れぬ景色風情かな(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・老犬ときゅっきゅっと雪道祈りつつ(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・水玉の世界広がるぼたん雪(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・ライン友福良雀の雪のえさ台(ペンネーム「のぶさん」さん 70歳)
・雪降れば赤貧洗うもふと忘れ(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・ザックザク雪音軽く子等通る(ペンネーム「音爺」さん 71歳)
・降る雪にわき目もふらず太田川(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・雪蹴散らして愛犬はしゃぐ散歩(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・診察は老化現象雪の帰路(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・雪かきで見つけた一輪雪割草(ペンネーム「菜穂ちゃん」さん 73歳)
・ダイエット団地の庭で雪ダルマ(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・校庭が一面靴音初の雪(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・雪を見て風の音は白い息の緒(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年1月19日(金)

第81回 お題「駅伝」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「駅伝」。
前回よりも難しげなお題であるにもかかわらず、皆さん随分と「託し詠み」をされてきて、うれしく思いました。
新しいお名前も見えて、光栄でした。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われ将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

今回は「駅伝」ではなく「タスキ」を詠んだ句が多くありました。
「駅伝」の気分が出ているものは可としましたが、原則お題を入れて詠んでいただければと思います。

大賞句は、詠みに甘さがあるものの、応募の中で着眼が光った一句でした。
入賞句は、過不足なく「箱根駅伝」の気分を伝えるものでした。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「落ち葉舞う駅伝選手の足元で」(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)

「上五中七」に対して「下五」の当たり前感というか全体的に詠みが甘いところが気になるが、無意識的に素直に実感を掬い取って詠んだところがまずよい。
俳句はテクニックや文法や詩の技法を「勉強」すればいい句ができると思っている方も多いであるが、私はそうではない。
とにもかくにも俳句は短いので、技術を駆使したり意識や理屈で作ろうとすればするほど、それが全面に出てうるさく邪魔になるものなのである。
「駅伝選手の足元で」「落ち葉舞う」という倒置法を用いた句ともとれるが、定型のリズム・バネによって結果的にこの型に収まったとみるのが自然であろう。
この句はとにかく、着眼点が光っている。
駆け抜ける選手の足元にズームアップしたようなカメラ目線。
選手が通り抜けるたびに落葉がサーサーと舞い上がる様子が印象的で、駅伝の勢いや臨場感・楽しさがモノ(落葉の様子)に託され、見事に伝わってくる。
「託し詠み」のできた好句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
俳句は意識ではなく、無意識から生まれる。

入賞

「富士を背につなぐ襷や息白し」(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)

「駅伝」が題であるから原則入れてほしいのであるが、一読「箱根駅伝」の気分が伝わってきたのでとった。
「箱根駅伝全体の熱さや気分」を、「富士山」の風景と「息白し」という季語の調和に託し、卒なく過不足なく伝えている点が上手かった。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募下さい!
<作句のポイント>
俳句は短いので言いたいことは言えない。モノに託す。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・駅伝の襷這い行く深雪晴れ(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※駅伝の襷の重さとその上の晴れ舞台の様子を詠みました。
→名人らしいなかなか奥ゆかしい一句。

・駅伝や声立ち尽くす冬の空(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※走れなくなることもあり、その光景が時に強く心を打つ、ということもあります。
→意味深な句でいろいろに解釈できる。この句から連想がひろがって「駅伝の空立ち尽くす冬の花」などが浮かんだ。

入選句

特選

駅伝や焚き火ひしめく里なまり(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→句としては少し盛り込み過ぎな印象であるが、全国からの駅伝チームがそれぞれに焚火で暖をとっているような光景が目に浮かび、共感する。

駅伝を消したる母や冬の昼(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→駅伝のテレビを母が消したという句である。ここからなんらかの事情を感じ取ってくださいという句で意味深である。私は何か怒りのような感情がイメージされてくるがさまざまだろう。課題としては日常性をいかに抜け出すか、また出来事ではなくモノを詠む(モノの本質)というあたりになろう。

駅伝や空につなげた糸でんわ(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
→選手とそれに関するいろいろな人々の思いが「糸電話」でつながっているという句であろう。しかしそのまま解釈しても面白く、なんらかの楽し気な気分が感じとれてきて共感を覚える。惜しいのは「つなげた」と自我が強く出すぎているところ。せめて「駅伝の空につながる糸電話」くらいに柔らかく詠んでみたい。

駅伝の空に輪を描くトンビかな(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
→中七下五があまりにも平凡なトンビの表現で惜しいがそこまで気にならない。地上の「必死な駅伝」と空中の「のびやかさ」の対比、人間と自然の対比のよく効いたスケール感ある宇宙流の句でなかなかの佳句である。平凡な語と語の関係を避けることがこれからの課題であろう。

駅伝の背中を包むアスファルト(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→これでよい。選手に道が大波のように迫っているような気分。駅伝のなんらかの緊張感の伝わる句で面白い。佳句。

駅伝や食い縛る歯の白き息(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
→中七下五のディテールに臨場感が出ている。観察の句。

駅伝や汗振り切れば春近し(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→心機一転を詠んだ句か、中七が面白い。季節や空間を広く詠んで懐の広い句である。

駅伝や広島城に冬の虹(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→広島の駅伝風景であろうか。モノを全面的に出した句で堂々として美しい。

駅伝や渡す手もとの白い息(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→中七下五の繊細な表現が魅力的な句。

駅伝のスタートライン息白し(ペンネーム「しじみ」さん 69歳)
→少々あたり前なのが惜しいが、駅伝の気分スタートの緊張感をよく伝えている。

駅伝の練習終えし冬茜(ペンネーム「めがねバーバ」さん 72歳)
→「終えて」などと素直に詠むほうが一般的であろうが、原句のように冬茜が練習を終えたともとれる句だから詩になっているともいえる。いずれにしてもなんらかの気分を「冬茜」に託して詠んでいるところがよい。

冬晴れの足音迫る駅伝かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
→「駅伝・足音」はこの句の場合つきすぎで惜しいが、駅伝を応援する気分の出た句である。

駅伝や冬青空に父母の声(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
→父母の思いや声援を胸に走っている選手の様子が目に浮かぶ。好句。

駅伝のランナー燃やす冬の空(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→少々直接的な表現が惜しく課題であるが、大胆な表現はいつでも詩の心臓である。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

寒空や線上の駅伝選手(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
駅伝や真昼の星の輝ける(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
息白し繋ぐ襷に吹きかかる(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
駅伝やお守り付けし空駆ける(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
昆布巻を夫に寄せて観る駅伝(ペンネーム「角森」さん 49歳)
駅伝の近づく背中冬の空(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
淑気満つ箱根駅伝団旗かな(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
冬青空襷が繋ぐ街と山(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
新春につなぐタスキの湯気熱く(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
駅伝ロード音降りそそぐ風冴ゆる(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
駅伝やタスキが繋ぐ滲む汗(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
駅伝の日差しくぐりて鳴れり(ペンネーム「そら」さん 57歳)
駅伝の襷の汗の重さかな(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
駅伝の繰り上げスタート走り出す(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
駅伝の古を語るカレンダー(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
駅伝や背に初東風の力うけ(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
駅伝や足音軽き寒の風(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
駅伝や歓声空にたなびいて(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
冬晴や襷外して握りしめ(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
寒風の箱根路重き駅伝か(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
明日へと襷を渡す白い息(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)

入選B

お正月駅伝を見て元気出る(ペンネーム「彩世」さん 11歳)
寒空や湯気立つわがみたすきつく(ペンネーム「悠」さん 11歳)
小春日のたすきときずな重ね合う(ペンネーム「翔夢」さん 11歳)
白い息襷手に取り掴む夢(ペンネーム「かよこんこん」さん 29歳)
駅伝見痩せた気分のテレビ前(ペンネーム「あゆみっくす」さん 33歳)
仲間との思いが詰まるタスキかな(ペンネーム「けみこ」さん 40歳)
タスキには控え選手も走ってる(ペンネーム「呉の親分」さん 42歳)
沿道の声援受ける箱根駅伝(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
汗涙染みたタスキは心の輪(和)(ペンネーム「カープ大好き」さん 42歳)
町などを結ひ襷かな春隣(ペンネーム「桜井まこと」さん 42歳)
箱根行く旅に出たなら駅伝へ(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
駅伝や年の始めのドラマかな。(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
駅伝か全国中継三賀日(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
新春の襷を繋ぐ箱根から(ペンネーム「モモ」さん 46歳)
駅伝や背を見届けし鷺も鵜も(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
北風や駅伝のメビウスの帯(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
駅伝のラジオみかん剥く広き背(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
駅伝やたすきに懸ける泣き笑い(ペンネーム「呉のカープ女子」さん 59歳)
冬街道手渡す襷熱き士気(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
「そうそうそう」箱根駅伝冬の息(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
繋げるぞたすきに宿るきずな力(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
ふるさとの期待を繋ぐ襷かな(ペンネーム「バーガー父ちゃん」さん 62歳)
駅伝で親子の絆深くなり(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
駅伝の伝をつなげて寒の安芸(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
駅伝の襷は絆重きもの(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
総合力タスキ引継ぐ駅伝で(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
寒風の出身声援熱の駅伝(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
駅伝は絆をはこぶドラマかな(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
駅伝やごぼう抜きをば夢に見て(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
駅伝や痙攣蹴とばし完走す(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
駅伝の繰り上げさせぬ権太坂(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
筋肉を蓄えて箱根駅伝(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
舞う小雪走るメロス継ぐ襷(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
風花の絡む駅伝ハーモニー(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
駅伝やじだんだ踏みタスキまつ(ペンネーム「古志清右衛門」さん 77歳)
つながるタスキ一歩目も千歩目も(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年1月12日(金)

第80回 お題「鏡餅・鏡開」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「鏡餅・鏡開」。
ユニークな句、この道場で推奨している「託し詠み」がしっかりなされた句、さまざな力作をいただきました。
それに新年ということもあってか、今回も新しい方からのご応募を沢山いただきうれしく思っています。

新しい方も増えたので、この俳句道場での方針を改めて書いておこうと思います。
この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです。
以下(1)~(4)を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

(1)原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
(2)俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
(3)仮名遣いは現在使われ将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
(4)原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句は、解釈を読者にゆだねた俳句名人らしい奥深い句で見事でした。
入賞句も、やる気を具足餅や靴の軋む音に託して詠みあげた男らしい一句でした。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「鏡餅ふるさとに落つ雲の影」(ペンネーム「あや」さん 49歳)【広島俳句名人】

正月の田舎の田園風景を詠んだ句であろう。
「落つ(終始形)」に軽い切れがあり、「ふるさとにぽつんと座る鏡餅」と「雲の影」という両者の気分を重ね見た句と解釈してもいいが、連体形「落つる」の「る」を省いた形と取るのが自然であろう。
このほうがリズム感や強さなどが出て、気分がより出ているようである。
俳句は何より韻文であるので、一句が醸し出している「気分」が感じ取れれば、文法や活用形の正しさうんぬんはあまりやかましく言う必要はないというのが私の立場。
いずれにしても「ふるさとに落つ雲の影」から感じ取れる作者のなんらかの心境・事情を感じ取りたい。
それは、何らかの決意であろうか、さみしさであろうか、ふるさとを思う気持ちであろうか。
解釈を読者の想像にゆだね、想像をかき立て、ひきつける奥深い詠みになっているところがさすがである。
「俳句は気持ちや言いたい事を直接言葉で伝えるものではない」というあたりのことがよく分かっている方である。
家の内外、鏡餅と雲の大小、動静などの対比も効いた宇宙流の一句でもある。
大賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
俳句は沈黙の芸術。モノに託して詠み、解釈は読者にゆだねる。

入賞

「新しき靴のきしむや具足餅」(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)

「具足餅」というのは、正月に鎧兜を飾って、その前に供える鏡餅のこと。
「具足餅」は「鏡餅」とは別の季語だという方もおられようが、この程度のことはまあ許容範囲であろう。
何より、実感ある世界を詠んでもらうことが大事である。
句は、切れ字の前後のモノの取り合わせが、つかずはなれずよくつりあっていて、「心機一転やるぞ!」というような気分、強い決意が見事に伝わってきて、共感を覚える。
まさに気持ちをモノに託して詠んだ「託し詠み」の一句である。
入賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募下さい!
<作句のポイント>
テーマの説明にならないモノとモノの関係性が詩を生む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・鏡餅開き差し込む子らの声(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※鏡開きの日、始業式があったのか、子どもの声が道路から響いていた様子を句にしました。
→鏡餅を中心とした日常を詠んでいるのであるが、そのまま詠んでしまってはタダゴト句になるので「差し込む」と印象的に詠んだ。そのあたりが平凡をさけたさすがの表現である。「開き」はすこし中途半端な表現。

入選句

特選

・亡き祖父の声が聞こゆる鏡餅(ペンネーム「you」さん 10歳)
→鏡餅に大好きだった祖父のイメージを重ねているのであろう。気分のよく出た句である。10才でこれだけ詠めたらたいしたものである。この方向で。次回も挑戦を!

・鏡餅夕暮に読むニーチェかな(ペンネーム「コバルトブルー」さん 32歳)
→応募句の中ではこれがいい。鏡餅にニーチェでは少し飛躍した印象であるが、日常を日常のまま詠む句よりよっぽどよい。ただし「神は死んだ」というニーチェの言葉と神に供える鏡餅の対比というような理屈で作った句とすれば浅くなる。作者の課題としておこう。

・曇天を切り裂く鏡開きかな(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→気分の出た句であるが、切り裂くは少し直接的で惜しい。というよりも鏡開きのイメメージにつきすぎなようである。そのあたりが課題であろうか。

・鏡割り横目に走る郵便夫(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→いわゆる俳味(滑稽)を感じる句である。面白いシーンをとらえた。

・鏡餅狐に化ける玉三郎(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
→全体的に理屈っぽいのが惜しいが、正月の気分を独特の切り口で伝える句で面白い。

・東京の月澄み渡る鏡餅(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
→月の季重なりというよりも、月と鏡餅の丸さの露骨な対比が少しあからさまで惜しい。しかして清々しさのよく伝わる句で気分もよく出ている。これはこれで一句であろう。正月の大きな月が美しかった。

・鏡割り地球の裂け目広がりぬ(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
→あと一歩という句である。「割・裂け」はイメージの重なりなので目をつむってでも避けなければならないところ。たとえば「鏡割り地球まだまだ広がりぬ」など。次回も挑戦を!

・掛軸の落款隠す鏡餅(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
→いいたいい発見の句である。惜しいのは「隠す」。これがしてやったりの表現なのであるが、だからこそ言い過ぎで惜しいのである。「言いたい事は俳句にならない」。ここから素材を活かして句にしたりところである。例えば「掛軸の落款ゆれる鏡餅」くらいなら詩になっている。日常を日常のまま詠んだところで詩にならないが、日常ゆれない「掛軸・鏡餅」が揺れるから詩(非日常)になるのである。参考にされたい。

・寒中の見舞いしたため鏡餅(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
→寒中見舞いと鏡餅の季重なりが気になるが、余計なことをいわず軽く句にしているところがよい。次回も挑戦を!

・仕込水汲む列長き鏡開(ペンネーム「しじみ」さん 68歳)
→少し盛り込みすぎのようであるが、酒の街らしく気分の出た句で清らかな句である。ポイントをしぼって「仕込水汲み終えている鏡餅」など。次回も挑戦を!

・鏡餅装い脱ぎて星となる(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→視聴者からの全応募句の中でもっともモダンな句である。中七が説明的でもたついているが、鏡餅を星にするとは詩人である。

・鏡餅老舗の帳場黒光(ペンネーム「吞田」さん 70歳)
→白と黒の対比はわかるが、空間の広がりに乏しく日常を日常のままよんだ平凡な句になっていいて惜しい。内外を対比させるなど攻めてほしい。次回も挑戦を!

・蝋燭に朱く頬染め鏡餅(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
→説明的なのが惜しいが、言いたい事をいわずなんとかモノに託そうとしている姿勢が感じ取れる。少女のイメージが湧き上がる少し幻想的な句である。

・父の背の向こうに大き鏡餅(ペンネーム「めがねバーバ」さん 72歳)
→父と鏡餅の関係性が平凡なのが惜しいが、大きがよく効いていてのびやかな句になっているところがよい。次回も挑戦を!

・朝粥に迫る波濤や鏡餅(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→海辺の光景であろう。この句の場合、朝粥と鏡餅が兄弟喧嘩している印象である。どちらかにポイントを絞りたい。次回も挑戦を!

・御鏡や歳時記胸に入院す(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→出来事を詠んだ句なのが惜しいが、無駄なくまとめたところが見事で慣れている。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

二歳児みかん取り合う鏡餅(ペンネーム「しののかあさん」さん 30歳)
鏡餅かかとのひび割れ比べけり(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
越えて一気に老けた鏡餅(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
貫禄が妻に似ている鏡餅(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
職員室にどっかと据わる鏡餅(ペンネーム「そら」さん 57歳)
膝小僧かさぶたをかく鏡餅(ペンネーム「コンスタンチン」さん 12歳)
ひび割れた地球は春を鏡餅(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
鏡餅ひびゆく程の夫婦かな(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
隙間から見えし結晶鏡餅(ペンネーム「三滝のべべ」さん 37歳)
病床の空打ち破る鏡割り(ペンネーム「謎の生命体」さん 37歳)
我が頬をそっと撫でるや鏡餅(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
鏡餅前を横切る黒野良猫(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
パック開け餅出す鏡開きかな(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
鏡餅下げてできたる隙間かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
鏡餅白白明けに列車消ゆ(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
鏡餅猫と添い寝の焼け畳(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
鏡開の揚げ餅を食む園児五人(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
鏡餅お椀の中で笑み映す(ペンネーム「やっちゃん」さん 58歳)
鏡開き母のぜんざい描く味(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
鏡餅五百羅漢の隅っこ(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
縁側でカビ取る母の鏡餅(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
鏡餅夫のうたた寝独楽ひとつ(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
球春に夢を託して鏡開き(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
鏡餅開けば小餅の転げ出る(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
戌年も夫婦円満鏡餅(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
竹はじけ真っ赤な頬の子鏡餅(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
眠らない街のモニター鏡餅(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
床の間の三方に載る鏡餅(ペンネーム「古志清右衛門」さん 77歳)
境内にエイッセイッ響く鏡餅(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)

入選B

・鏡餅今年は一層早いひび(ペンネーム「大山悠人」さん 15歳)
・鏡開き来る頃には体重が(ペンネーム「けいとる」さん 18歳)
・鏡餅開き差し込む子らの声(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
・あちこちで蜜柑ころころ鏡餅(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・おやつ時いつ食べれるの鏡餅(ペンネーム「けみこ」さん 40歳)
・プラモデルお年玉から鏡餅(ペンネーム「犬蔵の王」さん 42歳)
・鏡餅浮世絵描く年の頃(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・パック開け餅出す鏡開きかな(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・鏡開きこれがオカンの底力(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・我が腹とどちらが立派?鏡もち(ペンネーム「たるみ」さん 49歳)
・鏡餅七日過ぎたらリサイクル(ペンネーム「なお」さん 50歳)
・今年こそ思うばかりの鏡開き(ペンネーム「アルパカ」さん 53歳)
・鏡餅日々の数だけ幸願う(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・鏡餅パックのおもちは味気ない(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・鏡餅無病息災梅香る(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・ひと年の餅食べ尽くす鏡割(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・鏡餅割られて焼かれ肉となる(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・黴るまでじっと待つ日々鏡餅(ペンネーム「西尾良二」さん 59歳)
・鏡餅目鼻をつけて雪だるま(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・平成の鏡開きは蓋開ける(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・鏡餅持参の人が妻となり(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・孫の手は鏡餅よりお年玉(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・鏡餅プラスチックの香りする(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・スクランブル人波もどり鏡割(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・おしるこをお裾分けして鏡餅(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・わが家にも神の宿って鏡餅(ペンネーム「グリーン マウス」さん 69歳)
・鏡餅試行錯誤に飾りをり(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・小なれど一人前や鏡餅(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・鏡餅障子に穴の置き土産(ペンネーム「音爺」さん 71歳)
・鏡餅くずす子ら母小豆炊く(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・二段腹一年の計ストレッチ(ペンネーム「かっちゃん」さん 72歳)
・好走の歳時記駅伝鏡餅(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・ひび割れし向き変えつつや鏡餅(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・鏡餅割る我が指もひび割れし(ペンネーム「くみ婆ば」さん 79歳)
・鏡開きは知るまいに百八つの夢(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)
・弾き初めは身を引きしめる鏡餅(ペンネーム「楽弓」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年1月5日(金)

第79回 お題「福袋」(選と評 谷村秀格先生)
総評

あけましておめでとうございます。
皆さまのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
本年も俳句道場をよろしくお願いします。

さて、今回のテーマは「福袋」。
新年にふさわしい楽しいお題でした。
それに最近毎回のように、新しい方からのご応募がありうれしく思っています。

言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠む「託し詠み」。
それによって、理屈・説明の句から、「感じてもらう句」に、シフトチェンジする。
そして、句から感じ取れてくる豊かなイメージ(宇宙)に心たゆたわせる。
これがこの道場で身につけてほしい俳句観(宇宙流の俳句観)であります。

大賞句は、ユニークなでしたが、街や人々そして楽しさが感じられる明るい句で見事でした。
入賞句も、正統なる「託し詠み(モノに託して詠む)」の句で美しく品のある一句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「福袋そごう三越福屋かな」(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)

なんとも華やかな響きの句である。
「福袋」だけにいろいろ言いたくなるのであるが、この句、余計なことを一切いわず、「福袋」と「デパート」に絞って象徴的に句に仕立て上げた手腕に脱帽である。
というよりも無意識からの作句であろう。
それぞれのデパートの個性ある売り場の風景がつぎつぎと浮かんでくるようであるし、いろんな福袋を下げて街を歩いている人々、街の華やかさや行き交う人々の笑顔までもが目に浮かぶようである。
新年の広島の賑やかさ景気のよさ華やかさを「モノに託す」ことによって、象徴的に描いた一句。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
俳句に技法も勉強も必要ない。
無意識からの作句を心掛ける。

入賞

「茜空並びつづける福袋」(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)

「茜空」は茜色の空のこと。
福袋の句であるし、朝の空のことであろう。
「並びつづける」のが、早朝から店の前に並んでいる人々とも、店内に並んでいる「福袋」ともとれるが、両方にとっていいであろう。
こういう解釈ができるのが俳句の懐の深さでもある。
いずれにしても「待ち切れなさ・ワクワク感」を直接述べずに、明るい昼に向かってゆく「茜空」やパンパンに膨らんだ「福袋」に、託して詠んでいるところが上手い「託し詠み」の佳句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募下さい!
<作句のポイント>
モノに託すことで、大小の対比、色彩美、時間性、などが自然に生じてくる。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・福袋何度も開くエレベーター(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※喧騒と期待感。今年もよろしくお願いいたします。
→少し「福袋・エレベーター」の関係性がやや近いが、期待感を上手くモノに託している。今年も名人らしい俳句を!

・東方のあけゆく空や福袋(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※年明け、福袋を買いに並んだ人々の様子と福袋への期待を句に込めました。
→「東・あける・空」の関係系がやや近いが、期待感が上手く感じ取れる託し詠みの句である。今年も名人らしい俳句を!よろしくお願いします。

入選句

特選

・福袋重し街路を抜ける僧(ペンネーム「コバルトブルー」さん 32歳)
→俳句の心得のある方の句であろうか。なかなか手慣れている。作者の意図では僧が福袋をもっている様子のようだが、重しで切れているので、店外で福袋の重たさを散じている作者の前を颯爽と僧が去ってゆくような光景がイメージされてくる。いずれにしても私見では重しがどうにも主張が強すぎる。また福袋ともありきたりの関係である。むしろ「福袋街路を抜ける美僧かな」くらいで詠みたい。このほうが僧のさわやかさが増して非日常的な句になりそうであろう。

・福袋笑顔駆け出す正社員(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→店内の雰囲気がよく伝わる。しかして福袋と社員ではイメージが近く、日常を日常のまま詠んだ句になってしまっているようで惜しい。日常を詠む場合はそこに批評精神がほしいのである。託して詠む方向はよい。

・福袋覆いかぶさる波しぶき(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→俳句は書かれたままを味わえばよい。それが豊かなイメージを導いているかどうかが大事である。この句、人が福袋に襲い掛かる比喩だとすると陳腐であるが、福袋に実際に波がかぶさる実風景か心象風景N取ればなかなか豪快で迫力を感じる句である。葛飾北斎の富岳三十八景の神奈川沖浪裏がイメージされてくる。

・福袋幸せの町やって来る(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
→この方は「うれしい・おいしい・かなしい・たのしい」など気持ちをつい直接言葉にしてしまうのが惜しいのであるが、この場合は成功している。なにかしらのメルヘンチックな気分があたたかい。

・スニーカー静かに並ぶ福袋(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→開店前の行列に並ぶ人々の緊張感のようなものを詠んだ句であろうか。実際の風景なのかもしれないが、どうも「スニーカー・静か・福袋」のイメージのつりあいがちぐはぐで惜しい。そのあたりを整理してほしいところである。

・福袋跡かたもなき流星(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
→上手い方なのであるが、この句は言いたいこと「跡かたもなき」を言ってしまったのが惜しかった。こういうところをモノに託してみたいのである。「福袋影だけのこる流れ星」など。

・ピノキオのあやつる糸や福袋(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→あやつり人形となって買い出しに出かけたという様子を詠んだ句であろうか。「いいなり」というのをなんとかモノに託そうと詠んでいるところがいいが、「ピノキオ・あやつる」はつきすぎ(イメージの重なり)で惜しい。「ピノキオの糸のもつれや福袋」などでは如何。

・福袋死角に座る冬将軍(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→作者によれば福袋が季語でない歳時記もあるので冬将軍という季語を入れたとのことだが、私見では俳句で大事なのは辞書的に季語か無季かということではなく一句全体の芸術性。この句の場合、やはり季重なりのイメージが気になり惜しいが、福袋のプラスイメージの句が多い中、なんらかののっぴきならない事情を伝えている句のようで面白い。

・青い目の女子も並ぶや福袋(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
→留学生を詠んだ句であろうか。外国の方が日本文化を楽しんでいるような和やかな雰囲気があたたかい。しかして全体的に日常を日常のまま詠んでいるので物足りなさが少し残る。日常を詠む場合はそのまま詠むのではなくそこに批評精神がほしいのである。「青き目の女の影や福袋」たとえばこれくらいに詠まむと句に非日常性が生じる。

・海すべる大きな船や福袋(ペンネーム「ありんす」さん)
→海・大きな・舟、このあたりの言葉の関係性が安易なところが惜しいが、日常の光景の中に、夢で見るような宝船の風景を見た句のようで面白い。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

初売や大つづらなる福袋(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
初買いや福袋開く紙の音(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 45歳)
車椅子取っ手下がる福袋(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・福袋椅子にもたれてひと休み(ペンネーム「角森」さん 49歳)
・福袋形とどめぬ社員証(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
色サイズ母娘寄せあう福袋(ペンネーム「雅「みやび」」さん 54歳)
・福袋冬将軍のおきみやげ(ペンネーム「あおいそら」さん 55歳)
・駄菓子屋に並ぶ小さな福袋(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
お気にいり欠けてる笑顔の福袋(ペンネーム「りんの」さん 57歳)
覗いたり破いて見たり福袋(ペンネーム「西尾婆翔」さん 59歳)
・百貨店一億円の福袋(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
・福袋廃線間近汽車をまつ(ペンネーム「9月の雨順子」さん 61歳)
・手をひいてちょっと大きめ福袋(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・ベートーベン第五聞こえる福袋(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
・かき分けてかき分けてゆく福袋(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・福袋また福袋店はしご(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・恋人の両手をふさぐ福袋(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・福袋の重み知る始めの手(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

入選B ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・福袋福がこぼれて笑み残る(ペンネーム「にぃ」さん 19歳)
・福袋買っときゃよかった隣のを(ペンネーム「寒い日はだらだらしたい」さん 27歳)
・福袋子どもも欲しいな私たち(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
・福袋ブランド物が大当たり(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
身の丈に合うた幸せ福袋(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・福袋浮かぶは雀の葛籠なり(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
・白い息夢が膨らむ福袋(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・開けるまで夢が膨らむ福袋(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
新年のエネルギー満ち福袋(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・福袋ハンター運を手でつかむ(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
電車賃取り戻したい福袋(ペンネーム「西尾良二」さん 59歳)
・縁起もの夢は大きな福袋(ペンネーム「安田蝸牛」さん 61歳)
・福袋両手に抱え夢一夜(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
断捨離を標榜するも福袋(ペンネーム「のんちゃん5」さん 67歳)
・体力で狙は一つ福袋(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・福袋相思相愛千に三つ(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・福袋中身のみえぬ戦利品(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
事始め店店回り福袋(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・福袋今年の運を使ったか(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・福袋世界一周古希の夢(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・福袋海老で鯛釣る恵比寿様(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
争わず敢て小さき福袋(ペンネーム「めがねバーバ」さん 72歳)
似合う娘の手に届きたい福袋(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・福袋大地引き摺るやじろべえ(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
今時や吊るして見せる福袋(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
1年の夢はち切れそうな福袋(ペンネーム「tokusann」さん 83歳)
我れ先に押し問答の福袋(ペンネーム「天然法師」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年12月15日(金)

第78回 お題「クリスマス(聖夜など)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「クリスマス」。
久しぶりの文字だけのお題でした。
こういう時は、クリスマスに思いを凝らしたり、思いっきり飛躍したり、のびのびと自分の世界を詠っていただければと思います。
何より今回は新しい参加者のお名前もたくさん見受けられて光栄でした。

大賞句は、意外なモノの選択でしたが、ユニークかつイメージの広がる句になっており見事でした。
入賞句も、綺麗な「託し詠み(モノに託して詠む)」の句で、印象的なものした。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、入選Bに入らなかったもの。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!
「なお、次回放送は2018年1月5日(金)です」

大賞

「それぞれの聖夜奏でる食洗機」(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)【広島俳句名人】

句にならない語はない、句にならない語と語の関係があるだけである。
「食洗機」が出てきたことで面食らう方もおられるかもしれないが、そんなことはない。
大事なのは、何が詠まれてあるかではなく、それがどういう効果を上げているか、である。
「聖夜・食洗機」、このようなモノの選択の場合、楽しかった「聖夜」の後の日常的な「食洗機」であるから、さみしさのようなもの。
あるいは、非日常の華やぎから日常へ戻ったむなしさのようなもの、がイメージされてくるものなのであるが、そうではない。
むしろ、いつまでも続く楽しさの余韻のようなものが感じ取れてくる。
それは作者が「モノに託して」詠んでいるだけでなく、「それぞれの→聖夜→奏でる→食洗機」と「モノを動かしている・ありきたりの語と語の関係を避けている(フレーズの変容)」からにほかならない。
これが、単にモノを並べるのと、「動かす(フレーズの変容)」の違いである。
いずれにしても、「それぞれ」の家庭での「聖夜」、その楽しさを、「食洗機の奏でる音」に託して印象的に伝えてあるところが見事で共感を誘う。
俳句名人らしいずば抜けた一句である。
大賞おめでとうございます。次回ぜひご応募ください!
<作句のポイント>
ありきたりの語と語の関係を避ける。

入賞

「靴並ぶ学習塾の聖夜かな」(ペンネーム「めがねバーバ」さん 72歳)

「聖夜」の「学習塾」を詠んだ句で明瞭である。
句からはまずもって、「聖夜」真剣に勉強する子どもたちの「静けさ」が美しく感じ取れる。
この「靴並ぶ」というこの整然としたイメージがよく効いていて、子どもたち、ひいては「聖夜」の街そのものの「澄み切った気分」をよく伝えていて共感を誘う。
変わった表現をしているわけではないのだが、語と語の織りなす関係性が実に美しいイメージを引っ張ってきている「聖夜」の気分のよく出た透明感あふれる見事な句である。
俳句は表面で何かをするものではないといういい見本のような句でもある。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募下さい!
<作句のポイント>
日常を詠みつつ、非日常を表現する。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・ポッキーのクルクル廻るクリスマス(ペンネーム「あや」さん)
※昔はクリスマスにポッキーを買ってコークハイを混ぜるというのが青春だったのですよ
→いずれにしても象徴的によんであり中七の調子で楽しい気分が伝わり共感を誘う一句である。。

入選句

特選

・銅像のはにかむ空やクリスマス(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→クリスマスのなにがしかの気分を伝えている。モノに託して詠むこの方向でよい。

・黒猫の耳の毛白しクリスマス(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→「黒・白」が意図的・作為的で惜しいが、「クリスマス・猫」でその気分を伝えていて上手い。俳句は何かを伝えるものではない、ということが分かってきただけでも進歩であろう。

・クリスマスクレヨンで塗る夜の街(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→全体的につきすぎの印象ではあるが、中七から下五にかけての心情表出が充分で、気分のでた句である。少し屈折した心情の句であろうか。若々しい句である。

・クリスマス烏の瞳は時計台(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
→こういう句のよさが全く分からないという方は意外に多いが、「クリスマス、烏の瞳が時計台を向いている、そこになんらかの感情移入をしている作者の事情」を感じ取ればよいだけである。何らかの満たされぬ思いのようなものが感じ取れてきて同情する。

・聖夜来て単身赴任の夫帰る(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→「亭主元気で留守がいい」という言葉があるが、「聖夜」にひょっこり帰ってきた「夫」への恨み節か。これはこれで俳味のある一句なのであるが説明的なので、「聖樹の灯単身赴任の夫帰る」などとしてみてもよい。このようにモノをデンと据えると句がイメージ豊かになる。この句の場合、ユニーク俳句から一転「愛の句」になる。

・クリスマス街の匂いのエアメール(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→カナダの娘さんからの手紙を詠んだという。少し類想が多そうなのが気になるが、大変気分の出た句で、この方向でいい。

・カーテンの隙間こぼれる聖夜かな(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
→なるほど、こう詠まれてみると、聖夜はきちんと聖夜を感じようとしているところにこそあるものだということを思い知らされる。いうなれば、事実ではなく真実を射止めた句。納得。

・闘病の犬まとわりつくクリスマス(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→これでいい。中七のリズムをなにかしらに整えればいい。「犬・クリスマス」ではあたり前だが、「闘病の犬」を詠んだから詩になった。日常を詠む場合は固定概念にとらわれず、このように批評精神をもって詠むべきである。ご家庭の犬であろうか。回復を祈念します。

・ソプラノが森駆けてゆくクリスマス(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→俳句は何らかの気分が出せておれば意味などはどうでもよいのであるが、その見本である。無意識からの実感を忠実に詠んだ句である。ただし「が」だと全体が説明的になるので軽い切れとのとれる「の」の方がよい。

・聖樹灯や小児科棟の夜明け前(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→「夜明け前」とは実体験を詠んだ句であろうか。それがよく効いていて、句に並々ならぬ非日常性を与えている。この句が惜しいのは、「灯・明」とイメージが重なっているところ。せめて「聖樹ゆれだす小児科棟や夜明け前」くらいにしたい。

・配達の路地に舞い込むクリスマス(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
面白い詠み方である。しかしてクリスマスの豊かで楽しい気分をよく伝えている。この方向で。

・瞬かぬ電飾まじる聖夜かな(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
→発見の句である。「まじる」は少し言いすぎなので「もある」くらいか。この塩梅がつかめるようになっていただければ進歩である。

・クリスマスイブ深々と星零す(ペンネーム「ありんす」さん)
→「イブ・星」は固定概念の範疇を出ておらず惜しいが、さらりとモノに託して詠んで見せたところは上手い。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

眠る子の静かな夜にサンタ飛ぶ(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)
・雪乗せて車到来クリスマス(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
・聖夜来て明日の夢みる子供たち(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 36歳)
・幼子の笑みに佇むサンタかな(ペンネーム「ポケっち」さん 39歳)
・クリスマス街を彩る子供達(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・星満ちて笑顔こぼるるクリスマス(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・クリスマス曇りガラスの向こう側(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・テーブルを笑顔で囲む聖なる夜(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
宝石の降るあたたかき聖夜かな(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・クリスマス聴こえしビング・クロスビー(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・地下街の黒人霊歌聖夜かな(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
星空とトナカイ探す聖夜かな(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
十四万球天地を照らす聖樹かな(ペンネーム「ヨシ整体」さん 59歳)
シャンシャンとお寺の屋根にもサンタ来る(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・クリスマスカレー掻っ込む受験生(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・大通りの肩押され合う聖夜星(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
・独り居の友に客ありクリスマス(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・協会が見守る町やクリスマス(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
仏壇にケーキ供えるクリスマス(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
孫たちの満面の笑みクリスマス(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・薄闇の街路に映える星聖夜(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・指長き子等に夢有り聖夜かな(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・聖夜来る星と交信天主堂(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
・窓明かりかすかに聞こゆ聖夜かな(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
何処にか自爆テロあり聖夜かな(ペンネーム「古志清右衛門」さん 77歳)

入選B ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

サンタ待つこどもの瞳電飾に(ペンネーム「ゆきんこ」さん 32歳)
・火照る頬窓をも曇らすクリスマス(ペンネーム「三滝のべべ」さん 37歳)
ただいまとスーツ姿のサンタさん(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・クリスマス夜空に煌めき増してけり(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・クリスマス想い出だけが詰まっている(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
・寝息聞きそっとしのばす靴下へ(ペンネーム「ぶー子」さん 44歳)
月並みなプレゼント交換クリスマス(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
子の寝顔横目にそろり親サンタ(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
怪我しても今年の聖夜は最高で〜す♡(ペンネーム「BABAちゃn」さん 46歳)
クリスマスケーキの空き箱を潰す(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・オーブンに火照る頬杖クリスマス(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・雑貨屋のそっくりそのままクリスマス(ペンネーム「雅「みやび」」さん 54歳)
レジかごに高価なシャンプークリスマス(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
・クリスマスサンタ来てねと手紙書く(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
子へ贈る赤いマフラー聖夜待つ(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・子の願い空に届けよ聖夜の灯(ペンネーム「もり」さん 57歳)
・クリスマス君の寝顔はもう笑顔(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・クリスマス手ぶらのパパは手酌酒(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
まだかなぁ母子で待ってるパパサンタ(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
家々が電飾競うクリスマス(ペンネーム「バーガー父ちゃん」さん 62歳)
ひとりぼっち連れて帰ってクリスマス(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・クリスマス夫婦早めの薬風呂(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
再会は流星群の降るイブに(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
来るを待つ歳は老いてもクリスマス(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・幼子のお手紙受けてクリスマス(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
腕まくるエプロンの婿クリスマス(ペンネーム「しじみ」さん 68歳)
・イブの夜ケーキも無しに一人酒(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
孫の夢おもちゃ屋そっとクリスマス(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
高英男雪降る町を聖夜なり(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
折込で押しかけて来るクリスマス(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
・サンタの訪い絶えて久や老夫婦(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
ジングルベルケーキ片手の家路かな(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)
何億のサンタと金舞うクリスマス(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
妻病みて我も老いけりクリスマス(ペンネーム「呆け人」さん 77歳)
・クリスマス1日だけのキリスト狂(ペンネーム「tokusann」さん 83歳)
曇るメガネラーメン一杯ホワイトクリスマス(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)
・反射した聖夜のネオン足を止め(ペンネーム「松中加代」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年12月8日(金)

第77回 お題「宝くじを買い求める人々(動画をみて)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは宝くじを買い求める人々(動画をみて)」。
「10億円を夢を見る」思いのつまった句がたくさん寄せられました。
しかし、俳句は「言いたい事が言えない」詩。
つまり、ココロ「夢見る」を、コトバ「夢見る」で表現できない詩なのです。
ココロ「夢見る」を、言葉で直接いわずどう皆さんが「モノに託して」気分を伝えるか。
それが今回クリアしていただきたかった大事なポイントでした。

句を一覧でご覧いただければわかりますが、特選以上に「夢」はありません。
入選以下は「夢」ばかりです。
どなたも入賞句や特選を選評とともに見ていただければ幸いです。
今回ほど、俳句がどういう詩なのか、ありありと分かる回はないでしょう。

この俳句道場で、動画から詠む場合のポイントは原則3つあります。
1. 動画から安易に飛躍せず、作者と動画が一体となって詠まれていること。
2. 動画の気分が出ていること。
3. 作者の解説や動画なしに句を詠んでも、詩として成立(自立)していること。

大賞句は、ココロ「当選への希望や悲観」を、「懐に抱く冬の空」に託して伝えてあり見事でした。
特選は原則、動画の気分を上手くとらえたもの・飛躍しているものに関しては芸術性の高いもの。
入選Aは原則、動画の気分を伝えるが、直接表現が気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句、句の自立「上記3」が弱い句。
選外は、飛躍のしずぎ、気分に乏しいもの。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「宝くじ懐に抱く冬の空」(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)

私の師も言っていたことだが、『俳句の一番の特徴は「短さ」で、「定型」や「季語」は短さを補完するもの』、私も同感である。
俳句は「短い」ので、必然的に「言いたい事が言えない」「一で多を表現する」「言外の意味に頼る」ことになる。
ココロ・出来事・気持ちを「モノに託して」表現する。
そのために言葉を、散文的・論理的・文法的な領域を越えて、フルに働かせる必要がある。
日本に住む人々は「俳句」によって、日本語を追い詰めているのである。
巷の俳句の先生方は「俳句における日本語の美、季語の意味やすばらしさ、文法的知識」を語るのであるが、俳句形式そのものはそのような「あまい世界」をとうに通り越しているものなのである。
そして、句であるが、心に浮かんだ「期待と悲観の入り混じった気持ち」を、コトバで「宝くじ買う期待と悲観の冬の空」などと直接詠むことなく、「宝くじ・懐・冬の空」に託し、その気分を醸し出しているところが上手い。
さらに言えば、俳句では「対象を詠むことが私を詠むこと」なのであるが、動画の中の人物と一体となっているような詠み方も素晴らしい。
よくあるのは、私(実感・一体感)がないのに対象を詠もうとするから、句にならないのである。
俳句の手法がよくわかってきている方で将来が楽しみである。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
ココロに浮かんだ言葉をそのまま俳句の言葉にせず、モノに託す。

入賞

「ジャンボくじ並ぶみんなの息白し」(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)

よい切り口の句である。
季語「息白し」に託して動画の気分や季節感、そして高揚感・期待感がよく伝わる。
やや俳句慣れしていないようなリズム感であるが、古今の名句を詠まれ、自身の句を「舌頭千転」されればこれくらいはすぐによくなるであろう。
<作句のポイント>
ココロに浮かんだ言葉をそのまま俳句の言葉にせず、モノに託す。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・宝くじ売り場の猫や春招く(ペンネーム「あや」さん)
※招き猫がいるなあと思って詠んだ句。
→「招き猫」か動物の「猫」かぼかして詠んでいる詠み方がユニーク。

・大空へコート膨らむ宝くじ(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※コートが膨らむように宝くじの夢が空のように大きくひろがる事を句にしました。
→期待感を直接詠まずモノに上手く託して詠んである。「宝くじ・大空」の「小・大」の対比のよく効いたひろがりある宇宙流の一句である。

入選句

特選

・ジャケットの懐ぬくし宝くじ(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
→道場で力をつけている十代の方。ココロ「わくわく」をコトバ「わくわく」と直接詠んでいないところがよい。問題は「ジャケット・懐・ぬくし」のつきすぎ(イメージの重なり)。自己添削してみるとよい。

・寒空やくじ売り場には招き猫(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→ココロ「あやかりたい」をコトバ「あやかりたい」とせず、モノ「寒空・招き猫」に上手く気分を託して詠んでいるところがよい。普段はあまり気に留めない「招き猫」であるが、こういうシーンでは気になるのが人情である。

・宝くじ売り場に浮かぶ冬の虹(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→ココロ「期待と悲観」をコトバ「期待と悲観」とせず、モノ「冬の虹」に託して詠んでいるところが上手い。この方向で。

・宝籤買う列進む師走かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→作者は俳句形式がよくわかっている方なのであるが、伝統的な詠み方にどっぷりつかっているようで、どうしても素材が平凡・月並みになってしまう。それを抜け出すことがここでの課題である。日常を詠む場合はそこに批評精神がなければならない。それがアドバイスである。

・宝くじ窓にいすわる招き猫(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「俳句は何かを言うものではない」「モノを二つ並べるとそれだけで気持ちが出せる」ことをよくわかっている方である。読者のイメージを掻き立て楽しませる詠み方である。

・宝くじポケット詰め込む冬銀河(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
→定型というのは日本語の生理に従った詩の「バネ」なので、意味が通ること・伝わること(散文の論理)を優先して非定型に崩すのはよくない。この方向でいい。しかしてこの句の場合、中七がやや窮屈なので、「宝くじ詰め込んでいる冬銀河」くらいにしたい。気分やムードが出せているのなら窮屈にせず定型のバネを活かしシンプルに詠むほうが自然である。「舌頭千転」、「宇宙流は自然流」である。

・宝くじに並ぶ背中やしぐれ虹(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→だんだん俳句の世界に入ってこられた印象である。俳句で大事なのは「説明して伝えること」ではなく、「句の世界をただ感じてもらうこと」である。その意味からすれば「に」が不要である。「宝くじ並ぶ背中やしぐれ虹」、この一文字の有無によって「背中を説明した句」から「宝くじ・並ぶ背中・しぐれ虹」の織りなす事情・気分を「感じとる句に激変する。

・年の瀬にくじ買う人や招き猫(ペンネーム「音爺」さん 70歳)
→どことなく平凡なところが惜しいが、定型の力を分かっている方である。詠み方などというより「映像と一体となる・批評精神をもつ」このあたりが課題であろう。

・ジャンボくじぬくもりひとつ師走かな(ペンネーム「成智さと子」さん 70歳)
→面白い詠み方である。「ぬくもりひとつ」が直接表現のようでそうではない。「ジャンボくじ」を楽しんでいる気分がよく出た句である。この方向でよい。

・ジャンボ籤十億円の寒さかな(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→「ジャンボ籤・十億円」がつきすぎ(イメージの重なり・近い関係)で惜しいが、「十億円の寒さ」というユニークな把握が生きた句である。十億を夢見て買うが、当たると人生が激変するという話もよく聞く。そのようなこともイメージされ意味深である。

・宝くじ売り場に列す十二月(ペンネーム「ありんす」さん)
→平凡な句のようであるが、「十二月」という収め方がキリリとした若々しさでよく効いている。いわれてみれば「年の瀬・暮・冬」は「宝くじ」の句にはむしろありきたりな印象である。このような言葉の選択に進境が見られる。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・着ぶくれて夢に並ぶや十億円(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)
・悴む手擦りて向かう夢売場(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・暮れのくじ大団円を空にみる(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・胸ポッケに夢膨らませ冬ジャンボ(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
エコバッグの中並んで買った宝くじ(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
夢買いに目の前に立つ白髪かな(ペンネーム「角森」さん 49歳)
・宝くじ冬日透かしてマイホーム(ペンネーム「雅「みやび」」さん 54歳)
・冬帝の行列の空夢のくじ(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
日本中ゴールドラッシュの師走かな (ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
眠らずに見る夢高し年の暮(ペンネーム「西尾婆翔」さん 59歳)
家建てる夢や霜夜のジャンボくじ(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・十枚の宝くじ手に年納め(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・ジャンボくじ計画立てて列並び(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・寒風に宝くじ買う夢ふうせん(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・着ぶくれて夢買いに行く宝くじ(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・冬銀河年末ジャンボぱんどらへ(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
カバンからサマージャンボや冬温し(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・冬の夜に流れる星や宝くじ(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・列寒し僥倖あるや宝くじ(ペンネーム「明生(めいせい)」さん 71歳)
・宝くじ夢が膨らむ師走かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・ポケットに大きな夢や年の暮れ(ペンネーム「めがねバーバ」さん 72歳)
・年の瀬に長蛇の列や宝くじ(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・年の瀬の夢ささやかに宝くじ(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・寒風に夢買う列やジャンボくじ(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・ジャンボくじ一の小窓の群千鳥(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
マイホーム夢見て並ぶ年の暮れ(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
なけなしのボーナスつぎ込む宝くじ(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)

入選B ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・紙切れに並ぶ人込み未来ある(ペンネーム「舞ピョン」さん 17歳)
ハレの日に舞うやちりぢり紙吹雪(ペンネーム「じぇぴお」さん 24歳)
今度こそ諭吉舞う舞うおおみそか(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・年の瀬の夢思いきれずにバラ10枚(ペンネーム「ままここ」さん 40歳)
・やって来た年末ジャンボに魅せられり(ペンネーム「HK」さん 41歳)
運任せ天の神様宝クジ(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
前の列当たりそうだな宝クジ(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
ボーナスで夢を買うや宝くじ(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
籤運で全てを無駄に冬紅葉(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
気合い入れ三億当てる列ならぶ(ペンネーム「こたつでみかん」さん 45歳)
・懐の願いはひとつ我先に(ペンネーム「しゅうまっは」さん 45歳)
・元旦の厚き新聞もどかしく(ペンネーム「脳トレ4回息子の母」さん 47歳)
ぼんやりと願うは3等年の暮れ(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
・年の瀬の世相を映すくじ売場(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・煤払い年末ジャンボで夢招く(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・宝くじ当たらないかと運試しー(^o^)(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
ぬっくぬく宝くじより猫を飼う(ペンネーム「魔女っ子ひーちゃん」さん 55歳)
買う人も皆忙しげに12月(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
夢かなえハワイ旅行冬の朝(ペンネーム「もり」さん 57歳)
・宝くじ夢への切符を買う十枚(ペンネーム「りんの」さん 57歳)
・年の暮れ当たっておくれ宝くじ(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
夢いだき心幸せ暖かい(ペンネーム「くまさん」さん 59歳)
・凩や金の財布に夢を飼う(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
・大晦日までのひと月大富豪(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
家くるま夢が広がる宝くじ(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・大晦日現に返る夢追い人(ペンネーム「バーガーとうちゃん」さん 62歳)
財布見てコインばかりで凍てつく手(ペンネーム「パタパタ親父」さん 63歳)
・大晦日夢見て並ぶ七億円(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
有り金を財布に詰むる冬の陣(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・年末ジャンボどうせ夢でも10億円(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・寒風に列して夢をわしづかみ(ペンネーム「不思議の国の兎」さん 66歳)
・初夢やまた来年もくじ任せ(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
はや地球眼下年末ジャンボ買ふ(ペンネーム「しじみ」さん 68歳)
・宝くじ一獲千金初夢に(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・年の瀬の夢は宇宙へ宝くじ(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・宝くじ寒さも夢のコート着て(ペンネーム「さくら」さん 71歳)
楔して年末ジャンボ七年目(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・くじ買うてせめて夢でも年の暮れ(ペンネーム「呆け人」さん 77歳)
十億に化ける300円習う(ペンネーム「ワイ」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年12月1日(金)

第76回 お題「パレード・カープ優勝パレード」(選と評 谷村秀格先生)
<谷村秀格(たにむらしゅうかく)プロフィール>

句の「スケール感」や句の背後の「詩情の広がりや深さ」を重要視する『宇宙流俳句』のパイオニア。『宇宙流俳句会』主宰。1976年広島県東広島市安芸津町木谷生まれ、同町在住。句歴26年

総評

今回のテーマは「パレード・カープ優勝パレード」。
タイムリーなお題で、「カープ優勝パレード」に駆け付け詠まれた方、テレビ放送をご覧になって詠まれた方がほとんどだったようです。
よって選句基準も従来の動画で詠む場合と同様とさせていただきました。

何より「カープ俳句」ということで、句数も多く、応援や感謝の気持ちのこもった句を沢山いただきました。
よって、従来より若干、特選句・入選句の掲載を増やしました。

この俳句道場で、動画から詠む場合のポイントは原則3つあります。
1. 動画から安易に飛躍せず、作者と動画が一体となって詠まれていること。
2. 動画の気分が出ていること。
3. 作者の解説や動画なしに句を詠んでも、詩として成立(自立)していること。

大賞句は、パレードの気分を華やかに伝える一句でした。
入賞句は、選手たちへの気分をうまく季語に託して詠んだものでした。
特選は原則、動画の気分を上手くとらえたもの・飛躍しているものに関しては芸術性の高いもの。
入選Aは原則、動画の気分を伝えるような句。
入選Bは原則、思いがやや先行しすぎた句、句の自立「上記3」が弱い句。
選外は、飛躍のしずぎ、気分に乏しいもの。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!
来期もともにカープ日本一を願って応援してゆきましょう。

大賞

「Vパレード六十万の紅葉ふる」(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)

カープの優勝パレードの「気分」がよく伝わる句である。
事実としては、平和大通りは、「紅葉」というよりは、銀杏などの黄葉のイメージである。
しかして、作者の心には、カープの赤やカープへの燃える思いが「紅」となって迫ったのである。
以前にも申し上げたが、俳句は「事実を詠むことではなく真実を詠むこと」、そして「正しさよりも気分が出ていること」が大事である。
その意味で「詩」として全く問題ないし、むしろこれこそが「詩」なのである。
「気分」という意味では「紅葉ふる」も見事である。
普通の感覚では「紅葉散る」である。
しかし、これだと「無残・さみしげ」なイメージでもある。
「紅葉ふる」のほうが、落慶法要などで撒かれるきらびやかな散華のようなイメージで、おめでたく明るい。
この動詞の選択も「気分・実感」からであろうが、見事に成功している。
「カープ優勝パレード」の賑やかで楽しくおめでたい「気分」がイメージされてくる一句です。
おめでとうございます。
<作句のポイント>
俳句は詩。事実ではなく真実を詠む。正しさではなく気分が出ることを大事にする。

入賞

「パレードの生まれるところ神渡し」(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)

「神渡し」は陰暦10月に吹く西風。神々を出雲に運ぶ風とされる。選手の神々しさなどの気分の感じ取れるなかなかの句である。
少し惜しいのは「ところ」抽象的に詠んでいるところ。
俳句はモノに託して詠む詩なので、「生まれる道や」などと具体的に詠んだほうがイメージが湧きやすい。
入賞おめでとうございます。
次回もせひご応募下さい。
<作句のポイント>
つりあった季語を詠む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・パレードや空まで続く紅葉川(ペンネーム「あや」さん)
→平和大通りが赤に染まる気分を詠んだ伸びやかな句である。

・パレードや大動脈の騒ぐ秋(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※カープ優勝パレードに血が騒ぐ様子と街の大動脈の平和大通りが騒ぐ様子を詠みました。
→パレードでのドキドキ感というか高揚感を大胆に表現した一句。

入選句

特選

・冬ざれや遠ざかるカープパレード(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
→「冬ざれ」は寂しい冬の風物の様子。この季語の選択というよりも 安易な倒置が惜しい。リズムが悪い。私なら素直に「冬ざれやカープパレード遠ざかる」とする。何度も申し上げているが俳句は上手さではなく無意識からこみ上げてくるものなのである。

・パレードの過ぎゆく空や残り菊(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→パレードの賑わいではなく余韻の句か。詠み方は悪くないが、パレードのシーンからすると、賑わいを詠む方が気分が出そうである。

・優勝パレード笑顔はためく空の青(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
→「笑顔はためく」これがよい。下五は「小春空・秋の空」など季語にするとより時期のイメージが出てよい。

・パレードの音近づくや冬の部屋(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→楽しみにしていた選手たちが近づいてくるドキドキ感がよく伝わる一句。

・パレードの街ゆすられて秋うらら(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「~して~」という説明的なところが惜しいが、パレードに沸く街の気分、それもただにぎわっているというのではなく、感謝の気分の感じられるやや落ち着いた賑わいのような空気感がよく出ていてよい実感の句である。

・冬日和パレードに沸く爆心地(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん)
→広島・カープと直接言わず、「冬・パレード・爆心地」の関連で、「カープ優勝パレード」だなと、なんとなくイメージされてくる奥ゆかしい詠み方が憎いし、「爆心地」が印象的。これによって、戦後から今日の優勝にいたる広島の復興の象徴としてのカープの歴史の積み重ねや、市民球団として今に至る市民・選手との「繋がり」などが自然とイメージされてきて、共感を誘う。

・小春空声ふりしきる優勝パレード(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→「小春空」は小春の時期の穏やかに晴れた空のこと。「声ふりしきる」が気分の出た表現で上手い。

・冬木立ちパレードの赤突き進む(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
→選手たちの勇ましさをよく伝える気分の句。「下五」がよく効いている。

・冬晴れのパレード平和大通り(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
→ざっくりとした把握の句であるが、説明したり演説したりごちゃごちゃこねくり回す詠み方よりよっぽどよい。大らかな気分の句でなかなかである。課題はもう少し実感ある世界を詠むようにすることだろうか。

・パレードに高層ビルも踊りだす。(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 66歳)
→「高層ビルも踊り出す」は陳腐でもなんでもなく実感の世界でこれでよい。惜しいのは「~に~も~する」と説明的なところ。「パレードや高層ビルの踊り出す」などとすれば、ぐっと良くなる。「舌頭千転」である。

・パレードの通り過ぎたる秋の空(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
→「パレード」が終わったむなしさがよく出ている。この詠み方でよい。だたしお題と一体となるとう点では、その賑やかな実感を詠んでみたい。

・秋晴れやみんな笑顔のVパレード(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)
→「みんな笑顔」など少々直接的なところが惜しいが、パレードの気分がよく;伝わる素直な句である。

・パレードに山茶花一輪カープ女子(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
→選手と一緒にバスに乗っていたカープ女子たちを詠んだ句とのこと。しかし句からはそれが伝わらず惜しい。詩にならないと思えば、詠む切り口をかえることも大事である。

・パレードの歓喜の余韻冬ぬくし(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
→俳句形式には収まっているのであるが、「歓喜の余韻」がどうにもいけない。このような説明・概念は極力避け、せめて「歓喜の声や」くらいにしたい。

・パレード車まったり過ぐや冬麗(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
→おもしろい把握である。パレードの賑わいや嬉しさを直接詠んでいるわけではないのであるが、「パレード」の「気分」がよく伝わる句である。「まったり過ぐや」が真実を射止めている表現ということになろう。

・パレードのカープロードや神渡(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→「神渡し」は陰暦10月に吹く西風。神々を出雲に運ぶ風とされる。神様と選手を重ね見て気分の出た句である。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・照紅葉パレードの歌エンドレス(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・パレードや寒空に雄叫びこだませり(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・パレードのバス包む声風冴ゆる(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
・パレードの熱気に怯む冬将軍(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・大通り真っ赤に染めるカープファン(ペンネーム「桃色リボン」さん 45歳)
ピンボケのカープパレード小春かな(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
・赤色に染まる紅葉パレード(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・パレードの選手の笑み秋の空(ペンネーム「りんの」さん 57歳)
黄葉を真っ赤に染めしパレードかな(ペンネーム「バーガーとうちゃん」さん 62歳)
・パレードに子供手袋鯉の旗(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・百万の人も小旗も冬紅葉(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
V連覇赤一色の優勝パレード(ペンネーム「DIYじじ」さん 65歳)
・パレードに30万の秋萌える(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
・パレードのビルの窓にもVマーク(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・V8パレード最終応援初冬の下(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・パレードや拳の吼ゆる冬の陣(ペンネーム「高屋の園」さん 68歳)
・冬浅し若鯉追うてスマホ駆け(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・小春日の天にとどけパレードの声(ペンネーム「若っ貴(わかったか)」さん 69歳)
・パレードに思いは一つ日本一(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・パレード紅葉深める平和(ペンネーム「西やん」さん 70歳)
・パレードや笑む目と合うて小春風(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
・パレードの初夢をみる三連覇(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・寒風やカープパレード雲脱がす(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)
・漢らの優勝パレ−ド紅葉濃し(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・パレードや広島中が紅葉し(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・パレード銀杏散る中紅燃ゆる(ペンネーム「浜辺の天使」さん 77歳)
・パレードや憧れ人を見詰める目(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・赤き太陽落ちることないパレードの(ペンネーム「ワイ」さん)
・パレードや銀杏も真っ赤四十度(ペンネーム「華みづき」さん)

入選B ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・優勝の押しくら饅頭トマト色(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)
来季こそ掴みとりたい日本一(ペンネーム「GUPPY」さん 26歳)
・紅葉も羨むほどの赤き軌跡(ペンネーム「豆太」さん 30歳)
・沿道の鯉を引き連れ3連覇(ペンネーム「優子先生」さん 34歳)
・たくさんのスマホ画面に新井さん(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・秋風になびく手旗は祝優勝(ペンネーム「やまちゃん!」さん 42歳)
晴れやかにパレード祝うカープ達(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
・手を振れ笑顔あふれるありがとう(ペンネーム「エベレスト」さん 43歳)
・FFのパレード参加や気分よし(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
揺らいでも揺るがざる勝ち冬パレエルド(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
・肩車の振れる小旗やうつ田姫(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・ヒーローの視線に打たれ落ち椿(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・小春日や赤の弾ける大通り(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
・真っ赤みち平和の道はカープ℃℃℃(ペンネーム「たもつくん」さん 50歳)
・小春日やこぼれる笑顔バスの上(ペンネーム「雅(みやび)」さん 54歳)
・鯉の群れ喜び分かつ三十万(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・パレードに還暦ティシャツ着てはしゃぐ(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・赤ヘルのパレード拡散山紅葉(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
馬場さんに応えるヒーロー照紅葉(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
・ありがとう喝采のシャワー秋の道(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
龍宮か鯉のパレード街をゆく(ペンネーム「桐山榮壽」さん 61歳)
・パレードに℃℃℃と歓喜わかちあう(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・ヒロシマのパレードがぞううらやまし(ペンネーム「カミデキザン」さん 63歳)
・冬日和汗だくで運転する監督車(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・小春日や目指せパレード日本一(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・小春日や赤き戦士ら破顔せる(ペンネーム「不思議の国の兎」さん 66歳)
・三十万人歓声渦巻く赤車列(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・小春日和手を振り枯れバスも真っ赤(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・冬並木それ行けカープ山車が行く(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・冬晴れや赤の車列と赤の波(ペンネーム「音爺」さん 70歳)
カンナより燃ゆるパレード火は消せぬ(ペンネーム「泰平楽」さん 70歳)
こいねがう鯉の花道三たび見ん(ペンネーム「明生(めいせい)」さん 71歳)
覇者を待つ平和の道は冬日和(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・Vカープ目線飛び交う冬の川(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・秋高しボリュウムいっぱいに鯉の列(ペンネーム「呆け人」さん 77歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年11月24日(金)

第75回 お題「ボジョレ・ヌーボー解禁に集まった人々(動画を見て)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「ボジョレ・ヌーボー解禁に集まった人々 (動画を見て)」。
今回の動画の特長は何と言っても「はるばる海外から運ばれてきたボジョレ・ヌーボー、その待ち遠しさ、期待感、喜び」でしょう。
その気分が如何に伝わる句にするか、それがポイントでした。

この俳句道場で、動画から詠む場合のポイントは原則3つあります。
1. 動画から安易に飛躍せず、作者と動画が一体となって詠まれていること。
2. 動画の気分が出ていること。
3. 作者の解説や動画なしに句を詠んでも、詩として成立(自立)していること。

多くは動画のシーンを詠んだ句でしたが、その中の多くは動画の「気分」というよりも「事実」をそれらしく述べている句が多く、ニュースを聞いているようでやや物足りませんでした。

大賞句は、最近参加された方のようです。
句は、ワインが「空輸されるシーン」を詩的に詠むことによって、映像から感じ取れる「期待感・ワクワク感・喜び」を、スケール感とともにのびやかに伝えており見事でした。
特選は原則、動画の気分を上手くとらえたもの・飛躍しつつも句として芸術性の高いもの。
入選Aは原則、動画の気分を伝えるような句。
入選Bは原則、思いがやや先行しすぎた句、句の自立「上記3」が弱い句。
選外は、飛躍のしずぎ、気分に乏しいもの、などとしました。

動画を題とする場合は、原則そこに思いをこらすことが大事ですが、キーワード(今回の場合「ボジョレヌーボー・ワイン」など)をただ入れただけの句、事実をそれらしく詠んだだけの「形だけの句」にならないようにしたいものです。
「俳句は詩」ですから、ニュース(報告・説明)にならないよう、ご自身の何らかの「感動・衝動」をモノに託して(寄物陳思)詠んでほしいと思います。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
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大賞

「ボジョレー・ヌーボー一万キロの空を飛ぶ」(ペンネーム「⑦パパ」さん)

「一万キロの空をとぶ」のは、第一義的には、フランス発で空輸される「ボジョレヌーボー」である。
「ボジョレー・ヌーボー」が、「一万キロ」彼方のフランスから飛行機によってわずか一日で日本に運ばれてくる「感動」。
その「フレッシュな味わい」が、世界でもっともはや味わえる「喜び」。
それらを「一万キロの空を飛ぶ」シーンに託し、見事に伝えている句である。
しかし、この句の解釈はそれだけではない。
動画とともに句を眺めてみるとよくわかるが、「ボジョレヌーボー」を味わう人々の「思い」が「一万キロの空」を越えフランスの地を思っている句、ともとれるし、さらに「ボジョレヌーボー」を味わう喜びと、「一万キロの空をとぶ」心地を重ね見た句、とも解釈できる。
むしろ、これらの解釈の側面に動画の気分が反映されているようである。
いずれにしても、日仏の「一万キロの空」に託して、「ボジョレー・ヌーボーそのもの」や「それを味わう人々の思い」などが行き来しているのびやかさが感じられるところが見事な、共感を呼ぶ一句である。
大賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
空間を大きくつかむ。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・淑女らの揺らめく冬のグラスかな(ペンネーム「あや」さん)
※映像より、豪奢さとワインの揺らめき、わずかに退廃的な空気を。
→ムーディな気分がよく出た一句。グラスの輝きがたしかに印象的であった。

・赤ワイン夜空を包む宇津田姫(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※ボジョレーヌーボーのまろやかさとロマンチックな夜空が包み込んでいく様子を句に込めました。
→映像の気分というには飛躍であろうが、ワインに冬の女神宇津田姫とはユニークな取りあわせ。

入選句

特選

・ボジョレ・ヌーボー一斉に傾くグラス(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
解禁パーティというと全体的には「楽しさ・賑わいという単なるプラスイメージ」で捉えてしまいがちであるが、「どんな味わいかな」というような、プラスマイナス入り混じったドキドキ感を静けさとともに上手くつかんだ。

・赤ワインクラッカー飛ぶ冬銀河(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
→パ-ティの煌き・おいしそうな気分、すなわち映像の気分がよく出ている。この方向で。

・ボジョレーのグラス傾く夜の街(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→「傾く夜」がミソ。しかしこう詠むとさみしい気分で少し合わない。もう少し映像の気分が感じられるよう攻めてみたい。

・口紅とボジョレーヌーボーひしめく夜(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→赤つながりが妖艶さを醸し出している。とはいっても少し平凡なので、事実にとらわれず感動を大胆に詠むようにしたい。

・冬ワイン笑顔とともに解き放ち(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
→「笑顔」がこの句のミソ。素直に「ボジョレーヌーボー笑顔とともに解き放つ」でいい。このほうが賑やかさも出て、気分がでそうである。

・解禁のワインはじけるペアグラス(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→「はじける」という実感・把握が上手い。素直に「ボジョレーヌーボーはじけるペアグラス」でよさそう。

・星空にボジョレヌーボー香りたつ(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→上手い人なのだが今回はややイメージがつきすぎ。やはり事実ではなく、おそれずに感動を詠むようにしたい。

・真夜中のルージュ艶めくボジョレヌヴォ(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→女性が動画によく出ていたのでその気分の句か。事実を詠んでいるがどうも感動を詠んでいない。そのあたりが平凡にしているようで惜しい。そこを攻めてほしい。

・ボジョレーの宴張りつく冬の窓(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
→「窓」への着眼の句である。視点が見事だが、映像の気分というには少し伝わりずらい。しかして自分の世界がある方なのでこお方向でよい。

・「乾杯」のボジョレいざなう夜長かな(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→盛り込み過ぎのようである。俳句は説明文ではなく詩なので、「きちんと伝えることではなく、気分を出すこと」が大事である。「ボジョレーヌーボー溢れ出す夜長かな」くらいか。

・冬のワイン日付変更線を超え(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
→どうも映像の気分が出ていないのは惜しいが、句だけを味わうとなかなか意味深なものになっている。

・ボジョレヌーボー新しき血の燃え上がる(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→少々直接的なのと、動画の気分とは少し違うようなところが惜しいが、感動のない事実を詠むよりは、何らかの衝動を詠む方がよい。この方向で。

・解禁のワインを送り霜の花(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
→映像の気分の感じられる句になっていないところが惜しいが、これも一句である。

・真夜に降る星の欠片やボジョレーヌーボー(ペンネーム「高屋の園」さん 68歳)
→「夜・星」「星・降る」「星・欠片」などイメージの重なりが惜しいが、動画のキラキラした気分がよく出ている。言葉やイメージの重なりだけ気をつけられてこの方向で。

・夕星待つビルの谷間やボジョレーヌーボー(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)
→映像の気分というには少し飛躍しているが、ボジョレーへの期待感をモノに託してよく伝えている。もう少し映像と一体となってこの方向で。

・ボジョレヌーボー女優になりて持つグラス(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
→中七が直接的なところが惜しいが、パーティでの気分がよく出ている。

・十一月解禁ワイン夜を飛ぶ(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
→なかなかの句であるが、動画の気分となると少し惜しい。

・豪快に秋を飲み干す赤ワイン(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
→豪快にが直接的であるが意外に気分が出ている。ボジョレヌーボーはフレッシュな軽いワインだからであろうか。このように大胆に詠んでみたい。

・ボジョレーヌーボー水平線を垣間見る(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
→映像の気分というには少し惜しいが、句だけを見るとなかなかムードが出ている。上手い。

・女子会やボジョレー・ヌーボー解禁日(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→解禁日と事実を伝えるより、下五「溢れ出す」などと女子会の気分を出してみたい。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・春待つやグラスとワイン並びたる(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)
・ボジョレーや葡萄ジュースの受験生(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
酔いしれる秋の夜長に赤い美酒(ペンネーム「豆太」さん 30歳)
・ボジョレー・ヌーボー夜景を添えて飲みこめり(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・夜の街ワイン片手に明日を待つ(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
・ボジョレーヌーボー亡き友思い栓を抜く(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
・人集いボジョレ▪ヌーボーバブルの香(ペンネーム「かすくん」さん 46歳)
・冬の夜グラス傾け解禁日(ペンネーム「雅」さん 54歳)
・ボジョレーの香り広がり咲く笑顔(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
バブル期を思い起こせしヌーボー解禁(ペンネーム「バーガーとうちゃん」さん 62歳)
飲み干せばグラスの底に地中海(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 66歳)
・秋深し笑顔はじける試飲会(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・ボジョレーの新酒嗜む夜長かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)
ほろ酔いの地球の味やボジョレヌーボー(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)
遠来のボジョレーヌーボー地球儀に(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・ボジョレヌーボーグラスへ注ぐsey when!(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・乾杯の声弾けるやヌーボー宴(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)

入選B ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

この季節紅く染まるほおと心(ペンネーム「あみんちょ」さん 16歳)
・初酒の歓喜の雫舞い躍り(ペンネーム「豆助」さん 39歳)
・一口にグラス飲み干すボジョレーヌーボー(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
愛しくてあなたに染まる夜の街(ペンネーム「エベレスト」さん 43歳)
・新酒吸い初心なあなたを思い出す(ペンネーム「霞山旅」さん 43歳)
・注がれしヌーボー見つめ悦に入る(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
待ちわびた紅い雫の宝石よ(ペンネーム「桃色リボン」さん 45歳)
我先にそう慌てるな解禁日(ペンネーム「いちご」さん 46歳)
・今年酒見合す鼻の低さかな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・七五三親はワインに集ひけり(ペンネーム「伊予吟会 宵嵐」さん 47歳)
カンパーイボジョレーヌーボーで歳重ね〜(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・乾杯のワインに背押す秋の風(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・ボジョレー耳鼻咽喉が開く夜(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・グラス揺れ今宵マダムの未知の味(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・ボジョレーでひと味違うと毎年言う(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・神迎ヌーヴォーはリム染にけり(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
年一度のどをうるおす解禁日(ペンネーム「DIYじじ」さん 65歳)
我がさきねんにいちどののどごしを(ペンネーム「やんちゃばば」さん 65歳)
終いにはポジョレヌーボーコップ酒(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・貴婦人のボジョレーヌーボー香しく(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
ヌーボヌーボ世間は騒ぐ別世界(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
ボジョレーも禁酒夫と高く乾杯(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・白き喉ボジョレヌーボーしずしずと(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
のど越しもためらいがちなボジョレーヌーボー(ペンネーム「若っ貴(わかったか)」さん 69歳)
幾年かワイン眠りて目覚む秋(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・秋深し今年も集う男女かな(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・ボジョレーやグラスチンチンかの国まねて(ペンネーム「ふー」さん 70歳)
縁も無やボジョレヌーボーまそもよし(ペンネーム「明生」さん 71歳)
気が知れぬボジョレ・ヌーボの馬鹿騒ぎ(ペンネーム「コウちゃんのじいじ」さん 72歳)
江戸っ子もかくこそありしかボジョレ-ヌーボー(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
吾子眠りワインで乾杯夜長かな(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・ボージョレの何のことやら人だかり(ペンネーム「呆け人」さん 77歳)
・冬の夜笑うワインを待ちて人待ちて(ペンネーム「ワイ」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年11月17日(金)

第74回 お題「昔ながらの餅つきをし、ぜんざいを食べる子どもたち(動画を見て)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「昔ながらの餅つきをし、ぜんざいを食べる子どもたち(動画を見て)」。
今回の動画の特長は何と言っても「おもちつきの楽しさ・楽しみ」でしょう。
その気分が如何に伝わる句にするか、それがポイントでした。

この俳句道場で、動画から詠む場合のポイントは原則3つあります。
1. 動画から安易に飛躍せず、作者と動画が一体となって詠まれていること。
2. 動画の気分が出ていること。
3. 作者の解説や動画なしに句を詠んでも、詩として成立(自立)していること。

大賞句は、お餅つきの楽しさを、音の様子によって、端的に伝えていて見事でした。
今回は残念ながら、入賞句はなし。
特選は原則、動画の気分を上手くとらえたもの・飛躍しつつも句として芸術性の高いもの。
入選Aは原則、動画の気分を伝えるような句。
入選Bは原則、思いがやや先行しすぎた句、句の自立「上記3」が弱い句。
選外は、飛躍のしずぎ、気分に乏しいもの、などとしました。

今回は入賞句なしに象徴されるように、全体的に低調。
「散文的(普通の文章の省略)」的な句が多い一方、卒なく詠まれた句も多く、残念でした。
全体的なポイントとしては、「切れ」を意識してみてほしいと思います。
「切れ」は、分かりやすいところでは「切れ字(や・かな・けり)」などの詠嘆などで意識されますが、それだけにとどまりません。
「切れ方」も、しっかり切れているもの、軽く切れているもの、切れ字を使っているのに切れていないもの(多くは失敗)等、様々です。
「切れの効果」はいろいろありますが、これによって散文的な概念から飛躍できることが一番の収獲です。
詠み方にもよりますが、切れの前後で、時間・空間・質量・概念の飛躍・次元の飛躍などができるのです。
「切れ」が分かること = 俳句が分かること、と言っても過言ではないでしょう。
「切れ」やその前後の飛躍、を意識して古今の名句を味わってみると参考になるでしょう。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
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大賞

「踏み臼の音跳ね回る冬の里」(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん)

踏み臼は唐臼ともよばれ、大昔に中国から伝った道具という。
てこの原理で足で踏んで杵を動かし、精米や餅つきを行う足踏み式の臼のことである。
動画を見て、今では珍しい踏み臼に着目した観察眼がまずすぐれている。
たしかにこれは今回のお題の動画中の特徴である。
しかし、なんといってもこの句の一番のよさは、「音跳ね回る」という表現。
この表現によって、餅つきをする子どもたちの楽しそうな様子が、あますところなく伝わってきて見事である。
お題の動画には子どもたちが出続けていたが、それを直接詠まず、「跳ね回る臼の音・里」などのモノに託すことによって、間接的にイメージさせているところもうまい。
俳句は「寄物陳思(ものに寄せて思いを述べる)」ということが分かってきた方である。
動画の気分を充分に伝える一句です。
大賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
俳句は「寄物陳思(ものに寄せて思いを述べる)」。気持ちや感動を直接のべない。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・餅つきやジャンプで届く青い空(ペンネーム「あや」さん)
※映像ののびやかで元気なイメージで。
→句を論理や意味で解釈しようとすれば分かりにくい句であろうが、句で大事なのは論理や意味ではなく「気分・ムード・イメージ」。本人の言われるように、子どもたちの「のびやかな印象」がよく伝わる楽しい句である。のびやかな宇宙流の一句であろう。

・ちびっ子の空に伸びゆく餅の音(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※子どもの成長と餅がつきあがる様子を句にしました。
→これものびやかな宇宙流の一句。「餅の音」が少し伝わりにくいかもしれないが気分はよく出ている。

入選句

特選

・つくほどに頬染めてゆく臼の餅(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→「臼の餅」の前に「かるい切れ」がある句。それが効果的で人間の顔が「染まる」のと「餅」が人々の熱気で「染まる」両方のイメージを引っ張ってきて上手い。課題はもう少し動画の気分を出すことであろう。この方向で。

・善哉の椀並べたる餅の音 菊池洋勝(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→「善哉」に「餅」を入れる前を詠んだ句か。落ち着いた詠み方が子どもをお題とした気分には合わないが、切り取り方が面白い。次回も挑戦を!

・県北っ子の青空授業きねの餅(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
→お題を素直にとらえた句。賑やかな気分が出ているようである。課題は直接的な表現を避けることであろう。次回も挑戦を!

・どこまでも伸びるお餅と地域の子(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→こちらも上の句と同様、ストレートに言いすぎ(特に「どこまでも」)なのであるが、お題の楽し気な雰囲気と合っているようである。次回も挑戦を!

・餅つきの合いの手ひびく校舎かな(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→動画の特長を見事に象徴していて上手い。課題はどこかしら常識的なところ。もう少し実感を大事に詠むようにしたい。この方向で。

・餅つきの空の階刻む子ら(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
→お題の動画が踏み臼だけに空はよく合っているし「階」もよく効いていて気分もよく出ている。課題は全体的に散文的・説明的なところを咲けること。次回も挑戦を!

・冬の雲かぶりつきたる子らの頬(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→これでよい。ただしこの句は動画とともに味わう分には見事なのだが、句だけを味わうと伝わりにくい。そこが課題である。次回も挑戦を!

・割り箸と綱引きをして餅喰らう(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
→把握はいいし気分もよく出ているユニークな句である。課題は説明的な方向を避けること。読者としては、説明してほしいのではなく感じさせてほしいのである。次回も挑戦を!

・冬空に響き渡るや杵の後(ペンネーム「バーガーとうちゃん」さん 62歳)
→「杵の後」が伝わりにくく惜しい。「杵の音」のほうがよさそうである。俳句は「寄物陳思」なので感情や心情を説明せず、このようにモノに託して詠むようにしたい。この方向で!

・もちつきの弾む校庭咲く笑顔(ペンネーム「益田千賀子」さん 62歳)
→「咲く笑顔」これをありふれた表現と一刀両断することは簡単だが、私はこれはこれでよしとしたい。餅つきのリズムに合わせてひとつづつ笑顔が広がる気分をよく伝えている。この方向で!

・つきたての餅を食う子や杵の音(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 66歳)
→「おいしそう・楽しそうな気分」を音に託してのびやかに伝えている点が光った。課題は「つきたて・餅・食う・子・杵・音」とすべての言葉の関係性が近く飛躍に乏しいところ。次回も挑戦を!

・杵つけば小さき足に餅の声(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→子どもたちのかわいらしさを「小さき足」に託した句か、面白い切り口である。空間を大きく詠むだけが俳句(宇宙流)ではない。蚊の羽音で宇宙をイメージさせるのも俳句の魅力。この方向で。

・餅つきや地球まるごと頬張る子(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)
→空間を大きく取った宇宙流の句か。「餅→地球」では少々飛躍しすぎだが、のびやかさはよく出ている。課題はもう少し動画の気分・特徴をくみ取ることであろう。次回も挑戦を!

・ぜんざいをほうばる子等の地域の輪(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
→標語的な句であるが、小学生を詠んだ句だけに雰囲気もあっている。人が少ない土地だからこそ輪がよりあたたかい。課題は正論をではなく、この動画ならではの実感を掴みにいくことである。

・餅つきの音こだまする校舎かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)
→お題の事実を卒なく伝えていて上手い。しかしこの句の場合「こだま・校舎」で少しものさびしい。課題は事実を詠むのではなく、動画の気分が感じられるようにすること。次回も挑戦を!

・餅つきや天までとどく子らの声(ペンネーム「めがねバーバ」さん 72歳)
→「天までとどく子らの声」というのはよくありそうな表現であるが、「餅」は古来より神様仏様への捧げものであり、縁起物。それ故「天まで」という表現もふさわしい。のびやかなこの方向で。

・善哉を囲む子の輪に落ち葉ふる(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)
→句だけを鑑賞したとするとムードのある句になっている。課題はもう少し動画の気分が感じられるようにすることである。

・小春日や子等ぜんざいの餅伸ばし(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
→少し平凡であるが上手い詠み方である。名人まであと少しであるが焦らず自分の世界を詠っていってほしい。課題はお題の特長を大胆につかむことであろう。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・餅つきや大地伸ばして丸める子(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
・子どもらの搗きたての餅のびのびと(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・やわらかき餅丸める手や明き雲(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
・子供らの掛け声餅と共に捏ね(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・ふるさとの食育伝ふ児らの冬(ペンネーム「かすくん」さん 45歳)
・餅伸びぬ遊ぶ男子と叱る女子(ペンネーム「伊予吟会 宵嵐」さん 47歳)
頬染めて白き餅つく園児達(ペンネーム「「雅」みやび」さん 54歳)
赤き頬餅でふくらす童かな(ペンネーム「そら」さん 57歳)
・餅つけば秋空にひびく子のヨイショ(ペンネーム「やっちゃん」さん 57歳)
・寒き日の餅つく童の赤き頬(ペンネーム「りんの」さん 57歳)
・餅つきや子らの瞳の大地踏む(ペンネーム「ハイカー」さん 59歳)
秋惜しみぜんざい食べてえびす顔(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・餅つき集う子供の丸い顔(ペンネーム「ペケポン」さん 69歳)
・つきたてを頬張る子ら冬近し(ペンネーム「若っ貴(わかったか)」さん 69歳)
・餅つきの歓声包み抜ける空(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・唐臼で餅つく子らや声弾む(ペンネーム「コウちゃんのじいじ」さん 72歳)
・ぜんざいの頬張る子ら冬休み(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・冬日和真白き餅笑顔の子(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・バンダナのひょっとこ口や餅のびる(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
・バンダナの色に始まるお餅搗き(ペンネーム「ハイカー」さん 82歳)

入選B ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・あん黒し子供のついたもち白し(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)
長年の校舎見守るお餅つき(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
・寒空にぜんざい食べて元気出る(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
ぜんざいをすくって笑顔子供達(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
・お雑煮を食べても正月まだまだだ(ペンネーム「異邦人」さん 44歳)
子供達ぜんざい食べる顔真っ赤(ペンネーム「叔父ちゃん。」さん 44歳)
・餅食べる持ち上げたるその頬に(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
・杵と臼初めてついた旨し(ペンネーム「桃色リボン」さん 45歳)
・餅つきや子らはお椀に丸くなる(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・足踏みで絆つむぐ子ら餅をつく(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
背丈より大きな杵に踊らされ(ペンネーム「ちゃちゃ丸」さん 51歳)
ペッタンコリズムに合わせてお餅つき〜(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
真剣にぜんざい食べる子等の顔(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
はふはふとぜんざいの餅師走かな(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
掌をピンクに染めて餅丸め(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・ぜんざいに隠れた餅の恋心(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
飲み込んだ餅がお腹を熱くする(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
田舎風餅つきの味赤き頬(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
思い出す母のぜんざいちと甘め(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・餅つきの子供の笑顔孫の顔(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・弟の姉に負けじと餅食らふ(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・先生の声がひびくよ餅つく日(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
年の瀬の孫の笑顔は餅つきで(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・園児つくこねこね餅はまんまるや(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・子ら作る餅の大小はしゃぐ声(ペンネーム「高屋の園」さん 68歳)
モチモチ手まっ白エプロン鼻の先(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・杵つきの餅の白さと赤いホッペ(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・風つたうおもちぺったん子のほっぺ(ペンネーム「ふー」さん 70歳)
・頬赤き児ら頬張る餅のやわらかく(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
・餅つきや猫も杓子も粉まみれ(ペンネーム「明生」さん 71歳)
こうしておれぬ園児等の餅の音(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・園児らとぜんざい唐臼戦後談(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・餅つきの合いの手よいしょ園児かな(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・ぜんざいをみんなで食べたら美味しいね(ペンネーム「彩の介」さん 77歳)
・新餅をほおばるひよこ空高し(ペンネーム「呆人」さん 77歳)
・餅喰らろうて子らが椀搗いた搗いた(ペンネーム「ワイ」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年11月10日(金)

第73回 お題「牡蠣雑炊・牡蠣を食べる美女(馬場アナウンサー)(映像を見て)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「牡蠣雑炊・牡蠣を食べる美女(馬場アナウンサー)(映像を見て)」。
今回の映像の特長は何と言っても「馬場アナの笑顔」でしょう。
今回の選句では、同じようなレベルの句の場合、馬場アナの雰囲気がよく伝わる句を優先してとらせていただきました。
皆さんがおなじみの馬場アナをどうとらえているのか、とても楽しい選句でした。

この俳句道場で、映像から詠む場合のポイントは原則3つあります。
1. 映像から安易に飛躍せず、作者と映像が一体となって詠まれていること。
2. 映像の気分が出ていること。
3. 作者の解説や映像なしに句を詠んでも、詩として成立(自立)していること。

大賞句は、馬場アナの特長(笑顔・人柄のよさ)を的確にところが見事でした。
入賞句は、馬場アナのユニークさを大胆に表現したもので納得の句でした。

特選は原則、映像の気分を上手くとらえたもの・飛躍しつつも句として芸術性の高いもの。
入選Aは原則、映像の気分を伝えるような句。
入選Bは原則、思いがやや先行しすぎた句、句の自立「上記3」が弱い句。
選外は、飛躍のしずぎ、気分に乏しいもの、などとしました。

前回「句はそれだけを詠んでも通じることが大事」と重ねて書かせていただいたのですが、皆さんそのアドバイスをよく踏まえていただいており、「馬場アナ」など固有名詞(名前)を入れた句が少なかったこともうれしく思いました。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
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大賞

「牡蠣かおる空いっぱいの恵比須顔」(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)

「牡蠣」は冬の季語。
「恵比寿顔」は恵比寿様のようににこにこした顔。
「牡蠣雑炊」を食べている馬場アナウンサーの幸福感を「空いっぱいの恵比寿顔」であますところなく伝えてあるところが見事。
馬場アナのうれしそうな表情を「笑顔」と詠んだ句は多くあったが、「恵比寿顔」と詠んだのはこの句だけ。
こう詠むことで、笑顔以上に福福しいおめでたい感じもイメージされてきて、喜びが存分に伝わる。
句だけを鑑賞したとしても、その豊かな冬の味覚の喜びが景気よく感じ取れてくる。
映像の気分を上手く伝えた一句です。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
直接的表現(笑顔)をさけ、味わいのある表現(恵比寿顔)を。

入賞

「美女アナの海ごとすくう牡蠣雑炊」(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)

しっかりした句で、句だけを鑑賞したとしても成立している。
何より「海ごとすくう」の大胆さがいい。
当然のことながら「レンゲですくう」ではあたり前で詩にならない。
馬場アナウンサーの美貌・笑顔からは想像もつかないおおらかなキャラクターを、「海ごとすくう」で見事に伝えており、見事である。
「美女」が「牡蠣」を夢中で頬張るそのギャップ。
そうさせてしまう「牡蠣雑炊」のおいしさ。
大賞句と同様、映像の気分をよく伝える一句である。
ただし馬場アナが「美女」なのは違いないのだが、句で直接言われると色が濃く出すぎた写真のように感じるので、ここは「女子アナ」くらいにしておきたい。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
あたり前を詠まない。大胆に詠む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・冬めくや美女の頬張る漁師飯(ペンネーム「あや」さん)
※少し早い季語だけど寒い方が雑炊は美味しいから。
→「冬めく・美女」の取り合わせがよく合っていて美しい。また「冬めくや」の切れもキレイにひびいている。「美女・頬張る」というギャップを印象的に詠んでいる一句。

・フツフツとみなぎる空や鍋の牡蠣(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※牡蠣雑炊を囲みフツフツと湧く鍋と気持ちを句に込めました。
→こう詠むからこそあたり一面が湧き上がるような気分が出てきて詩になるのである。「鍋が湧く」のではあたり前で詩にならないということが分かっている上手い一句。

入選句

特選

・鍋ひらく湯気の向こうに牡蠣美人(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)
→馬場アナを詠んだ句。湯気にゆらめく美人とは気分の出たいい句である。ただし「牡蠣美人」は造語と思われるので、「女子アナや湯気の向こうの牡蠣雑炊」など、誰にでも伝わる表現にしたい。次回も挑戦を!

・牡蠣雑炊鼻腔漂う瀬戸の海(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
→「牡蠣雑炊」の匂いを味わっている先に海が感じられたきたという句。大きく詠んでいて気分がよく出ている。この方向で!

・牡蠣鍋や潮の香満ちる山の家(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→山あいの地域で食べる牡蠣鍋の気分を詠んだ句。「海・山」と対比がやや直接的過ぎるので、「牡蠣鍋や潮の香満ちる里の家」などでは。次回はさらに映像の特長を掴んだ句を期待したい。

・牡蠣の香や母の柔らかき曲線(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→母親としての馬場アナを詠んだ句であろう。色気のある句である。惜しいのは全体的に散文的(中途半端な省略)なリズムであるところ。「牡蠣の香の柔らかなりし母の影」など、まずは定型に即してしっかりと詠みたい。次回も挑戦を!

・カキ雑炊鍋の底から勝ち上がり(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
→下五が独特の面白い把握である。煮えたぎる「カキ雑炊」の気分の句と思われる。このような自分の世界を詠ってほしい方である。

・牡蠣雑炊ひとりじめするお母さん(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
→馬場アナがおいしそうに食べる様子を詠んだ句であろう。お母さんの「やさしさ・食欲」という反する気分を一句の中で上手く詠んだ。

・カキ雑炊飲み込むほどに小春かな(ペンネーム「すずらん村」さん 55歳)
→「カキ雑炊」を食べるほどに「小春日和」を感じるという句でる。「カキ雑炊」によって幸福感が広がる様子を「小春」に託して上手く伝えている。

・牡蠣雑炊湯気から覗く笑顔かな(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
→意外に目に入らない「湯気」に着目したところがいい。「湯気」の向こうに浮かぶ「笑顔」、あたたかな鍋の気分が伝わってくる。

・立ち昇る牡蠣雑炊の湯気旨し(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
→「湯気」を味わったのがお見事。たしかに「湯気」までおいしそうな映像である。どことなく食す前の臨場感というものも感じ取れる。ただし俳句は寄物陳思(モノに寄せて思いを述べる)なので、「旨し」など気持ちを直接のべる表現は原則さけたい。「牡蠣雑炊湯気のはりつく鼻の先」など。次回も挑戦を!

・牡蠣雑炊世界を平和にする笑顔(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→映像の気分を大きくとらえたのびやかな気分の感じられる句である。中七は少し観念的なのでモノに託して詠むようにしたい。次回も挑戦を!

・大鍋の牡蠣は膨やかなりにけり(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→映像の大きな「牡蠣」を詠んだ句。「牡蠣」にポイントを絞ったゆったりとした詠み方に、のびやかな気分がよく出ている。

・乳白の牡蠣に映りし安芸の海(ペンネーム「きいたん」さん 67歳)
→「牡蠣」の色に着目した句。大きな把握がのびやかな句である。「~に~する」という詠み方が説明的で惜しいので「乳色の牡蠣ふるえだす安芸の海」くらいに。次回も挑戦を!

・牡蠣雑炊箸でまさぐる少女かな(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)
→馬場アナの若々しさを詠んだ句。「少女」という把握が大胆な一方、「雑炊・箸」の関係が平凡で惜しかった。「牡蠣雑炊海をまさぐる少女かな」くらい飛躍したい。次回も挑戦を!

・ほろ酔いの牡蠣雑炊や写楽顔(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
→馬場アナが「牡蠣」を熱がる様子を詠んだ句であろう。「ほろ酔い」と「写楽顔」の対比が面白い。この方向で。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・ひと呼吸牡蠣を丸ごといただきます(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
・ふっくらと浮かんで見える牡蠣雑炊(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
口福に浸る磯の香カキ雑炊(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・鍋底の牡蠣刮ぎ取る蓮華かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・牡蠣鍋の湯気濛々と支度部屋(ペンネーム「伊予吟会 宵嵐」さん 47歳)
・女子アナもお目々無くなる牡蠣おじや(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・女子アナの目尻物言う牡蠣雑炊(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・休日の天女ほころぶ牡蠣の鍋(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
ふうふうとレンゲの牡蠣とにらめっこ(ペンネーム「「雅」みやび」さん 54歳)
・熱々の牡蠣鍋食べてぽっかぽか(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・鍋食らひイルミのごとく点灯る顔(ペンネーム「ダメじゃろ」さん 56歳)
・牡蠣船や遠きあの日の宇宙船(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・背を丸め馴染みし海の牡蠣雑炊(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
・妻の盛る舌にも熱き牡蠣雑炊(ペンネーム「安田蝸牛」さん 61歳)
・牡蠣鍋でほかほか笑顔冬の夜(ペンネーム「バーガーとうちゃん」さん 62歳)
・雑炊やはひはひはひと牡蠣を食ふ(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・牡蠣鍋に冬将軍も舌づつみ(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 66歳)
美味しさに満面の笑みカキ雑炊(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)
・熱熱の笑顔笑顔やカキ雑炊(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・鍋囲む一家団欒日曜日(ペンネーム「コウちゃんのじいじ」さん 72歳)
・女子アナの覗く雑炊かき筏(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・牡蠣食らう湯気の向こうに冷たき手(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・なべ物のふたあけ笑顔食いざかり(ペンネーム「田島」さん 81歳)
・牡蠣雑炊出され女子アナ声をあぐ(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)

入選B ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・牡蠣鍋や寒さ吹き飛ぶおいしさよ(ペンネーム「you」さん 10歳)
・寄せ鍋のつみれ頬張る熱さかな(ペンネーム「きたぴい」さん 33歳)
雑炊だ五臓六腑に染み渡る(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
・鍋囲み心も体も温まる(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
年忘れ宴の後の牡蠣雑炊(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・牡蠣雑炊湯気幸せに頬包む(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・かき小屋で笑みレポ映える食の秋(ペンネーム「やっちゃん」さん 57歳)
声も出ず至福のひとときかき雑炊(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
水菜去り美女が見えると牡蠣がいう(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・秋の夜ナベをかこんであたたまる(ペンネーム「DIYじじ」さん 65歳)
・北海道古希の祝いは牡蠣鍋で(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・立冬や牡蠣鍋準備子らを待つ(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・一人鍋テレビに突っ込む猫膝に(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・カキ舟に鍋音見合ふ老夫婦(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・孫たちと古希の祝い牡蠣鍋(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・子だくさん虎視眈々と鍋囲む(ペンネーム「明生」さん 71歳)
・おかえりと牡蠣雑炊の我が家かな(ペンネーム「めがねバーバ」さん 72歳)
・ふうふうとカキ雑炊を啜りけり(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・かき雑炊郷愁そそる夕餉かな(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)
目瞑れば牡蠣雑炊の熱き声(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・ボランティア独居の人らと牡蠣雑炊(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・湯気の中雪娘喰う名物の鍋(ペンネーム「ワイ」さん)

<ユニーク>※入賞に届かなかった句の中からちょっとホッとする面白い句をご紹介!

・牡蠣食へば金がなくなり号泣し(ペンネーム「かすくん」さん 45歳)
→やられたという感じの句。かの有名な句のパロディか。ここまで意図的にユニー句をつくられるとは。。。俳句でははじめから面
白く詠もうとしないこと。面白味は結果としてついてくるものと心得たいところ。

・牡蠣鍋や湯気立ち上る玉手箱(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→「湯気・玉手箱」の連想の句。鍋蓋をとるだけで一気に年を取ってしまっては、これまた困ったものである。まさしくユニーク。

・君いずこしめの雑炊牡蠣さがす(ペンネーム「ふー」さん 70歳)
→相手を探す様子と牡蠣を探す様子をかけたものか。素朴なユニー句である。

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年11月3日(金)

第72回 お題「呉の出店(期間限定カフェテリア・KURE TERIA)(映像を見て)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「呉の出店(期間限定カフェテリア・「KURE TERIA」)(映像を見て)」。
「KURE TERIA」は誰もが集い憩え楽しめるをテーマに、10月15日~1月12日(10:00~20:00)、楓橋周辺に移動式店舗が出店されるもの。
実際には週末の出店が多いようです。
今回は、お題の映像のポイントが絞られていないため、少し詠みにくく苦戦されたようですが、皆さんなかなか頑張って下さいました。

この俳句道場で、映像から詠む場合のポイントは原則3つあります。
1. 映像から安易に飛躍せず、作者と映像が一体となって詠まれていること。
2. 映像の気分が出ていること。
3. 作者の解説や映像なしに句を詠んでも、詩として成立(自立)していること。

大賞句は、クレ・テリアの魅力をコマーシャルのように端的にあますところなく伝えているところがお見事でした。
入賞句は、今回のお題に初めて音の情報が入っていることに着目して、その映像の雰囲気を親しみやすく伝えているところがお見事でした。

特選は原則、映像の気分を上手くとらえたもの・飛躍しつつも句として芸術性の高いもの。
入選Aは原則、映像の気分を伝えるような句。
入選Bは原則、思いがやや先行しすぎた句、句の自立「上記3」が弱い句。
選外は、飛躍のしすぎ、気分に乏しいもの、などとしました。

今回はそこまで厳しくはしていませんが、上記3にもありますように、句はそれだけを詠んでも通じることが大事ですから、その土地でしか通用しない「クレ・テリア」などの固有名詞は、できればさけて「カフェテリア」などと詠むほうがいいでしょう。
今後の参考にしてください。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「冬凪や星と語らうクレテリア」(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)

実際の「クレテリア」の営業時間は、いわゆるラーメンの屋台のように夕方~深夜の営業ではなく20:00までとのこと。
お題が夜の映像であったので、そう詠まれたのであろう。
日没以降の句と解釈すれば違和感はない。
実際仕事帰りなどに寄って帰られる人も多かろう。
この句のよさは「クレテリア」の開催時期・開催場所だけでなく、その魅力を美しくわかりやすく伝えているところ。
「冬凪」は、「風のやんだ冬の海の穏やかな時の様子」を表す季語であるが、これによって、「クレテリア」の開催時期や開催場所(海辺の街)などが自然とイメージされてくる。
「星と語らう」も、類想のありそうなメルヘンチックな表現であるが、これによって、食べるだけでなく、街や空の雰囲気も楽しめますよという「クレテリア」の魅力が詩的に伝わってくるし、オシャレな移動式店舗の雰囲気にもよく合っている。
さらに、「凪・語り合う」などから心理的な穏やかさ暖かさなども感じ取れてくる。
しいて言えば、「クレテリア」はその場所でしか伝わらない言葉なので、全世界の誰が読んでも伝わるように素直に「カフェテリア」としたい。
映像の気分のよく出た一句です。
大賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
今・ここでしか通じないかもしれない言葉はできるだけ避ける。

入賞

「冬近しおやじバンドのテラス席」(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)

幾度か映像のお題を出しているが、今回初めて音楽が流れた。
そこに見事に気づいていただき、そのクレテリアの気分を親しみやすく詠みあげた手腕に脱帽。
映像からは奏者がプロなのかアマチュアなのかまではわからないので、そこに他意はない。
「冬近し」という季節感も手伝って、クレ・テリアの時期もよくわかるし、その秋の輝きが失われてゆく季節感と、「おやじバンド」という元気いっぱいのイメージの対比が、句におかしさ・楽しさを生み出している。
映像と見事に一体となった、ジャズシーンの雰囲気のよく出た句で、さむいけれど、少し「クレ・テリア」に寄って帰ろうかなという気にさせてくれる一句である。
入賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
季語のイメージにもたれず、対比を効かせる。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・傾国のトロンボーンが月を吐く(ペンネーム「あや」さん)
※映像のトロンボーンに何かこんな雰囲気を感じたので。奏者はみんなイケメンに見える罠。
→「~の~が~を~する」と説明的なところが少々惜しいが名人らしい詩的な世界。次回は映像の気分の伝わる句も期待したい。

入選句

特選

・月光に背中を押されくじ引きす(ペンネーム「you」さん 10歳)
→カフェテリアというよりも屋台の雰囲気で詠んだ句。上五中七の実感が魅力的。この調子で大胆に詠んでほしい。

・呉テリアペダル漕ぎ去る受験生(ペンネーム「ルビー」さん18歳)
→学校の多い呉のイメージがよくでている。しかし「受験生なのでクレテリアに寄らずに帰る」などと、すぐに意図が見えるのが惜しい。俳句は短く説明するものではなく「感じさせる」もの。次回はさらに映像の気分の出た句を期待したい。

・工廠の夜長色めくカフェテリア(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→「工廠(こうしょう)」とは、軍隊直属の軍需工場のこと。なんとなく呉っぽい句であるが、「工廠・カフェテリア」はどうも兄弟喧嘩である。カフェテリアの気分をもっと伝えるように詠んでみたい。次回も挑戦を!

・帰り道カフェにふわりと秋の蝶(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→俳句は何かを演説するものではないということが分かってきた方。しかしてこの句は上五が平凡で惜しい。類想もありそうであるが「カフェテリアかぶさるように秋の蝶」くらいか。次回はさらに映像の気分が感じられる句を期待したい。

・カフェテリア三百六十度秋飲み干せば(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
→戸外のカフェテリアの気分を見事に伝える句である。これでよい。次回も映像の気分の感じられる句を期待したい。

・軍港の鉄の匂ひや牡蠣シチュー(ペンネーム「伊予吟会 宵嵐」さん 47歳)
→上手い。いわゆる他の句会などではもっと上位にきそうな方である。しかして私見では「軍と鉄」「鉄と匂」「匂と料理」など全体的につきすぎで惜しい。その分「理解」はしやすいが、芸術としてもっと「感じさせる」方向にシフトしてほしい。また仮名遣いであるが、私見では俳句は現在使われ将来も使われるであろう表記を採用して不足はないはずなので、できれば現代仮名遣いをお勧めしたい。

・パンプスに秋風抜けるカフェテリア(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→「カフェテリア」の足元への着目。女性ならではの視点であろうか面白い。次回はさらに映像の気分の感じられる句を期待したい。

・軍港のいざなうジャズや星月夜(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→映像とともに味わえば気分のよく伝わる句なのであるが、句だけを詠むと「星月夜・軍港・ジャズ」の関連性が感じられず惜しい。そのあたりを攻めてほしい。「カフェテリアジャズのいざなう星月夜」など。

・帰り道 「枯葉」奏でる秋北斗(ペンネーム「西区のぺんぺん草」さん 54歳)
→なかなか上手い句である。「帰り道」は説明的なので避けたい。「カフェテリアジャズ溢れ出す秋北斗」など。この調子で。次回も挑戦を!

・移動カフェまどろむ釣瓶落としかな(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→これでよい。俳句は何かを説明するものではないということが分かってきた方。次回はさらに気分の出た句を期待したい。

・口いっぱい海を頬張るかき小町(ペンネーム「(7)パパ」さん 61歳)
→「口いっぱい海を頬張る」が素晴らしい。「口いっぱい牡蠣を頬張る」では詩にならない。下五の品種名が全国的に伝わるかといわれば難しいところなので「口いっぱい海を頬張り牡蠣喰らう」「口いっぱい海を頬張り安芸の牡蠣」くらいか。後者だと海中の牡蠣ともとれるが句にはなっている。いずれにしてもこの詩心を大切に。次回も挑戦を!

・欄干にもたれ出店の温め酒(ペンネーム「きいたん」さん 67歳)
→カフェテリアというよりも屋台のイメージで詠んだ句のようである。惜しいのはやはり少し平凡になってしまったところ。次回も挑戦を!次回はそのあたりを気をつけたい。

・ほろ酔いの屋台の客や冬隣(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)
→こちらも屋台の気分で詠まれた句。惜しいのはこちらもやはり少し平凡になってしまったところ。次回も挑戦を!

・立ち食いの足元見れば秋の星(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
→「足元見れば秋の星」これが素晴らしい。カフェテリアの楽しさや明るさがあちこちに広がっているようである。こういう実感を大切にしたい。「~すれば」と説明的なところは気をつけたい。次回も挑戦を!

・秋灯の汽笛紛れるカフェテリア(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
→全体的にどうも平凡で大人しいところが惜しいが、「カフェテリア」の人々の声に紛れる「汽笛」という聴覚情報と、周辺のイメージと思われる「秋灯」という視覚情報が醸し出す夜のムードが満点である。この方向で。

・舌に牡蠣転がす呉のカフェテリア(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→「舌・牡蠣」の関係性が平凡なところが惜しいが上手い詠み方である。地名の入れ方が直接的であるが旅行時に詠んだ句のようで悪くはない。

・カフェテリア会社帰りの新酒かな(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→一杯ひっかけてという感じの句で面白い。しかしこうなるとカフェテリアより屋台を詠んだほうが気分が出そうでもある。次回はもっと映像の気分の出た句を期待したい。

入選A

・サラリーマン屋台楽しむ暮れの秋(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・秋の夜に人集い街暖める(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・嬢ちゃんがパパを手伝う文化の日(ペンネーム「かすくん」さん 45歳)
・ジヤズ色の香ばしき風冬隣(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・みのむし揺れる北風のクラリネット(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
・月煙りネクタイゆるむ屋台席(ペンネーム「雅「みやび」」さん 54歳)
・秋の夜に静かに集うクレテリア(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・秋深しコーヒー香るカフェテリア(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・サックスの深き味しむおでん食ふ(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・軍港の栄華を偲ぶ呉テリア(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 66歳)
・夜店の灯言葉やり取り牡蠣を買う(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・寒空に空腹満たす夜店かな(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・カフェテラスおでんコーヒー潮の香と(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・寒月夜おでん片手にジャズに揺れ(ペンネーム「コウちゃんのじいじ」さん 72歳)
・さそわれて灯かりに集う秋の暮れ(ペンネーム「めがねバーバ」さん 72歳)
・海軍のカレー楽しむカフェテラス(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・妻の味カフェテリアに集う秋(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・霜月やぬくもり度増す呉テリア(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・クレテリア試食つまむやかき小町(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)

入選B

・おいしいカフェテリアはみんなが大勢、集まるよ(ペンネーム「あーちゃん」さん 16歳)
・暗やみに浮かぶ灯りはホタルかな(ペンネーム「やすから」さん 37歳)
・暗がりのトランペットや牡蠣爆ぜる(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・真夜中に歌う旅人店を出る(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・ラーメンの出店が並ぶ街の影(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
・山眠るラストオーダーたづぬかな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・より道を誘う焼がき港の灯(ペンネーム「御衣黄」さん 47歳)
・木枯らしの屋台の灯々の温かさ(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・出店にはついつい財布の紐緩む(^o^)(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 54歳)
・灯も映えて人肌恋し暮れる秋(ペンネーム「やっちゃん」さん 57歳)
・ハフハフと食べる広島牡蠣旨し(ペンネーム「りんの」さん 57歳)
・一等は大和の模型秋祭(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・なんにでも七味振りたりそぞろ寒(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
・晩秋に屋台恋しや 人集う(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・孫連れて思いも掛けずカフェテリア(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・すがる虫試食をせぶる浜訛り(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・秋の旬 足を止めさす 呉の町(ペンネーム「DIYじじ」さん 65歳)
・くれの秋笑顔いっぱいのおもてなし(ペンネーム「くればあ」さん 65歳)
・肌寒やつめて寄つてよ呉屋台(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・売れ残り出店の声や天高し(ペンネーム「おちえもん」さん 69歳)
・寒風に博多の屋台末席そっと(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・秋日和うまいでがんす海自カレー(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)
・夫誘ふ人出恋しき秋の暮れ(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)
・秋の呉音と臭いに吸い込まれ(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・ファンファーレ夕べの友は牡蠣の声(ペンネーム「ワイ」さん)
・したわしや踊り屋台の火灯し(ペンネーム「賀茂の鶴より」さん)

放送日:2017年10月27日(金)

第71回 お題「雨の球場で応援するカープファン(映像を見て)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「雨の球場で応援するカープファン(映像を見て)」。
クライマックスシリーズは、カープのファンの方々にとっては残念な結果でしたが、これからも皆さんで変わらず熱く応援してまいりましょう。

さて俳句ですが、道場の「映像をみて句を詠む」というスタンスが大変な好評をいただき、最近毎回のように新しい方からの投句を頂いていますが、今回は前回に増して新しい方からのご応募をいただき、当然句数も多くうれしい悲鳴でした。
広島の皆さま方に、回を重ねるごとに俳句に興味をもってもらえ、うれしく思います。
一方で俳句は「奥深いもの」ですから、年季がいります。
思い立ったが吉日、この道場のように毎週のように選評がもらえる場は非常に少ないので、目先の結果に一喜一憂することなく、この場をぜひ活かしていただければ幸いです。
上位に来た皆さんも惜しかった皆さんも、特選以上の句を選評とともに味わっていただけば、参考にろうかと思います。

この俳句道場で、映像から詠む場合のポイントは原則3つあります。
1. 映像から安易に飛躍せず、作者と映像が一体となって詠まれていること。
2. 映像の気分が出ていること。
3. 作者の解説や映像なしに句を詠んでも、詩として成立(自立)していること。

今回の大賞句は、他の多くの句がファンの皆さんの背中側からの風景を詠んでいる中、選手目線でファンの皆さんの顔を見て詠んでいるという視点が秀逸でした。
いわば、ファンの先にいる選手の気分になり、選手と一体となって詠んだという「上記1」を体現した点が光りました。
入賞句は、映像を多くの人とは少し違った解釈で受け止めた明るさが心地よい句でした。

特選は原則、映像の気分を上手くとらえたもの・飛躍しつつも句として芸術性の高いもの。
入選Aは原則、映像の気分を伝えるような句。
入選Bは原則、思いがやや先行しすぎた句、句の自立「上記3」が弱い句。
選外は、飛躍のしずぎ、気分に乏しいもの、などとしました。
なお今回は大変気持ちのこもった句が多かったため、選外を少なくし、入選A・Bの句をやや多めにとりました。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「秋雨やエース見上げる赤合羽」(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)

作者によると、カープの薮田投手がインタビューで「全国どこの球場に行っても、まるでホームかと思う応援ありがとうございます」と言われたのを聞いて、「選手も客席をよく見ているのだな」と思い詠んだ句とのこと。
総評でも書いたが、多くがファンの皆さんの背中側からの風景を詠んでいる中、その先にいる投手と一体となり、投手の気持ちになって、投手の目線で句を詠んだところがとにかく光った一句である。
秋雨の球場にもかかわらず、三万人のファンが赤の合羽を纏って一心に応援する様子。
秋雨はどこかもの悲しい気分でもあるので、思い通りに運ばない試合ともイメージされる。
句からは、選手・ファンが一体となって戦っているという球場の臨場感がありありと伝わってくる。
多くのファンを直接詠むのではなく、ファンの目線(心)が集中しているエースを象徴的に詠むことで、映像全てと一体になるという詠み方。
映像を見ないで句だけを味ったとしても、季節だけでなくマツダスタジアムという場所・状況・気分などが過不足なく伝わってくる見事に自立した句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
視点を変える。

入賞

「秋黴雨真っ赤にけぶる野球場」(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)

「秋黴雨(あきついり)」とは、秋の長雨に入ること。
梅雨のように長く降り続く秋の雨のことを言う。
時間性・持続性を感じさせる秋の季語にからめて、やや俯瞰的な立ち位置で赤い球場を詠むことで、目先の結果にとらわれず末永くチームを応援しているという、カープファンたちの「炭火のような情熱のようなもの」が、句の気分から感じ取れてきて共感を誘う。
この句の上手さは、上記のように、直接的な表現をさけ、一歩引いて抑制的に詠んであるところ。灯台下暗しの反対ではないが、そういう立ち位置で詠むことで、逆にその全体像や本質をつかむことができたよい例である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
時間性を生かす。抑制を効かせる。少し対象と距離をとる。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・秋雨の球場照らすカープファン(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※雨のせいで雨具の赤一色。スタンドが発光しているようにみえました。
→「照らす」が効いている。これによって主役は選手だけでもカープファンだけでもない。すべてが主役というような気分が伝わってきて楽しい。気分の出た一句である。

・秋雨やうたれて耐えるカープファン(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※雨に耐えながら再開を待つカープファンの姿が、打たれても逆転のカープを信じて耐えるカープファンと重ねて句にしました。
→「秋雨」にモノ悲しさのイメージがあるので「耐える」まで言ってしまうとやや重たいか。しかしながら「うたれて」があちらこちらに響く作り、すなわち言葉が働いたおり、さすがである。

入選句

特選

・カープファン色なき風に声嗄らす(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)
→中七あたりの心情表出が見事な句である。この方向でよい。

・秋雨や打たれ佇むカープ女子(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 36歳)
→負け試合であろうか。もの悲しい気分はよく出ている上手い句であるが、すべて同じような陰のイメージで構成され、飛躍に乏しいのが惜しい。

・秋雨や土の香孕む野球場(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→負けて土を握りしめるようなイメージであろうか。「土・野球場」の関係がややつきすぎで惜しいが、雨の試合の気分は出ている。

・雨の中胸張りて飛ぶ赤とんぼ(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
→映像から飛躍しているのが惜しい。「胸張りて飛ぶ赤とんぼ」などの句について、擬人法だの比喩だのを持ち出さないと落ち着かない先生や大人も多いが、そんなものを持ち出さなくても胸を張っているものは張っているのである。もの悲しいイメージが強い秋に、いきいきとした詩情を吹き込んだ楽しい句である。次回は映像の気分の出た句を期待したい。

・カープファン雨の向こうに星月夜(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
→雨の向こうは見えないだけで美しい世界が広がっているという少し説明的・理屈っぽいところが惜しいが、ファンの願いや心境を上手くとらえた一句。

・八回裏二死満塁や冬隣(ペンネーム「伊予吟会 宵嵐」さん 47歳)
→試合に比して「冬隣」とはあまり想像したくないさむざむとしたイメージである。世の中には句に書かれた出来事に共感できるかどうかで評価する向きもあるが、大事なのは句表面の言葉がどういう効果をもたらしているかである。その意味で試合の緊迫感や緊張感がよく伝わる上手い一句。

・秋霖へ三万人の応援歌(ペンネーム「御衣黄」さん 47歳)
→スケールの大きな映像の気分の出た句で上手い。この方向で。

・どしゃぶりに声加速するスタジアム(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「ごはんが進む」「土俵は時間」も素直に読み取ればおかしな表現だが、それが示している事情は誰にでも理解できる。掲句も語と語の関係性が奇妙であるが、試合の事情や気分がよく伝わる。これでいいのである。無意識からの実感を大切に。

・秋色の不夜城と化すスタジアム(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→「化す」と説明してしまって惜しかったが個性的な把握をかう。盛り上がっているだけでなく思い通りならない試合展開に、球場全体が不穏な空気に包まれているような気分も感じ取れる。この方向で。

・球音と声援響く秋の雨(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
→「声援・響く」が少々直接的というかイメージの重なりで惜しい。しかし映像の気分が素直に出ている無理のない句である。「秋の雨声援しみる野球場」などとすると「しみる」がいろいろに解釈できて言葉が働き、句の象徴性が増しそうである。

・球場に降る歓声と秋雨と(ペンネーム「ハイカー」さん 59歳)
→「降る・秋雨」が少々つきすぎであるが素材はそこまで悪くない。舌頭千転。「秋雨や歓声の降る野球場」などのほうが座りがよさそうである。

・秋雨に咲く紅のユニホーム(ペンネーム「イブババ」さん 62歳)
→映像の気分のよくでた詩情のある美しい句で見事。この方向で。新しいお名前の方であるが期待したい。

・どしゃぶりの球場真赤に燃える秋(ペンネーム「益田さん」さん 62歳)
→「雨・燃える」の対比が面白く詩情を醸し出している。惜しいのは少し表現が直接的過ぎること。もう少し抑制を効かせて詠んでみたい。「ファンの熱烈な気分がよく出ている。この方向で。

・秋霖やにわかの友とハイタッチ(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)
→映像の気分というには少し飛躍しているが、「秋霖」という秋の長雨の少し寂し気なイメージと、「ハイタッチ」という明るいイメージの陰陽の対比がいい。映像を必要以上に深刻にとらえず、軽やかに解釈したあかぬけた一句である。

・球審の挙げた右手や白驟雨(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
→映像からやや飛躍してはいるが象徴的なうまい句である。「挙げた」より「挙げる」と現在形を選択するほうが臨場感が出そうである。次回はもう少し映像寄りの句を期待したい。

入選A

・秋雨や蒼ざめてゆく赤合羽(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
・秋雨に負けぬ真っ赤なカープ愛(ペンネーム「くろみつきなこ」さん 30歳)
・雨降って絆深まる鯉酒場(ペンネーム「ねーぽん」さん 37歳)
・秋の波ズムスタ赤く大アーチ(ペンネーム「べーさん」さん 38歳)
・鯉跳ねて霞まぬ声援秋の雨(ペンネーム「かなせのせなか」さん 40歳)
・鯉泳ぐ豪雨と共にカープファン(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・秋雨の中の応援霞たつ(ペンネーム「りかぽんた」さん 43歳)
・秋の大風止む前の試合果つ(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・打ち上げてナイター照明に時雨(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・秋の暮照明濡れるスタジアム(ペンネーム「雅「みやび」」さん 54歳)
・雨将軍馳せ参じたる秋の陣(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
・秋雨の音の匂いやカープ球場(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
・秋時雨赤い坩堝のスタジアム(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
・あきの暮れ浜はいっきに たそがれる(ペンネーム「タコおやじ」さん 61歳)
・秋雨の夜に浮かんだスタジアム(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・秋雨の夜祭りと化すマツダスタ(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・雨ふれどまっかにそまるスタジアム(ペンネーム「DIYじじ」さん 65歳)
・秋雨に声も震える応援歌(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 66歳)
・歓声が冷たき雨を打ち返す(ペンネーム「きいたん」さん 67歳)
・秋深し応援あふるカープ球場(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)
・赤合羽球場揺れる秋つづく(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・秋雨や熱い応援カープファン(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)
・声援をバットに乗せて秋時雨(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・腹いっぱい染めるスタンド紅葉雨(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・カ−プ女子の真っ赤に染める夏合羽(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・赤ヘルのエールに秋の雨光る(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)

入選B

・秋雨や燃える赤ヘル負けぬ汗(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
・雨の試合中止になった後悔よ。(ペンネーム「柿澤仁誠」さん 15歳)
・鯉の白荼赤火は雨にも煙らぬ(ペンネーム「鯉に恋する乙女」さん 18歳)
・秋雨や降れど消せぬは赤い火よ(ペンネーム「やすから」さん 37歳)
・秋雨や燃ゆる紅葉はユニフォーム(ペンネーム「チャタロウ」さん 39歳)
・取り出す合羽赤赤カープ戦(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・秋雨の強さに勝る赤き声(ペンネーム「紫音」さん 39歳)
・秋雨の真っ赤に染まる勝利のシャワー(ペンネーム「かえでちゃん」さん 40歳)
・球場に無情の雨が降りしきり(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・秋雨と汗と涙と嬉し泣き(ペンネーム「なっほー♪」さん 41歳)
・食欲の秋勝欲の赤熱い(ペンネーム「ねずみ」さん 41歳)
・かかってこい雨も雷も敵じゃない(ペンネーム「ベーキングパウダー」さん 41歳)
・熱気が雨跳ね返すパワー紅葉山(ペンネーム「メカニズム」さん 41歳)
・雨降れど紅葉も鯉も変わらない(ペンネーム「レーサー」さん 41歳)
・天候に左右されない熱い鯉(ペンネーム「往復はがき」さん 41歳)
・鳴り響く轟音と共にカープファン(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
・秋深し雨の応援、日本一(ペンネーム「叔父ちゃん。」さん 44歳)
・星隠す秋の雨得て鯉跳ねる(ペンネーム「かすくん」さん 45歳)
・秋雨も熱き想いに弾け飛ぶ(ペンネーム「桃色リボン」さん 45歳)
・カープ愛雨に咲く花優勝へ(ペンネーム「過保護のまみ」さん 49歳)
・雨にも負けず届けナインに大声援(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 54歳)
・秋雨もカープファンか赤い苑(ペンネーム「マダム悦子」さん 55歳)
・豊年の神事に似たり赤の舞い(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・雨つぶも熱気で弾く赤軍団(ペンネーム「やっちゃん」さん 57歳)
・激雨中選手もファンも激力中(ペンネーム「どんママ」さん 58歳)
・赤河童球場ひしめき猛応援(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・降る雨を熱湯に変える燃える赤(ペンネーム「バーガーとうちゃん」さん 61歳)
・秋雨で逆転勝ちにファン歓喜(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・秋雨に赤咲き乱れ青ひとつ(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・どしゃ降りの赤くそまるよひろしまCS(ペンネーム「秀くんと智ちゃんの母さん」さん 64歳)
・赤一色驟雨も我に味方せり(ペンネーム「くればあ」さん 65歳)
・球場に八入の雨よ血潮湧く(ペンネーム「てる」さん 65歳)
・スタンドのグランドの熱秋の雨(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・父がいる負け続けても応援す(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・カープ戦雨にも負けず熱烈応援(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・風船で燃える赤ヘル天を突く(ペンネーム「キートン」さん 69歳)
・すすき梅雨真っ赤な人波マグマへと(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・秋の雨声援はじけてまっ赤か(ペンネーム「呉のおばさん」さん 69歳)
・逆転に秋雨も昇るスタジアム(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・秋雨や応援団を置き去りに(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・秋雨の球場揺らす赤い波(ペンネーム「コウちゃんのじいじ」さん 72歳)
・雨中流はい苦にはせぬカープ愛(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・秋波や真っ赤に揺れる鯉の群れ(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・応援や赤いカッパが踊るかな(ペンネーム「古志清右衛門」さん 77歳)
・ペナントに生命吹き込む鯉ファン(ペンネーム「不細句」さん 85歳)
・赤合羽も選手も燃える覇気力舞吼(ペンネーム「のぼる」さん)
・涙雨赤きポンチョの宮島さん(ペンネーム「ワイ」さん)
・のるは天染める列島朱の鱗(ペンネーム「國田明治」さん)

<ユニーク>※入賞に届かなかった句の中からちょっとホッとする面白い句をご紹介!

・秋雨に負けずにおらぶ大応援(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
→方言が効果的で、赤を言わなくてもカープと伝わりそう。よい発見である。次回も挑戦を!

・秋雨に打たれどカープ打ち勝てり(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
→ダジャレの効いたユニークでファンなら納得であろう。

・秋の雨背番号0の出番です(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
→面白い視点で詠んでいる。まさしくユニー句。

・どしゃ降りの雨と涙でまず一勝(ペンネーム「くにたん」さん 66歳)
→とにかく勝ってほしいカープファンの気持ちがよく伝わる一句。

・雨よりもツキを味方に星拾う(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
→野球というより相撲の気分の句になったのが惜しいが、これまたシャレの効いた句である。

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年10月20日(金)

第70回 お題「カープの優勝トロフィーを見ている人々(映像を見て)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「カープの優勝トロフィーを見ている人々(映像を見て)」。
最近、毎回のように新しい方からの投句があり、俳句に興味をもってもらえうれしく思います。
一方で「俳句は奥深いもの」、ですから年季がいります。
なので思い立ったが吉日、毎週のように選評がもらえる場は非常に少ないので、この機会をぜひ活かしていただければ幸いです。

この俳句道場で、映像から詠む場合のポイントは原則3つあります。
1. 映像から安易に飛躍せず、作者と映像が一体となって詠まれていること。
2. 映像の気分が出ていること。
3. 作者の解説や映像なしに句を詠んでも、詩として成立(自立)していること。

俳句ではよく「吟行」が行われます。
仲間と旧跡や各所を訪れ、俳句を詠みあうものです。
同じモノを詠みあうことで、いろいろな人の感性の違いに触れることができます。
映像から詠むというのはその疑似体験のようなものでしょう。
優勝トロフィーを中心にして、いろいろな観点から集まった句の数々。
ご自身の句だけでなく、ぜひ道場の句友の句とともに味わっていただけば幸いです。
そうすることでいろいろな気づきや発見があり、感性も磨かれることでしょう。

今回の選句でも、映像から安易に飛躍することなく、映像と一体となって詠まれたと感じられる句を大賞にしました。
大賞句は素朴な実感の句ですが、無理のない詠法で、どこかトロフィーと作者が一体となってよまれたような気分が感じ取れ、お見事でした。
入賞句は、大賞句の堂々たる実感にはもう一歩でしたが、俳句として言葉の働いた上手い詠みぶりでした。

特選は原則、映像の気分を上手くとらえたもの・飛躍しつつも俳句として芸術性の高いもの。
入選Aは原則、映像の気分を伝えるような句。
入選Bは原則、映像から飛躍しているが、カープ優勝の気分の感じられる句。
選外は、飛躍のしずぎ、気分に乏しいもの、などとしました。

ご投句いただいた皆様、放送をご覧いただいた皆さまどうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂するこなく、毎週の感性を磨くこの機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。どなた様もまずは気軽に「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからご応募ください!

大賞

「秋深し優勝カップ胸をはり」(ペンネーム「雅」さん 55歳)

堂々たる句で、句意も明瞭。
今回の応募句の中で、最も映像との一体感、すなわち「優勝カップ」との一体感が感じられた句で迷わず大賞にした。
まずもって、「秋深し」により、一シーズン終え優勝を勝ち取ったという安堵感や喜びが季節感とともによく感じられてくる。
「秋深し」は文字どおり「秋が深まりもの悲しさが感じられてくる様子」で、実感としては11月に入ってからであるが、一般には十一月になると冬の季語となるので、今頃の時期によく使われる。
この句のミソはなんといっても「優勝カップ胸を張り」。
「優勝カップ」を傍観し、その見た目の輝きや美しさを述べている句がほとんどであったが、この句は「優勝カップ」そのものの「動き」を述べているところがいい。
「優勝カップが胸を張っている」という無意識からの実感、(そんな気がする)を上手くつかんだ。
「優勝カップ」そのものの息遣いに託して詠むことで、作者と「優勝カップ」が一体となった気分が強く感じ取れるし、ひいてはカープファンである作者、そしてカープファン全員が「優勝カップ」と一体となって「胸を張っている」気分が感じ取れてきて、深く共感を誘う。
「胸を張れる」のは、ここにいたるまで、市民や選手が一体となって正々堂々の戦いを繰り広げてきたからであろう。
その一挙手一投足をつぶさに見守ってきた熱いファンならではの素直な実感の句である。
飾らない素朴な表現であるが故に、「市民に根差した市民球団の優勝の気分」が余計に伝わってくる。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
実感(真実・そんな気がする)を何より優先する。

入賞

「トロフィーに映る勇者や紅葉晴れ」(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)

トロフィーに勇者が見えたという実感(そんな気がする)を上手く捉えた。
トロフィーを見ている市民の方々もその輝きの中に、今年のドラマ、そしてまさに勇者を見たにちがいない。
また、実感としてはまだ少し早いが「紅葉晴れ」という季語をもってきているところも、季節感やカープの赤・広がる高揚感の気分が上手く引き出せているようである。
映像を脇においておいて、独立した句として眺めてみてもしっかりと成立している。
いわゆる映像の気分を季語をからめながらうまく醸し出した一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募下さい!
<作句のポイント>
モノに気分を託す。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・トロフィーの色づく秋の人の群れ(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※トロフィーも群衆も高揚し秋色に染まってゆく。その光景です。
→映像全体の気分を見事に捉えた句である。「色づく」が「トロフィ」「秋」の両方にかかるような詠み方が働いている。応募句の中で最も美しい詩情を醸し出したさすが名人という一句。

・賞杯の艶酔いしれる望の月(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※優勝トロフィーの艶やかさがキレイな満月を眺めているように感じ句にしました。
→映像からやや飛躍して幻想性を詠んだ。「望の月」あたりに高揚感を託すところはさすがである。

入選句

特選

・賞杯の眩しく照らす今日の月(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 36歳)
→「賞杯・眩しい・照る・月」とイメージが重なってありきたりな関係になっているのが惜しい。詩情をだそうとしているところはよい。夜に飛躍したが次回は映像とさらに一体となった気分の感じ取れる句を期待したい。

・トロフィーに曇りはあらず天高し(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→トロフィーと天高しは少し近しいが釣り合った関係である。惜しいのは中七の断定表現。断定してしまうと読者は、それ以外に解釈できなくなってしまい読者の自由な解釈をさまたげ惜しい。まだ「トロフィーの磨きぬかれて天高し」などのほうが、どんな美しさだろうかなどと想像の余地が生まれいいのである。味を残して詠むようにしたい。

・受験生、カープの次はオレの番。(ペンネーム「殿様」さん 44歳)
→トロフィーを見ている受験生と一体となった句であろう。新しいお名前であるがあまりにも強い実感に圧倒され採った。スポーツから頑張りがもらえるのもえるのもその魅力でもある。細かいことだが俳句に句読点は必要ないので次回はそのように。まずは575のリズムでどんどん詠んでみていただきたい方である。次回もぜひご投句を!

・新月やトロフィーだけが光りおり(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
→「新月・トロフィー・光る」が「すべて「光」つながりでイメージの重なり、ありきたりな表現でおしい。読み方はさっぱりとしていてよい。次回は映像とさらに一体となった気分の感じ取れる句を期待したい。

・金杯や三万人の後の月(ペンネーム「伊予吟会 宵嵐」さん 47歳)
→映像の気分というよりは、多くの人々の高揚感が詠みぶりから詩的に感じ取られてきて美しい句である。いわゆる抑制のきいた伝統的な詠み方をされるタイプなのであるが、ここは道場であるから、思い切った表現も見てみたい楽しみな方である。

・紅葉燃ゆ街真ん中に金の杯(ペンネーム「御衣黄」さん 47歳)
→カープファンの中心に据えられたトロフィーという気分がよく出てる。これくらい読めれば十分であろう。次回は映像とさらに一体となった気分の感じ取れる句を期待したい。

・トロフィーに刻まれてゆく秋の空(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→何より「トロフィーに刻まれてゆく→秋の空」という意外性がよい。普通は「トロフィーに刻まれてゆく→チーム名」である。そのようなありきたりの関係を引っ込めて、「秋の空」の美しさ・広がりに、優勝の季節感・高揚感・喜びを託したところが見事。この方向で。

・オリンポスの丘紅葉す優勝杯(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
→映像から飛躍した句であるが、高揚感がよく出ている。次回は映像とさらに一体となった気分の感じ取れる句を期待したい。

・栄光のトロフィーかざす夏の空(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
→「栄光・トロフィー」もイメージの重なり・ありきたりな関係なのであるが、一番は大賞句のような一体感にとぼしいのが惜しい。「栄光のトロフィー揺れる夏の空」などもう少し自分に引き寄せて詠みたい。詠み方そのものは上手い。

・瀬戸の海金色に輝く優勝杯(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
→中七が上下にかかる詠み方で言葉を働かせた上手い詠み方であるが、傍観の句で大賞句のような強い実感に乏しいのが惜しい。次回は映像とさらに一体となった気分の感じ取れる句を期待したい。

・豊の秋トロフィー見つめをる鯉城(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→大きな詠み方で上手い句。喜びの気分もモノにじっくり託した。次回は映像とさらに一体となった気分の感じ取れる句を期待したい。

・トロフィーの耀き眩し西日さす(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 66歳)
→「トロフィ・輝き・眩し・西日」と「光」のイメージが重なりありきたりな関係が惜しい。しかし「トロフィー・西日」の対比はほどよい。映像の気分というようは句の気分寄りだが「トロフィーの立ちつづけたる西日かな」など。次回は映像とさらに一体となった気分の感じ取れる句を期待したい。

・花紅葉写すカップや日本一(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
→少し飛躍している感じだが、気分の出た句で美しい。やはり対象を傍観で詠んでいるのが惜しい。次回は対象とさらに一体となって詠みたい。

・トロフィーの天辺に沸く爽やかさ(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
→「爽やか」を秋の季語として詠んだのであろうがどうも中途半端である。素直に「トロフィーの天辺に沸くカープ女子」などと詠んでみたい。実感をどうつかまえるかが課題であろう。次回は対象とさらに一体となって詠みたい。

・秋空や勝ち星溢る優勝杯(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
→気分が出た句である。優勝杯から勝ち星があふれ出るという実感がいい。ただしこういう詠み方は観念的になるのでモノに託したい。「秋空の溢れてきたる優勝杯」など。このような詠み方でも気分は出るのではなかろうか。次回も挑戦を!

・セリーグのトロフィー覗く赤い羽根(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→観察の句で映像の中に「赤い羽根」をつけた人を見つけたのであろうか。あるいは「そんな気がした」実感の句であろうか。いずれにしてもはっとした瞬間を上手くモノに託した。この方向で。

入選A

・フラッシュに金色弾けるVトロフィー(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
・秋雨やマダムも続く勇者の杯(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
・トロフィーに映る笑顔が列を成す(ペンネーム「かなせのせなか」さん 40歳)
・トロフィーが光り輝くカープV(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・トロフィーや広島の空に実りおり(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・人の手を渡るトロフィー秋収め(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・トロフィーになみなみ注ぐや赤ワイン(ペンネーム「角森」さん 49歳)
・秋晴や航海果てぬ金の杯(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・トロフィーや選手らの汗清々し(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・トロフィーに映るもみじも赤くなり(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・トロフィに真っ赤な紅葉舞い踊る(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・セリーグのトロフィーに酌む新走り(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・秋晴れに原爆ドームとトロフィーと(ペンネーム「きいたん」さん 67歳)
・トロフィーに喜怒哀楽や燕立つ(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・トロフィーを掲げてみたき紅葉山(ペンネーム「ふー」さん 70歳)
・秋の日や優勝トロフィー歓喜の輪(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)
・感涙を集めて重し大トロフィー(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・トロフィーやカ−プ監督紅葉す(ペンネーム「みなと」さん 74歳)

入選B

・トロフィーはトランプタワーのティファニー製(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)
・赤と金秋を呼んだ セ界一(ペンネーム「鯉に恋する乙女」さん 18歳)
・17年待ってよかったV連覇(ペンネーム「せなまる」さん 19歳)
・生徒いう遊んでみたいトロフィーで(ペンネーム「優子先生」さん 34歳)
・腕高く熱き闘い杯掲げ(ペンネーム「みれりさママ」さん 35歳)
・ビールかけ誉れの杯を肴にす(ペンネーム「チャタロウ」さん 39歳)
・待ちわびたカープチケット手に入る(ペンネーム「ミミ」さん 40歳)
・カープ団ずっしり胸へとトロフィーが(ペンネーム「よこたん」さん 41歳)
・待っていた笑顔満開日本一(ペンネーム「天然さん」さん 42歳)
・セ界一次の目標日本一(ペンネーム「カープが一番」さん 43歳)
・歴史あるトロフィーを見て知る努力(ペンネーム「ようちゃん」さん 43歳)
・豊想い熱きおもいで皆えがお(ペンネーム「考え中」さん 46歳)
・Vトロフィー駅ビル群に競い勝つ(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・栄光の陰に光る努力(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
・いぶし銀磨き切ったる優勝杯(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
・ティファニーで乾杯カープV8(ペンネーム「マダム悦子」さん 55歳)
・真っ赤に燃えるプライド大回復(ペンネーム「よいとこ」さん 57歳)
・優勝杯広島秋の風物詩(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
・歓喜のさま紅葉谷にも似たりかな(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・秋色の天までとどけ鯉の華(ペンネーム「くればあ」さん 65歳)
・日々精進大衆前でトロフィ−が(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・トロフィーの赤の歓声金の月(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)
・大空へおかえりなさい千手の力(りき)(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・広島は歓喜に燃へり曼珠沙華(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・爽やかに女神見つめる緋鯉かな(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・秋の夜の勝利の雄叫び赤き武者(ペンネーム「コウちゃんのじいじ」さん 72歳)
・トロフィーも歓喜も天に舞いに舞う(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・秋晴れや白球ドラマ完結す(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)
・トロフィーの上下関係夜長かな(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・黄金のトロフィバットで高々と(ペンネーム「古志清右衛門」さん 77歳)
・大盃のビールに跳ねる緋鯉かな(ペンネーム「呆人」さん 77歳)
・セ界の光導く七戦の勝(ペンネーム「ワイ」さん)
・赤鯉が金杯に誉れ酔い(ペンネーム「鯉子」さん)

<ユニーク>※入賞に届かなかった句の中からちょっとホッとする面白い句をご紹介!

「祝杯に映る瞳は星のよう」
(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)

「トロフィーの重みを背負ってCSへ!」
(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 54歳)

「秋の日に輝くトロフィーもうひとつ」
(ペンネーム「バーガーとうちゃん」さん 61歳)

「鯉に恋日本一を取って来い」
(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年10月13日(金)

第69回 お題「さつまいも掘りをする園児たち(映像を見て)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「さつまいも掘りをする園児たち(映像を見て)」。
今回ははじめてお見受けする名前も多くありました。
新しいチャレンジをありがとうございます。

まず、「芋」と書かれた句がいくつかありましたが、俳句で単に「芋」といえば「里芋」のことになりますので、「里芋」ともとれそうな句については、「藷」「甘藷」「おいも」など「さつまいも」ととれるように事前に改めさせていただきました。
また、「藷掘り・掘る」の「掘」が「堀」になったものもいくつかありましたが、動作を表す場合は手偏の「掘」になりますので、これも事前に改めさせていただきました。
今回はその上で選句し、コーナーでの句の紹介、ホームページ上の掲載とさせていただきましたのでご了承下さい。

映像から詠む場合のポイントは原則3つあります。
1. 作者の解説や映像なしに句を詠んでも、詩として成立(自立)していること。
2. 映像から安易に飛躍せず、作者と映像が一体となって詠まれていること。
3. 映像の気分が出ていること。

大賞句と入賞句の差は、「映像との一体感が感じられる句」か「映像を見て詠んだ句」かの違いです。
大賞句は、応募句の中でも数少ない作者がさつまいもと一体となって詠まれたあたたかな句でした。
入賞の句は、詠み方は上手いものの「映像を見て詠んだ句」の域を出ていないのが、やや物足りなく感じました。

入選Bの句はユニー句なものも多いのですが、最初からそれが全面に出てしまっては、言葉遊びになってしまい詩情になりませんので、注意頂きたいところです。
入選B・選外あたりの方は、過去などの特選句以上の句を何度も詠み直して、俳句の「感じ」を掴んでいただければ、上位が狙えて来るかと思います。

「実感」について少し書いておこうと思います。
俳句ではよく「実感」ということが言われるのですが、私のいう「実感」は少しちがっていて、モノの本質を把握した感覚のことを言います。
例えば先日山を散歩しているときにふいに感じたのですが、「野の石仏は柔らかい」というような感覚です。
対して「野の石仏は硬い」というのは単なる「現象」です。
これは石仏の表情について言っているのではなく、あくまでその「本質」について述べています。
このあたりの感覚(そんな気がする)を逃さず句にして頂きたいのです。
特選以上の句などこのような実感がある句が多くあります。
探してみられるのもいいでしょう。

ご投句いただいた皆様、放送をご覧いただいた皆さまどうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂するこなく、毎週の感性を磨くこの機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。どなた様もまずは気軽に「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからご応募ください!

大賞

「さつまいも見つかるまでのかくれんぼ」(ペンネーム「きいたん」さん 67歳)

この句の「かくれんぼ」は、いわゆるゲーム的な「かくれんぼ」というよりは、単にかくれているという気分を楽しんでいる雰囲気ととれる。
映像を元に解釈するなら「さつまいもの私は園児に掘り出されるまで楽しく隠れてますよ」という句、句だけから解釈するなら「さつまいもの私はだれかに掘り出されるまで楽しく隠れてますよ」という感じになろう。
この句が優れているのは、作者と「さつまいも」との一体感。
「園児たちが藷掘りをしている様子」やその延長で詠まれた句が多かった中、映像中の「さつまいも」と一体となって、その立場で詠みあげたように感じられるところが優れている。
映像を傍観したり、映像を客観的にとらえていては、このような句は生まれない。
「藷掘り」は、大人にとっては普通の作業であっても、小さな園児たちにとっては大仕事。
「さつまいも」がそれをよく理解しているかのように、「僕はすぐに見つかるよ。がんばってね。」と言っているかのような、おおらかさでやさしい気分が感じ取れてきて共感を誘う。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
モノと一体となる。

入賞

「園児抱く空いっぱいのサツマイモ」(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 36歳)

「園児を抱く」「園児が抱く」両方にとれるが、どちらにとっても気分の出た句になっている。
映像の題からだと「園児が抱く・・・・サツマイモ」であろう。
これが「腕いっぱい」ではあたりまえで詩にならない。
「空いっぱい」だから詩になった。
大きな澄んだ秋空を引き込んでのびやかで楽しい収獲の秋の気分が出た一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募下さい。
<作句のポイント>
あたりまえを引っ込める。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメントとともにご紹介。入賞の場合は入賞欄でも紹介します。

・サツマイモ掘り起こしてく子の素顔(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
→サツマイモを掘り出している子どもの様子が普段見る事のできないような笑顔であり、たくましさを感じたため、句にしました。

・小鳥来る花の色した園児帽(ペンネーム「あや」さん 49歳)
→たんぽぽ組さんとうめ組さんでしょうか。小鳥のよって来そうな可愛い子たちです。

・掌へ地球染み込むおいも掘り(ペンネーム「大福ママ」さん 53歳)
→掌が土で汚れたらしい子が両手を擦り合わせているのを見て浮かんだ句です。

入選句

特選

・おいも掘り深く巡らす地下鉄路(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
→映像との一体感にやや欠けるのが惜しいが、句としては上手く面白い。目に見えない世界の実感を上手くモノに託して詠んである。次回は映像の気分が感じられる句を目指したい。

・さつまいも臙脂色なる半ズボン(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→半ズボンに象徴させたり色に託したり、句が分かってきた方。映像の気分も出ている。この方向で。

・さつまいも繋がっていく平和かな(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→詠み方は上手いが今回は少し飛躍しすぎのようである。モノに託して詠みたい。

・さつまいも紫の月欠けていく(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
→映像の気分というには飛躍しすぎで惜しかったが、句としては詩情豊かな句で好句である。「むらさきの月欠けてゆくさつまいも」のほうが座りがよさそう。舌頭千転である。

・黄帽子を縦一列に甘藷かな(ペンネーム「伊予吟会 宵嵐」さん 47歳)
→映像の気分も出ているし着眼や詠み方もモノに託して上手く、どうとでも詠める器用な方なのであるが、それ故に惜しいのである。つまりテクニックが先だって実感が置いてけぼりになるのである。贅沢な悩みであるがそこが次への課題であろう。

・園児らの声うらがえす甘藷畑(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「うらがえす」が意図的・主張の強い表現で惜しい。この場合は「うらがえる」としたい。舌頭千転である。しかし楽しい気分はよく出ている。この方向で。

・園児らのラッパのごとく甘藷掘(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 51歳)
→中七がやや中途半端で惜しいが、映像の楽しそうな気分はよく出ている。この方向で。

・さつまいも重なる笑顔ピラミッド(ペンネーム「雅」さん 54歳)
→少し盛り込み過ぎのようであるが、気分はよく出ている。「園児らの笑顔重なる藷の山」などでは。

・山積みの藷崩れゆく秋の山(ペンネーム「すずらん村」さん 55歳)
→映像の気分という点では弱く惜しい。全体的に「山」のイメージが強すぎるので、「さつまいも荷崩れてゆく秋の山」くらいか。しかし句そのものの魅力としてはなかなか面白い。

・園児らがそっくり返るおいもほり(ペンネーム「ひなじいさん」さん 62歳)
→全体的にやや平凡なのが惜しいが、園児らが藷蔓を引っ張る様子をなかなかよく捉えていると同時に、おかしさやほほえましさまで伝わってくる俳味のある句である。観察の利いた一句。この方向で。

・藷肥ゆる大地にスクスク子供たち(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→少し詠みが甘いのが惜しい。スクスクが安易である。「藷肥ゆる大地に育つ園児かな」くらいか。藷と子どもの気分の出た句である。

・園児たち土をかきわけさつまいも(ペンネーム「DIYじじ」さん 65歳)
→中七が平凡で惜しかった。「土・さつまいも」がつきすぎ。「園児たち明日をかきわけおいも掘り」くらいに詠んでいただけるとさらに詩になる印象である。次回はさらに飛躍したい。

・広き空はしゃぐ園児の甘藷畑(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)
→「園児の甘藷畑」ですべて伝わる印象である。「大空や園児飛び込む甘藷畑」などでは。映像の気分はよく出ている。

・藷掘りや空に飛び交う子等の声(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
→映像はよく詠んであるモノ句なのであるが、大事なのはやや平凡で感動が伝わってこないこと。「そんな気がする」実感をとらえたい。

・藷畑葉と黄帽でおおわれる(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)
→短歌の上の句のような詠み方であるが気分は出ている。葉と帽子の対比が面白い。

・園児等の藷とじゃれ合う昼の月(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
→映像の気分というには少し弱そう。しかし句そのものはなかなかの俳味がある。

入選A

・先生に藷を貢げる子供かな(ペンネーム「みぞはる」さん 17歳)
→まだ「先生に藷見せに行く園児かな」などのほうがしっかりしているのだがどうも平凡。ということは全体的に説明的なのである。次回は実感をもう少しモノに「象徴」させて詠みたい。

・澄んだ空声高らかに湧く甘藷(ペンネーム「かなせのせなか」さん 40歳)
→映像の気分というには少し惜しい。もう少し整理したい。しかしなかなかきれいで詩心を感じる。

・力こぶ自慢片手にさつまいも(ペンネーム「よこたん」さん 41歳)
→気分がよく伝わらない。「さつまいも盛り上がりたる力こぶ」くらいか。説明ではなく象徴的に詠むようにしてみたい。

・甘藷掘の果てに小人の寝顔かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→「果てに」が言い過ぎで惜しいし全体的に説明的である。大賞経験者であるが、出来事に寄らず、モノに託して象徴的に詠むようにしたい。

・さつまいも引いて大地を揺るがす子(ペンネーム「御衣黄」さん 47歳)
→やや言い過ぎ・説明的で惜しい。映像の気分ではばいか句としては「藷蔓をめくりあげたる大地かな」くらいにしたい。把握の仕方は見事である。

・ぬくもりを土に残すやさつま芋(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→すべて「さつまいも」に収斂される詠み方で惜しい。「掘り終えし藷あたたかき土のいろ」くらいか。モノに託して映像の気分が感じられるように詠んでみたい

・甘藷掘りや土の布団にゴーロゴロ(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
→放り出したような詠み方がユニークだが少しやりすぎであろうか。「藷掘りの土に寝そべる園児かな」くらいか。

・豊作や園児の笑みといもの蔓(ペンネーム「ハイカー」さん 59歳)
→「豊作」は言いたい事なので不要なようである。「園児らの笑みを繰り出す藷の蔓」くらいでは。

・真っ黒な手のひらの熱藷を掘る(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
→気分が伝わらないのが惜しいが、何か自分の中に湧き上がるものをもっていることはよくわかる。それをモノに託して象徴してほしいのである。

・甘薯掘るや飛行機の護謨弛みだす(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→また藷と護謨との対比ははやや離れすぎであろう。しかし方向性はよい。次回は映像の気分が感じられるように詠みたい。

・園児らの飛ぶ声澄みて甘藷畑(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
→少し盛り込み過ぎで惜しい。「園児らの声澄み渡る甘藷畑」など整理したい。映像の気分はよく出ている。この方向で。

・藷掘りで連なる笑顔園児かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)
→原句は説明的で惜しい。少し語順を変えてみたい。「子ども等の笑顔連なるおいもほり」など。気分のよく出た句である。

・藷掘りて自慢をし合う園児かな(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
→中七が言い過ぎで惜しい。「藷掘りの藷を見せ合う園児かな」くらいで詠みたい。映像の気分はよく出ていて面白い。

・天と地に連なる園児さつまいも(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
→詠み方が追い付いておらず惜しい。「藷蔓の空かけあがる園児かな」くらいでは。映像の気分は出ている。

・わあわあと歓声そらへ甘藷掘る(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→上五が荒く惜しい。まだ素直に「園児らの歓声空へおいもほり」などのほうがよい。たのしい気分はよく出ている。

・ピラミッド童積み上ぐ甘藷畑(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
→盛り込み過ぎて惜しい。句意からすると「園児らの積み上ぐ藷やピラミッド」くらいだが、ものたりない。映像の一部をよく観察している。

・袖まくり園児堀上ぐさつま芋(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→上五が言い過ぎで不要で惜しい。「園児らの影ごと掘るや藷畑」など。やるぞという気分は出ている。

入選B

・薩摩芋引き抜くときの空美味し(ペンネーム「鳥飼未来羽」さん 17歳)
・掘り起こせ今と未来と藷と夢(ペンネーム「広島ラブ」さん 20歳)
・にぎやかに掘ればほくほくさつまいも(ペンネーム「なつみかん」さん 35歳)
・藷抱え母へ土産と得意顔(ペンネーム「みれりさママ」さん 35歳)
・あんぐりと黄金色の彼女かな(ペンネーム「ハニーとまと」さん 38歳)
・収穫の喜びの声空高く(ペンネーム「チャタロウ」さん 39歳)
・負けまいと引っ張る藷つる綱引きに(ペンネーム「なお」さん 39歳)
・収穫に喜び溢るる秋の風情(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・甘藷掘るてこの原理に助けられ(ペンネーム「夏川ゆう」さん 41歳)
・綱引きださつまいも掘る子供達(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・もみじの手爪に土の食べる秋(ペンネーム「エベレスト」さん 43歳)
・芋ふかし皆で分け合いナラ合唱(ペンネーム「彩の介」さん 44歳)
・さつま芋、ホクホク食べるホクホクと(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・紅色の藷顔見せて頬紅潮(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・甘藷を掘りわらべの笑顔も宝物(ペンネーム「とうたん」さん 45歳)
・こちょこちょと腹よじらせて藷起こす(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
・旨いなエレベーター避け階段に(ペンネーム「可楽」さん 49歳)
・さつま芋秋の喜び重い芋(ペンネーム「KARA man」さん 54歳)
・秋晴れの爽やかな日においも掘り(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 54歳)
・青い空ただ焼いただけのさつまいも(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
・甘藷掘りはしゃぐ園児の踊る帽(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・闇を割き汽笛にさつまいもを食う(ペンネーム「インゴット」さん 57歳)
・幼子が大地の恵みに満天笑み(ペンネーム「やっちゃん」さん 57歳)
・さつま芋ゲットするぜとチビハンター(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・容赦なく天地もはしゃぐおいもほり(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・日を浴びて地べたは芋のパラダイス(ペンネーム「ヨシ整体」さん 59歳)
・藷掘りではしゃぎし子が嫁めとる(ペンネーム「バーガー とうちゃん」さん 61歳)
・金時とちから比べのわらべ舞う(ペンネーム「ジョウビタキ」さん 62歳)
・園児掘るさつまいも掘るさつまいも(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・地引き網藷のつる引き大漁だ(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 66歳)
・青空や園児らの手に藷のれん(ペンネーム「さくら」さん 67歳)
・手間要らず畑の中のサツマイモ(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・おさな児手大地を起こすおいもほり(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・甘藷掘りや比べ合う子の真剣さ(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・いもほりやショーキベタソバ鬼の顔(ペンネーム「ふー」さん 70歳)
・掘るよりも後の焼き芋待つ園児(ペンネーム「コウちゃんのじいじ」さん 72歳)
・園児らの挑みと笑顔芋掘り日(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・腰構え引きずり出すや薩摩芋(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・鈴なりのサツマイモ見て子らはしゃぐ(ペンネーム「古志清右衛門」さん 77歳)
・幼手が泥かき分けてふれる秋(ペンネーム「呆人」さん 77歳)
・もういいよ、戦時中は、藷だった(ペンネーム「なかちゃん」さん 82歳)
・児童(わらべ)らの夢よりでかいサツマイモ(ペンネーム「tokusann」さん 83歳)
・競う子ら芋の逃げたもご存知ない(ペンネーム「ワイ」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年10月6日(金)

第68回 お題「牛など(映像を見て)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「牛舎で牛乳を飲む有田アナウンサー(映像を見て)」。
今回もレベルの高いユニークな句を沢山いただきました。
どんな題の出し方であろうと、一句が自立していることが大事なのはいうまでもありませんが、ここ二回映像の題を出してみて思うことは「映像の気分」も大事にしてほしいということです。

選をする立場からすると、映像と一体となって生まれた句と飛躍した句とでは、印象が全く異なります。
映像をしっかり受け止めた句からは、映像と一体となっているなという実感を感じます。
反対に、飛躍した句(映像を部分的にとらえた句)は、句としては良くても、映像そのものとの一体感はどこにあるのか?ということになり、心ここにあらずではありませんが、ややもの足りません。

今まで出してきた「南瓜・秋刀魚」などの題では、題を自分なりに捉えてさまざまに飛躍したり、発想や可能性を広げたり、宇宙を広くとらえたりして詠んでいただいていました。
いわば感性の「横軸的展開」です。

一方、前回から始まった映像から詠む句というのは、作者全員が同じ映像を見ながら、如何にその映像と一体となって真実をくみ取るかという、感性の「縦軸的展開」の世界になります。

その意味で、今回の大賞の菊池さんは、「映像と一体となった、気分をよく伝える句」で見事でした。
しばらくは映像からお題を出してみようと思っていますので、皆さんもぜひ「映像と一体となって詠む」という点を意識してみていただければと思います。

ご投句いただいた皆様、放送をご覧いただいた皆さまどうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂するこなく、毎週の感性を磨くこの機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。どなた様もまずは気軽に「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからご応募ください!

大賞

「牛乳を飲み干す髭や竜田姫」(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)

「竜田姫」は秋をつかさどる女神で、春の佐保姫とともに知られている。
季語としては、秋の虹・台風などとともに「天文」に分類されているので、理論的には秋の天文・気象を示すものになるのであるが、イメージとしてはまさに「秋の象徴・秋の女神」である。
総評でも書いたが、今回の応募句の中で最も映像の気分がよく感じられ、迷わず大賞にした。
もちろん句としても自立している。
句だけを鑑賞するなら、若い女性が牛乳を飲み干している様子を竜田姫の女神のイメージと重ね見た句、あるいは、髭をはやした男が牛乳を飲み干している秋の一コマなどともとれようか。
映像を元に鑑賞するなら、牧場でかぶりものをして牛乳を飲んでる有田アナウンサーのかわいらしい様子と、秋の女神の印象を重ね見た句ということになろう。
いずれにしても、赤々とした紅葉に象徴される秋の神秘的で妖艶なイメージの「竜田姫」と、「牛乳を飲むときにつくられる髭」のイメージの対比(ギャップ)が面白く、期せずして俳味の出た面白味の感じられるユニーク(句)となっている。
有田アナウンサーとしても、秋の女神とイメージを重ねられて光栄であろう。
映像の気分を上手く詩に昇華できた一句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
映像の気分を詩に昇華する。

入賞

「放牧の牛に連なる鱗雲」
(ペンネーム「きいたん」さん 67歳)

広々とした土地に放たれた牛、そして大空に広がる鱗雲。
天地の空間の広がりが心地よく、秋ののびやかな気分が共感を誘う。
両者が遠景でとけあうようなところに自然との一体感が感じられるポエジーあふれる句である。
句としては全く問題ないのであるが、お題を出した道場主の立場からすれば「映像の気分」という点をもう少し反映していただきたかったというのが正直な感想である。
そのあたりがいわゆる普通のお題の出し方とは異なる点であろう。
大賞句のように映像を上手く反映した句があると、やむを得ず相対的に一段下がって感じられてしまい残念である。
いずれにしても、余計なことをいわずモノに託してのびやかな秋の気分を詠んであり上手い。
次回は映像の気分を醸し出したい。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募下さい。
<作句のポイント>
天と地の対比。

入選句

特選

・満月を抱え生まれし子牛かな(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
→ポエジーの感じられる神秘的な句で美しい。月と子牛もよく合っている。課題は出来事・言葉の美・散文的表現から如何に脱するか。俳句は他の詩と違うのである。次回は映像の気分を詠むことにチャレンジを!

・コンビニの明かり冷たき牛舎かな(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→上手い句なのであるが、総評にも書いた通り「映像を見て」というお題を出した立場からすると、映像の気分を上手く詠んだ句が出てきた場合どうしても弱く感じられ不利である。しかし句は現代の象徴のようなコンビニと昔ながらの牛舎の対比が効いていて上手い。次回は映像の気分を詠むことにチャレンジを!

・飛行雲牛舎にねむる蹄かな(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→雲と蹄との対比、大小の対比など、いろいろな対比が効いて句の調和がとれていて上手い句である。随分と句が分かってこられた。この方向で。

・牛乳の真白き髭や鰯雲(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 51歳)
→大賞句と似ているのだが大きく違う。この句が惜しいのは「牛乳・真白き・雲」と白のイメージが重なってしまっているところ。その点、大賞句は「牛乳を飲み干す髭や竜田姫」と白のイメージの重なりを巧みに避け、紅葉との関連の深い竜田姫をもってくることで赤のイメージをぶつけて対比を生み出している。しかして映像の気分を句にしようとした意志には共感したい。上手い方である。この方向で。

・秋の暮乳房の並ぶ牛舎かな(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
→乳房・並ぶ・牛舎のあたりが少しイメージが近く平凡で惜しかったが、牛舎の気分が出た句で最近句のレベルが上がった方である。この方向で!

・乳牛の乳房に泊る秋の蝶(ペンネーム「ハイカー」さん 59歳)
→ポエジーの出た句で好きな句である。私見では「泊る」は少々言い過ぎ。言いたいことは句にならないので、ひらかなで「とまる」くらいにして意図をぼかすほうが象徴的でいいであろう。この方向で。

・青空に牛乳こぼし鰯雲(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→なかなか面白いのであるが、ユニー句(俳味)は最初から出そうとするとどうしても作為的・意図的になってしまい成功しづらい。そこが惜しい。何かを言おうとせずじっくりモノに託して象徴的に詠むようにしたい。

・望の夜の牛舎に満つる深き息(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
→牛舎の気分がよく出た句である。俳句は散文ではなく韻文なので「~に~する」という散文表現が説明的で惜しい。しかしまずはこのようにモノに託す方向で。次回も期待したい。

・朝霧や子牛を載せて舟が出る(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 66歳)
→幻想的な句である。後半が散文的・説明的で惜しいが、ポエジーをわすれずに次回は映像の題の気分を出すことに挑戦してみてほしい。この方向で!

・秋の空牛舎の中の古時計(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)
→遠景からだんだん近景にポイントが絞られてゆくような詠み方が効果的である。モノに託す方向が分かってきた方。この句の方向で。

・月明かり静止画のごと牛の立つ(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
→「月光・牛」の対比で雰囲気の出た句である。中七は強い表現であるがこの句の場合あまり効いておらず惜しい。詩心をわすれずにこの方向で。次回は映像の題の気分を出すことに挑戦してみてほしい。

・朝霧を牛舎に運ぶ里の風(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
→前半「~を~に~する」と散文的・説明的(コト句)で惜しいが、「朝霧・牛舎・里の風」となかなか気分の出たモノ同士である。「朝霧の包む牛舎や里の風」などモノ句にしたい。次回は映像の題の気分の感じられる句に挑戦してみてほしい。

・乳牛の風船ふたつ秋日和(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
→「乳牛の」で軽く切れている句と取りたい。「風船」が胸のイメージで俳味の出た面白い句である。次回は映像の題の気分を出すことに挑戦してみてほしい。次回も挑戦を!

・もうひとつ夜空を仰ぐ牛祭(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
→「もうひとつ」が「もうひとつの夜空」ともとれて面白い。次回は映像の題の気分を出すことに挑戦してみてほしい。

・晴るる日のサイロに届く秋の声(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→秋の声は、秋の様々な音が醸し出す秋の少しもの悲しい気分。空間を広くとって上手い一句である。次回は映像の題の気分を出すこと。これに挑戦してみてほしい。

入選A

・曇天の月夜に響く牛の声(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 36歳)
→夜の気分は出ているが、「曇天の月夜」はどうもイメージがちぐはぐで惜しい。次回は映像の題の気分を出すことに挑戦してみてほしい。

・柿の花横でモーっと牛の声(ペンネーム「よこたん」さん 41歳)
→後半が牛尽くしでイメージの重なりで惜しい。とにかく中七がいけない。風景としての「柿の花・牛の声」という対比はよい。「柿の花くすぐってゆく牛の声」などモノに託したい。次回は映像の題の気分を出すことに挑戦してみてほしい。

・牧場にて秋刀魚一匹焼いて喰う(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
→あの映像から秋刀魚ではさすがに飛躍のし過ぎであろう。句だけをとってみても平凡。散文からの脱出・映像の題の気分を出すことに挑戦してみてほしい。

・逃げ惑う牛の影から月出たり(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
→この方も上の方と同じで、ときどきはっとさせられる句が出るかと思えば、物足りない句も多い。この句もごちゃごちゃとして整理がついていない。ご自身の句を模索中なのであろう。句の表面の言葉の技法などで何かしよう、述べよう、説明しようとするのではなく、ポイントを絞ってモノをデンと据えて象徴的に詠むようにしたい。

・ゆっくりと反芻してる牛の秋(ペンネーム「御衣黄」さん 47歳)
→牛を牛らしく詠んだ句で平凡で惜しい。日常を詠むときにはそこに批評精神がなければタダゴト句である。次回は映像の題の気分を出すことに挑戦してみてほしい。

・牛乳をやかんで沸かす農夫かな(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→面白いシーンを切り取っているようだがやはり平凡で惜しい。日常を詠むときにはそこに批評精神がなければタダゴト句である。次回は映像の題の気分を出すことに挑戦してみてほしい。

・菊日和飲みほすグラス白き肌(ペンネーム「雅」さん 54歳)
→映像に触発されて詠もうとした気分の良く感じられる句でその点を評価したい。次回も映像の題の気分を出すことに挑戦してみてほしい。

・牛舎より漏る咀嚼音秋深し(ペンネーム「すずらん村」さん 55歳)
→事実と真実は違うとテレビで話したのだが、事実寄りの句で物足りない。日常を詠むときにはそこに批評精神がなければ平凡である。映像の気分を出そうとされているところはよい。

・牛乳に草の匂いや秋の風(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
→映像の気分を良く伝える句で共感できる。問題は「匂いがするというコト(出来事)」を詠むのではなく、いかにモノに託して詠めるかである。「秋風や草の香のする牛の乳」など。次回は映像の気分をモノに託して詠んでみてほしい。

・地平線カウベルの音爽やかに(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
→下五ですべてを説明してしまって惜しかった。言いたい事は句にできない。「カウベルの音吸われゆく地平線」など。次回はもう少し映像の題の気分を出すこと。これに挑戦してみてほしい。

・牛の目に写る泣き顔ななかまど(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
→中七が言い過ぎで惜しい。ここから句にもっていきたい。「牛の眼の少し重たきななかまど」など。次回は映像の題の気分を出すことに挑戦してみてほしい。

・月明かり牧場の赤い三輪車(ペンネーム「ヨシ整体」さん 59歳)
→盛り込み過ぎというか「牧場」が効いておらず惜しい。「月明り赤く塗られし三輪車」などとすると意味深でイメージの膨らむ句にはなるが「牧場」が、、、入らない。次回は映像の題の気分を出すことに挑戦してみてほしい。

・六白牛の乳飲んで冬支度(ペンネーム「あさぎ」さん 65歳)
→映像の気分を詠んでいて好感が持てる。句は出来事を詠んでいる印象なので、モノに託してモノをデンと据えて象徴的に詠むようにしたい。「六白牛の乳を飲み干す秋の空」など。次回も映像の気分の感じられる句を。

・仰ぎ見る牛舎の傍に萩の花(ペンネーム「さくら」さん 67歳)
→上五が一番言いたい事なので不要。言いたい事を句にすると句が窮屈で説明的になる。それが超短詩の難しさ。「萩の花少しゆれたる牛舎かな」など。次回はもっと映像の題の気分を出すことに挑戦してみてほしい。

・牧場に乳牛寝そべり秋日和(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)
→なんとなく映像の題の気分が出ているのだが、平凡で惜しかった。事実でなく真実を詠みたい。この方向で。

・のんびりと藁食む牛や息白し(ペンネーム「コウちゃんのじいじ」さん 72歳)
→なんとなく映像の題の気分が出ているのだが、平凡で惜しかった。事実でなく真実を詠みたい。

・餌を食む乳牛並びて秋を弾く(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
→なんとなく映像の題の気分が出ているのだが、下五が言い過ぎで惜しい。「餌を食む乳牛もいて秋の風」くらいか。次回も映像の
題の気分を出すことに挑戦してみてほしい。

・乳牛の利口ぶってる風の秋(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→上五中七が言いすぎで惜しい。言いたい事は句にならない。それをなんとなくモノに託すようにしたいのである。「乳牛のまなこ四角き秋の風」くらいか。映像の気分を詠もうとするところは共感できる。

・秋侘し乳吞み児抱いた難民母(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
→侘しが言い過ぎで惜しい。言いたい事は句にならない。そのあたりの気分を如何にモノに託して伝えるかである。「乳飲み子を抱く難民や秋の声」など。しかし次回はもっと映像の気分の感じられる句を期待したい。

入選B

・雨の日の給食牛乳うそ寒し(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)
・触るなと言われた牛と悪い夏(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
・牛乳は、コーヒーに入れてもおいしいね(ペンネーム「あーちゃん」さん 16歳)
・牛を背においしいミルクいただきます(ペンネーム「せなまる」さん 19歳)
・団子いろ飲み干す君は愛しきや(ペンネーム「娘は3ヶ月」さん 23歳)
・牧場で焼肉食べてモーたまらん(ペンネーム「やすよ」さん 34歳)
・決めポーズごくっと一本牛乳瓶(ペンネーム「なつみかん」さん 35歳)
・草を食む牛をバックに乳を飲む(ペンネーム「チャタロウ」さん 39歳)
・干し草は牛乳となる秋の朝(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・二連覇でセ界牛耳り一気飲み(ペンネーム「かなせのせなか」さん 40歳)
・牛乳を毎朝、飲めるありがたさ(ペンネーム「叔父ちゃん。」さん 44歳)
・夜半の月コーヒーに落つミルク泡(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・うそ寒や牛乳飲まむ手を腰に(ペンネーム「伊予吟会 宵嵐」さん 47歳)
・秋実りおっぱい薫る待合室(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
・牛乳をごくごくのんで骨鍛え!(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 54歳)
・ラジオより牛歩戦術牧閉ずる(ペンネーム「稲穂」さん 56歳)
・牛小屋の匂い懐かし雲に乗り(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・柔らかき心に詰めたまきばの香(ペンネーム「インゴット」さん 57歳)
・牛乳を飲みほしパーッと秋の空(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・干し草を食べて生まれしミルク美味(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・牛の群れ鍵盤のごとく上下揺れ(ペンネーム「ひなじいさん」さん 62歳)
・牛走りバギーが走り秋惜しむ(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・青葉咬む黒牛からも白い乳(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・干支写真牛を求めて牧場へ(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・高原に母を探して舞う子牛(ペンネーム「キートン」さん 69歳)
・日本晴れ草原ワイン青チーズ(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・きなくさい世も小春日和の牛舎かな(ペンネーム「のぶさん」さん 70歳)
・口ずさむ朝霧こもりの牧場かな(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)
・仲秋が照らす厩舎牛二頭(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・搾りたての加熱なまちち旨きかな(ペンネーム「古志清右衛門」さん 76歳)
・放牧や上着一枚秋の風(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・牛乳で人よりも30センチ背丈伸び(ペンネーム「tokusann」さん 83歳)
・草を食むステーキが言う白い斑(ペンネーム「ワイ」さん)

広島俳句名人詠 ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメントとともにご紹介。入賞の場合は入賞欄でも紹介します。

・廃牛の乳房に落ちる秋夕焼(ペンネーム「あや」さん 49歳)
→ホルスタインと呼ばれたこともあったけど、今では肩が凝ってたまらん、という心境を廃牛に託して詠みました。

・列島を散りばめし背や秋の牛(ペンネーム「大福ママ」さん 53歳)
→牛の背中の柄を見るといろんなものに見えるので浮かんだ句です。

・牛乳を飲み込んでゆく秋の暮(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
→牛乳が勢いよく飲み込まれていくように秋の夕暮はあっという間にきてしまったという感情を句に込めました。

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年9月29日(金)

第67回 お題「梨(映像を見て)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「梨(映像を見て)」
新しい試みでしたが、皆さん創作意欲をくすぐられたようで、レベルの高い句がたくさん集まりました。
具体数は数えていませんが、いつもに比べ、特選・入選Aにあげられる句の数が若干多かった印象です。
特に特選以上の句は、単なる映像(写真的・動画的)の次元を超えた俳句形式を目一杯働かせた句が多く、とても頼もしくうれしく鑑賞させていただきました。

事実と真実は違います。
俳句は目に映った事実を事実らしく詩的に表現するだけの浅い世界ではありません。
いくら共感する事実でもそれが「=真実」とは限りません。
何を詠もうと、その奥に「何らかの真実」が感じられることが大事です。
俳句はそこまで行けるから奥深いのです。

もし、目に映った事実を事実らしく表現するだけならば、写真や動画、日記にしたためるほうがよく伝わるマシです。
俳句は、写真もどきでも動画もどきでも日記もどきでもない「何かの詩」なのです。
俳句は書かれてあることのさらに先(真実・大いなるもの)に行ける詩なのです。

今回は時間の都合で特選までしか評が書けなかった。
ご投句いただいた皆様、放送をご覧いただいた皆さまどうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂するこなく、毎週の感性を磨くこの機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。どなた様もまずは気軽に「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからご応募ください!

大賞

「ベネツィアの月欠けてゆく梨の皿」(ペンネーム「あや」さん 49歳)

今回の大賞受賞で見事3人目の俳句名人になられた。
まずは、心よりお祝いを申し上げます。
お題の映像で小野アナウンサーが手に持っていた「梨の皿」から実感を得た句であろうか。
ご存知のように「ベネツィア」は、イタリアの北東部にある水の都として有名な美しい街。
海外詠ともとれるが、現実には心象句であろう。
「ベネツィアの月」であるが、「皿に切って盛られた梨の形」との関係もあって、どことなく「三日月」がイメージされてくる。
この句の見どころは、ドラマのワンシーンのような幻想的で非日常的な雰囲気。
多くの句は、言葉を飾ったりして句の表面に強引に「非日常」を置きたがるのであるが、この作者は、句の表面では日常を詠みつつ、イメージされてくる世界(句の背後)に「非日常」を置いているので、句に窮屈さがなくのびやかである。
一人旅であろうか、水の都の夜景に浮かぶ「月」を眺めつつ、薄く切られた「梨」を味わう女性の様子がどことなく浮かんできて美しい。
この句の上手いところは、「句中の対比」が複雑・重層で句に自然と味わいをもたらしているところ。
イメージが膨らむ句には対比が効いている句が多いのだが、この句も例外ではない。
「月欠けてゆく」・「欠けてゆく梨」という大小の三日月形の対比。
そして、それらの三日月形と「皿」の円形との対比など、大小や一つの造形に偏ることなく、実に自然にちりばめられている。
また、ゆっくり欠けてゆく「月」と目の前で食べるリズムで欠けてゆく「梨」という時間の遅速の対比も一句の中にある。
このように、さまざまな視覚効果・時間の自在性などが混然一体となって、幻想的で美しい非日常的な雰囲気を醸し出しており見事である。
まさに「俳句は写真でも動画でも日記でもない何かの詩」、その見本のような句である。
以下は、俳句観の違いということになるが、このような成功している句において「月・梨」の季重なりを指摘する方はまさかおるまい。
また「季語の梨が主役になっていない」という方もおられようが、それもナンセンス。
芸術作品で大事なことは、素材の序列(主役脇役)ではなく全体の美。
そもそも季語を主役にしなければならないというルールなどないし、季語だけが他のモノのよりも優れていて、豊かなイメージを背負っているというわけでもない。
モーツァルトの交響曲のように、すべてが一体となって美の大波をつむぎ出しているところを感じたい。
女性特有の繊細な心情を、上手くモノに託して詠んだ透明感と色気のある一句です。
大賞おめでとうございます。
<作句のポイント>
句中の対比は、複雑なほうが味わいが深い。

入賞

「梨を剥く同心円の地球かな」
(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)

道場初期には立て続けに入賞を果たされていた高段者。
どちらかといえば写生口のおとなしい句風の方だが、それにあきたらず自分の世界を以後模索してこられた。
今回ようやく詩のバランスが取れてきて、久しぶりに存在感を示した。
意味も比較的拾いやすく、眼前の小さな梨を剥く動き、その動きを同心円にダイナミックに広げて行った先に、地球全体の自転があるという、わかりやすい句である。
この句の見どころは、水は命の源というが、果物の中でも特にみずみずしいイメージの「梨」と、水をたたえた青い「地球」の関係性を詠み込むことによって、イメージの先に「生命の輝き」を感じさせるところ。
さらに、「同心円」は、「梨→地球」に留まらず、→太陽系→銀河→・・・・・と宇宙全体につづいてゆくわけで、作者のびやかな気分も感じ取れてきて、共感をさそう。
眼前のモノに思いを馳せつつ、宇宙の壮大さや生命の輝きという真実を感じさせてくれる宇宙流の一句です。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご覧下さい!
<作句のポイント>
同じ形状同士の対比でも、質の違いによって、イメージされてくる世界は変わる。

「梨狩や青年の歯の美しき」
(ペンネーム「ハイカー」さん 59歳)

「梨狩」で梨をおいしそうに頬張っている青年の歯の美しさを詠んだ句で意味は明瞭。
お題の映像中、小野アナウンサーが歯を見せて梨を頬張っているところに触発されて詠んだ句であろう。
この句の見どころは、「梨」のみずみずしさや「歯の美しさ」が象徴する、さわやかで健康的な生命力あふれるイメージ。
「梨狩」の大きな風景から「青年の歯」にカメラが寄ってゆくような詠み方、「歯の白」に焦点を絞った詠み方が成功している。
何かを言おうとせずただモノに託して象徴的に詠んであるので、いわゆるリズムの悪さや散文の切れはしのような見苦しさもなく、定型にすっきりとおさまって響きもよく、実に気持ちがいい一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご覧下さい!
<作句のポイント>
何かを言おうとせず、ひとつふたつのモノに託す。象徴する。

入選句

特選

・梨捥ぎてぽっかりと空くカレンダー(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 36歳)
→「捥ぐ・空く」がイメージの重なりで惜しいところだが、「梨とカレンダー」の関係性は面白い。この方向で。

・梨ふたつ持て余したる乳房かな(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→「ふたつ・乳房」がイメージの重なりで惜しいところだが、「梨・乳房」の関係性は面白い。この方向で。

・梨の花散る喜びは愛される(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
→自身の俳句形式を模索中の方だが、「喜びは愛される」という表現が面白く、詩になっている。これからどう俳句を自分のものにするかである。

・月の水こぼれ落ちたる梨実る(ペンネーム「御衣黄」さん 47歳)
→「落ちて実る」と説明的で惜しい。「水・梨」もイメージが直接的すぎるようである。しかし自分の中の熱いものをなんとか詩にしようという思いの感じられる句である。意味ではなくモノに託すようにして、象徴的に詠みたい。

・東京の空に多めの梨送る(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→詩が分かってきた方である。「空に多めに」送ったので詩になった。これが「息子に多めに」送ったのでは詩にも何にもならない。俳句で大事なのは意味や事実ではなく真実を掴むことである。この方向で。

・梨香る風を追いぬく紅白帽(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→今回は全体的に素材が平凡で惜しかったが、キレイにモノに託して詠んであり、気分が見事に伝わる。この方向性で。期待大である。

・梨むくやせせらぎの音聞こえけり(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
→「や・けり」の切れの重なりが少々うるさいが、余計なことをいわずはっとした瞬間を上手くとらえた。この方向でよい。

・梨を剥く途切れ途切れの回顧録(ペンネーム「すずらん村」さん 55歳)
→「梨の皮」を剥くとき皮が切れぎれになる様子と、休みながら回顧録を書きあげてゆく様子が見事に重なり、秋の夜長の気分がよく出ている。このようにモノに託す方向で。

・家系図の左の端や梨を食う(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
→上手い。このように象徴的に提示されると読者は引き込まれる。読者は「左の端」と「梨を食べる」ことの関係性を必死で探るのである。これがつかず離れずの関係性である。このバランスが崩れると想像力が刺激されない。この方向で。

・太陽と月の間に梨の色(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→見事である。俳句形式をわが物にせんと格闘中なのであるが、俳句の常識に染まってないところがよいし、実に若々しい感性である。このようにまずは実感を詠んでほしいのである。この方向で。

・鈴なりの梨の実ゆれる耳飾り(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 66歳)
→ぶらさがりつながりで、対比が露骨なのが惜しいのであるが、モノに託す方向がよい。俳句は何かを説明するものではないという、俳句形式が分かってきた方である。この方向で。

・透明の空にふんわり実る梨(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
→全体的に平凡なのであるが、「ふんわり」という実感がすべてを救っていて詩になった。梨の実がふんわりとははじめて聞くが、言われてみれば納得。実感は詩の命である。

入選A

・梨ひんやり兄は帰ってきたばかり(ペンネーム「にゃんこのしっぽ」さん 17歳)
・梨狩やまた一つ取り戻す空(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
・秋晴れに梨をほおばりケ・セラ・セラ(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 36歳)
・梨ざらり人差し指にある砂丘(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・梨実る潮引く月の裏側か(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
・山深し羅宇の陋屋梨実る(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・天蓋のどこから梨の真っ二つ(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・童心の枝もたわわに梨の園(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 51歳)
・冷水に半刻浸かり甘き梨(ペンネーム「歩櫓玉」さん 53歳)
・秋晴れの運動会に梨一個(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 54歳)
・水浸し肩を寄せあう皿の梨(ペンネーム「雅「みやび」」さん 54歳)
・梨を剥くネイルアートが映える夜(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・告白の行方みさだめ梨を剥く(ペンネーム「稲穂」さん 56歳)
・タッパーを開いて香る梨の水(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・ひとつ梨ひとり食べつつひとり言(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・木曽駒や面皰が癒えぬ長十郎(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・梨畑笑顔たわわなハーベスト(ペンネーム「こんちかんママ」さん 65歳)
・丸く剥く伯耆因幡は梨の国(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・太陽の雫垂たる梨の園(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)
・背伸びして梨をもぎ取る孫娘(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)
・風の音空を見上げて梨を食ふ(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・木漏れ日に梨持つ母の影くの字(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・阿保らしきタロット占い梨の芯(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・さりさりと梨の白さや歯の白さ(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・曇天を引きずり下ろす梨の枝(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
・両の手に地球回して梨を捥ぐ(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
・梨の実くわえ射す光黒黒と(ペンネーム「わい」さん)

入選B

・梨狩りや頬張り果汁ふく無心(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)
・犬追われ子ら笑うなり梨の坂(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
・ピカピカしている梨は甘くて美味しいね(ペンネーム「あーちゃん」さん 16歳)
・空の梨背伸びする君いとかなし(ペンネーム「カリフラ」さん 20歳)
・果汁満ち広がる痛み口の中(ペンネーム「まみどり」さん 23歳)
・のどごしと子の笑顔よし今日の梨(ペンネーム「優子先生」さん 34歳)
・梨狩る子支え微笑む父の背中(ペンネーム「なつみかん」さん 35歳)
・梨の精大人の事情で出れません(ペンネーム「ブラック松風」さん 36歳)
・実るのは梨だけにあらずファンの夢(ペンネーム「チャタロウ」さん 39歳)
・秋風が甘い香りで誘う世羅(ペンネーム「かなせのせなか」さん 40歳)
・梨を剥くマニキュアの色不透明(ペンネーム「夏川ゆう」さん 41歳)
・梨ひとつ冷蔵庫にて熟れてゆく(ペンネーム「露伴」さん 42歳)
・梨狩りやバスカタコトねむりおり。(ペンネーム「叔父ちゃん。」さん 44歳)
・梨食らい甘き果汁に頬緩む(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・梨剥くや軍配返り待ったなし(ペンネーム「伊予吟会 宵嵐」さん 47歳)
・ジューシーな梨の恋人笑みこぼれ(ペンネーム「西区のぺんぺん草」さん 54歳)
・薄日にもつぶてとやらがあるか梨(ペンネーム「インゴット」さん 57歳)
・梨園で気取った男の絵画かな(ペンネーム「やっちゃん」さん 57歳)
・梨狩りで孫の成長皮をむく(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・21世紀世界を駆ける新甘泉(ペンネーム「ひなじいさん」さん 62歳)
・取り寄せの秋の香満ちし四畳半(ペンネーム「きいたん」さん 67歳)
・作り過ぎカレー持参し梨二つ(ペンネーム「さくら」さん 67歳)
・初体験梨狩りドライブ満腹じゃ(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・梨の里スカイランタンハイタッチ(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・梨着いた笑顔重なるスマホかな(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・文机に二十世紀と肥後守(ペンネーム「呑田」さん 70歳)
・水枕梨すりおろす母ごころ(ペンネーム「コウちゃんのじいじ」さん 72歳)
・梨狩りも旅もビデオの中で行く(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)
・リコリスやもぎたての梨供えけり(ペンネーム「古志清右衛門」さん 76歳)
・梨狩りの隣合わせでブドウ狩り(ペンネーム「tokusann」さん 83歳)

<ユニーク>※入賞に届かなかった句の中からちょっとホッとする面白い句をご紹介!

「梨を買え父がしつこいまじかいな」
(ペンネーム「わた」さん 44歳)

「梨がぶり月の裏側大洪水」
(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)

「病室のお下がりの梨噛み砕く」
(ペンネーム「湯来玉」さん 53歳)

「梨売りのスマホいじるや風の道」
(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)

「がんばれえオー世羅大地!と梨齧る」
(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)

広島俳句名人詠 ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメントとともにご紹介。入賞の場合は入賞欄でも紹介します。

・梨の実や軸傾きたる金星(ペンネーム「大福ママ」さん 53歳)
→クイズ番組で見た金星が、家にあった梨と傾き加減も同じように似ていて梨が一つの惑星のように思えました。

・焦げついた空剥けてゆく梨の肌(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
→日焼け後が秋になり剥けて白くなる様子を句にしました。

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年9月22日(金)

第66回 お題「V(ブイ・ビクトリー)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「V(ブイ・ビクトリー)」。
抽象的なキーワードでしたが、皆さん実感を掬い取って詠もうとされており、頼もしかったです。
前回のカープ俳句のときにも少し申し上げましたが、俳句は、一句が独立した詩としてしっかり立っている(成立している)こと、つまり、句だけをいつどこで鑑賞しても、詩として通じるということが大事です。

作者のメッセージと一緒に詠まないと理解できない、今ここでしか理解できないという句は、原則さけなければなりません。
「カープのVのこと」を詠んでいると思われるもの句が多かったのですが、残念ながら、Vや鯉だけではそれは伝わりません。

カープのことがイメージできなくとも、なんらかのイメージが感じられる詩として成立していれば問題ないのですが、抽象的でイメージの立ち上がりにくい句もありました。

よって、選外や入選Bは、抽象的なもの、伝わりにくいもの、詩情に乏しいもの。
入選Aは、独立した詩として何らかのイメージをもっているもの。
特選以上は、さらに俳句形式を生かした詩情の感じられるもの、ということになります。
どんなキーワードであろうと、「句だけを鑑賞しても詩になっていること」。
これを先ずこころがけていただければと思います。

ご投句いただいた皆様、放送をご覧いただいた皆さまどうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂するこなく、毎週の感性を磨くこの機会を楽しんでいただければ幸いです。
また次回からお題を、2つのユニークなものとし、お一人様、それぞれ5句程度まで投句頂けるようにした。どなた様もまずは気軽に「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからご応募ください!

大賞

「カープV母はセールに走り出す」(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)

11歳の作者が今回の大賞。
小学生や中学生の句を拝見していると、先生方が「季語・定型」という前提条件から教えることが多いからか、お行儀がよくて面白くないものが意外に多い。
しかし、この句は季語や前提を気にせず、カープの優勝と母親のワンシーンとの関係を、自分の感覚で自分の言葉で捕らえていて見事である。

句意も光景も明瞭。
カープが優勝し、母親がセールに飛び出すところを詠んでいる。
ひいては、カープ優勝で盛り上がる街中の人込みを縫うようにして進む母親の様子なども容易に想像できる。
優勝で沸き立つ人々と、一直線にセールに向かう母親との対比が面白く、俳味が出ている。

この句の上手いところは「は」という助詞の使い方。
これが想像力を刺激する詠み方で、間接的にさまざまな人々の様子を浮き上がらせている。
・「母は」→セールへ走る。
・「街中の人々は」→カープVで沸き立つ。
・「作者は」→母や人々を一歩引いて眺めている。

カープ優勝に心躍る街中の人々、セール一直線の母親、そしてそれらをちょっと醒めた目で観察している作者という、三者三様の世界観が交錯するような詠み方の奥に、「人はそれぞれ」という達観の精神のようなものが感じとれてきて共感を誘う。
ユニー句というものは、詠もうとして詠むものではなく、結果としてついそうなるという見本のような句である。
大賞おめでとうございます!次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
ユニー句を最初から詠もうとしない。ユニー句は結果である。

入賞

「稲穂にも鳥にも告げるカープV」
(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)

カープV・稲穂とあるので、広島の農村部での光景であろう。
優勝の喜びを自然のあらゆるものと共有して歩いているという作者の高揚感がよく出ている。
また「稲穂」という季語をもってきたところも、収獲のイメージと優勝のプラスイメージを何気なくからめており上手い。
作者の言いたい事や意味はすべて狂いなく、うまく表現されているのだが、それ故少し説明的で窮屈な句である。
どこか、余白のない水墨画を見せられているかのような気分である。
それは、句の構造が「カープV(を)稲穂にも鳥にも告げている」という散文の倒置でできているからである。
なので、例えば私が句中の素材で詠むなら、「カープV告げつつ歩く稲穂波」くらいにしたい。
「稲穂波」は田一面に熟れた黄金色の稲穂の波が揺れる様子であるが、このような感じにすると、
広い田の風景と作者との大小の対比、色彩美などが効いて、広がる高揚感が美しく感じられる句になるのではなかろうか。
原句は告げる対象を稲穂・鳥と特定しているが、改作はそこをぼかして、イメージの幅を広げている。
そこが一番の味わい深さの違いとなっている。
言いたいことを言い切るのではなく、どうモノに託すかである。
入賞おめでとうございます!次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
「言いおおせて何かある。(上手く言いつくしたとしてそれがどうした)」芭蕉

「列島の色裏返るカープV」
(ペンネーム「あや」さん 49歳)

「列島の色/裏返るカープV」「列島の色裏返る/カープV」どちらでも詩になっているが、前の位置の切れだと、「裏返るカープV」になり、全く違った意味になるので、ここでは、後の位置に切れがある句と解釈する。
カープの優勝で、テレビやインターネットなど、目に入るあらゆるものが「赤」に染まり、日本全国が湧いた一日。
その気分を「列島の色裏返る」がよく伝えている。
「裏返る」のは色なのであるが、どことなく「列島そのもの」までも歓喜で「裏返る」かのような気分が感じとれてくるところが面白い。
こういうところが、意味や散文的な解釈・理解ではなく、「ただ感じる」という世界になってくる。
カープVというそれだけでは概念的な言葉を、「列島・色」と取りあわせることで、大きく詩にもっていった手腕に脱帽である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
日常裏返せないものを裏返す。

入選句

特選

・カープVどこまでも行く赤列車(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
→カープと赤のイメージの重なりが惜しいが、とてもいい把握である。余計なこと言わず列車に託してあるところがよい。この方向で。

・秋晴れや一年分のVサイン(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→カープのことしても何かのうれしい出来事として解釈しても詩になっている。中七が生の表現・甘い表現と取られそうで惜しいが、気分のよく出た句である。

・赤ヘルのV金木犀の香りかな(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
→上手い詠み方である。カープVではなく、赤ヘルのVとしたところがまず良い。やはりこのほうがヘルメットのイメージが立ち上がってきて印象的である。下五が金木犀に対してひどいつきすぎなのが惜しかった。このあたりを気をつけられたい。この方向で。

・カープVお好み焼きの宙返り(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→全体的やや散文的で甘い詠み方であるが、、楽しい気分を上手くモノに託した。この方向で。

・胴上げやVの字に飛ぶ渡り鳥(ペンネーム「伊予吟会 宵嵐」さん 47歳)
→カープVなどではなく風景としてのVに託して上手い。この方向で。

・V8背を押し上げる夕日かな(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「V8」が今・広島だから通じる限定の表現で惜しい。中七下五には完全に脱帽。この方向で。

・金秋や日記に赤のVサイン(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)
→上手い。しかしどこかしら素材間(モノ同士)が平凡で惜しい。そのあたりが課題である。

・秋深し三段峡のV字谷(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)
→気分がよく出ていてVを風景として上手く使っている。惜しいのは景色が月並みなところ。日常風景を詠むときはそこに批判精神がほしいのである。

・秋の虫歓喜を詰めるVセール(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
→気分はよく出ているし秋の虫との取り合わせも面白い。惜しいのは「詰める」。これが袋詰めのイメージで「セール」につきすぎになってしまったようである。

・秋づくや彼女が編んだVネック(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
→綺麗な句である。Vの使い方も自然で嫌味がない。どこか物足りないのはどこからくるのか。「秋・女・編む・服」とやはり素材間の飛躍に乏しいことである。そこが課題。

入選A

・V8黄金に実る稲の波(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 36歳)
→V8だけでカープはイメージできない。何より全体的にプラスイメージの重なりで惜しいが高揚感がよく出ている。

・読みかけの本見失うVセール(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 36歳)
→読みかけの本とセールはイメージが離れすぎで惜しいが何らかの屈折した気分よく出ている。

・Vロード秋空を走るカープ陣(ペンネーム「HK」さん 41歳)
→気分はよく出ているが全体的に平凡な印象で惜しい。

・ブイサイン野球のできる秋高し(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→できるできないに主観の出た出来事よりの句で惜しいしイメージが湧きづらい。まだ「秋高し野球小僧のVサイン」など素直に客観的に詠むほうがよい。

・V祈願靴擦り減らす石畳(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 51歳)
→全体的にモノのイメージが近いところが句を平凡にしていて惜しいが、気分がよく出ている。

・干し柿やVサインする白きしわ(ペンネーム「雅」さん 54歳)
→どこか平凡なのは、宇宙は広いのに干し柿のことばかりに心奪われているからであろう。何らかの対比で詠みたい。

・秋の虹わし掴んでゆくビクトリー(ペンネーム「すずらん村」さん 55歳)
→なかなか実感の出た句だが後半が観念的になってしまって惜しい。「Vサインわしづかみゆく秋の虹」など。

・赤シャツの案山子軍手でヴィクトリー(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
→「赤シャツの案山子の胸やVサイン」など。

・野分晴れ足音高くVロード(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
→全体的にイメージの重なりで惜しいが気分がよく出ている。

・稲稔るこぶし突き上げカープV(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
→豪放磊落な詠み方が面白い。

・柘榴赤の実割れて弾けてカーブV(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 66歳)
→詠み方は詩的であるが柘榴・赤・カープとイメージが近く惜しい。

・カープV広島弁で生き生きと(ペンネーム「さくら」さん 67歳)
→イキイキとは作者の主観なので不要。「カープV広島弁の少女かな」など。

・Vの字に寝る吾子いとし蟲しぐれ(ペンネーム「おちえもん」さん 69歳)
→「いとし」は主観なので不要。「Vの字に寝る吾子細き虫時雨」など。

・Vカープの熱に抗う秋の蝶(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→「抗う」は主観なので不要。「Vカープ熱病のごと秋の蝶」など。

・秋空やV一色のカープ主義(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
→「V一色」はこの場合イメージしずらいし「カープ主義」は概念なのでモノに託すようにしたい。まだ「秋空にV字見つけるカープかな」などのほうがよさそう。

・Vの字が逆転カープに見える秋(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
→よくわかるのであるが、全体的に理屈でできているが惜しい。理性理屈ではなく、無意識からの実感のままに詠みたい。

・カープV歓喜に渦巻く瀬戸の秋(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
→「歓喜」が言い過ぎのようである。「カープV渦巻いている瀬戸の海」など。

・カープV称え合いたる虫時雨(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→中七が言い過ぎなのでモノに託したい。「カープV語り合いたる虫時雨」など。

入選B

・V目前帰る足取り雨もよう(ペンネーム「せなまる」さん 19歳)
・カープ坊や知るはVのみ1歳児(ペンネーム「ともママ」さん 30歳)
・デジャブかな田中掴んでビクトリー(ペンネーム「ふじくん」さん 30歳)
・あと一歩願いの先にヴィクトリー(ペンネーム「なつみかん」さん 35歳)
・Vサインウインク先は自撮り棒(ペンネーム「ウメ桃さくら饅頭」さん 37歳)
・かぶく赤松の葉片手にヴィクトリー(ペンネーム「かなせのせなか」さん 40歳)
・旅行先思い出重ねVサイン(ペンネーム「よこたん」さん 41歳)
・打って投げファンも息のむヴィクトリー(ペンネーム「一風変わった知識人」さん 41歳)
・V8が決まったその日は誕生日(ペンネーム「カープが一番」さん 43歳)
・赤白にカVて咲かす鯉の華(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・大空の雁も祝うやVの文字(ペンネーム「角森」さん 49歳)
・天球へ刻印Vや鳥渡る(ペンネーム「一斤染乃」さん 53歳)
・広島が活気あふれるV8(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 54歳)
・球場でV2願うカープファン(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・胴上げと背中で咲いた小さなV(ペンネーム「インゴット」さん 57歳)
・天高し赤つきぬけてヴィクトリー(ペンネーム「そら」さん 57歳)
・日本一熱燗ひとりVと呑む(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・カープV老若男女の合言葉(ペンネーム「やっちゃん」さん 57歳)
・Vビール勇者もはしゃぐ爆発だ(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・台風に邪魔され悲願地元V(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・逆転V君を信じて待つ私(ペンネーム「ひなじいさん」さん 62歳)
・VVとカープ打線に秋の覇気(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・初鷹狩ファンと成し得るV両手(ペンネーム「痺麻人」さん 63歳)
・V二つ並べてワンダフルの秋(ペンネーム「きいたん」さん 67歳)
・スタジアムビクトリーロードは鯉祭り(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・V8チームメイトの努力魂(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・おあずけV美酒美食か妻肥ゆる(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・曼珠沙華ラインダンスでカープV(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・今夜こそビール常温Vカープ(ペンネーム「のぶさん」さん 70歳)
・やれ嬉し秋晴れ笑顔のVセール(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・秋風やVしてゴール転んだ児(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・広島の日本一へのVセール(ペンネーム「古志清右衛門」さん 76歳)
・vロード草木も生えない70年真赤っか(ペンネーム「tokusann」さん 83歳)
・Vロード走って泣いて200万(ペンネーム「ワイ」さん)

<ユニーク>※入賞に届かなかった句の中からちょっとホッとする面白い句をご紹介!

「カープV新聞チラシ真っ赤っ赤」
(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)

「V8カープ優勝おめでとう」
(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)

「秋晴れに天まで上がるV預金」
(ペンネーム「キートン」さん 69歳)

広島俳句名人詠 ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメントとともにご紹介。入賞の場合は入賞欄でも紹介します。

・天高しカープロードへ続くV(ペンネーム「大福ママ」さん 53歳)
→台風が去って空も心も澄み切った日のカープの優勝が嬉しすぎて浮かんだ句です。

・V祝い血潮のたぎる天の川(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
→カープの優勝が決まり、赤い血が勢いよく循環するように本通りに入り乱れている様子を句にしました。

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年9月15日(金)

第65回 お題「カープ」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマはいよいよ優勝に大手がかかった「カープ」。
「カープ俳句」を詠んでいただくときは「カープ」という文字を入れていただくか、あるいは俳句だけからでも「カープ」のこととわかることがキーワード。
優勝シーン・カープ女子・応援の様子・街の様子・田舎の様子など、沢山の「カープ俳句」をいただき、うれしい悲鳴であった。
選外になった句は、句だけからだとカープのことと理解されないものが多かった。
カープを入れずに詠む場合、如何に誰もがカープをイメージできる句にするかが課題である。

また、今回は、入賞、特選、入選A、ユニー句、とさせていただき、ユニーク欄を増やした。
俳句のレベルは上記の並びの通りである。
意味もよくわかるものが多かったので、今回は選を味わっていただければ幸いです。

ご投句いただいた皆様、放送をご覧いただいた皆さまどうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂するこなく、毎週の感性を磨くこの機会を楽しんでいただければ幸いです。
どなた様もまずは気軽に「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからご応募ください!

大賞・松本裕見子選

「カープ勝ち熱冷めやらぬ栗ご飯」(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)

入賞・秀格選

「秋空や紅引き締めるカープ女子」(ペンネーム「すずらん村」さん 55歳)

作者は「紅」を「あか」と詠んでほしいということであるが、普通に「べに」と詠んだほうが「口紅」のイメージがしっかり立ち上がってきて印象的なので、そう詠むことにする。
句意も明瞭。
「秋の青空の下、若いカープ女子が口紅をキリリと塗り直している様子」がイメージされる。
つまり、「秋の優勝にむけての試合前、応援する女子が、選手同様に気を引き締めている様子」を詠んだ句である。
上から詠んでいくと、恋愛の句かなと思えるのであるが、「カープ女子」が出てきたときに「ああ、紅を塗るのは恋愛のためではなくて、応援のためなんだな」と解される仕掛け、この意外性がよい。
あまたのモノの中から、「秋空・紅・カープ女子」を選択してきた、その無意識の働きが優れている。
「俳句は句の表面で何かをするものではない」という見本のような句である。
「紅引き締める」が、おかしな表現だという方もおられようが、そんなことはない。
前後関係から上記のようにしっかりと読み取れるし、「勝負にかける熱い思い」がよく伝わってくる。何かピントのバッチリあった写真を見せられているかのようである。
この実感を得たとき、言葉らしくあろう俳句らしくあろうとすることを優先して「紅塗り直す」などとしたら一気に実感から遠ざかり、ピントのずれた写真を見せられているようになってしまう。
大きな「秋空」と、小さな「紅」の対比。
透き通る「秋空」の青と、はっきりと描かれた「口紅」の赤との対比などのよく効いた「優勝・日本一への祈りの気分」がシャープに伝わってくる鮮やかな一句です。
大賞おめでとうございます!次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
大小・色彩の対比を生かし、調和を生み出す。

入賞・城みちる選

「たる募金今のカープの底力」(ペンネーム「さくらのママ」さん 70歳)

入賞・馬場のぶえ選

「カープ好き歴代続く茶の間かな」(ペンネーム「さくら」さん 67歳)

入賞・宮脇靖知選

「おはよーの挨拶前にカープ談~」(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 54歳)

特選

「カープV妻の位牌を連れ回す」
(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 51歳)

句意は明瞭。
亡くなられた奥様の位牌を抱いて、優勝イベントなどへ繰り出す作者の様子を詠んだ句である。
Vは単なる勝利ともとれるが、よっぽどのことがないと普通位牌を連れまわすことなどはしないので、単なる勝利ではななくて、優勝あるいは日本一のことだなと感じ取れてくる。
亡くなられた奥様も生前そうとうなカープファンであったのであろう。
季語はとくに入っているわけではないの無季の句ということになるのだが、優勝・日本一を暗示させることで、自然と秋の気分を引っ張ってきているところが逆説的で愉快でもある。
また、「位牌」などが出てくると、しんみりした句になる場合が多いのだが、この句はどこか俳味(おかしさ)が出ていてユニークである。
それは、下五の軽やかな言い方が、重い「位牌」に対して意外性があり、イメージの釣り合いが取れているからであろう。
「もうそんなにあちこち行かなくてもいいわよ。十分感動をもらったわよ(笑)」などと、作者に笑顔で語りかける奥様の声が聞こえてくるようである。
カープ愛・深い夫婦愛の感じられる一句です。
次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
意外性のある言葉の展開が詩を生む。

「秋の空カープの軌跡指で追う」
(ペンネーム「夏川ゆう」さん 40歳)

今シーズンのカープの試合を思い返している句である。
秋だけに、優勝あるいは日本一になった後から、過去をイメージして詠んだ心象句であろうか。
カレンダーか何かのメモを指でたどりながら、この日●●がヒットを打ったとか、逆転したとか、ハイライトシーンを思い返している様子がよく伝わる。
また、「空・軌跡」あたりから、「秋の空」に高く上がったボールの光景も、なんとなく浮かんできて記憶と映像が交錯するような詠み方も上手い。
いずれにしても、過去の思い出をたどって、一喜一憂している様子を「指」というモノに託して詠んであるところが見事でリアル。
「秋の空」の大と「指」の小の対比。
「秋の空」の静と「指」の動。
「秋の空」の今と「軌跡」の過去。など、句中の対比もよく効いた調和のとれた句である。
次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
指・肌など自分の肉体感覚で実感を把握する。

その他 特選

・カープレッド増殖中の秋列車(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
・流星を追ってカープのホームラン(ペンネーム「レンジ」さん 23歳)
・秋の色はみ出す空やカープファン(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 36歳)
・カープ勝ち血潮の通う工場街(ペンネーム「メゾン松風」さん 36歳)
・稲刈りの賑わう空やカープ帽(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
・にょきにょきと風船はえるカープ戦(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・隣人カープと共に夏過ぎて(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・秋高し躍るカープのユニフォーム(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・マウンドの影動きだすカープかな(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
・カープめし線香の影張り付いて(ペンネーム「雅」さん 54歳)
・カープ燃え赤の溢れる良夜かな(ペンネーム「sora」さん 57歳)
・もののふの力舞吼カープや天高し(ペンネーム「ハイカー」さん 59歳)
・群れ来たるカープフリーク赤とんぼ(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・引越しの荷にカ-プ応援Tシャツ(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・秋空も磨かれているカープ愛(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
・紅葉やライトに映えるカープ女子(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
・会えばすぐカープの話温め酒(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)

入選A

・マジックの消えた星空カープ勝つ(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
・実りの秋カープ優勝占えり(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・逆転のカープ念じて濁り酒(ペンネーム「とわ吉」さん 45歳)
・男泣きはだしのゲンよカープ勝つ(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・稲刈る手耳と心はカープかな(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
・カープ戦高まってゆく木魚かな(ペンネーム「あや」さん 49歳)
・秋天を突く沸点のカープかな(ペンネーム「一斤染乃」さん 53歳)
・カープロードママチャリ飛びぬ秋の月(ペンネーム「大福ママ」さん 53歳)
・ウェイブでカープの球も冠頭へ(ペンネーム「インゴット」さん 57歳)
・球場の燃ゆる紅葉カープファン(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・満月の夜空にカープ舞上昇る(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 66歳)
・足ぶみもより歓喜へと行けカープ(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・秋の空真っ赤に広がるカープロード(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)
・たる募金今のカープの底力ら(ペンネーム「さくらのママ」さん 70歳)
・カープ愛燃えて残暑は長くなり(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・燎原の火のごとしなりカープV(ペンネーム「東広島なそじい」さん 74歳)
・競り勝ちやカープマジック残りよん(ペンネーム「古志清右衛門」さん 76歳)
・実る秋カープ優勝あと幾日(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・チャンピオン成ってカープの秋来る(ペンネーム「ワイ」さん)

<ユニー句>※入賞に届かなかった句の中からちょっとホッとする面白い句をご紹介!

カープ女子ユニー句

・呼ばれると恥じらいみせるカープ女子(ペンネーム「なつみかん」さん 35歳)
・カープ女子そこのけそこのけこい昇る(ペンネーム「ひらけ!ごまだれ」さん 37歳)
・道を行くわかり易いねカープ女子(ペンネーム「角森」さん 49歳)
◎恋よりも鯉に恋するカープ女子(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・秋夕焼老いも若きもカープ女子(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
・カープ女子いえいえあたしはカープ女史(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 54歳)
・柿剥くや待ちきれぬ日々カープ女子(ペンネーム「痺麻人」さん 63歳)
・天高しメディア取合うカープ女子(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)

カープ愛ユニー句

・父の血をあたしが継ぐカープ愛(ペンネーム「りー」さん 49歳)
・チョモランマ雲突き抜けるカープ愛(ペンネーム「ひなじいさん」さん 62歳)
・カープ好き歴代続く茶の間かな(ペンネーム「さくら」さん 67歳)
・ばんざーい秋晴れカープアア最高(ペンネーム「グラン グラン」さん 70歳)
・星明り最高ですのカープかな(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
◎運動会赤を応援カープファン(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)

カープ観戦ユニー句

・年々と増えてく一方バカープファン(ペンネーム「観戦ルールは守りましょう」さん 30歳)
・マグレとは言わせぬ投打鯉魂(ペンネーム「ウメ桃さくら饅頭」さん 37歳)
◎カープ戦気持ちは常にベンチ入り(ペンネーム「迷走亭一門」さん 45歳)
・今年も鯉、カープの季節は1年中(ペンネーム「うちのコ マロン」さん 45歳)
・カープ勝つ燃ゆる夏は終わらない(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
・娘の嫁入り、カープも、絶好超(ペンネーム「きんきん」さん 58歳)
・覇気カープ逆転勝利最高です
・月の出や帰路足ばやにカープ戦(ペンネーム「きいたん」さん 67歳)
・カープ戦チッケト取れずテレビ前で(ペンネーム「リュー」さん 68歳)

カープ坊やユニー句

◎星月夜カープ坊やの深き夢(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
・秋満タンカープ坊やの貯金箱(ペンネーム「是多」さん 63歳)

優勝セール・他ユニー句

・金秋のカープ優勝セールかな(ペンネーム「御衣黄」さん 47歳)
・サヨナラへカープ案山子の仕事ぶり(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
◎今年またカープに感謝秋に宴(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)

<広島俳句名人詠>※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメントとともにご紹介。

・カープロードママチャリ飛びぬ秋の月(ペンネーム「大福ママ」さん 53歳)
→自転車で通われているというエルドレッド選手の大ファンです。エルちゃんが自転車で秋の月の中を飛び抜けるようなイメージで浮かんできた句です。

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年9月8日(金)

第64回 お題「ビール」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「ビール」。
季語としては「夏」ですが、9月8日から広島テレビのイベントで秋のビール祭りが開かれるということで、このテーマにいたしました。

「選句について」
選句の作業は、ミカンの選別とは違います。
なにがしかの条件(季語・定型・文法・キャリア・うんぬん)でふるいにかけているわけではありません。
一句一句の詩としての生命・輝きを見せていただいているのです。
だからこそ、血の通ったどんな句に出会えるか毎回わくわくしています。

「俳句はにじみ出るもの」
世には「俳句を作る・作り方」という発想がありますが(私も「作句のポイント」などと便宜上述べるときもありますが)、違和感があります。
俳句は料理のように何かを何らかの条件で混ぜ合わせて作るというようなものではありません。
よくあるのは「つぶやきや日記の切れ端や言いたい事に季語を合わせて」仕立てるというものですが、それは俳句の短さを逆手にとった「俳句形式の恩寵にあずかる作句態度」で、私は全く関心できません。
こういうのを俳句入門として教える風潮もあるようですが、私は賛成できません。
俳句は詩であり、詩は芸術。
それはただ「心中より滲み出てくるもの」。
その無意識からの実感(そんな気がする)に形を与えるのが俳句です。

「無意識について」
無意識を考えるとき、夢をよく例にとります。
皆さんも夢を見られたことがあるでしょうが、論理やつじつまが合わないことばかりです。
しかし夢を見ている間は、どんなにおかしな世界でも、非常にリアルに受け止めています。
無意識からの実感(そんな気がする)も、本人にとっては夢と同じくリアルな体験です。
夢も無意識もその人の意識できないある一面の働きによるもの。
ばからしいと捨てたりせずにそこに「形を与えてほしい」。
それが俳句(詩)です。
だから、季語・定型・文法などにこだわる必要はありません。
初心者・ベテランもそこまで関係ありません。

「詩とエピファニー・至高体験」
ゲーテは「ファウスト」の最後で、「世界のあらゆるものは隠喩だ」と言っています。
芭蕉は「ものの見えたる光(三冊子)」と述べています。
神話学者のジョーゼフ・キャンベルは、『神話の力』の中で、「詩は通り抜けられる言語です。・・・(略)・・・暗示されているものは、当の語句を抜け出たところにある。語を通り抜けたところに光明があり、エピファニーがある。」と述べています。
これらは、句の表面そのものではなく、句からイメージされてくる世界のスケールや調和を大事にする私の「宇宙流の俳句観」ともかなり近いとらえ方です。

「詩(象徴)とレストランのメニュー(記号)」
詩(象徴)とレストランのメニュー(記号)は違います。
レストランのメニュー(記号)では「ビール」選ぶと、「ビール」が出てきますがこれは詩ではありません。
俳句(詩)が俳句(象徴)であるためには、「ビール」を詠みつつも、「ビール」を越えたなにがしかをイメージさせるものでなくてはなりません。
それが、神話学者のジョーゼフ・キャンベルのいう「詩は通り抜けられる言語」ということになります。

今回の大賞句などは、「ビール」を詠みつつ、「ビール」以外のイメージ(世界)を引っ張ってきているところ(象徴性)が見事です。
そのあたりを感じとっていただければ鑑賞は成功でしょう。

ご投句いただいた皆様、放送をご覧いただいた皆さまどうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂するこなく、毎週の感性を磨くこの機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人5句程度まで、どなた様もまずは気軽に「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからご応募ください!

大賞

「缶ビール文字あふれだす置き手紙」(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)

「缶ビール」と「置手紙」という舞台装置。
これだけで世界がもう整ったという感じの句で、モノへの託し方がずいぶん分かってこられた。
これは「別れ」のシーンであろうか、「突然の旅立ち」のシーンであろうか。
1. 「缶ビール」を飲みつつ置き手紙を読んでいる様子」2. 「あふれだす」という実感から、「やむにやまれぬ別れ」のようなものがイメージされてくる。
それは、子どもの突然の自立・旅立ちなどであろうか。
俳句は中七で崩れる場合が多いが、見事な言葉のメタモルフォーゼ(変容・意外性)である。
「缶ビール→文字→あふれだす→置手紙」と→の前後の言葉の関係性がすべて意外である。
読者の期待を裏切りつつ詩は展開し、一句を詠み終わったときに立ち上がってくる「置き手紙」を書いた人の、作者に対する「あふれ出る」思い。
そして「置き手紙」を残していたった人に対する「さみしさ・かなしさ・思い出」など、作者のまだ「整理のつかぬ『あふれだす』気持ち」。
その複雑なもろもろの感情などが交錯している様子が、「モノとモノの関係性」からあぶりだしの絵のようによく伝わってくる。
これを理性的に受け止めて、「あふれだすのは『缶ビール』で、『文字』は『置き手紙』のことだから、そのあたりを続けて、『置き手紙文字あふれだす缶ビール』のほうがいいのでは?」などと発想するのは余計なこと。
「缶ビール」と「置き手紙」が交錯するような詠みぶりにこそ、無意識からの実感が強く感じられる。のである。
大賞おめでとうございます!次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
モノとモノの関係性で、それ以上の世界を伝える。

入賞

「夜行バス国の訛りの缶ビール」
(ペンネーム「きいたん」さん 67歳)

シーンは明瞭で、気分のよく出た句である。
眠れぬ夜なのか目覚めた朝方なのか、「夜行バス」で、一期一会の偶然で座席が隣なった見知らぬ者同士が、会話をしている様子が眼に浮かぶ。
この句の上手さは、「国の訛りの缶ビール」。
ここに期せずして俳味が出た句で、これだけで、ビールを飲んでいるところが印象的な、地方に住むの豪放磊落などこか憎めない男性のイメージが立ち上がる。
「旅は出会いである」とはよく言うが、何を言うでもなく「夜行バス・国訛り・缶ビール」という心に止まった舞台装置を打ち出すことで、「旅や出張などでの、出会いの面白さ楽しさ」をよく伝えている
一句です。
入賞おめでとうございます!次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
俳句は何かを語るものではない。
無理に盛り込もうとせず、心に留まったモノに託してみる。

「黒ビール飲み込んでゆく輸送船」
(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)

「実感を詠むこと、モノに託すこと、句の背後のイメージを大事にすること」、これらが分かってきた俳句名人に近い方である。
この句を、散文的に解釈しようとすると「黒ビールが輸送船を飲み込んでゆく」という印象になり、さっぱり理解できない。
しかし、俳句形式に基づいて味わえば実に魅力的である。
解釈としては、「輸送船」の中に輸出用の黒ビールの樽が次々と積み込まれてゆくイメージの句。
あるいは、「黒ビール/飲み込んでゆく輸送船」とここに切れがある句で、「黒ビールの独特の色彩やイメージと、輸送船が黒い荒波をもろともせず進んでゆくイメージを重ね見た句」などとなろう。
ここではより俳句形式を活かした後者ととっておく。
「黒ビール」と「海の色」との色彩の調和。
「目の前の黒ビール」と「大きな海という」大きさの対比。
いずれにしても、「黒ビール」と「海」のイメージとの重ね方が上手く、「つかずはなれず」の絶妙の関係性を保っているところを感じ・味わいたい一句である。
どこかしら「だまし絵」でも見ているような気分になる句で、「黒ビール」が「海」になってゆくような、「海」が「黒ビール」になるような、そんな気分を醸し出していて幻想的である。
「諸行無常」ではないが、この世の存在はすべて常に流動変化するということを思えば、このような表現や感覚も理解できるのではなかろうか。
句の背後のイメージが豊かな「宇宙流」らしい一句です。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
モノとモノの醸し出すイメージの関係性を大事にする(楽しむ)。

<ユニーク>※入賞に届かなかった句の中からちょっとホッとする面白い句をご紹介!

「天辺にカープ居座りビールかな」
(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)

「たまに負けカープとビール苦さ増し」
(ペンネーム「tokusann」さん 83歳)

「小窓しめ老夫と風呂でビールかけ」
(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)

優勝街道まっしぐらのカープ。
「ビール」といえば、カープ観戦や優勝のビールかけのイメージ。
そんな句を多くいただきました。

入選句

特選

・煙突の白煙溢れし瓶ビール(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
→「煙突・瓶ビール」のイメージの重ね方が少々意図的なところが惜しいが、モノに託してあるところ、気分が出ているところがよい。テクニックではなく自分の実感ある世界を詠むようにしたい。

・瓶ビール空湧き上がる里帰り(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 36歳)
→どうも下五が安易な気がするが、気分のよく出た句である。モノに託すこの方向で。

・広島の空に歓喜の麦酒かな(ペンネーム「御衣黄」さん 47歳)
→少々抽象的なのでもう少し具体性がほしいが、カープのことだなと気分は伝わる。俳句形式を活かした詠み方が上手かった。

・ビール酌む胡座の上の胡座かな(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 51歳)
→ユニークな句は詠もうとして詠むものではなく、結果としてそうなるもの。その見本のような句であり、俳味がよく出ている。実感を上手く掬い取った一句である。この方向で。

・缶ビールプルの向こうに黄金の国(ペンネーム「雅」さん 54歳)
→全体的に散文的なところが惜しいが、表現しようとしている世界は見事。実感を上手くとらえている。この方向で。

・缶ビールクシャッと潰し午睡かな(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
→軽みの句ともとれるが、「潰し」と意志や主観が働いているところがその分句を弱くしてしまい惜しかった。「クシャリと潰れ」くらいに軽く詠むほうが気分が出そう。

・教科書の茨木のり子麦酒飲む(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
→やや粗い取りあわせではあるが、それなりに気分はでている。

・潮風に足ぶらさげてビールかな(ペンネーム「ハイカー」さん 59歳)
→これでいいのである。ただし「ぶらさげて〇〇」が説明的なので「ぶらさげる」などとしたい。のびやかな心境がよくでている好句である。

・ビール越し金色染まる瀬戸の海(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 65歳)
→全体的に詠みが甘いがセンスを感じる。「ビール・黄金」「黄金・染まる」などイメージの重複に気をつけてみたい。

・天と地の黄金豊かにビールかな(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
→「黄金・ビール」はイメージの重なりであるが、おおらかな詠み方が好感がもてる。

・ビール注ぐブルーグラスや旅の部屋(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)
→全体的に日常世界で月並みであるが、「ブルーグラス」のイメージが面白くよく効いている。散文を17音に引き算して句に入れ込もうとせず、実感から湧き出るままの17音を期待したい。

・朱の鳥居立つ屋上のビアガーデン(ペンネーム「呑田」さん 70歳)
→俳句は何かを直接のべるものではない。モノに託すこの方向でいいのである。「鳥居・ビアガーデン」のイメージの対比が面白い。

・星明り語りあかすや缶ビール(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
→中七が甘く平凡で惜しい。しかして少々月並みながらも「星明り・缶ビール」は気分が出ていて共感を誘う。

・寮室の隅で指おる壜ビール(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
→寮生のどこかしらさみしい気持ち・屈折した気分がよく伝わる。モノに託すこの方向で。

・しまなみの渦穏やかに生ビール(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
→、「穏やかに」が少し甘く惜しい。その実感を「渦引き寄せる」など、さらに掬い取ってほしかった。しかし全体的には無理ないなかなかの句である。

入選A

・曇天を破る拳や生ビール(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→少々生で直接的な表現が惜しいが、カープ俳句的な気分の句としてはよくわかる。

・生ビール秋を眺めて空を待つ(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
→「空を眺めて秋を待つ」では平凡。その一点でやや救われたが、そこが今度は作為が目立った。やはり俳句を散文的なセンスで捕らえているところが一番の問題。俳句形式(切れ・韻文)を活かして詠んでほしい。

・ビールから溢れ出る泡河になる(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
→「ビール・川」ともに液体であるのでイメージが近いところと全体的に説明的なところが惜しい。モノに託すこと、俳句形式(切れ・韻文)を自分のものにすること。これが課題であろう。

・ビール蹴る路地に横笛幽かなり(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→少し盛り込む過ぎのようで惜しい。「ビール缶蹴る路裏や笛の音」など。

・なで肩のノンアルビール風をきり(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
→下五が安易で惜しい。しかし「なで肩のノンアルビール」という発見は手柄。俳句はなんとなく気分が伝わればいいものなでせめて「なで肩のノンアルビールや風の音」くらいか。

・地ビールの浮き沈みする雷魚かな(ペンネーム「あや」さん 49歳)
→「地ビール・雷魚」の関係性が導くイメージが湧いてこない。すなわち「離れすぎ」で惜しい。「つかず離れず」の関係性を句にしたい。

・愛娘嫁ぐ前夜の瓶ビール(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→タダゴト句で惜しい。散文的表現から脱出して。それ以上のイメージが湧く句を詠むようにしたい。

・子午線を飛び散らせたるビールかな(ペンネーム「一斤染乃」さん 53歳)
→中七の詠み方が安易で惜しいが、いよいよモノ句の世界・宇宙流の世界に入ってきた方である。次回を期待したい。

・ビヤホール足泳ぎ出す宇宙浮遊(ペンネーム「すずらん村」さん 55歳)
→「中七」の実感が天才的に見事なのであるが、それを「下五」で説明してしまって惜しかった。「地平線」など、何かに飛躍してほしかった。

・ビールにも恋にも少しある苦味(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
→言いたい事は見事に伝わるがそれ故惜しい。書かれてあること以上のイメージを伝えたい。俳句モノに託ようにしたい。

・夜勤明けスクランブルの缶ビール(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
→中七が安易というか直接的で惜しい。実感あるところを詠もうとしているところはよい。

・火燃え尽きて泡も消えたるビールかな(ペンネーム「ヨシ整体」さん 59歳)
→主観・自我・主張が出すぎなようである。「墓石の四隅冷たきビールかな」など。素直にモノに託すように詠みたい。熱い詩心をそのまま出さずモノを通すようにしてほしい。

・訳ありの空家にビール瓶2本(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→全体的に舌たらずな散文表現で惜しい。「上五」は言い過ぎである。「空家・ビール瓶」はなかなかの舞台装置なので「背の低き空き家居すわるビール瓶」など、モノに託すようにしたい。

・墓参り父の花立ビール瓶(ペンネーム「八重桜」さん 66歳)
→全体的に舌たらずな散文表現で惜しい。盛り込み過ぎなので少しモノを整理するようにしたい。

・立ち話松の影伸び缶ビール(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
→全体的に舌たらずな散文表現で惜しい。「松の影伸びゆくままに缶ビール」くらいに楽に詠みたい。

・缶ビール在りの遊びのゆらめいて(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→中七が意図的で惜しい。無意識からの実感ある句を期待したい。

・ブラックホールへ呑み込まれゆくビールかな(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
→中七が上句下句に対して平凡で惜しいが、大胆で若々しい句である。この方向を期待したい。

・缶ビール分け合ひて野の句座楽し(ペンネーム「尾首美知子」さん 78歳)
→「楽し」が言い過ぎで惜しい。いいたいことは句にならないので、「吟行の分け合って飲む缶ビール」くらいであろうか。

入選B

・川風に薄柿着たるビール持ち(ペンネーム「真土」さん 28歳)
・漆黒の麦酒の苦味大人かな(ペンネーム「なつみかん」さん 35歳)
・祝い星赤い笑み咲くビールの輪(ペンネーム「キャオ」さん 36歳)
・不器用は父親譲りビール酌む(ペンネーム「村蛙」さん 36歳)
・黒麦酒泡の先に歴史みる(ペンネーム「ウメ桃さくら饅頭」さん 37歳)
・えだまめとはいビールですたちまちと(ペンネーム「ひらけ!ごまだれ」さん 37歳)
・ふつふつと泡たまりゆくビールかな(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・ビール飲む孫は大人の世界見る(ペンネーム「夏川ゆう」さん 40歳)
・行く夏を惜しみながらビール飲み(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・バーベキュー ビール囲んで(ペンネーム「ぐーるぐる よこたん」さん 41歳)
・若鯉が花火打ち上げビールかけ(ペンネーム「おいざぶろう」さん 44歳)
・疎遠ですクリス先生ビール好き(ペンネーム「わた」さん 44歳)
・産湯にも使う鉄管ビールかな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・お酌する孫のビールは最高でーす(^o^)(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 54歳)
・百代の過客が交わす麦酒かな(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
・泡の髭苦虫噛んだセピア色(ペンネーム「猫チュー」さん 57歳)
・四時からのテレビ相手にビール飲む(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・ビール泡量の加減に愛をみる(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・老夫婦昨日のビール今日も飲み(ペンネーム「ひなじいさん」さん 62歳)
・青春の高歌放吟瓶ビール(ペンネーム「小野山道山」さん 62歳)
・訳ありがストローで飲む缶ビール(ペンネーム「痺麻人」さん 63歳)
・このビ-ル貴方と飲むから美味しいの(ペンネーム「マイマイ」さん 66歳)
・楽しみだ優勝決定のビ-ル掛け(ペンネーム「彩の介」さん 66歳)
・ビール抜き我もコップに三センチ(ペンネーム「さくら」さん 67歳)
・飲み放題ビール・ワイン等夜空の下(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・残業は会議も空ろ生ビール(ペンネーム「おちえもん」さん 69歳)
・孫の注ぐビールで乾杯鯉祭り(ペンネーム「キートン」さん 69歳)
・車座や今日のヒーロー缶ビール(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・前祝いダム放流か瓶ビール(ペンネーム「グラン グラン」さん 70歳)
・検診を終え早速にビールかな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)
・一汗によびこまれしやビール腹(ペンネーム「古志清右衛門」さん 76歳)
・膝に猫テレビに入るや缶ビール(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・子がまねた白髭愛しわがビール(ペンネーム「かいちゃん」さん)
・割れかけたビールや空やノーゲーム(ペンネーム「ワイ」さん)

広島俳句名人詠 ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメントとともにご紹介。入賞の場合は入賞欄でも紹介します。

・大洋の鯨跳ねゆくビアガール(ペンネーム「大福ママ」さん 53歳)
→頭の中に浮かんだもので特に意味はありません。

選者詠:谷村秀格

・缶ビールもぐりこんだる王の国

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年9月1日(金)

第63回 お題「葡萄」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「葡萄」。
今回も新しい方含め多くの句を賜りました。
世の中のほとんどを占める「現実を現実らしく詠む浅い俳句」ではなく、「モノを通して、その本質をあぶりだし、イメージの世界で、宇宙と一体となる宇宙流俳句」、その面白さや奥深さがいよいよ周知されてきたことをうれしく思います。
俳句を季語や常識・約束事・前提・文法などという狭く囲う方向(俳句らしさ)でとらえず、超短詩としての芸術性そのもの奥深さに挑戦していただきたく願う次第です。
その鍵は、言いたい事を直接述べるのではなく、モノにどう託すか。
今回の入賞3句はそのあたりが非常に見事なのが印象的でした。
その三句の解説を詠んでいただければ、その素晴らしさがご納得頂けるかと思います。

ご投句いただいた皆様、放送をご覧いただいた皆さまどうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂するこなく、毎週の学びの機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人5句程度まで、どなた様もまずは気軽に「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからご応募ください!

大賞

「三つ子抱くたわんだ空や葡萄狩り」(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 36歳)

今回は応募期間が長かったため、そのぶん投句も沢山いただいたが、一読したときから大賞候補として印象に残った。
「三つ子」は、三歳児、あるいは、多胎児として生まれた子供たちの両方にとれる。
作者は「三歳児」の我が子を詠んだようであるが、「多胎児」として生まれ出た「三つ子」と取るほうが、複数実をつける「葡萄」の気分に合っているので、ここではそうとる。
大事なことは、現実を現実らしく詠むことや、作者の意図通り鑑賞することではなく、詩の生命をどう見出すかである。
圧巻は言わずもがな「たわんだ空」。
「三つ子」ともなれば、一度に三人を抱く重さを正確に伝えるべく、思わず「三つ子抱く重たき空や葡萄狩り」などと詠みそうなところである。
これが「三人の子」の句ではなく、三歳児を詠んだ句であったとしても同様である。
その気持ち・意図をぐっと抑えて、「たわんだ空」と視覚化・触覚化したことで、句に一気に血が通った句である。
「たわむ」とは「弓なりに曲がる」というような意味であるが、固定された形ではなく、バネのような上下運動のイメージもある。
「しゃがんで」多くの子をかかえて「抱きあげる」というような動作や、「葡萄」を収獲する動作などとも見事に連動しており、イメージの釣り合いが上手くとれている。
ひいては、その上下運動のイメージから、「子育ての憂楽」の気分なども感じ取れてきて共感を誘う。
俳句という超短詩は「言いたいことをただ素直にいえばいいというものではない」ということを見事に示した手本のような句である。
大賞おめでとうございます!次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
言いたい事は直接言わない。モノに託す。

入賞

「黒葡萄色溢れ出す遊戯会」
(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)

「黒葡萄」は、古来より自生している(ヤマブドウ・エビヅル・エビカヅラ)を差しているともとれるが、句の気分としては、現在、贈答品などでよく頂く黒色種の葡萄のイメージであろう。
やはりこの句も「色溢れ出す」という中七の「時間性・意外性」がすぐれている。
「黒葡萄色溢れ出す」は、その地味な外見からは想像もできないジューシーで甘美的な味わいが広がってゆく様子を色彩になぞらえて感覚的に伝えているし、「色あふれだす遊戯会」は、「遊戯会(発表会)のシーンで、出だしは緊張していたが徐々に個性が表れてきた幼児たちの様子」を一瞥で象徴的に伝えている。
このように、「黒葡萄色溢れ出す」「色あふれだす遊戯会」のどちらも説明的表現ではないにもかかわらず、そのモノの本質(光)を的確にとらえているところが見事である。
芭蕉のいう「ものの見えたる光」というのは、こういう把握をいうのである。
そして最終的に、句の表面には書かれていないが、一句を通して感じ取れてくるフレッシュさ・のびやかさ・幸福感などが、自然と読者を楽しませる。
季語的な意味・辞書的な意味ではなく、自分の目でとらえた(実感)モノの本質(ものの見えたる光)を詠みあげた佳句です。
入賞おめでとうございます!次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
常識的な把握ではなく、実感(私はそう感じた)を大事にする。

「絵日記を開いて香る葡萄かな」
(ペンネーム「角森」さん 49歳)

作者は「絵日記の中の葡萄」を詩的に詠んだようであるが、それだと「絵の中の葡萄が香り立つようだ」という比喩の句になってしまい「葡萄・香」のモノとしての存在感が希薄である。
しかし、「絵日記を開いて/香る葡萄かな」とここに切れがある句と解釈すれば、「葡萄」そのものが眼前にある句になるので、ここではそうとる。
そうすると、「絵日記を開いた」とき、「葡萄」は本当の命(本質・輝き)を得た(香った)という詩的真実の句になり、イキイキしてくる。
つまりこの句も、芭蕉のいう「ものの見えたる光(モノの本質)」を詠んだ句ということになる。
「モノ(季語)の本質は、歳時記の記述ではなく、モノとモノ(素材)の関係性によってあぶり出される」というよいお手本である。
これは例えば、前の職場では生きがいが感じられなかった者が、転職してイキイキと生きているというような感覚と似ている。
人でさえ、その置かれた環境との関係によって、輝きも弱りもするのである。
「絵日記」が開かれたときこそが、「葡萄」が命を得た瞬間(輝く)なのである。
モノの本質を見事に把握した一句です。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
「モノの本質は、モノとモノとの関係性によってあぶり出される」

<ユニーク>※入賞に届かなかった句の中からちょっとホッとする面白い句をご紹介!

「にらみ合い肩こすり合い房葡萄」
(ペンネーム「雅(みやび)」さん 54歳)

「一房を孫と分け合う葡萄かな」
(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)

「甘やかに葡萄匂うや旅のバス」
(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)

ユニークな句の中でも今回は少しレベルの高い句をご紹介。
どれも様子がよく思い浮かぶ納得の句ですが、惜しいのは、現実(A)を現実のまま(A)詠んでいいて、それ以上にイメージが広がらないこと。
現実のモノ(A)を詠みつつも、それ以上の何か(非A)が伝わってくるような句を目指しましょう。

入選句

特選

・太陽の歌吸い込みし黒葡萄(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→中七が少し甘いのが惜しいが、こういうオリジナルな把握を大切にしたい。この方向で。

・葡萄棚関羽張飛の胸あたり(ペンネーム「伊予吟会 宵嵐」さん 47歳)
→「棚・胸」が意図的で位置情報としてつきすぎであるが、時空を広くとってのびやかなところがよい。

・海賊船霧に顔だす葡萄かな(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
→惜しいのは「霧・葡萄」の季重なりではなく「海賊」という意外性のある言葉を出しながら「船・霧・顔」と言葉の変容・展開が甘かったところ。しかして気分の出た句である。

・夜の雨重くなりゆく黒葡萄(ペンネーム「あや」さん 49歳)
→応募句の中ではこれがよい。自身の内面を上手くモノに託した心情表出が充分な句である。中七が安易に流れたところが惜しまれるが、この方向を期待したい。

・掌に葡萄食い込む樹海かな(ペンネーム「一斤染乃」さん 53歳)
→いよいよ「モノに託す・宇宙流」を掴んでこられたようである。実際の風景のようでもあるし、心象風景のようでもある。いずれにしても、心情表出が充分で、中七の把握と樹海の怪しげな気分がよくあっている。この方向を期待したい。

・掌の葡萄冷たく暖かい(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
→物理的には冷たいが心理的には幸福であるという詩的真実の句である。その発見・実感が共感を誘う。

・葡萄吸う薄紫の目を伏せて(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
→動詞に目が行くと「出来ゴト」を詠んだ「コト句」かなと思ってしまうが、全体としては、女性の繊細な内面をよんだ「モノ句」である。すべての言葉が静かに調和した青い世界を味わいたい。

・乳飲み子やまるまる太った葡萄かな(ペンネーム「ひなじいさん」さん 62歳)
→切れ字の重なりや中七の甘さは惜しいが、「乳飲み子・葡萄」がつかずはなれずで生命力の感じられるなかなかの取り合わせの句。

・早朝の霧の海から葡萄舟(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 65歳)
→惜しいのは早朝。これを入れたために説明的になり、幻想性が半減した。「霧・葡萄船」このあたりで句にもっていきたい。しかしてそのマイナスを充分カバーするくらいの気分の出た句である。実際の風景でも心象風景でも実感ある世界を形にすることが大事ということである。

・深海に触れて脈打つ葡萄棚(ペンネーム「きいたん」さん 67歳)
→「~に~して~する」が説明的で惜しいが、広がる「葡萄棚・深海」の幻想性は離れているようでよく呼応している。詠みに気をつけてこの方向で。

・火星より風きて葡萄ゆさぶらる(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)