テレビ派

コーナー紹介

俳句道場

放送日:2019年1月30日(水)

第105回 お題「梅」(選と評 谷村秀格先生)
総評

「何でもありの俳句から、俳句の【深み】へ」。
ホンモノを求める広島の皆さまや、現在の俳句に飽き足らない全国の皆さまからの強い支持を頂き今回も沢山のご投句をいただきました。どうもありがとうございます。

世の名には、つぶやきに季語を合わせて詠んだり、パズルのように言葉を当てはめて詠んだり、俳句型式の恩寵に預った詠み方があるようですが、私は感心しません。
俳句は詩は芸術ですからどこまでいっても「感動・実感(そんな気がする)」を詠まねばなりません。

また句の表面で、目をひくコトや言いたいコトを短く「正しく」美しく表現するのが俳句の楽しみだと思っている方もいるようですが、日本文化の本質がそのような表面的なところにあるのか、芸術の本質がそのようなところにあるのか、今一度考えてみていただければと思います。

この俳句道場で心掛けていただきたいことは、「託し詠み(私の造語)」です。
「託し詠み」とは、俳句の一番の特徴である「短さ」を活かした詠み方で、言いたいコト・ココロ・気持ちを言葉で直接表現せず、モノ(情景)に託して詠むことです。

今年も、以下①~④を踏まえ、モノからの気配「そんな気がする(実感・感動)」を大切に、「託し詠み」にチャレンジして頂ければ、「俳句の深み」を楽しんで頂けることと思います。
俳句は「詩語」ですから、気分(ムード)が出ておれば、文法・季重なり・教条など、細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則、有季定型(季語を入れた「定型感」のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②原則、仮名遣いは現在使われ将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を使用する。
③原則、俳句は余白を空けたり多行書きにせず「一行」で書く。
④原則、テーマをきちんと入れて詠む。

大賞句の「足袋の裏」は、小さな実感・感動をモノに託して美しく詠んだ句。
入賞句の「気管支」は、春の訪れを肉体感覚で詠んだ句。
入賞句の「クレーン車」は、梅とクレーン車の対比で希望を感じさせる句。
特選Aは入賞候補に残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高い句。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。
「梅」がきちんと入っていない句、花の梅ではない句などは、ユニーク(句)欄は別として、残念ながら選外としました。
ちなみに蝋梅は今回は可としました。

今年も全国から沢山の句を頂き、重ねて感謝を申し上げます。
目先の結果に一喜一憂することなく、将来のびのびと俳句の奥深さを楽しめることを目指して、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度(多作の方は自選で絞ることも大切、寡作の方は詠む癖をつけることが大切)、どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「梅一輪連れて帰りし足袋の裏」(ペンネーム「林檎嬢」さん 45歳)

作者によると茶会帰りの体験を詠んだ句とのこと。
雪駄と足袋のあいだに紛れてしまった梅一輪を、知らず知らず連れ帰っていたという句である。
この句を味わっていると、、秀吉から普通に生けるには不釣り合いなに一枝の梅と大きな金の鉢を差し出された利休が、大きな金の鉢の水面におもむろに梅の花を落として浮かべることで秀吉を感心させたという「利休の梅の花の逸話」が思い起こされた。
これらの句やエピソードは、意外性・意表をついたという点が目立つが、それ以上に大事なのは、それらの眼前の世界(A)を通して、真実(非A)を感じさせているところである。
芭蕉も「ものの見えたる光」と言っているが、それは眼ではなくココロでとらえたモノ(A)からの「そんな気がする・真実・非A」のことを指している。
句は、足袋裏の潰れた梅の花という眼前の光景(意外性・A)が、咲き誇っている梅というステレオタイプ以上の圧倒的な美と存在感(非A)を感じさせているところに注目したい。
それは、散り際の美とも言えるかもしれないし、奥ゆかしさやわびさびの世界といっても過言ではないであろう。
足袋で踏まれることによってむしろ梅はそのようなホンモノの生命の輝きを得ているという真実を、足袋裏を確認している着物姿の女性のなまめかしさも手伝って、実に美しく感じさせてくれる一句である。
ちなみに「足袋」は冬の季語であるがそのようなところは一句の芸術性の前にどうということはない。
気になるところがあるとすれば「梅一輪」というモノよりも、「連れ帰りし」という表現がやや強く、「連れて帰りし」という出来事に重心が乗っかっているようにとれるところ。
しかしながら、コト句モノ句というのは最終的には言葉や文法が決定するのではなくて、作者の心の「あり方」が決定するもの。
「モノ(そんな気がする)を詠んだ」と作者が言い切れるのであればそれはそれでよく、これはこれで一句でとしたい。
ちなみにこの「あり方」というのは、私見では、巷でよく言われる「季語が動く・動かない」や「言い切った句・言い切ってない句」などにもあてはまるので参考に。
作者の代表句になることを全力で保証したい。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
実(モノ)は虚(イメージ・真実・美)のためにある。

入賞

「気管支の先にほころぶ梅の花」(ペンネーム「比々き」さん 70歳)

梅園などで深呼吸したときの実感を詠んだ句にもとれるし、気管支の形状と梅の枝の形状を重ね見た句にもとれる。
句は、後者にとるほうが楽しめるのでここではそうとる。
普通われわが春を感じるのは、花が咲いているのを見たりその香を嗅いだり温のぬくもりを感じたりという外部の刺激によるところが大きい。
しかし、この句の把握は全く逆で、自分の中の気管支のほうから春めいてきて、それに触発されるかのように梅の花がほころんできたという実感を詠んだ句に取れる。
このように春への喜びを、自分のうちから湧き上がる肉体感覚としてしっかりと実感しているところが素晴らしく、人間の内部に潜んでいる原始性・野生・まわりの植物(梅)にまで影響を与えるその強い生命力のようなものが共感を呼ぶ。
俳句は映像と思っている人・カメラレンズ的・現実的にしか俳句を受け取れない人には何のことやらであろうが、俳句において大事なのは、「俳句『に』何を詠むか」ではなく、「俳句『で』何を詠むか」である。
俳句の文法などは「詩語」なのでうるさく言わない私だが、この「に」と「で」の助詞の違いは大きい。
例えば、日記俳句・報告俳句・事件俳句・目を惹く俳句などはすべて「に」の世界。
この句のように「で」の世界の道中に「詩語」があり、山頂に「真実」があると思いたい。
句はその意味で「先=ほころぶ=梅の花」あたりの語の関係性月並なところがやや惜しいが、一句の圧倒的な芸術性の前では、そこまで気にならない。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
傍観でなく、肉体感覚を詠む。

「白梅や土嚢をつるすクレーン車」(ペンネーム「としまる」さん 60歳)

作者によると災害復旧の河川工事の真っ只中の一本の梅を詠んだ句とのこと。
選句時に投句者の住所は分からないので、どちらの方かは分からないのであるが、昨年夏の西日本豪雨災害の復旧工事などがイメージされる。
句は、現実の光景を詠んだものであろうが、モノの引っ張り方(選択)が光った。
「土嚢・クレーン車」の切実な光景をライトのように照らす「白梅」の明るさ。
これらのモノの配合効果で、未来への希望がひしひしと感じとれてくるところが共感を誘う。
身近な体験・情景であろうから、感情や言いたい事もあるであろうが、それらを句の表に出さず、しっかりとモノ(情景)を打ち出して詠んだところが成功した。
「俳句(詩)を詠むというあり方」を強く持って詠まれた佳句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
「俳句を詠む」というあり方から生まれ出た言葉こそが「詩語」となる。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・梅の花少し解ける遺影かな(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※なし
→「解ける遺影」とあるが本当に解けているのは作者の心境。亡くなってすぐは気持ちが落ち着かないものであるが時薬という言葉もある。春の訪れに心境の変化を感じたという題意によくあった共感できる詠み方の句である。好句。

・梅園の深呼吸する大地かな(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※梅がちらほら咲きだすと凍っていた地面も柔らかくなって深呼吸するようにリラックスしているなと思います。
→春めく梅園の気分を大きく把握した感覚的な一句である。何をいうでもなくだだこの大きくのびやかな世界を楽しみたい。あたかもどこかの梅園に自身がいるような気にさせてくれるリアリティのある句である。好句・佳句。

・艦艇の入江の空や梅白し(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※呉の海上自衛隊の基地(アレイからすこじま)を丘の公園から見た、凛とした光景です。
→「艦艇・梅」という異質なものの取り合わせが織りなす世界観。少し硬質なその男らしい詠みぶりが力強い。好句。

入選句

特選A(入賞候補)

・梅の香に咲くや七色自由帳(ペンネーム「かたちゃん」さん 44歳)
→梅の香の下に広げられた自由帳の実感を「七色(そんな気がする)」と感じ取った感性に共感を覚える。やや観念的であるが題意によくあった明るい句である。ただあまり俳句慣れしていない方なのかやや詠み方が甘いので、古今の名句や入賞句などを詠むなどして俳句に慣れるといいだろう。好句・佳句。

・地球儀を一つ抱えて梅日和(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
→梅日和の空の青と地球儀の青の重なりが清々しい。地球儀という世界の象徴を一句に取り込むことで、外出へのワクワク感・ポジティブな側面を上手く増幅させているところが上手く、広がる春の喜びが共感を誘う。モノ(地球儀)とモノ(梅日和)の相乗効果・かけ算効果が見事に決まった一句である。好句・佳句。

・梅ひらく内ポケットの受験票(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→ひらくのが梅の花とも受験票ともとれるようなところが「詩語」として働いている。句の印象からすれば受験も上手くいったのではないか。少々類想感もあるが題意によくあった無理のない詠み方である。好句。

・梅の香を切り裂いてゆく路線バス(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 53歳)
→梅の香という美しいものの象徴を切り裂いてゆくという強い実感・ギャップがさらなる美となり畳みかけてくるような句である。類想がありそうなのがやや惜しいが好句・佳句である。

・梅白し学生街のワンルーム(ペンネーム「邯鄲」さん 57歳)
→梅と学生街とは意外に新鮮。早々と都会の大学進学が決まったのであろうか。これからの学生生活を思い描いている様子がイメージされる。句はたった二つのモノ(梅・ワンルーム)で象徴的にのびやかに詠んだところが成功した。「白」のピュアなイメージも大変効果的で、明るさや希望のようなものが自然と感じ取れてきて共感を誘う。好句・佳句。

・梅の香や空へつながる秘密基地(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)
→憧憬の句であろうか。梅の香りに託した自分の中のピュアな心、その高揚感がよく感じ取れ共感を覚える。好句・佳句。

・白梅や号令響く少年院(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→白梅と少年院の取り合わせ。白がよく効いてどことなく行儀よさそうな梅である。矯正教育を受けている人たちへの希望が感じ取れる。好句。

・梅林のかほり乗り込むローカル線(ペンネーム「おちえもん」さん 71歳)
→このような句の類想を指摘すればきりがなかろう。大事なのは類想感がありつつもそこに人まねではない実感が乗っているかである。この句の場合それがある。好句・佳句。

・バス停の白梅去りて少女くる(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→現実的・国語的に理解しようとすると中七下五あたりがとらえきれない。しかしながら歌の歌詞を感じるように「詩語」として感じてみるとこの不思議な措辞の展開も「白梅・バス停・少女」の織りなす幻想的な透明感ある世界観によく合っている。好句・佳句。

特選B

・梅の香をポケットにつめて教室へ(ペンネーム「むらさき」さん 6歳)
→類想感があるのがたまに傷だが素直な詠み方が共感を誘う。好句。

・降る梅や片面コピーの空の皺(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 19歳)
→「片面コピーの空の皺」という把握に心情表出ができた句である。。「降る・皺」などがややくどくも感じるがそこまでの傷でもない。今をしっかり生きている人の句である。この方向で自分の詩をうたってほしい。好句・佳句。

・始発ベル梅が香りを走らせる(ペンネーム「登りびと」さん 35歳)
→類想のようで「梅が香りを走らせる」という巧みな措辞がそれを避けた印象。傍観にならずしっかりとモノからのそんな気がするをつかまえてきた。この方向で。好句・佳句。

・梅の香の昂ってゆく梯子かな(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
→句から高揚感のようなものが感じとれれば鑑賞は成功であろう。俳句は何も現実に引き寄せて解釈する必要はないし、何かしらのストーリーやメッセージ・光景を伝えるものでもない。俳句はそもそも「詩」なのであるから、このようにただ何かしらの気分を感じさせてくれたらよいのである。ただし観念的にはならないように。好句・佳句。

・白梅や扇形なる日本海(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)
→どこかで見た光景か心象か。いずれにしても中七の把握(そんな気がする)が冴えた。春の明るい気分をおめでたい扇形が引き立てている。厳しいイメージの日本海との対比もよく釣り合っている。モノとモノとの力を生かし合うこの方向で。好句・佳句。

・白梅や仄あたたかき登り窯(ペンネーム「ぎんの雨」さん 43歳)
→中七から下五にかけての措辞がやや月並で飛躍がないのが惜しいが、題意にあった無理のない詠み方である。

・梅の香をお薬手帖へ挟む朝(ペンネーム「斎乃雪」さん 56歳)
→やはり詠み方が散文的でそこから抜け切れていないのがどうにも気になるが、これは私見ではできている。「香をはさむ」というところに明るさ軽やかさが感じとれ共感を誘う。「俳句に何を詠むか」ではなく「俳句で何を詠むか」にシフトするようにしたい。

・梅高く分厚き空となりにけり(ペンネーム「ときこ」さん 57歳)
→俳句のような短い詩の中でわざわざ「~となりにけり」と演説というか物を言いたげなところがやや気になるが、頭(意識)寄りではなく「高い・厚い」と実感に寄せて詠んであるところが句を救った。何となくできているが「俳句(モノ)を詠む」という意識を強くもって詠むようにしたい。

・梅の花散らし飛び立つ軍用機(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 73歳)
→実景か心象か。一般的にはできている句なのであるが「花=散らし」・「飛び立つ=軍用機」というあたり前の措辞の展開が詩として惜しい。そのあたりが課題。

・盆梅を地におろしたるよりの日々(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→面白い把握の句である。どうして盆栽棚から降ろしたのか。なぜ日々と置いているのかじっくり感じてみると実に滋味深い。生きざま・人生を感じさせる句である。独特の詠みもこの場合効果的なようである。

入選A

・初梅や踵の細きハイヒール(ペンネーム「ルビー」さん 19歳)
→作者によると暖かくなってきた実感をハイヒールで詠んだということだが少々伝わりづらく傍観に近い。詠み方としても「踵=細き=ハイヒール」と飛躍がない。頬をなでたような通り一遍の実感ではなく、十代特有の心に刺さるような(生き様のような)世界観を掴んできてほしい。

・梅の香を湛ふや駐車場の枠(ペンネーム「古田秀」さん 28歳)
→「駐車場の枠が梅の香を湛ふ」というメッセージ性の強い句であるが、俳句は何を詠むかではなく、どう詠むかが大事。「梅の香の行き交っている駐車場」などならまだ分かる。また定型でなくともいいが「定型感」は、季語や切れと同じくその短さを生かすための大事な工夫なので原則大事にしたい。

・友送る始発列車や梅の花(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
→季語が入り切れもあり俳句的な詠みでよくわかる句なのであるがものたりない。やはり傍観なのである。借り物ではなくオリジナルな発見・感動を掴んできてほしい。

・一杯の湯呑みに落ちる梅の花(ペンネーム「よこたん」さん 42歳)
→詠み方としては素朴で俳句的であり問題なさそうであるが、梅のステレオタイプど真ん中を抜け出せていない。こちらも見てきたような借り物の感動ではなく自分の感動を詠むようにしたい。

・白梅や胸の疼きの消えゆきぬ(ペンネーム「かつたろー。」さん 43歳)
→詠み方も一般的には問題ないのであろうが、私は中七下五のように直接いわず「白梅や旅に出てゆく胸の傷」など、もう一段モノ(情景)に託して詠むのが俳句だと思うのである。参考に。

・紅梅や天満宮に絵馬揺れて(ペンネーム「マネレ」さん 44歳)
→ニュースとしては正しくできているのであるが、「梅=天満宮=絵馬=揺れる」それぞれの語と語の関係性に全く飛躍がないところが詩として大変甘い。詩に正しさは不要なのである。そのような散文的感覚を抜け「俳句(詩)を詠む」という強いあり方でコトバを置いてほしい。

・ひとひらの梅花開きて車椅子(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 45歳)
→そこはなとない梅の香りに誘われて車椅子で外に出たという句。この句の問題は「ひとひら開く」という国語的な表現の正しさの問題でなく、梅のステレオタイプを詠んでしまっているところ。固定概念を脱することが急務である。

・太陽を背負い胸張る枝垂れ梅(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→素朴な実感(そんな気がする)をつかまえてきたという句であるが、作者本人の中から湧き上がってきた実感というよりどこかで見てきたような借り物の実感を詠んでいるようなところが惜しい。もしそうでなければやや類想的・観念的なところが気になる。詠み方以前にそのようなところをまず大事にしてみてほしい。

・梅の香にくすり袋のひとつ増え(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→なかなか軽やかな気分の句である。モノではなく「増えた」というコトを詠んでしまっているところが惜しいので、「梅の香のひとつ増えたるクスリかな」などもあろうか。詩なのであるから現実らしく詠むことにとらわれず、このあたりの差を感じてみてほしい。

・梅の香を蹴り上げてゐる腓腹筋(ペンネーム「伊藤正美」さん 50歳)
→梅の香りを嗅ぐために背伸びをしている情景であろうか。ムードのある句である。句は中七までの情景や気分の種明かしをするかのように腓腹筋が出てきて惜しい。腓腹筋は不要である。そのあたりを気を付けたい。

・プリーツのふくらむ梅の空のいろ(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
→やや梅の花のステレオタイプが惜しいが、明るく軽やかな少女的な世界観が共感を呼ぶ。詩として措辞の展開もなかなか配慮できている。

・鳥たちの家を探しぬ夜の梅(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→梅のステレオタイプから少し飛躍したイメージを掴んできた。心情表出のよくできた句である。モノ(情景)を詠むというより「探した」というコト(出来事)を詠んでしまっているところがやや惜しいので、モノを詠むという意識を強くもちたい。

・漆黒の夜に灯せる梅の花(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→こちらも夜の梅の句。しかしながら花を灯りと把握するというのは類想的で月並み。「俳句に何を詠むか」ではなく、「俳句で何を詠むか」を大事にしたい。

・梅宿す淡き光や介護棟(ペンネーム「雪ノ下」さん 57歳)
→こちらも夜の梅がイメージされる。句意も情景もよくわかるがどこか月並みで感動を感じとりにくい。やはり自分だけの感動をつかみにいくようにしたい。

・梅林枝先延ばし空を抱く(ペンネーム「あじさい」さん 58歳)
→よくわかる情景である。しかしながらこちらも梅のステレオタイプを詠んでいるだけになってしまっているので感動が伝わりにくい。固定概念やカメラレンズ的な世界から抜け出すことが急がれよう。

・コンビニの裏口出れば梅の花(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
→何かをういうでもなく軽やかであるが、現実を詠んで、梅の花を見つけたというだけでは月並になってしまう。「何を詠むか」より「どう詠むか」そこを大事にしてほしい。

・自転車のペダル弾むや梅の花(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
→春をイメージさせる梅の花、その題意によくあったポジティブな一句である。欲を言えば詩なのであるからさらなる飛躍した詠み方を期待したい。

・千本の梅のかおりや瑠璃の空(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
→大きく華やかに情景を描いた。しかしながら俳句は句の表(言葉)ではなく、そこからイメージされる世界の美こそが大事。表面的な言葉の美に溺れずモノからの実感(そんな気がする)を掴みにいくようにしたい。

・病室へと車駆けゆく梅の里(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→梅のステレオタイプから飛躍した切迫感・緊張感がひきつける句である。しかしながらどこか現実に寄せセーブして詠もうとしている在り方が感じとれてきて惜しい。「探梅や車駆け込む癌病棟」など、現実・事実にとらわれず出てきた素材を活かして大胆に詠みたい。

・クラウンの窓開け梅の3分咲き(ペンネーム「是多」さん 64歳)
→面白い句である。三分咲きなのは梅なのであるが窓も三分ほどあけられているような気分である。クラウンという車のイメージによるものか少し優雅な気分も一句全体のムードによくあっているのびやかな気分の句である。

・梅林の古木見上げる白頭翁(ペンネーム「虹の玉」さん 65歳)
→世界観が月並みなのが惜しいがカッチリした詠み方が頼もしい。

・病室の窓をたたくは梅の花(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 67歳)
→中七あたりの詠みが甘いのが惜しいが、梅の花が窓をたたくという自分のオリジナルな実感(そんな気がする)を掴んできているところがよい。

・梅咲くやゆるりゆるりと苔の庭(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→梅・庭であるから月並で惜しいが、一句のゆったりした気分が梅の庭を楽しむ気分によくあっている。

・梅の香やゆるゆる進む軽トラック(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)
→梅の香に誘われてというところだろうか。全体的に月並みなところが惜しかったがスローモ―ションのような気分が面白い。

・黒髪がゆれて梅の香発車ベル(ペンネーム「華みづき」さん 70歳)
→ムードは悪くないが句が少し窮屈になった。「黒髪や梅の香のする発車ベル」など、舌頭千転し座りよい姿を見つけたい。

・輪唱のながれる校舎梅ふふむ(ペンネーム「けい子」さん 71歳)
→世界観が月並みなのが惜しいが、春の明るい気分が共感を呼ぶ一句。梅ふふむという季語も輪唱響く校舎によく合っている。

・点滴を下げて窓辺で梅日和(ペンネーム「秋月なおと」さん 71歳)
→入院の一句であろうか。詠みがやや散文的なのが惜しいが、明るさが感じとれる滋味深い句になっている。

・紅梅の一輪咲いて友を待つ(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→キリリとした一句。無駄がないのであるがやはり世界観が少々月並み、そして「~して~する」と散文的であるところがやや惜しい。

・路地の奥燈明のごと梅一輪(ペンネーム「まあちゃん」さん 73歳)
→夜の梅というわけでもなく路地奥の梅を詠んだ。俳句において「~のごとく、~めく」などの比喩の類は句を弱くするだけで原則不要。比べていただければ分かると思うが「路地奥の燈明となる梅一輪」のほうが存在感が出ているであろう。このあたりを大事にしてほしい。

・梅の香や着物モデルの撮影会(ペンネーム「かっちゃん」さん 78歳)
→月並な世界観が惜しいが、梅の香の気分によく合っている。

・結納を交わして帰路の白き梅(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
→「~して~の~」と詩なのに散文的・説明的で惜しいが、こちらも梅の白が一句の気分によく合っている。

・梅林の馥郁として猫よぎる(ペンネーム「伊藤順女」さん 81歳)
→分かる句なのであるが、この句の問題点は中途半端さ。特に「梅林・猫」の関係が当たり前といえばあたり前であるし、あわないといえば合わない。現実かどうかは置いておいて、詩として猫が本当に必然なのかどうか、そこを考えてみてほしい。

・梅ほころんでひとりの夢叶う(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)
→夢叶うなどの直接表現はモノに託して詠むようにしたいが、この句の場合一句全体のつつましやかな気分や独特の措辞・破調が詩になっていてそこまで違和感がない。

入選B

・白梅をすいこむように窓に雨(ペンネーム「ちま」さん 4歳)
・ひきしまる刺し身のかざり梅の花(ペンネーム「モッツァレラ二号」さん 9歳)
・晴れの太宰府や梅が香は紀行に(ペンネーム「中村遥季」さん 28歳)
・梅咲くや香の成分の分子式(ペンネーム「南風の記憶」さん 34歳)
・梅香る空と海の宝箱(ペンネーム「えのくしひかめく隊 へやま」さん 37歳)
・第二子の予定日に◯花の兄(ペンネーム「夏舟」さん 37歳)
・梅の香に山と青空まるみゆく(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
・庭の梅家主変わりて飛び去りぬ(ペンネーム「ふくろう」さん 40歳)
・梅の花見て感じる春の色(ペンネーム「HK」さん 42歳)
・うぐいすら唄うよ梅の大舞台(ペンネーム「りんごまる」さん 42歳)
・梅一輪帰路は五輪の万国旗(ペンネーム「はなちゃん」さん 43歳)
・梅月夜息んだせみの殻の影(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 43歳)
・しだれ梅予想以上の生家かな(ペンネーム「花紋」さん 43歳)
・梅香る小鳥が何処か飛んでいく(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・梅一輪香り乗せ翔ぶ天馬かな(ペンネーム「ゆうちゃん」さん 45歳)
・つねちゃん梅の話をしていたな(ペンネーム「わた」さん 45歳)
・紅梅も艶めく朝を足早に(ペンネーム「堂林心太」さん 45歳)
・梅の花グローバル化と労働者(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
・早咲きの梅花見つけて頬緩む(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・珈琲は半ば冷めたり梅二月(ペンネーム「海音寺ジョー」さん 47歳)
・繰上げスタートの合図梅早し(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
・梅見てはあなたに向かって口窄む(ペンネーム「ぷりりん」さん 48歳)
・梅ひとひら予備校へゆく鞄へと(ペンネーム「けーい○」さん 49歳)
・ひつそりと開店するや梅月夜(ペンネーム「村上瑠璃甫」さん 50歳)
・歯磨きのコップに今朝は梅一輪(ペンネーム「田辺 ふみ」さん 52歳)
・絵馬駆けて鳩は飛び立ち梅真白(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
・白梅や吾子に母乳と免疫搾る(ペンネーム「いようさぎ」さん 55歳)
・資料館裏にひっそり梅の花(ペンネーム「西区のぺんぺん草」さん 55歳)
・白梅や箏柱立てたり赤き爪(ペンネーム「さゆりん」さん 56歳)
・梅の花甘い香りに春近し(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 56歳)
・梅の香に包まれ猫の大あくび(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
・猫愛でて年季の入った杖と梅(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・ヨーイドンあの白梅のあたりまで(ペンネーム「国代 鶏侍」さん 58歳)
・その角を曲がれば梅の香りくる(ペンネーム「jazzypapa」さん 59歳)
・青空へ白梅の枝千手めく(ペンネーム「sora」さん 59歳)
・白梅や晴明のきる五芒星(ペンネーム「たけの子」さん 59歳)
・新しき御代のかをりを咲かせ梅(ペンネーム「十猪」さん 59歳)
・板に干す石州半紙梅の花(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
・荒れ庭や青い空飛ぶ梅一輪(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
・長きこと客来ぬ家や夜の梅(ペンネーム「ラーラ」さん 60歳)
・梅の香や神籤に浮かぶ吉の文字(ペンネーム「りりこ」さん 60歳)
・梅の香の吸い取られそうな青い空(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・蹲に梅活けられしにじり口(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・白梅で猫が背をかく欠伸する(ペンネーム「キリヤマ エイジュ」さん 62歳)
・廃寺に凛と一枝梅の花(ペンネーム「9月の雨順子」さん 63歳)
・梅つぼみめでる頃には孫産まれ(ペンネーム「みっちゃん」さん 65歳)
・梅の香や地域役員任さるる(ペンネーム「藤田政枝」さん 66歳)
・かきくけこ古木ぱぴぷぺ梅真白(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
・梅咲きて掃き目の跡は荒波に(ペンネーム「きいたん」さん 69歳)
・撮影でHP掲載用梅園に(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
・霜降りて梅の香りと白い息(ペンネーム「えみちゃん」さん 70歳)
・園内に紅白梅よ風と肩(ペンネーム「グラン グラン」さん 70歳)
・しだれ来る紅梅見上げ家主去る(ペンネーム「ヒロリン」さん 70歳)
・春恋し蕾みふくらむ梅の花(ペンネーム「Boston Duck」さん 71歳)
・梅園に園児キャラ弁ひろげをり(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 71歳)
・治癒を待つ梅見にゆかん風吹くな(ペンネーム「ふー」さん 72歳)
・紅梅やメジロ飛び交う昼下がり(ペンネーム「あしながおじさん」さん 73歳)
・北限の梅の樹尋ね坂登る(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・まわり道梅園経由のバスに乗り(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・梅林や中継ドローン舞うトンビ(ペンネーム「ななそじ」さん 75歳)
・我もまた駅伝旗ふる梅の中(ペンネーム「コスモス」さん 76歳)
・梅蕾む孫の初紅宮参り(ペンネーム「チックちゃん」さん 77歳)
・車いす押して梅見や宙つかむ(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
・自撮りするヤングに勝利しだれ梅(ペンネーム「やりくりちゃん」さん 77歳)
・廃屋や梅の花のみ凛として(ペンネーム「めぐちゃん」さん 78歳)
・探梅や殿が遺せし名園を(ペンネーム「木村善光」さん 83歳)
・白梅の一粒ほころび光射す(ペンネーム「芳美」さん)

ユニー句(句)

・紅梅と共に訪るキャンプイン(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・特殊詐欺うめー話に気をつけて(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・梅の花女は電話でエキサイト(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
・ウメサクと届く電報まっいいか(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・白梅やテレビ画面を嗅いでみる(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 53歳)
・さっき見た木に戻ったよ梅の花(ペンネーム「いようさぎ」さん 55歳)
・梅園で去年の友とまた出会い(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
・下駄箱にチョコ入れし娘や梅二月(ペンネーム「雪ノ下」さん 57歳)
・梅の花 こたつに広がる花かるた(ペンネーム「あじさい」さん 58歳)
・惚れっぽくて相すみません薄紅梅(ペンネーム「国代 鶏侍」さん 58歳)
・梅は切るべし桜は切らぬべし(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
・梅の香にランナーの足も往復し(ペンネーム「虹の玉」さん 65歳)
・梅日和野点の席のやせ我慢(ペンネーム「秋月なおと」さん 71歳)
・白梅や母妻娘撮る夫(ペンネーム「ななそじ」さん 75歳)
・よちよちともみじで掴むしだれ梅(ペンネーム「彩の助」さん 77歳)
・梅園の色にも香にも酔いにけり(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2019年1月16日(水)

第104回 お題「鏡餅」(選と評 谷村秀格先生)
総評

あけましておめでとうございます。
皆さまのご多幸をお祈り申し上げます。

「何でもありの俳句から、俳句の【深み】へ」。
ホンモノを求める広島の皆さまや、現在の俳句に飽き足らない全国の皆さまからの強い支持をいただき,本年1回目の俳句道場も、過去最高数の投句数でスタートすることができました。
とてもありがたく、光栄に思います。

昨年度の俳句道場では、「託し詠み(私の造語)」を心掛けて頂きました。
「託し詠み」とは、俳句の一番の特徴である「短さ」を活かした詠み方で、言いたいコト・ココロ・気持ちを言葉で直接表現せず、モノ(情景)に託して詠むことです。
今年も、以下①~④を踏まえ、モノからの気配「そんな気がする」を大切に、「託し詠み」にチャレンジして頂ければ、俳句の「深み」を楽しんて頂けることと思います。
俳句は「詩語」ですから、気分(ムード)が出ておれば、文法・季重なり・教条など、細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則、有季定型(季語を入れた「定型感」のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②原則、仮名遣いは現在使われ将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を使用する。
②原則、俳句は余白を空けたり多行書きにせず「一行」で書く。
④原則、テーマをきちんと入れて詠む。

さらに今年は、以下にも配慮いただけるようにしていただければ、より俳句の「深み」を楽しんでいただけるものと思います。
これらは師からもよく言われたことです。

1. 実感(そんな気がする)を大切にする。
・鏡餅朝陽吸いこむヘリコプター かすみ草さん(今回大賞句)
・掛軸の鶴が留まりし鏡餅 7パパさん(今回入賞句)
モノ(対象・情景)に集中して自分だけの実感をつかまえて来るようにしよう。
「そんな気がする」時は迷わずその表現を掬いとり、句に形を与えよう(「朝日吸い込むヘリコプター」「鶴が留まりし鏡餅」)など。
フランスの有名な詩人ボール・ヴァレリーは次のように述べている。
「ばからしいことを考えついた場合、そしてそのばからしさに気がついた場合に、それを捨て去ることを急いではならない。かりそめにもそのばからしいことは生存したのだ…。どうしてそんなことがあり得たのか。ちょっと待った。」
自分の認識をまっしぐらに求めてゆくところに、他の追随を許さぬ世界が見えてくる。
逆に言えば、オノマトペだリフレインだ感情語だ擬人法だ比喩だ倒置法だ語順だ破調だと、テクニックで飾らなければならない句、そこを鑑賞の舞台に上げなければならないような句は「弱い」のである。

2. 言葉の斡旋に気をつける
・さみだれを集めてはやし最上川 芭蕉
・雀の子そこのけそこのけお馬が通る 一茶
たとえば「木と猫」、これらを「並木と子猫」「神木と老猫」「冬木と野良猫」という風に、少し変化させるだけで、句の世界観そのものがガラリと変わる。
「雀の子=そこのけ=そこのけ=お馬が=通る」のように散文的(日常語)になるのではなく、「さみだれを⇔集めて⇔はやし⇔最上川」のように一句の中の語と語の関係性(詩的飛躍・緊張感)に十分配慮しよう。
一句のヘソにあたる語などは特に注意したい。
「俳句を詠む」というあり方から詠まれた語こそが「詩語」となる。

3. アタマを空っぽにする。
アンテナを張りつつアタマ(理性・意識)を空っぽにしておこう。
眼前にあるモノ(情景)を生物的な目だけで見ず、ココロの目で捉えよう。
これは俳句の鑑賞についてもあてはまる。
ある種の非現実的な句・難解句について早急に「理解不能」と決めつけないことである。
鎌倉末期の臨済宗の僧で京都の大徳寺の開山である大燈国師の和歌に「耳に見て眼に聞くならば疑わじおのずからなる軒の玉水」があるが、「耳で見て目で聞く」というあり方は多いに参考になる。

大賞句の「ヘリコプター」は、新年の新鮮で爽やかな気分をのびのびと感じさせる句。
入賞句の「掛軸の鶴」は、新年の床の間の神聖で幻想的な気分を感じさせる句。
入賞句の「地球儀」は、新年を大切にする気分を少しユニークに詠んだ句。
特選Aは入賞候補に残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高い句。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。
「鏡餅」がきちんと入っていない句などは、ユニーク(句)欄は別として、残念ながら選外としました。

今年も全国から沢山の句を頂き、重ねて感謝を申し上げます。
目先の結果に一喜一憂することなく、将来のびのびと俳句の奥深さを楽しめることを目指して、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度(多作の方は自選で絞ることも大切、寡作の方は詠む癖をつけることが大切)、どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「鏡餅朝陽吸いこむヘリコプター」(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)

実景であろうか。
「鏡餅」の飾られた新年の朝の床の間に集っているとき聞こえてきた「ヘリコプター」の音、それにつられて外を眺めた時の情景にとれる。
句は何といっても「朝陽吸い込むヘリコプター」と実感を把握したところが見事。
こういうところに、「ヘリコプター」の羽が「朝日」の輝き、ひいては新年もろもろの瑞気を一心に引っ張ってきている気分、「朝陽を吸い込み」つつ悠々と空をゆく「ヘリコプター」のイキイキとした音に、新年の輝きやおめでたさを一心に感じている作者の心境がありありと感じとれてきて、共感を覚える。
「朝日吸い込むヘリコプター」だけならいかにも月並であるが、この句の場合「鏡餅」ある部屋から「朝陽」のある外の広い空間に展開してゆく空間飛躍、「朝陽・ヘリコプター」が「鏡餅」と取り合わさることで増す輝きの神々しさ・いイキイキとした躍動感のある音など、「鏡餅」との配合が効果的で、空間・五感に訴える句になっているところにも注目したい。
こういう実感は、傍観からは決して生まれず、対象(ヘリコプター・空)に入り込んで一体となることによってのみ、ココロのスクリーンに映し出されてくる世界である。
対象(情景・ヘリコプター)からの「そんな気がする(朝日吸い込む)」を掬ってきた、新年にふさわしいのびやかで輝きに満ちた一句。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
対象(情景)からの「そんな気がする」を大事にする。

入賞

「地球儀を移して座る鏡餅」(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)

こちらの句も実景であろう。
学習に適した「地球儀」が置かれた子供部屋の情景、あるいはレトロでインテリアとなる「地球儀」が置かれた洋風の応接間あたりの情景を詠んだ句に思われる。
子供部屋の情景とすれば受験生がイメージされてくるが、私見ではそのようなピリピリしたムードでもなさそうなので、応接間あたりの情景の句ととっておく。
世界の象徴のような「地球儀」、それを「移して」、そこに神様の依り代である「鏡餅が座る」のであるから、ユニークでもあり意味深である。
新年に迎える神様に地球規模以上の大いなるものや、敬意・畏怖の念を感じているところが共感を誘う。
どこか「鏡餅」自身が「地球儀を移して」いるようにも感じとれる(そんな気がする)ところも、詩語として効いており、横綱が寄り切ったような悠然とした様子が俳味になっており面白い。
いずれにしてもモノ(情景)の切り口が光った一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
現実を詠む場合はありきたりを避ける。

「掛軸の鶴が留まりし鏡餅」(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)

床の間の掛け軸「鶴亀松竹梅」とその前に置かれた大きな「鏡餅」を詠んだ句である。
その床の間を眺めているときの一瞬ハッとココロに浮かんだ情景を捉えた句にとれる。
「鏡餅」は神様の依り代といわれているが、現実世界では見えない神様が「掛軸の鶴」に宿り、「鶴」となってそこを抜け出し、依り代である「鏡餅」に舞い降りてきているようなムードに、新年の床の間の神秘性が感じ取れてきて、共感を覚える。
非現実的であり、何かのテレビコマーシャルを見ているような情景ともいえるが、このように見えないものを見、感じられないものを感じるのがまさに詩人の仕事。
俳句は詩であるのだから、現実を現実らしくい詠む必要も生物学的な目線で詠む必要も全くない。
このようにただココロの目がとらえた真実、対象からの「そんな気がする」を詠んでくれればいいのである。
句は少々類想感が感じられるところや、「○○の○○が○○した」というような説明的・散文的なところが少々惜しいので、そのあたりは留意されたい。
また「鶴の留まりし」と過去的に詠むよりも「鶴のとまれる」とリアルに詠むほうが一段情感が増すであろう。
「掛け軸の鶴」は冬の季語にはなりそうにないが、そこから抜け出した「鶴」は「鶴」に違いないから季語と言えるかもしれない。
しかしながら、そのような教条的なことを超越した強さをもっている句なので、そのあたりのことは問題なかろう。
いわゆる題意によくあった詩人らしい目線・世界観の一句である。
入賞おめでとうございす。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
現実ではなく、心の目がとらえた真実こそを詠む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・初孫や総出で担ぐ鏡餅(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※なし
→子が一歳になったときに一升餅を背負わせたりする風習があるが、餅は昔からおめでたい場には欠かせないものであった。句は何かしらの現実を詠んでいるように感じとれるがそうではなく、正月の何かしらの「おめでたい気分」を一句の情景に託し詠んだものであろう。題意にあった気分の出た句である。

・鏡餅闇夜に浮かぶ深海魚(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※夜、明かりの点いていない部屋で見た鏡餅に深海魚みたいと思ったことから出来た句です。
→「鏡餅・深海魚」この怪しげな気分に作者の実感が出ている。ここまで詠めたら「深海魚闇夜に浮かぶ鏡餅」などのほうが句の座りがよさそうであるが、どうであろうか。好句。

・天空の駅はアートの鏡餅(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※昨年4月1日に廃止となった三江線で、「天空の駅」と呼ばれていた宇都井駅、今でも絵になる駅舎である。
→宇津井駅の感慨を詠んだ句。「天空の駅」と呼ばれている通り里山に突如として現れる高架の駅の光景はまさしく非日常の世界。鏡餅の新年の神聖な気分と相まってムードが出た。

入選句

特選A(入賞候補)

・餅鏡光る桧の床柱(ペンネーム「ぎんの雨」さん 43歳)
→何か変わったことをしている訳ではないのだが、「鏡餅・桧の床柱」それぞれのモノの力感が見事に働き響き合っており、新年の床の間の清々とした気分が感じとれてきて共感を覚える。俳句というものは句の表面で変わったことをするのではなく、この句のようにイメージされる世界に美を置くようにしたい。「光る」がやや安易な表現で惜しいが、A(日常)が非A(非日常)を導くお手本のような句である。好句・佳句である。

・四代の女の尻や鏡餅(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
→新年の床の間に家族一同が会している情景であろう。その中でも「鏡餅」の見た目の気分に引っ掛けて「尻」の情景を切り取ってきたところが面白い。いわゆる俳味(おかしさ)の句である。好句。

・鏡餅ロビーに手向く国際線(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 53歳)
→新年の空港の情景。飛行機やグローバルな気分も相まって爽やかな新年の句である。 なかなかしっかりできているのであるが、どこかしら情景がスッキリしないので「国際線ロビーに手向く鏡餅」など整理したい。好句。

・鏡餅積み木を崩す赤子の手(ペンネーム「斎乃雪」さん 56歳)
→実景というよりは「鏡餅」からの「そんな気がする」を掴んできた句であろう。重ねられた「鏡餅」と「積み木」の似て非なるモノ同士の対比、神聖なイメージと「赤子」のピュアなイメージの対比。「崩す」というユーモアも効いていて連想に無理がない。今年は生物学的な目線ではなく、詩人としてのココロの目で世界を眺め、詩を詠みあげてほしい。好句・佳句。

・動き出す彼方の空や鏡餅(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
→眼前の「鏡餅」を見据えつつ、ココロに湧き上がる「彼方の空」を詠んだ句であろう。「動き出す彼方の空」とあるが、実際に「動き出している」のはまさに作者のココロそのもの。 新年、志を新たにする気分をしっかりとモノに託して詠んだ心情表出の充分にできた句である。好句・佳句。

・鏡餅時走り出す受験生(ペンネーム「きいたん」さん 69歳)
→忙しい新年の情景である。「鏡餅・受験生」であるから迫ったセンター試験が連想される。立場が違えば時間の感覚やスピード感も変わってくる。独特の視点が光った俳味の句である。ちなみに「受験生」も季語であるが気にならない。好句。

・病室の窓ふるわせる鏡餅(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→旦那さんの入院を詠んだ句という。いつもの新年と違って「病室」で迎える新年、その複雑な心境が「窓ふるわせる」によく表れている。モノ(情景)に託して上手く心情表出できた一句である。この方向で。快復をお祈り申し上げます。好句・佳句。

・鏡餅母の遺した空財布(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→「母」を亡くしてからの句。「鏡餅」は新年の季語だからといってめでたいことばかりを詠む必要はない。俳句は俳句である前に詩なのだから、このように実感ある世界をしっかり詠んでくれればいいのである。不意に出てきた「母親の空財布」と眼前の「鏡餅」を眺めつつ、母と一緒に飾った時のことなどを思い返しているのであろう。「空」という文言がより一層寂しさを引き立てる。好句・佳句。

・衛星の停止してをり鏡餅(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→あか抜けたモダンな詠み方である。新年であるから「動き出す」方向で詠みたくなるのがよくある発想であるが「停止してをり(そんな気がする)」というのである。眼前の「鏡餅」に思いを凝らしながら、現実には見ることのできない遥か「衛星」の動きをしっかりココロでとらえたところに詩人としての感性が煌いている。どっしりした「鏡餅」だけに時間性を超越した気分がよくあっている。好句・佳句。

特選B

・かがみもちかちんこちんの父の肩(ペンネーム「えのくしひかめく隊くしなだかのん」さん 9歳)
→新年にお父さんの肩もみをしていたときの実感であろう。句の表面的には堅くなった「鏡餅」と堅い「父の肩」を詠んでいるのであるが、どっしりとした「鏡餅」とどっしりした「父」などという風に続く連想にも無理がなく、詠んイメージの世界を楽しめる一句である。好句。

・鏡餅這い出す鳥の脈打てり(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 19歳)
→「這い出す・脈」という言葉の選択に十代特有の気概が感じとれてくる。何かしらの強い思いが感じとれてきて共感を覚える。詠み方としては「鏡餅・鳥」であるから嘱目とすればやや中途半端であるし、心象とすれば飛躍がない。このあたりの語と語の関係性にもっと思い切りがほしいところではある。また「脈打てり」は「脈の音(脈に音はつきすぎかもしれないが)」など、出来ゴトではなくモノ(情景)で詠むようにするとさらに句の力感が増す。参考に。好句。

・鏡餅壁に大きな影を置く(ペンネーム「登りびと」さん 35歳)
→実景であろう。素朴な把握であるが眼前の「鏡餅」のうしろの影を詠んだところが面白い。すこし怪しげな「鏡餅」のイメージが立ち上がる。少し世間を斜に構えてモノゴトを眺めているところに作者のオリジナリティが感じとれてくる。情景の切り口が光った俳味の句といえよう。好句・佳句。

・ミキサー車行き交う庭や鏡餅(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 38歳)
→「庭・ミキサー車」であるから災害復旧の様子を詠んだ句であろう。出来ている句なのであるが、原句はどうもそのようなメッセージ性が強く出すぎているので「ミキサー車庭を行き交う鏡餅」くらいで詠んでみたい。こうすると「ミキサー車・鏡餅」の両方が忙しく行き交う気分の句になり「詩語」となろう。「鏡餅」さえも復旧に動いていると詠むほうがユニークな詠み方とは裏腹にその甚大さが伝わりそうである。参考に。

・鏡餅四角い箱が丸くなる(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
→最近はプラスチックに入った「鏡餅」が多くなったが、その箱に詰められた「鏡餅」を取り出す時の実感を詠んだ句であろう。現実にとらわれず「鏡餅」からの「そんな気がする(四角い箱が丸くなる)」を掬い取ってきたところが句に見事に命を与えた。好句。

・猫の耳お供え餅の空き箱に(ペンネーム「林檎嬢」さん 45歳)
→日常を詠む場合は批評精神がなければならないと私はよく言うが、この句は情景の切り取り方が光った。丸(鏡餅)を供え、四角い空箱から出てきた三角の耳。形態の異なるモノがつぎつぎに重なってくる様子がいかにも面白い。「鏡餅」の存在感が薄いところが気になると言えば気になるが、そこまでの傷ではなく、これも一句であろう。好句。

・鏡餅海辺の窓のあけもどろ(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→「あけもどろ」は沖縄の古い民謡の中の言葉で明け方の美しく荘厳な様子をたたえる言葉。新年を迎える海の美しい南の地方での一句であろう。新年の朝という世界観がやや月並みであるが、題意と「あけもどろ」という独特の言葉がよく合っていて、大らかで美しい新年のムードが共感を呼ぶ。好句。

・鏡餅リアス海岸走り出す(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→「ひび割れた鏡餅」とリアス式海岸」を重ね見た一句である。全体的に詠み方が甘いのであるが、「鏡餅」からの実感(そんな気がする)を捨てずにもってきたところが詩として大変よい。句は舌頭千転してもう少し落ち着く姿をさがしたい。好句。

・鏡餅ひとこと誉めて帰る客(ペンネーム「国代鶏侍」さん 58歳)
→新年、床の間に招いたお客さんがその立派な「鏡餅」を褒めて帰ったという句である。モノ(情景)を詠むというよりは出来事(コト)を詠んであるところが惜しいのであるが、俳句慣れした詠み方に無理がない。俳味とユーモアの効いた手慣れた一句である。

・遠来の客訪れし鏡餅(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
→「遠来」の客を家の一番の「鏡餅」が置かれた床の間まで通しているという空間の把握に細やかな実感と俳味が出ている。「訪れし」と過去的に詠むよりも「訪れる」とリアルに詠みたい。

・橙落つ地震に座したる鏡餅(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
→新年の地震を詠んだ句でできているのであるが少々ものたりない。上五の「橙落つ」が「地震」につづいてゆくのでやや言い過ぎの印象。例えば「日の本の地震に座したる鏡餅」くらいすれば大きな把握の句になる。俳句は詩なので現実を現実らしく詠むことにとらわれず、「詩語」を見つけるようにしたい。

・鏡餅神輿のように運ばれる(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 61歳)
→出来上がった大きな「鏡餅」が床の間に運ばれてゆく様子を詠んだ句。出来ているのであるが、「神輿のように」が評価の分かれるところ。「神輿」は比喩なので存在感に乏しく「鏡餅」が運ばれただけという月並みな句にもとれる。このように「~のごとき・~のような・~めく」などの比喩は、句を弱くする方向に働くことが多いので、原則的には「鏡餅運ばれてゆく神輿かな」などとモノをしっかりと打ち出して詠みたい。上記でつきすぎのようであれば「鏡餅はこばれてゆく雲のいろ」など、最初の発想・事実にとらわれず「実感にふさわしい詩語」を見つけるよう持っていきたい。

・きねの音響く隣家や鏡餅(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→新年というよりは年の瀬あたりの気分の句であろう。塀を隔てた両隣、作者の家ではもう「鏡餅」を飾り終えているが、塀越しに隣の家の餅をつく音が聞こえてきているという感じの句である。餅つきの音に象徴される新年に向けての高揚感が共感を誘う。

入選A

・鏡もち太陽のぼってかざりつけ(ペンネーム「えのくしひかめく隊 やまとたいが」さん 11歳)
→「鏡もち」の橙を飾るようすを詠んだものか。大人にとっては普通サイズでも子供にとっては大きく感じる。素直な実感の句である。

・主人なき玄関で待つ鏡餅(ペンネーム「スネイク」さん 15歳)
→旦那さんを亡くした家の様子であろうか。少し寂しい「鏡餅」である。句はやや傍観で詠んでいるところが惜しいので情景と一体となって詠むようにしたい。

・年の瀬の蕎麦屋で見ていた鏡餅(ペンネーム「一本足」さん 35歳)
→単身赴任などで家族と離れて暮らしている方の句にとれる。つぶやきのような詠み方が甘く惜しいが、寂しさをモノ(情景)に託して詠んだムードの出た句である。

・鏡餅まるく落ちたる神の影(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
→モノからの実感を掴もうとしている気概を感じる。一方で「鏡餅・丸」「鏡餅・神」、このあたりのイメージの重なりが惜しい。そのあたりに敏感になるようにしたい。

・鏡もち水平線を待つ遺骨(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→「鏡餅/水平線を待つ遺骨」この両者の関係性が離れすぎていてイメージを紐解くのが難しい。「花筏水平線を待つ遺骨」などのほうが気分に合っていそうである。参考に。

・鏡餅目指す子猫の大ジャンプ(ペンネーム「夏舟」さん 37歳)
→若々しい元気のいい句である。散文的な詠み方を引っ込めるようにすればさらんびよくなる。

・蝋燭の揺れる祝詞や鏡餅(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
→神社あたりでの句であろうか。厳かな気分の句である。「祝詞・鏡餅」がつきすぎであり、やや傍観の句になっているので、対象と一体となって詠むようにしたい。

・いびつなるまるを重ねて鏡餅(ペンネーム「ふくろう」さん 40歳)
→手作りの「鏡餅」を詠んだ句である。こちらも現実をたたなぞっただけの句になっているところが惜しい「いびつなる餅まるくなる鏡餅」など、ココロのとらえた真実を詠むようにしたい。

・かんざしが映る鏡に鏡餅(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
→昔ながらの新年の情景が美しい。「かんざしの映る鏡や鏡餅」など、俳句らしく詠むことを心掛けるとそれだけで詩語なろう。

・鏡餅棚の奥から皿を出し(ペンネーム「かつたろー。」さん 43歳)
→新年に普段使わない皿を取り出したという句である。面白い光景であるが目を惹く出来ゴトを詠むことは何を詠んでも浅い。モノ(情景)からの力感(そんな気がする)を掬い、イメージされる世界の豊かさ・奥深さこそを楽しむようにしたい。

・ふりそそぐ光の雨や鏡もち(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 43歳)
→「鏡餅」の神々しさを詠んだ句で美しい。やや抽象的・観念的なので、具体的なモノ(情景)をしっかり打ち出して詠むようにしたい。

・鏡餅広い窓より入りくる(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 45歳)
→鏡餅を窓から運び入れる情景に取れる。眼をひく出来事であるが、目を惹く出来事を詠むことは発見でもなんでもなく現実に過ぎないので何を詠んでも浅い。ココロの目がとらえた真実を詠むようにしたい。

・鏡餅介護する者される者(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
→家庭での様子であろうか。分かるのであるがこれはモノ(情景)というよりも出来事(介護する人とされる人がいるというコト)を詠んだ句である。俳句は目を惹くコトではなく、モノ(情景)からのココロの目のとらえた真実を詠むようにしたい。

・ランナーのたすきの空や鏡餅(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→新年の駅伝を詠んだ句である。気分は出ているのであるが「鏡餅・ランナー」を混在させているのでポイントが絞られていない。どちらかにポイントを絞って詠むとよいであろう。

・箱根路の五区を走るや鏡餅(ペンネーム「伊藤正美」さん 50歳)
→勢いがよく伝わる。しかしながらこちらの方も上の方と同様である。現実のシーンの異なる二つの場面をもってこられるどうも感動のポイントが絞られない。どちらかにポイントを絞って詠むとよいであろう。

・潔きV字のひびや鏡餅(ペンネーム「村上瑠璃甫」さん 50歳)
→文字通り潔い句である。潔いのであるが直接的な表現ともいえる。「俳句を詠む」という意識で現実にとらわれずしっかりと語を選ぶようにするとさらによい。

・息遣い聞こゆる闇の鏡餅(ペンネーム「羊と山羊」さん 51歳)
→怪しげな鏡餅を詠んだ。たしかに旧家の夜の床の間などの情景はこのような気分である。詠み方としては「息遣い聞こゆる」がやや言い過ぎな印象。そのあたりを気をつけたい。

・鏡もち小便小僧とびはねて(ペンネーム「でこ」さん 52歳)
→「鏡餅・小便小僧」はユニークな取り合わせである。しかしながら実景としては何の情景が理解できない。心象としては飛躍に乏しい。さらに大胆に詠むあるいは素材からの再考が必要。

・目礼の守衛の傍の鏡餅(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
→警備室あるいはどこかのロビーなどでの情景であろうか。「目礼・守衛」「守衛・側」など、言葉・イメージの重複が多いのでそのあたりを気を付けたい。「鏡餅少ししゃがめる守衛かな」など現実を詠もうとせず 「俳句を詠む意識」で語を選ぶようにしたい。

・帯結ひて掛軸見ゆる鏡餅(ペンネーム「さゆりん」さん 56歳)
→新年の情景であるがモノをただ並べただけのようなもどかしさがある。「鏡餅・掛軸」はこの場合「重複」、「鏡餅見みつつ帯結う娘かな」などポイントを整理したい。

・洋館に来て白妙の鏡餅(ペンネーム「ときこ」さん 57歳)
→洋館の鏡餅の感慨を述べた句。白の印象が美しいが「白妙」が過剰な表現。「洋館の影の真白き鏡餅」くらいであろうか。参考に。

・宇宙船の光沢浮かべ鏡餅(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→プラスチックの「鏡餅」を詠んだ句。「宇宙船・光る」など嘱目的比喩的な感慨ではなく、ここまで詠めたら、「宇宙船重なってゆく鏡餅」くらいにココロの目で捕らえた実感(そんな気がする)をのびのび歌いたい。

・鏡餅朱塗りの膳も重なりて(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
→白と赤の対比が印象的な新年の気分の出た句である。ただし情景をそのままなぞっただけの句になっているので、もう一歩対象に入り込んで実感をすくってくるようにしたい。

・玄関にあふれる靴や鏡餅(ペンネーム「としまる」さん 60歳)
→新年の賑わいを詠んだ句。少々類想感があるところが惜しいがなかなかしっかり詠めている。

・青空と地べたの間鏡餅(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→面白い把握である。措辞が安易なので「俳句を詠む」という意識を強くもって「天と地を持ち上げている鏡餅」くらいにしっかりと形にしたい。

・産土の茅の大屋根鏡餅(ペンネーム「りりこ」さん 60歳)
→田舎の大きな新年の情景。中七と下五の間の強引な省略にやや無理がある。「茅葺の屋根持ち上げる鏡餅」くらいで詠むのもあろうか。原句のような大きな気分は出ているであろう。参考に。

・志功描く女のように鏡餅(ペンネーム「羅々」さん 60歳)
→上手く例えたという句であるがそれ以上の良さが伝わらない。俳句は一句そのものが隠喩のようなものなので比喩は句を弱くする方向に働くことがほとんど。「鏡餅志功の女の乳房かな」など、しっかりとモノの存在を打ち出して詠むと力感が違ってくる。参考に。

・団欒に淑気の満つる鏡餅(ペンネーム「安田蝸牛」さん 62歳)
→新年のおめでたい気分を感じる句である。この場合「淑気満つ・鏡餅」のイメージの重なりが気になるので、それを避けるようにしたい。

・孫二人はしやぐ向こうの鏡餅(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→元気のいい情景。「はしゃぐ」という目をひく出来ゴトを詠みたかったのであろうがそれが惜しい。俳句はコトではなくモノを詠むようにしたい。「孫二人並んでおりし鏡餅」などモノの力感を生かしたい。

・鏡餅流氷のごと割れにけり(ペンネーム「是多」さん 64歳)
→俳句において比喩は句を弱くする。こちらも「流氷」を詠んでいるようであるが比喩なので詠んでいない。ここまで詠めたら「流氷のひび割れてゆく鏡餅」などモノをしっかり出して詠む方がいいであろう。ただし「流氷」は春の季語でありこの場合重なりがやや気になる。こうやって最初の発想にとらわれずためつすがめつすれば、自ずと形がついてくる。

・柏手を打つ背も丸く鏡餅(ペンネーム「虹の玉」さん 65歳)
→毎年の行事、そこに年を経たことを感じたという実感をモノ(情景)に託して詠んだ。一句の世界観がややありきたりなのが惜しいが、ほぼ出来た句である。

・里帰りの駅長室の鏡餅(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→帰省したときの駅の句である。「里帰り」が言いたいコトなのであろうが、言いたいコトを詠むと伝えたい気持が先行して句を弱くする。「鏡餅駅長室の時刻表」などモノをしっかり打ち出して詠みたい。

・よろず屋のレジ横小さき鏡餅(ペンネーム「彩楓」さん 66歳)
→田舎の万屋の光景。「小さき」がかわいらしく言いたいコトなのであるが、言いたいコトを詠むと気持が先行して句を弱くする。全体的には出来た句なのであるが、そのあたりに検討の余地がある。

・鏡餅大阪弁の孫も来し(ペンネーム「藤田政枝」さん 66歳)
→遠方の孫を交えての新年。「孫も来し」が言いたいコトなのであろうが、言いたいコトを詠むと伝えたい気持が先行して句を弱くする。「鏡餅大阪弁の孫娘」などもあろうか。参考に。

・受験生ダルマの脇に鏡餅(ペンネーム「秋月なおと」さん 71歳)
→「受験生」の新年の気分の出た句である。モノ(情景)で詠もうとしているところはよいが、少々モノが多い印象なのでポイントを整理したい。

・いとし子の面影たどる鏡餅(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→「鏡餅」にかつての恋人のイメージを重ね見ているようなところにオリジナリティとムードが出ている。「いとし」が少々言い過ぎ。好句。

・窓越しに朝日を浴びる鏡餅(ペンネーム「あしながおじさん」さん 73歳)
→窓辺の新年の情景。少々素直に詠みすぎているが、さわやかな気分の句である。

・鏡餅持って降り立つ過疎の村(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→ムードが出た句である。「過疎の村」は少し言い過ぎ。「無人駅」などのほうが合いそうである。好句。

・お茶室の松風の音や鏡餅(ペンネーム「コスモス」さん 76歳)
→初釜の室礼であろう。少し感動の在処が見えてこないところが惜しいが、過不足なくできたムードのある句である。

・荷作りす異国の友へ鏡餅(ペンネーム「かっちゃん」さん 78歳)
→贈り物の「鏡餅」を詠んだ。全体的に説明的なところが惜しいが情景の切り口が光った。その独特のムードがひきつける。

・鏡餅母乳の満ちて吸いにけり(ペンネーム「めぐちゃん」さん 78歳)
→「鏡餅・母乳」の取り合わせであろうか。豊穣の気分のよくでた句である。気分とはうらはらに詠みが追いついていないので「鏡餅はりつめている乳房かな」など整理したい。

・仮住まい朝日差し込む鏡餅(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
→仮住まいで迎える新年。朝日差し込むとあるのでポジティブな気分であろう。「仮住まい」がやや言い過ぎなので「プレハブの窓ひろびろと鏡餅」などで詠んでみたい。参考に。

・ライブハウスピアノの上の鏡餅(ペンネーム「伊藤順女」さん 81歳)
→情景の切り口の光ったオシャレな句である。しかしながらただ情景をなぞっただけの傍観にも感じられるので、対象・情景と一体となった実感を掴んでくるようにしたい。参考に。

・御鏡や大きな船の操舵室(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→船上の大らかな気分が出ている。「大きな」がやや安易な表現ともいえるので、「御鏡やコンテナ船の操舵室」など具体的にしっかりと詠んでみたい。

・雑踏の駅舎寿ぐ鏡餅(ペンネーム「奈良美人」さん)
→新年の駅の句である。「寿ぐ」が良くも悪くも。このような詠み方も多いがやはりモノ(情景)で詠むようにしたい。まだ「明るき」などのほうがよさそうである。参考に。

入選B

・床の間の前ににずどんと鏡餅(ペンネーム「ちま(4さい)」さん 4歳)
・鏡餅黄色い花と赤い実と(ペンネーム「むらさき(6さい)」さん 6歳)
・消しゴムの色と手ざわり鏡もち(ペンネーム「モッツァレラ二号」さん 9歳)
・ラーメンのスープにのぞく鏡餅(ペンネーム「コンスタンチン」さん 13歳)
・神様を見送り食べる鏡餅(ペンネーム「ユニー句入りが目標」さん 28歳)
・望郷の念をかられる鏡餅(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
・千代紙にちょこんとのせし鏡餅(ペンネーム「大野美波」さん 31歳)
・パソコンに売り上げ記すや鏡餅(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
・鏡餅祖父の遺影と子らの声(ペンネーム「南風の記憶」さん 34歳)
・鏡餅揚がるのを待つ子どもたち(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)
・台座のり座布団一枚鏡餅(ペンネーム「よこたん」さん 42歳)
・客らを迎え見送り鏡餅(ペンネーム「りんごまる」さん 42歳)
・家長の背鎮座したるは鏡餅(ペンネーム「グレージュ」さん 43歳)
・鏡餅搗く音合唱第九かな(ペンネーム「はなちゃん」さん 43歳)
・鏡餅代々妻の几帳面(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 43歳)
・鏡餅真空ドーム宙の旅(ペンネーム「かたちゃん」さん 44歳)
・ばあちゃんの温もり思ふ鏡餅(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 44歳)
・あかちゃんもじじばばの肌も鏡餅(ペンネーム「ゆうちゃん」さん 45歳)
・縁がない鏡餅には憧れる(ペンネーム「わた」さん 45歳)
・それなりのよそよそしさや鏡餅(ペンネーム「奈緒女」さん 45歳)
・年神の姿を写すや鏡餅(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
・代役で蜜柑を乗せた鏡餅(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・正月後姿見前の鏡餅(ペンネーム「下り坂47」さん 47歳)
・しわしわのお婆の家の鏡餅(ペンネーム「海音寺ジョー」さん 47歳)
・鏡餅にも障りない地震かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
・鏡餅見れば見るほど親近感(ペンネーム「ぷりりん」さん 48歳)
・新しき時代の白き鏡餅(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
・髪結うて熱めの源泉鏡もち(ペンネーム「もじこ」さん 49歳)
・去年よりさらに小さき鏡餅(ペンネーム「田辺ふみ」さん 52歳)
・容量はいつでもいっぱい鏡餅(ペンネーム「いようさぎ」さん 55歳)
・鏡餅はきと映るやコンロ台(ペンネーム「わたさん」さん 55歳)
・祖母の命日鏡割りぜんざい(ペンネーム「西区のぺんぺん草」さん 55歳)
・幸せをじっと見ている鏡餅(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
・キリストに十字日本に鏡餅(ペンネーム「吉良水里」さん 57歳)
・餅さめて目方減るこそ供え甲斐(ペンネーム「堀端アヒル」さん 57歳)
・床の間の諸々片し鏡餅(ペンネーム「邯鄲」さん 57歳)
・鏡餅父母の掛け合い懐かしや(ペンネーム「あじさい」さん 58歳)
・小さめの鏡餅据え若夫婦(ペンネーム「そら」さん 58歳)
・食っちゃ寝の今年も腹は鏡餅(ペンネーム「たけの子」さん 59歳)
・裏白を従えどでんと鏡餅(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・鏡餅慌てて飾る大晦日(ペンネーム「9月の雨順子」さん 62歳)
・親の愛勉強机に鏡餅(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・あの日から涙涙の鏡餅(ペンネーム「おばあちゃん」さん 63歳)
・稀勢の里四股踏み固めたる鏡餅(ペンネーム「ひなじいさん」さん 64歳)
・夫去りて鏡餅なき春迎え(ペンネーム「ことみ」さん 65歳)
・大掃除鏡餅飾って子孫待つ(ペンネーム「みっちゃん」さん 65歳)
・この部屋に生も死もあり鏡餅(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
・月と日を重ねて春呼ぶ鏡餅(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 67歳)
・鏡餅カビを削りぜんざいで(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
・里モ中娘嫁先の鏡もち(ペンネーム「グラン グラン」さん 70歳)
・鏡餅供えて拝む頼みごと(ペンネーム「こもれび」さん 70歳)
・鏡餅穏やかに待つ新元号(ペンネーム「ヒロリン」さん 70歳)
・Welcomeホテルに鎮座鏡餅(ペンネーム「ヤチ代」さん 70歳)
・鏡餅箱根は走る襷たち(ペンネーム「寿人だいすきばあば」さん 70歳)
・恐山座る恵方や鏡餅(ペンネーム「比々き」さん 70歳)
・復興を願う仮設に鏡餅(ペンネーム「おちえもん」さん 71歳)
・神覗くガラス細工の鏡餅(ペンネーム「けい子」さん 71歳)
・顔に粉つけ子等も作るや鏡餅(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 71歳)
・四人部屋二人帰って鏡餅(ペンネーム「ふー」さん 72歳)
・豪雨禍の地に鏡開きの鎚の音(ペンネーム「『コウちゃん』のじいじ」さん 73歳)
・しわしわは生きた証と鏡餅(ペンネーム「まあちゃん」さん 73歳)
・カビ削りこども仕事の鏡餅(ペンネーム「ももちゃん」さん 73歳)
・鏡餅囲んだ人らの昔今(ペンネーム「ななそじ」さん 75歳)
・母の声父の力の鏡餅(ペンネーム「チックちゃん」さん 77歳)

ユニー句(句)

・平成を真空パック鏡餅(ペンネーム「青海也緒(あおうみやお)」さん 37歳)
・我が腹に永く居座る鏡餅(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 38歳)
・鏡餅時間がたてば私の肌(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・うりふたつふくれっ面と鏡餅(ペンネーム「りんごまる」さん 42歳)
・君モデル?今や立派な鏡餅(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 44歳)
・鏡餅顔映らぬと告げる子等(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・食べ方の紙も剥がさぬ鏡餅(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
・鏡もち姉のおなかのぽよぽよと(ペンネーム「けーい○」さん 49歳)
・選ることのないコンビニの鏡餅(ペンネーム「村上瑠璃甫」さん 50歳)
・横綱のお腹のごとき鏡餅(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
・鏡餅いいねで済ます子のライン(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
・受験生鏡餅にも願をかけ(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
・脇腹をつまみたくなる鏡餅(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・鏡餅インスタ映えの角度なり(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
・鏡餅一番あまい蜜柑取る(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 61歳)
・風呂上がり鏡に映る鏡餅(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・お鏡やプラの分だけ気も軽し(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・お正月我が身を映す鏡餅(ペンネーム「ひなじいさん」さん 64歳)
・鏡餅何とかせねば二段腹(ペンネーム「是多」さん 64歳)
・通販で間に合わせるや鏡餅(ペンネーム「あしながおじさん」さん 73歳)
・鏡餅ひびの入りし老夫婦(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
・若鯉や被災地でつく鏡餅(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・十畳間ビニル囲いの鏡餅(ペンネーム「ななそじ」さん 75歳)
・都会に出た息子は百均の鏡餅(ペンネーム「彩の助」さん 77歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年12月19日(水)

第103回 お題「クリスマス」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今年最後の俳句道場は、広島の皆さんや全国の俳句ファンの方々からの熱い支持をいただいて、今年最高の投句をいただきました。
ありがとうございます。

この道場では、「託し詠み(私の造語)」を推奨しています。
「託し詠み」とは、俳句の一番の特徴である「短さ」を活かした詠み方で、言いたいコト・ココロ・気持ちを言葉で直接表現せず、モノ(情景)に託して詠むことです。
以下①~④を踏まえ、モノからの気配「そんな気がする」を大切に、「託し詠み」にチャレンジして頂ければ難しいことはありません。
気分(ムード)が出ておれば、文法・季重なりなど、細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則、有季定型(季語を入れた「定型感」のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②原則、仮名遣いは現在使われ将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を使用する。
②原則、俳句は余白を空けたり多行書きにせず「一行」で書く。
④原則、テーマをきちんと入れて詠む。

大賞句の「ランドセル」は、細かな観察の効いた句。
入賞句の「手形」は、イメージ膨らむ象徴的な句。
入賞句の「聖樹」は、期待感を情景に上手く託して詠んだ句。
特選Aは入賞候補に残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高い句。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。
「クリスマス(聖夜・聖樹)」などがきちんと入っていない句などは、ユニーク(句)欄は別として、残念ながら選外としました。

今年も全国から沢山の句を頂き、重ねて感謝を申し上げます。
目先の結果に一喜一憂することなく、将来のびのびと俳句を楽しめることを目指して、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度(多作の方は自選で絞ることも大切、寡作の方は詠む癖をつけることが大切)、どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「クリスマス塾のドア押すランドセル」(ペンネーム「寿人だいすきばあば」さん 70歳)

楽しいクリスマスの日にもかかわらず塾に通う子を詠んだ句。
ランドセルとあるので、学校から塾に直行した子供を詠んだものであろう。
街で見かけた光景、あるいはお孫さんが塾に入ってゆくのをたまたま見かけた光景であろうか。
定型のリズム、「ウ音」のうねり(韻)がまずもって心地よい。
何といっても見事なのは「ドア押すランドセル」という実に細やかな発見・観察。
手にジュースか何かをもって、友達としゃべりながら背中でドアを押して教室へ入って行っている様子であろうか。
何気ない詠み方であるが、子どもの生態・特徴・気分を実によく捉えていて感心した。
これが「ランドセルの子」などで詠んでしまっておれば、ただゴト句で詩にはならない。
たったこれだけのことで世界観が大きく変わるのであるから、俳句とはおそろしい詩である。
ではなぜここまで細かく発見・観察できているのかといわれれば、対象への興味・関心、すなわち深い愛情があるからに他なるまい。
詩はココロであるが、俳句は他の詩と違って短いのでココロを直接書き記すには向いていない。
だからこのように、ココロ動かされたモノ(情景)「だけ」を詠むようにしなければならないのであるが、そうすれば自然とその背後に作者のココロ(愛情)が感じとれてくるものなのである。
「クリスマス・塾」の類想・月並み越えた「何か」、「ランドセル」を春の季語とする立場もあるが、それらも気にならない「強さ」をもった佳句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
感動したモノ(情景)「だけ」を詠む。

入賞

「窓ガラス対の手形のクリスマス」(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)

クリスマスの日に、窓に手形を発見したという句である。
「窓ガラス・手形・クリスマス」、たったこれだけの情報で、イブの夜、窓にはりついてサンタを待ちわびている子供の情景や心情を描き出しているのであるから見事である。
俳句はこのように、感動・気づき・発見などの「ココロの動き」を誘発したモノ(情景)を象徴的に無意識的に詠んでくれればそれで成立する世界なのである。
にもかかわらず、日常言語の感覚でココロやキモチを「伝えよう」などとしてしまうと、「私はこのように感じました(あなたもそう感じませんか)」という味消し・押し売りになってしまい詩の価値が下がる。
技法など駆使し頭や理屈・論理でこしらえて詠んだ句も同様、この短い世界でそのような技を披露されたところでそれが鼻について鑑賞の邪魔にこそなれ、プラスに働くことはほとんどない。
俳句は「オノマトペだ、比喩だ、〇〇法だ」などという「キザな詩」ではないのである。
このあたりのことは、ぜひともよく心得ておいてほしいことである。
句からは子どものピュアなココロ、それを暖かく受け止めている作者の愛情がしっかりと感じ取れてきて共感をおぼえる。
無意識から詠まれた象徴的の高い一句である。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
象徴的に詠む。

「軽トラの荷台はみ出す聖樹かな」(ペンネーム「ぎんの雨」さん 43歳)

お店のディスプレイであろうか、軽トラの荷台に乗せられて運ばれてゆく「聖樹(ツリー)」を詠んだ句である。
大変素朴な詠み方であるが「はみだす聖樹」という発見が見事で、そこに作者の心情表出が充分になされている。
クリスマスに向けて徐々にきらびやかなに染まってゆく街のムード、それにあわせて高ぶってゆく自身の高揚感というものを上手くモノ(情景)に託して詠んである。
「はみだす聖樹」と詠んであるが、本当にはみだしているのは、クリスマスに向けての作者の「高揚感」に他ならないのである。
多少類想感が気になるが、自分の感動ある世界をしっかりと引っ張ってきたこちらも「強さ」のある句ととる。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
無意識からの強い実感を詠む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・鍵穴に陽の満ちているクリスマス(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※なし
→小さな「鍵穴」に「陽光」が満ちる様子。「クリスマス」の幸福感を印象的な情景で捉えた。名人らい詠み方で、私の感覚にも大変近い。好句・佳句。

・クリスマス両手広げる朝の虹(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※朝の虹が両手を広げたように優しく清々しく見た時にクリスマスの朝を感じました。
→クリスマスに虹は少々つきすぎであるが、中七の強い実感が全てを救っている。「両手広げるごとく」などと比喩で詠んでしまっては圧倒的に弱い句になる。好句・佳句。

・クリスマス阿弥陀くじめく高架橋(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※先月下旬、来島海峡大橋塔頂体験ツアーに参加した時の主塔からの光景や、船から橋桁を見たときに浮かんだ句です。
→俳句は他の詩と違って比喩は句を弱くする方向に働くことがほとんどなのだが、こちらは例外的に気分が出ている。「高架橋阿弥陀くじめくクリスマス」とすれば、「阿弥陀くじめく」のが「高架橋・クリスマス」両方に掛かる気分となって言葉がさらに働く。好句。

入選句

特選A(入賞候補)

・クリスマス重役太く笑い合う(ペンネーム「登りびと」さん 35歳)
→クリスマス商戦の成功の気分であろうか。風刺の効いたような俳味(おかしさ)の句である。俳句の面白さは狙って生み出すものではなく、このように結果として滲み出てくるものと心得たい。多いに味わい楽しませてもらった。好句・佳句。

・クリスマスくすくす揺れる試験管(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 43歳)
→クリスマスの気分をかわいらしく把握した。少々頭でこしらえたようなところが惜しいが、措辞の展開などに意外性があり、詩としての配慮が行き届いた句である。私の世界観ともどことなく近い。好句・佳句。

・大僧正たくあん嚙る聖夜かな(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→仏教とキリスト教を詠んだ世界観が類想感がありやや惜しいが、それらを超越した悠然とした気分が味わい深い俳味(おかしさ)の句である。好句。

・脚の無き鉄のベンチやクリスマス(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 19歳)
→この年代特有の内面を自分の言葉でしっかり詠んできてくれているところが大変頼もしい。十代というのは特別の時期だと思うので、流行の詠み方や表面的な言葉の美に乗っからず、自分としっかり向き合い今しか詠めない句というものをしっかりと詠んでほしい。こういう句の延長線上に将来が見えてくるのである。寺山修司にしろ石田波郷にしろそうであったと私は認識している。作者と同じ年齢くらいの時の私の句に「鎌月はなめられて今傷である」「能面の砕けし音がすわりこむ」などがある。

・聖夜かな胸のふくらむ女子高生(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→イブの高揚感をよく伝える句である。やや措辞が甘いが「女子高生胸の膨らむ聖夜かな」のほうがまだ自然体の印象。いちいち変わったことを詠もうとせず、このように実感のある情景をしっかり詠んできてくれればいい。好句。

・オルゴール手繰りよせたる聖夜かな(ペンネーム「でこ」さん 52歳)
→「オルゴール手繰りよせる」というはかなげな実感を「聖夜」が慣れたキャッチャーのようにしっかりと受け止めた。清々しさが共感を呼ぶ一句である。好句・佳句。

・点滴の囁きかける聖夜かな(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 53歳)
→こちらは「点滴」の音を詠んだ。中七が音に配するにやや安易なので「点滴のひろがってゆく聖夜かな」など、視覚的に詠むのもあろうか。いずれにしても好句である。

・蝋燭の輪の昇りゆく聖歌隊(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→全てが「聖歌隊」に収斂される詠み方ではあるが、「昇りゆく」が気分の出た表現。こういうところに気持ちの高揚感、ひいては祈りの気分や清々しさが感じとれ詩になっている。今後もこういう実感をしっかり掴んできてほしい。好句・佳句。

・ひょろひょろと伸びる煙突クリスマス(ペンネーム「りりこ」さん 60歳)
→現実的ではない光景なのだが、クリスマスの楽し気な気分・絵本的ムードがよくでていて、納得する心象の世界観である。俳句に現実も心象も関係ないので。このようにココロがとらえた真実を詠んでくれればいいのである。好句・佳句。

・信号まつサンタの靴の光だす(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→嘱目とも心象ともとれるが実景のようである。いずれにしても「光だす」というところにクリスマスの高揚感がよく出ている。俳句はこのようにはっとした情景を掴んできてくれればいい。好句・佳句。

・クリスマス銀座通りの社会鍋(ペンネーム「秋月なおと」さん 71歳)
→「社会鍋」は季語であり募金活動のこと。少々その季重なりが気になるが、街の気分というものがよく出ている象徴的な句である。モノ・定型感を生かして詠んだところが最大限プラスに働いた。好句。

・聖夜待つ花冠の児を抱いて(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→言葉の斡旋にたけているので何とか句にしてきているが、句の表面の出来ゴトの美・言語美にもたれる詠み方は改めたい。これでは短歌の上半身のようで読者は失われた下半身を求めてさまようことになる。句の表で全てを伝えようとせず、句の象徴性・言外の意味というものをもっと大事にしたい。

特選B

・クリスマス置きっぱなしの古時計(ペンネーム「モッツァレラ二号」さん 9歳)
→絵本的なクリスマス気分の出た句。「古時計」だけに「置きっぱなし」がありきたりの表現で惜しい。そのあたりを攻めたい。好句。

・面会者送る廊下の聖樹かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
→「面会者・廊下・聖樹」の関係性が近いので句になりにくいが、そこはかとない寂しさが聖樹の対比がしみじみとしていて味わい深い。好句。

・軒下の売り子や雨のクリスマス(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
→どことなくマッチ売りの少女なぞったような情景、それが後追いのイメージで句を弱くしていて惜しいが、この意味深な情景に作者のキモチが投影されていて共感を覚える。好句。

・会堂に賛美歌響く聖夜かな(ペンネーム「野添まゆ子」さん 48歳)
→「会堂・讃美歌・聖夜」「讃美歌・響く」などこのあたりの関係が非常に近いので、現実をただ現実らしく詠んだ句になってしまっているのだが、「会堂・讃美歌・聖夜」というモノそのものの力がよく働いていて、ステレオタイプながらもその厳かで壮大な気分に圧倒され共感を覚える。今後は飛躍して詠みたい。好句。

・鉛筆の削り屑の香クリスマス(ペンネーム「村上瑠璃甫」さん 50歳)
→「削り屑の香・クリスマス」の取り合わせが絶妙で精神性を感じさせる、この窮屈な姿というか舌足らずな表現がやや惜しいのであるがこれはこれで一句であろう。

・ジャズ歌手の声かすれたるクリスマス(ペンネーム「国代鶏侍」さん 58歳)
→実景であろうか。歌いすぎて声がかすれているというコトがいいたのではなく、「かすれ」に何かしらの寂しさ・人生を感じたという句であろう。共感を覚える。好句。

・青年に白き髭ありクリスマス(ペンネーム「としまる」さん 60歳)
→類想が気にはなるが、何故か強く胸を打つ句である。やはりどこか作者の中で「青年サンタ」の志のようなものを感じているからであろう。こういう無意識からの実感をどんどん詠んでほしい。好句・佳句。

・深海魚覚醒したる聖夜かな(ペンネーム「ハイカー」さん 61歳)
→私の句に「深海に煙の満ちて桜かな」があるが思い起こされた。「聖夜」の気分が「深海」にまで及んでいる気分。すべてを包み込むような「聖夜」のムードをよく捉えている。好句・佳句。

・クリスマスツリー住宅展示場(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→言われてみれば不思議な空間でもある展示場、それを照らすツリー。なぜか人の気配を感じないこの一句の世界観が独特である。傍観のようにも感じるのであるがなぜか不思議と出来ている。私の宿題としておこう。

・クリスマスイブ机上の手鏡や(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)
→少々詠みが追い付いていないのであるが、「イブ」の女性のどこかしら寂し気な気分、それをモノ(情景)で象徴的に描いて見せた。改作にはなるが「手鏡の音もつれあう聖夜かな」などが不意に浮かんだ。好句・佳句。

・朝刊がコトリと届くクリスマス(ペンネーム「ヒロリン」さん 70歳)
→聖夜にしろ「クリスマス」にしろ特別感のある行事、それを逆手にとって軽く詠んだのが俳味(おかしさ)を生み成功した。俳句はこれくらい肩の力を抜いて詠んでくれたらいい。好句。

・クリスマスツリーじゃれ合う子犬たち(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→少々世界観がありきたりであるが、余計なことを言わず「クリスマス」の楽し気な気分をモノ(情景)に託して詠んだのが成功した。

・速足の音交差するクリスマス(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→俳句は詩なので日記や報告のような内容を詠まれても成立しない。日常を詠むのであればこのように批評精神が必要である。その視点や観察眼が光った。この方向で。好句。

入選A

・美しや寒さの先の大聖夜(ペンネーム「翔龍」さん 19歳)
→定型感ある詠み方がよい。「美し」などと作者が語っているところが惜しい。こういところは何かしらのモノ(情景)に託して詠もう。

・我が友に宿りし命やクリスマス(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
→聖なる気分の出た句。「我が友に宿りし命」がモノ(情景)ではないので、「羊水の満たされてゆくクリスマス」などモノ(情景)で詠もう。

・静寂を探し求める聖夜かな(ペンネーム「松浦麗久」さん 35歳)
→聖夜の祈りの気分を詠んだ句ととる。「静寂を探し求める」あたりを何かしらのモノ(情景)で詠むようにしよう。

・星の子の集う聖夜の診療所(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
→一読特選あたりかなと思ったが、「星の子」が観念的で惜しい。「聖夜・診療所」だけで既に成立しているので、「診療所ささやいている聖夜かな」など、さらりと句に持ってゆくといい。

・出張や機内の聖歌聞いてみる(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→このような「あり方」は単なる報告であり詩ではない。俳句は日記やニュースや報告や連絡などとは違う詩である。そして詩の中でも異質なものである。その違いを認識しよう。

・アルバムの積み重なってクリスマス(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)
→「クリスマス」の気分によくあっている。もう少しモノの力を信じ、「~して〇〇」という説明的・物言いたげなところを引っ込め、「アルバムの重なる音やクリスマス」など、象徴的に詠むようにするとさらによくなろう。

・デパートの広場聖夜のハンドベル(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
→モノ(情景)で詠もうとしているところはよい。ただ「デパート・広場・聖夜・ベル」とモノの関係性が狭いので現実を現実らしく詠んだだけの句になってしまった。俳句は詩であって、現実を現実らしく詠むニュースではない。そこを考えれば問題点は分かってこよう。

・色褪せた振子時計やクリスマス(ペンネーム「ふくろう」さん 40歳)
→絵本的なクリスマスの気分の句で余計なことを言っていないのがいい。「色褪せた振り子時計」は「古時計」に収斂される。そのあたりを整理し、より象徴的に詠むようにしよう。

・真夜中の犬の吠え声クリスマス(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→「真夜中の犬の吠え声(がする)クリスマス(だな)」という強引な省略、説明・報告の句になってしまっているのが惜しい。俳句は詩なのであるから、強引な省略やつぶやきに季語をくっけような形式の恩寵に預かった詠み方ではなく、本物の感動を詠むようにしよう。

・星降る夜サンタの僕に手を振る子(ペンネーム「りんごまる」さん 42歳)
→詠みが追い付いていないのであるが、感動ある世界を詠んでいるのがいい。古今の名句・道場過去からの入賞句などをよく詠むなどして、俳句そのものの気分を捕まえよう。好句。

・クリスマス素敵な彼女降りてくる(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
→デートの気分の句か。微笑ましいが「素敵」と自分でいうのではなく「モノ(情景)」で詠むようにしよう。

・異国の灯聖歌の響く独り酒(ペンネーム「ゆうちゃん」さん 45歳)
→俳句慣れしていない詠み方であるが、「聖夜」を斜に見て「独り酒」を飲んでいる男の生きざまがよく出ている。「讃美歌のともるラジオや独り酒」などと整理すれば一段気分が出そう。

・肩車稚児の手に降る聖夜の光(ペンネーム「林檎嬢」さん 45歳)
→「降る」など出来ゴトを伝えようとせず、「肩車聖夜の街の灯りかな」などモノ(情景)だけで詠むようにしてみよう。センスがいいのはありありと分かるので、古今の名句や入賞句などを何度も口で味わって、俳句の感覚を身につけるといいだろう。

・愛という母音響かせクリスマス(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
→「クリスマス」の気分の出た句。「愛という母音」がモノではなく観念なのが惜しい。こういうところは言葉の美に溺れずもたれず、なんらかのモノ(情景)でしっかり詠むようにしよう。

・人肌の聖夜に積もるわたの雪(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→恋人同士の「聖夜」、その気分のよく出た句。ただし「聖夜」といえば、冬のイメージがよく出ているので、この場合「雪」は不要。そのあたりの重複に気をつけよう。

・妹の手紙を添えるクリスマス(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→何がいいたいのか何の感動を詠んでいるのかよく感じとれない。出来ゴトではなく感動したモノ(情景)だけを詠むようにしよう。

・エゾマツのおろす真白き聖夜かな(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
→「聖夜」の気分は出ているが詠みが追い付いていない。「エゾマツの真白き枝やクリスマス」などポイントを整理して詠もう。

・クリスマス部下は定時に帰りけり(ペンネーム「洒落神戸」さん 51歳)
→よく分かるのであるが詠まれたこと以上に「イメージが広がらない」。俳句は詩であって日記や報告ではない。そのあたりの違いに敏感になっていただけると嬉しい。

・聖歌高らかに灯油売りのトラック(ペンネーム「田辺ふみ」さん 52歳)
→「伝えたい」のは分かるが、それを優先して定型感のない強引な省略で「聖歌(を)高らかに(流して)灯油売りのトラック(がゆく)」と詠んでしまっては俳句にならない。俳句はそもそも何かを「伝えるものではない(詩であって二ュ―スや報告文などの日常言語ではない)」ので、俳句にならないと思ったら「トラックに灯油積み込む聖歌かな」など、出てきた素材を活かして何らかの「気分」が感じとれるものに詠みなおしたい。俳句は定型でなくともいいが定型感は季語と同じく俳句の短さを生かす重要な工夫(バネ)なのでもっともっと大事にしなければならない。

・葬列の木立の道やクリスマス(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
→詠み口が光った。映画のシーンのようでドラマチックである。好句。

・美濃和紙の聖樹や灯り色一つ(ペンネーム「さゆりん」さん 56歳)
→なんとも和風な「聖樹」がユニーク。詩なのであるから「美野和紙の聖樹もえだす爪のいろ」など、後半のイメージの重複をさけ、もっと情熱的に詠むのもいいだろう。

・天窓を瞬く星やクリスマス(ペンネーム「斎乃雪」さん 56歳)
→すべての素材のイメージが近しく惜しい。詩は現実を現実らしく美的に詠むものではない。そこを考てみよう。

・ハンドベル奏づ千人クリスマス(ペンネーム「都乃あざみ」さん 56歳)
→スケールある世界である。しかしながら「ハンドベル・奏でる・クリスマス」はイメージが近い。俳句は詩なのであるから、現実らしく詠むことにとらわれず飛躍して詠もう。

・シャンパンをあける二人のクリスマス(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
→デートの気分であろうか。やはりステレオタイプそのままなのが惜しい。傍観ではなく感動ある世界を詠もう。

・鎮魂の聖夜のミサとなりにけり(ペンネーム「吉良水里」さん 57歳)
→一句の世界観がつきすぎであるのと、「なった」という出来ゴトを詠んでいるのが惜しい。俳句は詩であって日記やニュースや報告ではないのでその違いを考えてみよう。

・チェンバロのささやく波の聖夜かな(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)
→なかなかのオリジナリティある世界を詠んでくれているところがいい。「ささやく波」が観念的で惜しいので、「チェンバロの海にたゆたう聖夜かな」など、出てきたモノの力を生かして詠んでみたい。好句。

・シャンパンに濡れる唇聖夜かな(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→ムードある句だが、モノ同士の関係性が近いのが惜しい。飛躍して詠みたい。

・仏壇にケーキ供えるクリスマス(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
→「仏壇・クリスマス」の対比が面白いが、類想でありどこかしら傍観の句である。感動ある世界を詠むようにしよう。

・水銀灯さびしき色のクリスマス(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→「水銀灯・クリスマス」は近いといえば近いが悪くない関係。作者が「さびしき」と語るのではなくて、「水銀灯たちつくしたるクリスマス」など、モノ(情景)に語らせるようにしよう。

・オルガンの音が包みし聖夜かな(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→ややモノ同士の関係性が近いがそこまで気にならない。「オルガンの音包み込む聖夜かな」くらいに整えればさらに気分が出よう。舌頭千転。

・バオバブの樹にも星降るクリスマス(ペンネーム「虹の玉」さん 64歳)
→なかなかユニークな世界観なのであるが、「星降る」が上五にも下五にもやや安易な表現。「バオバブの木々ふるえだすクリスマス」などもう少し木と一体となって詠めばよりムードが出そう。

・クリスマス耳掻きゆるり耳の中(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→ユニークで大変面白い。ただ「ゆるり」と表現が安易に流れ惜しい。「耳かきのゆっくり沈むクリスマス」など自然なかたちを見つけよう。好句。

・診察の札掛かり居りクリスマス(ペンネーム「藤田政枝」さん 66歳)
→こう詠みたい気持ちは分かるがこれでは報告になり詩にならない。「診察の札裏返るクリスマス」「診察の札ふるえだすクリスマス」などなら分かる。このあたりの消息は作者の宿題としておこう。

・コーヒーと本一冊の聖夜かな(ペンネーム「きいたん」さん 69歳)
→モノで詠んだのであるが「ただモノ」というか傍観の句で感動が全く伝わらない。感動ある世界「ほんモノ」を詠むようにしよう。

・居酒屋のひかるレバ刺クリスマス(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→大賞経験者なのであるが落差が激しい。傍観(ただモノ)というか感動の在所がよく分からない。しっかり感動(ほんモノ・そんな気がする)を詠むようにしよう。

・煙突を見上ぐ子のをりクリスマス(ペンネーム「けい子」さん 71歳)
→ほほえましい句であるが「煙突・クリスマス」はつきすぎ。オリジナルな発見・感動を詠むようにしよう。

・クリスマス朝の風頬に夜勤明け(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 71歳)
→「夜勤」の人を詠んだ句である。「朝・明け」など何かと句の内容が整理されてないので、「夜勤明け風あたたかきクリスマス」など整理するとよいだろう。

・靴下に金鍔ひとつクリスマス(ペンネーム「ふー」さん 72歳)
→どことなく月並ではあるが、洋風のクリスマスに「金鍔」とはその対比が面白く出来ている。

・星空の独りぽっちのクリスマス(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→「星空・クリスマス」であるからやや月並みであり「ひとりぽっち」が直接的で安易な表現ではあるが、「ひとりぽっち」が「星空」にとれるような詠みが面白い。

・病棟の詰所の前の聖樹かな(ペンネーム「かっちゃん」さん 78歳)
→中七がやや伝えすぎというか月並表現なので「病棟の詰所を覗く聖樹かな」などもあろうか。モノ(情景)で詠もうとしているところはよい。

・足音の近づく街やクリスマス(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
→「クリスマス」の高揚感のよく出た句である。もう少し誰の「足音」かなど具体的に詠むのもあろうが、これはこれで一句かもしれない。好句。

・居酒屋の裏に聖夜の子猫かな(ペンネーム「伊藤順女」さん 81歳)
→気分の出た句である。情景の切り口がいい。整える余地もあるがこれはこれで一句であろう。

・独り居のイブに形見のネックレス(ペンネーム「おツル」さん)
→「に」であるが、こういうところは眼をつむっても「や」と切りたい。これだけでもより俳句らしくなる。

・二胡を弾きいろを感じるクリスマス(ペンネーム「奈良美人」さん)
→「クリスマス・二胡」の取り合わせがオリエンタルな気分で斬新。中七が安易に流れているのでそこを整理するといいだろう。

・さまざまのリボンの彩やクリスマス(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→やや世界観が月並みなのが惜しいが、華やかさがよく出たムードのある句。

入選B

・煙突のない家に住むクリスマス(ペンネーム「ちま(4さい)」さん 4歳)
・なにもかも赤と緑やクリスマス(ペンネーム「むらさき(6さい)」さん 6歳)
・クリスマスいで湯の宿に雪見酒(ペンネーム「ユニー句入りが目標」さん 28歳)
・風花にサンタ降臨クリスマス(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
・年寄りのサンタになってくれる子ら(ペンネーム「大野美波」さん 31歳)
・クリスマス親達必死にでんきけす(ペンネーム「トランスさん」さん 36歳)
・ハークション聖夜の下でサンタ服(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・クリスマス街の風物映りたり(ペンネーム「HK」さん 42歳)
・聖夜母校娘と祈る15歳(ペンネーム「グレージュ」さん 43歳)
・捕鯨船聖夜の飾りオーロラー(ペンネーム「はなちゃん」さん 43歳)
・首ひねり星読み語る聖夜かな(ペンネーム「かたちゃん」さん 44歳)
・クリスマスこの日だけは敬虔な仏教徒(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 44歳)
・百均の飾り輝く聖夜かな(ペンネーム「マネレ」さん 44歳)
・クリスマス商戦に負け街を行く(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・聖果切り砂糖の家を求む子等(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・トナカイは熟睡してるクリスマス(ペンネーム「海音寺ジョー」さん 47歳)
・募金箱過ぎいつまでもクリスマス(ペンネーム「いようさぎ」さん 55歳)
・クリスマスの血誰にでも赤として(ペンネーム「コンセプシオン6」さん 55歳)
・宮島の鹿も寄り添うクリスマス(ペンネーム「西区のぺんぺん草」さん 55歳)
・クリスマス孫と一緒に過ごしたい(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 56歳)
・父さんが忍びに変わる聖夜かな(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
・クリスマス逢瀬似てきたふたりだね(ペンネーム「ゆきんこ」さん 57歳)
・亡き祖父をサンタと呼びしねだる孫(ペンネーム「蓮子」さん 57歳)
・雑踏に聖夜さやかなハンドベル(ペンネーム「邯鄲」さん 57歳)
・はいはいかたっちのため息聖夜かな(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・星からのメッセージ降りクリスマス(ペンネーム「たけの子」さん 59歳)
・もみの木を探せどどこにもない聖夜(ペンネーム「ちっぷ」さん 59歳)
・オーロラの光のリボン聖誕祭(ペンネーム「徳」さん 59歳)
・ハコモノで埋まる網棚クリスマス(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・クリスマスシャンペングラス一つになり(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
・馬屋戸は聖なるところクリスマス(ペンネーム「あわゆき」さん 61歳)
・パン屋の子ケーキ売りたる聖夜かな(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
・クリスマス家路は遠く大渋滞(ペンネーム「9月の雨順子」さん 62歳)
・じじサンタ聖夜にチャリでやってきた(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・クリスマス彼待ち?それともプレゼント?(ペンネーム「ぼっこりお腹」さん 63歳)
・クリスマス宙から眺めるエッフェル塔(ペンネーム「ひなじいさん」さん 64歳)
・サックスが昔を偲ぶきよし夜(ペンネーム「是多」さん 64歳)
・サンタさん泥棒じゃないが忍び足(ペンネーム「みっちゃん」さん 65歳)
・病室の患者退院クリスマス(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
・春遠し居酒屋一人クリスマス(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 67歳)
・子が巣立ち聖夜ゆるりとふたり酒(ペンネーム「ヒロちゃん」さん 69歳)
・デイサービスクリスマスケーキ皆の手作り(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
・17歳何度祝うのクリスマス(ペンネーム「グラングラン」さん 70歳)
・オルガンは神父の母堂クリスマス(ペンネーム「ヤチ代」さん 70歳)
・老々はクスリ飲んだりクリスマス(ペンネーム「アルミカン」さん 71歳)
・星を射る蒼きレーザー聖夜かな(ペンネーム「おちえもん」さん 71歳)
・雑踏に聞こゆ讃美歌聖夜かな(ペンネーム「『コウちゃん』のじいじ」さん 73歳)
・片隅に小さなツリークリスマス(ペンネーム「あしながおじさん」さん 73歳)
・合掌か十字をきるか降誕祭(ペンネーム「まあちゃん」さん 73歳)
・なんまんだひとりの聖夜これでよし(ペンネーム「高井志津子」さん 74歳)
・ケーキだけ食べる二人のクリスマス(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・しでかして懺悔しているイブの夜(ペンネーム「ななそじ」さん 75歳)
・サンタさん屋根をうろうろ認知症(ペンネーム「チックちゃん」さん 77歳)
・園児らの舞台馬小屋聖夜劇(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
・遠き孫ラインでメリークリスマス(ペンネーム「めぐちゃん」さん 78歳)
・ベツレヘム聖なる夜を照らす星(ペンネーム「二日酔いのヒマ人」さん)

ユニー句(句)

・クリスマス勝手に聖夜とひとり愚痴(ペンネーム「ユニー句入りが目標」さん 28歳)
・聖夜はやレジ金数う嗄れ声(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
・クリスマスATMの無反応(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・ケンタクロースものより愛を届けます(ペンネーム「まんまるちゃん」さん 39歳)
・赤見ればクリスマスよりカープカラー(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・クリスマス風邪を引いて薬増す(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・誠也さん星までアーチ来年も(ペンネーム「りんごまる」さん 42歳)
・クリスマス前に我が子は低姿勢(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
・店と店の呼び込み試合クリスマス(ペンネーム「野添まゆ子」さん 48歳)
・ママちゃりのカープ戦士の聖夜かな(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
・坊さんもケーキを食べるクリスマス(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
・クリスマス昔はくつ下今プレステ(ペンネーム「虹の玉」さん 64歳)
・老妻がマリヤに見えた聖夜かな(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・クリスマスイエスかノーでためらう目(ペンネーム「ななそじ」さん 75歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年12月5日(水)

第102回 お題「おでん」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回も全国からますます沢山の投句を賜りありがとうございます。

この道場では、「託し詠み(私の造語)」を推奨しています。
「託し詠み」とは、俳句の一番の特徴である「短さ」を活かした詠み方で、言いたいコト・ココロ・気持ちを言葉で直接表現せず、モノ(情景)に託して詠むことです。
以下①~④を踏まえ、モノからの気配「そんな気がする」を大切に、「託し詠み」にチャレンジして頂ければ難しいことはありません。
気分(ムード)が出ておれば、文法・季重なりなど、細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則、有季定型(季語を入れた「定型感」のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②原則、仮名遣いは現在使われ将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を使用する。
②原則、俳句は余白を空けたり多行書きにせず「一行」で書く。
④原則、テーマをきちんと入れて詠む。

大賞句の「二日目のおでん」は、高い精神性を感じさせてくれる句。
入賞句の「コンビニのおでん」は、象徴的な詠み方とその世界観が共感を生む句。
入賞句の「路地裏の夕日」は、期待感を情景に上手く託して詠んだ句。
特選Aは入賞候補に残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高い句。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。
「おでん」がきちんと入っていない句などは、ユニーク(句)欄は別として、残念ながら選外としました。

今回も全国から沢山の句を頂き、重ねて感謝を申し上げます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「二日目のおでんや聖書読みなおす」(ペンネーム「比々き」さん 69歳)

二日目の味のしみた「おでん」を味わいつつ、しみじみ「聖書」を読んでいるという情景の句である。
「おでん・聖書」の取り合わせの句ととるのも自然なのであるが、そうすると「味の沁みたおでん」と「味わい深い聖書」という似た意味をもつ異質なモノを取りあわせて詠んだという「作為」が際立ってきて句が安っぽくなるので、ここでは実景の句ととっておく。
句からは、一人の澄んだ部屋の空気感、「聖書」の効果によるものと思われるがクリスマスのきらきらとした街の様子などが感じとれてきて美しい。
ひいては、そのつつましやかな気分・静かで透明感ある世界に心を泳がせている作者の精神性の高さが感じ取れてきて共感を覚える。
俳句初心者の多くは「短い中で言いたい事をどう伝えるか」にとらわれ、それが強引な省略や舌足らずな表現、オノマトペや直喩(~のような)の多用、破調・上五の字余り、「~よ~よ」という心情吐露や演説調などにつながってしまうのであるが、そういう方にはこのような句が大変参考になろう。
つまり、無理に伝えようとせず、「短さ」を逆手にとって、「モノとモノとの関係性」に何かを感じたら、ただそのままさっと放り出してみればいいのである。
すると後は、読者の楽しい時間となる。
俳句とはそういう世界でもあるのである。
いずれにしても、「おでん」のステレオタイプ(固定概念・月並み・おでんらしさ)から飛躍した世界をみずみずしい感性で詠んだこの時期にふさわしい滋味深い一句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
短い中で伝えようと努力せず、短さを逆手にとって放り出す。

入賞

「路地裏の夕日ふくらむおでんかな」(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)

夕方の帰路、自宅からか他家からか「おでん」のいい香りがしてきたという情景の句である。
「ふくらむ」のが「夕日」「おでん」両方にとれるような詠み方である。
現実的には「夕日」も「おでん」も「ふくらむ」ものではないが、「ふくらむ」という実感(そんな気がする)を迷いなく掴まえてきてくれたところが詩として成功した。
少々月並ではあるが、家族との食事を待ちわびるムード(わくわくした気持ち)がよくでていて共感を覚える。
俳句はこのように、気持ちをモノ(情景)に託して詠む、モノからの「そんな気がする」を、掴まえてきてくれればいいのである。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
モノからの「そんな気がする」を、掴まえる。。

「コンビニのおでん夜中の警備室」(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)

寒い中夜勤をつとめる警備員さんが、休憩時間にコンビニのおでんを食べている情景である。
「コンビニのおでん」と「夜中の警備室」、たった二つのモノを並べているだけであるが、句として立派に成立している。
誰しもココロを表現しようとして、倒置法だオノマトペだ比喩だなどと表現の鏤骨に身を削るのであるが、この短い俳句型式はそれに凝れば凝るほど作為が邪魔になり逆効果になってしまうという危険性を孕んでいる。
そもそもココロというものは込めるまでもなくここにあるものであるし、あまたの中からそのモノを選択したというところにすでにその人のココロは見て取れるのであるから、俳句はこのようにモノ(モノを二つ並べればそれが情景になる)を詠んでくれればそれでいいわけである。
このような句を鑑賞するときに、季語の本意だの季節感だのを強引に引っ張りだして鑑賞する必要もなかろう。
句からは、夜勤を頑張る警備員さんの様子や、それに対する作者の感謝の気持ちやエールがしっかりと感じ取れてきて、共感を覚える。
象徴的に詠まれた人間愛を感じる一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
モノを選ぶところにすでに作者のココロはある。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・八月の海いっぱいのおでんかな(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※子供の頃に海水浴場の海の家で食べたおでんが人生最高のおでん!
→実体験の句という。「いっぱいの」が面白い。それが前後それぞれに掛かるようでもあり、また意味が複数性とも満タンのイメージともとれるなど、言葉が働いている。「八月・おでん」の季節の違いもそこまで気にならない強さのある句である。好句・佳句。

・おでんの湯気くの字になびく女かな(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※家族からのリクエストでおでんを作って、何気なく湯気を見ていたら浮かんだ句です。
→心にふと浮かんだ「女」を、「女のごとき」などの比喩をもちいず、「存在感」ある実感のまま詠んだところが成功した。おでん屋での酔いのまわった夢うつつの気分を詠んだような句である。好句・佳句。

・星の下合縁奇縁おでんの具(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※人と人の縁は不思議な巡り合わせによるものだとか、おでんの具に託しました。
→さまざまな見た目や味のおでんの具をいろいろな人との出会いと重ね見て詠んだ句である。少々頭(理屈)でこしらえたところ(特に中七)が句を弱くしているが、共感できる世界観である。

入選句

特選A(入賞候補)

・おでん鍋三角四角の積み木あり(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→「おでん鍋」と「積み木」を重ね見た句である。この似ているが異質なもの同士をつかず離れず取り合わせてきたところが上手かった。多くの方は「積み木のごとく」「積み木のような」などと現実的に詠もうとするのであるが、他の詩と違って俳句では比喩は句を弱くするだけで原則不要。心に0,001でも現実の「積み木」が浮かんだ(そんな気がした)のなら、それをそのままドンと打ち出せばいいのである。このように存在感あるモノをしっかり詠むのが俳句であり、目に映った事実ではなく、心に映った真実を詠むのが俳句なのである。ただし「積み木あり」は力まずに「積み木かな」くらいで自然に詠みたい。好句・佳句。

・おでんの香染みつく町の昼の月(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→「おでん」のよくあるイメージを詠むのではなく、昼の街の匂いという少しずらした舞台設定をもってきたところが光った。前夜の賑わいと比べ昼の街にもかかわらず人が見えてこない抜け殻となったような光景。そのギャップに読者はいろいろなことを感じ考えさせられる。透明感ある「昼の月」が象徴的でよく効いている。この方向で。好句・佳句。

・そぼ降るや抱擁し合うおでん鍋(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→こちらも「おでん」のステレオタイプにとらわれず詩を紡いているところが大変よい。どことなくな冬の雨に打たれつつ抱き合っている恋人同士の光景が連想される。世の中に「おでん」の句は沢山あるが、ここまでまめかしく情熱的な句はあまりないであろう。この熱い思いを大切に。好句・佳句。

・路地裏に迫る浪音おでん喰う(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→実景か心象か。作者の意図としては海辺のおでん屋あたりの情景であろうが、津波などが迫ってきているにもかかわらず、悠々とおでんを食べている人々の様子を詠んだ句のようにも受け取れる。いずれにしてもおでん屋のステレオタイプとは少し違うありそうでなさそうな世界観を詠んでいるところがひきつける。「路地裏に波音迫るおでんかな」などと整えてもいいだろう。

・おでんの灯夜咲く花の雌蕊かな(ペンネーム「チックちゃん」さん 77歳)
→少々詠み方が甘いが、おでんのステレオタイプにとらわれず独特の世界を詠んでくれたところがひきつけるなまめかしい句である。「おでんの灯」はやや舌足らずな表現にもとれるので「おでん屋の灯ゆれだす雌蕊かな」などもあろうか。好句。

・おでん屋に女一座の暮れのこる(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→どことなく昭和の風情を感じる句である。「暮れ残る」がなかなか気分の出た表現。人生をやや斜に構えた女たちの生きざまをよく表している。好句。

・おでん会棚の隙間に胃腸薬(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)
→俳句を詠むときに凝ったり気持ちを込めたりと皆したがるものであるが、この軽妙な視点、詠み方に俳味があって面白い。「おでん会」というとおでん会をしたという報告のような句になるので、「おでん鍋」などのモノで詠むほうがより象徴的になっていいであろう。好句。

・うねうねと龍まう空やおでん食む(ペンネーム「奈良美人」さん)
→「おでん」といえばほのぼのとしたイメージであるが、そこに「うねうね」とした何かしらあやしげな「龍」を見ているというのである。そういうところに心情表出がしっかりできた句であり、ひきつける。詠み方が若々しい好句である。

特選B

・だし汁にひび入りゆくおでんかな(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 19歳)
→実景とも心象ともとれるが、現実にとらわれずココロがとらえた真実を詠もうとしている姿勢が大変よい。何かしらの負の感情・屈折した心境であろうか「だし汁にひび」というところに心情表出ができていて共感を覚える。少々世界観が月並みなので現実にとらわれず飛躍して詠むようにしたい。

・おでん食べ白い吐息に続く湯気(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
→ユニーク俳句で紹介することが多かったが、この度は詩の世界にしっかり踏み込んできた。「白い吐息につづく湯気」という実に細やかな発見・実感をよくつかんだ。俳句はここまで発見したら、後はこのようにそのまま放り出しておけばいい。そうすれば後は読者が自由に感じて楽しんでくれる。恋人との時間を楽しんでいるような句とも童心気分の句ともとれる。詠みが少し甘いので「おでん鍋白き吐息に続く湯気」などと整えるとさらによくなるであろう。この方向で。好句・佳句。

・おでん食う動物園を見るように(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→一応まとまっていて面白いので特選Bであるが、「~のように」という比喩をもちいているところが句をひどく現実的にしており惜しい。「おでん食う動物園を見ておりぬ」あたりならまだ分かる。道場初期から注目している作家なので、世の中の俳句観に惑わされず自分の世界を詠ってほしいと願う。

・おでん酒でっかい月と電柱と(ペンネーム「ぎんの雨」さん 43歳)
→俳句はこのようにモノとモノの関係性に何かを発見したら、ただ放り出しておけばよいのであるが、あまりにも生で放りだされるのは少々困る。「大きく描く」とか「でっかい月」なる表現がそれである。あまり専門語は使いたくないが「形容詞・副詞」の類は短い俳句では安易にとられやすいので注意が必要である。

・おでんから溢れる海のひろさかな(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 43歳)
→このように「おでん」からの実感(そんな気がする)を掴んできてくれればいい。この場合「から」が説明的で惜しい。「おでん鍋」など、モノをデンと据えるほうがいいであろう。参考に。好句。

・おでん食べダブルヘッドの蛇が這う(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→「おでん」に「蛇」が出てくるとは、何かしらの屈折した心境であろうか。「食べ・這う」と動詞が必要以上に並ぶと句がくどくなるのでそのあたりを再考したい。また句は語と語をパズルのように当てはめてつくるものでも(アクロバット)、めちゃくちゃに作るものでもない(美の解体)。モノからの実感(そんな気がする)を掴んできてほしい。

・おでん鍋円周率を唱えけり(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
→「おでん鍋」からの実感(そんな気がする)を上手くつかんできた。あとはこのようにただポンと放り出しておいてくれれば、読者の楽しい時間となる。尽きない楽しみのようなものをモノに託して伝える上手い詠み方である。「唱えけり」は「唱えおり」のほうが自然な印象。好句・佳句。

・満員の窓の結露やおでん鍋(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→列車と「おでん鍋」の取り合わせの句であろう。「満員の窓の結露」が何かしらの省略によってできた語のようでやや中途半端なので、「おでん鍋満員電車の窓ガラス」などと整えたい。好句。

・バス停や星の匂いのおでん酒(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
→「おでん酒」とくればわれわれ中年のイメージでもあるが、こう詠まれると実にさわやかである。ここまで詠めれば「おでん酒星の匂いの停留所」などとさらに象徴的に詠みたくなる。参考に。好句。

・銀色に浮かぶコンビニおでんかな(ペンネーム「斎乃雪」さん 56歳)
→現実寄り・実景寄りに詠む傾向の強い作者。それが月並みに溺れればどうにもならないが、そこを抜け出すと持前のセンスが光る。この句はどうもその中間のような句である。この「銀色にうかぶ」というのが何かしらの実感なのであろうが、どうも抽象的で伝わりずらい。「おでん」のステレオタイプを離れて詠もうとしている姿勢はよい。

・ほやほやの住民票やおでん鍋(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→引っ越しの時の一句であろうか。あかるい気分が感じ取れてきて共感を覚える。「ほやほやの」という表現が俳句としてはやや安易なので、「反り返る住民票や」など、しっかりと詠みたい。参考に。好句。

・裏路地やおでんの匂う縄のれん(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
→ステレオタイプであるが「縄のれん」の存在感がよく効いていて重厚で安心感がある。力まず「路地裏の」くらいで詠むのもあろうか。好句。

・おでん鍋窓から覗く細い月(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
→満月ではなく「細い月」をもってきたところが意味深である。それは「おでん鍋」を囲う人々の輪に入りきれない自身を投影したものか。「鎌の月」などとするとまた違った印象の句になる。参考に。

・消音のテレビ手酌のおでん酒(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
→「消音」とはどういう事情を指しているのかひきつけるのだが、「テレビ・おでん」であるから世界観が月並。そのあたりを攻めたい。

・丸四角積木の家のおでんかな(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→ともすれば「積み木のごとき」などと比喩で詠みたくなるものであるが、「積み木の家」としっかりとモノの存在感を出して詠んでくれたところが光った。これが俳句である。

入選A

・三日目の茶色い玉子おでんかな(ペンネーム「むらさき」さん 6歳)
→少々月並みであるが、実感をしっかり詠んでいるのがよい。

・給食のおでんのたまご見つめあう(ペンネーム「モッツァレラ二号」さん 9歳)
→「見つめ合う」がいい。「たまご」からの「そんな気がする」を上手くつかんだ。

・コンビニのおでんも星もこわれもの(ペンネーム「登りびと」さん 35歳)
→俳句は短いので伝えるには向いていない。短さを逆手にとり、伝えようとせずモノを放り出してみよう。「コンビニのおでんや星のこわれもの」など。参考に。

・生業を説きつ説かれつおでん酒(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
→「生業を説きつ説かれつおでん酒(を飲んだ)」とほとんど説明してしまっては句にならない。このような詠み方はあきらめ、モノに託して詠もう。

・日めくりのコンビニおでん四畳半(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→「日めくり」がよくわからない。「日替わり」のようなものだろうか。そうだとすれば「日替わりのコンビニおでんや」などのほうがよさそう。「おでん」のステレオタイプから飛躍して詠むようにしよう。

・合格の夜におでんのスープ澄む(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)
→語感は綺麗であるが、「合格した・澄んだ」という出来ゴトを詠んだコト句の印象、あるいは短歌の上半身のような句ですっきりしない。俳句は短いので説明(伝える)には向いていないので、「コト」を詠まず「モノ(情景)」を詠むようにしよう。

・おでん盛る朱の鳥跳ぶ深き皿(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
→おでん「皿の鳥」を詠みたいのは分かるが整理しきれていない印象。「朱き鳥飛ぶ皿ありておでん鍋」などとすれば整理されるがどうも月並み。そういう場合は「おでん鍋すぎゆく鳥の朱き影」など最初の発想にとらわれず詠むことも必要。

・串二本おでんの肉が笑っている(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
→素朴であるが「笑ってる」は少々安易。最初の発想にとらわれず「串二本戦っているおでんかな
」など俳味を出して詠んでもよさそう。

・鍋を突くおでんの中は箸揉める(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
→「箸揉める」が面白い発見。そんな気がするを上手くつかんできた。俳味の句。

・老いらくの恋のごとく沁みるおでん(ペンネーム「林檎嬢」さん 45歳)
→「おでん・老いらくの恋」は少しイメージが近いがなかなか気分があっていて面白い。「ごとく沁みる」がややくどいので、「老いらくの恋のしみこむおでんかな」などもあろうか。参考に。

・おでん鍋出汁の底まで透きとおり(ペンネーム「村上瑠璃甫」さん 50歳)
→一句全体の澄んだ気分が清々しい。「おでん出汁すきとおりたる鍋の底」などとすれば整理されるが少し平凡。最初の発想にとらわれず「おでん出汁すきとおりたる雲のいろ」などもあろうか。参考に。

・コンビニのおでんの匂う選挙カー(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
→実景であろうか。選挙の忙しさや頑張りがよく感じ取れる句である。これはこれで一句だろう。

・大都会おでん屋台の紡ぐ夜(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 53歳)
→気分の出た句であるが下五がやや言い過ぎ。「大都会屋おでん屋台の灯かりかな」などモノ(情景)を生かしてすっきり詠んでみたい。参考に。

・一斉に肩の傾ぎしおでんかな(ペンネーム「さゆりん」さん 56歳)
→「おでん鍋」を囲う気分のよく出た句。上五中七の実感(そんな気がする)が面白い。

・友と食う屋台の風のおでんかな(ペンネーム「吉良水里」さん 57歳)
→「風」に個性とムードが出ている。これはこれで一句。

・それぞれのおでんに入る郷の味(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→たしかにその通りなのだが、何かの料理番組の解説のようである。やはり俳句は説明主張ではなくモノ(情景)を詠むようにしたい。

・凸凹の我が家のようなおでんかな(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→気分は分かるが「凹凸のわが家」が何のことか中途半端。また「~のような」という比喩は俳句においては句を弱くすることのほうが多いので注意が必要。「凸凹のわが家の屋根やおでん鍋」など。参考に。

・駄菓子屋の奥でぐつぐつおでん煮る(ペンネーム「9月の雨順子」さん 63歳)
→子供のお菓子を売る駄菓子屋の奥で、「ぐつぐつおでん」とは何か怪しげで面白い。そのギャップがひきつける。「駄菓子屋の奥ぐつぐつとおでん鍋」などとモノをしっかり打ち出して詠めば一段と俳句らしくスッキリしよう。参考に。

・おでん噴く南半球型の鍋(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→「南半球型」は面白いがこれは比喩の類で「南半球」そのものではないのが惜しい。「南半球吹き上げているおでんかな」などなら「南半球」の存在感が充分な句になる。この差を感じてほしい。参考に。

・おでん屋の並ぶ背中の円かりし(ペンネーム「松廣李子」さん 64歳)
→実景を俳味を効かせて詠んであり面白い。しかしながら世界観が月並みなので、現実にとらわれず飛躍して詠むようにしたい。

・夕間暮れ横町匂うおでんかな(ペンネーム「藤田政枝」さん 66歳)
→できている句なのであるが、よくよく感じでみればすべて「おでん」のイメージに収斂されてゆく句ともとれる。詩なのであるから、現実にとらわれず、飛躍して詠むようにしたい。

・満月と大根浮かぶおでん鍋(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 67歳)
→いろいろなモノが浮かぶ「おでん鍋」だけに、月が浮かんでいても一向に気にならない。むしろちょうどいいくらいに感じるのが詩の世界。やや「丸」繋がりに作為が感じられるところが惜しいが、季重なりもあまり気にならない強さのあるをもった句である。

・国訛り耳にふらりとおでん酒(ペンネーム「秋月なおと」さん 71歳)
→「おでん酒」を飲んでいる気分のよく出た句である。しかしながら「耳にふらりと」はまだ熟していない表現。「おでん酒ぶらさがりたる国訛り」など。参考に。

・深夜まで湯気たてて待つおでんかな(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→家で夫を待つ様子を詠んだ句であろうか。しかしながら「モノ(情景)」を詠むというよりは「待っているという子コト」を詠んだ句のようになってしまっているところが惜しいが、「自分」ではなく「おでん」に待たせているような気分が面白い。

・おでん酒女将の猫を足元に(ペンネーム「伊藤順女」さん 81歳)
→詠出来事を詠んでいるところが惜しいが、常連の様子を描いた句であろうか。一句の世界観がたいへん面白い。

・帰り道おでんの匂いを持ち帰り(ペンネーム「音楽大好き」さん 84歳)
→匂いだけ持ち帰るというところが面白い。いろいろにイメージが膨らむ句であるし、軽快な詠みぶりが若々しい。

・編棒の号数うすれおでん煮る(ペンネーム「寿人大好きばぁば」さん 70歳)
→女性ならでは世界観の句である。「編棒・おでん」の取り合わせであるが、この場合やや中途半端。もう少し飛躍したモノ同士を取り合わせたい。

・コンビニのおでん袋に夜勤明け(ペンネーム「おタヨ」さん)
→実景を詠んだものであろうが月並みな世界観が惜しい。詩なのであるから、現実を詠んでも仕方がないので、発見ある世界(そんな気がする)や飛躍した世界を掴んで来るようにしたい。

入選B

・おでんなりぽつんと山の一軒家(ペンネーム「ちま」さん 4歳)
・おでんへと家族の箸が一直線(ペンネーム「まっきー」さん 10歳)
・路地裏や午前一時のおでん酒(ペンネーム「カープ乙女黒ちゃん」さん 26歳)
・練り物で味が広がるおでんかな(ペンネーム「ユニー句入りが目標」さん 28歳)
・おでん種お国自慢が花ざかり(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
・冷えた手と おでん両手に帰り道(ペンネーム「梅のこ」さん 30歳)
・好きな具をゆずってあげておでんかな(ペンネーム「大野美波」さん 31歳)
・温泉で十人十色おでんかな(ペンネーム「たく」さん 40歳)
・袖触れ合いおでんの湯気に笑顔舞う(ペンネーム「りんごまる」さん 42歳)
・路地奥におでんの灯揺れ遠回り(ペンネーム「はなちゃん」さん 43歳)
・高架下かすむおでんとコップ酒(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 44歳)
・旅の味訛りたっぷりおでん酒(ペンネーム「ゆうちゃん」さん 45歳)
・コンビニのおでんの香り唾を飲む(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・おでん屋に徘徊の婆ふいと寄り(ペンネーム「海音寺ジョー」さん 47歳)
・遠慮して箸出さぬまま冷やおでん(ペンネーム「柴わんこ」さん 50歳)
・おでん酒今なら言えることもある(ペンネーム「田辺ふみ」さん 52歳)
・あと何を足すのか引くかおでん鍋(ペンネーム「いようさぎ」さん 55歳)
・おでん残してからし色うずを巻く(ペンネーム「コンプシオン6」さん 55歳)
・被爆者の祖母の直伝おでん鍋(ペンネーム「西区のぺんぺん草」さん 55歳)
・帰路の道おでんの匂い我が家かなぁ?!(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 56歳)
・熱燗に笑顔花咲くおでん鍋(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
・おでん鍋花咲く笑顔に湯気ゆらぐ(ペンネーム「ゆきんこ」さん 57歳)
・十人前仕込むおでんやブリュッセル(ペンネーム「邯鄲」さん 57歳)
・USAまねた日本のおでんかな(ペンネーム「たけの子」さん 59歳)
・出番待つお玉十本おでん鍋(ペンネーム「徳」さん 59歳)
・諍いのふわりと緩むおでんかな(ペンネーム「りりこ」さん 60歳)
・愛妻家おでんを料理と呼べるなら(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・おでん屋で同じ訛りが気にかかる(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・おでん鍋具材で揉めた新婚時(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・レジ前でおでん、からあげ迷う冬(ペンネーム「文々」さん 62歳)
・譲り合うおでんの玉子息子かな(ペンネーム「瑠緒まま」さん 62歳)
・おでんにも色々有ったが母の味(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・この旅のおでんは深し日本海(ペンネーム「是多」さん 64歳)
・黄金に輝き大根おでん道(ペンネーム「虹の玉」さん 64歳)
・おでん鍋探す具材は鍋の底(ペンネーム「ささやん81」さん 67歳)
・週一でおでんを食べる両日で(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
・単身や一人おでんの四畳半(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・拓郎もおでん牛すじねらいうち(ペンネーム「グラングラン」さん 70歳)
・木々静か囀り遠くおでん炊く(ペンネーム「ヒロリン」さん 70歳)
・均等に食べられてをりおでん種(ペンネーム「ヤチ代」さん 70歳)
・おでん酒兄は今でも仕切り好き(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 71歳)
・おでん鍋囲む団欒家族かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・おでん鍋自慢あふれる同窓会(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・おでんの鍋一つで足りるクラス会(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 73歳)
・飛び立てよ日の丸おでん宇宙食(ペンネーム「まあちゃん」さん 73歳)
・掘り出しの野菜洗いしおでん鍋(ペンネーム「ももちゃん」さん 73歳)
・コンビニのおでん抱えて口ずさみ(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・大根で一杯飲み干すおでんかな(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・日本酒とおでんで持て成すパリの夕(ペンネーム「ななそじ」さん 75歳)
・おでんには自信あります片えくぼ(ペンネーム「蛍子」さん 76歳)
・風呂あがりおでんを頼んで汁を飲む(ペンネーム「あやのすけ」さん 77歳)
・わだかまりほぐれゆくなりおでん鍋(ペンネーム「かっちゃん」さん 78歳)
・灯り揺れ一人二人とおでん酒(ペンネーム「めぐちゃん」さん 78歳)

ユニー句(句)

・アツアツのおでんでダチョウのトリオ芸(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 37歳)
・おでん種入れりゃなんでも おでんだね(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・夜が更け青汁サプリおでんわを(ペンネーム「りんごまる」さん 42歳)
・コンビニのおでんに騒ぐ腹の虫(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・ゆげ笑う壁のビキニのおでんかな(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
・粘膜に戦慄走るおでんかな(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 53歳)
・おでん鍋無限ループの母の愚痴(ペンネーム「いようさぎ」さん 55歳)
・コンビニのレジ横おでんつい一個〜(^o^)(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 56歳)
・孫五人宝探しになるおでん(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
・箸持てば おでんの玉子消えてたよ(ペンネーム「ゆきんこ」さん 57歳)
・吟醸の粋なおでんに酔うワイフ(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・大阪が好きで嫌いで関東煮(ペンネーム「国代 鶏侍」さん 58歳)
・コンビニのお釣りでそのまま買うおでん(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・おでんでんでんでんぐり返しする子(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
・朝ごはん晩の残りのおでんかな(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
・おでん鍋つるつる踊る玉子かな(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
・先妻のおでんのだしの懐かしき(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・関東煮好みではない関東人(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・お別れねコンビニおでん一つづつ(ペンネーム「是多」さん 64歳)
・やってみそ!トマト、アボカドおでんだね(ペンネーム「虹の玉」さん 64歳)
・おでん食う座敷わらしの駆けてゆく(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
・呑み会のおでん一皿愚痴三皿(ペンネーム「秋月なおと」さん 71歳)
・一串二十円のおでんが贅沢学生時代(ペンネーム「ななそじ」さん 75歳)
・ことことと小言の続くおでんかな(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年11月21日(水)

第101回 お題「落葉」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回は101回目。
落葉の数ほどたくさんの投句を賜り感謝を申し上げます。

今一度立ち返って「俳句は詩であり詩は芸術である」という認識をもちましょう。
俳句は現実を現実らしく詠めばいいというものでもありませんし、意味がはっきり分かればいいというものでもありません。
現実的であろうがなかろうが、意味が分かりやすかろうが分かりにくかろうが、芸術である以上、その句からどれほどイメージが豊かに広がるか、合わせ鏡のようにイメージがイメージを呼び込む構造の句になっているか、それこそが大事になってきます。

よって、この道場では、「託し詠み(私の造語)」を推奨しています。
「託し詠み」とは、俳句の一番の特徴である「短さ」を活かした詠み方で、言いたいコト・ココロ・気持ちを言葉で直接表現せず、モノ(情景)に託して詠むことです。
以下①~④を踏まえ、無意識から湧き上がってきた「そんな気がする」を大切に、「託し詠み」にチャレンジして頂ければ難しいことはありません。
気分(ムード)が出ておれば、文法・季重なりなど、細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則、有季定型(季語を入れた「定型感」のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②原則、仮名遣いは現在使われ将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を使用する。
②原則、俳句は余白を空けたり多行書きにせず「一行」で書く。
④原則、テーマをきちんと入れて詠む。

大賞句の「ゆるゆると」は、見えない世界を感じさせてくれる句。
入賞句の「木の匙」は、ほのぼのとした家族愛を感じさせてくれる句。
入賞句の「落葉掃」は、ダイナミズムの句。
特選Aは入賞候補に残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高い句。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。
「落葉」がきちんと入っていない句などは、ユニーク(句)欄は別として、選外としました。

今回も全国から沢山の句を頂き、重ねて感謝を申し上げます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「ゆるゆると太極拳の落葉かな」(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)

寒い冬の朝、公園で太極拳をしている様子を詠んだ句である。
作者の意図としては「ゆるゆると」は「太極拳」のことをさしているのであろうが、結果としてそれが「落葉」にまでかかるような詠み方になっているところが大変面白い。
句を詠んだ方誰もが「感じる」であろうこのスローモーションを見せられているような感覚、時間性を超越したような気分がこの句の最大のユニークなところであり、魅力になっている。
現実性や意味性、「落葉」のステレオタイプ(固定概念)にとらわれず、モノ(情景)からの「そんな気がする」というムード(無意識からの実感)」を掴んできたところが成功した一句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
詩は芸術。現実・意味より、心のとらえた真実・ムードを大事にする。

入賞

「木の匙に掬うスープや落葉降る」(ペンネーム「斎乃雪」さん 56歳)

部屋の中の匙のアップと窓の外の落葉の様子を詠んだ。
これだけを見ればありふれた光景とも受け取れるのであるが、なかなか味わい深い。
家族での少し早めの夕食の光景がイメージされる。
美しくも寂しく寒々とした外の温度感に対して、あたたかな部屋の温度感、そしてさらにあたたかなスープ、そして何よりあたたかな家族のココロというように、読者をイメージ世界の深みに自然と誘ってくれるような詠みが見事である。
何気ないようであるが、「木の匙」をキャスティングしてきたところがよく効いていて、その「木のぬくもり」が一句全体の温度感という側面を引き立てる良い働きをしているようである。
奇を衒わず・言葉に溺れず、モノの力(木の匙・スープ・落葉)を活かした抑制の効いた詠み方が光った「何もなさそうで何かある」滋味深い一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
言葉の美に溺れず、モノの力を活かす。

「落葉掃大地に描く大きな弧」(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)

句意は明瞭、公園・お寺などの広い土地の落葉を、竹箒を全身で使って掃き集めてゆく様子、その竹箒の大きな跡を詠んだ句である。
「落葉掃」の強い実感を全面に打ち出し、衒いのなく大胆に詠んでいるところがひきつける。
大地に描かれた箒跡の「大きな弧」は、言うまでもなく作者の心の軌跡・心そのものであり、その勢いや若々しさ、いきいきとしたのびやかさが共感を誘う。
部分的には「大きな弧
はやや甘い表現ではあるのだが、その強い実感に比するにそこまでの傷ではなかろう。
単純明快にして爽快な一句。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
現実にとらわれず実感を大胆に詠む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・夜着薄き肩に散らばる落葉かな(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※なし
→やや女性的なムードが出すぎのようだが、何か映画のワンシーンでも見せられているかのようである。日常世界と非日常世界の境界を詠んでいるような幻想性がひきつける。好句・佳句。

・親展の手紙翳せば落葉かな(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※子供宛で届いた親展の手紙。開けるのも憚られて振ってみたり、翳してみたり。
→「~せば〇〇」と、少し理屈っぽいが「親展の手紙・落葉」はなかなかなかのキャスティング。舌頭千転し「親展の手紙を翳す落葉かな」などとすれば落ち着きがよさそうである。好句。

・縁側に旅の途中の落葉かな(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※縁側で一休みをしている二・三枚の落葉、我もその一枚である。
→俳句名人になられてから句が若々しく深みが増してきて大変頼もしい。作者の言にあるように、対象の傍観ではなく、対象と一体となって詠んでいるところが大変よい。「縁側に」と限定せず「縁側の」と少しぼかして詠んでも味わいが出そうである。好句・佳句。

入選句

特選A(入賞候補)

・濡色の雲を引っ掛け落葉す(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 19歳)
→空ごと落葉する気分(そんな気がする)を上手く把握した。どこか説明的・もの言いたげなところを引っ込め、モノの力を信じて詠むようにすれば、さらによくなるであろう。佳句。

・落葉雨患家へ急ぐ薬剤師(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
→「落葉雨・薬剤師」で成功している句なので、「患家」まで出てくると少し言い過ぎの印象。読者は事実や意味・意図を知りたい・説明してほしいのではなく「ただ感じたいだけ」なのである。好句。

・教会の窓に寄り添う落葉かな(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→何を言うでもなく祈りの気分のようなものがしっかり情景に託されていて共感できる。この方向で。好句・佳句。

・月琴の音透きとおる落葉かな(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)
→珍しい楽器である「月琴」と「落葉」のキャスティングで成功した。澄んだ空気感のようなものが美しく感じ取れ共感を覚える。モノに託すこの方向で。好句・佳句。

・軒深き父の生家や落葉焚(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→旧家のムードがよく出ている句である。伝統的なカッチリした詠み方も一句の気分に合っている。この方向で。佳句。

・落葉の空に吸わるるベンチかな(ペンネーム「りりこ」さん 60歳)
→俳句は詩であり詩は芸術である。だから現実を現実らしく詠む必要はまったくなく、このように自信の「そんな気がする」という実感をさっと掴まえてきてくれればいいのである。冬の張り詰めた空と一体となってゆくような非日常感・その心情に大変共感できる。好句・佳句。

・あやとりの梯子にかかる落ち葉かな(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→私の昔の句「あやとりの春ふりまいて素足かな」が思い出された。「あやとり」は冬、「素足」は夏なのだが春から夏に向かうあたりの天真爛漫な気分を詠みたかったのだろう。掲句も季重なりになるのだが違和感は感じない。小さな気づき・瞬間を上手くつかんだ句である。自分の感性を信じるこの方向で。好句・佳句。

・手打鉦鳴る出雲路の落葉かな(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→凛とした響きや気配が共感を誘う。何を説明するでもなくただ心に留まったモノを打ち出して詠んだところが成功した。伝統的な素材に骨格のしっかりした詠み方がよく合っている。俳句はこのようにモノの力を信じて詠めばいいのである。この方向で。好句・佳句。

・落ち葉して三角屋根のパン屋さん(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→ほのぼのとした一句である。「落ち葉・パン屋さん」のキャスティングが成功している。大きな公園の側のオシャレなパン屋さんがイメージされる。「三角屋根」という形状に託したモダンなイメージが、この場合詠みぶりと呼応している。

・バス停の肩に寄り添う落葉かな(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→多作の作者であるが、この句が最も気分が出ている。「バス停の肩」がいい。「バス停の/(私の)肩に寄りそう」ともとれるが、ここでは「バス停の肩(バス停のはしっこのような気分)」と受け取りたい。この焦点を少しずらしたようなところに作者のアンニュイな気持ち・心の動きが感じとれ滋味深い。好句・佳句。

・天帝へ音を返して落葉掃く(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→「落葉掃く」気分を大きく美しく把握した上手すぎる句である。しかしながら俳句ではそれこそが目立って欠点になるのが難しいところ。よって頭(意識)ではなく無意識からの詠みを勧めるのである。佳句。

特選B

・落葉に青い自転車カーブする(ペンネーム「ちま」さん 4歳)
→4歳とは思えない見事な句である。「青」が印象的である。このようにはっとしたことや小さな気づきをそのまま調べに乗せて詠んでくれればいい。俳句はこのように作者の感動をモノ(情景)に託して詠む芸術なのである。この方向で。好句・佳句。

・落葉や砂場の青いカニシャベル(ペンネーム「むらさき」さん 6歳)
→こちらも6歳とは思えないしっかりした句である。「青」が印象的である。このようにはっとしたことや小さな気づきをそのまま調べに乗せて詠んでくれればいい。俳句はこのように作者の感動をモノ(情景)に託して詠む芸術なのである。この方向で。好句・佳句。

・母の声落葉の上の缶コーヒー(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→「母の声/」で切れている句とも、「落葉の上」にあるのが「母の声・缶コーヒー」の両方ともとれる句である。象徴的な句になっているので状況や場面の解釈は詠み手に委ねられ広がるが、冬の公園あたりでの母恋いの気分が感じ取れる。

・落葉掃くたびに氷を削る音(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)
→「定型感」は俳句は短さを活かす大事なバネなので安易に外すべきではない。しかしながら「氷を削る音」という作者の実感が大変素晴らしい。作者の何らかの追い詰められたような心境のようなものが感じ取れてきて共感を覚える。「氷」ももちろんで季語であるが別に気にならない。季重なりだとか教条とかそのようなところにまず目がいってしまうような小賢しい心のあり方こそ問題である。佳句。

・焼きたてのアップルパイや落葉踏む(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 43歳)
→冬の公園あたりの句であろうか。やや月並みな光景であるが「パイ・落葉」のサクサク感の二重奏が楽し気な気分を感じさせる。

・一枚の落葉旅するバスの中(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→「旅する」のが「落葉」とも「作者」ともとれる句であるが、作者が「旅する」のでは月並なのでここは「落葉(が)旅する」ととる。「落葉」のステレオタイプから飛躍したワクワクとした気分を醸し出しているところがよい。これでも一句なのだが「バスの中」は「落葉」のある場所を説明しているようでくどくなってしまうので、「バスの音」などもあろうか。好句・佳句。

・上州の空に落葉の飛礫かな(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
→「上州」とは群馬のことか。「落葉の飛礫」という襲いかかってくるような気分にどことなく戦国時代のようなムードが感じ取れてきてユニークである。このように何らかの「そんな気がする」を掴まえてきてくれれば、あとは読者の楽しい時間となる。好句・佳句。

・足裏でさわる落葉の下のもの(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
→ありきたりの光景のようであるが、このシーンだけを切り取ってこられると何かドキッとさられる。そこに何があるのか、底なし沼か恐竜か、、、。こちらも実体験に即しつつ「そんな気がする」を掴まえてきてくれたところが上手い。好句。

・落葉踏むざっくざっくと約束す(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→無意識で詠むというよりも、やや作為的意図的に詠んでいるところが惜しいのだが、気分の出た句である。「約束」ながらどこか破られてもいいような大雑把さ、そういうところに作者の大らかさ・のびやかな心境が感じとれてきて共感を覚える。好句。

・大小の円周ありて落葉掃き(ペンネーム「邯鄲」さん 57歳)
→「落葉掃き」の発見を自分の言葉でつかんできてくれた。入賞句に同じようなシーンを詠んだ句があるが、こちらは少々きちんと詠みすぎたというようなところがやや惜しいか。しかしながらこれはこれで一句。好句・佳句。

・落葉踏む盲導犬の太き足(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→「落葉・盲導犬」のキャスティング、その足元に注目した句である。出来ているのであるが「踏む」まで出てくるとややくどい。そのあたりを少し整理してみてほしい。好句・佳句。

・落葉舞う師走の空に林檎売り(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 67歳)
→冬の気分のよく出た句であるが、この句の場合「落葉・師走・林檎」と季節感を強く放つ季語が3つ並びややうるさい。例えば「落葉舞う空のたもとの林檎売り」くらいもあろうか。好句。

・回遊魚めらめらと落葉焚き(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→「回遊魚・落葉焚き」の取り合わせが絶妙である。しかしながら中七の定型感のなさがどうしたことか。「回遊魚めらめらとゆく落葉焚き」などとやってくれておれば入賞あたりだったかもしれない。最近の流行なのか定型感のない句も多いが私は全く賛成できない。俳句の短さを活かす工夫としての「定型のバネ」は非常に大切である。

・朴落葉小さき村の山と谷(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)
→素朴な味わいのある句である。やはり「朴落葉」のキャスティングがよい。この大きな葉をもってきただけで、一句全体におおらかさとぬくもりが出ている。下五「山と谷」は少々作為的なので、「山のかげ」などナチュラルに詠みたい。好句。

・落葉降る川のほとりの喫茶店(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
→少々説明的であるが気分の出た句で出来ている。美しい光景に胸がすそれこそ洗われるようである。好句。

・校庭の大樹ざわめく落葉かな(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→「校庭・大樹・落葉」であるからこれだけみれば月並なのであるが、「ざわつく」という実感が生きた。「ざわつく」のは「大樹」であり作者自身の心なのである。好句。

入選A

・夜しずか落葉の下の団子虫(ペンネーム「モッツァレラ二号」さん 9歳)
→「しずか」の直接表現が惜しいが、公園などの片隅での小さなモノに思いを馳せる気分がよく出ている。

・落葉焚く煙の先や一番星(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
→「焚・煙」の重なりが少し惜しいが、発見を素直に詠んだ。

・落葉や車ぎつしり参観日(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
→「ぎつしり」という表現がやや安易に感じられるのが惜しいが、「参観日」の気分がよく出ている。

・小さき手を埋め尽くしおる落葉かな(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→全体的に説明的であるのと世界観が月並みなのが惜しいが、「落葉」であそぶ子の喜びがよく出ている。

・眠り猫あたためてゐる落葉かな(ペンネーム「マネレ」さん 44歳)
→「眠り猫・あたため・落葉」と素材が現実的だからか感動の在所がよくわからないのが惜しいが、リズムよくできている。

・一滴の大河に流るる落ち葉かな(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→有名作家の随筆に「大河の一滴」なものがあったがそれが思い起こされる。この句は「一滴の/」で切って鑑賞したい。すると「落葉・一滴」が重なり合うような光景となり感情移入できる。面白い詠み方の句である。

・平成のケミカルシューズ落ち葉踏む(ペンネーム「海音寺ジョー」さん 47歳)
→「シゅーズ・落葉・踏む」なので世界観が月並みであるのと、感動の在所がよくわからないのが惜しいが、リズムよく詠まれている。

・読みかけの本に落葉を仕舞いけり(ペンネーム「でこ」さん 52歳)
→世界観が月並であるのが惜しいが「栞」というわけでもなく「落葉」をはさんだようなところに気分がでていてかわいらしい。

・特撰の落ち葉一枚仏壇へ(ペンネーム「田辺 ふみ」さん 52歳)
→「特撰の落ち葉」とはいい形の「落ち葉」ということであろうか。そこがやや抽象的でよくわからないのが惜しいが、偲ぶ気持ちはよく出ている。

・落葉踏む影それぞれのストーリー(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 53歳)
→「ストーリー」など直接述べているのが惜しい。せめて「それぞれの重さかな」など、モノの様子で詠むようにしたい。気持ちはわかる。

・結び目の決まらぬリボン落葉舞う(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
→つぶやきに強引に季語をくっけた散文崩れな詠み方が惜しいのでそこを改めたい。女性らしい気分がよく出た句である。

・王羲之の手の跡にじむ落葉かな(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→「王羲之」は書の名人の名前。この場合はつきすぎならぬやや離れすぎのようである。しかしながらこういう風に飛躍にチャレンジする方向は大変よい。

・落葉焚く境内過る子等の声(ペンネーム「吉良水里」さん 57歳)
→世界観が月並みであるところと盛り込み過ぎなところが惜しい。お寺の冬の賑わいの気分はよく出ている。

・登山道落ち葉ささやく風ありて(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
→「登山・落ち葉・風」とやはり世界観が月並みなのが惜しい。かわいらしい気分はよく出ている。

・落葉や個性作家の旅鞄(ペンネーム「sora」さん 58歳)
→中七がやや強引な印象。「作家の小さき」などもう少し自然に詠むといいだろう。「落葉・旅鞄」はなかなか気分あるキャスティング。

・指先に残り香捜す落葉道(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
→「捜す」などと出来事を詠まないで「指先に残る香りや」などとモノ(情景)で詠めばさらにイメージが広がりそうである。帰路の楽し気な気分はよく出ている。

・カサカサと落葉の平和大通り(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→「カサカサ・落葉・通り」ではどう詠んでも月並み。俳句観にもいろいろあるが、俳句は現実を現実らしく詠むことでも体験を伝えることでもない。俳句は詩であり芸術なのであるから、そこに立ち返って考え美をつむぎ出してほしい。定型感のバネを活かして詠んでいるところはよい。

・読みかけの本に落葉の栞かな。(ペンネーム「9月の雨順子」さん 62歳)
→「本・落葉・栞」では月並みで句になりにくいので素材から再考したい。詠み方は悪くない。

・琴の音に落葉重なる女坂(ペンネーム「松廣李子」さん 64歳)
→世界が作り物っぽいところが少々惜しいようだが、着物の女性が歩いていそうなムードに色気を感じる句である。

・坂道の墓前に続く落葉かな(ペンネーム「藤田政枝」さん 66歳)
→「坂道・墓・落葉」はさすがに素材が近く月並みになるので惜しいが、「墓参り」の長い道のりの気分がよく出ている。

・青空に風の道あり落葉行く(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
→「道あり」と直接語っているようなところが惜しい。俳句はモノ(情景)で詠むようにしたい。葉が落ちて空が軽くなったような実感には味わいがある。

・ふっくらと痩せていたりき落葉山(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→無意識ではなく「知(意識)」で)詠んでいるようなところが私には惜しいので入選Aとする。一瞬知恵の輪でも見せられているような気分になるが、言われてみれば「落葉山」の気分を上手く把握している。

・落葉道歩き始めた子の歩幅(ペンネーム「寿人大好きばあば」さん 70歳)
→「歩きはじめた」とあるから「歩幅」は少し言い過ぎの印象。下五は「子の笑顔」などもあろうか。幼子の成長の喜びが感じられる句である。

・落葉積む二坪程の菜園に(ペンネーム「ヒロリン」さん 70歳)
→世界観が月並なのが惜しいが、家庭菜園のつつましい気分が共感を誘う。

・落葉に急かされて発つ自炊宿(ペンネーム「秋月なおと」さん 71歳)
→「~に~して~する」と説明的なところを引っ込めたいが、内容は面白く場面が目に浮かぶ。

・朝日浴び落ち葉集める清掃日(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
→世界観が月並なのが惜しいが、さわやかな気分が共感を誘う。

・落葉踏み一番列車闇を裂き(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 73歳)
→「踏み・裂き」と動詞が多く詠みが落ち着かないのがやや惜しいが、「落葉・一番列車」は気分のあるキャスティング。

・落葉焚き沖見て暮らす父なりし(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→「父なりし」と感慨を放つように言うのは避けたいところだが、お父さんの生きざまに味わいを感じる句である。

・車椅子押すや落葉の狂詩曲(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→「狂騒曲」は少し言い過ぎであろうか。何かしらの複雑な心情は感じとれる。

・逆さ富士ゆれて真っ赤な落葉降る(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→どことなく世界観が月並みなのが惜しいが、「赤」の幻想的な気分が味わい深い。

・名選手の肩にひとひら乗る落ち葉(ペンネーム「ななそじ」さん 75歳)
→選手の引退をイメージさせ気分も出ているのであるが、さすがにこれはステレオタイプで惜しい。

・カサカサと落葉の中を里の路(ペンネーム「入江節子」さん 78歳)
→「落葉の里の路」を「カサカサ」とでは気分の出すぎだが、「里」の冬の楽し気な気分がよく出ている。

・菩提寺の大師の笠に降る落葉(ペンネーム「木村善光」さん 83歳)
→選をする立場としてはよくある風景なので惜しいとなるが、何かの絵葉書の写真でも見せられているかのような美しい構図である。

・柿落葉いのちの果ての虹の色(ペンネーム「松井千鶴子」さん 96歳)
→中七がやや言い過ぎなので「貼りついている」などモノの様子で詠むようにしたい。「柿落葉」の実感をあざやかに把握した感性が冴えた。

入選B

・銀杏の上に敷かれる赤落ち葉(ペンネーム「こーせい」さん 18歳)
・落葉ちる今年の数を木に付けて(ペンネーム「moe」さん 23歳)
・稚児の靴落ち葉の笛がカサカサと(ペンネーム「ひだまりびより」さん 28歳)
・足元の落葉にあたるケンカして(ペンネーム「大野美波」さん 31歳)
・鮮やかな落葉を拾う手は紅葉(ペンネーム「おまめ」さん 35歳)
・風たのし落葉の音のなほたのし(ペンネーム「登りびと」さん 35歳)
・落葉踏みカラスと謡う帰り道(ペンネーム「ころりん」さん 36歳)
・落葉をねこっそりどけると冬支度(ペンネーム「トランスさん」さん 36歳)
・落葉樹空にかざせば太陽に(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・落ちていれば枯葉も立派な落葉かな(ペンネーム「you」さん 41歳)
・あたたかい落ち葉の布団あったかい?(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・野良猫が通り過ぎる落葉かな(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・からからと落葉舞うなり道舞台(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・風の筆空いっぱいに落葉戯画(ペンネーム「ゆうちゃん」さん 45歳)
・イヤリング落葉の絨毯隠れん坊(ペンネーム「林檎嬢」さん 45歳)
・道端の落葉の数で知る季節(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・平日は通学の橋落葉かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
・落葉道スキツプすると靴が鳴る(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・土に還る落ち葉の遺言状(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
・落葉踏むしとしと雨のやんだ朝(ペンネーム「もじこ」さん 49歳)
・幼子と落葉集めて芋を焼く(ペンネーム「とっこ」さん 50歳)
・来た道もいつの間にやら落葉かな(ペンネーム「洒落神戸」さん 51歳)
・プロメテウスや落葉の火アトム生む(ペンネーム「コンセプシオン6」さん 55歳)
・シャッターの遅速落葉の水の綾(ペンネーム「さゆりん」さん 56歳)
・舞い降りる落ち葉たちの晴れ舞台(ペンネーム「かっぱ」さん 57歳)
・夕の庭落葉舞い込み水入らず(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・秋深し散る落葉冬の足音(ペンネーム「りんの」さん 58歳)
・校庭にSOSと落葉降る(ペンネーム「たけの子」さん 59歳)
・落葉朽ち年輪刻む大樹かな(ペンネーム「徳」さん 59歳)
・塩害に一夜で果てる落葉かな(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・境内で合わせた手に舞う落葉(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
・落葉掃き焚き火に焼き芋母の味(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・手をつなぎ地上絵描く落葉達(ペンネーム「ひなじいさん」さん 64歳)
・落葉見て焼き芋思う平和かな(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・風走る落ち葉の競争アスファルト(ペンネーム「是多」さん 64歳)
・神宿る山を守るは落ち葉かな(ペンネーム「虹の玉」さん 64歳)
・突風に落葉の壁の渦巻きて(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・山道でバイク走行滑る落葉(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
・落ち葉拾い吾子の工作宅配便(ペンネーム「グラン グラン」さん 70歳)
・落葉蹴るざわつと舞つて散りにけり(ペンネーム「ヤチ代」さん 70歳)
・風に舞う落葉を子等は追いかけて(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 71歳)
・定年の色を伝える落ち葉かな(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・吹き寄って落葉編み出す錦かな(ペンネーム「まあちゃん」さん 73歳)
・色かたち違う山山掃く落ち葉(ペンネーム「ももちゃん」さん 73歳)
・閑さや枯葉の読経山の宿(ペンネーム「チックちゃん」さん 77歳)
・襟立てて駅舎に急ぐ落ち葉風(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・ふきだまる落葉に埋もれ遊ぶ犬(ペンネーム「かっちゃん」さん 78歳)
・落葉焚灰にくすぶる紅はるか(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
・落葉山かさこそ細い脚は誰(ペンネーム「伊藤順女」さん 81歳)
・ガサガサと落葉鳴らしてウォーキング(ペンネーム「音楽大好き」さん 84歳)
・ふるさとの思い出語る落葉かな(ペンネーム「アルミカン」さん)
・雨降って落葉彩ます山の道(ペンネーム「奈良美人」さん)
・落葉見て人生語る裏表(ペンネーム「八本松のみーちゃん」さん)

ユニー句(句)

・渡せない落ち葉に書いたラブレター(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
・酔いつぶれ終着駅は落葉雨(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
・落ち葉舞う姿が諭吉かまぼろしか(ペンネーム「りんごまる」さん 42歳)
・目の保養落ち葉袋と二頭筋(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 44歳)
・はらはら落葉これが万札ならば(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・触れない触りたくとも濡れ落葉(ペンネーム「ちっぷ」さん 59歳)
・落葉をのんびり眺め楽よのう(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
・昔からやっぱり芋は落葉焚き(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
・おちばかり考えているくそ親父(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・葉が落ちるわが頭髪を重ね見る(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・落ち葉踏み背広軍団会議室(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・落葉のプールで泳ぐ園児たち(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・片想い落葉に託すラブレター(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・処理方法悩む隣の濡れ落ち葉(ペンネーム「まきちゃん」さん 73歳)
・落葉期妻がベンチでつべこべと(ペンネーム「みなと」さん 74歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年11月7日(水)

第100回 お題「新米」(選と評 谷村秀格先生)
総評

俳句道場は今回で100回を迎えます。
これも毎回楽しく興味深くご覧くださっている視聴者の皆さん、熱心にご応募くださっている参加者の皆さんのおかげと深く感謝を申し上げます。
最初の頃の投句は広島県内の方がほとんどだったのですが、口コミで知られるようになり、最近んでは全国からも多くの句を頂けるようになりました。
全国の皆様におかれましてはこの縁を通じて、広テレの活動や平和都市広島のこと、西日本豪雨災害の現状や広島の文化・自然・観光なども広く周知いただき理解を深めていただければ幸いです。

この道場では一貫して「俳句は詩、詩は芸術」という立場にたち、季語や国語の知識といった小手先の技術ではなく「感性を磨く」という方向性を大事にしています。
俳句を頭(理屈・論理・テクニック)で追いかけるという立場もあるようですが、それは日常いろんなところでなされているわけで、わざわざ俳句でしなくてもよいことです。
身近な芸術である俳句に触れることで、自分の中のもう一つの自分(無意識・感性)のすばらしさに気づいていただき、普段あまり意識されない「無意識世界」に光を当ててみてほしいと願います。

無意識・感性に初心者もベテランもありません。
よって俳句に初心者もベテランもありません。
数値で宇宙の真実を掴もうとするのが科学者なら、モノ(情景)からの実感「そんな気がする(無意識・直観」で宇宙の真実を掴もうとするのが俳人です。
これからも俳句を楽しみ、自分の感性・可能性を磨き、自分と自然(宇宙)とのつながりに気づき、志高くよりよい人生を歩んでいただければと願います。
これからもよろしくお願いを申し上げます。

この道場では、「託し詠み(私の造語)」を推奨しています。
「託し詠み」とは、俳句の短さを活かした詠み方で、言いたいコト・ココロ・気持ちを言葉で直接詠まず、モノ(情景)に託して詠むことをいいます。
以下①~④を踏まえ、無意識からの表現「そんな気がする」を大切に、「託し詠み」にチャレンジして頂ければ難しいことはありません。
気分(ムード)が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の「朝日割る」は、新米の運ばれてゆく喜びを大胆に表現した句。
入賞句の「男文字」は、農家の自信を堂々と表現した句。
入賞句の「北半球」は、新米を食べる幸福感をスケール大きく表現した句。
特選Aは入賞候補に残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高い句。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

今回は、「新米」が「新人」の意味にしかとれないような句、新米(今年米)がきちんと入っていない句は、ユニーク(句)欄は別として、残念ながら選外とさせていただきました。

今回も全国から沢山の句を頂き、重ねて感謝を申し上げます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「朝日割る貨物列車や今年米」(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)

「今年米」は新米のこと。
収穫を終えた「今年米」が袋詰めにされ「貨物列車」で全国へ運ばれてゆく様子を詠んだ句である。
見ての通り「朝日割る」という表現が見事。
「朝」から感じ取れる、今スタートを切ったばかりというような時間性、「朝日を割って」進んでゆく「貨物列車」という圧倒的な迫力・スケール感に、言葉にならないあふれんばかりの喜びや期待感が託されているのが余すところなく感じとれてきて共感を覚える。
まさに無意識からの実感(そんな気がする)を迷わず掴んできた佳句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
朝日は、朝という時間性、形態のスケール感を同時に伝える。

入賞

「新米とでっかく記す男文字」(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)

宅配便で送る「新米」、その送付状の品目欄に記される文字を詠んだ句である。
農業をしている旦那さんが下宿している息子などに新米を送るため、宅配便の送付状を書いている様子が浮かんでくる。
全体的にやや詠み方が甘いのであるが、手塩にかけて育てた「新米」への自信、相手にきっと喜んでもらえるだろうという自信が、一句全体にみなぎっており共感を覚える。
農家の旦那の気持ちと一体となって詠まれた「新米」の充実感を伝える堂々たる一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
頭でこしらえるのではなく、ハッとした実感を掴んでくる。

「新米や北半球もこんもりと」(ペンネーム「たけのこ」さん 59歳)

茶碗に盛られた「新米」の様子と「北半球」の形状を重ね見た句である。
茶碗に盛られた「新米」を味わっている時に、ふと浮かんだ「北半球もこんもり」という「そんな気がする(実感)」をさっと掴んだ。
茶碗に盛られた「新米」と「北半球」の形状を詠んでいるだけなのであるが、あたたかでつやつやした香りうまみたっぷりの「新米」を味わう幸福感が、「北半球(地球全体)」に広がってゆくようなのびやかな気分には誰もが共感を覚えよう。
このように「新米」を味わえるその大変な幸福感・喜び・感激を、スケール感のある「北半球」というモノ(情景)に託すことで、余すところなく伝えたところが大変見事である。
そのような「託し詠み」の波及効果ともいえるが、どことなく「平和」への祈りの気分までをも引っ張ってきているようなところも味わい深い。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
モノからの気配(そんな気がする)をつかまえるのが俳句。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・吾子の歯の香りたちたる今年米(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※なし
→草田男の万緑の句が想起される。米粒と小さな歯の見た目、子どもの生命力と「今年米」の新鮮さなどがつかず離れずのとりあわせで調和を生んでいる。意味にもたれず「そんな気がする」という無意識からの詠み方を大切にし「今年米」の気分をいきいきと詠みあげた。佳句・好句である。

・新米の一粒ずつの肺呼吸(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※毎日お米を炊いていると感じるお米の呼吸を俳句にしました。
→少し理屈っぽいが「新米の肺呼吸」という実感はなかなかなかのもの。「新米の肺呼吸する●●」「新米や肺呼吸する●●」など舌頭千転して自然な姿を見つければさらによくなりそうである。

・新米の色を奏でる電子音(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※新米のご飯が炊き上がった時、炊飯器の電子音を格別な思いで聞き、詠みました。
→味ではなく色や音の実感をつかんできたオリジナリティがなかなかである。「電子音」も面白いのであるがこの場合やや抽象的。「新米の色●●の炊飯器」など舌頭千転して自然な姿を見つけたい。

入選句

特選A(入賞候補)

・髪一本抜けて新米炊き上がる(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 19歳)
→「髪・新米」はなかなかのキャスティング。なぜ「髪一本抜けて・炊き上がる」のか。米作りの苦労を象徴しているのか、収穫までの時間性を象徴しているのかなど、解釈が読者に委ねられ広がってゆくような詠み方がのびやかで面白い。

・今年米日向の色に炊き上がる(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
→「炊き上がる」米が「日向(ひなた)の色」だという実感(そんな気がする)を詠んだ。「日向の色」という表現はあまり聞かないが、香ばし気な気分がよく出ている。言われてみれば納得の表現である。好句・佳句。

・新米や棚田は星を吸い尽くし(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
→新米のつややかな気分その背景が美しく表現されている。しかしながら「吸いつくし」が惜しい。こういうところは「演説調」にせず、「吸い尽くす」など情景・状態にして、読者に感じてもらえるように詠みたい。参考に。

・新米や神楽の里の空青し(ペンネーム「もじこ」さん 49歳)
→「新米」の清々しい気分を伝える句である。しかしながら「青し」がモノ(情景)ではなく作者が「言っていること・気持ちの直接表現」で惜しい。俳句詩なのであるから「演説調」にせず、「空の青」などモノ(情景)で詠むようにしたい。参考に。

・新米を溢せば山の水の音(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
→「新米」から「山の水の音」がするという実感を上手くつかんできた。こちらも「新米」の清らかさを伝える句である。「新米」の手触りや音、そこに大きな自然を感じている作者ののびやかな心境に共感する。好句・佳句。

・新米や富士山嶺の綿帽子(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 53歳)
→「新米」に「富士山」をキャスティングしてきたことで神々しさのようなものを美しく感じさせる句になった。「綿帽子」を季語とする立場もそうでない立場もあるようであるが、いずれにしても雪の季節感を前面に打ち出した光景が「新米」の白さとあいまって美しい。佳句。

・新米や空のにおいの宅配便(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)
→届けられた「新米」の気分がよく出た句である 。「そんな気がする」という実感を迷いなくつかんだ。好句・佳句。

特選B

・新米や雲の高さを映しをり(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→仮名遣いは現代仮名遣いを採用して不足はないはずなので、惰性で旧仮名を使わず現代仮名遣いを用いるようにしたい。句は「新米」の喜びやのびやかな気分が出ているのであるが、この句の場合「何」に映すのかそのあたりが抽象的なのがやや惜しいのでそこをはっきりさせたほうがいいだろう。

・新米や母のノートを読みかえす(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→作者の意図とは違うかもしれないが素材から思うに、現在農業をしている作者が亡くなった「母」が記した「農業記録」を読み返しているような句に取れる。親の跡を次いで農業をすることになった作者の感慨がしみじみと感じ取れる一句である。好句。

・鉄釜の揺るる武州の今年米(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
→「武州」は現在の東京・埼玉・神奈川あたりのこと。武の響きも相まって雄々しいイメージ。その地の米を昔ながらの「鉄釜」で炊くというのであるが、その様子を「揺るる」と抑制的に詠んだところが力のこもった冴えた表現。素朴ながらも生命力のようなものまで伝わる佳句。

・新米や水の重さの空の雲(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→気分の出た句で面白い。ただし「新米・水、水の重さの雲」とくればやや意図的でつきすぎ、そのあたりを攻めたい。

・添状の文字やわらかに今年米(ペンネーム「邯鄲」さん 57歳)
→入賞句が男文字ならこちらは女文字といったところか。あたたかさとやさしさの伝わる句である。少し世界観がありきたりなところがやや惜しいが、出来た句である。

・新米の俵積み上げ相撲部屋(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→俳味(おかしさ)の句である。新米の喜びや期待感がよく出ている。好句。

・新米を供える仏間やや広し(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
→家族が外に住むようになり、お参りするものが減り寂しくなった気分を詠んだものか。どことなく世界観がありきたりであるが出来ている。素朴ながら「やや広し」という実感がよく効いている。

・手びねりの夫婦茶碗や今年米(ペンネーム「りりこ」さん 60歳)
→夫婦仲良く新米をいただく。その少し特別な気分が「手びねりの夫婦茶碗」というところによく出ている。幸福感が滋味深く表現されている。

・新米の磨ぎ汁牛の走り来る(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→あ作者によれば牛にとぎ汁をやっていた実体験の句という。「新米のとぎ汁」だけに風味がよいのだろうか、「牛の走りくる」というところに「新米」のおいしさや喜びがよく出ている。好句。

・校庭の脇たけなわに今年米(ペンネーム「松廣李子」さん 64歳)
→田舎の学校の一部を一時的に農家が借りて米袋を積ませてもらっているのであろうか。あるいは校庭の隣の田を詠んだものか。「脇たけなわ」が分かるような分からないような表現であるところは課題であるがなかなか面白い。好句。

・新米や光を纏う道祖神(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→田舎の気分や感謝の気分がモノ(情景)に上手く託されている。「新米・光・道祖神」は、光繋がりでややつきすぎなのでそのあたりは注意したい。好句。

・新米のとれた棚田に夜の月(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 67歳)
→新米の喜びを美しく詠みあげた。しかしながら「とれた」が言わずもがなでやや惜しい。全体的に舌頭千転して落ち着きのいい姿を探したい。

・鍋にうつす新米の透きとおる音(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→「新米」の美・神秘性のようなものを伝える句。できているのであるが、この定型感のなさとつぶやきの切れ端のようなすっきりとしない詠み方は改善したい。575の「定型感」というものは、「母音+子音」で構成される日本語の生理にあったリズムなので、俳句の短さを活かすバネにもなるので大事にしたい。

・手で掬う新米ぬくし稚児の指(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→こちらも一般的には出来た句となるのであろうが、私としては「ぬくし」が惜しい。これはモノ(情景)というよりは作者の感想になるからである。例えば「手で掬う新米白き稚児の指」などとすれば「モノ(情景)」になる。参考に。

・新米の一合増やし夕支度(ペンネーム「寿人大好きばあば」さん 70歳)
→「新米」をおいしくいただくその気分が素直に詠まれた句である。この句も「増やし」ではなく「増やす」としたい。「増やす」とすれば説明ではなく「モノ(情景)になろう。参考に。

・高速船どんと積まれる今年米(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→今年米が各地へ運ばれてゆくその様子を詠んだ。中七がやや安易な表現に感じられところが少し気になるが俳味がある。

入選A

・手を合わせ炊く新米や七五三(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
→おめでたい気分がよく出ているが、この場合「新米」と「七五三」の両季語が喧嘩している印象である。そのあたりを整理したい。

・新米や風の抜けたる築百年(ペンネーム「登りびと」さん 35歳)
→大変気分は出ているのであるが詠みが追い付いていない。舌頭千転し「百年の梁の重さや今年米」など落ち着く姿を見つけたい。

・新米のおにぎり澄んだ高気圧(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→「新米・おにぎり」「澄んだ・高気圧」とややごちゃごちゃして落ち着かない。「等高線すきとおりたる今年米」などもうすこしポイントを絞って詠みたい。参考に。

・今年米積み上がる空高く行く(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)
→新米の感激は伝わるのであるが、「高く行く」が惜しい。このような決意「演説調」をを詩にわざわざ持ち込む必要があるのかを考えてみてほしい。詩でしかできない表現・俳句でしかできない表現をするからその詩型の価値があるのである。「今年米積み上げてゆく空のいろ」などと素直にモノ(情景)で詠んでみたい。参考に。

・新米を頬張る夜の夫婦箸(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 43歳)
→新婚のような気分が楽し気である。「新米・夫婦箸」のキャスティングが世界観が近いながらも面白い。

・新米の甘い香りに包まれて(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
→やさしさの伝わる句である。ありきたりの世界観ではあるがそれなりにできている。

・新米や赤子を抱く若い人(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
→「新米」が新人とも米のこととも両方にとれる。命の喜び・収穫の喜びの感じ取れる句である。

・ふわふわと踊る新米喉の奥(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→舌頭千転「喉の奥ふわふわ踊る今年米」とすれば一段スッキリする。口中ではなく喉の奥というところが面白いが、米を食べるというよくある世界観の延長なのでやはり惜しい。取り合わせなどで飛躍して詠んでみたい。

・新米に野菜を刻む園児かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
→「園児」たちが秋の素材で調理している様子であろうか。「に」をもってくるところが大変上手いのであるが、いかんせん「米・野菜」のキャスティングの近さが世界を狭くしていて惜しい。

・新米や産まれたての笑くぼかな(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→「新米」の何らかの様子を詠んだものか、赤子の顔を詠んだものか少々抽象的なところと、「や・かな」と切れ字が二つ入ってやや落ち着かないところを整理したい。どことなく笑顔のイメージで「新米」の気分を醸し出しているところは面白い。

・新米や瑞穂の国に生を受く(ペンネーム「斎乃雪」さん 56歳)
→一見できているのであるが、「新米・瑞穂」「瑞穂・国」「新・生」がつきすぎであるし何より「受く」が惜しい。「受く」はモノ(情景)ではなく作者自身が語っている直接表現だからである。句の内容(言いたいコト・出来事)ではなく、語と語の効果に敏感になってほしいと願う次第である。

・幸せも炊き込んでいる今年米(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
→言いたいことはよく伝わるのであるが、上五がいかんせん直接で惜しい。「炊飯器高らかに鳴く今年米」など、何らかのモノ(情景)に託して詠めるようになれば違うであろう。

・胸に尚母の山河や今年米(ペンネーム「吉良水里」さん 57歳)
→心情吐露というか観念的で惜しい。例えば「ふるさとの山河炊かるる今年米」などならわかる。もう少しモノ(情景)を打ち出して詠むようにしたい。参考に。

・新米や金文字の湧く米袋(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→「新米」の袋のデザインを詠んだ句であろう。期待感・喜びの気分の出た句である。しかしながら「湧く」とまで言ってしまえば少々言い過ぎ。このあたりの塩梅が難しい。キャスティングにはアクセル、詠みにはブレーキといったところか。

・新米や父が選んだ景徳鎮(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
→「新米」への特別な思いがよく出た句である。詠みが少々ぎこちないので舌頭千転し「新米や父の選べる景徳鎮」あたりとしたい。参考に。

・新米の椀は色々大家族(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→待ちに待った「新米」を家族それぞれが好きな器で食べる様子。「色々」が少々安易な表現ではあるが、食卓の活気がよく出ている。

・板長の水の加減や今年米(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
→新米は「水」の加減が難しいという。「板長」なら大丈夫という期待感を少しおかしく詠んだ句か。世界観は少しありきたりで惜しいのであるが、俳味が感じられて愉快である。

・曲がり角新米の匂い待ち伏せる(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→こちらも俳味の句であろう。「曲がり角新米の香の待ち伏せる」とすればリズムが整う。

・新米の星屑ほどに煌めけり(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
→「ほどに」が惜しい。「星屑」の存在感が希薄だからである。例えば「星屑の煌いている今年米」などなら「星屑」の存在感が出よう。そもそも俳句は一句そのものが隠喩のようなものなので、そこにあえて比喩を用いるのは原則避けるほうがいいだろう。

・夫の居て新米を磨ぐ朝かな(ペンネーム「藤田政枝」さん 66歳)
→ほのぼのとした句である。このあたりは好みであろうが「夫と居て」としたい。

・手に掬う越後の香り今年米(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
→「今年米」の実感を素直に詠んだ。やや直接的なところが惜しいが、米そのものではなくそこに土地の匂いを感じたところにムードがある。

・新米の焦げのむすびや薪弾く(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→「新米」を「薪」で炊くとは今では贅沢である。この句の場合「新米の焦げの香りや」など炊くシーンに特化したほうが感動のポイントが明確になってよさそうである。参考に。

・新米や広島菜漬けの重石上げ(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)
→待ちに待った「新米」どうおいしく食べるか楽しんでいる様子が伝わる。少々説明的であるが、「重石を上げ」というところに実感が出ている。

・新米や縁故米てふ荷物来る(ペンネーム「ようちゃん」さん 70歳)
→「縁故米」とは親戚や縁者に配る米のことか。「新米・縁故米」「新米・荷物」であるから世界観がありきたりではあるが、余計なことを言わず詠んだところがよかった。ここからどういう想像をめぐらせるかは読者に委ねられている。

・新米を下げて湯治の客となり(ペンネーム「秋月なおと」さん 71歳)
→一句の素材だけから解釈すれば、長い「湯治」にゆくのに際し「新米」を持参したという句。いきいきとした「新米」の句は多いがどことなく千鳥足のような気分の句でそこにオリジナリティと俳味が出ている。

・新米やキラリ一粒ピアス揺れ(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→取りあわせの句であろうか。美しいのであるが詠み方が甘い。「新米の粒立ち上がるピアスかな」など、舌頭千転し、定型感を活かして詠んでみたい。

・神様と共にいただく今年米(ペンネーム「『コウちゃん』のじいじ」さん 73歳)
→感謝の気持ちの句である。意味は伝わるのであるがつぶやきの延長のようでもあるので、もうう少しモノ(情景)を打ち出して詠むといいだろう。

・新米の愚痴も詰めおく宅急便(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→モノ(情景)を詠むというよりも出来事を詠んでいるところが惜しいが、「新米の愚痴」とはどういう愚痴かひきつける。一句全体を貫く俳味が面白い。

・園児らと育った新米塩むすび(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→「園児らと育った新米(が今や)塩むすび(となっている)」という報告・説明を省略したようなところが惜しいが、喜びや成長の喜びが感じられるあたたな句である。

・新米が神座にどんと大胡坐(ペンネーム「チックちゃん」さん 77歳)
→「新米・神座」はイメージが近いのであるが、「大胡坐」が俳味となっていて少し愉快である。

・ごうごうと刈り取る音や今年米(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→「刈り取る」音を「ごうごう」とはどのような実感であろうか。大収穫のイメージであろうか。音に託して迫力あるイメージを伝えているところが上手い。

・新米のお代わりつづく釜のぞく(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→句意は明瞭。一句の世界が食卓で完結しているところが飛躍に乏しく惜しいのであるが「釜のぞく」に俳味と実感が出ていて愉快である。

入選B

・新米や甘みほのかにてかる朝(ペンネーム「モッツァレラ二号」さん 9歳)
・夜な夜な奮闘す画面と目目と新米と(ペンネーム「しょうた」さん 19歳)
・おかわりの用意もあって新米よ(ペンネーム「大野美波」さん 31歳)
・今年米一から探す水加減(ペンネーム「ころりん」さん 35歳)
・秋味覚うまさ際立つ新米で(ペンネーム「ツッシー」さん 36歳)
・新米の季節がきたら母が呼ぶ(ペンネーム「ナルナル」さん 36歳)
・新米で五分がゆ作る新米ママ(ペンネーム「まゆまま」さん 39歳)
・新米を食べて感じる秋の風(ペンネーム「ふくもち」さん 42歳)
・新米や街におはようございます(ペンネーム「しかもり」さん 44歳)
・新米やこの美しき地の恵み(ペンネーム「マネレ」さん 44歳)
・新米や八十八手の漢字かな(ペンネーム「ゆうちゃん」さん 45歳)
・成長の吾子に新米握りけり(ペンネーム「さらさん」さん 46歳)
・新米で炊いたご飯の艶やかさ(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・旧知から新米届く獣道(ペンネーム「海音寺ジョー」さん 47歳)
・新米や朝ドラ歌う炊飯器(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
・新米や稲の命に礼を言う(ペンネーム「風のシルフ」さん 48歳)
・新米を盛る仏壇に食卓に(ペンネーム「洒落神戸」さん 51歳)
・新米の水を減らして炊きにけり(ペンネーム「田辺 ふみ」さん 52歳)
・ひっちゃかめっちゃか四割小米の今年米(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・新米を娶りて欲しい炊飯器(ペンネーム「ナギさん」さん 55歳)
・新米で握ったおにぎりツヤツヤだ(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・新米のとぎ汁瓶へ白き指(ペンネーム「さゆりん」さん 56歳)
・新米の炊きあがり待つわくわく感(ペンネーム「かっぱ」さん 57歳)
・新米をスプーンで食べる二歳の子(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
・新米や一合多く炊いたのに(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・新米の宅配重い冬近し(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 62歳)
・ひと杓文字掬ひて香る今年米(ペンネーム「安田 蝸牛(やすだ かぎゅう)」さん 62歳)
・虹かかり亡き母に届けよ今年米(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・新米の香り解凍老いた母(ペンネーム「瑠緒まま」さん 62歳)
・倉隅に夜の静かを今年米(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
・寒空に母を想いて新米の夜(ペンネーム「ひなじいさん」さん 64歳)
・新米のおにぎり食べて笑い顔(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・新米の危ふい姿未知の味(ペンネーム「是多」さん 64歳)
・新米の炊ける薫りに注ぐお茶(ペンネーム「虹の玉」さん 64歳)
・羽釜にて炊く新米の甘きこと(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
・空大地おいしい新米里感謝(ペンネーム「グラン グラン」さん 70歳)
・新米を研ぐ指先も楽しかり(ペンネーム「ヤチ代」さん 70歳)
・親戚の新米とどく潮の香も(ペンネーム「おちえもん」さん 71歳)
・新米やおどり炊き釜無洗米(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・新米のむすび口にし夢心地(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・臨月の新米流す大震災(ペンネーム「まあちゃん」さん 73歳)
・今年米蔵に積みしや主なし(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・段ボール手紙と野菜と新米と(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
・田の恵みすそわけしたる今年米(ペンネーム「かっちゃん」さん 78歳)
・東京へ元気と添えし今年米(ペンネーム「めぐちゃん」さん 78歳)
・旅の宿女将自慢の今年米(ペンネーム「三眠」さん 80歳)

ユニー句(句)

・新米はお水加減が大切だ(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・新米を狙うカラスの腹黒さ(ペンネーム「めしめし」さん 60歳)
・新米に威張られ古米肩狭し(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
・新米はレトルトカレーとやって来る(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・新米におかずはいらぬと父が言い(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・新米や夫拘り土鍋噴く(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
・今年米古米となってから食べる(ペンネーム「是多」さん 64歳)
・古米食べ何時になれば新米か(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
・味よりもブランド競う今年米(ペンネーム「秋月なおと」さん 71歳)
・新米の卵かけごはん世界一(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・新米や聞くと聞かずで味違う(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・新米の香りが美味いと妻が云う(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・クラス会あのころ新米いま古米(ペンネーム「まきちゃん」さん 73歳)
・新米やお洒落な案山子まだ立ちぬ(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・新米に両足揃える祖父の癖(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
・新米を人には与えわれ古米(ペンネーム「アルミ・カン」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年10月17日(水)

第99回 お題「林檎」(選と評 谷村秀格先生)
総評

「知に働けば角が立つ、情に棹させば流される、意地を通せば窮屈だ、とかく人の世は住みにくい」これは夏目漱石の『草枕』の冒頭。
ふとこれは俳句のことではなかと感じました。
俳句は自由でどう詠んでもいいと思っている方も多いようですが、それぞれの形式には向き不向きがあり、それ故にそれぞれの存在意義があります。
一言で言ってしまえば、俳句はまさに、知(意識・論理・理屈による表現)・情(感情・ココロの直接表現)・意(我・個性的であろうとすること)、を排して詠まなければならない「託し詠み」の詩型なのです。

「託し詠み」とは、言いたいコト・ココロ・気持ちを言葉で直接詠まず、モノ(情景)に託して詠むことです。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分(ムード)が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の林檎汁は産後の感激をあますところなく伝える句。
入賞句の朝市は音で攻めた句。
入賞句の稚児の頬は視覚で攻めた句。
特選Aは入賞候補に残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高い句。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

俳句道場は、調べればわかるような季語や言葉の知識を教える場ではなく、一句そのものの芸術性(感性)を鍛える場ですから、モノ「林檎」周辺を詠んでいただいておれば、夏の季語である「青林檎」などでも良しとしました。

今回も全国から沢山の句を頂き感謝を申し上げます。
ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「林檎汁口いっぱいの産後かな」(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)

作者によると、初めての妊娠・出産の緊張感、帝王切開前後の絶食・絶飲を経て、初めて口にした林檎汁(ジュース)のおいしさ、その感激を詠んだ句とのこと。
特に解説の必要もない大変気分の出た分かりやすい句である。
「口いっぱいに広がる林檎汁の甘酸っぱさ」に、出産時の言葉にならない感激・母親になった喜びや初々しさなどが、あますところなく象徴されていて共感を誘う。
特に優れているのは「口いっぱいの産後かな」という表現。
句の意味(頭・意識・理屈)だけを優先するのであれば、「初産後口いっぱいの林檎汁」とでも詠めばよいのであるが、これでは「初産後←→口いっぱいの←→林檎汁」という語と語の前後関係があたりまえ(散文的・説明的)で詩にならない。
無意識から湧き上がってきた表現(そんな気がする)を大切に「口いっぱいの←→産後かな」と、「←→」の前後の語と語の関係性にメタモルフォーゼ(変容・意外性・飛躍)を持たせて詠んだことで詩になった。
句は「口いっぱいの産後かな」をひと続きのフレーズとしても解釈できるように詠んであることで、直接的な意味のほか「赤ちゃんが大きな口を開けて泣いているような気分」や、言葉では言い尽くせない「出産前後のもろもろの感動の様子・空気感」のようなものまでをも引っ張ってくることに成功しており、イメージ豊かで味わい深い。
詩という言語はこのように、通常の言語・散文の感覚では伝えられない感動、言葉で説明しきれない感動、もろもろの空気感などを、一瞥で象徴的に表現できるのが強みであり、まさしく存在理由なのである。
無意識からの実感をモノ(情景)に託して詠んた佳句。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
語順以前に、無意識からの表現を大事にする。

入賞

「朝市の木箱のならぶ林檎かな」(ペンネーム「でこ」さん 52歳)

この句、意味(頭・知識・理屈・論理)にもたれて「正しく」詠むのであれば、「朝市の木箱の中の林檎かな」「朝市に林檎の木箱並べられ」などのほうがいいのであるが、これでは意味が伝わるだけでどうにもならない。
「木箱の並ぶ林檎かな」という表現は、先の案に比べて、「意味が」分かるような分からないような表現であるが、大変「気分」が出た表現である。
この句もこのように無意識からの表現(そんな気がする)を大切に詠んであるところがよい。
私はこの句は特に「音」が印象的に表現されているなと思って、大変共感を覚えた。
「朝市」の賑わい、そこに並べられてゆく「林檎の木箱」の音、そして「木箱」の中でコロコロと転がる「林檎」の音。
これらのハーモニーがいかにも明るく楽しく活気があり、「場」の臨場感が伝わってくる。
上手いのは「ならぶ」という動詞。
動きをイメージさせることによって、モノとモノがぶつかるような音、ひいてはイキイキとした生命力を引き出すことに成功している。
字面的には大きな情景から小景の林檎へズームアップされるような詠み方をしているだけなのであるが、このようにモノ(情景)をチョイスされると(関係性)、視覚より「音」の印象の方が伝わって引き立ってくるのであるから、詩というものは不思議である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
モノの並べ方(キャスティング・配置)で、世界が決まる。

「稚児の頬朝日に透ける林檎かな」(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)

先の木箱が「音」ならば、この句は「視覚」の句である。
まず一句の気分として、「朝日に透ける」のが「稚児の頬」「林檎」両方にとれるような詠み方が働いている。
そして、現実的・日常的には「透ける」ことのない「稚児の頬・林檎」を、詩的真実として「透かして」見せた手腕が見事である。
といっても、詩は突拍子もないことを言えばいいのかと言われればそうではない。
やはりこのあたりが「つかず離れず」のバランス感覚である。
例えば「朝日に溶ける」とまで言っていたら、やはり「言い過ぎ・飛躍のしすぎ」になろう。
すがすがしい「朝日」に照らされて、より輝きと透明感を増す「稚児の頬」と「林檎」。
その両者のイメージが次第に重なってゆくような気分に、秋の突き抜けるようなすがすがしさやさわやかさ、ひいては生命の輝きのようなものが感じ取れてきて、共感を覚える。
モノ(情景)を全面に打ち出して象徴的に詠んだ美しい一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
俳句は詩。言いたい事や意味ではなく「気分」が伝わればよい世界。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・北の空ひび割れている林檎かな(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※なし
→「北の空」「林檎」はイメージが近いが、何らかの不穏な空気を感じているのであろうか。「ひび割れている」に屈折した心境がよく表れている。好句。

・冬林檎父の秒針震えおり(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※去年、父のお見舞いに行った時、病室の林檎を見て浮かんだ句です。
→「冬・秒針・震える」はややつきすぎに感じられるが、お父さんの体調を気遣う気分の出た句。好句。

・姫林檎ハープ奏者の白き胸(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※我が家に姫林檎の鉢植えがあり、今が見ごろで真赤な実を付けています。そして、ハープの演奏者が胸に付けていた銀色のネックレスの輝きを想い浮かべ、詠みました。
→何かのメッセージ(意味)を伝えるでもなく、作者の言葉にもあるように「姫林檎」からの実感をただ掬ってきたところが大変よい。象徴的な美しい非日常感が惹きつける。佳句・好句。

入選句

特選A(入賞候補)

・太陽の指絡み合う林檎かな(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→「太陽の指」とは見事。赤い「林檎」が「太陽」の恩恵を充分に受けている気分を生々しく伝えていて共感を覚える。無意識からの実感を大切にするこの方向で。佳句・好句。

・絵ハガキのかすかに香る林檎かな(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「絵ハガキ」が香るのか、「林檎」が香るのか、「絵ハガキの林檎」が香るのか、いろいろにとれるところに詩としての夢うつつの気分がよく出ている。やや「林檎」の存在感が薄そうではあるが、これはこれで大変気分の出た一句であろう。佳句・好句。

・ヴィーナスの乳房の重み白のリンゴ(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
→意味・意図が伝わるように「正しく」詠んであるところが惜しい。詩は「気分」なのであるから「重み」などと「正しく」言う必要はなかろう。「ヴィーナスの乳房重たき林檎かな」など、ぼんやりと詠んでくれたほうがムードが出ると思うのであるがいかがであろうか。

・病床の白きシーツや林檎剥く(ペンネーム「洒落神戸」さん 51歳)
→世界観はいたってありありきたりなのであるが心を打つ。印象的な「白」の効果であろう。秋の気分も相まって生命の美しさ・透明感のようなものが伝わってきて共感を覚えるなかなか奥深い句である。佳句・好句。

・新りんご村ごと届く宅配便(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→「村ごと届く」というところに「りんご」の気分や感激がよく出ている。こういう無意識からの実感を大切に詠みたい。佳句・好句。

・籠盛の林檎窓辺に光編む(ペンネーム「斎乃雪」さん 56歳)
→「光編む」のは編み物をしている作者であろうか。籠から漏れる光であろうか。「光編む」という無意識からの表現が大変すばらしく詩になっている。しかしながら短い句の中でモノを言おうとしている在り方がやはり気になるのでそこをどうにかしないといけない。コト(出来事)ではなくモノ(情景・象徴)の方向に入ってきてほしい。好句。

・林檎落つ地軸の軋み遠く聞き(ペンネーム「吉良水里」さん 57歳)
→「落つ」→「聞き」が因果関係にあるようで、その意味で作為的・論理的なところが惜しいが、「林檎→地軸」の飛躍が素晴らしく詩になっている。目の前のモノによって普段意識されない何かを感じるというまさしく「詩的真実」の句である。好句。

・海行きのベンチに一つ青林檎(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)
→海の青・空の青・青林檎と青で攻めた。青春の一句であろうか。「海行きのベンチ」が絶妙の無意識表現。「海行きの/ベンチ」でもいいし「海行きのベンチ」とワンフレーズでもいいし、「海行きの(駅の)ベンチ」と解釈してもいい。こういうところに限定されない詩の気分が出ている。好句・佳句。

・すり林檎一匙分の命かな(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
→介護の句なのか、病気の人とのことを詠んだ句なのか、小さな子どもとのことを詠んだ句なのか。いずれにしても「匙一杯分の命」に眼前の人に対する言葉にならない気持ちが凝縮されていて心を打つ。好句。

・林檎狩り夕日の国の小人たち(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→「林檎」を「夕日」に見立てたという句であれば浅い。「夕日の国の小人」が「林檎狩り」を楽しんでいるという心象句ととる。俳句は嘱目でも心象でもいいので、このようにモノ(情景)に託して詠んでくれればいい。楽しい気分の託された句である。佳句・好句。

・芳香のふる里詰める林檎箱(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→「林檎」を送っているときの心境であろうか。「芳香・林檎」がややつきすぎで惜しいが、「ふる里詰める」に大変ムードが出たあたたかな句である。

特選B

・林檎摘む大き袋を持ち帰る(ペンネーム「登りびと」さん 35歳)
→大変実感の伴った句である。一句全体の世界観がありきたりなのところが少し惜しい。

・太陽の首はねる女子りんご狩り(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
→「太陽の首はねる」とはドキッとする。屈折した心境の句であるが、こういう無意識からの実感を大切に詠んでいただければ間違いない。できている。

・青りんご噛んで白衣の保健室(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→「青りんご・保健室」はなかなかの取り合わせなのであるが、「青りんご→噛んで」「白衣→保健室」とどんどん句を平凡にしていっているところが惜しい。キャスティングが成功しているのであるからはじめの発想に執着せず「青りんご風ふきぬける保健室」など素材を活かして詩にもっていきたい。参考に。

・仏壇の林檎袋に沈みけり(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)
→仏壇の林檎を袋に入れて持って帰ったという句であろうか。「沈みけり」に何かしらの実感が出ているのであるが、「仏壇・林檎・袋」のモノの関係性が近くありきたりで詩になりにくい。はじめの発想にとらわれず「曼荼羅の夜風に沈む林檎かな」などモノのキャスティングを大事に詠みたい。

・鋭角の画家の描いた林檎かな(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→独特の心情表出の表現がユニークである。少々観念的でもあるが「鋭角の」が「画家・林檎」両方に掛かるようなところがなかなか味わい深い。

・息止めて林檎を掴む象の鼻(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
→動物園での句であろうか。「息止めて」がよく効いている。意味的には「象」の様子を伝えているのであるが、その様子をまさしく「息止めて」作者が見ているような「気分」が出ているところが大変面白い。「~して~する〇〇」と説明的なところは改めたい。好句。

・齧られた林檎残る田舎駅(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→象徴的なムードが味わい深い。「齧られた林檎」がどうして「田舎駅」にあるのか、いろいろ想像を掻き立て面白い。「齧られた→林檎→残る」「林檎・田舎」など、関係性に飛躍がないところは改めたい。

・林檎落つ遥かな星の呼ぶ方へ(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→短歌の上の句のようなところが俳句としてはモノたりない。モノ(情景)ではなく、コト(出来事)を詠んでいるところが惜しいのである。短歌までの詩はコトやココロを詠めるのであるが俳句は短いのでそれが向いていない。よってモノ(情景)を全面に打ち出して託して詠む(情景・象徴)のである。参考に。

・林檎熟れローカル線の老夫婦(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→「林檎熟れ・老夫婦」と「熟」のイメージで攻めたところが少しくどいが、「O」音のうねりが大らかで楽しい。

・青空に両手差し入れ林檎もぐ(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→世界観がありきたりで惜しいが、実感を上手くつかんできてくれた。大らかでのびやかな気分に共感を覚える。好句。

・ジーパンに擦る林檎や夜行バス(ペンネーム「りりこ」さん 60歳)
→青春の一句という感じの句である。原句は「に」となっているが「ジーパンで」のほうが素直であろう。好句。

・林檎園星の数ほど星明り(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→幻想的な句である。やや作為的なところが惜しいが「星明り」を「星の数ほど」と感じたことはないので新鮮。感性の冴えた句である。

・リンゴ園一番星が煌々と(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)
→上の句とたまたま「林檎・星」で重なったが、こちらは素直。「星→煌々と」では言葉の並びがありきたりすぎて惜しいのであるが、何かを伝えるでもなく、心に留まった情景をさらりと詠んでくれたのがよい。希望のようなものが感じ取れる句になっている。

・大連の林檎畑や眠る父(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
→戦中戦後あたりの時代性を感じる地名をもってきた大きな句である。「眠る父」は「父眠る」のほうが座りがよさそうである。好句。

・日本海軋む船底林檎箱(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
→「日本海」を通って運ばれる「林檎」を詠んだ句であろう。荒波に運ばれてゆく「林檎箱」の気分を上手くつかんでいる。やや句が窮屈なので「日本海軋んでおりし林檎箱」などもあろうか。参考に。好句。

・まなざしに紅深みゆく林檎園(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→林檎農家の「まなざし」の気分であろうか。濃くなる赤に感慨がよく出ている。好句。

入選A

・林檎落つ枝の月夜へたゆとうて(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 19歳)
→幻想的であり詩的で美しい。ただし詠みが短歌の上の句のようになっているので、コト(出来事)ではなく、モノ(情景)で詠むようにしたい。

・雨宿りスタバでかじるリンゴかな(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
→「スタバでかじるリンゴ」は、なかなか非日常感。しかしながら「雨宿り」がくると、タネを明かされた手品を見るようで感激が薄い。「雨宿りした」というコト(出来事)ではなく、「夜の雨」などモノ(情景)にすると一段象徴的になろう。参考に。

・くるくると回る林檎の銀ナイフ(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
→「銀」が効いていて何かしらの緊張感が感じられる句である。と言っても一句の世界観がややありきたりで惜しいので、はじめの発想にとらわれず「地軸かな」など飛躍してみるのもいいだろう。参考に。

・林檎剥くあしたの午後のデビュー戦(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→「デビュー戦」前日の高ぶった気持ちがよく感じ取れる。モノ(情景)を詠むというよりは、思いを詠んでいるようなところが惜しいので、そのあたりを気をつけたい。

・宇宙ごと丸かじりする林檎かな(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→「宇宙・リンゴ」を重ね見た句で大らかである。飛躍しているのであるが飛躍しすぎた感じが安易に受け取られやすく惜しい。俳句はそのあたりのつかずはなれずが難しい。

・買い物カゴ林檎沢山集まって(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
→買い物のうきうきとした気分が感じ取れるが、一句の世界観がありきたりで惜しい。そのあたりを攻めたい。

・林檎売り見上ぐ高層タワーかな(ペンネーム「マネレ」さん 44歳)
→軽トラで田舎から林檎を売りにきた人を詠んだ句であろうか。あまりない世界観ではあるが「見上ぐ→高層タワー」となっては表現がありきたり。そのあたりを攻めたい。

・喧騒に林檎の香り紛れおり(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→ふとした香りに秋を感じたいう句である。「~に~が~した」という説明になっているのが惜しいので、そのあたりを気をつけたい。

・走り書の林檎と読める送り状(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
→小さな実感を掬ってきた。やや「林檎」の存在感が乏しいのと感動の在処がよくわかないようなところが惜しいが、詠み方は慣れている。

・重い口開き始める林檎ジヤム(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
→人の口かと思えばジャムの口だという驚き。なかなかユニークな句である。しかしながら「口・ジャム」はあたりまえの関係。そのあたりを攻めたい。

・りんご齧る集団就職生きた父(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→「父」への思いの伝わる句であるが、概念ではなく、モノ(情景)で詠むようにしたい。

・彼からの指輪を外し林檎切る(ペンネーム「大槻税悦」さん 50歳)
→少々ドキッとする意味深な句である。コト(出来事)を詠んでしまっているところが惜しいのでモノ(情景・象徴)に持っていきたい。好句。

・大鍋に煮て金色の香の林檎(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
→台所の鍋で煮る林檎なので全体的な世界観がありきたりなのであるが、大らかな気分の句。「金色の香」という無意識からの表現が光っている。好句。

・太陽のしあわせ浴びている林檎(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
→喜びの感じられる句である。「しあわせ」などは言葉で直接いうものではなく読者にイメージしてもらうものなので、「太陽の包み込んだる林檎かな」などモノ(情景)に託して詠むようにしたほうがいいだろう。

・去年よりすこし小さく切る林檎(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→介護などの句であろうか。なかなか意味深である。モノ(情景)ではなくコト(出来事)を詠んでいるところが惜しいので、そこを気をつけたい。

・大道芸林檎のひとつをずっと追う(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→不思議がる気持ちを詠んだ句である。モノ(情景)というよりも、「林檎のひとつをずっと追う」というコト(出来事)を詠んだところが惜しいので、そのあたりを攻めたい。

・朝日射し厨の林檎紅き艶(ペンネーム「是多」さん 64歳)
→朝見た林檎の美しさ、その感激の伝わる句である。「~し~の〇〇がどんなだ」というコト(出来事)を述べた句になっているのが惜しいので、「朝日さす厨の籠の林檎かな」などモノ(情景)にもっていきたい。

・童謡に赤子の寝息りんご剥く(ペンネーム「藤田政枝」さん 66歳)
→この手の詠み方の句をよく見かけるがこれは俳句というよりも散文の切れ端である。「童謡(が流れているところ)に赤子の寝息(がしている。それを聞きながら私は)りんごを剥く」という引き算の構造だからである。私であれば最初の発想にとらわれず出てきたモノ(素材)を活かして「リンゴ剥く音にもたれる赤子かな」などと詠む。俳句は引き算というよりもかけ算(モノ×モノ)くらいに思いたい。

・下り立てば一面染めし林檎園(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→リンゴ園の非日常感を詠んだものか。下り立ったというコト(出来事)の句になっているところが惜しい。「林檎園染めつくしたる靴の音」など、モノ(情景)にもっていくようにしたい。

・資本論の第一部読む林檎売る(ペンネーム「ぐずみ」さん 68歳)
→ユニークな切り口の句。「資本論」故に「売る」という表現が出てきたのであろうが、そういうところが作為的で惜しい。「資本論閉じられてゆく林檎かな」など、モノ(情景)で詠むようにしたい。

・リンゴ食べ思い出歌謡曲口ずさむ(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
→「~して~する」というようなところが説明的で惜しいがこれはこれで一句という感じであろうか。実感を素直に詠んだ。、気分の出た句である

・風やんで花筵めく林檎園(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→切り口が詩的で美しいが、「して~する」というような因果関係で詠んでいるようなところが説明的で惜しい。これはやはりモノ(情景・象徴)の句というよりもコト(出来事・報告)の句である。そのあたりを攻めたい。

・長く長く今日を占い林檎剥く(ペンネーム「ヒロリン」さん 70歳)
→林檎占いの句であろうか。「占った・剥いた」というコト(出来事)を述べた句になってしまっているので、「星占い剥かれつつある林檎かな」などモノをデンと据え象徴に詠むようにしたい。

・青い空真っ赤な林檎かぶりつく(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
→「青空の下林檎にかぶりついた」という句である。これはある意味ありきたり。これを「晴天にかぶりついたる林檎かな」などと林檎に空をかぶりつかせれば詩になる。参考に。

・林檎もぐ枝引いて空磨くごと(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→空を磨いているのかと思えば磨いていない。「ごとく」というのは「意識・大人・常識」の世界。詩なのであるから「青天を磨きつつもぐ林檎かな」など無意識からの実感をそのまま出すようにしたい。参考に。

・大空の星になるなり落ちりんご(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→祈りの気分の出た句である。「大空・星」などどうも言葉の重複なので「星になる林檎もありて陸奥の国」などとしてみたい。参考に。

・りんご園実ひとつ残るお燈明(ペンネーム「チックちゃん」さん 77歳)
→一見寂し気な気分であるがどこか明るい。「燈明のようだ」という比喩の句と取りたくはないが、中七の言い回しから比喩にしかとれないので「お燈明ひとつ消えゆく林檎園」などとしてみたい。消えるのが林檎園ともお燈明ともとれて詩情になろう。参考に。

・謎めける歯型残してリンゴ園(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→何かの動物にかじられた林檎であろうか。コト(出来事)というか報告の句になってしまっているので、モノ(情景・象徴)にもっていくようにしたい。

・赤りんご皮に秘めたる黒き闇(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
→意味深な句である。「赤・黒」のあからさまな対比がやや作為的で惜しいが、林檎の皮に着目するとは並々ならぬセンス。

・飛びさうな書類に一つ青林檎(ペンネーム「バイキンマン」さん)
→文鎮代わりに林檎をつかったという句であろうか。「書類にひとつ青林檎」まではいいが、そこに「飛びそうな」がくっくつと言い過ぎ・説明のしすぎになってしまう。仮名遣いは現在使われ将来も使われるであろう現代仮名遣いを使用して不足はないはずなのでここでは現代仮名遣いをお勧めしたい。

入選B

・遠くより訪れし林檎苦笑い(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
・青春の思考回路に浮く林檎(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 43歳)
・見切り品流されていく林檎の山(ペンネーム「沖縄キック」さん 43歳)
・名産品林檎配送忙しく(ペンネーム「新武相乱」さん 43歳)
・落下隊堕ちてく林檎危ないぞ(ペンネーム「溥儀清流」さん 43歳)
・ふるさとは遠くウサギに剥く林檎(ペンネーム「わこまま」さん 44歳)
・りんご熟れ真っ赤な箱のカープかな(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・林檎園来た子の頬が実のごとし(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・林檎の選び方なら知ってるのに(ペンネーム「小田寺登女」さん 47歳)
・ボディビルのシックスパックやリンゴ照る(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
・林檎の木とおせんぼして落ちもせず(ペンネーム「コンセプシオン6」さん 55歳)
・病なりりんご降ろしで母の愛(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・風邪ひいて祖母がこっそり擂り林檎(ペンネーム「西区のぺんぺん草」さん 55歳)
・隠し味ひと手間加えて擦る林檎(ペンネーム「いわえもん」さん 56歳)
・ひとり身に大玉りんご友を待つ(ペンネーム「さゆりん」さん 56歳)
・樹木希林林檎噛ってお別れに(ペンネーム「また駄目じゃろ」さん 56歳)
・籾殻も木箱もしらぬ林檎かな(ペンネーム「邯鄲」さん 57歳)
・黒檀に五線紙立てて姫林檎(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・赤りんご秋の夜長の丸かじり(ペンネーム「りんの」さん 58歳)
・バラ売りの林檎のほうから売れてゆく(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・孫の熱りんごの赤さ同じ頬(ペンネーム「けい」さん 60歳)
・泣きじゃくる赤子に見する林檎かな(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
・林檎剥き皮の長さを競いけり(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・満月や林檎うさぎが夜跳ねる(ペンネーム「9月の雨順子」さん 62歳)
・茶室へと露地の姫林檎ひかる雫(ペンネーム「瑠緒まま」さん 62歳)
・薬より祖母の笑顔と擦りりんご(ペンネーム「よさなしけ」さん 63歳)
・歳の差はなくて林檎の四つ割(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
・りんご剥き皮を持ち上げ拍手受け(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・生かされしゆえにシャキシャキ林檎めく(ペンネーム「松廣李子」さん 64歳)
・猛ダッシュリンゴのほっぺ孫とハグ(ペンネーム「グラン グラン」さん 70歳)
・罪深き男女の齧る林檎かな(ペンネーム「ヤチ代」さん 70歳)
・おいしいねひ孫のほっぺと赤りんご(ペンネーム「よっちゃん」さん 70歳)
・りんご熟れ青い地球も齧りたし(ペンネーム「寿人大好きばあば」さん 70歳)
・披露宴寿りんご配る父(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
・赤い服着れぬ継子の青りんご(ペンネーム「まあちゃん」さん 73歳)
・岩木山りんご可愛いと言う女房(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・信濃路や帰り待つ君紅林檎(ペンネーム「めぐちゃん」さん 78歳)

ユニー句(句)

・母さんのりんごかなでるヘビのたけ(ペンネーム「モッツァレラ二号」さん 8歳)
・鏡越し私の腹は毒リンゴ(ペンネーム「すいかレンジャー」さん 30歳)
・カープ勝ち街中まるで林檎園(ペンネーム「ころりん」さん 35歳)
・青りんごまるかじりして歯が折れる(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・赤林檎うさぎとなりて御供する(ペンネーム「ふくろう」さん 40歳)
・リンゴスタードラム叩いて林檎食う(ペンネーム「ディエゴきよたか」さん 43歳)
・ニュートンとりんご逢引き大宇宙(ペンネーム「ゆうちゃん」さん 45歳)
・林檎食う健康チェック出血なし(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
・今もまだ林檎と僕は青いまま(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・りんご狩り採った分だけ重くなり(ペンネーム「ピンチピンチチャンスチャンスランランラン」さん 47歳)
・毒林檎私に良い人連れて来い(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・剥きりんご酸化止まらぬ五十路かな(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
・どの林檎富士陸奥つがる僕椎名(ペンネーム「いわえもん」さん 56歳)
・キティちゃん体重リンゴ3個分(ペンネーム「たけの子」さん 59歳)
・給食にインド林檎の出た世代(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・ぶさいくな林檎もジャムでプレミアム(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
・子供らのリンゴ・スターは椎名さん(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・見かけないりんごほっぺの女の子(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・断乳の作戦その一りんご擂る(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・理髪店髭剃りあとの林檎肌(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・でこぶつけぶつけぶつけて林檎園(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
・庭のリンゴ人より先にカラス喰い(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 73歳)
・インプラント試しはリンゴ丸齧り(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
・りんご風呂美容にイイと母は言う(ペンネーム「ぼくちゃん」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年10月3日(水)

第98回 お題「運動会」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回も全国から沢山の句を頂き感謝を申し上げます。
この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたいコト・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです。

以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分(ムード)が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の「大空をゆく担架」は、英雄の気分のよく出た句。
入賞句の「五臓六腑」は、運動会全体の気分を体内感覚として実感した面白い句。
入賞句の「父走る」は、俳味(おかしさ)の句。
特選Aは入賞候補に残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高い句。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

気になったことは「運動会」を運動会らしく詠んだ句が大変多かったことです。
詩もニュースも日記もつぶやきも同じ日本語を使うので混同しがちですが、「俳句はあくまで詩」であり詩の原点は感動ですから、ニュースや日記のように「運動会」をただ説明したり、報告したりという世界とは似て非なるものと心得なければなりません。

感動は何も大きなことを詠む必要はありません。
無意識から湧き上がってきた実感(そんな気がする)、オリジナルな感動や気づき、小さな感動気づきを、モノ(情景)に託して詠んでいただければよいのです。
その意味で特選A以上の句などは大変参考になるかと思います。
どのような切り口・どのようなオリジナルな実感を掴んでいるのか味わってみていただければと思います。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「運動会大空をゆく担架かな」(ペンネーム「中山月波」さん 55歳)

リレーなのか騎馬戦なのか、熱戦の末負傷し「担架」で運ばれてゆく少年を詠んだ句。
句はなんといっても無意識からの実感を大事にし、運ばれてゆく少年を「大空をゆく担架」とモノの様子(情景)で詠んだところが光った。
句の表面には担架で運ばれる少年(モノ・情景・A)が詠まれているが、大きく・明るく・透明感ある「大空」のイメージが効果的に働いて、痛々しさなどではなく空に胴上げされるヒーローのようなイメージ(非A)を引っ張ってきているところが大変よい。
俳句の本領はこのように、句に書かれてある文言(A)が、字義的な意味を超越した豊かなイメージ(非A)を引っ張ってくるところにあるというのが私の「宇宙流俳句」の立場。
負傷した少年の頑張りで競技を制したのではないかというような様子、痛々しさに耐えながら運ばれてゆく少年が見せる笑顔、その笑顔に対する会場の拍手のようなものが感じとれてきて、共感を覚える。
俳句は何も難しげな言葉や凝った技法などを用いる必要はなく、この句ように自分のオリジナルな気づき・無意識から湧き上がった表現を大切に詠んでくれればいいのである。
Aが非Aを導く佳句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
状況(高々とゆく)より、情景(大空をゆく)のほうが象徴性(詩性)が高まる。

入賞

「運動会五臓六腑の大掃除」(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)

「運動会」の競技がつぎつぎに展開されてゆく(準備・競技・片づけ)せわしない様子を見て、「これは五臓六腑の大掃除だ」と感じ、迷わず詠んだ句である。
食物繊維や乳酸菌の豊富なものをとると腸の蠕動運動が意識されることがあるが、運動会の展開(ザーと準備され、ワーと競技が行われ、サーと片付けられる動き)の繰り返しは、腸の蠕動運動のようで、言われてみれば妙に納得感がある。
「運動会」のステレオタイプ(何らかのシーンを詠んだ句)がほとんどの中、「運動会」に新しいイメージ(おかしさ・俳味)を与えたところが大変光った。
無意識から湧き上がってきたオリジナルな実感(そんな気がする)を、自身の肉体感覚と上手くからめて詠んだ佳句である。
こういう時「体内を掃除するごと運動会」など、わざわざ「~のごとき」などを用いて詠む方がいるが、そうすると「体内」はあきらかな比喩になり、モノの存在感(パワー・位置エネルギー・ポテンシャルエネルギー)が乏しくなる。
詩なのであるから現実にとらわれず、実感したモノ(情景)の存在(ポテンシャルエネルギー)をしっかり打ち出して詠むようにしたい。
ちなみに「大掃除」は春の季語とする立場もあるが、この句の場合問題ではなかろう。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
俳句はモノ(情景)で詠む詩。モノにはポテンシャルエネルギーがある。

「運動会前夜密かに父走る」(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)

句意は明瞭。
お父さんは、当日恥をかきたくないから走る練習をしているのか、リレーなどの保護者競技でいいところを見せたいので練習しているのか、はたまた体を最近動かしていないのでウォーミングアップしているのか、いずれにしても子供が主役の運動会で、お父さんが必死になっているようなところが面白い。
「俳句で日常を詠む場合は批評精神が必要である」と私はよく言うが、やはり俳句は詩であり作者の感動ある世界に読者が感動する(共感)する世界なのであるから、あたりまえのことをあたりまえに言われたところ(日記的・説明的・報告的・出来事)で感動にも何にもならない。
例えばこの句のように「運動会」をどういう切り口で詠むかというところが大事になってくる。
多くの人が「運動会当日・昼・子供・応援する親」を詠む中で、「運動会前日・夜・練習する父親」というオリジナリティある切り口で詠んだところが、新しさや俳味(おかしさ)につながり光った。
さて、このお父さんの「運動会」当日の結果はどうだったのであろうか。。。
気になるところである。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
対象をどういう切り口で詠むか。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・運動会ガタガタ騒ぐ夫婦箸(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※わりとあちこち大変
→運動会のお昼休憩、家族でお弁当を食べるシーンであろか。頑張る子供に対して夫婦の意見が食い違っている様子を詠んだものか。中七の詠みが少々荒いところが気になるが、気分は出ている。

・太陽も畳んでかえる運動会(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※運動会が終わってテントやシートを片付け終えると太陽もいつの間にか日暮れている、まるで一緒に畳み込んだのかと思う瞬間です。
→運動会終わりの気分が印象的に伝わる句。楽しさ・寂しさをモノ(情景)に上手く託し象徴的に詠んだ。佳句。

・運動会位置についたり日章旗(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※運動会は開会式が済むと、一番目は百メートル競走、その時の合図は位置についてである。「日の丸」はすでに掲揚台の位置についている光景。
→位置についたのが子供ではなく「日章旗」という切り口が面白く光った。俳句は短いので他の詩型のようにあれこれできない。こういう風にオリジナルな切り口を見せることも効果的である。

入選句

特選A(入賞候補)

・大空に運動会の吊られけり(ペンネーム「登りびと」さん 35歳)
→例えば政治家の会話で「今年の夏はまだまだ暑くなりそうだ」というのがあれば、夏の暑さのことを言っているのではなく、何かしらの「政変」を言っているのだなということが読み取れてくる。それと同じで、心象であれ実風景であれ何が詠まれてあろうとまずはそのまま受け取り、その事情を感じてみようとすればいい。吸い込まれるような「大空」の下での「運動会」の気分、空にたゆたうようなのびやかな晴れ晴れとした気分が感じ取れてくる。佳句・好句。

・雨だけが走るグランド運動会(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→当然のにわか雨に襲われた「運動会」のイメージであろうか。「運動会」へのワクワク感、「雨」が止むことへの期待感が「雨が走っている」と実感させているのであろう。こちらも切り口の光った句である。佳句。

・運動会白帽こっそり裏返す(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
→「俳句は小さな小さな気づき(実感)、それもできるだけオリジナルな気づき(実感)を拾ってきてくれればいい」とは私が前からよくいう言葉。必然的にそれが独特の切り口になり、詩になるのである。この句もまさにそのとおり。「こっそり裏返す」というところに、好きな子がいる赤組になりたい心情なのかななど、何かしらの事情が感じ取れてきて共感を誘う。佳句・好句。

・一匹が風に逆らう運動会(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→ダンディズムというかハードボイルドというか「一匹」がすばらしい。現実の「運動会」の句とすれば男を意識する高校生あたりの気分か。団体競技を少し斜に見ている男子の気分がよく出ている。佳句・好句。

・発車ベル里に近づく運動会(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→子供の住む「里」の「運動会」に向かう祖父母の気分の句であろうか。「運動会」そのものを詠むでもなく切り口の光った句である。「里」のイメージだろうか、どこかしら落ち着いた空気感が懐かしい。好句。

・車椅子押す夫と見る運動会(ペンネーム「大槻税悦」さん 50歳)
→「夫」は「つま」と読む。入賞候補の中でも賞と大変迷った句である。賞との差は「運動会」を見る」という切り口がやや月並みであったところ。しかしながら句からは様々な思いややさしさ、さみしさなどが次つぎと感じ取れてきて大変味わい深い。俳句はこのようにモノ(情景)に託して何かしらの気分をそれとなく感じさせてくれたらいいのである。象徴的な感じさせてくれる一句である。この方向で。佳句・好句。

・運動会リレーに沈む夕日かな(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→少々類想感があるところが惜しいが、「運動会」の終わってゆく寂しさを情景に託し上手く詠んだ。この方向で。

・運動会の輪を抜け広き運動場(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→無意識から詠んだというよりは、「~したら~だった」というような理屈っぽいところが惜しいが、斬新な切り口(気づき・発見)を詠んだところが光った。言われてみれば納得の世界である。こういう小さな気づき・できるだけオリジナルな気づきを掬ってきてくれればいいのである。

・捨て猫に餌やる朝や運動会(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→「運動会」の固定概念からすればウキウキとして学校へ一直線であろうが、こう詠まれるとはどうも屈折した心境が感じ取れる。運動が苦手なのか、事情で家族が応援にこれなくなったのか。いずれにしても少し寂し気な気持ちを句の表面の言葉で直接詠まず、モノ(情景)に上手く託して詠んだ。佳句・好句。

・一筋の雲湧き昇る運動会(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→やや月並な世界観が惜しいが、いよいいよ待ちに待った「運動会」が始まる気分、それを上手くモノ(情景)で託し詠んだ。「湧き昇る」では少し舌に引っかかるので、素直に「湧き上がる」でよさそう。モノ(情景)に託して詠む方向は大変よい。

特選B

・運動会青空ゆれる祖父の声(ペンネーム「モッツァレラ二号」さん 8歳)
→「運動会」らしい世界観がやや月並みで惜しいが、「青空ゆれる」というモノの様子(情景)に、「運動会」の賑わいや「祖父」の声援の様子が上手く託されている。

・液状の空の吸う砂体育祭(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 19歳)
→心象風景ととる。その湿っぽくドロドロした重力をものともしないブラックホールのような空、モノ(情景)に託しされたのはな作者の何かしらの不穏な心情であろうか。やや飛躍した詠み方であるが、俳句はこれくらいでいい。もう少し具体性があってもよさそう。

・運動会どっと崩れる父兄の顔(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
→何らかのハプニングであろうか。その一瞬の情景を素直に詠んだ。俳味(おかしさ)の句。

・母の手の駆け抜けてゆく運動会(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→普段は静かな母親が「運動会」の競技で存在感を示しているシーンであろうか。一句の気分としては「手」より「腕」のほうが迫力が出そうであるが、好みかもしれない。

・ざらざらとタワー崩れる運動会(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)
→上五中七の措辞がどうもあたりまえ、そしてそれを「運動会」のイメージが受け止めるのであるが全体的につきすぎで物足りない。また一般論であるが俳句においてオノマトペの類は安易に流れるので積極的な使用はお勧めしない。大賞経験者であるから素材から再考したい。

・黴臭き綱の匂ひや運動会(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
→小さな実感を素直に掬ってきた。しかしながらこの句の場合「黴・綱」「綱・運動会」とならぶとやはりつきすぎになってしまう。その意味では素材を変え飛躍して「黴臭き女の匂う運動会」あたりもあろうか。参考に。

・靴紐の軋み重なる運動会(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→小さな実感を素直に掬った。「軋み重なる」が言い過ぎというか物をいいたげなのでもう少し軽く詠んでもよさそうである。

・山神へとどき運動会の声(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→俳句は定型でなくともよいが「定型感」は必要である。このわざとらしい演説調の定型崩れのリズムをどうにかしないといけない。これでは散文崩れ・キャッチコピーくずれの尻切れトンボのような句になってしまう。素材は悪くないので「山神の声響き合う運動会」(「の」は軽い切れくらいの気分で)などと575の定型のバネをしっかりと活かして素直に詠めば味わい深い句になる。参考に。

・運動会火薬の匂い風に乗り(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→一句全体の世界観がありきたりで惜しいが、何を言うでもなく、心に留まったモノ(情景)をさらりと句にもってきたところがよい。ココロというものは出そうとしなくともすでにここにあるもの。モノを二つ選べばそれだけでココロは表現できるのである。次は切り口、すなわちオリジナルな気づきを掬うようにされるといいだろう。

・石灰の匂いのひざの運動会(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
→一句の世界観が月並みで惜しいが、小さな実感を上手く掬ってきた。共感できる句である。

・運動会果ててミレーの夕日あり(ペンネーム「吉良水里」さん 57歳)
→俳句は短いので他の詩のようになかなかモノをいうことができない。よって必然的にモノ(情景)に託すのである。その意味でなかなかできた印象的な句なのであるが、モノ言いたげなところがやや惜しい。仮名遣いについてのご質問であるが、総評に毎回書いてあることが原則すべて。「いる・ゐる・居る」ではたしかに気分は違うが、まずそれ以前に仮名遣いを懐古趣味・ファッション・流行・単なる俳句らしさ・気分などで使用しているのか、しっかりとした信念に基づいて使っているのか問うてみてほしい。「けり・かな」などは仮名遣いとは別問題。参考に。

・運動会雨天中止の墨の文字(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
→全体的な世界観がありきたりで惜しいが、余計なことをいわずモノ(情景)で攻めたところがよい。雨で「墨」が流れるのではとかいうようなことは邪推。手書きの「墨の文字」に急に中止になったその事情がよく現れている。好句。

・分校の空色の風運動会(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)
→「分校・運動会」の舞台装置だけですでに成功してしまった句。そこに「空色の風」であるからかわいらしい。小さな小学校の一時の賑わいの気分がモノ(情景)に託されているのがよく伝わる。好句。

・万国旗外して終わる運動会(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→言われてみればそのままなのであるが、わざわざこう言われてみれば詩になっているのも俳句の面白いところ。賑わいからのさみしさを「万国旗」が象徴しているといった気分。好句。

・人妻を縛り抱きしめ運動会(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→切り口が光った句。このような句もあるのであるがやはり面白い。「人妻・運動会」の舞台装置で非日常的な気分はたっぷりと出ているので、「人妻の肩抱き走る運動会」など、もう少し軽く抑制して詠んだほうがバランスがとれそうである。

・運動会リレーの背中押す夕日(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→「運動会」の終わりかけの気分がよく出た句。特選Aにも似たような句があるのであるが、こちらは少しリズムが引っかかるのが惜しい。舌頭千転、何度も口にだして落ち着きのよい姿を探すようにしたい。

・運動会田んぼの中の万国旗(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→田舎の運動会の気分か。「田んぼの中」とは面白い。「運動会」の世界観をよくあるグラウンドから少しずらした切り口が光った。

・廃校に決まる母校の運動会(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→575に慣れてた方なので出来ている感じはあるのであるが、句の表面で何かを伝えようとするあり方をどうにかしたい。俳句は短いのでモノが言えない。だからモノ(情景)に託してイメージされてくる世界を大事にするのである。全体的にモノ(情景)にもっていくようにしたい。

・街中に音を零して運動会(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→運動会の音量で近所からクレ−ムが出るという話もたまにきく。世知辛くなってきたものである。「零して」が美しい。水の波紋のようにひろがる音の響き。それが街を美しく響き包み込んでいるような光景が絵本世界のようで、その非日常感がひきつける。これも切り口が光った句。

入選A

・おじいちゃん空から見ててねうんどう会(ペンネーム「つきちゃん」さん 7歳)
→つぶやきのような気分の句であるが、観念的でも何でもなく、「おじいちゃん」を「空」にしっかり感じている(存在感がある)ところがいい。

・唐揚げの乾いた匂い運動会(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→「唐揚げ・運動会」であるからどうやっても昼食シーンになる。モノ同士のイメージが近すぎるのである。取りあわせとするのであれば、モノ同士の関係性にさらに敏感になって飛躍を試みなければならない。

・運動会父と母との道標(ペンネーム「新武相乱」さん 43歳)
→どことなく亡くなった両親の跡をたどっているかのような気分の句である。「運動会・道標」のとりあわせが斬新である。

・運動会女子の成長早きかな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
→小学校高学年・中学校あたりだと女子の体つきのほうが大人っぽい。そのようなドキッとした実感を詠んだ句でよくわかる。575にも慣れているのでさらりと詠んでおられるのであるが、「早き」と直接作者が語っているとこが惜しい。こういうところを「女生徒の影のまろみや運動会」などモノ(情景)に託して読者にイメージしてもらうように詠みたい。

・運動会校庭駆けるライン引き(ペンネーム「洒落神戸」さん 51歳)
→子供ではなく「ライン引き」を詠んだ切り口がいい。しかしながら「運動会・校庭・駆ける」と並ぶと世界観がつきすぎで、詩というには微妙である。そのあたりの「あたり前の語と語の関係を越える」ことが大きな課題であろう。

・校庭をカラーテントや運動会(ペンネーム「斎乃雪」さん 56歳)
→写真としてはカラフルで美しいのであるが、句としては平凡でどうにもならない。やはり「校庭・テント・運動会」と素材が近すぎだし、すべて「運動会」に収斂される。そのあたりを攻めてほしい。

・ご馳走の並ぶ夕餉や運動会(ペンネーム「都乃あざみ」さん 56歳)
→お弁当ならありきたりすぎて話にならないが、時間を「夕餉」にずらした切り口が光った。一日の充実感が感じ取れるあたたかな句である。

・運動会二日前から空を見る(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→ワクワク感を詠んだ。こちらも時間軸を当日から前々日にずらした切り口が光った。

・運動会そこはかとなく群青へ(ペンネーム「インゴット」さん)
→なんとなく「運動会」が盛り上がってきたようなムードを詠んだものか。ややか観念的・抽象的なのでもう少し具体的に詠むようにしたい。

・朝日受け運動会の万国旗(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→余計なことを言わず、モノ(情景)に「運動会」への高まる気分を上手く託し詠んだ。

・大将へ五騎一斉や運動会(ペンネーム「りりこ」さん 60歳)
→ややモノ言いたげなところが惜しいが、臨場感がよく出ている。

・鉢巻の背中にちから運動会(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
→これは散文に近く俳句と呼ぶには惜しい。「鉢巻をした子供の背中にやる気を感じる運動会だな」というような文章を短くしただけだからである。こういう場合は「鉢巻」か「背中」かポイントを絞ったほうがよい。「鉢巻の結び目小さき運動会」など。参考に。

・ゴール前身をのり出して運動会(ペンネーム「9月の雨順子」さん 62歳)
→インパクトあるシーンである。しかしながら「運動会」そのもののシーンともいえるのですべてが「運動会」に収斂されてゆくようで惜しい。飛躍して詠みたい。

・運動会崩れたおにぎり先生と(ペンネーム「瑠緒まま」さん 62歳)
→世界観が切なくてひきつけるが、モノ(情景)を詠むというよりはコト(出来事)を詠んでいるようなところが惜しい。俳句は短いので言いたい事「崩れた」は詩になりにくい。俳句としては「先生と食むおにぎりや運動会」くらいで詠むのがぎりぎりであろう。

・籾くずの母のエプロン運動会(ペンネーム「松廣李子」さん 64歳)
→「籾くず・運動会」の取りあわせが中途半端で惜しい。「運動会」のシーンとしてもお弁当を作っているシーンとしても、どう解釈していいかわからない。素材から再考したい。

・運動会おなご先生ライン引く(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
→「運動会」の中のはっとした実感なのであるが、よくある情景なのでやはり月並の域を出ておらず、それが惜しい。日常を詠む場合は切り口を大切にしたい。

・楕円軌道えがく星の子運動会(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→運動会の気分と宇宙の惑星の気分をリンクしたような句であるが、少々窮屈。また意図的(作為)な側面が目立ってしまっていて惜しい。一句にいろいろ盛り込もうとせず、「惑星の公転つづく運動会」などさらに要点を絞って詠みたい。参考に。

・運動会古屋の鼠騒がしや(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
→「運動会」と「古屋の鼠」の気分を取りあわせた句。世界観がよくありそうなところと何より「騒がしや」と直接感想を言ってしまったのが惜しい。やはりこういうところはモノ(情景)に託して、読者に想像そいてもらうように詠みたい。

・声連れて風吹き抜ける運動会(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→「運動会」の気分をなんとなく感じさせる句であるが、「声・風・運動会」であるからやはり抽象的。むしろ声か風にしぼって「紅白の声もつれあう運動会」など、もう少し具体的に詠んでみたい。

・流星群夜空の走者運動会(ペンネーム「まあちゃん」さん 73歳)
→「夜空」と「運動会」の取りあわせととる。「流星群→夜空」「走者→運動会」はいわずもがな。そのあたりを整理して「流星群追い越してゆく運動会」くらいか。参考に。

・風掴み夕星仰ぐ運動会(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→動詞が二つありややもたもたした感じが気になるが、ナンバーワンよりオンリ―ワンというような充実・満足な気分が感じ取れてきて味わい深い。

・廃校に歓声宿る運動会(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→地域の「運動会」であろうか。久しぶりに使う懐かしのグラウンドや校舎、その気分が出ている。

・最前列獲った家族の運動会(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
→家族としては席取りそのものがまさしく「運動会」であろう。世界観がありきたりなのが惜しいが、俳味の出た句である。

入選B

・子ども達運動会の汗涙(ペンネーム「納豆キング」さん 10歳)
・運動会赤ヘル色に願かけて(ペンネーム「ルビー」さん 19歳)
・運動会てるてる坊主逆さ吊り(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・紅白に球が飛び交う運動会(ペンネーム「ディエゴきよたか」さん 43歳)
・靴を履く皆んなで遊ぼう運動会(ペンネーム「沖縄キック」さん 43歳)
・父写す晴れの舞台の運動会(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・かえちゃん運動会だバタバタと(ペンネーム「わた」さん 45歳)
・運動会カメラ越しに見る我が子(ペンネーム「下り坂47」さん 47歳)
・運動会転び泣く子に大声援(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・運動会たすき繋いだあの右手(ペンネーム「もじこ」さん 49歳)
・紅白の紙の花咲く運動会(ペンネーム「でこ」さん 52歳)
・運動会一等の子へ赤いリボン(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
・暗算の集計微妙運動会(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・吹く風に秋を見つけし運動会(ペンネーム「ナギさん」さん 55歳)
・運動会クックパッドを検索す(ペンネーム「都乃あざみ」さん 56歳)
・運動会秋が詰まったお弁当(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
・運動会我が孫いずこに赤い靴(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・運動会みかん頬張る涙顔(ペンネーム「よさなしけ」さん 63歳)
・「天国と地獄」駆け出す運動会(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・運動会昼食囲んで和気和気あいあい(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
・天国と地獄が駆ける運動会(ペンネーム「ヒロリン」さん 70歳)
・ドンと鳴る花火で起きた運動会(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
・運動会親も心で走りをり(ペンネーム「おちえもん」さん 71歳)
・青空に歓声届く運動会(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・むかで競争声かけあって運動会(ペンネーム「かっちゃん」さん 77歳)
・吾子追いてカメラが走る運動会(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
・赤と白空浮遊する運動会(ペンネーム「めぐちゃん」さん 78歳)
・子や孫に渡すバトンの運動会(ペンネーム「ネコチャン」さん 85歳)

ユニー句(句)

・目に見える我が家は毎日運動会(ペンネーム「さーしゃ」さん 30歳)
・運動会モテるあの子の見学会(ペンネーム「大野美波」さん 31歳)
・運動会場所取る親に敢闘賞(ペンネーム「ころりん」さん 35歳)
・戦国武将の顔で参観運動会(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
・かけっこで1番うーんどうかいな(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・場所取りで競う保護者の運動会(ペンネーム「よしゅん」さん 41歳)
・運動会隣の弁当気になって(ペンネーム「マネレ」さん 44歳)
・甥達の運動会を梯子する(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・場所取りへ子より早起き運動会(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
・万国旗運動会をデコレート(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 46歳)
・女生徒に見える先生運動会(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
・借り物競走現金と書いてをり(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・おむすびの海苔のべちゃべちゃ運動会(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
・唐揚げも落ちて転がる運動会(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・運動会綱ひくパパに魔女の一撃(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
・運動会巻き寿司食べ過ぎドンベなり(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・場所取りで疲れて眠る運動会(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 67歳)
・パパの脚もつれて転ぶ運動会(ペンネーム「ようちゃん」さん 70歳)
・結ぶ手に胸キュンとなる運動会(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
・孫よりも興奮の妻運動会(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・運動会爺じ喜び杖放る(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・早朝の場所取りに沸く運動会(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
・運動会じいじもパパも縺れ足(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
・席取りに茣蓙が徹夜の運動会(ペンネーム「チックちゃん」さん 77歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年9月19日(水)

第97回 お題「胡麻」(選と評 谷村秀格先生)
総評

全国から沢山の句を頂き感謝を申し上げます。
この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたいコト・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです。

以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分(ムード)が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の「首を拭く」は、モノ(情景)に託し愛情がよく感じとれる句。
入賞句の「豚カツ屋」は、いろいろなお客さんの人間模様が感じ取れる一句。
入賞句の「夕星」は、
特選Bは原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

俳句で大事なのは季語の厳密な知識・扱いではなく一句そのものの芸術性ですので、モノとしての「胡麻」周辺のことを詠んでくれていれば「胡麻の花(夏)・胡麻豆腐(季感が弱い)」などでもここではよしとしました。
だたし「開けゴマ!」などは、流石にモノとしての胡麻の実感がないので、残念ながら選外としました(ユニー句を除く)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「やわらかな胡麻の香りの首を拭く」(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)

このような句に出会えるのは選者冥利に尽きる。
子どもの首を拭いているときの句か、家族を介護しているときの句か、恋人を詠んだ句か、実景か、心象かなど、想像や解釈は読者に委ねられさまざまに膨らむが、「胡麻」の食べる・収穫する・弾けるといった固定概念から飛躍し、「胡麻の香り」を通して愛情・慈しみ・あたたかさという新しいイメージを引っ張ってきているところが大変よい。
句には、「胡麻の香り→首」、「香り→拭く」などの措辞の展開にほどよいメタモルフォーゼ(変容・飛躍・意外性)がありひきつける。
読者はこういうメタモルフォーゼによって、それはどういう事情を表しているのかと一句の世界に入ってゆこうとするのである(真実の探求)。
こういう句は俳句本だとか何かしらの型やテクニックによって生まれてくるものではない。
自分の中から湧き上がってきた「無意識からの実感・表現」をしっかり掴んできた結果による。
無意識というものは夢に近く、現実離れしていたりバカバカしいことも多いのであるが、それもたしかに自分を通して出てきたものなのであるから大事にしたい。
そもそも俳句は詩であり詩は芸術なのであるから、頭・意識(作為・技術・文法・教条・意味・学習・作るもの)ばかりで追いかけないことである。
「やわらかな」が直接表現のようでやや気になるが、この句の場合そこまでの傷でもなく、逆に一句全体の情景にふくらみを与えているようである。
参考にメタモルフォーゼのある比較的最近の私の句をあげてみる。
・大ひまわり悶死している鍵の束 秀格
・志野茶碗まずしき声の花前線 秀格
・文字書きの花の指紋や世界山 秀格
・鬱の地の花冠にまたがりぬ 秀格
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
モノ(胡麻の香りの首・A)を通して、真実(愛情・非A)を伝える。このように突き抜けてゆける言語のことを「詩」と呼ぶ。

入賞

「それぞれがゴマする昼の豚カツ屋」(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)

句意は明瞭。
「豚カツ屋」というひとつところに、いろんな会社、いろんな立場、いろんな事情を抱えた人たちが集まって、それぞれがそれぞれの擂り方でゴマを擂って豚カツを食べているという情景。
ゆっくり擂る人、早く擂る人、しっかり擂る人、軽くしか擂らない人、しゃべりながら擂る人、笑いながら擂る人、泣きながら擂る人、、、。
この何気ない動作に、その人その人の生きざままで感じ取れてくるようであるし、ひいては「みんないろいろあるだろうけど頑張ってね」と言うような作者のメッセージが聞こえてくるようである。
大変素朴な句であるが、「いつ(昼)・どこで(豚カツ屋で)・誰が(それそれが)・何を(ゴマを)・どうした(すった)」という情報伝達のポイントが自然と入っているところも上手い。
結果的に「ゴマをする」がお世辞の意味にもとれる句になっているが、そういうユニークさ(俳味)は、出そうと思って出すものではなく、この句のように後からついてくるもの。
シンプルでありながら味わい深い人間愛に満ちた一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
情報伝達のポイント(5W1Hなど)が自然に入ると句が分かりやすくなる。

「胡麻叩く夕星間近に来ておりぬ」(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)

「胡麻叩く」というのは収穫し数本毎に束ねて乾燥させた胡麻の実を莢から出す作業のこと。
「夕星(ゆうつづ・ゆうづつ)」は、宵の明星(金星)のこと。
こちらも句意は明瞭で、胡麻を叩いて実を出す作業をしていたらいつの間にか日が暮れていた(金星を近くに感じた)という句にとれる。
作業に没頭する無心の境地からふと現実に戻った驚きを、言葉で直接言わず、「夕星間近」という眼の前30センチに夕星が来ていたかのような実感(モノ・情景)で伝えているところが大変よい。
やはりこのように「託し詠み」することで、光景も美しく面白く伝わり同時に意味も伝わるので、言葉が働いている(俳句型式を働かせている)のである。
こちらも無意識からの実感を上手く掴んだ一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
無意識からの実感を大切にする。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・胡麻煎る夜隣の鸚哥の低き声(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※鳥は飼ったことがないのですが、ふとした時に鳥の存在を感じることがあります。
→「胡麻を炒る」だけなら普通の光景であるが、そこに「夜」がくっついてくると一転して重たい印象。そこに高いはずの「鸚哥(いんこ)」の声を低く実感したというのである。モノ(情景)に託して不穏な心境を上手く伝えた一句である。佳句。

・キリストの寝乱れている胡麻の皿(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※自分の小さな世界が整然としていて欲しいですが、散らかるのなんの。
→「寝乱れるキリスト」と「胡麻の転がる皿」の取り合わせのように取れる。「キリスト」をこのように詠んだ句は古今なかろう。「キリスト」や「胡麻」に新しいイメージを与えているところがまず上手い。小さいながらも栄養満点の黄金色の粒と、清らかなイメージの「キリスト」であるから、どことなく重なってきて連想にも無理がない。佳句。

・胡麻の香や火星連れ添う水の星(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※今年の夏から秋にかけて、15年ぶりに地球に大接近して赤く輝いている火星。ちなみに地球は水の惑星と言われているので、「水の星」と詠みました。
→惑星同士が、恋人同士・夫婦同士のような気分で詠まれているところがユニーク。眼前の「胡麻の香」に大きな宇宙の営みを覚えたスケールの大きい句である。佳句。

入選句

特選A(入賞候補)

・胡麻を振る振った手を触る女の子(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→畳みかけるような「HURU」の響きが心地いい。胡麻を振る恋人の手に触れたという光景と取れる。日常の何気ない小さな実感を上手く掴んだ句である。気分は出ているのだが少し作為的でもあるので、はじめの発想にとらわれず「胡麻をふるふった手をふる女の子」など、意図をぼかして読者の想像がさらに膨らむように詠むのもいいだろう。好句・佳句。

・白胡麻や胸に張りつく星の砂(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
→「白胡麻は胸に張りつく星の砂のようだ(比喩)」と解釈したがる人は多いがそうするとモノ(星の砂)の存在感がなくなる。作者は「星の砂」と言い切っているのであるから、そのまま素直にモノ「星の砂」として受け取りたい。そうすると観念的でも何でもなく、白くきらめく美しい光景に身を置く作者の澄んだ心境が感じとれてくる。比喩だ隠喩だとすぐに教条的側面から鑑賞しようとする小賢しい精神の在り方は改めなければならない。好句・佳句。

・胡麻香る老舗の屋根のあかねいろ(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
→何をいうでもなく、ただ心に留まったモノ(情景)を無意識のままに一句に持ってきたのが成功した。皆ココロを伝えたいと表現の鏤骨に身を削るのであるが、この短い形式は凝れば凝るほどに作為が目立ち逆効果になってしまう。俳句を型や教条やテクニックで追いかけても徒労に終わることが多いのはこのためである。ココロはわざわざ込めなくとも世の中にあるあまたのモノのから「胡麻の香・老舗の屋根」を選択したところ(キャスティング)にすでにある。憧憬の句であろうか、下町の和菓子屋から漂う香ばしい香りを、夕方の大きく鮮やかな色彩がさらに引き立てている五感を刺激するしみじみとした一句。好句・佳句。

・胡麻筵牛のふぐりの行き過ぎる(ペンネーム「クジラオカ」さん 53歳)
→筵の上で胡麻の束を棒で叩き胡麻の実を取り出す作業を黙々と続ける人々(作者)。ふと気づけば「牛のふぐり(陰嚢・睾丸)」がゆらゆらゆれながら通り過ぎていったという句。作者によると、「胡麻」の栽培や闘牛が行われている鹿児島の奄美群島に思いを馳せた句ということらしいが、そのとおりどこか南国の田舎の情景が浮かんでくる。何より「ふぐり」が上手い。「ふぐり」を句の表面に堂々と打ち出したことでおおらかさがよく出ているし、「ふぐり」がゆれながら遠退いてゆく様子に、南国の田舎独特のゆっくりと流れてゆく時間性がよく表されている。情景に託し大きくのびやかな気分を伝える一句である。好句・佳句。

・黄金となるまで胡麻をふりかける(ペンネーム「斎乃雪」さん 56歳)
→この作者については散文的な発想(技術ではなくあり方)について随分と指摘してきた。しかしながらこのところ散文的な表現ではあるがその嫌味が消え、よい意味で俳句型式をわが物とされてきている印象である。やはり俳句の詠み方というのは本や技術で学ぶものではなく自分の体で見つけてゆくものなのである。一見箸にも棒ににならないありきたりな表現であるが出来ている。一句全体を貫くしつこいまでの言い回しに作者の情念が感じ取れてくる。それは句の表面(見える世界・A)のきらびやかさとはうらはらに、きらびやかにせざるを得ない作者の深い悲しみ、何かを忘れたい気持ちなどではないか。見える世界(A・モノ・情景)を詠みつつ、見えない世界(非A・ココロ・真実)を伝える見事な一句である。好句・佳句。

・胡麻かけて夕餉の皿に独りゐる(ペンネーム「吉良水里」さん 57歳)
→「皿に独りゐる」とは、現実べったりの方や学校的な国語感覚では違和感のある表現であろう。幽体離脱ではないが、椅子に座って眼の前の皿の中にもう一人の自分を見たという句、あるいは、自分がどんどん小さくなり皿の中にいるという句どちらにもとれる。いずれにしても圧倒的な孤独感を感じてる作者の心情がよく表されている。「これが夕餉の部屋に独りゐる」ではあたり前で話にならない。「皿に独りゐる」という無意識から浮かんだ実感を、バカバカしいものとして捨てず、きちんと拾ってきたところが見事であった。詩はつまりこういう世界なのである。ちなみに俳句の表記は「現在使われ将来も使われるであろう表記を採用していて不足はないはず」なので、ここでは今後「現代仮名遣い」お勧めたい。好句・佳句。

・胡麻はぜる星の匂いの時刻表(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)
→やはり「胡麻・星」の展開は類想が多いのが惜しいが、こちらの句も比喩(隠喩)などではなく、一句全体のモノ「胡麻・星の匂い・時刻表」の存在感がしっかりしており、そこから非日常的な気分を引っ張ってきているところが美しい。モノに託して詠むこの方向で。好句・佳句。

・胡麻叩く髭の胡人の兵馬俑(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→「胡人」は中国北方西方の民族を指す語。「兵馬俑」は古代の中国副葬品で兵士や馬をかたどったもの。胡麻を叩きながら髭の胡人の兵馬俑を感じている句、あるいは兵馬俑が胡麻をたたいているような心象風景か。いずれにしてそのオリエンタルな気分が胡麻によくあっていて楽しい。
好句。

・村百戸むらさきうすき胡麻の花(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→「胡麻の花」は夏の季語になるのだあるが、大事なのはまず句を詠むことでありその芸術性なので、ここではそのあたりをうるさくいう必要はなかろう。小さな村全体が「胡麻の花」によって明るい雰囲気につつまれている様子が美しく表されている。「むらさきうすき」というのは作者の気持ちであり言葉なので、「うすむらさきの」などモノの様子(情景)に託して詠むとさらによいであろう。好句。

・胡麻の束抱えきれない大太鼓(ペンネーム「寿人大好きばあば」さん)
→「抱えきれない」のが「胡麻の束・大太鼓」両方のように受け取れるところが面白い。収穫の喜びを両腕の感覚や響き渡る音に上手く託して詠んだ。まさにとりあわせの妙である。このように俳句はモノとモノのイメージを取り合わせ楽しむこともできる。この方向で。好句・佳句。

特選B

・胡麻畑空にささやく風の唄(ペンネーム「モッツァレラ二号」さん 8歳)
→透明感ある世界観が美しい。「畑・空・風・唄」あたりの関係性が近いのでそのあたりを整理されるとさらによくなるであろう。好句。

・胡麻爆ぜる青天の原型として(ペンネーム「登りびと」さん 35歳)
→「胡麻爆ぜる青天の原料として」も投句されていたのであるが、それでは一句が完全に理屈の句になってしまうのでこちらがよい。胡麻が爆ぜるかたちは青天の原型なのだという真実を伝えているところに詩がある。ただし定型感に乏しいところが気になる。季語についていろいろ気にする反面、定型についてルーズな人も多いが、定型には定型のバネ(力)があるのでそれを多いに使っていただければと願う。好句。

・胡麻干せば星のこぼれるような音(ペンネーム「ぐ」さん 36歳)
→手慣れた詠みぶりが上手いが少々観念的である。「胡麻・星」の類想と「~ような(直喩)」と詠むことで「星の音」の実在感・存在感を希薄にしているところが大変惜しい。俳句のような短い詩型は一句の存在自体が象徴・隠喩なので、あえて「~のような・~のごとき」を持ち出すこと自体が問題なのである。詩なので「現実らしさ(~のような)」にとらわれず、「星のこぼれる音がする」などと瞬間の実感をしっかり言い切り、モノを据えて詠むようにしたい。参考に。

・地平線ごま駆け回る稚児の声(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→気分の大変出た句で「はじける胡麻と稚児」の取り合わせには無理がない。ただしどうも感覚的に「地平線/ごま駆け回る/稚児の声」と三段切れ的なリズムで落ち着かないので、さらに舌頭千転して整えてみたい。

・保育器に並ぶ乳児や金の胡麻(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→期待感のよく出た句である。しかし「保育器・乳児・金」とここまで近いイメージを畳みかけられると少ししつこい。「保育器に並ぶ乳児や胡麻爆ぜる」くらいの気分で詠むほうが読者の解釈を限定せず味わいが広がりそうである。俳句はそのあたりのバランスのとり方が難しい芸術である。参考に。

・金胡麻や異国訛りの修行僧(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→お寺で精進料理をいただいているときのイメージであろうか。ユニークな把握の句である。「胡麻」はそのルーツや栽培地に外国の印象があるからか「異国訛りの修行僧」の気分がやや近いが合う。日本の情景を読みながらオリエンタルな気分を引っ張ってきているのびやかな一句である。

・胡麻の花頭傾げるそよ風に(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→「傾げる」のが「胡麻の花」とも「作者」ともとれるような詠み方で面白い。広い胡麻畑の中で夢うつつの気分に包まれている作者の恍惚感がよく表されている。「そよ風に頭かしげる胡麻の花」でも不足はないのであるが、下五に「~に」と置き上五にはね返るような詠み方がその夢うつつの気分をさらに増幅させる効果を生んでいるようで心地よい。理屈や技術・文法などではなく無意識からの湧出を大切に詠まれている姿勢を評価したい。このような句を見てその気分や芸術性ではなく「胡麻の花」は夏の季語うんぬん、「傾げるのは花か作者か明確にしなければいけない」など教条(国語的・正しさ)的なことが気になってしまう方は、その小賢しさこそを問題にしなければいけない。好句・佳句。

・新胡麻や掌さらさら陽の匂ひ(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
→全体的なイメージが近いのがやや惜しのであるが、こちらも上の句のように無意識からの湧出が光った一句である。「陽の匂い」は、「陽の匂い」とずばりそう書いてあるのであるから、胡麻の匂いの比喩(隠喩)などではなく、「陽の匂い」そのものと受け取めその気分を感じればよい。「新胡麻」の喜び・や生命力がありありと伝わる力強い一句である。好句・佳句。

・胡麻のつぶ黒きラインのホルスの目(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→「ホルス」はエジプト神話に登場する空と陽の神。隼の顔が印象的である。異国から運ばれて広まった「胡麻」の気分と神の目のかたちのイメージを重ねみて、その胡麻の秘めたパワーというようなものを印象的に引き出した句である。中七あたりなどやや説明的なところが引っ込めばさらによくなりそうである。好句。

・胡麻を干す島やこがねの風を生む(ペンネーム「紅さやか」さん 61歳)
→かっちりとした詠み方に安定感がある。「胡麻・黄金ね」「島・風」とイメージが近いこととやや作為的なところが惜しい。モノに託す方向はよいのでさらなる飛躍ある取りあわせ、思い切った表現を期待したい。

・金の胡麻すり抜けてゆく母の指(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→俳句は別に大きな感動を詠む必要はなく、むしろ自分だけの小さな気づきを詠んでくれればいい世界である。この句もそのような気分の一句。オリジナル性にやや乏しいのが惜しいが、いきいきとした金胡麻を詠み込むことで、その新鮮さやや喜びのようなものがありありと伝えることに成功している。

・仏前の日射しほのかな胡麻むすび(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)
→故人をしのぶ気分の出た句である。「ほのかな」が「日射し」にも「胡麻むすび」にもかかるような面白い詠み方。ほのかな日射し(視覚)とほのかな胡麻むすび(嗅覚)が、眼裏にぼんやり浮かんでくる故人の気分を引き立てていて上手い。モノ(情景)に託して詠むこのほうこうで。好句。

・胡麻刈るや畑にラジオ聞きながら(ペンネーム「ようちゃん」さん 70歳)
→「胡麻」の収穫がどのような作業なのか具体的な様子を知らない方も多いであろう。しかしながらこのように詠まれると実に大らかで楽し気である。この情景に託されたのびやかな気分が共感さそう。好句。

・胡麻和えの色とりどりの夕餉かな(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→「色とりどり」とは楽しい。新胡麻を皆でおいしく味わっている気分がよく出ている。笑顔や会話などは直接詠み込まれていないが、イメージされる世界にしっかりと立ち上がってくる。それはモノ(情景)の切り取り方が適切であるということにつきよう。モノ(情景)に託して詠むこの方向で。好句。

・胡麻の実や黒白茶色の花火粒(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
→どことなく詠みがぎこちないところや「胡麻の実・花火粒」あたりの類想感が気になるのであるが、余計なことを言わず「胡麻・花火粒」のとりあわせによって象徴的に句にもってきているところがよい。この句の場合「花火粒」は「火薬」のことのように受け取れる。「胡麻の実」が花火となっていずれ空で花ひらくというようなモノの流転・変化の気分を伝えているようで味わい深い。

入選A

・胡麻干すやカラスの低く飛ぶ軽さ(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 19歳)
→「軽さ」と作者が述べているところが惜しい。こういうところを読者に感じてもらえるようにモノ(情景)に託して詠むのが俳句なのである。

・胡麻二粒飛び出すキャンプファイアー(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→熱いものをもっている方なのであるがまだまだ俳句型式を自分のものにせんと模索中のようである。句の表面であれこれ工夫をと思っておられるようであるが俳句は短いので工夫すればするほど作為が感じられて逆効果なのである(よって無意識からの作句)。またこの堂々とした「定型感のなさ」が大変気になる。俳句の特徴が「短さ」であることはご理解いただけると思うが、それを補い活かすため様々な工夫が「季語・定型・切れ・喩・省略」などである。季語については必要以上に意識する人は多いが、定型に関しては大変ルーズな方が多い。言いたい事た優先して定型を崩すのではなく、定型のバネに頼ることによってしかだせない味わい、意味を超越した気分というものを大事にしてみたい。

・五十日晴天ありて胡麻爆ぜる(ペンネーム「豊田すばる」さん)
→大きな気分の句で一般的には上手いのであるが、上五中七を頭・理屈・作為で詠んでいるようなところがやはり惜しい。俳句は短いので頭でつくるとその作為が目立ってしまい鑑賞の邪魔になってしまうのである。このあたりは作者の宿題としておこう。

・金の胡麻八光年の星の蜜(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→こちらの句も上の句と同様である。俳句は短いので句の表面で何かを言おうとせず、モノ(情景)をしっかり据えて、句からイメージされる世界が豊かになるように詠みたい。

・胡麻爆ぜる幼子でんでん太鼓振る(ペンネーム「マネレ」さん 44歳)
→いきいきとした気分の句である。取り合わせの句であるが、両者のイメージが近いところや激しい動詞が二つあり一句が落ち着かないところが惜しい。そのあたりを整理したい。

・城跡は山の中なり胡麻叩く(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
→安心感ある詠み方で雄大な気分が心地いい。ただし「なり」と説明・報告しているところが惜しいのでそのようなところをさらにモノ(情景)に託して詠むようにしたい。

・胡麻爆ぜて新米農夫の慌てたる(ペンネーム「洒落神戸」さん 51歳)
→俳味の一句であるが、モノ句(モノ〔情景〕で託し詠む)というよりは、コト句(出来事・報告・説明)になってしまっいるところ、また「爆ぜて→慌てる」と一句の世界観が当たり前になってしまっているところが惜しい。批評精神をもって日常を詠むことが大事であろう。

・胡麻豆腐ぷるんと母を想い出す(ペンネーム「こんぺいとう」さん 52歳)
→寂しくなりがちな母への気持ちを明るく詠んであるところがユニークであるが、「胡麻豆腐・ぷるん」「母・想い出す」あたりのイメージが近く惜しい。また「想い出す」は直接表現なので「胡麻豆腐少しふるえる母の背ナ」などモノ(情景)に託して詠むようにしたい。

・胡麻香る重機の跡の住宅街(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→「重機の跡の住宅街」とは先の豪雨災害を詠んだものであろう。しかしながら「胡麻香る」では合わない。こういう場合は最初の発想にとらわれず「胡麻爆ぜる重機の跡の住宅街」などと素材を活かして詠み直したほうがいいだろう。参考に。

・胡麻豆腐つるりと喉を滑り落ち(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
→定型のバネを活かした飾らない軽い詠みぶりが心地よい。しかしながら芸術性という観点でいえば「豆腐・つるり・喉・滑り」とありきたりの語と語の関係性が惜しい。ありきたりを避けるように詠みたい。

・駅弁の裏蓋の胡麻の並び方(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
→小さな発見を掴んできており面白い。少々説明的なので、「駅弁の蓋へばりつく胡麻の腹」などモノ(情景)に託して詠むようにしてみたい。参考に。

・胡麻の香と夕日たゆたう厨かな(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→夕方の気分がよく出た句である。しかしながら「胡麻・厨」「夕日・厨」では少しイメージがつきすぎ。ここまで詠めればなかなかであるが、さらにそのあたりを整理してみたい。

・古庭に胡麻の香りと水の音(ペンネーム「9月の雨順子」さん 62歳)
→芭蕉の有名な句が浮かんだ。その分やはりパロディのようになってしまい大変不利である。ユニークであるが、やはりオリジナルな実感を詠むようにしたい。

・海原に熟れて飛び散るうごまかな(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
→「うごま」は胡麻の異名。中七下五があたり前の語の展開で惜しいといえば惜しいが、のびやかな気分・勢いが感じとれる句でもあり若々しい。

・胡麻叩く後ろ姿は祖母のごと(ペンネーム「松廣李子」さん 63歳)
→落ち着いた詠みぶりに安心感がある。一句の世界観がやはりありきたりなのが惜しいのでそこをどう抜け出すか。日常を詠むときは批評精神をもって詠むようにすることが大事であろう。参考に。

・日傘揺れ避暑地に白く胡麻の花(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 67歳)
→透明感ある美しいムードである。「日傘・避暑地・胡麻の花」と少し窮屈なのでポイントを絞って「胡麻の花吐き出している避暑地かな」あたりで詠んでもいいだろう。参考に。

・胡麻刈りて風を蹴散らす鬼瓦(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→「胡麻・鬼瓦とは農家の家の前の気分であろうか。なかなか印象的な句である。ただどうもモノとモノが合わない(胡麻・鬼瓦)。このあたりの素材で詠むとすれば「鬼瓦風つむぎ出す胡麻の花」くらいになろうか。ちなみに「胡麻の花」は夏になる。

・新ごまや古民家の風右左(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→少々舌足らずな詠みになってしまっている下五がやや惜しいが、「新胡麻」の喜び嬉しさの気分がよく出ている。好句。

・故郷や擂鉢の胡麻かき出しぬ(ペンネーム「ヒロリン」さん 70歳)
→「擂鉢」を使う機会も減っているが「故郷」の親たちはあたり前のように使っている。というような気分の句。「故郷や」でもいいのであるが、少しざっくりしすぎているので「擂鉢の胡麻を掻き出す里の空」など、大きな情景を打ち出してみてもいいかもしれない。参考に。

・能き日なり牛も引かれて胡麻絞り(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
→定型を活かしたかっちりした詠み方が心地よくさわやかである。「能き日なり」などと
作者が直接語らず、読者に感じてもらえるようにモノに託して詠むようにしたい。そうすればさらによくなるであろう。

・女学生パチパチ弾ける胡麻の声(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→「女学生」の気分・「胡麻」の気分を重ね見た句でなかなか楽しい。両者のいメージが少し近いので分かりやすいが、その分世界(宇宙)が浅くなるのが悩ましいところ。いずれにしてもこのように取合わせ・キャスティングといったモノを打ち出す方向でイメージの妙味を堪能いただければ嬉しい。

・金胡麻の香り際立つ吐息かな(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→華やかな気分の句である。しかして一句に飛躍がないのが物足りない。最近の作者の方向性なのかもわからないが、俳句型式を働かせる方向で大胆に詠んでいただければと願う。

・古戦場胡麻叩く音や昼の月(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→モノをしっかり打ち出しながらイメージされてくる世界の非日常感を高めているところが大変よい。ただ少しモノが多く窮屈ななので「胡麻叩く・昼の月」「古戦場・胡麻叩く」あたりで、もうすこしポイントを絞って詠んでみたい。

・黙々と胡麻刈るさきに一つ星(ペンネーム「蛍子」さん 76歳)
→胡麻を刈っているといつの間にか夜になってきたという気分の句。星が印象的である。「~に」と限定されると解釈の幅が限定されるので「刈られゆく胡麻の向こうや星ひとつ」など、味を残して詠んでみたい。参考に。

・胡麻叩く働き者の老農夫(ペンネーム「かっちゃん」さん 77歳)
→定型のバネの効いた句で「U」音の響きが心地よい。「働き者の」はモノ(情景)ではなく作者の思い・概念なので、こういうところを「胡麻叩く音高らかに老夫婦」など、さらに情景に託して詠むようにしてみたい。参考に。

・遠足や母の天塩の胡麻むすび(ペンネーム「チックちゃん」さん 77歳)
→素朴であるが、上五の切れ・定型のバネがよく効いた句である。大きな光景・概念から目の前のむすびへの展開の仕方が上手い。「遠足」は春の季語であるがそれは問題ではない。ただ「遠足・むすび」「天塩・胡麻・むすび」など少し語同士のイメージが近いところが惜しいのでそのあたりは気をつけたい。

・ぱさぱさと胡麻打つ音や日の暮れる(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→この手の句は類想が多いのでどうにも惜しいが「胡麻打ち」の気分がよく出ている。日常の光景をそのまま詠んでいるようであるが、他の類想とは少し違ってさらに抑制して詠んであるところがよい。こう詠むことで逆に真摯に生きる人々の様子がより引き立って感じ取れてくる。好句。

入選B

・すり鉢の胡麻から彩る食の香(ペンネーム「競馬大好き」さん 25歳)
・縁側で暑中お見舞い胡麻香る(ペンネーム「ASARINA」さん 31歳)
・婆ちゃん家爽やか胡麻の中華蕎麦(ペンネーム「よこたん」さん 41歳)
・眠る前胡麻の国からファンレター(ペンネーム「ダビデ王きよたか」さん 43歳)
・胡麻を摺り背中で仕事母の味(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・分かったか此れが味噌胡麻母の味(ペンネーム「真改しんかい」さん 43歳)
・爪楊枝胡麻が踊る世界かな(ペンネーム「放送きよたか」さん 43歳)
・鍋のゴマ跳ねて宇宙に飛んでいけ(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・ごま食べる仙人めざしなれるかな(ペンネーム「わた」さん 45歳)
・胡麻の種ひとつひとつが香ばしく(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・擂り鉢を被る行進胡麻香る(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
・差し込む陽胡麻ひとつまみさっと乗せ(ペンネーム「もじこ」さん 49歳)
・胡麻たたきつつ歌いつつ風の谷(ペンネーム「でこ」さん 52歳)
・胡麻爆ぜて関わり持てず八年間(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・スタジアムに笑う胡麻たちは赤き声(ペンネーム「コンセプシオン6」さん 55歳)
・大入日胡麻刈る子らの声はじく(ペンネーム「梅こんぶ」さん 56歳)
・新米に胡麻塩ふって食べる秋(ペンネーム「りんの」さん 58歳)
・胡麻菓子を迷う夫の背を笑う(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・ゴマはじけ個人差のある放物線(ペンネーム「たえの子」さん 59歳)
・還暦を過ぎても知らず胡麻の花(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
・胡麻叩きいくつか飛んで見失う(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・ごま団子四川料理を鎮めけり(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・入歯の下胡麻取る夫愛おしや(ペンネーム「瑠緒まま」さん 62歳)
・胡麻塩が縁を取り持つ老夫婦(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・凩や胡麻すり込みて味噌ラーメン(ペンネーム「是多」さん 64歳)
・胡麻を煎る母の姿のおぼろげに(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
・待ったなしの畑仕事や胡麻爆ぜる(ペンネーム「ぐずみ」さん 68歳)
・胡麻爆ぜて死後の世界は有るという(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
・胡麻打ちやリズムにまかせ身もまかせ(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・胡麻爆ぜる鏡に向かひあゐうゑを(ペンネーム「ヤチ代」さん 70歳)
・胡麻を炒る三万三千躍動す(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・あんパンのてっぺんに胡麻誇らしげ(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・胡麻づくし和洋折衷はずむ箸(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・胡麻炒るや怒る大地に泣く人ぞ(ペンネーム「めぐちゃん」さん 78歳)
・新胡麻の味見一粒母の顔(ペンネーム「義」さん 79歳)
・胡麻はぜて静寂破る震度七(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)

ユニー句(句)

・胡麻みたいネチネチゆうのマジで無理(ペンネーム「リリィ」さん 16歳)
・この胡麻の数だけ恋をしてみたい(ペンネーム「大野美波」さん 31歳)
・細々とうるさい嫁にゴマをする。(ペンネーム「そっぺ」さん 34歳)
・独楽駒も粉々胡麻は大騒ぎ(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・切ないねゴマじゃないのよシミなのよ(ペンネーム「クロワッサン」さん 39歳)
・水曜日素敵なスリーにごまスリー(ペンネーム「まんまるちゃん」さん 39歳)
・カッコいい秀格先生ゴマをする(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・ごまかさず君ならできる最後まで(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・担々麺白胡麻の味良く似合う(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・擂ったゴマ料理に使わず上司へと(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
・できたシミメイクでごまかす47歳(ペンネーム「テレビ派ソラシド」さん 47歳)
・ヤジに耐え胡麻行鍛え今がある(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・猫になり記念日前にゴマをする(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
・黒胡麻に白胡麻金胡麻へそのゴマ(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 62歳)
・思い出すカップ麺の胡麻味を(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
・ゴマプリン聡太が寄せで差す一手(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
・遠足で慣れぬ弁当ゴマだらけ(ペンネーム「ぜんしょう」さん 71歳)
・会うたびに白ごま増える古希の父(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
・炎暑待つ新井護摩行ホームラン(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・刈り取りは胡麻塩頭和えは妻(ペンネーム「七十爺」さん 75歳)
・胡麻擂りて初めて栄養効果出る(ペンネーム「小林宏一」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年8月29日(水)

第96回 お題「バッタ」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回も全国から沢山の句を頂き感謝を申し上げます。

俳句の詠み方は、写真のように情景を切り取る(カメラ的)、眼前の出来事を切り取る(動画的)というだけではありません。
何らかのテレビCMのように映像Aに映像Bがかぶさり、融合されてゆくような世界も表現できますし、語(バッタ)と語(他のモノ)の関係性によって新しいイメージ(真実)をつむぎ出すということもできます。
そもそも俳句は詩であり、詩は芸術なのですから、俳句や国語的な常識(情景・映像・写生・文法・辞書的な意味・季語を主役にする)にしばられず、無意識からのオリジナルな表現を大切にし、短い俳句形式の可能性を追及してほしいものです。

例えば「季語」。
季語は季節のライトで世界を見る有力な象徴機能ですが、「俳句 = 季語」ではありませんし、「季語 = 一句の主役」でもありません。
今では「季語」は、「切れ」「喩」「省略」などのように、俳句の短さを補い活かすための工夫のひとつと捉えたほうがいいでしょう。
季語を中心に据えたところで一句の芸術性が低ければ、季語がない(中心に来てない)芸術性の高い句に劣るのは当然ですし、「季語の有無」や「季重なり」・「季語の中心性」・「何を詠むか(素材・出来事)」よりも、「短さをいかした詠み方(語と語の効果)」の方が圧倒的に大切です。

そもそも俳句というものは「季語を主役にする」というような単純なものではありませんし、良句というものは、モーツァルトの音楽のように無意識の大波にモノたちが主従なくたゆたっているような気分を醸し出しているものです。
頭(知識・意識)ではなく、もっと素直な心でモノ(季語・モノ・対象)や一句に向き合いたいものです。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです(これも俳句の「短い」形式が生理的に要求している原則的な詠法のひとつといえます)。

以下(1)~(4)を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

(1)原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
(2)俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
(3)仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
(4)原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の「東西」は情景に託した作者の心の充実感・満足感が感じられる句。
入賞句の「耕耘機」は、農作業の「楽しさ」の感じられる一句。
入賞句の「金属バット」は、高校野球の気分のよく出た、「会心・満足感」の感じられる一句。
特選Aは入賞候補として残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「東西に風の肥えゆくバッタかな」(ペンネーム「あや」さん 50歳)

小さな「バッタ」が、「東西」に広がる草原の大パノラマを我が物としているかのような気分・光景である。
もちろんこの「バッタ」は作者自身でもある。
何と言っても「風の肥え行ゆく」というオリジナルで意外性のある表現が秀逸。
「風」も「肥えゆく」も、それ単体ではありきたりなのであるが、「風の」→「肥えゆく」と言葉を並ばせたことで一気に化学変化が生じ詩になった。
作者のなんらかの「充実感・満足感」を、眼前の情景に上手く託して詠んだひきつける一句である。
大賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
詩の神は、オリジナルな表現(意外性のある語と語の展開)に宿る。

入賞

「きちきちや空の名前の耕耘機」(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)

「きちきち」は、飛ぶときに「キチキチ」と音を立てるショウリョウバッタのこと。
秋の野菜を受け付ける前の家庭菜園での土作りのシーンであろうか。
夏の野菜を取り終え、雑草の伸びてきた畑に「耕運機」を走らせ、草ごと鋤いているときに、バッタが眼の前を逃げるように跳んでいっている様子が目に浮かぶ。
この句の手柄は「空の名前の耕運機」。
「耕運機」の商品名なのか、作者が「耕運機」に「あおぞら」などの固有名詞を与えたものか。
いずれにしても、「耕運機」への愛着、ひいては農作業を楽しんでいる気分というものがありありと感じ取れてきて共感を覚える。
戯れながら跳んでいるような「きちきち」ののびやかさ・かろやかさ」も、「楽しさ」の増幅に大変役に立っている。
ちなみに、「耕運機」は春の季語でもあるが、一句の気分(ムード)がよく出ており問題なかろう。
また、上五が「蝶々や」でも「ひまわりや」でも成立しそう(動く)なのでよくないのではないか、という方もおられようが、「動く・動かない」表現というものは、芸術的な立場から言えば、その時作者が「これだ!」と思えたのならそれでいい世界なのであって、後から他人が無理に「動かす」必要はなかろう。
入賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
耕運機の名前、動き、色、音など、どの実感(モノの切り口)を掴むか。

「キチキチや金属バットの音高く」(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)

「キチキチ」のいる河原での草野球の様子ともとれるが、それはどうも一句の気分に合わない。
「キチキチ」が高らかに跳ぶ様子と、高校野球の応援しているチームの打者が大きな当たりを打ったときの様子を重ね見た句、ととるほうが自然であろう。
この句の良さは「瞬間・タイミング」。
キチキチが追手から逃れて跳ぶタイミングと、狙いすまして打球を打つタイミング、この両者の「今だ!」という会心のタイミングを一句の中に上手く重ねて詠んである。
全体的にややイメージが近いのが惜しいといえば惜しいが、これはこれで気分の出た、連想に無理のない一句であろう。
入賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
つかず離れずのモノ同士を重ね見る(取りあわせる)。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・バッタとぶ5時のチャイムの子どもたち(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※道を急いでいるときに足元から飛び出したバッタに驚いて出来た句です。バッタが飛ぶのは何か周りで起こったからという小さなドラマです。
→「バッタの飛ぶ様子」と「5時のチャイムで一斉に家路に向かう子どもたち」の両者の気分を重ね見た句であろう。「バッタ・子ども」のイメージが近いのがやや惜しいが、この句も両者の関係性に無理がない。

・天空やバッタの目指す剱岳(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※先日、放映された「北アルプス・ドローン大縦走(剱岳・立山)」の断崖絶壁や天空の尾根歩き等の絶景映像を見て詠みました。
→剱岳は飛騨山脈の立山連峰にある山。バッタの気分で詠んだ一句であろうか。「天空・剱岳」のモノとモノのイメージが近いところ、「バッタ」→「目指す」→「剱岳」と→前後の飛躍(意外性)がなく、説明的であるところが惜しいが、大きな気分の句である。

入選句

特選A(入賞候補)

・バッタ飛ぶペットボトルの凹みかな(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→さりげない光景であるがこれでいいのである。「飛んだ」かと思えば「凹み」を発見したというようなところに作者の何らかの心情表出がなされている。この場合だと不安定な心境のようなものであろうか。「バッタ」→「飛ぶ」の関係性が当たり前といえば当たり前であるが、全てはケースバイケースで、この句の場合「凹み」と呼応しているようである。無意識からの実感を優先するこの方向で。佳句・好句。

・轍越え真鍮色のバッタかな(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→「バッタ」が「轍」を越えた瞬間「真鍮色」になったと感じた実感を詠んだ句か。「バッタ」に金属的な「真鍮色」を感じたというところに十分に心情表出がなされている。それはふいに人生を機械仕掛けのように感じたというような心境か。俳句はこのように小さな、オリジナルな実感を捕まえてくれば自然と成立してくる世界なのである。この方向で。佳句・好句。

・天気図の北にひしめく飛蝗かな(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「飛蝗」はばったと読む。「北」は涼しいから「飛蝗」がそこに集まっている様子などと、頭で意図的に解釈するのは無粋。情景べったりの人にはわからない世界であろうが、「天気図」の等圧線 と「飛蝗」のイメージの取り合わせによって、なんとも言えないざわざわした心境のようなものを伝えている。「現実を現実らしく詠むだけが俳句ではない」と今回も総評で申し上げてたが、そのようなタイプの良句である。

・黙祷の額の汗やばったとぶ(ペンネーム「雅」さん 55歳)
→秋とは言えまだ暑い季節、黙祷している人間たちと虫の自由さのようなものを対比した印象の句にとれる。どことなく俳味(おかしさ)が出ている。「汗」も夏の季語であるが特に問題なかろう。小さなオリジナルな実感を上手く捕まえてきた。

・はたはたや娘は結い髪を今朝降ろし(ペンネーム「吉良水里」さん 56歳)
→散文的・説明的で句の表面で何か言いたげなところがどうにも惜しいが、上五と中七下五との飛躍が句を詩にしている。何らかの心境の変化のようなものを上手くモノ(情景)に託して詠んだ。

・米搗きばった引き揚げ船の着く港(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→「引き揚げ船」・港を詠んだ句。「米搗きばった」であるからその動きのユニークさなどもあり、喜びや嬉しさのような心情が感じ取れてくる。こちらも上手くモノ(情景)に託して詠んだ一句である。

・バッタ翔ぶ空に一本飛行雲(ペンネーム「かすみ草」さん 60歳)
→「バッタ」→「翔ぶ」→「空」→「飛行雲」であるから、→前後の語の関係性に意外性が少なく、ややつきすぎで惜しいが、そこまでの傷ではない。それよりも一句を貫くのびやかな気分が共感を誘う。好句。

・飛蝗とぶ星を拾いに行く河原(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→賽の河原ではないがどことなく「祈り」の気分が感じ取れる句である。日常と非日常世界を彷徨うようなムードがこの句の見どころ味わいどころであろう。好句。

・鍬入れの鍬にバッタの跳び付けり(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→出来ている上手い句であるが、よくある「韻を踏んだ詠法」、「鍬・バッタ」のイメージの近さ、「バッタ」→「跳びつけり」という→前後の語の意外性のなさ、などが「意外」に気になり惜しい。やはり「俳句はこう詠むもの」というような考え、「現実を現実らしく詠むもの」というようなスタンス、教条重視などをとっぱらう必要があろう。そこが課題。

・はたはたやくるくる廻る風の音(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→最近急に言葉の斡旋にたけてこられた高段者。今回も独自の世界を披露され心強い。「はたはた」はバッタのこと。「はたはた・くるくる」と句の表面で言葉の響きを面白がっているようなところが少し惜しいが、軽やかで楽し気な気分が共感を誘う。

・はたはたの絵手紙届く日曜日(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
→句意は明瞭、出来た句良い句なのであるが、「はたはたの絵手紙」だと「はたはた」の実在感が乏しいところが惜しい。「はたはたの/絵手紙」で切れている句ととれば存在感は出るが、この句場合切りづらい。そのあたりを考えてみてほしい。

特選B

・片脚の飛蝗しずかな薄緑(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→「片脚の飛蝗」が佇む様子を詠んだものか。「じずかな薄緑」が「片脚の飛蝗」を説明してしまっているようで惜しい。「片脚の飛蝗」とくれば「しずかな薄緑」あたりのイメージはいわずもがなので、何かを取りあわせるなど素材から詠み直してもいいだろう。参考に。

・きちきちや機械仕掛けのこの世界(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→「きちきち」の実感を詠んだ句であろう。虫に機械仕掛けを感じるというのはある意味ありふれているが、下五の収め方が上手くなんとか詩にもってきている。「機械仕掛けのこの世界」と作者が語ってしまっているところが惜しい。こういうところをモノに語らせる(モノに託して詠む)ようにするとさらによくなるであろう。

・難しい漢字着せられ螇蚸とぶ(ペンネーム「ゆうちゃん」さん 45歳)
→「難しい漢字着せられ螇蚸とぶ」と作者が語っているところが惜しいが面白い句である。こういうところをモノ(情景)に託せるようになればもっとよくなりそうである。

・梵鐘やバッタの羽音打ち消して(ペンネーム「Dr. でぶ」さん 46歳)
→句の後半が「~して~する」と説明的で惜しいが、実感のこもった情緒ある句である。ここまで詠めれば、どんどん多作されるのがよいであろう。モノ(情景)に託すこの方向で。好句。

・次々とバッタ緑の風を跳ぶ(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→詠み方がどことなく情緒があるのが救いであるが、すべて「バッタ」の一語に収斂される。全体敵に「~と~が~の~を~する」と散文で説明的なのが惜しい。脚本(説明・叙述・出来事・短歌的発想)ではなく、如何にキャスティング(象徴・モノ・情景)に入るか。それが大きな課題。

・野をゆけば独白のごとバッタ発つ(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→俳句以外の詩であれば、このような意味性の強い言葉を出してきても詩になるのであるが、俳句は短いので基本的にそれが向いていない。モノ(情景)に託して気持ちを詠まざるを得ない世界なのである。また俳句は俳句そのものが隠喩(象徴)なので比喩を安易に持ち出さないようにしたい。「独白すバッタの影や鰯雲(季重なりだが)」など、ここから俳句にしてゆきたい。参考に。

・バッタ飛び補色の空に溶けていく(ペンネーム「たけの子」さん 59歳)
→「補色の空」が面白い実感。惜しいのは「バッタ」→「飛び」、「空に」→「溶けてゆく」がありきたりな措辞になってしまったところ。そのあたりを整理したい。

・海へ行くバッタ地雷を踏まぬよう(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→詩的な表現でもっているが句としては弱い。俳句は短いので説明・叙述・出来事・心情などの表現は向いていないのである。よって脚本ではなくモノ(情景)のキャスティングに徹するようにしたい。熱いものはもっておられるようなので、そのあたりの転換を期待したい。

・オンブバッタ横切ってゆく面構え(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→一句の中で世界が堂々巡りしているようなところが惜しいが、それが俳味にもなっている。スローモーションでも見せられているかのような感覚がひきつける。好句。

・水溜まりの空の高さを跳ぶ飛蝗(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→なんとなく出来ている句であるが、「水溜まり・空・跳ぶ・飛蝗」と、すべてのモノの関係性が近いのと、「~の~を~する~」と説明的であるところが気になる。そのあたりを攻めたい。

・捕虫網バッタの周りを飛び跳ねる(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→飛び跳ねるのがバッタではなく「捕虫網」というところが面白い。俳味(おかしさ)の句である。俳句はこのように小さくオリジナルな実感を掴んできてくれればいいのである。「捕虫網」は夏の季語であるがこの場合気にならない。好句。

・きちきちや将軍杉に住む天狗(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→「将軍杉」は、新潟県東蒲原郡阿賀町岩谷にある国の天然記念物に指定された1400年の杉のこと。大きな気分の句である、この句は非日常的な「将軍杉・天狗」の両者が喧嘩している印象。「きちきちや将軍杉の影匂う」など、どちらかを外して句に持ってゆきたい。

・絵日記のはみ出すバッタの薄緑(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→面白い詠み方である。絵日記に書かれたバッタの絵がはみ出しているのか、「はみ出す/」で切れた句で、絵日記と実在のバッタを重ね見ているのか両方にとれる。惜しいのは「バッタ」→「薄緑」のあたり前の関係性。そのあたりを整理したい。参考に。

・キチキチの跳んで青空凹ませる(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→バッタの強いジャンプ力を詠んだ句であろうか。「青空凹ませる」は面白い発見。惜しいのは「~の~して~を~させる」と説明的なところ。また「跳んで」は言わずもがな。そのあたりを攻めたい。好句。

入選A

・影法師肩に寄り添う飛蝗かな(ペンネーム「ショコラ」さん 44歳)
→大変落ち着いたムードの出た句である。原句の場合、「影法師」の「肩」なのか、自分の「肩」なのかいまいちわかりにくいので、「キチキチの肩に寄りそう影法師」などと整えたい。モノ(情景)に託して詠む方向はよい。好句。

・黙祷の隙見に逃げる飛蝗かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
→俳味(おかしさ)の句であるが、全体的な詠み方が作為的であり、コト句(出来事句)の気分であるところが惜しい。安定した託し詠みの世界に入ってきてほしい方である。

・バツタ飛ぶ包み込む空バター色(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
→詠み方がまだ追い付いていないが、自分のオリジナルな実感を打ち出してきているところが大変よい。詩なので「きちきちの空包み込むバターかな」などもあろう。この方向で。好句。

・靖国の木陰で休むバッタかな(ペンネーム「もじこ」さん 49歳)
→「靖国」であるからいろいろ背景が見えてきそうであるが見えてこないのが惜しい。俳句はこのような素材を詠めばなんとかなるというのではなく、自身のホンモノの実感を掴みにいくようにしたい。

・球児らの影なき芝生バッタ翔ぶ(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→ムードある表現であるが、言葉の美にもたれているところが句を弱くしている。句の表面で何かをしようとせず、モノ(キャスティング)に徹して、そこからイメージされる世界を大切にしたい。ここまで詠めたら「球児らの影の行き交うバッタかな」など最初の発想にとらわれずモノの存在をしっかり打ち出して詠んでみたい。参考に。

・バッタ飛ぶ父は転んでよう起きぬ(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
→高齢のお父さんを詠んだ句のように受け取れる。事実とすれば大変な状況なのであるが、どこか滑稽である。すなわちそのような俳味を醸し出しているところがこの句の魅力。お見舞い申し上げます。

・座布団の上に殿様ばつたかな(ペンネーム「鯉こころ」さん 55歳)
→なかなか俳味の感じられる句であるが、どこか作り物っぽいところが惜しい。やはり「座布団」→「殿様」ではつきすぎであろう。そのあたりを攻めたい。

・バッタとぶ男子は女子のじゃまをする(ペンネーム「眠る烏龍茶」さん 55歳)
→こちらも俳味の句。「バッタ」の気分になかなかよく合っている。作者が語るのではなくモノ(情景)に語らせるようにすればさらによくなる。好句。

・朝の空霧晴れわたりバッタ飛ぶ(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
→一句全体が時間にそった説明句になってしまっているところが惜しい。素材は悪くないので「早朝の空の高さやバッタ飛ぶ」など。参考に。

・サーカスのテントが立つやバッタ跳ね(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→「サーカス」の気分と「バッタ」の跳ねる様子を取りあわせた連想に無理のない句である。どことなく詠みがもたもたしているところが惜しいので「サーカスのテントの並ぶバッタかな」などもあろうか。参考に。

・飛んでったバッタ右脚忘れてる(ペンネーム「おくにち木実」さん60歳)
→気分の出た句であるが、「飛ぶ・バッタ・脚」のつきすぎや、「忘れてる」とモノ(情景)ではなく作者が語っているところが惜しい。そのあたりを整理されるとよい。

・おぼろ雲墓前の菊に飛蝗かな(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
→「雲・墓。菊・バッタ」とモノが多くて窮屈なので、そのあたりを少し整理して「バッタ跳ぶ墓前の雲の白さかな」などと整えたい。参考に。

・夏の夕虹色に染まるバッタかな(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
→素直な実感でよいのであるが、やはりやや表現がストレートすぎて惜しい。「虹色に吾の影染まる飛蝗かな」など。参考に。

・ページ繰る風にバッタと遊びおり(ペンネーム「松廣李子」さん 63歳)
→俳句はモノ(情景)を詠む詩なのであるが、出来事を詠んでしまっているところが惜しい。「ぺージ繰る風の重さの飛蝗かな」などとすればグッとムードが出そうである。参考に。

・サーカスの小屋の杭打ちバッタ跳ぶ(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
→「サーカス小屋」と「飛蝗」の句は上にもあったがなかなかの素材の取り合わせ。このような詠みもあろうか。好句。

・陽に遊びバッタ一飛び月の影(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→メルヘンチックなであるが全体的に観念的なところが惜しい。無理に大きな時空を詠もうとせず、昼か夜か、眼前の小さなモノ(情景)の実感をつかまえにいくほうがよいかもしれない。

・高原の星の真下をバッタ二羽(ペンネーム「ぐずみ」さん 68歳)
→詠みが素直で俳句らしいが、「高原・星・バッタ」と並ぶとどうもイメージが近くて詩になりにくい。下五まで言うとかなり説明的なので、せめて「飛蝗かな」くらいにしてみたい。

・螇蚸飛び童貞の足怖気づく(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→なかなかユニークな把握なのであるが、「螇蚸飛び」どうして「童貞の足怖気づく」のか、解釈の取り付く島がないところが惜しい。俳句には確かに句の解釈を読者に委ねるという性質があるが、それは俳句が句になっている(象徴)の場合のこと。象徴の場合は解釈の複数性があるので(原因と結果が一対複数)それでもよいのであるが、「螇蚸飛び」どうして「童貞の足怖気づく」のか推理小説のように原因と結果が一対一の関係性の場合、そのひとつの解を探しにゆくのは大変窮屈である。よってモノ句なのである。これは俳句型式の「短さ」が生理的に要求しているものと言えよう。

・満天に飛蝗集まり能舞台(ペンネーム「きさらぎ」さん 70歳)
「飛蝗・能舞台」このキャスティングはよい取り合わせである。あとは器にどう盛り付けるか。「はたはたの影ふるえだす能舞台」などと詠めば、より気分が出そうである。参考に。

・小さき風に飛蝗跳ね飛ぶ無人駅(ペンネーム「ようちゃん」さん 70歳)
→「飛蝗・無人駅」もなかなかの舞台装置である。上の句ではないがどう器に盛るか。「きちきちの風の運ばる無人駅」など。参考に。

・墓石のおんぶバツタに母重ね(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
→気持ちは大変よくわかるが、「母重ね」まで言ってしまうと言いすぎであろう。「母の声」くらいか。参考に。

・バッタ見てふる里想う母想う(ペンネーム「ぜんしょう」さん 71歳)
→こちらも郷愁の気分の句であるが、ここまで畳みかけられると少し重たい。「ふるさとのバッタの影や母の顔」lくらいか。参考に。

・日が暮れて精霊バッタ草揺らす(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
→夜になると「バッタ」が動き出すというのは現実の反対の光景なので少しドキッとさせられる。「~して~が~する」というところが惜しいので、そのあたりを今一度せめてみたい。

・バッタ取り原っぱ駆ける子供たち(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
→素直な実感が詠み込まれた句であるが、やや素直すぎて物足りない。日常を詠む場合は、そこに批評精神がほしい。

・バッタ舞う草の胡弓に風の笛(ペンネーム「まあちゃん」さん 72歳)
→美しい世界観なのであるが、作為的であり観念的、頭でこしらえたようなところが惜しい。素材は悪くないので「キチキチの影や胡弓の弦のいろ」など、ここから素材を活かして句にもっていきたい。参考に。

・夕間暮れ家路を急ぐバッタかな(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→全体的な世界観がどうも日常的で飛躍に乏しいのが惜しいが、句になっている。「夕間暮れ・家路を急ぐ」のイメージが近いので、「キチキチの家路を急ぐ子供かな」などもあろうか。参考に。

・釣り舟や黄金の波に乗るバッタ(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→「風鈴」との季重なりがどうのいうのではなく、説明的で詠みが追い付いていない「風鈴の口ひらきつつ黒出目金」など、最初の意味や発想にとらわれず素材を活かして整えたい。参考に。

・短距離走スタート練習見るバッタ(ペンネーム「東広島の七十爺」さん 75歳)
→ユニ―クな句である。どことなく説明的なので「陸上選手駆け出すバッタかな」などでは。参考に。

・バス待つ間ふいに飛び来る飛蝗かな(ペンネーム「かっちゃん」さん 77歳)
→実際の出来事であろうか。ほとんどできた句なのであるが、当たり前であることや説明的なところが惜しいので「バス停のバス走り出すバッタかな」など説明を避けて詠んでみたい。参考に。

入選B

・踏み切ったバッタの足もやけどかな(ペンネーム「まいみょん」さん 17歳)
・日本晴震える屋根のバッタかな(ペンネーム「綱長井ハツオ」さん 18歳)
・廃駅や飛蝗と世捨て人のうつつ(ペンネーム「竹伍」さん 26歳)
・太陽に飛び込むバッタ夏半ば(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
・きちきちの跳んで世界は熟れてゆく(ペンネーム「ぐ」さん 35歳)
・尻高く諸手被せるバッタかな(ペンネーム「登るひと」さん 35歳)
・バッタ来る無言の庭や青い空(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
・禿鷹の行く晴天の背の飛蝗(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・客船の窓にバッタがへばりつく(ペンネーム「青海也緒」さん 37歳)
・バッタ紙飛行機のごと草むらへ(ペンネーム「ふくろう」さん 40歳)
・バッタ止まり葉が揺れたりし手の中へ(ペンネーム「よこたん」さん 41歳)
・飛蝗飛ぶ秋の風情漂いたり(ペンネーム「HK」さん 42歳)
・騙し合い蜥蜴とバッタの背比べ(ペンネーム「マリオネットキヨタカ」さん 43歳)
・見え隠れトノサマバッタ何処へ行く(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・自販機に精霊バッタやって来て(ペンネーム「放送きよたか」さん 43歳)
・ぎょろり目でゆっくり休むバッタかな。(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・見かけますバッタは何を思うのか(ペンネーム「わた」さん 45歳)
・夕涼みバッタ飛ぶ飛ぶ秋の庭(ペンネーム「テレビ派ソラシド」さん 47歳)
・焼け野原芽吹いた緑バッタの子(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
・ファミレスの窓にバッタや青信号(ペンネーム「白樺みかん」さん 50歳)
・帰り路の後部座席にバッタかな(ペンネーム「洒落神戸」さん 51歳)
・平成の夏も終わりとバッタ鳴く(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・平和公園バッタも叫ぶ核なき世界(ペンネーム「西区のぺんぺん草」さん 55歳)
・夕の畦袖にバッタや草を刈る(ペンネーム「梅こんぶ」さん 56歳)
・きちきちの居そうな繁み出勤す(ペンネーム「都乃あざみ」さん 56歳)
・踊り場やバッタを追い越す孫と息(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・砂漠飛ぶバッタの群や砂嵐(ペンネーム「9月の雨順子」さん 61歳)
・捕まえた飛蝗に機を織らす母(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・バッタ捕りいつの間にか迷子なり(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・夏枯れの草原行くかバッタかな(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
・菜園に住まうバッタのにくらしき(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・磨かれし渡り廊下をバッタ飛ぶ(ペンネーム「ヤチ代」さん 69歳)
・夕暮れに注意払わずバッタ飛ぶ(ペンネーム「リュー」さん 69歳)
・古希迎え気弱なバッタ若葉の上(ペンネーム「グラングラン」さん 70歳)
・赤ちゃんをおんぶのバッタに金メダル(ペンネーム「はなママ」さん 71歳)
・草茫々錆びた線路にバッタ跳ぶ(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 73歳)
・きちきちと祈るさだこの像の哀(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・バッタ追う子らの声消え野は真っ赤(ペンネーム「チックちゃん」さん 76歳)
・残したる青の一筋バッタにと(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・どら猫の不意打ちかわすバッタかな(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
・バッタ飼うデパートの昼午後八時(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

ユニー句(句)

・日々情報バッタバッタと届けます(ペンネーム「まんまるちゃん」さん 39歳)
・鳴きバッタ共にいと美しケンタギター(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・夏休み宿題終わらずバッタバタ(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・バッタ跳ぶホップステップ大ジャンプ(ペンネーム「はなちゃん」さん 43歳)
・恐妻家オンブバッタを羨望し(ペンネーム「Dr. でぶ」さん 46歳)
・バッタ追いホップステップ孫も跳ぶ(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・キチキチを捕り過ぎ籠はキッチキチ(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・庭仕事猛暑で手抜き葉にバッタ(ペンネーム「キューちゃん」さん 62歳)
・風に乗り君の背中にオンブバッタ(ペンネーム「是多」さん 64歳)
・跳びバッタ信号無視の交差点(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・田んぼ道置いた図鑑にバッタ乗り(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・バッタ捕り子は後ろから父は前(ペンネーム「東広島の七十爺」さん 75歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年8月1日(水)

第95回 お題「金魚」(選と評 谷村秀格先生)
総評

この度の西日本豪雨災害のお見舞いを心より申し上げます。
災害報道を優先させていただいた関係で、放送及び結果の発表が、延期になりましたことをお詫び申し上げます。

今回も全国から沢山の句を頂き感謝を申し上げます。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです。

以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の「星の信号機」はモノ(情景)にしっかり託し詠んだ8才の秀作。
入賞句の「青空」は立体感あるのびやかな句。
入賞句の「反戦画家」は、取り合わせのつり合いのよい句。
特選Aは入賞候補として残しておいた句。
特選Bは原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
実在の「金魚」ではなく、あきらかに洋服の柄などの金魚などを詠んでいると思われるものなどは、残念ながら選外にさせていただきました。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「琉金や夜空に星の信号機」(ペンネーム「モッツァレラ2号」さん 8歳)

金魚鉢の置かれた夏の夜の窓辺からの情景を詠んだ句であろうか。
優雅な「琉金」と「星」の織りなす絵本世界のような光景やイメージが美しく、作者、あるいは金魚鉢に閉じこめられた「琉金」が、かなたの「星」をしみじみと感じている夏の夜のムードが趣き深い。
どこかしら、眼前の「琉金」に自分自身を重ね見て、遠くの好きな人(星)を思っているという恋の句のようにも感じ取れる。
この句の良いところは「星の信号機」。
これが「星のきらめき」などであれば、好きの人に憧れているのかなという程度であるが、「信号機」であるから、作者はそこに「進める・進めない」など、なんらかのメッセージ性を覚えているのである。
「進める」としても、金魚鉢の中の「琉金(作者)」にとっては、飛び出すことは命がけ。
それは、恋の葛藤・告白を迷う気持ち・好きな人を思う気持ち、などではないか。
一見、幻想的な句のようであるが、句をめくってゆくたびにそのような事情が感じ取れてきて、その最奥に置かれた作者の恋の葛藤のような心情が共感を誘う。
句の表面の言葉に直接気持を表さず、モノ(情景)に上手く「託し詠み」した将来恐るべしの8才の佳句。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
はっとした実感を迷わず掴む。

入賞

「青空に雲ひとつあり金魚玉」(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)

さわやかでのびやかな一句である。
「金魚玉」はまるいガラスの金魚鉢のことで、軒に吊るして金魚をめでたり涼やかさを演出したりするもの。
縁側にひっくりかえって、田舎の広い夏空に心遊ばしている作者の様子が浮かんでくる。
背後に広がる「青空」、ぽっこり浮かぶ綿菓子のような白い「雲」、そして近景の「金魚玉」、というふうに眼前の世界に、自由自在に心を行き交わせている作者ののびやかな心境が、共感を誘う。
この句のよいところは絵画的な世界観。
背景の空(青・静)、遠景の雲(白・動)、近景の金魚玉(赤・ちらつき)、の織りなす立体感・色彩感が実に明瞭で美しい。
かっちりとした構図の写生句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
立体感をもたせる。

「和金魚や反戦画家の旅続く」(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 70歳)

「和金」は金魚掬いで見られる一般的な金魚。
「反戦画家」の描いた「和金」の絵を詠んだ句ともとれるが、それでは季語の実在が希薄なので、夏祭りの金魚を眺めているとき、ふと広島の夏を実感し詠んだ句ととる。
8月となり、広島も今年も原爆の日を迎えるが、広島に住む人々にとっては何年たっても夏と原爆のイメージは切り離せない強烈なものである。
そのような気分や、全世界から戦争がなくなるまで活動を続けてゆくというという画家の気概、そしてそれに共感する作者の気持ちなどが、「続く」という現在形の表現(動き・活動)にうまく託されている。
また、華やかな琉金ではなく素朴な「和金」なので、「反戦画家」の地道な息の長い活動との釣り合いもよくとれている。
ちなみに、「和金魚」という言葉は「和金」に対する作者の造語であろう。
この句の場合そこまでの傷ではないが、できるだけ造語は避けるようにしたほうがいい。
平和な世が訪れ「旅」が終わることを祈るばかりである。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
つかずはなれずのイメージ(モノ)を取りあわせる。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・ブラジャーを外し昼寝の金魚かな(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※大阪北部地震の後、夜も服を着て休んでいます。夜中に続いた余震が怖かったので。朝、着替える時の一瞬の光景を詠みました。水害の日に東広島に帰る予定でした。新幹線が運休になっていなかったら、私も被害に遭っていました。今度、いつ、俳句道場を見られるほど広島に穏やかな生活が戻るのかと今日も祈り続けます。
→続く災害で、眠るときも不安な方も多かろう。しかしながら俳句は一句そのものから立ち上がるイメージを味わうもの。その意味では大変コケティッシュな世界観である。「ブラジャー・金魚」などの女性的なイメージが強すぎるところがやや惜しいがオリジナルな実感が大変すぐれている。お元気で次回の投句もお待ちしております。

・琉金やゆらり逃げゆく山手線(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※「金魚」、3音の季語でつくるの難しい・・。
→山手線に金魚が泳いでいるという句ではなく、「金魚」と「山手線」のそれぞれのイメージを取り合わせた句である。異質なモノ同士ながら両者の揺れながら進む姿がよく似ており、そういうところが「つかず離れず」の気分をかもしだしていて上手い。しかしながら、「琉金↔ゆらり↔逃げ行く↔山手線」のそれぞれ前後の言葉の関係性がありきたりで。そのあたりが今後の課題になろう。

・引越して玻璃に戸惑う金魚かな(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
※我が家の近くの新築住宅に7月1日に引っ越して来た家族、荷物を運んでる状況の句です。
→名人に至るまでさまざまな世界観や詠みぶりを見せてくれた作者であるが、この句は大変控えめであり素朴。俳味(おかしさ)の世界であるが、「~して~する」というような説明表現を避け「琉金の玻璃に戸惑う新居かな」などとすれば一段スッキリしそうである。参考に。

入選句

特選A(入賞候補)

・鱗から藻に隠れたる出目金魚(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→一見平凡な写生句のようであるができている。「鱗から藻に隠れたる」が素晴らしい発見である。俳句は何も大きな感動や変わったことを詠まなくともいい。このように小さな発見、できるだけオリジナルな発見を掴んでくればいい世界なのである。佳句。

・緋の金魚その色水に溶けるまで(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→この方の弱点はどこまでいっても散文的発想(イメージを言葉にする)から離れられないことであるのだが、この句の場合はできている。大変進境の感じられる句である。しつこくたたみかけるような表現妖が艶な世界観とよくマッチしており、女の情念のようなものがしっかり感じ取れてきて共感を誘う。やはり借り物ではない自分の実感を自分の言葉で表現することが大切である。無意識から詠むこの方向で。好句・佳句。

・金魚描く色鉛筆を買いに行く(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→金魚の存在感が少し乏しいところが惜しいが、俳句の短さを逆手にとって軽快に詠んであるところに進展がみられる。俳句は何も大きな感動を詠まなくともいい。このように小さな発見、できるだけオリジナルな発見を掴んでくれはいい世界なのである。この方向で。好句。

・ガラス鉢膨張してゆく黒出目金(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→膨張してゆくのは「ガラス鉢・出目金の腹・出目金の目」。夏の楽し気な気分・期待感をモノの様子(情景)に上手く託し詠みした一句。好句。

・ジャズバーのしずかに泳ぐ金魚かな(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
→「ジャズバー・金魚」、このキャスティングだけでおおよそ成功している句である。「しずかに」が一句の気分として意外性がなく安易なので、そこを攻めたい。好句。

・白無垢に淡き紅さす金魚かな(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→結婚式の句というよりは、「白無垢・金魚」の取り合わせの句ととりたい。女性的な気分が出すぎているところが少々くどいがなかなか美しい。これも一句であろう。 好句

・金魚玉付箋の増える旅の本(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→軒につりさげられた「金魚玉」を眺めつつ旅行の本をめくっているのであろう。「金魚玉」その向こうに見える大きな空に、高まる旅へのワクワク感が上手く託されている。好句・佳句。

特選B

・金魚の目うみの鯨の黒さかな(ペンネーム「青海也緒」さん 36歳)
→「金魚・鯨」の取り合わせの句であるが、やや意図的な対比が惜しい。俳句は短いので作為やテクニックで詠むとそれこそが鑑賞の邪魔になってくる。頭で作らず無意識からの作句を心掛けるようにしたい。モノに託す方向はよい。

・金魚飼う空になりおる祖母の家(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→俳味の句であろうか。「なりおる」と作者が言っているところが惜しい。こういうところを「金魚飼う空にぶつかる祖母の家」など、モノ(情景)に語らせるのが俳句なのである。そこが課題。

・琉金の尾鰭に透る仁王門(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→大きな気分の句で詠みもなかなか。ここまでくると舌頭千転「琉金の鰭すきとおる仁王門」などすっきりとさせたくなる。なかなかの佳句。

・献血やパッチワークの金魚たち(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→「献血・パッチワーク(キルト)・金魚」この三者の意外性ある組み合わせが手柄。惜しいのは布の「金魚」と捉えられてしまいそうなところ。「琉金やキルト模様の献血所」など、実在の「金魚」をしっかり打ち出して詠みたい。

・灯されてもみ合う真夜の金魚かな(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→エロス・情念の気分がよく出た句。上五が抽象的というかいわずもがななので「真夜中の匂いもみあう金魚かな」などと整えたい。参考に。好句。

・屋敷跡記憶失くした金魚かな(ペンネーム「ゆきんこ」さん 60歳)
→ムードのある句なのであるが、どこか詠みがやや追い付いていない印象である。脚本(言いたい事)よりも「キャスティング(モノ)」に重心を置くようにしたい。そこが課題。

・金魚吊る軒に岩雲泳ぎけり(ペンネーム「松廣李子」さん 63歳)
→のびやかな気分の句。上五は金魚玉のことであろうがやや強引な印象。「金魚玉岩雲ひとつ」などと素直にうちだす方がよいだろう。しかし「金魚」ではなく「岩雲」を泳がせたのは手柄。モノ(情景)に託すこの方向で。

・金魚飼うダンスホールの腓かな(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→なかなかムードの出た句であるが、「金魚・ダンスホール・腓」という女性的なイメージで押しすぎなところがややくどい。「琉金やダンスホールの靴の音」など、もう少し軽く詠んで、イメージのバランスを取りたい。参考に。

・金魚鉢施設の母のひとり言(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
→言いたい事はよくわかる。「金魚鉢・施設」の意外性は詩になる条件をもっているが、後半にゆくにしたがって大変ありきたりな表現になっているところが惜しい。「金魚鉢施設の母のくちひらく」など、大胆に把握してみたい。参考に。

・金魚売り遠く流れて子守唄(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
→どこか懐かしい気分の句。中七が言葉に溺れているというかたるんだ表現で惜しい。「聞こえてきたる」など実感を素直に詠んでみたい。参考に。

・一葉の机の脇の金魚鉢(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
→「一葉」は樋口一葉のことであろうか。気分はよく分かるのであるが「一葉・机・脇・金魚鉢」この隣合う語と語の関係がどれも平凡になってしまっていて惜しい。「一葉の机欠けたる金魚鉢」など、日常を詠む場合は、意外性・批評精神をもって詠むようにしたい。語と語の関係性のどこかに飛躍がんないと詩になりにくいであろう。参考に。

・雨の夜や素顔に戻る金魚売(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→私は「俳句にならない語はない。俳句にならない語と語の関係性があるだけである」とよく言うが、やはり語と語の関係がありきたりであるところが惜しい。「雨の夜の素顔もみ合う金魚かな」など、最初の発想にとらわれず、素材を活かして詩にもっていきたい。参考に。

・帯締に留まる金魚の尾鰭かな(ペンネーム「ありんす」さん)
→現実的には「帯締」に金魚が「留まる」はずはないのであるが、「金魚」はをデザインのことだと現実に引き寄せて解釈するのは早急である。こう詠まれて違和感がないのが面白い。この日常と非日常のはざまに心遊ばせている作者ののびやかな心境が楽しい。詩的真実の句ととる。

入選A

・けだるさや祭りの後の金魚鉢(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
→ストレートな詠み方である。「けだるさや」など作者が直接語るのではなく、「波打つや祭りの後の金魚鉢」など、モノ(情景)に託して詠むようにしたい。参考に。

・蝉時雨水草かき分け舞う金魚(ペンネーム「アップル」さん 35歳)
→全体的に言葉に酔いしれているような詠み方が一番惜しい。「蟬時雨」との季重なりもやや気になるがので素材から再考したほうがあろう。実感をしっかり持っているところはよい。

・兵児帯のほどけるごとに金魚ゆれ(ペンネーム「さきのすけ」さん 35歳)
→「俳句はこう詠むもの」という先入観で詠んでいるような飛躍しきれないもどかしさをどうも感じる。何よりモノ(情景)ではなく「~した」という出来事を詠んでいるところが惜しい。脚本(出来事)からキャスティング(モノ・情景)への視座の転換が急務である。

・ゆらゆらと天女の如く舞う金魚(ペンネーム「へやま」さん 37歳)
→金魚を金魚らしく詠みましたという句で、そこが物足りない。俳句は「イメージ(現実・らしさ)を言葉にする」のではなく「言葉がイメージを導く世界(言葉が先)」の世界なのである。金魚と何かを取りあわせて詠むなど、視座の転換が必要であろう。

・しづかなる猫の眼光出目金魚(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→韻文ではなく散文の強引な省略であること、一句の世界観がありきたりであることが惜しい。このあたりは作者の宿題としておこう。仮名遣いは現在使われ将来も使われる仮名遣いを採用して不足はないはずなので、俳句道場では「現代仮名遣い」を使うようにしてほしい。

・他国から集まる仲間金魚君(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
→「異国から仲間あつまる金魚かな」などと詠めば、一段すっきりする。子供っぽさ・散文的な詠み方を改めたい。参考に。

・金魚飼うをんな撫でをり硝子越し(ペンネーム「蓼科川奈」さん 43歳)
→ムードの出た句。少々詠みに慣れていないようなところが惜しい。「金魚飼う女の撫でる窓ガラス」などと整理すると一段よくなりそうである。参考に。

・三歳児金魚掬いて空を見る(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
→タダゴトのようであるが「空を見る」というところによく実感が出ている。脚本(出来事)ではなく、キャスティング(モノ)で詠む方向に重心を移すとさらによくなりそうな方である。

・水草の木漏れ日の下金魚棲む(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
→金魚を金魚らしく詠んだ句である。ということは逆に言えばすべて「金魚」のイメージに収斂されてくるということ。「らしく詠む」ことは俳句(詩的言語)においてあまりメリットがない。季語を説明せず、モノのキャスティングにチャレンジされたい。

・吹く風や水面たゆたう金魚玉(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→なかなか詩的な表現なのであるが、「金魚玉」を「金魚玉」らしく詠んだだけの句ですべて「金魚玉」のイメージに収斂される。「らしく詠む」ことは俳句においてメリットがないので、「取り合わせ(モノのキャスティング)」などにチャレンジされたい。

・ブイアールゴーグル覗く金魚かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 47歳)
「ブイアールゴーグル」はVR体験のできるゴーグルで斬新である。しかしながら「ブイアールゴーグル→覗く→金魚」と並べると、→前後の語と語の関係性に飛躍がなく平凡で詩になりにくい。例えば「ブイアールゴーグル枯れる金魚かな」あたりだとまだ詩になりそう。要は「俳句にならない語はない。俳句にならない語と語の関係があるだけである」ということになる。参考に。

・南仏の窓辺にそよぐ金魚かな(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
→場所や光景などの情報が過不足なく入ったきちんとした明るい気分の句であるが、どうも詩の命である実感がどこにも感じられないのであるず惜しい。例えば一文字一文字が下手でも思いっきり書いた書の作品が心を打つように、技法や型やテクニックなどではなく、無意識からの実感こそを(小さくともいいので)大事にしたい。

・大気圏窓にはりつく金魚かな(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→ロケットの中の「金魚」を詠んだ句であろうか。あるいは大胆な取り合わせであろうか。前者の句とすればやや説明的だし、後者だとすればやや離れすぎな印象。これに懲りず、自身の実感を自身の言葉で大胆に詠んでいってほしい。

・水面揺れ□き口の金魚かな(ペンネーム「洒落神戸」さん 51歳)
→俳句の本領は言葉からイメージされる世界にあるのであって、ファッションではないのだから、記号を多用したり多行にしたり旧仮名にしたりなど見た目にこだわらないことである。しかしながら「四角き口」というオリジナルな発見は見事。「水面ゆれ」はいわずもがななので「飛行雲四角き口の金魚かな」など、最初の発想(脚本)にとらわれず、大胆に詩にもっていきたい。

・金魚ぷかり星屑ひとつはきだして(ペンネーム「オカ・カシオ」さん 53歳)
→詩的な表現ではあるが散文的である。俳句は短歌のように長さがないので脚本・説明・出来事は苦手なのである。よって最初の発想にとらわれず「星屑のひとつ死にゆく金魚かな」など、もっとモノ(情景)に重心をかけて、象徴的に詠むようにしたい。

・窓の鉢空と金魚が浮遊する(ペンネーム「さゆりん」さん 56歳)
→窓辺の光景を詠んでいるのはわかるが「窓・鉢、空・金魚」とモノが多いからかので少し整理してポイントを絞りたい。

・抜け殻となりて金魚の浮く朝(ペンネーム「都乃あざみ」さん 56歳)
→死んだ金魚の様子を詠んだ句であろう。少し説明的なので、「琉金の腹さかさまの昼の月」など、その抜け殻のような気分をモノ(情景)に託して詠みたい。参考に。

・バス停のビニール袋の金魚かな(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→情報は過不足なく入っているのだが、傍観であるところが惜しい。やはり実感が置いてけぼりになっているようである。「バス停の忘れられたる金魚かな」など、実感ある世界、あるいは対象と一体となって詠みたい。参考に。

・想い出を数多手に乗せ金魚埋む(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
→優しさの出た句であるが、前半が観念的・主観の出すぎで惜しい。「白雲のひとつ手に乗せ金魚埋む」など、俳句はこういうところをモノ(情景)に託したい。参考に。

・片隅の金魚に餌やりつつ母偲ぶ(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
→寂しさが出ているのであるが、「偲ぶ」は作者が直接語っているところ。「流金の影しずみゆく母の顔」など、こういうところをなんとかモノ(情景)に託したい。参考に。

・金魚連れ単身赴任する男(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→ドラマのワンシーンのような光景が印象的でひきつけるが、出来事(脚本)を詠んだ句であるところが惜しい。モノ(キャスティング)に重心をもっていくようにしたい。

・琉金の振袖揺らしゆらゆらと(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→気分は出ているのであるが、詠みが追い付いていない。「振袖のゆらめいている金魚かな」くらいなら整うが全体的にありふれたイメージ。やはり「らしく詠む」のではなく、ありきたりをさけて詠むようにしたい。

・プールから金魚連れ去る土曜市(ペンネーム「東広島の七十爺」さん 75歳)
→少しはっとするできた句なのであるが、「~から~する」という説明表現になっているところが惜しい。「少年の金魚連れ去る土曜市」など、最初の発想にとらわれず 思い切り詠んでみたい。

・金魚田や江戸の風情の残る場所(ペンネーム「かっちゃん」さん 77歳)
→雰囲気・響きは俳句らしいのであるが、すべてが「金魚田」に収斂され惜しい。特に「江戸の風情の残る」というのは、作者が語っているところなので、「下町の街の匂いや金魚池」など、モノ(情景)に語らせるようにしたい。参考に。

・一人居の祖母になつきし金魚かな(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
→こちらの句も上と同様である。「らしく詠んいる」句なので、ありきたりであるところがどことなく惜しい。取り合わせなどを用いてもう少し大胆に詠みたい。

・縁日の記憶は黒の金魚かな(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
→実感がしっかりあるのであるが、表現が追い付いておらず惜しい。「縁日の影たどりつつ黒出目金」など、その気分をなんとなくでいいので、モノ(情景)に語らせるようにしたい。

・風鈴の音にでめ金も顔を上げ(名前なし)
→「風鈴」との季重なりがどうのいうのではなく、説明的で詠みが追い付いていない「風鈴の口ひらきつつ黒出目金」など、最初の意味や発想にとらわれず素材を活かして整えたい。参考に。

入選B

・庭先いぬ吠え迫る夏金魚(ペンネーム「オビ=ワン」さん 20歳)
・カップルで金魚すくい恋すくう(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
・落とし物テントいき苦しき金魚(ペンネーム「竹伍」さん 26歳)
・金魚鉢通さぬ世界に恋い焦がれ(ペンネーム「大福ママ」さん 28歳)
・金魚鉢終点駅に紅を差し(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
・金魚鉢スイスイ泳ぐ金魚かな(ペンネーム「一幸」さん 31歳)
・神泡に金魚の宴ぷぷっぴどぅ〜♪(ペンネーム「すいかレンジャー」さん 30歳)
・金魚には鉢の広さが地球です(ペンネーム「大野美波」さん 31歳)
・思春期の恋に似たるや金魚の尾(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
・花魁の金魚化粧の濃き金魚(ペンネーム「ぐ」さん 35歳)
・靴音はすでに表の金魚売(ペンネーム「登るひと」さん 35歳)
・金魚跳ね闇の境内石畳(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・隠微なる尾の金魚いる診療所(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
・金魚ばち3匹仲良く水曜日(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・赤ヘルの金魚の尾ひれ悠々と(ペンネーム「ふくろう」さん 40歳)
・金魚達浴衣いっぱい泳いでる(ペンネーム「よこたん」さん 41歳)
・金魚鉢涼やかなるが伝われり(ペンネーム「HK」さん 42歳)
・アロワナに食われる金魚生きる理由(ペンネーム「中岡秀次」さん 42歳)
・夏休み金魚すくい楽しいな(ペンネーム「タケちゃん」さん 43歳)
・水槽に出目金並ぶ仲間達(ペンネーム「マリオネットキヨタカ」さん 43歳)
・艶やかな金魚掬いて浴衣美人(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・君想い水面にあぶく恋金魚(ペンネーム「ショコラ」さん 44歳)
・キラキラと穴からのぞむ金魚波(ペンネーム「りりー」さん 44歳)
・かず君が金魚の世話上手だ(ペンネーム「わた」さん 45歳)
・青空の特別付録金魚玉(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・長生きは幸か不幸か金魚玉(ペンネーム「腹胃壮」さん 48歳)
・軒下のガラスの金魚見上げる目(ペンネーム「もじこ」さん 49歳)
・触れそうで触れもしないで金魚かな(ペンネーム「でこ」さん 52歳)
・生き残り良く言われない金魚かな(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・夏の夜の秘密隠すよ金魚の尾(ペンネーム「茉莉花」さん 54歳)
・らんちゅうやスポットライト朝六時(ペンネーム「雅」さん 55歳)
・夏祭り金魚すくいはお手のもの(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・ただいまの声に躍れよ屑金魚(ペンネーム「吉良水里」さん 56歳)
・金魚埋め忘れてしまふ庭のあり(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
・金魚草更紗ゆらゆら我が心(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・ライト浴び尾ゆらす金魚客誘う(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・金魚飼う物干し二段おしめ揺れ(ペンネーム「徳」さん 58歳)
・耳残る昭和の風情金魚売り(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
・フィルム越し流し目誰に金魚かな(ペンネーム「ラジャーナイン」さん 61歳)
・追ひ詰めて心苦しく得し金魚(ペンネーム「安田 蝸牛」さん 61歳)
・飼えなくて川へ流したあの金魚(ペンネーム「瑠緒ママ」さん 62歳)
・金魚姫空飛ぶ鯉に大変身(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・神の手にあっと掬われ夜の金魚(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・眠れなく夜半涼取る金魚玉(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
・蘭鋳をまじまじ見てる他人の顔(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
・らんちゅうは稚魚から1年ベビーまだ?(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・金魚さんあばれる河川沈めてよ(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・くず金魚ポイを破いて逃げ回る(ペンネーム「ヤチ代」さん 69歳)
・路地沿いの金魚と風鈴吊しのぶ(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
・試験月上田秋成金魚玉(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・サッカーの勝ち負け決める金魚かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・ポイ突破大河で龍となれ金魚(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 73歳)
・金魚には泳いでみたき海のあり(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
・寄り道の夜店に咲いた朱い金魚(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
・綿菓子と金魚とポイと踊りの輪(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・水槽の金魚留守番駄菓子屋に(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
・ボウフラが金魚鉢で餌になり(ペンネーム「隣のばあちゃん」さん 77歳)
・浴衣着て汗びっしょりで金魚追う(ペンネーム「tokusansan」さん 83歳)
・大海は逃した魚金魚にし(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

ユニー句(句)

・金魚飼う名前付けるがみな同じ(ペンネーム「きりん」さん 30歳)
・お祭りで金魚すくえずポイをポイ(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・金魚すくい思いきりはねてお隣さん(ペンネーム「彩の助」さん 44歳)
・優雅だな金魚2匹の恋ダンス(ペンネーム「テレビ派ソラシド」さん 47歳)
・今日の愚痴金魚にこぼす四畳半(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・ゆらゆらと金魚まいにち日曜日(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・餌もらい金魚にもある人見知り(ペンネーム「やんちゃん」さん 57歳)
・金魚鉢見上げ金魚に見下ろされ(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・縁日の金魚にジョッキ乗っ取られ(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・金魚掬い浴衣の娘が気にかかり(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・幼子やポイ破れても金魚追う(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年6月20日(水)

第94回 お題「蟻」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回も全国から沢山の句を頂き感謝を申し上げます。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです。

以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句は、大小の対比の効いた詩的真実の句。
入賞句の「マスゲーム」は、批評精神と俳味の効いた句。
入賞句の「病床」は、希望・喜びを美しくさわやかに読み上げた一句。
特選Aは入賞候補として残っていた句。
特選Bは原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが(ココロ・出来事)が先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「俯せの太陽背負う蟻の首」(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)

多くの人はこのような句を見たときに、「俯せなのは蟻だ」とどうしても現実に引き寄せて解釈するのであるが、もしそうであれば「太陽背負う俯せの蟻の首」と詠めばよい。
そうすれば意味もしっかり通り、内容にあった破調の迫力も出て一般的には立派な句になる。
このような俳句が出てきたときに、上記のように添削してしまう先生もいるであろう。
しかしながらそうすると、意味や内容の分かりやすさ(論理)と引き換えに、詩としてもっとも大事な「感動・実感」が失われ、抜け殻のような傍観の句になってしまう。
この句の場合、何と言われようと「俯せ」なのは書かれてあるとおり「太陽」でなければならない。
地面にべったり貼りつく熱く大きな「太陽」、それを一身に背負うか細い「蟻の首」だからこそ、「夏のすさまじさや小さな命の生命力」が実感されるのである。
さらに注目すべきは、人間が感覚的に把握できるもっとも大きなものの象徴である「太陽」を、もっとも小さなものの象徴である「蟻の首」がしっかり受け止めている点である。
すなわち現実的には釣り合うはずのない力関係を一句の中で拮抗させている「詩的真実」である。
これによって句から、「カタチあるすべてのモノは仏となる性質をもっている(空海)」ではないが、例えば大も小もなくその「本質は同じ」というような真理のようなものまでもが感じ取れてきて、共感を誘う。
見えるもの(太陽・蟻・A)を詠むことで見えない世界(真実・非A)を伝える奥行きのある宇宙流の見事な一句。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
俳句は詩であり韻文。論理や意味にとらわれず「無意識からの表現」を大切にする。

入賞

「マスゲーム東へ西へ蟻走る」(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)

「マスゲーム」とは多くの人が集まってダンスや体操などを行う一斉競技のこと。
集団行動の象徴のような「蟻」に思いを馳せていたら「マスゲーム」が不意に浮かび「これだ」と思われたのであろう。
「マスゲームと蟻たちのイメージの重なりの面白さ」、そこまで実感できれば俳句は詠めたも当然で、575の器にポンと盛ればよい。
すると後はただ読者がイメージを楽しむ時間、となるわけである。
「蟻の様子をマスゲームのように捉えた句」ととれなくもないが、そうであればいかにも浅い。
そうではなく、人間社会を「マスゲーム」と捉え、何かに翻弄されるそのせわしなさを「走る」あたりで詠んだ「批評精神」の句ととりたいし、この句のよさもそこにある。
また「東へ西へ」と、現実から飛躍して空間を大きく表現した「大胆な詩的把握」にある。
表面的には、「マスゲーム」をする人間たちと集団行動をとる「蟻」の様子が似ていることのおかしさが詠まれているのであるが、味わっているとおかしさを通り越した人間社会の愚かさまで感じ取れてきてドキッとさせられる。
自分の意志で行動していると思っている人間たちであるが、流行や広告などに流されているだけだったり、欲望のままに走り回っているだけだったりと、それは例えば無条件に甘いものに群がってせわしなく動き回っている「蟻」たちの様子とあまり変わりがないのかもしれない。
平凡な句のようでいて批評精神と俳味(おかしさ)に溢れた真実を伝える軽妙な一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
俳句のおかしさ面白さは詠もうとして詠むものではなく、結果として滲みでる。

「病床の風を入れ替ふ蟻の道」(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)

なんともさわやかで美しい一句である。
現実的には衛生的な病室に蟻の列はそぐわないので、自宅療養あたりでの句となりそう、などと、必死に現実に寄せて解釈したがる方も多いであろうが、「上五中七」と「蟻の道」を取りあわせた句として味わえばどちらでも問題ない。
解釈というものは良いと思うほうにとればいいので、ここでは、「蟻」の黒が生きる白のイメージが強い病室での句ととる。
作者はどちらかと言えば現実に即した手堅い伝統的な詠み方をする方。
過去の選評でも「詩にもかかわらず現実を現実のままに詠んでいて惜しい」などと厳しいことを述べてきたのであるが、この句には大変な進境が見てとれる。
気持ちが塞いでしまいがちになる病室、その窓がパッと開かれ風が入れかわるさわやかさ。
窓や「風」のイメージによるものであろうが、「蟻の道」が床や地面などではなく、なぜか部屋の窓から天のかなたに向けて続いてゆくような気分が感じ取れてきて、実に明るい。
「入れ替ふ」という響きも「蟻の動き・鼓動・生命力」に合っている。
直接感じることのできない「生への希望・喜び・生命力というような(虚)」を、しっかりと見える「蟻の道(実)」によって、美しく伝えている世界観が共感を誘う。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
実(見える世界)は虚(見えない世界)のためにある。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・蟻の道少し先行く父の顔(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※昔は似ていないと思っていましたが、だんだん似ている事に気づき、同じ道を通っているのだと思います。
→進境が感じられる句。作者の意図のように解釈するのは少々厳しいがそうとれなくもない。いずれにしても上五・下五のつり合いがよく、中七の詠みなど甘いところが影を潜めた。このようにモノとモノの関係性に重心を置いて詠まれるとよいであろう。佳句。

・夏空や蟻の這い出す人工島(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※子供時代、私の町では瀬戸大橋を作る工事が長年に渡り行われました。大きな事故もありました。土を掘り海を埋め巨大な建造物を作り出す。容赦ない夏空、労働者の姿。
→「夏空」に象徴される古今なく悠遠な風景から一転、「人工島」から這い出す「蟻」がなんとも考えさせられる。役者(モノ)はそろっているので、解釈はそれぞれの読者にゆだねればいいであろう。ちなみに「夏空」も「蟻」も季語なのであるが気にならない。上手い句である。佳句。

・蟻の列明朝体で絡まりて(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※蟻のお題が出たので観察していたら蟻の集団が明朝体の集まったものに見えてきてまるで幼児番組のアニメみたいだと思いました。
→面白い把握である。私の句の「うすごおり明朝体の乳房かな」が思い起こされた。この句の場合どこか座りが悪い。「蟻・明朝体」と役者はそろっているので舌頭千転してみたい。「明朝体からまっている蟻の列」など。参考に。

入選句

特選A

・蟻塚に射し込む星の停留所(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→星が蟻塚を停留所としているというような意味の句であろうか。いずれにしてもそのメルヘンチックな世界観が美しい。好句。

・緑青や蟻かたわらに蔦のびて(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
→緑青は銅が酸化し生成される青緑色の錆のこと。銅像をそのようにうに表現したのはたしかに面白いのであるが、やはり少し抽象的なようである。しかしそうかと言って「銅像や」では味気ない。このあたりの関係性をどうするか。作者の課題としておこう。ちなみに「蔦」は秋であるが問題ない。

・黒蟻の行きつ戻りつ朝刊紙面(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→大変おもろい句である。下五の字余りも大変気分が出ている。どこかしら類想感があるのが惜しかったか。好句。

・蟻や影映して夜の枕もと(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
→上五あたりの把握など、借り物ではない自分の実感・自分の表現を大事にしようとしている姿勢が伝わるすばらしい句である。このように役者がそろった(蟻・影・夜・枕)場合は、言いたい事にとらわれず舌頭千転したい。「蟻の影はりつく夜の枕かな」あたりでも気分が出そう。

・蟻の列飛騨天領へ続く道(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→「蟻・列・道」の重なりがつきすぎというか現実に重心をかけてしまっていてやや惜しかったが、骨格のしっかりしたカッチリした詠みぶりに安心感がある。佳句。

・たまに狂う母が見ている夜の蟻(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→認知症の母を詠んだ句なのであろうが、何かしら女の情念のようなものまで感じられてくる。「母が」は「母の」くらいのほうがよさそうであるが、このくらいの詠み手であればその好みにまかせよう。

・一匹の蟻に傾く大伽藍(ペンネーム「ありんす」さん 83歳)
→大小の対比の句。どことなく「蟻の穴から堤も崩れる」ということわざが連想されてくるところや類想感が少し気になる。で詠み方は上手い。

特選B

・大蟻の黒くひかりて夏の空(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
→季重なりがどうこうというより、どうも全体的に類想感があるところが惜しい。自分だけの実感を掬うようにしてみたい。

・病室のこぼれ薬に蟻二匹(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
→なかなか象徴的な句である。中七が「~に」と説明的なので、作者の意図とは少し違うかもしれないが「病室の薬こぼるる蟻二匹」など響きを整えてみたい。

・蟻の穴言いたいことが溢れ出す(ペンネーム「登るひと」さん 35歳)
→面白い把握で成立している句であるが、やはりこのような直接的な表現は俳句では控え、モノに語らせるようにしたい。

・蟻の道飲み込んでゆく飛行船(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→蟻の道と飛行船、実風景か心象か取り合わせか、いずれにしてもこののびやかな気分が楽しい一句。

・蟻の列完成したるピラミッド(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→ピラミッド建設に向かう列を蟻の列と重ね見たという句であろうが、そういった理屈的・意図的・作為的なところを引っ込めたい。俳句は短いので作為を出すとそれが鑑賞の邪魔になってしまうのである。無意識から詠むようにすればさらによくなりそうである。

・太陽の色を吸い込み蟻の穴(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→なかなか面白い世界観である。sかし「穴。吸い込む」はやはり日常の言葉の展開で飛躍がない。少し類想感があるのも気になるところ。そのあたりが課題であろうか。

・蟻の列見つめ続けて午睡して(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→どことなくぎこちない詠み方であるが、借り物ではない自分の言葉で表現しようとしているところが大変よい。しかしながら「~して~する」と普通の文章のような表現をとっているところをどうにかしないといけない。こういう方は詠んだ句の意味にとらわれず、句中のモノで再度リズムを整えるとか、取り合わせを試してみるとよいであろう。

・スタートラインゆるり横切る蟻の列(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
→なかなか気分の出た句であるが、「ゆるり横切る」が惜しい。「ゆるり」などを持ち出すところに作為が感じられて鑑賞の邪魔になる。「スタートライン横切ってゆく蟻の尻」など素直に詠むほうがよさそうである。

・大空のエンジン音や蟻の群れ(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→天地の対比であるが、この場合エンジン音の存在が具体性に乏しく惜しい。「戦闘機空にはりつく蟻の群れ」などしっかりとモノを打ち出して詠むようにしたい。

・蟻の列またいで鬼女の帰る家(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
→どことなく昔ばなしのワンシーンのような句で、蟻の列と鬼女、その関係性を読み解く面白がある。しかしながら「~して~する~」と、モノのキャスティングではなく脚本を書いてしまっているところがこの句の弱さ。俳句は短いので短歌的発想を捨てなければいけない。そのあたりが課題。

・独り居に雲の流れて蟻の列(ペンネーム「そら」さん 58歳)
→気分の出た句である。説明をさけ響きやムードを優先した韻文の立場で句を詠んでいるところがよい。「独り居の」とすればさらによくなりそうである。この方向で。

・サバンナの空行く風や蟻の道(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→私の随分昔の句に「サバンナを駆ける旅ありホウセンカ」があったと思うが想起された。「サバンナ・蟻」まではなかなかのキャスティングなのであるが「サバンナ・空・風」とたたみかけられるとイメージが重すぎである。そのあたりのつり合いがとれるとよくなるであろう。

・天穹の継ぎ目に向かう蟻の列(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→大きな句なのであるが、俳句で大事なのは何が詠まれてあるかではなく、詠み方・効果である。その意味で「列・向かう」という措辞の展開が、どうにもあたり前で詩にならず惜しい。「天穹の継ぎ目はためく蟻の列」などなら言葉の展開に意外性があり詩になる。参考に。

・足跡を万里に残す蟻の群れ(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→どことなくできているようで全体的に惜しい句である。やはり「万里」だけでは具体性に乏しいので、意図とは違うかもしれないが「万里の長城」など具体的なモノを出したい。「足跡・残す・群れ」などの言葉の展開も当たり前なので気をつけたい。このあたりが分かるようになれば進歩である。ここからの句である。

・奇兵隊の案内板に蟻九匹(ペンネーム「東広島の七十爺」さん 75歳)
→なかなかしっかりしたモノ句である。句としてはここまでできたら「奇兵隊の案内板や」と切って整えてみたい。この方向で。

入選A

・ありのすやむしぱん切っただんめん図(ペンネーム「モッツァレラ2号」さん 8歳)
→発見の句である。この方向で。

・太陽を背負う就活蟻の列(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
→気分はよく出ているが、意図的・作為的で惜しい。無意識からの作句を心掛けたい。

・蟻の列眠らない都市の住人(ペンネーム「皓月」さん 18歳)
→俳句は短歌ではないので言いたい事や気持を詠むのは苦手である。何かを言おうとせず、モノに語らせること。モノに託して詠むようにすること。

・通学路どこに向かうや蟻の列(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
→「どこに向かうや」は作者の言葉、これをなんとなくでもモノに語らせたのである。「通学路東に向かう蟻の列」など。

・苔茂る石段に蟻来たる去る(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
→「下五」の詠み方が面白い。しかして現実をそのまま報告したようなところが惜しい。詩なので飛躍したモノの関係性をみてみたい。

・独房の畳の隙間蟻の列(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→俳句で大事なのは、何が詠まれてあるかではなくどういう効果を生んでいるかである。その意味で独房であろうとレストランであろうとそれは問題ではない。この句の問題は詠み方である。「独房の畳の隙間(をゆく)蟻の列(がある)」とすれば分かるであろうか。このような舌足らずな措辞は散文の省略であり韻文ではない。「独房の畳の匂う蟻の列」などなら分かる。そのあたりの感覚をつかむことが急がれよう。

・山蟻や花を手向ける空近し(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→美しい世界であるが、大事なのは一句の効果である。その意味でモノに託して詠むというよりは脚本的になっているところが惜しい。

・栄誉礼受ける女王と蟻一頭(ペンネーム「中岡秀次」さん 42歳)
→かっちり詠んであるのであるが、感動の在処がどうもよく伝わらない。傍観ではなく対象とひとつになって詠むようにしたい。

・首傾げ蟻は空へとひとりごと(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→全体的に説明的・脚本的で惜しい。作者が蟻を語るのではなく、蟻(モノの様子)に語らせるようにしたいのである。

・波止釣りの竿先に蟻潮を待つ(ペンネーム「今日も晴れ」さん 43歳)
→全体的に説明的なのが惜しかったが、楽しい気分がよく出ている。

・だまし絵の階段静か蟻の列(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
→だまし絵と蟻はよいキャスティングであるが、詠みが韻文になっていないのと、作者が「静か」と語ってしまっているのが惜しい。「だまし絵の階段沈む蟻の列」など。モノ(モノの様子)に語らせたい。

・走る蟻赤き夕空見上げずに(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
→モノのキャスティングではなく脚本になっているところが惜しい。

・晴天やコンクリ砕く蟻の顎(ペンネーム「おんちゃん。」さん 51歳)
→「顎・砕く・コンクリ」の関係性が日常的であたりまえで惜しい。

・五月雨の子守唄聴く蟻の家(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
→やはり一句の世界観が観念的であるのと説明的であるところが惜しい。何かを言うのではなく、モノを据えて詠むようにしたい。

・廃線の枕木を行く蟻の列(ペンネーム「「雅」みやび」さん 55歳)
→「廃線・枕木・行く・蟻・列」この言葉の関係性が圧倒的に近く詩にならない。詠んだ翌日などにこういうところを整理してみるとよい。

・沙漠行くキャラバンの影月の蟻(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→「砂漠(を)行くキャラバン(隊)の影(がある)月の(表面にすむ)蟻(のようだ)」的な詠み方は散文の省略の連続であって韻文ではない。それにいろいろ思いや様子を述べるのは短歌までならよいが、短い俳句には向いていないので避けるようにしたい。

・軍服の足並み高し蟻の列(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→句の響きはよさそうであるが、やはり「蟻の列・軍隊」はイメージが近く類想感があり惜しい。

・潮解けて溺れる蟻は捨てておく(ペンネーム「山内彩月」さん 57歳)
→独自の世界観を持っておられるようである。この句はやや観念的で惜しいが、もっと見たみたい方である。

・蟻塚や暑きドバイのビル眩し(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→「蟻塚・ドバイ」はなかなかのキャスティングであるが、「眩しい・暑い」と作者が語ってしまったのが惜しい。こういうところをなんとなくでもモノに語らせるようにしたいのである。「蟻塚やドバイのビルの黒き窓」など。参考に。

・蟻の塚見てたまんまの膝で寝る(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→観念的というか短歌の上の句のようで惜しい。何かを言おうとせず、モノを据えるようにして詠みたい。

・黄昏に蟻の群行く家路かな(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
→こういうところは目をつむっても「黄昏の」としたい。これだけで説明的な気分から解放され詩情磁場が強くなる。

・木もれ陽の清けし線を蟻の列(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→中七など言い過ぎであろう。。原句のような発想は短歌に近い。「木漏れ日をふちどってゆく蟻の列」くらいで詠むのが限界ではないか。

・ぎんが行待合室や蟻の国(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→メルヘンチックな句であるが、俳句で大事なのは何を詠むかではなくどう詠むかである。その意味でこの窮屈な上半身はどうにかしたい。何かを言おうとしないことである。句中の素材を活かすなら「蟻の国たゆたっている銀河かな」などもあるであろう。参考に。

・酩酊の蟻掬ひだす砂糖壺(ペンネーム「あいむ李景」さん 66歳)
→「蟻・砂糖」「壺・掬う」など、世界観が日常的で詩になりにくく惜しい。そのあたりを整理したい。

・絶望の果てに旅立つ蟻の船(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
→気持ちや気分はよく出ているが、やはり言い過ぎである。直接語るのではなく、モノやモノの様子で伝えるようにしたい。

・ビスケットの空缶蟻の城となる(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→「ビスケット・空缶・蟻・城」と並べてみれば、語から語への展開があたり前であることが見て取れよう。もう少し飛躍したモノとモノの関係性で詠むようにしたい。

・甲冑を着込んで蟻のアマゾネス(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→やはり説明であるし、頭でこしらえた意図的な句である。それに「蟻・甲冑・アマゾネス」と並んでしまうとどうしても世界観が近くものたりない。熱心な作者であるので、自分の世界を模索されているのであろうか。

・蟻の道なんとややこしこの世かな(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 70歳)
→前回の大賞句の方向とはちがって全くいただけない。俳句は何度も申し上げているように作者ではなく「モノで語る」ものなのである。

・蟻載せて種子島から飛び立つ日(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
→出来事を述べているのが惜しい。俳句は脚本ではなく、モノとモノのキャスティングと思いたい。

・蟻千匹背負いつ草引く梅雨晴れ間(ペンネーム「みよこ」さん 71歳)
→気分のよく出た句である。このような把握で問題ない。やや日常的なのが惜しいが、まずはこの方向で。

・蟻んこやヒップホップの娘たち(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→独自の把握が光っている。この方向で。

・青天の一日始まり蟻の列(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
→詠みはカッチリしているが中七など説明的でよくない。「青天の先頭を行く蟻の顔」など。参考に。

・蟻の道入校児らの登校路(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
→「蟻・道・路」んどイメージの重なりが惜しかった。そのあたりを気をつけたい。

・蟻の列飛行機雲に続きおり(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→「続いている」というのは説明である。「蟻の列吸い込まれゆく飛行雲」くらいか。

・峠に建つ道路標石蟻走る(ペンネーム「木村善光」さん 82歳)
→少し世界観が日常すぎるがカッチリした詠み方に安心感がある。

・通りすがりのアリ一匹や水曜日(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)
→軽く詠まれてありいいのであるが、感動の在処がよく伝わってこないのが惜しい。水曜日の必然性が感じられない。そこを攻めたい。

・就活や働らき蟻を見るベンチ(ペンネーム「華みづき」さん)
→類想感があるのが惜しい。「働らき」は「働き」でいいだろう。

入選B

・かまきりもアリの大群かなわない(ペンネーム「青りんごくん」さん 13歳)
・虫眼鏡蟻雨宿り梅雨の路地(ペンネーム「ヨーダ」さん 19歳)
・風甘し一万匹の蟻の糞(ペンネーム「竹伍」さん 26歳)
・蟻列すスイカ頬張る子らの下駄(ペンネーム「くまくま」さん 32歳)
・掃きたての畳の上の忙し蟻(ペンネーム「さきのすけ」さん 36歳)
・立ち止まりゆたゆたゆれる蟻の顔(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
・蟻たちがつなぐ未来と思い出よ(ペンネーム「なお」さん 40歳)
・掃除時蟻の活動見つけたり(ペンネーム「HK」さん 42歳)
・蟻の性格は甘い物落とすと違ってくる(ペンネーム「タケちゃん」さん 43歳)
・蟻の句に一生懸けた男達(ペンネーム「マリオネットキヨタカ」さん 43歳)
・賑わいの蟻巣に集い夢語り(ペンネーム「橋田ちゃげ子」さん 43歳)
・蟻動くアイスの棒に群がって(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・足場熱蟻も一匹通さない(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・睡蓮の蟻の声にも雨が降る(ペンネーム「放送きよたか」さん 43歳)
・見かけるよありさんたちって何なのか(ペンネーム「わた」さん 44歳)
・争いの日や知恵比べ蟻の勝ち(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・巣のまわり働き蟻の勇み足(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・蟻浮きし水たまりの波紋かな(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
・甘い罠見つけて集る蟻一派(ペンネーム「ジジププ」さん 48歳)
・スクランブル交差点のなかの蟻(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
・石段や天の届くか蟻の列(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
・見くびるな蟻の一途さひたむきさ(ペンネーム「ナギさん」さん 54歳)
・蟻の巣を壊してみては半笑い(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・大寺や気色だつ蟻ものがたし(ペンネーム「白湯」さん 56歳)
・動くもの吾子追いかけて蟻の穴(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・秋口にせみに亡き骸運ぶ蟻(ペンネーム「やっちゃん」さん 58歳)
・引き抜いた根から吹き出す蟻千匹(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・ちゃぶ台の蟻ひとすじに夏みかん(ペンネーム「ミーママ」さん 60歳)
・砂利の蟻歩みを止める終電車(ペンネーム「ヨシ整体」さん 60歳)
・蟻座どこ首もたげみる風呂上がり(ペンネーム「ラジャーナイン」さん 61歳)
・アリ上る取り残したる梅の実よ(ペンネーム「川柳太郎」さん 61歳)
・あの日旧中島町は蟻も死す(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・紫陽花にアリ雨宿りしとしとと(ペンネーム「ウルトラヤン晃」さん 63歳)
・猛暑日に木陰で涼む蟻一匹(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・蟻の愚痴ひねもすひとり聞いてやる(ペンネーム「松廣李子」さん 63歳)
・蟻たちが元気くれそな昼休み(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・蟻の巣の自由研究ガラス鉢(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
・どうしても蟻にはなれぬ吾であり(ペンネーム「ぐずみ」さん 68歳)
・大蟻が勝手口にて集団で(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・どこまでも夫の仕業アリの行列(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・吾子の眼のこぼれるほどに蟻の列(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・忙しなく競歩よろしく蟻の道(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・首かしげ南国ホテル蟻の大群(ペンネーム「のぶさん」さん 70歳)
・リーダーの資質いかんや蟻の列(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・Baliの蟻帯なる先に飴ひとつ(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・我が畑蟻這い回り地上絵かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・青函や昭和の蟻の遺産かな(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・洗い桶滑りはせぬかはぐれ蟻(ペンネーム「蛍子」さん 75歳)
・勤勉を家訓とするや蟻の道(ペンネーム「かっちゃん」さん 77歳)
・青畳蟻一匹の迷路かな(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
・我も又ふと立ち止まり蟻の道(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・蟻の列蝶浮かべて急ぐかな(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)

ユニー句(句)

・背は高いだけど度胸はありんこよ(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・元気有有田優里香とここに蟻(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・蟻が寄る我が加齢臭甘いのか(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
・イケメンの甘いマスクや蟻まみれ(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・蟻御殿レアなスイーツいただきたい(ペンネーム「青りんごママ」さん 48歳)
・サイン会並ぶ様子は蟻みたい(ペンネーム「はっちゃん」さん 53歳)
・アーリーちゃん 女王蟻には逆らえず(>_<)(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・蟻のよう母に手抜きの無い暮らし(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・駅弁についてる蟻の移動距離(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・ありさんはイヤだ目指すはキリギリス(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・蟻たちに教えて貰う人生観(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・アリ浴びの烏その後アリを喰い(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 73歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年5月30日(水)

第93回 お題「バナナ」(選と評 谷村秀格先生)
総評

この道場では、いわゆる従来的な俳句・教条的な俳句・大衆的な俳句を退け、俳句形式をより働かせようとする清新な句を選んできました。
そしてその芸術性を言語美や発想など表面的なところではなく、モノの本質つまり「句からイメージされる世界(宇宙)」に求めてきました。
私はそのような俳句観を「宇宙流」と呼んでいますが、それが従来の「季語・映像・出来事・日常」べったりの俳句に飽き足らない全国の俳句ファンの受け皿になってきて、小さいコーナーながらも全国各地から投句をいただけるようになってきました。
広島テレビは今春広島駅北口に新社屋が完成し、平和都市広島の新たな情報発信地となったわけですが、俳句での出会いを機に、このコーナーのみならず広島テレビの活動や広島のことを全国の皆さんに知っていただければうれしく思います。

今一度この道場のキーワードを整理しておきましょう。
より以上を目指すから道場の意味があります。
「季語や文法・かなづかいに目くじらを立てるなら国語と変わらない」
「映像だけなら写真と変わらない」
「出来事を詠むだけなら日記と変わらない」
「思いや心情を述べるだけなら演説と変わらない」
「句のよさが説明しきれるものなら、わざわざ句にする必要はない(感じることが大切)」

心得としては、以下となるでしょうか。
「俳句は言いたい事や気持ちをモノに託して詠む『託し詠み』の世界」
「俳句は作者ではなくモノが語る『モノ語り』」
「理屈・論理・意識・作為・教条・常識は天敵」
「俳句は無意識の芸術(無意識が味方)」
「俳句は瞬間芸術」
「見なれた日常の中でも発見はある」
「モノからの気配(そんな気がする)をつかまえる」
「人や本ではなくモノに学ぶ」
「すべてのモノが句材」

この俳句道場で今年マスターしてほしいことを一言で言えば「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の「日照雨」は、日常のふとした非日常感を上手くとらえた句。
入賞句の「機関室」は、海の上の高揚感を上手く詠み込んだ句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

今回も気になったのは、「バナナ」の日常・現実のままに詠まれた句が圧倒的に多かったことです。
何度も申し上げますが、俳句は「詩・芸術」ですから日常・現実にとらわれる必要はありません。
次回は、ステレオタイプにとらわれず「そんな気がした」という瞬間・気分を迷わず句にしていただきたいと願う思う次第です。
また句が出来たら詠みっぱなしにしないことも大切です。
一晩寝かせて改めて読み返してみると、そのとき気づかなかったイメージの重なりなどに気づくこともあるでしょう。
句に問題があった場合、はじめの発想にとらわれず句中のモノを活かして再度詠んでみるのもよいでしょう。
また一句の世界観が日常や現実べったりだなと感じたら、はじめの発想にとらわれず「取り合わせ」で詠んでみるのもよいでしょう。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「ひと房のバナナ吊られて日照雨かな」(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)

「日照雨」は別名「狐の嫁入り」などとも呼ばれ、雨が降っているのに晴れているという気象現象のこと。
私の手元の歳時記には載っていないが、たしか夏の季語とする立場もあるときく。
家族で食べるために買ってきた「バナナ」が部屋に吊るされているのであろう。
家族が仕事や学校などに出かけ、洗濯などの家の掃除も一通りすんだ昼下がり、部屋に吊られた「バナナ」の房越しに窓の外の「日照雨(そばえ)」を眺めている様子を詠んだ句である。
この句の上手いところは立体的な情景描写。
部屋の中に吊るされたバナナ、その向こうの窓、さらにその向こうの雨、そして太陽の光という遠近法のような視覚的世界を、短い文字数の中で美しく描けており、まずもって見事である。
さらに「吊られて」と受け身で抑制的に詠まれてあるところが大変効果的で、これによって作者とバナナが一体となっているかのような気分までをも醸し出しており読者をひきつける。
こういうところに、作者と世界とがひとつに溶け合うような昼下がりのまどろみ、ぽっかり空いた一人の時間に身をゆだねている作者の恍惚感のようなものがよく表れていて共感を誘う。
「俳句はモノ(A)を通して真実(非A)を伝えるもの」とよく言うが、その手本のような象徴性の高い一句である。
句で何かを言いたくて仕方がない方、句をいちいち作り込まなければ気のすまない方もおられようが、俳句はこのように「モノ(バナナ)とモノ(日照雨)の関係に何らかの美を発見したら、そのままポンと放り投げておけばよい」世界なのである。
むしろ、そのほうが読者がイメージして楽しめる句になる。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
俳句は、モノとモの関係に何らかの美を発見したら、そのまま放り投げておけばよい。

入賞

「機関室のバナナ三本膨らめり」(ペンネーム「みなと」さん 74歳)

「機関室」はエンジンルームのこと。
船や飛行機の両方が想起されるが、「バナナ」は海のイメージが合いそうなので、ここではそうとっておく。
船の大小や種類などは読者にゆだねられているが、「機関室」という推進力(パワー)を生み出す場所と「バナナ」という栄養の塊のイメージの取り合わせが絶妙で、海の上の高揚感が大変力強く描かれているところが魅力的である。
それは例えば漁へのやる気や期待感などではないか。
また「バナナ三本膨らめり」という把握も大変よい。
バナナの色についていくら述べられても日常・現実べったりで全く詩にならないが、バナナが息をしているかのように「膨らめり」と詠んだことで詩になった。
「膨らむ幸せ」「膨らむ夢」ではないが、ポジティブな気分や幸福感をあますことなく伝えることに成功している。
このような句を見て「機関室にバナナはおかしい」とか「バナナが膨らむのはおかしい」という現実べったりの方もおられようが、「船室のバナナ三本黒くなり」などと詠んでしまえば、あたりまえのことがあたりまえに伝わるだけで、詩にも何にもなるまい。
詩的真実を上手くつかんだ一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
現実にとらわれず、モノからの気配(そんな気がする・バナナ膨らむ)を迷わず句にする。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・折紙のゾウの駆けだすバナナの日(ペンネーム「あや」さん 50歳)
※バナナの日、調べたら実際あるみたいですね。これはおやつがバナナの日、ぐらいの気持ちで。幼少期の楽しい世界を。
→バナナの日は8月7日だそうである。句はバナナそのものの存在が希薄であるところが惜しいが「バナナ」がテーマでなければ一句がしっかり成立している句なので、応募句の中ではこれを採った。句を直観的に把握した場合「象・バナナ」のイメージが近いが、一句全体の気分が絵本中の世界のようで楽しませる。いずれにしてもモノの力の生きた句である。この方向で。佳句好句輝句。

・青バナナ幼なじみの家の跡(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※久しぶりに実家に帰り、スーパーやご近所巡りをしていたら、すっかり変わった街並みに幼なじみの家の跡を見つけました。そのときの句です。
→憧憬・さみしさの気分の句であろうか。「青・幼」のイメージが近いといえば近いが、それにも増して「青(陽)・跡(陰)のイメージ対比が絶妙。イメージ世界の調和がとれた象徴的で深い句になっている。モノに託すこの方向で。佳句好句輝句。

・木漏れ陽のバナナの幹の戦闘機(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※戦争を知らない世代が増えてきても、知ろうとする若者もおり、まだまだ平和への光はあるなと感じております。
→ある世代の方にとっては「バナナ」は「戦争」のイメージになろうか。その意味で「バナナ・戦闘機」はやや直接的で惜しいが、緊張感の伝わる一句である。

入選句

特選

・島バナナ基地の向こうの青い空(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
→「島・基地・空・バナナ」はイメージの関係性が近いので、一句のイメージのふり幅(横幅)が狭くなり惜しい。モノに託して詠む方向性は大変よいのでこの方向で。いずれにしてもオリジナルな実感(小さくてもよい。蚊の羽音で宇宙を表現できるのが俳句である)をつかむようにしたい。佳句好句。

・南国の甘い夜風やバナナ船(ペンネーム「ASARINA」さん 30歳)
→モノをしっかりと据えて「南国」からやってくる「バナナ船」をムードよく詠んだ。少しメルヘンチックで嗅覚に訴えたのもなかなかである。しかし「南・甘」は「バナナ」のイメージの重なりで惜しい。次回はそのあたりを気をつけたい。

・バナナ熟る満点続く小テスト(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→学校でのシーンか。ご機嫌な気分が「熟る・満点」で伝わる。しかし惜しいのもそこで、気分が出すぎのようである。気分の出すぎは「直接表現」につながるので警戒が必要。まだ「青バナナ満点つづく小テスト」など、イメージのふり幅(対比)を広く取るほうが読者が想像力を刺激されて楽しめそうである。参考に。

・バナナ熟れ南国の夜は星ばかり(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→絵本のような「南国」の「夜」の気分が伝わる句である。しかしこの句も「バナナ・南国」「星・夜」「バナナ・熟れ」と、あちらこちらにイメージの重なりがあり惜しい。俳句は短いのでイメージが重ならないほうがいいのである。こういう句は一晩寝かせて整理してみるとよいかもしれない。また最初の発想にとらわれず「取り合わせ」で詠んでみるのもよいだろう。

・旅先の夜に満ちたるバナナの香(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→どんな旅かはわからないが艶っぽい気分の句である。「夜・満ちる・香」が女性的なイメージのステレオタイプで惜しい。また「香」を一番言いたかったのであろうが俳句は言いたい事を言ってしまうと句にならない。私の感覚ではせめて「旅先の夜満ちてくるバナナかな」くらいにもう一段象徴的に詠んでみたいところ。参考に。

・満ちてゆく青きバナナや昼の風(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
→気分はよく出ているのであるが、少し抽象的というか観念寄りなのが惜しかった。こういう場合は最初の発想にとらわれず「取り合わせ(二物衝突)」などで詠み直してみるとよさそうである。

・バナナ船水平線に浮きあがる(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→荒波を乗り越えてやってくるバナナ船の期待感がよく出ている。しかして惜しいのは「船・水平線・浮く」の近しい関係。二つくらいなら他のモノとの関係でつかず離れず位にはなりそうだが、三つ重なるとどれかは避けなければイメージが凝ってしまうであろう。そのあたりを攻めたい。やはり一晩寝かせてみるのがよいか。好句。

・路地裏の窓を照らしぬバナナかな(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→日常の中のふとしたシーンをつかみにいったが、「路地・窓・バナナ」の関係性がやはり近いので感動があまり伝わらず惜しい。また「照らしぬ」と主張を出して強めに詠んでいるのであるが、俳句は意志や作為をできるだけ出さないほうが感情移入できてよい。よって「照らせる」など抑制的に詠んでみたい。

・アトリエの猫の隣のバナナかな(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→「猫」がモデルか「バナナ」がモデルか、いずれにしてもおおらかな気分が共感を誘う一句である。しかしながらすべての世界が「アトリエ」で完結しているのが少し惜しい。俳句は詩なので、現実・日常寄りではなくもう少し飛躍した世界を見てみたいのである。モノに託して詠んでいるところはよい。

・バナナ熟れ南周りの貨物船(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→なんともいえない高揚感の出た句である。全体的にはモノ同士のイメージが近いのが惜しいが、イメージの奥で「バナナ」の曲がりと「貨物船」の航路のイメージがつかず離れず上手くリンクしておりそこまでの傷にはなっていない。佳句好句。

・猫抱くようにバナナ抱くバス通り(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→昼下がりの気だるい気分がよく出た句で面白い。独特の世界観が魅力である。

・落陽やバナナ畑に長い影(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
→余計なことを言わず「バナナ畑」からの実感を素直にとらえた。「長い影」はバナナなのか作者なのかと想像する楽しみがある。惜しいのは「落陽・影」のイメージの関係性が近いところ。こういう場合は詩になりにくいので「落陽・影」どちらかを捨てることも大事であろう。

・一本のバナナ残して母わらう(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→解釈は読者にゆだねられるが実体験を詠んだ句とすれば「介護」などの句になろうか。年を重ね子どものようになってしまった母の様子をただ「バナナ・母わらう」だけで象徴的に伝えていて上手い。意志を加えず対象に託して詠んだところが成功した。この方向で。佳句好句。

・バナナ一枝出張の父持ち帰る(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→お土産のようなバナナであろうか。「出張・父・帰る」あたりの言葉のイメージの重なりが気になるが、「父」がかえってきた喜び・高揚感がよく出ている。

・山盛のバナナ南極観測隊(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→「南極観測隊」が「バナナ」を食べているのであろうか。あるいは「山盛りのバナナ」と「南極観測隊」の取り合わせの句であろうか。後者にとる。「山盛りのバナナ」の様子と「南極観測隊」が基地に寄り集まっている気分との取り合わせが絶妙である。南国のフルーツだけに寒い地との対比もほどよく効いている。二者を強引にぶつけたようなところが少し惜しい気もするがそこまでの傷ではなかろう。好句。

・お見舞いのバナナの房のセロハン紙(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
→着眼が見事な句である。その透明感が句のイメージに軽やかやさ美しさを与えていて、日常を詠みつつも非日常的な気分に誘ってくれる。この方向で。佳句好句。

・シベリアの上空に剥くバナナかな(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→南国のイメージの強い「バナナ」に対極のイメージの「シベリア」をぶつけてきた句である。しかしながらこの句の場合、どうも作為見え惜しい。また感動の在処もよくわからない。もう少し実感のある世界を詠むようにしたい。そこが課題であろう。

・炎天をバナナの並ぶせりの声(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→「炎天」をもってきているので季重なりになるのであるが、「炎天・バナナ・せり」とたたみかけるような詠み方で真夏の「せり」のあつい気分をよく伝えていて上手い。いわゆる上手く託し詠みした句である。この方向で。佳句好句。

・温室の真ん中照らすバナナかな(ペンネーム「ありんす」さん)
→バナナのある温室とは植物園での一句であろうか。やや類想を抜け出ていないもどかしさがあるのが、たわわに実るバナナをシャンデリアのように詠んであるところが面白い。この方向で。

入選A

・黄昏のバナナに聞く夏のこえ(ペンネーム「ペペロンチーノ」さん 19歳)
→寂寥感がよく出ていて共感できる。季重なりは気にならないがリズムが少々気になる。何度も口の中で転がしてみるとよい。

・蒼い海旅立つバナナ風が撫で(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
→旅立ちの気分の句か。詠みが追い付いていないが作者の中にきちんと感動があるのがよい。句のリズムは古今の名句を詠むなり道場の過去の入賞句などを味わうなどしておればそのうち整うであろう。

・カーラジオバナナの踊る潮の風(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→海辺へのドライブでの一句であろうか。中七の詠みが安易というか甘い。そのあたりを攻めたい。

・月へゆくゴンドラとなるバナナかな(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→「月・バナナ」を重ね見たのであるが類想が多い。また言葉は詩的であるが「~へゆく~となる」が散文的・説明的で惜しい。そのあたりを攻めたい。

・実芭蕉をわけあい見せる歯の白さ(ペンネーム「なお」さん 40歳)
→「実芭蕉」はバナナの別名。なんとなく美しい気分であるが「実芭蕉・白さ」など、やや言葉の美・句の表面的な美にもたれて詠んでいるところが惜しい。作者ではなくて、モノに語らせたい。そこが課題であろう。

・ゾウの鼻差し伸べる手のバナナ抱く(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→「ゾウ・バナナ」の関係性が近いので句にするのが難しかったか。しかし中七の「差し伸べる手」に実感が感じられる句になっている。大きい感動でなくてもよいのでこのように自分の本物の実感を詠むようにしたい。

・陽光や照らすバナナの影伸ばし(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
→「陽光・照・影」「影・伸」とイメージがひどく重なっていて惜しいが、モノに託して詠んでいるので何とかカタチになった。そのようなイメージの重なりに敏感になることが大事であろう。一晩句を寝かせて翌日眺めてみるのもよいだろう。参考に。

・寛ぎと賑わいの街バナナ行く(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→前半抽象的に詠んでいるところが惜しいが、一句の気分はよく出ている。「バナナ→行く」という言葉の関係が成功している。この方向でよい。

・ボクシング発祥の地やバナナ熟る(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→切れ字で切って感慨を示しているのであるが、俳句では作者が感慨を直接述べるうような表現はさけたい。こういう助言はパラダイムの転換になるのであろうが、モノからの気配(そんな気がする)にカタチを与えるようにしたいのである。

・バナナ裂く飛行機雲の右曲がり(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
→上から詠んでゆくと非日常感があっていいのであるが、下五「右曲がり」がどうにも惜しい。「バナナ・曲がり」が当たり前の関係だから、手品のタネあかしをされたようでがっかりしてしまうのである。こういうところは目をつぶっても「曲がる」など「バナナ」との近しいイメージは避けるようにしたい。方向性はよい。

・独り敗戦の報せバナナは甘く(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→兵士の気分であろうか。しかし「敗戦の知らせ・バナナ」だけならまだしも「独り・甘く」とそれぞれを修飾するようにさらに言葉がくっついてきてるので盛り込み過ぎ・言い過ぎになって惜しい。やはり作者が言いたい事を言うのではなくモノに託すようにしなければいけない。そこが課題である。

・引率の腰丈並ぶバナナかな(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→先生の立場での遠足の気分を詠んだものか。しかし「引率の腰丈」が分かりにくく惜しい。素直に「遠足の子供ら並ぶバナナかな」などのほうがいいであろう。

・あぐらかきバナナほうばる二歳の児(ペンネーム「「雅」みやび」さん 55歳)
→全体的に「~して~する」と説明的なところが惜しいが、抑制の効いた俳味のある句である。モノ同士の世界観が近いのでそれを避けるようにしたい。

・波に乗るウクレレの音バナナの香(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→倒置法のような句であるが、俳句は短いので結局その作為が鑑賞の邪魔になって成功しない。こういう場合、目をつぶっても「ウクレレの音波に乗るバナナかな」くらいで詠むべきであろう。韻文の世界に入ることが大事である。

・バナナ剥き孫に昔を語る母(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
→短歌の上五のような句であるが気分はよく出ている。実感をしっかり詠んでいるからであろう。このようにまずは実感である。それをモノに託して詠んでゆけばよい。

・一陣の風にバナナよもぎとられ(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
→どうも実感が弱い傍観の句であることと、一句の世界観が日常的なのが惜しい。もう少し詩であることを意識して大胆に詠みたい。「取り合わせ」などを試されるのもよいであろう。

・バナナ乗せ島の女の髪豊か(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→南国の気分の句である。下五が手品のタネあかしというか作者の主観的表現で惜しいので、そこを少しセーブして詠んでみたい「バナナ乗せ島の女の髪のいろ」など。

・白い部屋無言で呑み込むバナナかな(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
→解釈はいろいろできそうであるが病室での句であろうか。美しい風景とはうらはらに作者の何かしらの満たされぬ思い、あるいは運命を受け入れざるを得ないような気分が感じ取れてきて共感を誘う。少し思いが先行しすぎた感はあるが心情表出がよくできた句である。詩は自身の中に熱いものをもっていることこそが大事である。それがテクニックや知識や教条などよりも優先される。この方向で。好句。

・受話器越し父にバナナをねだりし日(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
→素直に詠んだ。短歌の上の句のような句であるところと「バナナ」の存在が希薄であるところが惜しいが、まずはここからといったところか。期待したい。

・南国の空ぶら下がるバナナの木(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→気分はあるが、なんせ類想が多いのでどうにもならない。難しい題であったかもしれないが、小さくともよいのできちんと感動のある世界を詠むようにしたい。

・バナナ着く閉じ込められたる陽の香り(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→「バナナ」の気分は出ているのであるが少し中途半端。こういう場合ははじめの発想にとらわれず舌頭千転して詠むようにしたい。「陽の香り閉じこめられてバナナかな」くらいか。

・お見舞いの言葉掛けつつ剥くバナナ(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
→「剥くバナナ」のほうがモノに重心がかかってくるのであるがどうも作為的。そうかといって「バナナ剥く」とすれば「言葉掛けつつ」が言い過ぎに感じられてくる。何かしらの実感が句を救っているようであるが、本質的な問題は日常ありきたりな世界観にありそうである。「取り合わせ」などを試みてもよいかもしれない。

・空港の荷物受けとるバナナ売り(ペンネーム「李子」さん 63歳)
→「空港・荷物・受けとる」と三つ同じようなイメージが重なると詩にもってゆくのはなかなか厳しい。最初の発想にとらわれず、イメージの重なりを避けるて詠むようにしたい。大胆に取り合わせを試みるのもよいであろう。

・実芭蕉や北緯10度の十字星(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→なかなかの句である。惜しいのは中七。説明的な割に「北緯10度」の必然性が読者に伝わらないのである。まだ「実芭蕉の北にかたよる十字星」あたりなどなら詩になりそうである。俳句の難しいところである。

・病葉に我が身重ねて青バナナ(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
→作者自身と病葉を重ね見た句であろうか。「病葉」が季重なりで惜しいというよりも「我が身重ねて」が説明的で惜しい。最初の発想にとらわれず「病葉の影にかさなる青バナナ」などとしてみたい。俳句は言いたいことを伝えるには短いので不向き。気分・雰囲気を伝える、象徴的に詠むということができればそれでよいと思いたい。

・掌の大樹の鼓動青バナナ(ペンネーム「葦たかし」さん 67歳)
→韻文のような見た目をしているがこれは「掌の(中に)大樹の鼓動(を感じる)青バナナ(だなあ)」という散文を強引に省略した句である。つまり「バナナ(モノ)」の本質をよんでいるモノ句ではなく、「鼓動を感じているというコト」を詠んでいるコト句なのである。このような詠み方は流行なのか多いが、韻文の世界に入ってきていただきたいと願う次第である。

・店先の青きバナナの無表情(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→なんとなく出来ていそうな句なのであるが、下五が手品のタネあかしというか上五中七をここですっかり説明してしまって惜しい。こういう場合は「店先の青きバナナや飛行雲」など、切れなどを効果的に使って取りあわせて飛躍したいところである。

・熟れバナナ幼の口のよく動く(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
→楽しい気分はよく出ているのであるが、モノではなく「よく動く」という出来事を詠んだ「コト句」になってしまっていて惜しい。「幼子の口よく動く熟れバナナ」あたりだとバナナに重心が掛かってはくるが、まずは「幼児・バナナ・口」の日常的なモノの世界を飛躍するように詠みたい。「取り合わせ」などを試みてみるのもよいであろう。

・食卓にバナナ四本輪になって(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→楽し気な気分の句であるが「それがどうした」というわれればどうにも説明ができない弱さがある。それはやはり「食卓・バナナ・本」のイメージが近いからである。モノとモノとの飛躍が必要である。「取り合わせ」などを試みてみるのもよいであろう。

・バナナ剥くドレスが靡く飛行雲(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
→華やかな気分の句であるが、「剥く・靡く」と動詞が二つ入ってもたもたしているのが気になる。そのあたりを整理させるといいであろう。

・教室で輸入バナナの嵩比べ(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 75歳)
→楽しい気分の句であるが、説明的なところと教室の日常のままに詠まれてあるところ。もう少し取りあわせて飛躍を楽しみたい。

・祖父の忌や供物の中の房バナナ(ペンネーム「かっちゃん」さん 77歳)
→忌日の句であるがどことなく明るい気分である。課題は仏壇の日常のままに詠まれてあるところ。もっと大胆に飛躍して詠むようにしたい。

入選B

・南国のあまいバットはバナナかな(ペンネーム「you」さん 10歳)
・房で買い家族で頬張るバナナかな(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・朝の光甘いバナナとそよぐ風(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
・砂風呂の育むあんよバナナの香(ペンネーム「竹伍」さん 26歳)
・石畳からんころんとチョコバナナ(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
・汗拭いバナナ頬張る出番前(ペンネーム「蛍風 雫鳥(ケイフウ ナトリ)」さん 29歳)
・幼児がバナナバナナと連呼する(ペンネーム「はますけ」さん 32歳)
・なかよしのバナナの皮と遊びをり(ペンネーム「登るひと」さん 35歳)
・野良の声バナナの皮に滑りけり(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・三日月をみてはたべたくなるバナナ(ペンネーム「青い鳥」さん 38歳)
・とうかさん甘さ引き立つチョコバナナ(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・バナナを食後のデザート楽しめり(ペンネーム「HK」さん 42歳)
・鮭咥え熊の親にもほらバナナ(ペンネーム「マリオネットキヨタカ」さん 43歳)
・朝バナナ母の元気と俺の顔(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・棚並ぶバナナの天使揃い踏み(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・学帽の色は食欲バナナかな(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・お供えのバナナの色が変わるまで(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・画用紙をはみ出るバナナ笑う君(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
・台湾と神戸を繋ぐバナナの香(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
・バナナ剥くどこでもドアの奥に闇(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
・ダイエットバナナブームに効果なし(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・バナナ熟れ帰ってこないブーメラン(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・仏壇のバナナ一本また一本(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
・モノクロの見舞いのバナナパナマ帽(ペンネーム「ラジャーナイン」さん 61歳)
・養生にバナナ一つと祖母見舞う(ペンネーム「安田蝸牛」さん 61歳)
・孫目線空にバナナが浮かんでる(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・好物はバナナよと義母今は亡き(ペンネーム「つくしんぼ」さん 64歳)
・嘘では無いよバナナは昔高級品(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・バナナ止めカリウム値の数値超え(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・手のひらの程のバナナや植物園(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・グローブのごときバナナやいまむかし(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・バナナ一本五人で分けた昭和かな(ペンネーム「みよこ」さん 71歳)
・バナナむく無邪気な孫の手つきかな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・国籍の違いかバナナ格差あり(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・黒ずんだバナナ病室の窓辺に(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 73歳)
・八十四歳バナナの上はなかりけり(ペンネーム「武田弘子」さん 84歳)
・バナナ熟る緑の国が幕間に(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

ユニー句(句)

・半額のバナナ我が手をすり抜けて(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
・バナナ持つもりもりコンビ絵になるね(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・苦かった校庭の芭蕉偽バナナ(ペンネーム「今日も晴れ」さん 43 歳)
・猿といえバナナ好きとは限らない(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・食べながらそのまま寝ちゃう子のバナナ(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・バナナバナナ素直に曲がる成長期(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・雨上がりバナナ重ねて虹ふたつ(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・腸かつ朝の一本バナナ良し!!(ペンネーム「ムッチー」さん 63歳)
・バナナ売りゆるむ腹巻きのぞく臍(ペンネーム「李子」さん 63歳)
・本当だよバナナは昔高級品(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・バナナ一本食べて満塁ホームラン(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
・青空に皮ごと食すそんなバナナ(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・バナナ有りうまい具合に熱の出る(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
・空腹をまずはなだめるバナナ食ぶ(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・国民のそんなバナナと怒る声(ペンネーム「山の手夫人」さん 71歳)
・青バナナ熟成するまで熟睡す(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年5月16日(水)

第92回 お題「薔薇」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「薔薇」。
今回は史上最多の投句を全国各地からいただき、うれしい悲鳴でした。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何も難しいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句の「廃線」は、栄枯盛衰を「薔薇の香り」と「廃線」というモノで見事に「モノ語り(託し詠み)」した句。
入賞句の「つるばら」は、「つるバラ」に上手く心情表出できた句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

今回気になったのは、「薔薇」の固定概念・先入観・常識・日常のままに詠まれた句が圧倒的に多かったことです。
何度も申し上げますが、俳句は詩ですから、ステレオタイプ(先入観・固定概念)や現実・事実にとらわれる必要はありません。
むしろ「事実は真実を遮断し、真実は事実を超越する」ものとも言えます。
次回は、ステレオタイプにとらわれず「そんな気がした」という瞬間・気分を迷わず句にしていただきたいと願う思う次第です。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「廃線や薔薇の香りの昼さがり」(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)

ぶらりと訪れた廃線の駅でのシーンが連想される。
かつてにぎわっていた路線・駅、その近くに植えられた薔薇の香りが漂っているという句である。
秀逸なのは、「薔薇の香り」。
「香り(臭覚)」を全面に打ち出し、薔薇の視覚的なイメージを一段奥に引っ込めて詠んでいるところが面白い。
詠まれてみればこのとおり、田舎の寂しげに広がる風景と、あたりに広がってゆく香りの気分とが、とてもよく調和しているのが感じ取れる。
またこう詠まれると、読者としては必然的に「薔薇の香り」をイメージしたくなるのであるが、そうすればするほど「廃線」との対比で、寂しさやもの悲しさが余計に引き立ち、一句の雰囲気にひきつけられる。
これが「廃線や薔薇咲き誇る昼下がり」など、視覚中心に詠まれておれば、原句に比べてどうも作為的・意図的である。
人の世の栄枯盛衰の気分を、堂々とモノに語らせたイメージの調和のとれた「モノ語り(託し詠み)」の一句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
主観を排して抑制的に詠む。

入賞

「つるバラや長方形の庭ざわざわと」(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)

「庭のつるバラ」を読んだ句である。
しっかりしたカタチのある「長方形の庭」と、カタチの曖昧な「つるバラ」が「ざわざわと」アメーバーのように増殖してゆく という対比がよく効いた句で、その効果により、無限に増殖してゆく「つるバラ」の強い生命力を鮮やかに描いているところが見事である。
なかでも「ざわざわと」が効果的で心情表出が充分。
表面的には「庭のつるバラ」の生い茂る生命力、その不穏な空気・あやしいまでの妖艶さ・神秘性を詠んでいるのであるが、ひいては作者の胸騒ぎ・落ち着かない様子・強い衝動のようなものまでも感じ取れてきて共感を誘う。
それは、作者が対象と一体となってを句に詠んでいるからにほかなるまい。
若々しい一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
カタチの曖昧なもの(つるバラ)としっかりしたカタチ(長方形の庭)の対比。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・呼鈴の震わす空や薔薇の垣(ペンネーム「大福ママ」さん 54歳)
※呼び鈴を押す時はいつもドキドキします。それは、家の中だけではなく辺り一面に響き渡るから。まるで空まで届きそうな気がします。
→初代俳句名人。身辺にいろいろあったようで久しぶりの登場。この句の意図を読めば分かるように非常に繊細でデリケートな方。だからこそその鋭敏な感性が読者をひきつける。「呼鈴の震わす空」とはなかなかの詠めない実感である。しかし「震わす」と意志を打ち出して詠むよりも「ふるえる」とモノの様子に託して軽く詠んだほうが読者が感情移入しやすそうである。舌頭千転といったところか。「呼鈴のふるえる空や垣の薔薇」「呼鈴の空ふるえだす垣の薔薇」など。俳句の古い体質に染まらず清新な世界を今後も是非見せていただきたい。

・廃娼の街へもたれる薔薇の雨(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※近隣にある古い歓楽地にて退廃的な女性の香りのイメージで。
→二代目の俳句名人で私の立場に近い方。名人になられてからもますます措辞の斡旋に長けてきており将来恐るべしの存在である。この句は「薔薇」に女性的なイメージをかぎつけるとこがややステレオタイプであるが、この句の場合直接女性は出てこないのでそこまでの傷ではなさそうである。何より「もたれる」が絶妙で心情表出が充分。佳句好句である。

・校庭の風上に向く蒼き薔薇(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※思春期の子どもの真っすぐさと純粋さを句に込めました。
→三代目の俳句名人。素直な詠み方が得意である。この句の場合「校庭・風・薔薇」のモノとモノのイメージが日常べったりというかありきたりでやや惜しい。宇宙は広いので、もう少し飛躍した取りあわせを楽しんでみたいものである。しかし俳句は中七で崩れるものが圧倒的に多いが、その点はさすが俳句形式に慣れていてしっかりしている。

入選句

特選

・やわらかき光さすバラ番外地(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
→「番外地」がよく効いている。「番外地」はその響きからか少し寂しいイメージであるが、反対のイメージの「バラ」をもってきたことでイメージの世界の調和がとれた。全体的に言葉の選択が安易に感じられるところが惜しいのでそこが課題だろう。次回も挑戦を!

・裏路地の空を打ち抜く赤き薔薇(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→散歩道での一句であろうか。中七の実感が一句を救っているが、「路地・空・赤・薔薇」など、モノとモノの関係性に飛躍がないのが惜しい。それが課題であろう。次回も挑戦を!

・姿勢よきバラ新体操のリボン(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→「バラ・新体操」の取り合わせの句。なかなかなのだが、「姿勢よき」と主観を出したのが惜しかった。俳句ではこのような主観的な表現は避けたほうがいい。そこが課題である。次回も挑戦を!

・夕川に薔薇の花束揺蕩いぬ(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→夕方の光景でなかなか気分の出た句であるが、「夕・薔薇(赤)、川・揺蕩う、薔薇・花束」あたりのイメージの重なりが味わいを浅くしてしまっているところが惜しい。それが課題であろう。次回も挑戦を!

・死して尚薔薇を左胸に抱き(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→心象風景・英雄のイメージの句であろうか。強い実感が力を与えている。「薔薇」に「死・抱く」はややステレオタイプ。課題はもう少し自己主張を押さえ、モノをしっかり据えて詠むことであろう。好句。

・薔薇一輪色乱れゆく江戸切子(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
→恋心だろうか繊細な女性心理が美しい。モノを全面に据えており頼もしい。俳句がどういう芸術がよくわかっている方である。「薔薇・一輪、薔薇・色、色・切子」などイメージの重なりが気になるといえば気になるがこれも一句であろう。この方向で。佳句・好句。

・衛兵の影踏みにじる薔薇の園(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→外国旅行での句であろうか。中七などの詠み方はなかなかで屈折した心境が上手く表現されている。少し全てのモノ同士の距離・イメージが近く、世界観が現実的すぎていて惜しいが、これはこれで一句。この方向で。佳句。

・薔薇散ってサハラへ沈む日の真っ赤(ペンネーム「でこ」さん 52歳)
→心象句であろうか。「薔薇・サハラ」の取り合わせはなかなかで全体的な気分に共感したので採ったが、とにかく最後の「真っ赤」が惜しい。このような舌足らずな散文的直接的な表現は目をつぶってでも避けなければならない。作者の課題としておこう。

・薔薇の香の散らばっている回り道(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→散歩の句であろうか。中七の表現が秀逸で心情表出がよくできている。しかし「薔薇・道」の関係性がありきたりで惜しい。語と語のありきたりの関係を如何に避けるかが課題。好句。

・詩集読む少女の瞳バラの園(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→一句の気分が美しいので採ったが、見たことのある油絵の風景のようでステレオタイプを抜け出しておらず惜しい。「俳句はだいたいこんなもの」という感覚で詠んでいるようなところがもどかしい。蚊の羽音に宇宙を感じるのが俳句である。モノや言葉の表面的な美に惑わされず、自分の本物の感動を詠むようにしたい。そこが課題であろう。

・薔薇の赤セピアの写真抜けだしぬ(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)
→昔の写真を見ているときの句であろうか。なかなか手慣れた詩的な表現なのであるが、「赤」がいかにも意図的で惜しい。無意識からの表現を心掛けたい。それが課題であろう。

・薔薇香る望遠鏡の大銀河(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→大胆な取りあわせを試みようとする姿勢は大変よい。ここでは「薔薇香る/望遠鏡の大銀河」の取り合わせの句ととる。「銀河」も秋の季語であったと思うが、切れ前後の取り合わせがちぐはぐなところが惜しい。「薔薇」と「銀河」の必然性(感動のポイント)がよくわからないのである。そのあたりを今一度整理されたい。次回も挑戦を!

・文机の薔薇一輪や夜の風(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→句意は明瞭、やや寂し気な気分の句である。モノに託したカッチリとした詠み方に安心感がある。しかし「文机・薔薇・夜風」という世界観が日常の域を出ておらずステレオタイプで惜しい。宇宙は広いのでもっと大胆な取り合わせを見てみたい。

・薔薇風呂や古代ローマの空の色(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
→心象句であろうか。何より時空を超えてのびやかな気分が心地よい。「風呂・古代ローマ」がやや近しく、一句全体がどことなくつきすぎなところが惜しいが、そこまで傷ではなかろう。もっと句を見てみたい方である。この方向で。佳句好句。

・枯れし薔薇元安川を流れゆく(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→実風景か心象句か。しっかりモノに託して詠んだ意味深で感情移入できる句であるが、「枯れし薔薇」がやや作為的に感じられて惜しい。私見ではせめて「薔薇枯れて」くらいにしてみたい。舌頭千転が課題であろう。参考に。佳句。

・垣根越す真紅の薔薇のその行く方(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→自宅か近所の光景を詠んだ句か。「行く方」と方向性というか動きを持たせたようなところが面白く解釈の楽しみがある句である。散文的な詠み方はなんとか改めるようにしたい。

・薔薇咲くや聖母の白き像のもと(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
→おとなしくも大変滋味深く味わい深い句である。「像・薔薇」と来た場合、絶好の詩的素材なので「薔薇・像・心臓」「遠近法」などを振りかざして格好よく詠もうとする場合が多いが、そのような作為・虚栄心のようなものを脇において、ただ対象を写生することに徹して実感をつかもうとしているところがよい。そういうところに作者の人柄や生きざまが感じ取れてくるようで共感を覚える。一番の手柄は「~のもと」。これがよく効いていて、あたかもそこにめがけて「薔薇が咲きに寄ってきている」ようなイメージを醸し出していて神秘的である。一句全体を包み込む宗教的な雰囲気にもよくマッチしている。薔薇の様子に天使の姿が重なってくるようでもある。やや類想感・ステレオタイプであるところ、「薔薇・咲く」「薔薇・白」「聖母・白」などのイメージの重なりが気になるところが惜しかったが、この方向でよい。輝句佳句好句。

・雨粒に紅白混じる薔薇の花(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→庭の光景であろうか。自分なりの実感をなんとか捕まえに行こうとしているところがよい。しかし全体的にややつきすぎなところが惜しいので、もっと大胆に詠むようにしたい。そのあたりが課題であろう。

・薔薇の庭秘密をひとつ葬りぬ(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→詩的で印象的で上手い。世に中にはこのような詠み方もあるのであろうが、観念的な方向に流れそうでやや心配である。例えば後半をどうモノに託すか、そのあたりを課題としておこう。

・母ゴリラ半日目を閉じ薔薇の雨(ペンネーム「じゃすみん」さん 66歳)
→動物園での句であろうか。アンニュイな気分が面白いし独自の視点が生きている。惜しいのは「半日」。作者にとってはしてやったりの発見なのであるが、そういう作為が裏目に出るのが俳句形式の短さ。どこまでも無意識からの作句を心掛けたい。あるいは一晩寝かせてみるのもいいあもしれない。そのあたりが課題であろう。好句。

・宵過ぎの薔薇は逆さに吊られけり(ペンネーム「猫またぎ66」さん 66歳)
→「薔薇」花瓶から抜かれ逆さまに吊られ、ドライフラワーになることによって、永遠の美へ生まれ変わることができる。その「薔薇」の様子に、心身ともにさらなる美・高みを求める女性のイメージや気持ちが重ね合わさるようで、実に妖艶である。「日常を詠む場合はそこに批評精神がなければならない」ということをよくいうが、まさしくそのような一句で、人が見逃してしまいがちなシーンを上手く捉えた。句の調子からどこかしら芭蕉の「道のべの木槿は馬にくはれけり」が想起されるが、他意はあるまい。佳句好句。

・蔓薔薇やアルファベットの郵便受け(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
→蔓薔薇の絡まる郵便受けを見ての句であろうか。卒なくまとめた。しかし対象を傍観して詠んでいるので感動が伝わってこない。モノを詠むのは頼もしいが対象と一体となった実感を詠むのがモノ句である。そのあたりが課題であろう。

・掻き落とす薔薇星雲になる蕾(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→ありきたりを避け批評精神をもって独自の切り口を詠んだ若々しい句である。しかし「~になる」というような強い主観、無理やり前後を対比させたような作為的なところ、「薔薇・蕾」によりイメージが堂々巡りしているところが惜しい。作句とはいうものの、俳句はやはり頭(意識)でこしらえるものではなく、無意識からこみ上げてくるものと心得たい。読者は作者のテクニックを見たいのでも技法に感心したいのでも意図を知りたいのでもなく、ただ感じたいのである。句の表面で変わったことをしようとするのではなく、対象からの「そんな気がする」に迷わずカタチを与えてほしいのである。「掻き落とす薔薇の蕾や大星雲」くらいで詠む方が素直な印象であるし、原句の気分も出ているであろう。舌頭千転といったところか。

・薔薇園やア−チをくぐる車いす(ペンネーム「秋月なおと」さん 70歳)
→句意は明瞭。惜しいのは世界観がどうもありきたりで平凡の域を出ていないこと。日常を詠む場合はそこに批評精神がほしいの。そこが課題であろう。

・夕薔薇や月のしずくをひそと吸い(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
→心象句であろうか。なかなか詩的な気分である。しかして「夕・薔薇・月・しずく・吸う」など盛りだくさんなので少し情報を整理したい。「枯れてゆく薔薇の雫や夕の月」など。

・白薔薇の頬染めてゆく朝日かな(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→実感の伴ったはつらつとしたなかなかの句である。「白薔薇の」で軽く切れた句と解釈してもいいし、「白薔薇の頬」と続いている句とってもよい。いずれにしても自分なりの感動をしっかり読んでいるところが大変よい。この方向で。佳句好句。

・薔薇香る庭の向こうに杖ひとつ(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
→三句前の「車椅子」の句と近い世界であろうか。卒なく詠んでいるのであるが、平凡ありきたりな日常詠で説明的なところが惜しい。もう少し大胆に詠んでみたい。

・つるばらやクリーム色の夕まぐれ(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→実風景からの句であろうか。「クリーム色」というオリジナルな実感が素晴らしい。眼前の光景と溶け合っていくような作者の気分やまどろみをよく捉えている。この方向で。佳句好句。

入選A

・赤い薔薇ハート型したイヤリング(ペンネーム「モッツァレラ2号」さん 8歳)
→なかなかの句である。語順を「イヤリングハート型した赤い薔薇」にするとさらに印象的になりそう。

・赤い薔薇しあわせ運ぶ青い鳥(ペンネーム「モッツァレラ1号」さん 17歳)
→「赤・青」の対比が作為的で惜しい。また中七のような直接表現は避けて、モノに託して詠むようにしたい。

・薔薇風呂や肩より下の闇隠す(ペンネーム「竹伍」さん 26歳)
→なかなか面白い句。後半が少し説明的なので、モノをもっと打ち出して詠むようにしたい。

・君去りて一輪残る薔薇祭り(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
→さみしさがよく出た句。「~して~する」と説明的なところが惜しい。

・薔薇咲いた笑顔も咲いた通学路(ペンネーム「はますけ」さん 32歳)
→楽しい句であるがリフレインが惜しい。テクニックに溺れず無意識からの作句を心得たい。

・バラさんにハイハイしよる子とおせんぼ(ペンネーム「丸アレン」さん 34歳)
→俳句形式に慣れてくるとさらによくなりそう。「しよる」という方言風の言い回しに臨場感が感じられる。

・教室の一輪挿しの薔薇かな(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
→印象的な句。全体的に薔薇のステレオタイプで詠まれてあるところが惜しい。モノとモノの関係性をもっと飛躍したい。

・薔薇開くときを待ちたり今朝の水(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→期待感が伝わる句。全体的に薔薇のステレオタイプであるところと、モノではなくで出来事を詠んだコト句であるところが惜しい。「今朝の水薔薇それぞれに動き出す」など、参考に。

・一輪の薔薇翻車魚のフラメンコ(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→「薔薇・翻車魚(まんぼう)」の取り合わせは絶妙なのだが、「一輪・薔薇・フラメンコ」のイメージの重なりが惜しい。そのあたりを整理したい。

・おしゃべりの異国めく鳥薔薇の花(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→「おしゃべりの異国めく鳥」は、響きは美しいがイメージの重なりであり言い過ぎの表現であろう。句の表面で何かのをするのではなく、モノに託して象徴的に詠み、イメージされる世界に美を置きたい。

・歌声は異国の香り薔薇の垣(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 48歳)
→華麗な句である。薔薇を薔薇らしく詠むことに終始するのではなくて、薔薇を通して真実を詠むようにしたい。

・曇天の咽ぶ薔薇の香砂利の道(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
→思いのこもった句であるが、舌頭千転。もう少しモノを整理して詠んでみたい。

・碧い惑星六十億の青い薔薇(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→青で押した句。美しいが作為的・説明的なところが惜しい。入賞句あたりが参考になろう。

・ワンルームの薔薇1厘のコップかな(ペンネーム「腹胃壮」さん 48歳)
→どうも部屋の中の日常をそのまま詠んだだけの傍観の句のようで感動がない。対象と一体となって自分の感動を詠むようにしたい。

・薔薇一輪引越し業者の忘れ物(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
→宇宙は広いのにすべての物が部屋の中のイメージで構成されているので、世界観が狭くどこか物足りない。そこを攻めてほしい。

・玄関のすみに一輪薔薇の花(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
→何らかの感動は感じられるが、薔薇のステレオタイプの句である。また宇宙は広いのにすべての物が部屋の中のイメージで構成されているので、世界観が狭くどこか物足りない。そこを攻めてほしい。

・下駄箱で揺れて微笑む薔薇二輪(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
→傍観の句で感動があまり伝わらない。また宇宙は広いのにすべての物が部屋の中のイメージで構成されているので、世界観が狭くどこか物足りない。そこを攻めてほしい。

・一輪の薔薇と語らい一人膳(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
→寂しさはよく出ているが、説明的である。また宇宙は広いのにすべての物が部屋の中のイメージで構成されているので、世界観が狭くどこか物足りない。そこを攻めてほしい。

・パレードやフラ舞い踊る薔薇の海(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
→華やかさは伝わるが、「パレード・フラ・薔薇」はやはりステレオタイプ。大胆にモノを取りあわせて詩をつむぎたい。

・桃色の薔薇の花香る梅雨の空(ペンネーム「りんの」さん 58歳)
→季重なりや盛り込み過ぎが少し気になる。そのあたりを避けたい。

・つる薔薇の中に忘れた花鋏(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
→なんらかの実感を感じるが、宇宙は広いのに「薔薇」周辺のことばかりが詠まれていて物足りない。詩なので事実より真実を詠うようにしたい。「つる薔薇の中にはびこる地軸かな」など。

・三日月の贄なる薔薇の尖りおり(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
→一見美的な表現であるが、薔薇(A)をA’あたりでで詠んでいるので、薔薇のステレオタイプ・ありきたりを出ていない。句の表面で何か言おうとするのではなく、モノの力を信じて象徴的に詠むようにしたい。

・ティラノサウルス踏ミツケル薔薇ノ棘(ペンネーム「ラジャーナイン」さん 61歳)
→大胆な句であるが、何を詠むかではなくどう詠むかが大事である。その意味で「ティラノサウルス→踏ミツケル→薔薇→棘」という→前後の語と語の関係性がいたって平凡で惜しい。蚊の羽音に宇宙を感じるのが俳句と心得たい。

・母想い便りに添えた薔薇の花(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
→母を恋う気分の出た句であるが、説明的なところが惜しい。

・抱かれてなければ狂う真夜の薔薇(ペンネーム「李子」さん 63歳)
→なまめかしい句であるが、全体的に直接的な表現が惜しい。そういうことを直接言わずにモノに託して詠むようにしたい。

・白薔薇や今ウエディングフォト届く(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→おめでたい句である。しかし薔薇のステレオタイプであり、世界観が日常平凡で惜しい。句は事実を詠んだものかもしれないが、読者は事実を知りたいのではなく、句からただ何かを感じたいのである。日常を詠む場合はそこに批評精神がほしい。「ウエディングフォトすきとおる白薔薇」あたりなら何とか詩になりそう。

・朝露の宝石まとい赤き薔薇(ペンネーム「戦国命」さん 65歳)
→「朝露・宝石・赤・薔薇」と並んでしまうとすべてきらびやかなイメージだらけになってしまいつきすぎである。「朝露(秋)」との季重なりがどうこうというより、イメージの重なりを避けるように詠むようにしたい。

・野ばら咲く弾んで通るランドセル(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
→なかなか気分の出た句である。どこかしら類想感が漂うところが惜しいが、この方向でよい。

・薔薇垣に羽音と赤い三輪車(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→なにかしらの実感がともなった句であるが、詠みが追い付いていない。「赤」は不要であろう。モノを放り投げたようなところが惜しいのでもうすこしそのあたりを整理して詠みたい。

・バラ祭り老若男女の集う街(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
→素直なのであるが、やはり傍観の句でそこが惜しい。もう少し自信の感動を詠むようにしたい。

・白薔薇が母の残り香消して行く(ペンネーム「みよこ」さん 71歳)
→実感の句なのであるが、詠みが説明的で追い付いていない。「母の香の消えてゆきたる白薔薇」くらいか。

・薔薇の門くぐり再婚話来る(ペンネーム「吞田」さん 71歳)
→おめでたい句であるが、「再婚話来る」は出来事を詠んだコト句であり惜しい。モノに託した世界で詠むようにしたい。

・一輪の薔薇食卓に飾りけり(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
→傍観の句で感動があまり伝わらない。また宇宙は広いのにすべての物が部屋の中のイメージで構成されているので、世界観が狭くどこか物足りない。そこを攻めてほしい。

・ベランダにばらの蕾空明けて(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
→なかなか気分の出た句であるが、全体的に散文的なところが惜しい。

・生き生きと友の晩年薔薇育つ(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→咲くでも香るでもなく「育つ」が独自の把握でよい。こういう詠み方もあるが、ここでは原則直接詠みは採用しない。モノにしっかり託して象徴的に詠むようにしたい。

・病室の窓いっぱいの薔薇そよぎ(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→こういうところは目をつむっても「そよぐ」としたい。中七がやや安易なので「病室の窓の四隅や薔薇香る」など。参考に。

・爆心地アンネの薔薇の息遣い(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
→広島の気分の出た句。「息遣い」がやや作為的。「脈打てり」くらいの実感で詠んでみたい。

・一本の白きバラ剪る息づかい(ペンネーム「ありんす」さん)
→美しい薔薇を切る緊張感であろうか。しかし「息づかい」と言われては、上五中七のタネあかしをされたようで惜しい。「一本の白きバラ剪る飛行雲」あたりで句にしたい。参考に。

・一時間に一本のバス白薔薇(ペンネーム「木村善光」さん)
→一時間薔薇を眺めていたのであろうかゆったりした句である。しかし説明的・散文的な舌足らずな表現が惜しいので改めたい。

入選B

・初夏に咲くあなただけに薔薇1輪(ペンネーム「ケロロ」さん 19歳)
・美しき赤い薔薇にはトゲがある(ペンネーム「ぴょんこ」さん 19歳)
・雲流れ噂話と午後の薔薇(ペンネーム「藤堂星羅」さん 21歳)
・初夏に咲く色とりどりの薔薇の花(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・薔薇の花棘が心を踊らせる(ペンネーム「マルソルニティアース」さん 24歳)
・赤い薔薇世界を結ぶ聖火の炎(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
・バラの花手が届きそう福山の(ペンネーム「彼女大好きな彼氏」さん 24歳)
・あの人は見返り美人薔薇の様(ペンネーム「俳句君」さん 31歳)
・幸せな薔薇色の人生歩みたい(ペンネーム「ねうら」さん 32歳)
・バラの街今年も楽しみ福山市(ペンネーム「なお」さん 36歳)
・初恋は向こうに薔薇とワンピース(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・薔薇を見て、笑顔で写る、ばらまつり(ペンネーム「きみどり」さん 38歳)
・母の日に花束あげたい薔薇の花(ペンネーム「リジ」さん 41歳)
・薔薇の香が初夏の空気運べけり(ペンネーム「HK」さん 42歳)
・バラの苗初めて植えた3人目(ペンネーム「かおりん」さん 43歳)
・薔薇に指す泥にまみれた土俵かな(ペンネーム「マリオネットキヨタカ」さん 43歳)
・猫騙し薔薇の香りハイキック(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・へばりつくチーズの底の薔薇の花(ペンネーム「真改しんかい」さん 43歳)
・ピンク鯉薔薇の香りの贈り物(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・卒業や薔薇の花束広がる希望(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・花屋にて一際目立つ薔薇花弁(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・一方通行の人に薔薇を買ふ(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・薔薇くわえジヤンヌダルクやいざ行かん(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・去年より一輪多い薔薇の束(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
・薔薇花とげを取る手に涙する(ペンネーム「チッチ」さん 56歳)
・ガラスペンきのうの薔薇に色添えて(ペンネーム「インゴット」さん 58歳)
・女王が散る革命や赤き薔薇(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・染まる道あかね空から薔薇花べん(ペンネーム「ヨシ整体」さん 60歳)
・五月雨に打たれ麗し薔薇の花(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
・ヒール折れ美しき薔薇の女のゐる(ペンネーム「松廣李子」さん 63歳)
・早起きしあの娘の机に薔薇束を(ペンネーム「さんちゃん」さん 64歳)
・薔薇のよう君頬染めし華やぎて(ペンネーム「つくしんぼ」さん 64歳)
・薔薇の花びら噛んだが失恋し(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・ほろ酔いの男の右手薔薇の束(ペンネーム「葦たかし」さん 67歳)
・咲き誇る庭の薔薇には母の香が(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・野薔薇原甘い香りに虫憩う(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・シャンプー台かのバラの香空かける(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・紅バラや紫煙に映えてフラメンコ(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・紅薔薇やナンバーワンを主張せり(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・墓参り主無き庭にも咲くや薔薇(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・薔薇園のゲート潜りて息を吸う(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
・幼子や傘のしずくと紅いばら(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
・五年振り駅のホームで咲いたバラ(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 75歳)
・薔薇の露アンネの日記にじませり(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・借景の緑に映ゆる薔薇の園(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)
・バスを待つ薔薇のパラソル子の寝息(ペンネーム「華みづき」さん)

ユニー句(句)

・差し出され頭は真っ白赤い薔薇(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
・いつも薔薇たまにはお金で大丈夫(ペンネーム「さひーん」さん 30歳)
・薔薇の花森本ケンタそのものだ(ペンネーム「赤ヘルのプリンスでありんす」さん 39歳)
・薔薇という漢字をあなたは書けますか(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・とうかさん出店の薔薇に迷う下駄(ペンネーム「今日も晴れ」さん 43歳)
・バラのとげなんであるのかなぞだらけ(ペンネーム「わた」さん 44歳)
・薔薇と書く途中諦めカタカナで(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 46歳)
・薔薇よりも刺々しオカンの小言(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 48歳)
・愛人のピロートークや薔薇の棘(ペンネーム「腹胃壮」さん 48歳)
・家計簿に薔薇一本の文字躍る(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・蔓薔薇や手の付けられぬ吾が娘(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・花束はやっぱり薔薇が最高でーす(^o^)(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・美しい薔薇と妻には棘がある(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・紅き薔薇棘より痛し黒毛虫(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・薔薇組と漢字で書いてる園児かな(ペンネーム「おくにち木実」さん 60歳)
・薔薇の数より棘の数だけの愛(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・夢叶う試行錯誤の青い薔薇(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・我が妻は薔薇に劣らずトゲを持ち(ペンネーム「さんちゃん」さん 64歳)
・誕生日薔薇より団子と妻が言い(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・門の薔薇まず褒められて回覧板(ペンネーム「葦たかし」さん 67歳)
・薔薇祭り笑顔あふれる子供たち(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・金婚の泣いた数だけ薔薇を抱く(ペンネーム「匿名じいさん」さん 73歳)
・豪邸を斜に見ている庭の薔薇(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 75歳)
・バラの花美人の店に買いに行く(ペンネーム「赤ヘル一直線」さん 62歳)
・紅か差す薔薇も待ちわぶホームラン(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年4月18日(水)

第91回 お題「蛙」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「蛙」。
今回も大変多くの投句を頂き、うれしい悲鳴でした。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず、原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句は、作者の強い実感が共感を呼ぶ一句。
入賞句の「朝刊」は、象徴的な詠み方がイメージや解釈の広がりを生んでいる一句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

「蛙」は春の季語、「雨蛙・蟇蛙」などは夏の季語になりますが、ここは季語の知識を問う場ではなく、「お題」周辺を足掛かりに詠んでもらい、一句の芸術性を追及する場と考えますので、いわゆる両生類の「蛙」を詠んであれば、そのあたりはうるさく問うていません。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「雨がえる去年の匂いの白いシャツ」(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)

窓の外は雨なのであろう。
「雨がえる」の声が聞こえる部屋で夏本番に向け「白いシャツ」を取り出したところ、去年の匂いを感じたというのである。
この句の面白さは、読者を自在に現在・過去・未来に行き来させてくれるところ。
「去年の匂い」とあるので、過去がイメージされてくるのはあたり前なのであるが、「雨がえる・白シャツ」の鮮やかな色彩の取りあわせの効果により、大変充実した去年の夏の気分がイメージされてくる。
また、「雨がえる」の元気のよい鳴き声のイメージによるものと思われるが、「白シャツ」を前に、今年の夏のイメージを思い描いている作者の前向きな気分というようなものも、しっかりと感じ取れてくる。
一見落ちついた句のようでいて、実にポジティブなイメージを伝える句である。
このような句を見たとき、俳句の技法本や文法書・歳時記など、「外から与えられた知識」で頭の中が出来上がっている方は、「蛙」は春なのに「雨がえる」という夏を詠んでいいのかとか、「雨がえる」と「白シャツ(夏)」は季重なりではないのか、というようなことが気になって仕方ないであろう。
あるいは、このような句ができた場合、投句せずに引っ込めるという方も多かろう。
しかしながら、詩としてまず求められるのは、「自分の表現で自分のしっかり感じたことが出せているか」であるし、道場で鍛えていただきたいのもそういうセンスである。
この句の場合、この表現でなければ、上記のような豊かなイメージ世界は運ばれてこないわけで、そこを評価したい。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
歳時記など「外から与えられた知識」ではなく、自分の表現を大切にする。

入賞

「朝刊のすみに蛙の指の跡​」(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)

句意は明瞭。
「朝刊」の隅に見つけた「小さな蛙の指の跡」を詠んだ句である。
句には「蛙(春)」と書かれてあるが、イメージとしては「トノサマガエル」などではなく、家の近くでもよく見られる「雨蛙(夏)」の気分であろう。
この句のよいところは、気持ちを直接述べるでもなく、その感動を、ただ光景(モノ)に託して詠んであるところ。
これによって、句に託された事情や作者の心境を読者が自由に探ることができ、楽しい。
また、「蛙の指の跡」という、ありそうでなさそうななさそうでありそうな、その境界線上の光景を見せてくれているところも面白く、それによって読者が、現実世界と非現実世界の二大世界に心遊ばせることができ、のびやかである。
蛙の指跡を見つけた驚き、指跡を見つけた喜び、小さな指跡をかわいらしく思う気持ち、指跡から感じる不穏な気分などはもちろん、その忍者のような蛙の足跡がドラマの始まりのような気分などまで感じさせており、想像は尽きない。
提示された世界(指の跡)は小さいが、イメージされてくる世界のスケールが実に豊かな、象徴性の高い秀格好みの「宇宙流」の一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
日常と非日常の境界を詠む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・氷嚢に夜の揉みあう蟇蛙(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※たぷたぷっと。
→「氷嚢・蟇蛙(夏)」の形態のイメージを重ね見た句であろうか。上五・中七の措辞が優れている。なんらかのエロスのようなものが感じ取れるなまめかしい句である。好句佳句。

・ネクタイの緩んだ空や初蛙(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※急に仕事が休みになり、子どもと公園に行った時の事を句にしました。
→緊張と緩和のある世界観が絶妙である。何かを言うのではなくいわゆる「そんな気分」をうまくつかんだ。「初蛙」もよくあっている。共感を誘う一句。好句。

入選句

特選

・ヒキガエルまだ開けてない貯金箱(ペンネーム「モッツァレラ2号」さん 8歳)
→「ヒキガエル(夏)・貯金箱」の形態を重ね見たものであろうか。この取り合わせのイメージのバランスがいい。惜しいのは「開けてない→貯金箱」という当たり前の言葉展開。しかしてこれだけ象徴的に詠めればよいであろう。この方向で。佳句。

・痩せ蛙飛び出て島が鳴動す(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 37歳)
→「蟻の穴から堤が崩れる」ではないが、小さな現象が大きな結果をもたらす何らかの実感・衝動を詠んだ。中七から下五にかけての意外性がポイントである。やや散文的・説明的なところが引っ込めばさらに良くなるであろう。次回も期待したい。

・蛙鳴く庭に佇む三輪車(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→何かもの悲しい気分の感じ取れる句である。象徴性の高い詠み方でこれはこれで一句なのであるが、欲を言えば「蛙・鳴く・庭・三輪車」と、全てのモノの関係性が日常的なところが詩としては少し物足りない。今後はそのあたりを攻めたい。

・雨蛙ぴょこんと月にへばりつく(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→メルヘンチックな楽しい気分の句である。惜しいのは「雨蛙(夏)・ぴょこん」「雨蛙・へばりつく」が、あたりの当たり前の措辞の展開であるところ。大胆な展開という点は詩の命なので大事にしたい。次回も挑戦を!

・がまカエルぴょんと飛んで自由人(ペンネーム「マリオネットキヨタカ」さん 43歳)
→下五の飛躍・意外性が愉快で詩になった。ただし「ガマガエル(夏)・ぴょんと飛んで」は言わずもがなの表現なので避けたい。俳味の感じられる一句。

・夕蛙じんわり張ったふくらはぎ(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→「今日も一日よく頑張った」という気分がよく出た句。「蛙・ふくらはぎ」「夕・じんわり張る」あたりの語の関係性が近しいところが惜しいといえば惜しいが、これはこれで一句であろう。好句。

・墓石の愛のくぼみにあまがえる(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
→「愛」という文字が掘られた現代風の墓での句であろうか。そう解釈したいが少ししんどそう。素直に「墓石の文字のくぼみや雨蛙(夏)」あたりで詠むほうが自然体であろう。参考に。

・ひんやりと蛙張り付く大動脈(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→実体験だろうか心象風景だろうか、首筋あたりに飛んできた「蛙」がイメージされる。「ひんやり・蛙」の関係性が当たり前なのが惜しいが、首筋などざっくりといわないで「大動脈」とディテールを打ち出したところが上手かった。この方向で。好句。

・夕蛙島のはずれの喫茶店(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→郷愁を感じる句で入賞句の「指の跡」と似た象徴性の高い句である。「夕・はずれ」あたりの言葉の関係がやや近いのが惜しいが、これはこれで一句。佳句

・大輪の薔薇を寝所に青蛙(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
→嘱目句であろうか。こう世界を切り取られるとゴージャスでメルヘンチックな世界観となりで楽しい。「寝床・青蛙(夏)」の関係性が近いのと、「~を~に」と説明的なところがやや惜しい。また俳句では擬音語や擬態語はあまり成功しないものだが、この場合「大輪の薔薇とろとろと青蛙」などだと効果的なようである。「薔薇(夏)」との季重なりは全く問題ない。好句・佳句。

・大空の胎動待つや青蛙(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→なんらかの衝動のようなものを詠み込んだものか。しかして句の上半身がやや観念的で惜しい。「大空の波打っている青蛙(夏)」など、しっかりモノの存在を打ち出して詠みたい。参考に。

・夕蛙線路に重き鞄引く(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
→どういう旅であろうか。句の後半に何らかの屈折した心情や満たされぬ思いがよく出ている。その世界観に共感を覚える。好句。

・水の田の金の眼の蛙かな(ペンネーム「猫またぎ65→66」さん 66歳)
→この方の詠み方や対象の把握は大変優れていて、並々ならぬ才能を感じる。この句も「目」に執着したような詠み方がたまらなくひきつける。ただこの度は全体的にあたりまえのモノとモノとの関係性がやや惜しいかった。好句・佳句。

・鳴き声に夜闇泡立つ蛙かな(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→「夜闇泡立つ」というところがこの句の命。そこに何らかの情念のようなものが表れている。惜しいのは全体的な語と語の関係性が近いとところ。何を詠むかではなくてどう詠むかが大事である。もう少し言葉と言葉の関係性に敏感になるとよくなりそうである。

・蛙鳴く少年は今声変わり(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
→モダンな詠み方なのであるが、下五で手品の種明かしをしてしまっているところが惜しい。また「蛙・声」の関係性は近すぎて詩にならない。そのあたりを再考したい。してみたい。

・東屋に潮の香しきり山蛙(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→大変気分の出た句である。惜しいのは「しきり」の言い過ぎ・力みすぎ。「東屋の潮の香のする山蛙」。このくらいで詠むほうが自然体の印象。参考に。佳句。

・星ゆらしそっと顔出す蛙かな(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→大変みずみずしい感性の句で素晴らしい。この場合「~し~する」と散文的なのところが惜しいが、「星ゆらしそっと顔出す蛙」の天と地の関係性を読者が探れる構造なのがなんとも楽しい。このような飛躍有る展開を今後も期待したい。好句・佳句。

・セロファンの空をひとなめ蛙鳴く(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
→「セロファンの空」が実にみずみずしい感性で優れた把握である。惜しいのは「ひとなめ・蛙」の関係性の近さ。そのあたりを攻めるとワンランクUPしそうである。しかして全体的には大変気分の出た佳句。

・蛙いまグリム童話を飛び出せり(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→「カエルの王様」などを詠んでいる時の実感(心象風景)であろう。この句の良さは、童話から「蛙」が飛び出す「意外性」、想像を裏切って展開する意外性・非日常性。作者の驚きや夢うつつの気分、次元を超越した世界に遊ぶのびやかな心境などが自然と感じ取れてきて共感を誘う。当然のことながら、土の中から飛び出すのではあたり前で詩にならない。多少類想感があるところが惜しいのであるが、このみずみずしい感性をいつまでも大切にしたい。好句。

入選A

・くじびきでいっとうとったよかえるくん(ペンネーム「なほ」さん 5歳)
→「かえるくん」に報告しているのであろうか。「かえるくん」への愛の感じられる句である。この調子でどんどん詠んでほしい。

・祈りにも似たる姿勢の蛙へ陽(ペンネーム「住鳥未来羽」さん 18歳)
→何らかの表現したいものをもっておられるのであるが、俳句形式をまだ自分のものにできていないもどかしさがある。一番気になるのは詩を現実べったりの感覚で捕らえているところ。「蛙・陽」という関係性もあたり前であるし、「祈りにも似たる姿勢」というのは結局は祈っていない普通の蛙。どうして「祈る蛙」ではないのか。こういう場合少なくとも祈ってないと詩にならないであろう。そのあたりが課題。定型でなくてもいいが定型「感」はやはりほしい。流行や俳句界の体質に染まらず自分の詩をうたってほしい。

・玉響夕なる裾野蛙かな(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
→こちらも何らかの表現したいものをもっておられる方である。それをこの短い俳句形式でどうつかむか。「夕蛙」なる季語もあるし、今一度整理されるとよいであろう。次回もみてみたい方である。

・廃校のあさ校長に鳴く蛙(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
→「廃校・朝・校長・蛙」少し盛り込みすぎである。俳句は説明するものでも言いたい事をいうものでもなく、何らかの気分が伝わればいい世界なので「廃校・蛙」あたりにしぼって詠んでみたい。

・遠蛙詩吟講座の父帰る(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→この方は、昔は実にのびのびと自分の詩を詠んでおられたように記憶しているのであるが、最近はいわゆる俳句らしくなって詩を失っているようである。俳句らしさや現実世界にとらわれず自分の心がとらえた実感を自分の言葉で詠むようにしてみてほしい。大いに期待。

・新品のランドセル負う蛙の子(ペンネーム「かおりん工房」さん 43歳)
→明るく楽しい句でメルヘンチックである。「ランドセルを負う」のが人間の子とも「蛙の子」ともとれ面白い。俳句らしさにとらわれない、このようなのびやかな方向をまたみてみたい。

・蛙鳴く沼の畔の夕まぐれ(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→「沼」の気分がよく出ている。しかし「蛙・鳴く・沼・畔」などすべてあたり前の関係性で惜しい。そのあたりを今後どうしてゆくのか。そこが課題である。

・廃校の静けさになく昼蛙(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
→廃校の寂しい気分がよく出た句であり、なおかつそれに反してどこかあたたかさが感じられるところがよい。惜しいのは「静けさ」という直接的な表現、こういうところをモノやモノの様子に託すようにしたい。「廃校の校舎の影や夕蛙」など。「夕・影」も近しいが参考に。

・民宿の硬き寝床や遠蛙(ペンネーム「有瀬こうこ」さん 45歳)
→民宿の気分のよく出た句で詠み方もしっかりしているが、世界観が現実的でややものたりない。さらに飛躍した大胆な詩を詠んでほしい。次回も挑戦を!

・初蛙今年の庭に戻り来る(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→俳味の感じられる句である。全体的にありきたりな世界観であるところが惜しい。また「蛙・戻りくる」はダジャレのようにとられやすく気をつけたい。

・白き腹見上ぐモリアオガエルかな(ペンネーム「しゃれこうべの妻」さん 49歳)
→旅行吟か。蛙の白い腹が発見。しかして全体的にその感動が今一つ伝わってこないのが惜しい。俳句は目ではなく心に映ったものを詠む世界なので、もっと実感のある飛躍した世界を見てみたい。次回も挑戦を!

・園バスの黄色い帽子初蛙(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→春の楽しい気分が伝わる句である。惜しいのは少し光景がありきたりなところ。常識・現実にとらわれず大胆に詠んでみたい。次回も挑戦を!

・初蛙池に波紋の広がれり(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
→どこか魅かれるのは実感の強さがあるからであろう。「初・波紋」の新鮮さ、のびやかさがよい。いずれにしてもありきたりは避けて詠むようにしたい。好句。

・大海へ千の棚田の蛙かな(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
→海へ向かう棚田の気分がよく出ている。惜しいのは感動に詠みがついていっていないこと。「大海へのびる棚田や青蛙」など。参考に。好句。

・つややかな青磁ふくらむかのかえる(ペンネーム「インゴット」さん 57歳)
→青磁と蛙の気分を重ね見たものであろうか。大変気分がよく出ている。もう少し楽に「つややかに青磁膨らむ蛙かな」などでも気分が出そう。この方向で。好句。

・蛙啼く水ヨーヨーの振るえる燈(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→心情表出の出来た句で印象的。お祭り帰りが思い起こされる。好句。

・雨蛙土俵の上で四股をふむ(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
→鳥獣戯画の気分の句である。蛙のルックスはどこか親しみやすい。散文的なのが惜しい。

・ワグナーの行進曲や雨蛙(ペンネーム「ラジャーナイン」さん 61歳)
→鳴き声のイメージを重ね見た句であろう。両方音繋がりなので、そこが少し物足りない。もう少し世界観を見てみたい方である。次回も挑戦を!

・星ふりて八分音符で蛙啼く(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→メルヘンチックでかわいらしい。惜しいのは「ふりて~で~する」と作為的なところ。そのあたりを気をつけるようにしたい。次回も挑戦を!

・蛙鳴きふるさとの母達者かな(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
→素朴ながら母を想う気分の出た句である。下五がやや直接的であるがこの句の場合はあまり気にならない。無理なく詠むこの方向で。

・五箇山や式台に臥す初蛙(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→感動の在所がよくわからないのが惜しい。「五箇山・式台・初蛙」の必然性がよく見えないのである。そのあたりが課題であろうか。カッチリした詠みぶりは心地よい。

・慰霊碑の「霊」の字に貼りつく蛙(ペンネーム「葦たかし」さん 67歳)
→全体的に作為的なところが惜しい。また俳句は見せかけにこだわるものではないから「 」などの記号は原則不要。何より散文の切れ端のような句姿をどうにかしたい。俳句は定型でなくてもよいが定型「感」はほしいのである。そのあたりを留意され作為(頭・理屈)ではなく無意識からの実感を掬い取るよう心掛けてみたい。次回も挑戦を!

・田植え終え幼子の手に雨蛙(ペンネーム「みよこ」さん 71歳)
→田植えを手伝う子の様子楽しさがよく伝わる。惜しいのは「終え~に~」と散文的なところ。また「田植え・雨蛙・手・幼子」の言葉のイメージが全部近いところ。そのあたりを気をつけてみたい。

・バスが行き椅子に蛙と忘れ傘(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
→田舎のバス停の様子であろうか。惜しいのは全体的に説明的なところ。ものに託して詠もうとする姿勢には共感を覚える。

・恐竜の足音鈍し蛙飛ぶ(ペンネーム「矢浦詠正」さん 73歳)
→心象風景であろうか。慣れた詠みぶりである。惜しいのは「恐竜・蛙・足・飛ぶ」など関係性が近いところ。また「鈍し」などは直接的に言わないほうがいい。そのあたりを攻めたい。次回も挑戦を。

・三江線廃駅ベンチの蛙かな(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→寂しさが感じられる句である。モノをならべたような詠み方がぎこちなく惜しい。こういう場合はポイントを絞るとよくなりそうである。「廃駅のベンチにまじる蛙かな」など。参考に。

・ダムの音浴びて産卵あお蛙(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→旅の句であろうか。感激を上手くとらえている。全体的に報告説明になっているのが惜しい。次回はそのあたりを留意されたい。

・泣きじゃくり孫眠りゆく遠蛙(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
→孫と賑やかに過ごした一日の気分であろうか。「遠蛙」がうまく受け止めている。説明的なところが惜しいので、次回をそのあたりを留意されたい。

入選B

・田の中で合唱してる蛙かな(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・サラリーマン今日明日へと夕蛙(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
・ぴょこぴょこと跳ねる子供ら蛙かな(ペンネーム「からまる」さん 27歳)
・新人の女子アナ達のカエルぴょこ(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
・帰り道我が子見守る蛙達(ペンネーム「はますけ」さん 32歳)
・宵闇に蛙集まりコンサート(ペンネーム「fivesevenfive」さん 36歳)
・居酒屋のラストオーダー遠蛙(ペンネーム「へやま」さん 37歳)
・川の中、蛙のなき声、春の声(ペンネーム「よつば」さん 38歳)
・埋立て地安全靴に蛙かな(ペンネーム「三滝のベベ」さん 38歳)
・腐葉土のねぼけまなこの蛙かな(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・桜しべ降る雨そぞろ初蛙(ペンネーム「豆助」さん 39歳)
・蛙の目借りどきヒトには目が二つ(ペンネーム「櫻井葉子」さん 41歳)
・前肢は無心蛙の泳ぐとき(ペンネーム「中岡秀次」さん 42歳)
・物干しでカエルと遭遇睨み合い(ペンネーム「うさぎっく」さん 43歳)
・赤信号黄色い傘と雨蛙(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
・がまカエル車に轢かれ土になる(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・東野でかえると仲良くなりました(ペンネーム「わた」さん 44歳)
・ガアガアと雨夜の蛙や賑やかな田(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・雨音に蛙の声が混じる夜(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・新堀や蛙呼び込む雨の音(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
・散布され蛙一匹日に当たる(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・子ガエル楽し春の虹の滑り台(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・いざ行かん慣れぬスーツのやせ蛙(ペンネーム「暇床屋」さん 51歳)
・よふかしやゲロゲロ恋歌夏の庭(ペンネーム「みぽりんりん」さん 52歳)
・蓮の葉にはねる水玉蛙鳴く(ペンネーム「テルテル」さん 53歳)
・モーモーと食用ガエル泣いている(ペンネーム「はっちゃん」さん 53歳)
・受話器から帰ってこいと蛙鳴く(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・異常気象暑き小川や青蛙(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・一枚の辞令の重み蛙鳴く(ペンネーム「そら」さん 58歳)
・声ひろう旅番組の遠蛙(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・紫外線返す蛙の薄まぶた(ペンネーム「ヨシ整体」さん 60歳)
・初蛙さがを個性と呼ぶ校舎(ペンネーム「七瀬ゆきこ」さん 60歳)
・眠りから目覚めた蛙喰われけり(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・蛙の子我先にとテープ切る(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・四足の揃えきちりと葉の蛙(ペンネーム「輝久」さん 63歳)
・山の池主役はテノール青蛙(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・蛙鳴きふるさと思い手紙書き(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・突然の三人の客遠蛙(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
・田んぼなき都会の畦で蛙鳴く(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
・初蛙歓喜の歌のプロローグ(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・合唱は昔の事に蛙の声(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・青ガエル水輪拡がる七重八重(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・水を得て声を限りに夕蛙(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・独り言帰る者無き夕蛙(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・畦道をのんびり散歩蛙かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・下り坂銀輪飛ばし蛙飛ぶ(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・眠りから覚めた蛙の大あくび(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・おぼろ月水田(みずた)の中の大合唱(ペンネーム「花咲爺」さん 76歳)

ユニー句(句)

・かえり道かえるがゲロゲロふり返る(ペンネーム「わしゃわしゃ」さん 12歳)
・かえる鳴く新生活に帰り泣く(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 41歳)
・揚げ油跳ね返りたる蛙かな(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
・スロットでカエル揃うと良い感じ(ペンネーム「犬蔵の王」さん 43歳)
・合唱団探すはテノール牛蛙(ペンネーム「今日も晴れ」さん 43歳)
・がまカエルマリオネットに騙される(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・ゲコと言う飲めない蛙の歓迎会(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・ため池に蛙飛び込み運動会(ペンネーム「ジジププ」さん 48歳)
・独り言多い夫です蛙です(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
・畦端の蛙狂恋ラプソディー(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・初蛙眠くて眠くてストレッチ(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・昼蛙羨ましきやスクワット(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
・蛙の子蛙の親に似ていない(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・カエル泣き主人いびきで不眠症(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・公園のカエルの遊具に乗る蛙(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・転勤で徹夜荷造り蛙鳴く(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・ザリガニを釣る糸なれど痩せ蛙(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
・庭に住む殿様蛙孫帰る(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・古希かえるカープ連敗沼の中(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・墓守を殿様蛙に託し行く(ペンネーム「みよこ」さん 71歳)
・夜もすがら蛙の合唱ケロリンパ(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・メダル獲りぴょんぴょん跳ねる初蛙(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・やせ蛙掘り起こされて目パチクリ(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)
・子らがいう雨冠を呼ぶ蛙(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年4月4日(水)

第90回 お題「蛤」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「蛤」。
今回も大変多くの投句を頂き、うれしい悲鳴でした。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず、原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句は、「大きな母性」の感じられる句。
入賞句の「蓋傾ぐ」は、心で写生できた句。
入賞句の「乳歯」は、「視覚・聴覚が効果的な句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎回の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「蛤やふくませおれば張る乳房」(ペンネーム「比々き」さん 69歳)

全応募句を一読したときからの文句なしの大賞。
俳句ではよく写生だ映像だと言われるが、大事なのはカメラ的風景ではなく、そこからどう「モノの気配を捕まえる」かなのである。
そういうところに「ものの見えたる光(芭蕉)」がある。
句であるが、実景か心象風景か、「蛤」に思いを馳せていたところ、そのふくよかな殻の形態と乳房の形態がどこかでリンクした(取り合わさった)のであろう。
かつての授乳時の身体感覚が湧き上がってきたのを迷わず自分の言葉で句に掬い取ったところが成功した。
といっても、句中の「蛤」は海中で心臓のように脈動している呼吸している「蛤」ととりたい。
古代中国では大きな「蛤」が空中に吐いた息によって作られた楼閣を蜃気楼と呼んでいたというが、「蛤」のイメージは意外に幻想的で雄大でもある。
だからこそ、「ふくませおれば張る」という寄せては返す波のような詠み方、たたみかけるような動詞の強いうねりと呼応してくるのである。
この取りあわせによって、単なる身体感覚だけではなく、母としての実感、生きているという実感・母なる海・大いなる母性・生きている感動など、何層もの豊かなイメージを伝えているところが大変見事である。
このような句を見たときに、上五が向日葵でも春風でも成立するので「季語が動く」、すなわちよくないのではないかと言われる方もおられようが、問題ない。
この句の場合、この取りあわせによって、句からイメージされる世界の豊かさが上記のようにきちんと担保されているからである。
「ふくませおれば張る乳房」の上五に、そもそも何らかの正解があるわけではないし、俳句の取り合わせは正解探しでもないし、俳句は「動かぬ表現」をとらなければならないものでもない。
ネクタイの色違いのようなもので、紺色も似合えば赤色も似あう、それでいいのである。
句を鑑賞するときに「ただその一句の世界を感じる」のではなく、「俳句はこういうもの」と教条から理解してゆくような小賢しい態度のほうが芸術鑑賞としては問題である。
これからも俳句の常識にとらわれず、自分の感覚を自分の言葉で表現してほしい。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
モノの気配(なんとなくそう感じる)を迷わず詠む。

入賞

「乳歯の子白蛤の音が鳴る​」(ペンネーム「今日も晴れ」さん 43歳)

「白蛤」を「うむき」と詠めば、蛤の古名のことになるが、この句の場合音数的に「しろはまぐり」と詠ませたいのであろう。
「白蛤」は「ホンビノス貝」といういわゆる本来的な「蛤」よりやや大きめの外来種だそうだが、最近よく出回っているようである。
「白蛤」はいわゆる本来の「蛤」ではないのであるが、大事なことは知識・教条ではなく芸術性であって、道場ではこれくらいのことはうるさくいう必要はないであろう。
ようやく生えてきた子どもの「乳歯」の音と、「白蛤」の殻がコツコツぶつかる音を重ね見た句である。
この句のよいところは、「色と音」。
「乳歯・白蛤」という一句全体を包み込む「白」のイメージに「命の清らかさ」のようなものが感じ取れてくるし、「音が鳴る」ところに、「軽やかさ・楽しさ」がよく出ている。
いわば、それらの相乗効果で、子どもの成長の喜びが、感覚的に伝わってくるところがよい。
「乳歯・子」「音・鳴る」などのイメージの重なりなどの詠みの甘さがないではないが、そういう技術的なところより、オリジナルな実感を自分の言葉で詠んだところが成功した。
明るい一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
視覚・聴覚を効果的に使い、感覚に訴える。

「塗椀の大蛤や蓋傾ぐ」(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)

この作者は私の目に留まっている作者で、過去の句を読み返していても感じるのであるが、本質的な写実のできる人である。
ただカメラ的に風景を捉えるのではなく、実感のあるところをきちんと掬い取っているし、一見カメラ的に見える句でも、目だけではなくきちんと心に映った世界を詠んでいて大変頼もしい。
入賞句も同様である。
何気ない光景のようであるが、なかなか詠めそうで詠めない。
「蓋傾ぐ」という把握が素朴ながら大変光っている。
こうよむことで「蛤」の大きさが伝わってくるだけでなく、どこかしら「大蛤」が両腕でグーと「蓋」を持ち上げてるような気分までも感じ取れてきて、いわばその強い生命力が伝わってくる。
古代中国では大きな「蛤」が空中に吐いた息によって作られた楼閣を蜃気楼と呼んでいたという伝説もあるくらいであるし、感じようと思えばいくらでも感じ入ることのできる構造の句になっていて見事である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
写生は目だけで詠まないこと。目と心両方に映った気配を詠む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・蛤や樹々となりゆく昼の月(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※私と海と月がとても近かった帰り道で。
→幻想的・神秘的で美しい響きの句である。海中の神秘性と抜け殻のような昼の月がつかずはなれず美しい世界を伝えている。しかし決して観念的でもなく、しっかりモノに即して詠んでいて心強い。他の応募句「蛤やヌード眩しきサンディエゴ」はやや直接的であるが、「蛤の拾われてゆく手紙かな」はこれまた気分の出た句。

・はまぐりや聞き耳立てる山の音(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※春が身近に来ている事が山の木々や鳥の声で感じられる様子を詠みました。
→これは楽しい取りあわせである。「耳・音」の重なりが少し気になるが、蛤の殻が開いたイメージと耳のイメージが面白い。聴覚が効果的な句である。

入選句

特選

・はまぐりや鏡に映る母の顔(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→「母」の女性らしさを詠んだ句であろうか。「はまぐり・母」という女性的なイメージの重なりがやや気になるが、気分の出た句である。

・蛤や収まりきらぬおもちゃ箱(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→楽しい気分の句である。この場合、貝の蓋と箱の蓋のイメージが近すぎる(直接的)というか、少し頭でこさえたような作為がやや感じ取れるところが惜しい。自分だけの実感を自分の言葉で詠みたい。

・蛤や月の匂いのする浜辺(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→「海の匂い・蛤の匂い」なら平凡だが、「月の匂い」を嗅ぎつけたことで一気に詩になった。「蛤・浜」と共に海のイメージが重なっているところはもう少し整理したい。「蛤や月の匂いの砂の音」など。この方向で。

・蛤や犬吠埼の浜荒れて(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→全て「海」つながりだからであろうかどこかしら飛躍に乏しいところが惜しいが、大変気分の出た句で上手い。

・惑星の墜ちて蛤となる夜(ペンネーム「銀雨」さん 43歳)
→「~して~となる」と説明的なのが惜しいのであるが、熱い詩心をもった方のようである。他の詩型と俳句が全く違うことを体得されると一気に花ひらきそうである。次回も挑戦を!

・蛤や時間の軸に捩じり出る(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→貝の隙間から体をのぞかせる気分を上手くとらえた。海中の蛤、そのなんらかの神秘性・生命力が伝わる句である。佳句好句。この方向で。

・蛤の丸みや海を孕みたる(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→「丸み・孕む」がイメージの重なりで惜しいのであるが、「海を孕みたる」が生きた。そこに海があったという詩的真実。蛤の神秘性を上手くつかんでいる。

・蛤や開くページの空の色(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「開く」がややつきすぎで惜しいが、一句全体を貫く明るさに共感を覚える軽やかな句。この方向で。

・蛤の椀に打ち寄す瀬戸内海(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→やや直接的であるが「蛤の椀」の実感を大胆に表現したところがよい。大きな句。

・蛤の星につぶやく厨かな(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→「厨」は台所のこと。メルヘンチックながら春の夜の息吹く気分やしじまをよく表している。

・蛤や百五十度のカバの口(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→「蛤・カバの口」の開く形態を重ね見た句であるが、その意図がすぐ読み取れるのでその分浅い。「蛤・カバ」とくればそれだけで「開く・角度」はイメージされるので言わなくてよいのである。作者の意図とは違うのであるが「蛤の少し重たきカバの口」あたりならイメージを紐解く楽しみがまだ残る。しかして一句のおおらかさが俳味となっているともいえる句である。

・蛤や岬に白き灯がひとつ(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→「蛤・白き灯」を重ね見て気分の出た句である。作者のやや沈んだ心情のようなものを上手くつたえている。

・蛤やとびらの重き歯科医院(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→「蛤・とびら」のイメージの重なりが惜しいが詠み方は上手い方。例えば「蛤や灯かり重たき歯科医院」などならさらに気分が出そうである。

・巨大船大蛤に浮かされて(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→説明的で惜しい。まだ散文的な感覚が強いようである。しかしてモノの選択はよいのでここから俳句にしたいところ。「大蛤煮られつつある巨大船」など。もちろん煮られるのは「巨大船」である。そうでないと詩にならない。参考に。

・コンテナにはまぐり眠る深夜便(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→全体的に散文的・説明的なのと、「コンテナ・便」「眠る・深夜」などのイメージの重なりが気になるが、何かというでもないその静かな光景になんらかの心情表出ができている句である。好句。

・蛤や廃船置場の空バケツ(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
→「蛤・船・バケツ」が海(水)のイメージの重なりで惜しい。まだ「廃車」のほうがイメージとしてはバランスが取れる。しかしてモノに託して詠もうとする姿勢、キャスティングに徹する姿勢はよく、一句になんらかの切なさのようなものが感じ取れてきて共感を覚える。

・蛤や朱の塗椀の金蒔絵(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→入賞句の「蓋傾ぐ」が連想されるが、入賞句に比してやはり当たり前感が強いところが惜しかった。日常を詠む場合はそこに批評精神がほしいのである。しかして春の華やぎが美しい。

・蛤やとっぱずれゆく熱気球(ペンネーム「葦たかし」さん 67歳)
→「とっぱずれゆく」は「端のほうをゆく」という意味であろう。取りあわせの飛躍が生きている。俳味の感じられる句である。この方向で。

・蛤の影足もとに解体船(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→実際の風景か心象風景か。モノに上手く託して心情表出のできた句でよい。読者が感じ取る楽しみが与えられている。俳句は物を言わなくてもいいという意味で大変参考になる句である。この方向で。

・蛤のひとつ入った介護食(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→これは実際の光景であろうか。喜びとも切なさとも両方に感じ取れる句になっているところがよい。「蛤・介護食」の取り合わせが効いている。

・蛤の二つ寄り添う夫婦かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
→つきすぎなのであるが、これはこれで無理のなく気分を出している句である。もう一段上にいくには、日常べったりではなく、批評精神をもって句を詠むようにしたい。

・蛤の屋台の客にへばりつく(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
→俳味の句である。おもしろい。「蛤の/屋台の客にへばりつく」なら、蛤が客にくっついているという面白さであるし、「蛤の屋台の客に/へばりつく」なら、作者が客にへばりついているのであろう。ユニークというものは詠もうとして詠むのではなく、結果としてユニークになるといういい見本のような句である。好句。

・蛤や桜重ねの千光寺(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)
→「千光寺」であるから「蛤・桜」の季重なりの句であろう。しかして春の華やいだ雰囲気がよく伝わる措辞で美しい。

入選A

・はまぐりやそっとささやく海の声(ペンネーム「モッツァレラ2号」さん 8歳)
→ささやくとは、気分の出た句である。しゃべるとかだまるなどだとやりすぎであろう。

・はまぐりやバケツの中をかくれんぼ(ペンネーム「ヤマトたいが」さん 10歳)
→はまぐりの気分をうまくとらえた。「を」は「の」でもよさそう。

・里帰り祖父のお椀の蛤や(ペンネーム「新米ママ」さん 27歳)
→蛤の好きなお祖父さんなのであろうか、里帰りの気分の出た句。

・はまぐりにそっと口づけ磯の恋(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
→少々直接的・説明的なところが惜しいが、海辺の恋愛の気分の伝わる句。

・壊さぬように蛤の身を剥がす(ペンネーム「野良古」さん 32歳)
→つぶやき・散文・説明文で韻文になっておらず惜しい。しかしながら表現への熱が感じられるのでとった。「季語・575」が俳句と思わないこと。句に書かれてある出来事ではなく、句からイメージされる世界を大事にすること。俳句形式を働かせたものが俳句だということ。を課題としたい。

・蛤の顔に合わせる器かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→なぞときのよう句で面白い。あるいは蛤料理の皿を選ぶ気分の句であろうか。これがもう少しスーとイメージの世界に入り込めるようになるとよいのであるが、少し抽象的か。

・蛤や七輪囲む島根の午後(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
→旅行吟であろうか。芸術性としては少し物足りないがこれはこれで旅の気分の出た一句。

・蛤つゆの手毬麩数ふ子供かな(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
→どこかしら小林一茶の句のような気分が感じ取れる優しさヒューマニズムの句である。しかして芸術性という観点からすれば、日常を詠むのであれば現実にとらわれずもっと批評精神をもって詠んでみたい。「蛤つゆの手毬麩しずむ子供かな」など。

・蛤のひとつにふたつ潮汁(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
→詠み方としては無理なく上手いのであるが、日常的な域を出ていないところが惜しい。そこを攻めてほしい。

・蛤の鬱憤を聞く夕日かな(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
→中七のような直接表現は避け、何としてもモノやモノの様子に託して詠んでほしいのである。「蛤の開ききったる夕日かな」など。

・塗りの椀はまぐり海を従えて(ペンネーム「雅」さん 55歳)
→少々盛り込み過ぎて舌足らずになっているところが惜しいが、おおらかな気分が感じられる好句。

・蛤や初めて空ける耳ピアス(ペンネーム「徳」さん 8歳)
→少女の心境の変化のようなものを上手くモノに託して詠んでいる。

・蛤や物言いたげに空を見る(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
→蛤・言がやはりつきすぎなのであるが、下五が上手い。このように飛躍することでイメージが広がる。句からは何らかの満たされぬ思いのようなものが感じ取れてきて共感をおぼえる。

・蛤の育つ浜辺で網を編む(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
→説明的なところが惜しいのであるが、自分の実感をよく表しているので迫ってくる。俳句の形式に慣れてくれば自分の世界が広がりそうな方である。古今の名句や入賞句を参考に。

・蛤や何もかもが椀の中(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
→やけくそな気分の句であろうか。中七がやや直接的で惜しいが、俳味の感じられる句である。

・お吸い物蛤の殻光りおり(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→まだまだ俳句形式を自分のものにせんと模索中。素朴な表現ながら素直に実感を詠んだところがよい。

・蛤と木の芽の香り大漁旗(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
→漁村の食事風景であろうか。モノに託して詠んである好感がもてる。この方向で。

・魚河岸にならぶ蛤ひかりおり(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
→「光る」がよくある表現だという方もおられようが、そう思ったものはしかたない。まずはこのように自分の実感をモノに託して詠んでみたい。生命力の感じられる句である。

・蛤や浜辺の宿で海掬う(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→全部のモノが海つながりなのと、「海掬う」の類想性が惜しいのであるが、海ごと味わっているような気分が大きく楽しい。

・蛤の里静かなり潮満ちて(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→全体的に説明的なのが惜しいが、里の気分がよく出ている。

・蛤の里の花嫁ラクダ行く(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
→全体的にイメージがちぐはぐなのが惜しいが、華やかな気分の感じられる句である。

・蛤の内緒話や灯のともる(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→「蛤・話」がやはりつきすぎでおしいが、女子会であろうか。どこかしらほほえましい。

入選B

・はまぐりの音ぷのような目は二つ(ペンネーム「クシナダかのん」さん 9歳)
・蛤や引っ越し後のからの家(ペンネーム「コンスタンチン」さん 12歳)
・はまぐりや中身は意外と小さいね(ペンネーム「はる」さん 17歳)
・蛤の中にもいるよ天才が(ペンネーム「彼女大好き彼氏」さん 23歳)
・蛤を必死で探す家族達(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・蛤の貝殻重ねだるま落とし(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
・蛤となると信じた初恋か(ペンネーム「海のきつね」さん 29歳)
・蛤や夫婦仲良くペアルック(ペンネーム「はますけ」さん 32歳)
・蛤が夢で見た街蜃気楼(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 37歳)
・蛤や負けず劣らず吾子の尻(ペンネーム「へやま」さん 37歳)
・蛤にぎゅうぅぅっと海が掴む子ら(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・蛤で春を感じる機会無し(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・地獄蝿蛤と窓に何思う(ペンネーム「犬蔵の王」さん 43歳)
・風が吹く桜と共に蛤を(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・蛤の開くときの音聞こゆ(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・蛤や子は鎹の貝柱(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・蛤を探す波間に潮風が(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・蛤の砂を吐くかと眺めたる(ペンネーム「有瀬こうこ」さん 45歳)
・蛤やネクタイ締めて椀の中(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
・縁ありてあなたと共に貝合わせ(ペンネーム「暇床屋」さん 51歳)
・蛤や漁師に囲まれ食いにけり(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
・春うらら蛤酒蒸し楽しけり(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・蛤や返信メールできぬまま(ペンネーム「そら」さん 58歳)
・陸に出て土星を仰ぐ蛤よ(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・蛤やうどんを枕に大あくび(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・義母作の餅はまぐり汁ほんわかと(ペンネーム「広島レモン」さん 63歳)
・蛤の開くを待ってるカープ党(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・旅の町焼き蛤に足向いて(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・東北道はまぐり販売点々と(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・いとしい人心ひそかに貝合わせ(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・蛤のため息星をまたたかせ(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・蛤のお椀にひたる笑顔かな(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・蛤に娘の幸せ祈る母(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・桂浜蛤焼いて水平線(ペンネーム「みよこ」さん 70歳)
・小蟹連れ椀に潮騒蛤や(ペンネーム「華みづき」さん 70歳)
・焼蛤の匂いに鼻のうごめけり(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・蛤や煮るなと焼くなとしておくれ(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・はまぐりや十二単の華やいで(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・蛤や式部と納言に囲まれて(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・粒選りの蛤つぶやく店頭に(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
・蛤や娘の艶やかに紅引きて(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・初孫のお食い初めや蛤椀(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
・蛤酔うフレンチキッスのTKO(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

ユニー句(句)

・焼き蛤思わずよだれ滴らし(ペンネーム「山越えセレナ」さん 30歳)
・はまぐりや霞ヶ関の書類棚(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
・ハマグリや高くも探す国産を(ペンネーム「まんまるちゃん」さん 39歳)
・すすったらうまみ凝縮ハマグリさん(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・チラシ見て蛤お得どうしよう(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・蛤や煮ハマ焼きハマ胃の海へ(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・蛤の詰め放題や物産展(ペンネーム「有瀬こうこ」さん 45歳)
・蛤や長き祝辞に大欠伸(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・蛤は潮干狩りではみつからず、(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・記念日に焼き蛤で妻と酒(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・孫が聞くあさり成長はまぐりに(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・蛤に似てる℃℃℃のグラウンド(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・蛤は何も言はぬが海掃除(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・おずおずと手を伸ばし取る焼き蛤(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・バーベキュー遠慮のかたまり焼き蛤(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・蛤を買う決断に小半時(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
・蛤は汁か焼くかで争いぬ(ペンネーム「みよこ」さん 70歳)
・炉端焼き焼き蛤で焼いた口(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
・蛤の小口融資に口閉ざす(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・蒸蛤頂いていま見合い中(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・蛤鍋や笑い転げるバスの旅(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・焼き蛤カスタネットやフラメンコ(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年3月23日(金)

第89回 お題「春風」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「春風」。
今回もいつになく多くの投句を頂き、うれしい悲鳴でした。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず、原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句は、「春風」の勢いと輝きの感じられる一句。
入賞句の「原爆ドーム」は、オリジナルにとらえた「春風」の実感が生きた句。
入賞句の「転校生」は、「春風」の気分を明るく無理なくとらえた共感を誘う一句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「春風となりて馬上の少女かな」(ペンネーム「吞田」さん 71歳)

馬上の少女が春風となって(草原をかけ抜けてゆく)という意味の句ととりたい。
類想句もありそうであるが、なんといっても「春風・馬・小女」、この三つモノの織りなす「輝き(ハーモニー)」が美しい。
ここでいう「輝き(ハーモニー)」というのは、一句の景色(A)のことを言っているのではなく、そこから感じ取れる「イメージ世界(非A)」のことを言っている。
この三者がイメージ世界で違和感なく溶け合って、のびやかさ・スピード感・透明感などの輝き(もののみえたる光)を生み出しているところが見事なのである。
この句からもどこか、荘子の「胡蝶の夢」、仏教的な「無常観」のような世界がイメージされてくる。
テクニカルなことを言えば、「ようだ・ごとく」などの比喩ではなく、「となりて」と直接詠んであるところが特によい。
これによって、「春風」の存在感が全面に出てきて、詩に昇華されている。
これが「春風のごとく」などであれば、「馬上の少女」は少女のままであるし(現実べったり)、「春風」のモノとしての存在感も希薄で話になるまい。
またこの句、いわゆる575の定型のリズムではない「句またがり」の句であるが、実に「定型感」が感じられる句である。
世には、理論上は「句またがり」でも、感覚的に「定型感」を失っている句も多い。
その意味でも参考になろう。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
定型感は、感覚的なもの。

入賞

「原爆ドーム雁木に春の風籠る​」(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)

「雁木」は、川に降りる階段、船着き場のことで、市内の川では多くみられる。
「原爆ドーム」を望む川に佇む作者による「春風」の実感をとらえた句と思われるが、何よりこの独特の把握が光った。
こういうところに、作者のなんらかの作者の心情が(無意識的に)託されているのであって、こういうところをめくってゆくのが俳句の鑑賞の楽しみである。
喜びの象徴である「春風」が「原爆ドーム」全体に吹きわたっているという句であれば、「平和の喜び」であるが、こう詠まれると「今は本当に平和なのか」と問いかけられているような気がして、ドキッとさせられる。
世界を見渡せば確かに各地でまだ争いが続いている。
「原爆ドーム」に真実の「春風」が吹きわたるそのときを広島の一人として祈る。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
先入観にとらわれず自分の実感を詠む。

「春風や転校生の髪香る」(ペンネーム「雅」さん 55歳)

新学期の中学校もしくは高校の様子を詠んだ句であろうか。
誰しもが経験したことのあるようなシーンである。
その分類想句も多そうであるが、「時期・場所・状況・ポイント(香り)」が実に、卒なく綺麗に詠み込まれていて上手い。
ハッとするような印象的な洗練された「髪の香り」。
それは都会から転向してきた髪の長めの女生徒ではなかったか。
一目ぼれとまでいかずとも、その女性徒へのドキドキ感のようなものを直接いうことなく「春風によって香る髪」に上手く託して詠んだ青春の一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
直接詠まずモノやモノの様子に託す。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・春風や肌にはりつく友の墓(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※彼岸の入りでした。
→「春風」というポジティブなイメージに、「友の墓」という相反するイメージを取りあわせて詩にした。何と言っても中七の表現が秀逸である。これだけでその友達と作者がどれほどの関係性であったかがありありと感じ取れる。共感を覚える一句である。

・春風やインクさまよう物理学(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※春に受け取った物理学の教科書をめくるとパッと見ただけでもさっぱり理解不能なものが並んでおり、これから学ぶ事が気が遠くなる気持ちでした。
→「物理学」だけに「さまよう」がやや近しいが、「インク」に重心を置いているのがユニークである。「春風」の気分ともつかずはなれずの面白い世界観の句。これが「秋風」ならつきすぎになろう。この方向で。

入選句

特選

・早朝の春風と行く新幹線​(ペンネーム「スネイク​」さん 14歳)
→旅行であろうか。颯爽とした気分の感じられる句である。

・春風に色を尋ねる風ぐるま​(ペンネーム「ケロロ​」さん 18歳)
→「春風・風車」ともに季語であるがそこまでの傷ではない。中七のような独自の把握を大事にしたい。楽しい気分の一句。この方向で。

・春風や研修中の文字揺れる​(ペンネーム「藤堂星羅​」さん 21歳)
→「春風の生命力で文字が息吹いた」という詩的真実の句と解釈したい。この実感を大切に。

・無人駅少女駆け込む春の風​(ペンネーム「じゅんこバズ​」さん 37歳)
→上五が無ければ楽しいだけの句であるが、「無人駅」を置いたので句に深まりが出た。「無」の漢字のイメージによるものか「少女」の表情もどことなく見ないところも詩的である。

・ブーケトス春風の元少女A​(ペンネーム「胃痛​」さん 37歳)
→「春風のような」ではなく「春風の」なので詩になった。これが「春風やブーケトスする女A」などなら、言いたい事は明確になるが、その分詩を失う。

・春風や上棟式のパイプイス​(ペンネーム「かつたろー。​」さん 42歳)
→春の気分がよく出ている句である。句の世界がやや日常よりなところが平凡で惜しい。

・春風やレンガの壁を壊す人​(ペンネーム「ギザギザ仮面​」さん 46歳)
→今までの自分を破るような心境、自我を破るような気分句であろうか。「春風」のイメージと中七下五のイメージが飛躍しており詩になった。同情申し上げる。

・岩を割る春風となる化石かな​(ペンネーム「ブルージャスニン​」さん 47歳)
→たたみかけるような詠み方に殻を破りたいような己の気分が感じ取れる。ただし上五は不要なようである。そのあたりで一考してみたい。好句。

・モノクロの連理の枝よ春の風​(ペンネーム「もじこ​」さん 48歳)
→「連理」とは別の木の枝と枝とがくっついていることを差し縁起がよいとされる。全体的にイメージのバランスがとれてないところが惜しい。ここから句にしてゆきたいという気分の句である。

・春風に記号とびだす海図かな​(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん​」さん 50歳)
→好句である。「春風に」といっているが、こういうところは最初の発想にとらわれず舌頭千転、「春風の」としたい。 この方向でいい。

・ひとつめのピアスホールや春の風(ペンネーム「洒落神戸​」さん 50歳)
→春らしく楽しい句でムードがある。これはこれで一句なのであるが、いかんせん類想が多いのが惜しい。大賞受賞経験者。さらに少し飛躍した世界を見てみたい方である。

・春風に卵はみ出すパンの耳​(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
→まさに春の気分が目いっぱい出た句である。「春風(大)」→「パンの耳(小)」の自然な対比が活きた。

・付箋紙を二枚残して春の風​(ペンネーム「鯉こころ​」さん 54歳)
→なんらかのやり残したことがあるまま季節が過ぎていったのか、満たされぬ心境のようなものが感じ取れる句である。上五中七で十分に心情表出できている。佳句。

・デボン紀の魚に前足春の風​(ペンネーム「中山月波​」さん 54歳)
→素材は悪くなく詩的で世界観もなかなかなのだが、「前足がある」という散文の安易な省略がすぐに読み取れ惜しい。「デボン紀の爪もつ魚や春の風」「デボン紀の魚の足なる春の風」あたりなら賛成できる。原句のような詠み方も他ではよく見かけるが、韻文として未熟というのが私見。センスがある方なので俳句形式に慣れてほしい。

・春風や合格の絵馬響き合う​(ペンネーム「やんちゃん​」さん 56歳)
→喜びの気分のよく出た句である。下五がややつきすぎで惜しいが、この方向でよさそう。好句。

・春風や車道で踊るポリ袋​(ペンネーム「ハラペコ​」さん 57歳)
→ポリ袋でも句になる。惜しいのは「風・踊る」のややつきすぎな言葉の関係性。「詩にならない語はない。詩にならない語と語の関係性があるだけである」。この方向で。好句。

・春風や大地を駆けるランドセル​(ペンネーム「ゆきんこ​」さん 59歳)
→「春風・ランドセル」は、素材としてはよくあるが、中七を大きくとらえて独自の詩にした。この方向で。好句。

・春風に仲間広げる芝桜​(ペンネーム「孫4人じぃじ​」さん 61歳)
→「春風・芝桜」の季重なりは大した傷ではない。ここから句にしたい。「仲間」がいるかどうか、「芝桜ひろがってゆく春の風」このあたりで詠む方が感じる句になりそうである。

・春風に背中押される耕運機​(ペンネーム「是多​」さん 63歳)
→春の畑仕事の気分を自然体で詠んだ句であろう。やや直接的なところが惜しいが実感がよく感じられるところはよい。

・春風や遊覧船のデッキチェア​(ペンネーム「じゃすみん​」さん 65歳)
→春の楽しい気分がよく伝わる一句。無理に盛り込もうとせず、このように心に留まったモノに託して詠めばいい。好句。

・春風へ水車は光撒き散らす​(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→全体的に説明的なところと、下五あたりの荒い詠み方が惜しいが、熱いものを内にもっている方。それを直接ださず詠んむようにするとよい。「春の風光吐き出す水車かな」など。

・春風やパステル色の物干して​(ペンネーム「猫またぎ65​」さん 65歳)
→なかなか詩的な好句である。ただし「物干して」はやや言葉足らず。普通に「服干しぬ」あたりでよさそうである。

・春風やぴくりと動く河馬の尻​(ペンネーム「葦たかし​」さん 67歳)
→なかなかモダンな好句だが、中七の詠みが甘い。舌頭千転「河馬の尻少しずれたる春の風」など。しかしてこの独特の視点・詩心は大事にされたい。

・ランドセルまだひんやりと春の風(ペンネーム「さくら​」さん 68歳)
→まだ学校に通う前のランドセルであろうか、中七の把握が面白い。このギャップが詩を生んでいる。対比を大切に。佳句。

・春風や北から西へ飛行雲​(ペンネーム「うり、ぴーママ​」さん 69歳)
→進境の見られる句である。「飛行雲」は「飛行機雲」のことだが「飛行雲」と詠むと機体のイメージが消えていかにも雲らしい。中七の大きな把握にのびやかな心境が感じ取れて共感を覚える。

・屋上の吸殻入れや春の風​(ペンネーム「比々き​」さん 69歳)
→冬が終わり「春の風」だからか「屋上」にも人が多く集い楽し気である。そんな季節感を上手く詠み込んだ。これだけの舞台装置でドラマが感じられるのであるから、俳句は脚本ではなく、「モノのキャスティング」であると心得たい。好句佳句。

・春風や線路が走るたなごころ​(ペンネーム「柱時計​」さん 75歳)
→「たなごころ」とは、どこか孫悟空の釈迦の手のひらをイメージさせる。次元を超越したような詠み方が実に面白い。現実を現実らしく詠むのであれば詩でなくてもいい。これこそが詩である。好句佳句。この方向で。

・百匹の猫うら返る春の風​(ペンネーム「ハイカー​」さん 60歳)
→これまた愉快な俳味の句である。「春の風」のぬくもりがそうさせるのであろうか。世界に対して心を広げているおおらかさがたまらない。好句佳句。

・駅舎出て屋台を覗く春の風​(ペンネーム「坂の浜ちゃん​」さん 77歳)
→「春の風」も腹が減るのである。この把握が面白い。少し説明的なところが惜しいが、比喩などを使わずに心の実感のままに詠んだところが共感を呼ぶ。俳味の一句。

入選A

・うっすらと光のかげを春の風​(ペンネーム「モッツァレラ2号​」さん 8歳)
→やや抽象的なのが惜しいが、繊細な気分の感じ取れる句。

・春の風潮薫りゆく大鳥居​(ペンネーム「競馬大好き​」さん 24歳)
→おおらかな気分の句。大胆な詠み方で詩にした。この方向で。

・春風に花びらおどる異国の地​(ペンネーム「新米ママ​」さん 27歳)
→明るい気分の句。春風・花びらの季重なりがやや気になる。そこを整理したい。

・春風の悪戯遊ぶ少女達​(ペンネーム「ASARINA​」さん 29歳)
→楽し気な気分の句、何度も読み返してリズムを整えるとよさそう。

・春風や進水見守る子供達(ペンネーム「はますけ​」さん 32歳)
→わくわくする気分がよく出た句。好句。

・春風をお好み焼きの上に敷く​(ペンネーム「モッツァレラえのくし​」さん 42歳)
→あたたかな気分の句である。「お好み焼きかぶさるように春の風」など。出来事ではなく、モノを詠むようにしたい。

・春の風練乳とろりパンにのせ​(ペンネーム「マネレ​」さん 43歳)
→とろりで気分は出ているのだが、やはり中七の詠み方が甘い。そのあたりが課題か。

・晴天の春風伸びて空を飛ぶ(ペンネーム「武相乱​」さん 43歳)
→明るい気分の句。全体的にもたもたしているのと余分を省きたい。

・春風に背中押されてラブレター​(ペンネーム「Dr.でぶ​」さん 45歳)
→甘い気分の句である。全体的に散文的なので古今の名句をただ詠み感じ、韻文の感覚をつかむようにしたい。

・春風や行くあてもなくバスに乗る​(ペンネーム「有瀬こうこ​」さん 45歳)
→逃避行のような気分であろうか。春風の暖かさがそうさせるのか。出来ゴトではなくモノを詠むようにすうrとさらによくなる。

・左見て右見て渡る春の風​(ペンネーム「菊池洋勝​」さん 46歳)
→楽し気な気分の句。春はおでかけも増えそうである。

・やんわりと春風まとう女学生(ペンネーム「日向ぼっこ​」さん 47歳)
→すこし詠みが甘いが、ふくらみある季節感を上手く把握した句。

・春風と力くらべのシャボン玉(ペンネーム「ジジププ​」さん 48歳)
→中七がやや直接的で惜しいが、楽し気な気分の句。

・春風や行方知れずの日記帳​(ペンネーム「モリババと40人の盗賊​」さん 52歳)
→意味深な気分の句。中七がやや直接的なので一考するとよさそう。

・春風のレジにワインが滑り込む​(ペンネーム「いようさぎ​」さん 54歳)
→春だから買うモノも少し増えるのであろうか。下五に実感がある。

・春風の空プリーツを泳がせて​(ペンネーム「すずらん村。​」さん 55歳)
→春のあかるさがよく出ている。プリーツを具体的に詠むとさらによい。

・春の風黄色一色空の旅​(ペンネーム「蓮子​」さん 56歳)
→春を黄色と実感したところが面白いが、もう少し具体的に詠むとさらによい。

・春風や下駄箱残る部長の名​(ペンネーム「アヒル艦隊​」さん 57歳)
→春のワンシーン。句が少し窮屈なのでモノを整理するとさらによくなりそう。

・春風や第二ボタンになびく髪​(ペンネーム「インゴット​」さん 57歳)
→男子生徒の胸にもたれている様子ととるのが印象的であろうか。気分の出た句。

・春風やカフェカーテンに掛け替える​(ペンネーム「徳​」さん 58歳)
→心機一転の気分の句。中七の言い方が少し窮屈ので一考するとよさそう。

・春風や地球岬に雲の船​(ペンネーム「かすみ草​」さん 59歳)
→非日常感の出た句。下五がやや観念的なので「雲のいろ」などさらりとよみたい。

・ハコスカの右側追い越す春の風​(ペンネーム「ヨシ整体​」さん 60歳)
→ドライブの楽しさの出た句。「ハンドルの右を追い越す春の風」などのほうがわかりやすそう。

・春風や川面に浮かぶ花筏​(ペンネーム「9月の雨...順子​」さん 61歳)
→綺麗な句。しかし「春風・花筏」の季重なりが強いのでさけるとさらによくなりそう。

・春風や花びらフリル揺らしおり​(ペンネーム「そよそよ​」さん 62歳)
→かわいらしい気分の句。「春風・花びら」の季重なりが強いのでさけるとさらによくなりそう。

・エンジンを吹かす農小屋春の風​(ペンネーム「痺麻人​」さん 64歳)
→活動的な春の気分の句。全体的に盛り込みすぎのようなので、出来ゴトでななくモノを詠むようにしてみたい。

・春風にゆられ音戸の渡し舟​(ペンネーム「クリスマスローズ​」さん 66歳)
→春らしい気分がよく出た句。無理のない詠み方がたのしい。好句。

・春の風児のポケットはおもちゃ箱​(ペンネーム「きいたん​」さん 68歳)
→子どもの雰囲気がよく伝わる句。詠み方が尻切れトンボなので韻文にするとよくなりそう。「ポケットにおもちゃつめこむ春の風」など。

・春風と旅立つ君の髪香り​(ペンネーム「えみちゃん​」さん 70歳)
→分かれのさみしさの出た句。香りが印象的。

・春風やビルの谷間の夜勤明け​(ペンネーム「みよこ​」さん 70歳)
→なかなか気づかない時間を捉えた。上手い一句。好句。この方向で。

・春風やラメ入りの靴選びおり​(ペンネーム「ふー​」さん 71歳)
→春風がそうさせるのである。明るい気分の共感をさそう句。

・校門の記念写真に春の風​(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ​」さん 72歳)
→春風が写真にうつったという句と取りたい。詩的な句。この方向で。好句。

・春風の土踏みしめる散歩道​(ペンネーム「あしながおじさん​」さん 72歳)
→なんらかの実感が感じ取れる句。

・打球音河原の子らに春の風​(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
→活動的な気分の句。

・両の手をふわりと抜ける春の風​(ペンネーム「水彩少年​」さん 72歳)
→春風にカタチを感じたのが手柄。出来ゴトではなくモノを詠むとさらによくなりそう。

・薄暗きオランダ坂に春の風​(ペンネーム「匿名じいさん​」さん 72歳)
→明け方のイメージである。期待感か屈折した心境か。

・新築の屋根の赤色春の風(ペンネーム「めがねバーバ​」さん 73歳)
→明るい句である。中七の詠み方が惜しいので「新築の屋根の色づく春の風」あたりで詠んでみたい。

・文机の創擦りゆく春の風​(ペンネーム「みなと​」さん 74歳)
→なかなか心情表出の出来た句。「文机の傷をなめゆく春の風」などでも。

・春風や老人ホームの赤い屋根(ペンネーム「コスモス​」さん 75歳)
→どのような気分か想像する楽しみの与えられた句。好句。

・春風をいっぱい詰めたランドセル​(ペンネーム「だいさん​」さん 75歳)
→希望に満ちた句。「詰めた」より「詰める」と詠む方がリアルで臨場感が出そう。

・春風や恋文かすかに匂いけり​(ペンネーム「めぐちゃん​」さん 77歳)
→少しせつない気分の句。実感がよくでている。この方向で。

・春風をまつピカピカのランドセル​(ペンネーム「古志清右衛門​」さん 78歳)
→希望の感じられる句。「春風・ランドセル」は類想が多いの気を付けたい。

・そそり立つ豪華客船春の風​(ペンネーム「テッちゃん​」さん 80歳)
→句のリズムがブツ切れになって惜しいが、雄々しい句。好句。

・送り出すわが子の背なに春の風​(ペンネーム「ひょっこ​」さん 76歳)
→親心の句。少し説明的なので「子の背なを送り出したる春の風」くらいでも。

入選B

・恋の花春風と共にやってくる​(ペンネーム「クランキー​」さん 24歳)
・そよ風や来たれと想えばさくら道​(ペンネーム「ジンジャーハイ​」さん 27歳)
・初めてを向かおう貴方と春一番​(ペンネーム「あや​」さん 28歳)
・春風が吹くたび思う恋心​(ペンネーム「馬場さんみたいになりたいです。​」さん 31歳)
・骨折の日の春風よ青天よ​(ペンネーム「野良古​」さん 32歳)
・娘発ち寂しく走る春風や​(ペンネーム「ケロママ​」さん 40歳)
・春風で浮かぶ花びらさくら酒​(ペンネーム「しまっかーとにー55​」さん 40歳)
・春風を集めて温し日曜日​(ペンネーム「HK​」さん 41歳)
・春風や漢方薬の効き目まだ​(ペンネーム「伊藤亮太​」さん 41歳)
・春風や桜に吹くのは違反だよ​(ペンネーム「手桶​」さん 42歳)
・春風や一、二、三番徒競走​(ペンネーム「成虫​」さん 42歳)
・春風や洗濯物も嬉しそう​(ペンネーム「壁画​」さん 42歳)
・春風に乗って来ました開花宣言​(ペンネーム「彩の子猫​」さん 44歳)
・春風が土筆を撫でて菜の花に​(ペンネーム「彩の助​」さん 44歳)
・春風に桜の花弁流されて​(ペンネーム「稲葉高飛郎​」さん 45歳)
・春風に吹かれ舞い散る桜かな(ペンネーム「いちご​」さん 46歳)
・春風に調子はどうだいバオバブよ​(ペンネーム「暇床屋​」さん 51歳)
・ふわふわと春風にのり綿毛舞う​(ペンネーム「やまかぜファイブ​」さん 55歳)
・春風の土手ドクターイエロー撮る​(ペンネーム「たけの子​」さん 58歳)
・春風に誘われしゆく花見かな​(ペンネーム「りんの​」さん 58歳)
・春風にそそのかされてキップ買う​(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん​」さん 63歳)
・おさな児と抜きつ抜かれつ春風よ​(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん​」さん 63歳)
・暴君が春風に乗り北国へ​(ペンネーム「ひなじいさん​」さん 63歳)
・扉開け肩をすくめる春風に​(ペンネーム「広島レモン​」さん 63歳)
・春風に託し届け愛のメッセージ​(ペンネーム「さんちゃん​」さん 64歳)
・春風に誘われ旅する老夫婦(ペンネーム「みっちゃん​」さん 64歳)
・春の風山が黄色く菌がとぶ​(ペンネーム「DIYじじ​」さん 66歳)
・山景色香り漂う春風や​(ペンネーム「aniesu​」さん 68歳)
・梅林に春風吹いて花が舞う​(ペンネーム「リュー​」さん 68歳)
・ちょっと待っていたずら春風青いシート​(ペンネーム「グラン グラン​」さん 69歳)
・春の風映画帰りの喫茶かな​(ペンネーム「ヒロリン​」さん 69歳)
・春風や補助輪とれてすいすーい​(ペンネーム「田中ようちゃん​」さん 70歳)
・春風や花散りぬるを怨み顔​(ペンネーム「あこうちゃん​」さん 71歳)
・春風や期待も背負うランドセル​(ペンネーム「かっちゃん​」さん 77歳)
・春風に思いをはせる恋心​(ペンネーム「彼女大好きな彼氏​」さん 23歳)
・春風が女の髪にイタズラレ​(ペンネーム「三日酔い​」さん 45歳)
・春風や逆転カープ駅の道​(ペンネーム「東広島の七十爺​」さん 74歳)
・春風が呼ぶ早く来いよと波頭​(ペンネーム「コンセプシオン6​」さん)

ユニー句(句)

・春風が運ぶ涙のスギ花粉​(ペンネーム「うえぽん00​」さん 23歳)
・春の風肌で感じる薄い髪​(ペンネーム「Dr.でぶ​」さん 45歳)
・飽きもせず春風女子に付きまとう​(ペンネーム「日向ぼっこ​」さん 47歳)
・春風や目覚まし時計の二個並ぶ​(ペンネーム「モリババと40人の盗賊​」さん 52歳)
・春風に花見弁当 砂まみれ​(ペンネーム「やまかぜファイブ​」さん 55歳)
・待っている寒い北国春風を​(ペンネーム「まあくんの祖母​」さん 62歳)
・春風に乗せて誠也の場外弾(ペンネーム「⑦パパ​」さん 62歳)
・春風に乗って来そうな好景気​(ペンネーム「まあくんの祖父​」さん 64歳)
・春風とともにたわぶる花粉症​(ペンネーム「昔の神童​」さん 74歳)
・春風や公式戦の幕開けぞ​(ペンネーム「テッちゃん​」さん 80歳)
・「春風の二人」を歌う二人かな​(ペンネーム「ありんす​」さん 82歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年3月16日(金)

第88回 お題「蝶」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「蝶」。
今回も大変多くの投句を賜り光栄でした。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず、原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句は、五感を刺激する春のワクワク感がよく感じられる句。
入賞句の「猫」は、常識にとらわれず大胆に詩的真実を詠みあげた句。
入賞句の「少年」は、強い決意のようなものが感じられる若々しい句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「初蝶やカレーの国のコンテナ船」(ペンネーム「アヒル艦隊」さん 57歳)

春の気分を感じさせる「初蝶」が舞う中、「カレーの国のコンテナ船」が到着したという句であろうか。
あるいは「初蝶」と「カレーの国のコンテナ船」のイメージを重ね見ている句であろうか。
どことなく「初蝶」が「コンテナ船」を引っ張ってきたというような詩的真実も感じとれ面白い。
特定の国名ではなく、「カレーの国」と象徴的に詠んであるところも臭覚や味覚を刺激するし、楽しさのような側面をより強調して伝えており効果的である。
また単なる船ではなく「コンテナ船」とあることで、「コンテナ」の中を想像する楽しみもあるし、その形態も「初蝶」の形態と、つかず離れずの関係性で調和がとれている。
カタカナが多いところも、どこかしらコミカルでメルヘンチックで親しみやすく、これもよく効いている。
新しい名前の方であるが、措辞の斡旋に長けたしっかりしたモノ句の一句である。
一句に託された楽しい気分・ワクワク感のようなものが感じ取れれば鑑賞は成功であろう。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
カタカナを効果的に使う。

入賞

「抱かれたる猫ひらひらと蝶になる​」(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)

蝶舞う春の昼下がり、猫を抱いた作者がうとうとしているときの一句であろうか。
句意は明瞭「抱かれている猫が蝶になる」でよい。
中国の戦国時代の宋国の思想家で、道教の始祖の1人とされる荘子の説話『胡蝶の夢』が思い出される。
『胡蝶の夢』とは、「夢の中で蝶になって飛んでいた所、自分が蝶になった夢をみていたのか、それとも今の自分は蝶が見ている夢なのか、分からなくなった」というものである。
この説話は「無為自然」というの荘子の考え方をよく現すものとして知られている。
このような句は、伝統的な俳句観にすっぽりはまっている方にはお手上げであろうし、俳句は日常・現実を詠むのもと思っている方には、全くついてゆけないであろう。
以前にも述べたが、俳句は現実を現実らしく詠むことでもないし、何かの出来事を過不足なく伝えることでもない。
眼ではなく、心に映った真実(そんな気がする)を、句にすればよいのである。
その意味で、春の昼ののびやかな気分の中、眼の前の猫と蝶が溶け合う夢うつつの瞬間をよく捉えている。
自他の区別もなくすべてのものがつぎつぎに形を変えながら変化してゆくなんらかの境地を伝えるような句で見事である。
生物学的な観点(理屈・意識・知識)からすれば、哺乳類の猫が昆虫の猫になるなどありえない話であるが、作者の心(無意識)がそれを実感したのである。
仏教の「無常」を持ちだすまでもなく、一切は常に変化し不変のものはないのであるから、その意味でも、実体のある猫が他のものに姿を変えてゆくという「真実を射止めた句」と受け取れば何の不足もない。
「ひらひらと」→「蝶」がつきすぎの表現とも言えるが、のびやかな春の空気に向かって変化してゆく気分はまさしく「ひらひら」でなければ言い表せなかったようにも感じられる。
こういうところは「無意識からの表現」と受け取りたい。
頭(世間体・常識・理屈・教条)に惑わされず、無意識からの実感・詩的真実を見事に詠みあげた気分の出た一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
「その馬鹿らしさに気がついた場合、それを捨て去ることを急いではならない。かりそめにもその馬鹿らしいことは存在したのだ……どうして、そんなことがあり得たのか?ちょっと待った。」
詩人ポール・ヴァレリー

「初蝶や少年の肩そそりたち」(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)

一読して、高浜虚子の「春風や闘志いだきて丘に立つ」が思い起こされる。
春の暖かさを感じある日の強い決意のようなもの、男らしさのようなものを直接のべるでもなく、しっかりモノに託して詠んであり見事である。
しかしながら「初蝶・少年」だからであろうか、どことなくピュアでもろい心境のようなイメージも同時に運んできており、そのような相反するイメージが詩の厚みになっているようである。
虚子の句が頭にあったがどうかは不明であるが、虚子の句の詠みぶりに従うなら「そそりたつ」としてもよさそうであるが、そうするといかにも言い切った気分が強すぎて一句の気分に合わない。
この句の場合、原句のほうがバランスがよさそうである。
対象に自己を重ね見て詠んだ若々しい一句。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
言いたい事ではなく、何かしらの気分を伝える。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・初蝶や首ほっそりと薬瓶(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※イメージです。
→浮かんだままの句のようであるがそれでよい。何らかの気分を詠めばいいのである。切れ字前後のとりあわせが実に絶妙のバランスである。女性的ななまめかしさが美しい。これはこれで一句なのだが「初蝶の首の細さや」などもあろうか。

・初蝶や彩りの増すベレー帽(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※春が来て、外でスケッチをしている絵描きさんのキャンバスも彩り豊かになっている様子を句にしました。
→「増す」がやや直接的な表現で賛否ありそうであるが、春の気分をよく伝える句で楽しい。この方向で。

入選句

特選

・海峡を渡るフェリーや蝶の群れ(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
→海辺の風景を遠近法で美しくまとめた。後半にゆくにしたがって非日常感が出てくる詠み方が効果的で読者をひきつける。この方向で。

・踏切の開けば蝶行く明けの空(ペンネーム「コバルトブルー」さん 32歳)
→通勤でのはっとした一風景を捉えたものであろうか。少々類想が多いのと少し理屈っぽいのが玉に瑕であるが、これはこれで何らかの明るい気分を上手く託し詠みした一句。

・城跡の井戸より出づる春の蝶(ペンネーム「野良古」さん 32歳)
→吟行での句であろうか。詠み方はカッチリしているのであるが、世界観がどうにも古めかしく惜しい。気持ちはよくわかるのであるが、伝統的な俳句観にとらわれずのびのび詠んでほしい。日常を詠む場合はそこに批評精神がほしいのである。俳句を詠もうとせずぜひ詩を!

・蜜といふ喫茶に憩う蝶の口(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
→面白い把握の句である。「蝶が花の蜜という喫茶に憩う」という句なら意図的で浅い。しかし、「蜜という名前の喫茶」であればなんとか詩になっている。ここでは後者と解釈しておく。その意味では「蜜という喫茶の窓や蝶の爪」くらいで詠んでみたいところである。次回もぜひ挑戦を!

・初蝶の浮き沈みゆく白帆かな(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→港での眺めであろうか。「浮き沈みゆく」のが「初蝶・白帆」両方にとれる詠み方で働いている。あたたかな春になりたてののびやかながらやや不安定な気分のようなものを上手く託し詠みしている。この句の場合「浮き沈みする白帆」と言っているが、船が危険にさらされているという状況ではなく、波に揺られてのんびりしているというような気分である。句の表面そのものではなく、こういう「気分」を感じとることが大事である。この方向で。

・初蝶の空に溶けゆく歩道橋(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→散歩のときの一句であろうか。「空に溶けゆく」のが「初蝶・歩道橋」両方にとれる詠み方で働いている。「初蝶・歩道橋」という無理ない把握がいい。春の陽気が自他を超えた一体感のようなものを感じさせるのであろうか。そういった気分を上手く伝える句である。

・紋白蝶たゆたう午後の遊覧船(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→どこかの公園、あるいは旅行などでの句であろうか。「午後」が言わずもがななのが惜しいが、上の句同様、春の気分をほのぼのと伝える一句で美しい。

・初蝶ややわらかき風つまずいて(ペンネーム「雅」さん 55歳)
→「初蝶」そのものの実感を句にした。「初蝶」だけにやや弱弱しいというか動きがまだぎこちないイメージである。意味にもたれるならば「やわらかき風につまずく紋白蝶」などのほうが自然であるが味気ない。原句のような無意識からの詠み方のほうが、何かしらの実感を強く伝えているようで心を打つ。こういうところが私のいう「俳句は気分・ムード」なのである。決して俳句らしさに溺れてはいけない。

・あたたまるペンで話が蝶になる(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
→入賞句の「猫」の句に近い世界観である。「話が蝶になる」など常識的な感覚では太刀打ちできないであろうが、無意識からの実感を上手くくみ取っている。「話」という実体をもたないものが実体のある「蝶になる」。この句も春の幻想性・生命力を詠み込んだ詩的真実の句である。

・白壁を汚す紋白蝶の影(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→ビルの壁がイメージされる。常識的にはプラスイメージでとらえられる「蝶」を、「汚す」というマイナスイメージでとらえているところが収獲である。「日常を詠む場合はそこに批判精神がなければならない」ということを私はよく言うが例えばこういうことである。 惜しいのは類想が多いところ。しかしてそれは多くの詩人の詩心と通じるということでもある。この方向性を期待したい。

・斑蝶鏡の中から抜け出せり(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→蝶の幻想性と鏡の取りあわせはよく釣り合っている。非日常的な気分が楽しませる。これくらいに把握しないと詩にならない。少々類想が多くのであるが、この方向でよい。

・初蝶やホスピスの窓磨く朝(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
→嘱目の句であろうか。心象風景であろうか。いずれにしてもこのさわやかな気分が共感を誘うやさしい一句である。この方向で。

・蝶々に窓を大きく開きたり(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
→大らかな気分の感じ取れるのびやかな句で好句。下五は「開きおり」などのほうが座りがよさそうである。

・蝶々や空に飛びつくゴリラの子(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
→動物園の光景であろうか。「蝶々・ゴリラの子」とくれば、多くの方は 頭や先入観が働いて「青空や蝶にとびつくゴリラの子」などと詠んでしまいがちであるが、「ゴリラの子」が「蝶々」ではなく「空」に飛びついていると詠んでいるのである。赤ちゃんゴリラならではのぎこちない動きを先入観なくとらえている見事な写生句である。実にほのぼのとしたのびやかな気分が感じ取れる輝句好句。この方向で。

・蝶になり来世の父母に逢いにゆく(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→「蝶になりたい・逢いにいきたい」ではなく、「蝶になり逢いにゆく」となんとか観念をさけ実存に重心を置いて詠み句にした。ただし世界観が「蝶」のステレオタイプであるところがどうにも惜しい。熱いものをもっているのはよくわかるので、そこをモノをしっかり通して詠んでみてほしい。

・国境の天地を跨ぐ蝶々かな(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
→国境での風景であろうか。人間が国境をまたぐのは覚悟が入りそうであるが、蝶々にもそのような気分が感じ取れる句である。少し理屈っぽいが手慣れた詠み方が上手い。

入選A

・青々と芽吹く大空蝶の風(ペンネーム「ケロロ」さん 18歳)
→全体的につきすぎなのが惜しいが、春の生命力を上手く託した。

・初蝶や髪留め落ちてる停止線(ペンネーム「三滝のベベ」さん 38歳)
→発見の句である。中七の詠みが甘いところ「停止線」が必要かどうか。そのあたりを一考したい。

・黄と黒のロープのあちら春の蝶(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→「春の蝶」程度の季重なりはどうということはない。問題は「あちら」。「軋む」などとしっかり心情表出して詠んでみたい。

・大輪に集まる蝶々乳母車(ペンネーム「オリオン」さん 42歳)
→大らかな春の気分の出た句である。「大輪」は何かの花のことなのであろうが中途半端。ポイントを絞って「乳母車車輪につどう蝶々かな」くらいに詠んでみたい。

・春の蝶プレーボールの手が上がる(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→どうも最近コト句寄りで惜しい。この句も少しそのような気配。常識的な俳句観に惑わされず、自分の感性を信じて、無意識からの実感に素直に詠むようにされたい。

・蝶々や陽だまりに本忘られて(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→公園での一句であろうか。軽やかな詠み方はよいのであるが、世界観がどうにも常識的で惜しい。そこを攻めてほしい。

・モンシロチョウ団地の空で羽ばたいて(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
→いろいろな人・いろいいろな考え・年代の人が住む団地の上を蝶が羽ばたいたので詩になった。しかして全体的には平凡。そこを攻めたい。

・しじみ蝶アスファルトから咲く花に(ペンネーム「さおりっち」さん 44歳)
→小さな春の発見を確実にとらえた。惜しいのは散文の倒置のような詠み方。古今の名句に触れるとよいであろう。

・てふてふ跳ぶコンクリートジャングルを(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→この道場では特に強い主張がない限り、現在使われ将来も使われるであろう現代仮名遣いをお勧めしたい。後半の詠み方に批評精神というか心情表出がよくできている。観念的な句も多いが、このようなモノをしっかり据えた句を希望したい。

・七階にある病室や白い蝶(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→日常の域を出ておらず惜しい。日常を詠む場合はそこに批評精神がなければタダゴトである。例えば「病室の壁にひびある白き蝶」あたりなら何らかの心情表出が感じられる。

・春の蝶ドンキホーテの散歩道(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→「ドンキホーテ」はスペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスの小説の世界ととりたい。なかなか楽し気な気分の感じられる句である。

・春風に揺られる蝶のランニング(ペンネーム「ジジププ」さん 48歳)
→「蝶のランニング」が手柄。心象風景であろうか愉快である。「春風に揺られ蝶とランニング」などでは当たり前で詩にならない。「春風・蝶」の季重なりはそこまでの傷ではない。

・蝶々や白き個室をひと回り(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
→惜しいのはやはり何の「個室」が中途半端なこと。「病室」など具体的に詠むほうがイメージが湧きやすい。

・初蝶の影絵のように消えにけり(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
→初蝶のはかなさを詠んだ句であろう。気になるのは「ように」。「影絵の中へ」「影絵となりて」などと詠んでみたい。詩の磁力が違う。心に「影絵」が浮かんだのであるから、その実感のままに詠めばいい。

・幾億の蝶を放てる大樹かな(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
→入賞の「猫」の句の気分に近い。この句の惜しいのは「幾億」こういうところは「百億」など具体的に詠んでみたい。

・蝶々や親指姫の眠る花(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
→絵本の世界のような句であるが観念的で弱い。また「蝶・花」はつきすぎである。言葉に溺れずモノからの実感を詠むようにしたい。

・六人の鼓の舞台蝶生まる(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→私の句に「六人の美女いて白き石切場」がるがそれを思い出した。野外の能の句であろうか。しかして全体的に平凡でおしい。上五中七のフレーズに下五を無理やりくっつけたような散文崩れな舌足らずな詠み方はどうにかしなければいけない。俳句は引き算ではなくむしろモノとモノの掛け算と心得たい。

・蝶々の羽音密かに噴火口(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
→対比の効いた句で好句である。惜しいのは「密かに」という直接表現・言い過ぎ。「噴火口ふちどっている蝶の羽」など。

・黒板の自己紹介や春の蝶(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→新学期の気分をモノに託していて気分の出た句である。惜しいのは「自己紹介」。こういうところをモノの様子に託したい。「黒板の文字まっすぐに春の蝶」など。

・蝶の舞幻想的な万華鏡(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
→きらびやかな気分の句である。惜しいのは「幻想的な」という直接表現。こういうところをモノの様子に託して詠みたい。「蝶の羽重なってゆく万華鏡」など。

・初蝶や旅荷は山のごと一座(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→春の旅の一座の気分の句。「山のごと」が言いたいのであろうが言いたい事は俳句にならない。盛り込もうとするとこのように散文の省略形で舌足らずになってしまう。「蝶の昼旅の一座の荷物かな」くらいか。

・スケッチの春に留まりし蝶一頭(ペンネーム「クリスマスローズ」さん 66歳)
→面白い把握である。「春・蝶一頭」が大変よい。全体的にやや抽象的なところが惜しいがこれはこれで一句であろうか。堂々たる春の気分をよく伝えている。季重なりというよりも「春」をドンと打ち出しているから「一頭」という気分と釣り合っているようである。この方向で。

・初蝶や日の匂いの子紅を買い(ペンネーム「不思議の国の兎」さん 66歳)
→体育会系の少女が化粧品を買う様子であろうか。面白い。惜しいのはモノではなく出来事を句にしていること。買ったというコトではなく、モノを打ち出して詠んでみたい。「初蝶や陽の匂いする子らの紅」など。

・初蝶や青春切符受け取りて(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→この句の上の句同様、コト句寄りなのが惜しい。「初蝶の受け取る青春切符かな」などとモノで詠むと切符のイメージが押し出されてさらに感じ入る句になりそうである。

・幼な子の指すり抜けて蝶笑う(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
→「蝶」と戯れる「子」の句であろうか。少々出来事寄りなのが惜しいが、春のほほえましさが感じられる一句である。

・病む母の窓辺にチラチラ蝶優し(ペンネーム「みよこ」さん 70歳)
→病気のお母さんを詠んだ句であろうか。あたたかさの感じられる句である。惜しいのは「病む・優しい」と直接的に詠んでいるところ。「床に臥す母や窓辺の蝶の影」など、もう少しモノに託して詠むようにしてみたい。

・初蝶や一輌電車高架過ぐ(ペンネーム「吞田」さん 71歳)
→散歩時の光景であろうか。少し平凡なところが惜しいが、一瞬の緊張感のようなものを上手くとらえた。

・青い空蝶と出くわす散歩道(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
→おおらかで俳味の感じられる句である。素直に「青空や」と切ってみたい。

・国境の空行き交う蝶放つ(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
→国境の気分の出た句である。もう少し舌頭千転して座りをよくしたい。「国境の空を行き交う蝶の影」など。この方向で。

・春の蝶走り始めた園児かな(ペンネーム「水彩少年」さん 72歳)
→いよいよ暖かな春になったという気分の感じ取れる句である。惜しいのは「始めた」と過去形で詠んであるところ。やはり「走り始める」など現在で詠むほうがパワーが感じられる。

・焦げ臭き午報の浦や蝶生る(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→浦のなんからの不穏な気分をよく伝えている。この方向で。

・県境多々羅大橋ペアの蝶(ペンネーム「七十爺」さん 74歳)
→モノ句へ向けて頑張っておられる様子がうかがえる。しかしよい傾向である。それが三段切れになって今はまだぎこちないのである。まずはモノを据えて詠むようにし、俳句形式を自分のものとされたい。

・初蝶や名残りの列車の写真展(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
→消えゆくモノと生まれ出るものの対比が効いている。惜しいのは「名残り」という直接表現。ここを「三江線」などで詠んでみたい。

・流される蝶見て涼し瀬戸の海(ペンネーム「だいさん」さん 75歳)
→なにかしらの満たされぬ思いのようなものが感じ取れる句である。惜しいのは措辞が整っていないこと。舌頭千転し「流れゆく蝶の背中や瀬戸の海」などとしたい。

・初蝶やポニーテールの黄リボン(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・春の蝶ポニーテールのリボンかな(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)

→上記2句はたまたま同じような気分。偶然なのが面白いが、オリジナルな把握を共に期待したい。

・青空の風に乗り来て蝶となる(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→春の喜びを自分の言葉で句にしようとしているが、少し措辞が整理されていない印象なのでモノを絞って詠んでみてもよいかもしれない。

・図書館に静かな刻や蝶の舞う(ペンネーム「卓ちゃん」さん 82歳)
→「図書館・蝶」とはそれだけで詩的である。惜しいのは中七の直接的な表現。「図書館の窓に重なる蝶の息」など。

入選B

・花散りて残り香に舞う蝶々(ペンネーム「あめ」さん 19歳)
・蝶舞って春到来を告げている(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・初蝶にエールもらいて新学期(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
・蝶々と保育園児の徒競走(ペンネーム「はますけ」さん 32歳)
・髪黒に老婆と蝶々再会す(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・蝶々の舞う姿見て春感じ(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・紋白蝶団地の声漂って(ペンネーム「犬蔵の王」さん 43歳)
・春風に乗ってやって来た二羽の蝶(ペンネーム「あやの子猫」さん 44歳)
・菜の花に紛れて飛び交うモンキチョウ(ペンネーム「彩の助」さん 44歳)
・初蝶や服を脱ぎ捨てうきうきと(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・蝶と風陽光浴びて戯れる(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・桜舞う花弁の間飛ぶ蝶々(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・蝶よ聞け吾の新しきペンの声を(ペンネーム「cava」さん 49歳)
・海の中訪ねてゆきたし蝶の家(ペンネーム「島根のぽん太」さん 50歳)
・オリーブの葉に薄緑並ぶ蝶(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・菜の花に蝶がひらひら春の風(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・花の香に蝶も舞えば気も踊る(ペンネーム「やっちゃん」さん 58歳)
・密林の瑠璃色の蝶ひらひらり(ペンネーム「徳」さん 58歳)
・蝶々や問わず語りで帰り道(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・蝶二頭螺旋に高く濃い青へ(ペンネーム「ヨシ整体」さん 60歳)
・終雪か初蝶舞いて冬じまい(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
・初蝶の行く手に優し光満つ(ペンネーム「安田 蝸牛」さん 61歳)
・初蝶や孫のヨチヨチ黄なる声(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・新幹線蝶迷い込み笑顔咲く(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・蝶よ花よと育てて貰ったが今は夜の蝶(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・てふてふや右に左に春を舞う(ペンネーム「てんつく」さん 67歳)
・鞆の浦乙姫様に蝶も舞う(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・蝶ふわり風の手のひらゆりかごに(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・菜の花に蝶々舞う夕暮時(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・南はるか舞いもさそうよ竹富のチョウ(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・亡き母や蝶になり来て嬉しさよ(ペンネーム「えみちゃん」さん 70歳)
・見え隠れ蝶がいざなうけものみち(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・マラソンの桜吹雪に蝶も舞う(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・初蝶や黄の波間に見え隠れ(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・梅椿乱れし後は蝶の幻(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・海原のはらはらしおる蝶の旅(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・錆びて磨かれ鎹が蝶になる。(ペンネーム「コンセプしおん6」さん)
・墓所へ行く坂道蝶とみちづれに(ペンネーム「赤毛のアン」さん)
・もつれあい上へ上へと恋の蝶(ペンネーム「善光」さん)

ユニー句(句)

・蝶が舞う昆虫館は超きれい(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・紋白蝶生まれた時からカープファン(ペンネーム「モッツァレラえのくし」さん 42歳)
・ひらひらとどこに飛び行く蝶と金(ペンネーム「暇床屋」さん 51歳)
・初蝶やスマホ構えて姿なし(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
・男子受けするパステルの蝶ヒラリ(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・てふてふは有名すぎてみな読める(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・吾の甘藍食い散らかして蝶羽化す(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・奇麗な娘ネオンが似合う夜の蝶(ペンネーム「さんちゃん」さん 64歳)
・寝坊助の虫よ起きろと番蝶(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・害虫と知るまで愛し紋白蝶(ペンネーム「善光」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年3月9日(金)

第87回 お題「桜餅」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「桜餅」。
全国各地から多くの投句を頂き、光栄に思っています。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず、原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

気になることは、句の語と語がどういう効果(イメージ)を生んでいるかということよりも、書かれてある出来事にもたれて詠まれた句が多いことです。
俳句が詩や芸術である以上、その効果というものに敏感になってほしいと願います。

大賞句は、春の季語「桜餅」に上手く幸福感を託して詠み、共感を詠む句。
入賞句の「左手」は、旅行のワクワク感を上手くうまく託して詠んだ句。
入賞句の「少女」は、テーマと少女とのイメージの取り合わせが生きた句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「桜もち小さき海の新居かな」(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)

「海辺」の「新居」で初めて迎える春、家族が「桜もち」を食べている光景がイメージされる。
この句の面白いところは「小さき」。
これが「海」「新居」ともに掛かるような詠み方で、いかにも「つつましやか」な気分を醸し出している。
この「つつましやかな気分」が、「桜もち」のたたずまい・あわい香り・素朴な味わい、ひいては春のぬくもりのようなものと、取り合わさることで、つかずはなれずの相乗効果を生んでおり、なんともいえない「幸福感」を醸し出している。
「もち」とひらかなで書かれてあるところもやわらかで効果的である。
滋味あふれる世界観が共感を誘う一句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
ひらかな・漢字のやわらかさ・かたさを効果的に使う。

入賞

「左手に富士の裾野や桜もち​」(ペンネーム「もじこ​」さん 48歳)

ピクニックか電車などでの旅行の句であろうか。
「富士の裾野」の広がりある風景を感じつつ、「桜餅」という春の味覚を味わってる様子が浮かぶ。
この句の面白いところは「左手」。
あえて「左」を強調することで、読者に自動的に右側の風景まで想像させる効果を生んでおり、空間把握が広い。
いずれにしても、旅行の「わくわく感・楽しさ」を直接言わず、大きな風景や「桜餅」の気分に、しっかり託して詠んであり、見事である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
左右の視点。

「桜もちほのかに匂う少女かな」(ペンネーム「匿名じいさん​」さん 72歳)

桜餅を食べている時に少女の匂いを感じたという句であろうか。
あるいは、「桜餅」「少女」を「取りあわせ」た句であろうか。
両方に解釈できる。
この句の面白いところは、「ほのかに匂う」。
ここが「桜餅」にも「少女」にも掛かるような詠み方で、言葉が働いており、詩の膨らみを生んでいる。
さらに、「桜餅」の薄いピンク色と、「少女」の服などのイメージでもあるピンク色の重なりも自然にイメージされてきて、色彩的にも美しい。
あたたかくなってゆく春の季節、少女の大人びてきたような気配を「かわいいだ、素敵だ」などと直接いわず、うまくモノに託して詠んであり美しい。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
モノとモノを取りあわせる。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・天の色ふくらんでゆく桜もち(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※この句は気分だけですが、、、。
→作者のいうように俳句は気分が伝わればいい世界である。中七の表現が上五下五に対して絶妙で、モノを通して春の生命力をうまく伝えている。この方向で。ちなみに「桜もち尼僧ウインク練習す」「 桜もち強めに夫の布団打つ」は出来事を詠んだコト句なので注意されたい。

・桜餅青空包む手紙箱(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※青春時代に貰った手紙は、桜餅のように甘くもあり、酸っぱくもあり、そんな気持ちを句にしました。
→「桜餅・青空・手紙箱」とモノがやや多めで窮屈そうなところが少し気になるが、さわやかな気分の感じられる一句。

入選句

特選

・桜もち目覚まし時計を買い替える(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
→春の新生活の楽しい気分が感じ取れる句である。「目覚まし時計買い替える」が出来事なのが少し惜しい。読者は作者がい買い替えたコトを伝えてほしいのではなく、ただ句から何かを感じ取りたいのである。よってモノをデンと据えたい。「桜もち目覚まし時計の針しなる」など。

・桜餅葉に包み込む笑顔かな(ペンネーム「競馬大好き」さん 24歳)
→「葉に包み込む」という当たり前な措辞が惜しいが、春の喜びの感じられるなかなかの句。「笑顔かな」が安易だという方もおられようが、そこは素直な実感なので尊重したい。次回も挑戦を!

・桜もち島と島とをつなぐ船(ペンネーム「はますけ」さん 32歳)
→大きな風景でのびやかな心境の感じられる句である。「とをつなぐ」がもたもたした印象なので「連絡船島から島へ桜餅」などとしたくなるが、このように下手にいじると句がやせ細って最初の実感から遠ざかる。俳句形式に慣れつつ、実感に正直に詠みあげてほしい。もっと句が見たい方である。次回も挑戦を!

・桜餅空駆け巡るランドセル(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→語と語の関係が少しざっくりとしずぎで惜しい。俳句はその塩梅が難しい詩である。大らかで楽しい気分の感じられる一句。

・ふるさとのかたちそれぞれさくら餅(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→「さくら餅」は地域によってさまざまな作り方があるということを詠んだ句、というよりは、あっちの「ふるさと」そのものの気分、こっちの「ふるさと」そのものの気分というふうに、旅してまわっているようなイメージの句と取りたい。かろやかさが楽しく軽みが生きた。

・桜もち休憩中のユンボかな(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→「ユンボ」はパワーショベルのことらしい。「桜もち・ユンボ」の取り合わせは、見た目のイメージからか絶妙。惜しいのは中七の直接表現。「休憩中」などと言わず「足を投げ出す」など、モノやモノの様子に託して詠めばさらによくなる。

・桜餅合はせ鏡をそつと閉づ(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→女性の複雑な心情を詠み込んだ句でなかなか味わい深い。三面鏡なら「閉づ」で分かるが、「合はせ鏡」「閉づ」はイメージが少しちぐはぐである。そのあたりを再考されるとよいかもしれない。また俳句は、現在使われ将来も使われるであろう表記を採用して不足はないはずなので、「現代仮名遣い」をお勧めしたい。

・青空とキャッチボールす桜餅(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
→春の明るい気分がよく出ている句である。感じてみたい。

・ラジカセの聴こえる窓や桜もち(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→昭和の気分であろうか。どこか懐かしい世界である。「ラジカセ」→「聴こえる」がイメージの重なりで惜しいが、しっかりモノに託して詠んであるところがよい。この方向で。

・母来る凮月堂の桜もち(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
→お母さんの好きなお店の桜もちであろうか。固有名詞はよく知られているものでなければ伝わりずらいが、この句の場合、実の店を知らなくとも句の気分が伝わるので問題なさそうである。定型のバネの効いた手慣れた詠法が心地よい。

・桜餅オープン戦の芝生席(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→実にリラックスした気分の句で桜餅の気分と芝生の緑がよく釣り合っている。盛り込もうとせずポイントを絞って詠んだのが成功した。

・打ち寄せる波の音する桜餅(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
→取りあわせの句であろうか。なかなかムードが出ている。「波・桜餅」がつかずはなれずの関係性なのは「桜餅」の葉の塩のイメージがあるからであろうか。

・桜餅包み込まれるオゾン層(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→「桜餅」から地球全体へイメージが飛んだのであろうか。「包む」が「桜餅・オゾン層」に対してあたりまえの語の関係性で少し惜しいが、世界観は大したもの。大きく把握して詩にした。

・胎動を初めて覚え桜餅(ペンネーム「斎乃雪」さん 55歳)
→「胎動・桜餅」は絶妙の取り合わせであるが、詠み方が甘くそこが惜しい。「初めて」が作者の言いたい事なのであるが、言いたい事は俳句にならない。読者は作者の身辺の出来事を説明してほしいのではなく、句からただ何かの気分を感じたいのである。こういう場合は、句意は異なるが「胎動のしみこんでゆく桜餅」「胎動のほとりあかるき桜餅」など、最初の発想や出来事の伝達にとらわれず、詩に展開したい。

・桜もち毛繕いする猫二匹(ペンネーム「徳」さん 58歳)
→やや日常よりな世界観がものたりないが、何かを詰め込むでもなく、軽やかに詠んだところが成功した。俳味の一句。

・桜もち京都の路地に下駄の音(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→全体的に古都のイメージでつきすぎなのであるが、春の京都の町屋の気分がよくあらわされていて、個人的にも京都に住んでいたころが連想されてきてなつかしい。

・絵手紙の色咲きてゆく桜もち(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→なかなか面白い句である。中七がよい。「色」が少し抽象的なので、「空」などとモノを置くと、句が引き締まりそうである。

・桜餅二つうわばみ呑みこめり(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→「桜餅」→「うわばみ」が飛躍のあるよい取りあわせ。春のあやしさのようなものを象徴しているようで意味深。独特の世界観。この方向で。

・桜餅スマホに集う天使かな(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→意外な語の展開が楽しませる。春の楽しそうな気分が感じ取れる。この方向性でよい。好句。

・桜餅我が身を飾る単衣(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
→「桜餅」の葉と「一重」を重ね見た句であろうか。やや自虐的な詠みぶりが俳味に繋がっている。

・旧軍港十万トンの桜もち(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
→スケール感・重量感のある面白い一句でなかなか。大きな数字をドンと提示すると場合によっては荒さにつながるので安易な使用は気をつけたい。非日常感あるこの方向で。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・給食の悔し涙や桜餅(ペンネーム「コンスタンチン」さん 12歳)
・桜餅口のなかにも春一番(ペンネーム「ケロロ」さん 18歳)
・桜餅一口ほおばる春少女(ペンネーム「ASARINA」さん 19歳)
桜餅食べたらウグイス鳴き始め(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・引越や見慣れぬ形の桜餅(ペンネーム「野良古」さん 32歳)
・桜もち戸棚の奥にひとつだけ(ペンネーム「櫻井葉子」さん 41歳)
・桜もち葉っぱに包まれ許される(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
葉の衣羽織りはにかむ桜もち(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・桜餅ゼロペプシコーラ飲み干せば(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
柔らかいスカートめくり桜餅(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・瑞垣の道を掃く人桜餅(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
すまし顔ほっぺについた桜もち(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
・子の試合ハーフタイムの桜もち(ペンネーム「cava」さん 49歳)
きっちりと並ぶ草履や桜餅(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
・来客を見つめる子らの桜もち(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
嘘泣きのうまい少女や桜もち(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
鶯の初鳴き聞こえし桜餅(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・桜餅母娘の会話色づきて(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
・桜餅揃いの湯呑み午後の庭(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
生まれくる恋の香りや桜餅(ペンネーム「是多」さん 63歳)
蘊蓄聞きつつ食べる桜もち(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・ハンガーのセーラー服や桜餅(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
・手に残る香り塩の葉桜餅(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
・同窓会塩の香甘き桜餅(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・カラス5羽墓には2個の桜もち(ペンネーム「七十爺」さん 74歳)
・桜餅そっとくるんだ稚児の笑み(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・桜餅包む母の手赤くはれ(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・桜餅ほおばる孫の笑顔かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・桜餅ワンボックスカーの旅の夜(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
あの人の面影追うて桜餅」さん(ペンネーム「8」さん)

入選B

・恋話に真白き桜もち染まり(ペンネーム「胃痛」さん 37歳)
・桜もち濡れ手に泡や迷いせず(ペンネーム「三滝のベベ」さん 37歳)
・桜餅春の花色マッチして(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・桜もち貴方へ届け愛の唄(ペンネーム「犬蔵の王」さん 43歳)
・孫だっこ玄関で咲く桜もち(ペンネーム「今日も晴れ」さん 43歳)
・桜もち宝探しの恋人達(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・葉は取るの?桜と柏取り違え(ペンネーム「さおりっち」さん 44歳)
・葉の香り桜餅愛でる一日かな。(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・桜もち染み込んだ葉の風味良し(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・床に伏せ食べられなかった桜餅(ペンネーム「いちご」さん 46歳)
・桜餅甘い香りが詰まってる(ペンネーム「ジジププ」さん 48歳)
・桜もち笑顔の母を思い出す(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・風ふわり旅立ちの朝桜餅(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・辞令受くしづかな夜の桜もち(ペンネーム「そら」さん 58歳)
・さくらもち君とぺったり本通(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・春うらら春の葉香る桜もち(ペンネーム「りんの」さん 58歳)
・お裾分け春待ち人の桜餅(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
・桜餅辛党さえも葉が二枚(ペンネーム「安田蝸牛」さん 61歳)
・桜餅ひと葉まといてしとやかに(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・お母さん名前ペン置き桜餅(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・初恋のややしおはゆし桜餅(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・夕食後家族が賑わう桜もち(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・桜もち食べたらほっぺが桜色(ペンネーム「やんちゃばば」さん 65歳)
・珈琲はテイクアウトに桜もち(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
・春よ来いみんなで食べよう桜もち(ペンネーム「DIYじじ」さん 66歳)
・桜もち柱に憩いクイズ解き(ペンネーム「不思議の国の兎」さん 66歳)
・桜餅食べて思うは孫の顔(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・桜もち日本茶の友に一口で(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・葉脈の歯ざわりもよし桜もち(ペンネーム「boone」さん 70歳)
・茶飲み友カーテン替えて桜餅(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・手作りの桜もち母の墓参り(ペンネーム「みよこ」さん 70歳)
・こんな日は食べたい気分桜もち(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・昨年の香り纏って桜もち(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・一人住む姉へ土産の桜餅(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
・しっとりとお地蔵見てる桜餅(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・目力を緩めて桜もち食べる(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・母思う香りと笑顔桜餅(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・お悔やみ欄幼馴染や桜餅(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
・さくら餅今年届かぬ恩師から(ペンネーム「carpあーちゃん」さん)
・桜もち食む子へ残す夜核の傘(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

ユニー句(句)

・レジ横に目の泳ぎおり桜餅(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・恋敵は過去のお話桜餅(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・賞味期限守らず悪夢さくら餅(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
・桜餅葉を食べるのは昭和人(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・桜より桜色した桜餅(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・桜餅じゃんけん勝てばもう一つ(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・桜もちあらゆるもちの中でこれ(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・桜もち食べたいけれど明日検診(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・血糖値検査は休み桜もち(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・桜もち渋茶の似合うお年頃(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・オープン戦桜餅ほうばってカープ女子(ペンネーム「かぷこ」さん 68歳)
・桜もち寄り添う二人影ひとつ(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年3月2日(金)

第86回 お題「雛祭」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「雛祭」。
今回も全国各地から多くの投句を頂き、光栄に思っています。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

今回もいつものように応募は沢山いただきましたが、全体的な句のレベルはいつもに比べて低調でした。

大賞句は、心の葛藤を上手くモノに託して詠んだ一句。
入賞句も、陰鬱な心境を上手くモノに託して詠んだ一句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「吊るし雛グループホームの蛍光灯」(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)

最近道場でよく見かける名前で、活躍中の方。
応募句の中にはまだ甘いものや安易なものなどもあるが、この句はモノをしっかりと打ち出しており大変よい。
「吊るし雛」というのは、布で作った人形や鯛や蝶々など、めでたいものを天井などから吊るして飾ったもの。
「グループホーム」は、認知症の方などが、スタッフの介護を受け受けながら、小人数で生活する施設のこと。
「グループホーム」での雛祭りの時期の様子を詠んだ句であろう。
この句のポイントは、人工的な「蛍光灯」の光。
ここに焦点を当てているところが実に象徴的で意味深である。
これが太陽なら包み込むようなあたたいイメージであるが、「蛍光灯」なので、太陽とは違い「明るいけれど機械的」なイメージである。
こういうところに「愛しているけど、仕事などの事情で一緒に住むのは難しい」というような、作者の相反する気持ち、ツライ心境が託されているのが読み取れてきて、共感を覚える。
心をしっかりモノに託して詠んである「託し詠み」のできた一句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
無意識にモノを二つ選択する。
それだけでココロは表現できる。

入賞

「雛祭ふすま隔てて乱歩読む」(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)

「乱歩」はまさに怪奇幻想の推理小説作家江戸川乱歩のことであるが、「雛祭」の裏側で「乱歩を読む」とは奇妙な光景である。
作者によると、姉やその友人達が大騒ぎする「雛祭」の輪に入れなかった中学生の頃のことを句にしたとのこと。
女性たちの輪に入れなった作者の、落ち込んだ気持ち、いじけた気持ち、陰鬱な気持ちを、直接言葉で言わず、「乱歩」に託して詠んだところが成功した。
「乱歩」といえば、『屋根裏の散歩者』『人間椅子』などの、天井から覗いたり、椅子から覗いたりというシーンが印象的であるが、「ふすま」一枚隔てているといいう舞台設定から、隣の女性の世界も気になっているというような、同じような世界観がイメージされてくる。
命を帯びたような雛人形と怪奇幻想の「乱歩」との取りあわせが、「赤・幻想・陰鬱・エロス」などのつかず離れずの非日常的な気分を醸し出し、何か物語でもはじまりそうな緊張感や怪しさまで感じ取れてきて、味わいは尽きない。
こういったイメージの膨らみを生んでいるところが、まさに託し詠みの効果であり、俳句形式の本領である。
好句。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
自分の実感をモノに託して詠んでみる。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・雛の家海に消えゆくワンピース(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※行っちゃったなあ、と
→「ワンピース」が印象的な象徴性の高い句である。これが「少女かな」などだと「雛の家」につきすぎであるし句も作り物っぽくなる。「ワンピース」に女性の作者ならではの実感がよく出ている。世の中には句の出来事や句の表現に美をおいた句も多いが、句からイメージされる世界に美を置いてきている、「詩」がわかっている方である。句からはなんらかの屈折した心境、喪失感などが感じ取れてきて共感を誘う。

・十八の凛々しき空や雛祭(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※この春大学進学を控えた娘さんをもつ友人の成長の嬉しさと寂しさを句にしました
→挨拶句といった気分であろうか。ご友人方にもこの欄を楽しく見ていただければと思う。世の娘様方の健やかなるご成長を念じ上げます。

入選句

特選

・ひな祭余りの多い連絡帳(ペンネーム「コンスタンチン」さん 12歳)
→生活を充実させたい作者となかなか現実が追い付いてこないそのギャップを上手くモノに託して詠んだ。この年にしてモノにしっかり託して詠めていて心強い。中七は「余白の多い」などと素直に書いたほうが読者がイメージしやすそうである。この方向で。

・雛祭かばんに入れる治癒証明(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
→「祭・治癒」と全面的に喜びのイメージだけで押しているところが惜しいが、これはこれで一句であろう。「雛祭」というハレの日に間に合った喜びを上手く託している。

・工場の夕日へ溶ける流し雛(ペンネーム「コバルトブルー」さん 32歳)
→無意識から湧き上がった佳句である。この句を作者が自己添削したものが「流し雛向かう工場の夕日かな」であるが、意味が通るように頭・理屈で修正したため、それと引き換えに詩を失った。「読者は説明してほしいのではなく、ただ感じたい」のである。句は「夕日へ溶ける流し雛」に上手く心情表出が出来た句で、強い敵意や野心・満たされぬ思いのようなものが感じ取れ、共感を覚える。この二句を通して「俳句は無意識からの芸術」ということに、気づいていただけたのではないかと思う。

・雛の目の憂ひ海辺の社かな(ペンネーム「マネレ」さん 43歳)
→作者が最も言いたいコトは「憂い」なのであるが、これが惜しいのである。「言いたいコトは俳句にならない」。俳句は「ココロ・憂い」を「コトバ・憂い」で表さず、「雛の目の沈む」など「モノ(モノの様子)に託して詠む詩なのである。そこが俳句と他の詩型との圧倒的な違いなのである。しかし「目・海辺の社」などモノの対比はよく効いており、全体としてはよい方向性。次回もぜひチャレンジを!

・雛祭酢の香漂う台所(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
→全体的には「雛祭→酢の香→台所」と「雛祭のちらし寿司」のイメージでつきすぎなのであるが、何かを言うのではなく「雛祭」の気分そのものをポイントを絞って詠んだところが詩につながった。短詩特有の詩型・定型のバネが味方してくれた句である。モノ×モノで象徴するこの方向で。

・人肌の残り湯に指雛祭(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→切断された指ととってもいいし、湯に手をひたすワンシーンととってもよい。いずれの解釈でもそれなりの非日常感が出ておりこれでよい。俳句は何かを明確に伝えるものではなく、気分を感じてもらうものなのである。なまめかしさがひきつける。

・雛祭り消しゴム薫る学習帳(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 48歳)
・俳句では「雛祭り」は「雛祭」と書く場合が多いが、この程度はどうということもない。「薫る」であるが、句意からすると嗅覚で感じる匂いに使われる「香る」と書くべきなのであろうが、「雛祭」の非日常的な気分だけに、「薫る」という抽象的・概念的な把握も一理ありそうである。句からは雛人形に見守られながら小学生くらいの女の子が勉強している様子がイメージされる。かわいらしさ・楽しさを上手く家の中のモノに託して詠みあげた。楽しい句。

・ハングルの付箋をはずす雛祭(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→韓国の方の読書シーン、あるいは韓国語などを学んでいる人の風景であろうか。ユニークな取りあわせであるがなかなか面白い。韓国の鮮やかな街並みのイメージと雛人形の色彩感の重なりが幻想的な気分を生みだしているようである。

・買い物を二つ忘れて雛祭り(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
→「雛祭」の支度や用意で頭が一杯だったのであろうか。何かをいうではなく、俳味溢れる軽い滑稽な詠み方が面白く、生きた。

・雛あられポツリと抓むハワイ便(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→前半の「雛あられ→ぽつりと→抓む」が、あたりまえの語と語の関係性で惜しいが、「雛あられ・ハワイ便」はなかなかの取りあわせである。いよいよ暖かな季節に向かう気分を楽しく把握した。

・雛祭裁縫箱に赤き糸(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→糸は母親が残したものであろうか。「雛祭/赤き糸」の関係性を読者に想像させる句になっていて意味深である。しかし「雛祭・赤き」は女の子のお祭・毛氈の赤などのイメージが強くて大変なつきすぎ。そのあたりを少し留意されるとよいかもしれない。

・つるしびな廃線駅のベンチかな(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→なんともさみし気な句であるが、雛が吊るされてあるのであるから人のぬくもりも感じ取れる。また廃線の駅の錆びれた風景に一点の赤の景色も美しい。解釈を読者にゆだねた象徴的な把握の句である。

・雛遊び幼き一人を置き忘れ(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→雛祭がお題であるから、明るい句が多く届くのかと思っていたら、なかなか意味深な句も多かった。女の子の成長を喜ぶ場だけに、「置き忘れ」とはそのギャップは計り知れない。実際に置き忘れたコトというより、仲間外れかなにかのさみしさのような心情が伝わってくる。いずれにしても、悲しみを直接言葉にせず、冷静にモノに託して詩にもってきて見事。この方向でよい。

・息子くる老人ホームの雛祭(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→「雛祭」で久しぶりの親子の再会であろうか。全体的にありきたりな光景なのが惜しいが、余計なことを言わずに「息子くる」程度にとどめた抑制が生きた。

・だんだんに棚田を埋める雛祭(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
→類想も多そうであるが、雛段の気分と棚田の気分を重ね見てのびやか。俳句は何かを間違いなく伝えるようと努力する必要はない。気分が伝わればいいのである。

・雛飾る灯の中に母ひとり(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→「母」の背中をそっとみているような句で、どこかさみしげである。そのしみじみとした気分のなかに母の生きざまが感じられる。

・篠笛の音色に雛の躍り出し(ペンネーム「つれづれ」さん 77歳)
→類想もあろうが、これはこれでいいと私は思っている。こういうもの「雛祭」のひとつの気分である。しかし「篠笛・音色・踊る・雛」とすべて近しいイメージであるところは惜しいので飛躍したい。
また「踊り出し」ではなく「踊り出す」と、引きしめて詠んだほうが力強い。

・沓脱石小さき靴や雛祭(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)
→そこまでかわいらしいことを述べている訳ではないが、とにかくかわいらしい気分の感じ取れる句である。「KUTU」の音の繰り返しや、独特のリズムの効果であろう。面白い。

・オルゴール鳴り出すひいな遊び出す(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→先の「篠笛」の句と似た気分の句である。両者のいいところは「ごとし」などと比喩にしていないことである。意図的なリフレインはわざとらしいのでじゃまになるが、このような無意識的な詠みの場合は別である。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・折り紙の女雛下校の手のひらに(ペンネーム「胃痛」さん 36歳)
・赤子抱く雨傘跳ねる雛祭り(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
・食卓に折紙の雛並べおり(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
・雛祭りキーボード弾く女の子(ペンネーム「犬蔵の王」さん 43歳)
・雛祭り家族集まるレストラン(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
デジカメで押さえる雛人形(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・雛祭を後に受話器置く(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
・雛壇の平和を守るウルトラマン(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
押し寄せた靴らを揃え雛祭り(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
・飾る手に皺刻み込む雛人形(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
ガラスケース割れて見下ろす雛人形(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
初孫に引かれ祖母の手雛祭り(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・豆雛や泣ける映画を探す夜(ペンネーム「そら」さん 58歳)
クフ王や千体のひな石段に(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
桐箱の母の遺品の雛かな(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
の夜の母ほんのりと桜色(ペンネーム「彩楓」さん 65歳)
雛まつり昭和な町を飾りをり(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・作業所の小さき雛を孫に買う(ペンネーム「みよこ」さん 70歳)
・南風旅立つ鴨の雛祭り(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
窓を開け雛人形と深呼吸(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・マトリョーシカショップに一人内裏雛(ペンネーム「東広島の七十爺」さん 74歳)

入選B

・雛人形飾りて家は華やかに(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・雛祭り我が家で過ごす最後の日(ペンネーム「はますけ」さん 32歳)
・雛祭帳簿と共にめくる袖(ペンネーム「三滝のべべ」さん 37歳)
・携帯の鳴るを待ちたり雛祭(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・泣きませぬ笑いもしませぬ雛飾る(ペンネーム「櫻井葉子」さん 41歳)
・玉眼の雛や静かな静かな夜(ペンネーム「桃猫」さん 43歳)
・宝入れ隠す雛飾りの箪笥(ペンネーム「さおりっち」さん 44歳)
・お雛様真似てるようなすまし顔(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・おさげ結い頬染め見つめる雛人形(ペンネーム「cava」さん 49歳)
・少年の膝落着かず雛祭(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
・雛人形しまい人気の消えた部屋(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
・雛祭りこっそり男雛とにらめっこ(ペンネーム「雅」さん 55歳)
・雛壇やショーウィンドウの向こう側(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・わんぱくも正座で歌うひなまつり(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・歳月や曾孫が飾る母の雛(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・白酒でお内裏様も赤ら顔(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・春の気分3月3日ひなまつり(ペンネーム「DIYじじ」さん 66歳)
・孫ができ初めて祝う雛祭(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・甘酒に夢見心地の雛祭り(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・雛遊び風の道くさ髪ゆらす(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・神棚にあられ供えて雛祭り(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・玄関に手造り雛がお出迎え(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・嫁行かず1日限り雛人形(ペンネーム「怜桜さん」さん 68歳)
・ぼんぼりもLED替え内裏の目(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・じじばばの会話弾ませ雛飾り(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・見上げれば宇佐の段ひなどこまでも(ペンネーム「のぶさん」さん 70歳)
・華やぎの少し欲しきや雛飾る(ペンネーム「田中ようちゃん」さん 70歳)
・姉たちに飾りし雛や今いずこ(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・故郷を断捨離できず雛飾る(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・幼き日友の雛壇窓越しに(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・およばれの正座の男子ひな祭り(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
・桃節句古希迎えての個展かな(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・紙雛に色紙の天地教えられ(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
・桃の節句は旅立ちの日のシンデレラ(ペンネーム「コンセプシオン」さん 6歳)
・女房族グリーン車会席雛めぐり(ペンネーム「華みづき」さん)

ユニー句(句)

・飾らずにあられのみ食うひな祭り(ペンネーム「ちゃこぉ〜る」さん 18歳)
・ねぇあなた今日だけ雛よそばにいて(ペンネーム「のっぽちゃん」さん 21歳)
・雛たちの会話つぶやく雛飾り(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
・過ぎてなおわざと仕舞わぬひな人形(ペンネーム「あゆみっくす」さん 33歳)
・お雛様二人並んでスガシカオ(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 37歳)
・むすめさんわたしにおくれよひなあられ(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・雛あられポリポリ音の至福かな(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・雛人形小顔色白付けまつ毛(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・でこの似る女四代雛まつり(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
・雛あられ鼻に詰めてた奴が医者(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・有る袖も無い袖も振る雛人形(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・お雛様五人囃子も同じ顔(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・嫁に行き今日は寂しい雛祭り(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・防虫剤香り漂う雛祭り(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
・赤ヘルのお内裏様の雛祭(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・雛飾る賞味期限の近づきぬ(ペンネーム「吞田」さん 71歳)
・雛の目を盗みてあられポケットに(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・ふくよかな男女雛の体脂肪(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年2月23日(金)

第85回 お題「花粉症」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「花粉症」。
年が変わって、回を重ねるごとにたくさんの投句を頂き、全国各地からの投句も増え、人気を頂き光栄に思っています。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

「杉の花粉・杉の花」は「花粉症」とは概念が違いますが、近しい関係なので可としました。
しかし「花粉」だけの句や、お題が入っていないものもかなりありましたが、そのあたりは残念ながら選外としました。

大賞句は、男性的な俳味の句で迫力の一句でした。
入賞句は、託し詠みのよくできた一句でした。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回もユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました(入選などとの複数掲載あり)。

今回も大変応募数が多かったので、入選句は多めにとらせていただきました。
ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「花粉症朝刊の文字飛び散らし」(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)

ここまで大胆にのびやかに詠めたらなんと気分のよいことであろうか。
いわゆる男性的な俳味溢れる句で、特に解説も必要ない。
どなたもがただ感じ入り、楽しむことができる豪快な句である。
いわゆる「ユニーク俳句」が最初からユニークに詠もうという精神(意識)で詠まれているのに対し、この「大賞句」は、「花粉症」の実感をモノに託して詠んだ結果(無意識)として、ユニークな句になったという点が優れている。
またこのような句を詠むとき「飛び散らすごとく」などと比喩で詠みたがる人も多いであろうが、そうではなく、実際に「朝刊の文字飛び散らし」と詠んだところもまたよい。
こう詠むからこそ、「花粉症」の圧倒的な迫力・大変さ・気分が伝わるのである。
「ごとく」だと「朝刊の文字」は実際には飛び散っていないわけで、迫力に欠ける。
このような解説をしたときに、「紙に書いた文字」が散るのはおかしいという現実・常識べったりの方もおられようが、大事なのは心がどうとらえたかである。
「道を歩いているときに蛇だと思ってびっくりしたが、よく見ると縄だった」ということは、田舎暮らしではよくあるが、蛇だと思って逃げかえった者がその時のことを句に詠めば、蛇の句以外にはならないあであろう。
よって作者の心がとらえたとおりに「花粉症」が「朝刊の文字飛び散らし」でなんの問題もない。
無意識からの佳句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
ユニークは託し詠みの結果にじみ出るもの。

入賞

「花粉症コロのしっぽに朝の風」(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)

朝の犬の散歩時あたりの句であろうか。
「花粉症」のムズムズ感を実感したその目の先に、「飼い犬のしっぽが風に揺れていた」というような句と解釈できる。
すなわち、この句が伝えたいのは「花粉症」ではなく、「花粉症」「コロのしっぽに朝の風」というモノに託された「春の実感」なのである。
その「託し詠み」の波及効果で、あたたかな気分、ほのぼのした気分、やさしい気分などまで感じ取れる句になっており、詩になっているところが優れている。
「花粉症」のことを直接説明した句が多い中、「花粉症」とは直接関係のない「コロのしっぽの朝の風」に飛躍したところが「つかずはなれず」の関係性を生み成功した。
入賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
お題やテーマをだらだら説明せず、他のモノと取りあわせる。飛躍する。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・花粉症君が見ている海の音(ペンネーム「あや」さん 49歳)
この海をこえて君もいつか巣立つ。少しやるせない春
なんとも言えない気分の一句。少し気になるのはモノをデンと据えるモノ句から、表面の言葉の美に溺れる方向にシフトしてきているような印象である。句の表面の美ではなく、句からイメージされる世界の美をわすれず、自在であってほしいと願う。

・金メダル拳突き刺す花粉症(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
日本選手が金メダルを取る嬉しさと花粉症の辛さを詠みました
たしかに「金メダル・花粉症」は対比が効いているようであるが、少し飛躍しすぎのようにも感じられる。ここら辺のイメージのつり合いをとる塩梅が俳句の難しさ面白いところ。大胆な取り合わせを見せてほしい。

入選句

特選

・仕送りの空噛みしめる花粉症(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→苦学生の様子がイメージされ、少し切ない句であるが情感たっぷり。このような場合「仕送りや」と切ったほうがより気分が出そうである。

・押せば引く満員電車や花粉症(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 46歳)
→都会の通勤通学の様子がイメージされる。客を押し込む駅員さんの気分の句であろうか。少し説明的であるが、春の訪れを思わせる句で面白い。

・花粉症鞄の底で鍵揺れる(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→「花粉症/鞄の底で鍵揺れる」となんらかの飛躍が感じられ詩になっている。少しメルヘンチックな気分で面白い。このような素材で詠む場合「揺れる鍵」と出来事ではなくモノに重心をかけて詠むと句の厚みが少し増しそうである。飛躍のあるこの方向で。

・列島のビルゆすられる花粉症(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「花粉症」のすさまじさを大胆に把握した。この句で惜しいのは「ビル→ゆする→花粉症」の関係が大胆ながら当たり前なところ。寡作のようであるがもう少し沢山の句を見てみたい方である。

・花粉症ポケットティッシュ受け取りぬ(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
→類想・「花粉症→ティッシュ」のあたり前の関係などはやはり避けるようにしたものであるが、それにもかかわらず句になっているのは、 俳句形式そのものに対する明るさであろう。何らかの出来事を編集したり引き算していったりする作り方だとどうしても舌足らずな表現になるし、言いたい事を盛り込もうとすれば窮屈になる。「俳句とはこんなもの」というある種の達観が一句全体の軽やさに繋がっている。

・花粉症鋼鉄の鳥俯瞰せり(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→「鋼鉄の鳥」が分かるようなわからないようなやや観念的で惜しいが、力強い詠み方と気分が合っているようである。全体的に演説調・自己主張が強いのでそれは俳句では避けなけばならない。どうしてよいかわからないようであれば、写生に徹することをお勧めしたい。

・障子には愛犬の影花粉症(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
→春の気配をうまく掬い取った句であたたかで共感する。しかして「~には~の影(がある)/花粉症」というような、「舌足らずな表現(散文の強引な省略)」はどうにも避けなければいけない。このような散文削りの甘い詠みは避けたいものである。俳句は掛け算である。慣れている方なのであろうが、そこが課題であろう。

・嵯峨野路へ一緒に連れゆく花粉症(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→「花粉症」と仲良くやろうという句でのびやかな気分が感じられ大変よい。惜しいのは中七の詠み。俳句は短いので詩にしようと思ったら当たり前の語と語の関係を避けなければイメージが膨らまない。そこが自己添削の時の指標になろうか。

・霞みゆく黄色き電車花粉症(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
→「霞・黄色・花粉」とイメージが近いのがつきすぎ感があり惜しいのであるが、「電車」が愉快であった。この電車と花粉症の春のイメージを重ね見て春の躍動感が面白い。例えばテーマ・お題・季語・それを説明しないように詠むことを心掛ければさらによくなりそうな方である。期待したい。

・花粉症ポニーテールのたて結び(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→この様子をどう解釈するかは読者にゆだねられている。マスクをするためにポニーテールにしているのか、花粉症だけど活動的な春になりポニーテールにしているのか、いろいろに解釈できる。一句全体がつきすぎの感じはあるが、何かしらの気分を伝える句になっている。

・乳母車幌深くして杉の花(ペンネーム「安田蝸牛」さん 61歳)
→惜しいのは平凡なところであるが、やさしさに共鳴する愛情あふれる一句である。

・花粉症山が黒板消し叩く(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
→把握は面白いのであるが意図的で惜しい。花粉の粉と黒板消しの粉というイメージが近すぎてなかなか詩にならないのである。「してやったり」というような表現が浮かんだらそれは意識の産物理屈の産物テクニックの産物なので、迷わず捨てることである。俳句は無意識からの芸術なのである。

・杉の花円空仏に手を合わす(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→句がやや大人しいが、余計なことを言わず「手をあわす」とブレーキかけたところが成功した。俳句は詩であるから、さらに飛躍した取りあわせで可能性を探っても面白い。複数句の応募も可なのであるから。

・花粉症象の瞼の重そうに(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
→象に花粉症があるのかどうかは知らないが、こう詠まれるとなるほどと思ってもしまう。全体的に春のイメージで押しているので、「春眠暁」ではないが「重そうに」はどうにも惜しい。そこはなんらかの飛躍をしてほしいところである。ここまで詠めるようになったのであるから、俳句の出来事ではなく語と語の効果にも敏感になってほしいのである。

・親元を訪ねし郷の花粉症(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
→多作の作者であるが、同じような気分をいくら詠んでも結果は同じである。その中でこの句は光っていた。行き着く先が「花粉症」というある意味滑稽であり情趣でもあるが、全体の郷を思う気分につかず離れずよくあっている。

・参観日一番乗りの花粉症(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→こっそり伺ったはずが一番乗りになってしまい、おまけに大きなくしゃみをして注目を浴びてしまったという親の立場での一句であろうか。詠み方がやや日常べったりで終始しているところが惜しいが、ユニークでかつ共感の生まれる句である。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

花粉症やわらかティッシュの箱を積む(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
男泣き花粉症やと言いわけす(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・抱え込む金太郎飴花粉症(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
・眠りつく息子もまた花粉症(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
杉花粉けふは高級ティッシュ買ふ(ペンネーム「天野姫城」さん 44歳)
杉花粉気になりつつも誘われて(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
日光に参る行列杉の花(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・花粉症ピエロの自分演じをり(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
花粉症受付に並ぶマスク増え(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
マスク越し笑顔を交わす花粉症(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・窓越しにタンポポゆくや花粉症(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・幾千の野山越ゆ旅杉花粉(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
赤鬼と呼ばれた先生花粉症(ペンネーム「是多」さん 63歳)
花粉症の苦き薬や春寒し(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
意のままにならぬ自分や花粉症(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
・陽光に山クシャミして花粉症(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
春一番列島駆ける花粉症(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
銀行へ行けぬ姿や花粉症(ペンネーム「吞田」さん 71歳)
じっくりと列島覆う花粉症(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
花粉症風にのたうつ目鼻かな(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・ガウディの未完の塔は花粉症(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
・山揺れて見えぬ魔物や花粉症(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
古池の湖面に浮かぶスギの花(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)

入選B

・僕以外全員花粉症らしい(ペンネーム「野良古」さん 31歳)
・花粉症二銃士揃い乱舞かな(ペンネーム「三滝のべべ」さん 37歳)
・涙目で認めたくない花粉症(ペンネーム「けみこ」さん 40歳)
・花粉症かからにゃ辛さ解らない(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・春平和花粉症になってもいい(ペンネーム「櫻井葉子」さん 41歳)
・親教え子供に学ぶ花粉症(ペンネーム「犬蔵の王」さん 43歳)
・花粉症貴方も迷う恋心(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・花粉症自覚が無ければ風邪でしょう(ペンネーム「さおりっち」さん 44歳)
・春の使者今年も来た来た花粉症(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・花粉症雨の降る日に恋焦がれ(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・ラプソディー日本列島花粉症(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
・耳痒し来たよ今年も花粉症(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・花粉症春の訪れやって来た(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・花粉症目に見えぬ敵そこにあり(ペンネーム「そら」さん 58歳)
・花粉症防御グッズで誰かいね(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・桜散るおさまる我が身の花粉症(ペンネーム「りんの」さん 58歳)
・花粉症予防完璧宇宙服(ペンネーム「徳」さん 58歳)
・泣いたのは花粉症だと嘘をつく(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
・失恋と誤解されそな花粉症(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・花粉症振られて泣いてる訳じゃない(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・なごり雪杉の花粉か白い波(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
・お出かけは美顔を隠し花粉症(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・今日の数値体感で判る花粉情報(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・コーヒーの飲みて涙の花粉症(ペンネーム「しじみ」さん 69歳)
・インフルかマスク姿は花粉症(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・スギ花粉しっかりガード花粉マン(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
・様々な涙かくすや花粉症(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・春風や近ずくけはい花粉症(ペンネーム「めがねバ−バ」さん 73歳)
・花粉症上りホームの母の目が(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・目鼻口で真田丸する花粉症(ペンネーム「七十爺」さん 74歳)
・花粉症マスクとともに目薬も(ペンネーム「ともとも」さん)

ユニー句(句)

・花粉症の元祖ハクション大魔王(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・杉花粉飛散と聞かず顔悲惨(ペンネーム「雅」さん 55歳)
・ノーメイクマスクで隠す花粉症(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・花粉症と風邪重なり顔グシャに(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・花粉症年金と共にデビューする(ペンネーム「⑦パパ」さん 62歳)
・あんた誰メガネにマスク杉花粉(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・花粉症薬が出来たらノーベル賞(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・取り出して目ん玉洗ふ花粉症(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
・鼻と眼を入れ替えたくて花粉症(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・春だより花粉症が第一報(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
・狭き部屋さらに部屋干し杉花粉(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・スコアより花粉に苦しむゴルフ場(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・眼も鼻も洗濯したい花粉症(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・花粉症思考回路を破壊する(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・花粉症メガネマスクにあなた誰(ペンネーム「音爺」さん 71歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年2月16日(金)

第84回 お題「オリンピック」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「オリンピック」。
年が変わって、回を重ねるごとにたくさんの投句を頂き、今回も同じくうれしい悲鳴でした。
新しい参加者も確実に増え、うれしく思います。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

今回は放送でも申し上げましたが、「オリンピック」という言葉にとらわれず、競技名など、オリンピックの何らかの感動を詠んでいただければよいこととしました。

大賞句は、素朴な詠み方ながらも、自身そのものを対象に託して詠んだ(対象と一体となった)素晴らしい句でした。
入賞句は、季語を上手く生かして詠んだ句で幸福感が倍増されて伝わる好句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回はユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました。

今回も大変応募数が多かったので、入選句は多めにとらせていただきました。
ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「スキージャンプ眼下に揺れる万国旗」(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)

季語は「スキー」で冬である。
句意も明瞭で、「ジャンパーがスタートをきり、空中に飛び上がりそこで過ごす数秒間、目に入るのは色とりどりの『万国旗』が美しい」という句。
素朴ながらも、こののびやさが最高で、一読したときからの入賞候補であった。
「スキージャンプ・万国旗」で、間接的にオリンピックの気分を伝えているというところも上手いが、一番の素晴らしさは、「対象に自身のすべてを託す(自己と対象が一つになる)」して詠んでいるところ。
すなわち、ジャンパーでしか味わうことのできない景色、それをジャンパーと一体となって味わいジャンパー目線で詠み上げているところが見事である。
茶道の「主客一体」、禅の「自他を越える」境地などを持ち出すまでもなく、このような世界観こそが、日本の文化・芸術の目指す方向性であり、悟りの境地(達観)である。
にもかかわらず、俳句を「風景・季語・文法・技法・型」など、小手先の教条(勉強・学習・知識)など頭(意識)で追いかけようとする考えが多いのは、私にとってさみしい限り。
よく「写生(映像・景)で詠みましょう」などともいわれるが、対象をただ傍観して(自他が区別された世界)その風景を詠んだところで何の感動(真実)もない。
それは心象句でも同じことである。
詩はこのように、自身の感動に本物(真実)と偽物があることに、気づかせてくれるのである。
その意味で、この句は頭(意識・理屈・教条・常識)からではなく、ジャンパーに思いを馳せ、そこから無意識的に体の底から湧き上がってきたなんらかの感動を、モノに託し句にとどめたのが見事に成功した。
特に、宇宙に散らばるあまたのモノのから作者が無意識に選択した「万国旗」。
そういうところに、地球はひとつ・人々への愛情・暖かさなど、作者の生きざま・人間性・人柄が垣間見られ、強く共感を覚える。
世の中の俳句の常識にとらわれず、感動をただモノに託して、自分の世界を詠ってほしいと願う。
大賞おめでどうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
俳句は意識(頭)でななく「無意識」からの芸術。

入賞

「愛の日の凱旋メダルぶらさげて」(ペンネーム「でこ」さん 51歳)

「愛の日」はバレンタインデーのこと。
スキージャンプの高梨沙羅選手やモーグルの原大智選手が、銅メダルを持って14日凱旋帰国されたのは周知のとおり。
まさしくそこを詠んだ句である。
選手と一体となったその喜びを「凱旋メダル」に託したところも上手いし、「愛の日」という季語を余計なことを言わず事実のままさらりと置いたところがマッチした。
これらの託し詠み・取り合わせの効果によって、凱旋の喜びだけでなく「好きな人にメダルの喜びを伝えたい」というような恋愛の幸福感のイメージまで引っ張ってくることに成功して、読者を楽しませる詩になった。
託し詠みによって、喜び・幸福感の相乗効果が生まれた一句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
二つのモノをつかず離れず取りあわせると、豊かなイメージが生まれる場合がある。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・冬帝や羽生結弦の降り立ちて(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※あやさん(49)は羽生結弦選手を応援しています。
→固有名詞は分かる人とわからない人の差が激しいので句にしにくいものだがさすが名人、堂々と詠んだ。選手のベビーフェイスにとらわれず、その奥にある迫力・男らしさのようなものをあぶりだした一句になった。

・ピザ囲みコトバとけ合う冬五輪(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※学生時代、留学生の仲間とオリンピックを観た時の事を詠みました。
→冬五輪を仲間と眺めているような句である。はじめは好みの選手や意見の対立もあったが、ピザを食べながら話してゆくと「とけあって」楽しめたのであろうか。気分の出た句である。

入選句

特選

・左義長やオリンピックの大ジャンプ(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→左義長は神明さん・とんどのこと。その炎が舞い上がる様子と大ジャンプの気分を重ね見た(取りあわせた)句でイメージがよく釣り合って成功している。取りあわせの方向を模索されても面白い。

・五輪の輪地上で燃ゆる冬銀河(ペンネーム「三滝のべべ」さん 37歳)
→ドロ―ンの描いた五輪の輪が印象的であったが、句は、地上で冬銀河が燃えているとも解され、それで詩になった。意外性が読者を引き込み詩を生んだ。

・春時雨オリンピックの旗揺れる(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→季語もあり写生句であり申し分ないのだが何かものたりない。それは感動を詠んでいないからであろう。句をテクニックで詠むのではなく、ただ感動ある世界をモノを通して詠んでみてほしいのである。

・春塵や揺り籠揺れるオリンピック​(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
→心象句であろう。「春塵」→「揺り籠」→「オリンピック」この意外性ある言葉の展開が詩を生み出している。

・五輪へと 集う選手の息白し(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
→五輪の開会式の気分の句であろうか。そつなく詠んでおられるのだがいまいち感動が伝わらず惜しい。「何らかの出来事」を引き算し編集して句にするのではなく、はっとしたことをただモノを通して詠んでみてほしい。俳句はかけ算である。世界が開けるはずである。

・半島や平昌五輪鱈干され(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→「半島・平昌」「平昌・五輪」とつきすぎであたりまえの言葉の斡旋が平凡で惜しいのだが、「鱈干され」となんとか飛躍して詩にもっていった。「半島・干鱈」の造形を重ね見たものと思われるが、「半島」という言葉からイメージされる南北の緊張感と、魂を抜かれたような「干鱈」の空虚なイメージとは、なんとも考えさせられる。心ここにあらずというか、オリンピックとは一線を引いているような作者の独自の観点・批評精神が活きた。

・たま風やオリンピックの海渡る(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→「たま風」は日本海沿岸で西北方から吹く暴風。実際の風とはうらはらに言葉の響きとしてはどこか明るい。「風・海渡る」と把握がややありきたりでざっくりしすぎているのであるが、楽しさと激しさの織りなすオリンピックの気分を個性的にとらえた。

・オリンピック白銀色の一行詩(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
→「一行詩」という置き方が比喩なのか実存なのか微妙である。スケート跡・スキーの跡の比喩と解釈すれば「一行詩」は実体のない浅い句になるので、「オリンピック」と「一行詩(紙面)」を重ね見たものととりたい。すると選手たちの織りなすさまざまな雪上のドラマと、いろいろな一行詩の世界を重ねみているような句になりユニークである。

・水たまり飛び越えたらオリンピック(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
→オリンピック選手が子どもと戯れているのであろうか。あるいは「遊びがオリンピックのようだ」という比喩の句なのであろうか。前者のような実際の「オリンピック」を重ね見た句としてならその把握が面白いので詩になっている。俳句で大事なのは作者のスピリットである。実際のモノを通して詠もう。

・春近し五輪選手のピアスかな(ペンネーム「クローバー」さん 54歳)
→「春近し・かな」と切れが共に強いのがこの場合少し気になるが、楽しい気分の出た句である。オシャレな選手が増え、世界を楽しませる。

・浅春や五輪選手の眉きりり(ペンネーム「そら」さん 58歳)
→「きりり」が舌足らずな直接表現で惜しいが、これも上の句と似た楽しい気分の句である。「眉のいろ」くらいか。

・青空に銀のピアスや冬五輪(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→こちらもまた上二句に似た気分の句である。どれも少しづつ雰囲気が違って面白い。

・オリンピック勇者飲み込む深雪かな(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
→勇者が根雪を飲み込むのか、根雪が勇者を飲み込むのか両方の気分が感じ取れてきて面白い。勇者に飲み込んでもらってこそオリンピックの迫力ある気分が出そうである。

・ゼッケンの白き五輪を吐くシャンツェ(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→散文的に解釈しようとすれば難しいが、詩なので「シャンツェ(スキーのジャンプが行なわれる競技台)」から次つぎ飛び上る選手、その生命力・美しさの気分を伝える句、というふうにそのまま気分を味わえはいい。詩を論理で解釈したり片づけようとするのは無粋である。

・におやかやアイスダンスの春衣(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→全体的に女性的なイメージでつきすぎなのが惜しいが、アイスダンスの気分をやわらかくあたたかく詠みあげた。好句。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・五輪のいなせな空や風光る(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
凍土やオリンピックの来たる(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
熱戦に吐く息白き冬五輪(ペンネーム「けみこ」さん 40歳)
冬空にオリンピック旗はためけり(ペンネーム「HK」さん 41歳)
冬空へ五輪選手よ高く飛べ(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・春寒や五輪の遠き空仰ぐ(ペンネーム「cava」さん 49歳)
・凍空のオリンピックや鍋の音(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
・オリオンを見上げし子らが五輪舞台(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・オリンピック春一番の表彰台(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
・冬五輪夜空の先へ板の翼(ペンネーム「雅」さん 55歳)
・冬空を熱気で焦がすオリンピック(ペンネーム「やっちゃん」さん 58歳)
・オリンピック風狂の雪山となる(ペンネーム「徳」さん 58歳)
風掬うスキーの切っ先ジャンプ台(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
統一旗オリンピックの冬の(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
応援のコートのみ込むオリンピック(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
・夏の夜の聖火を映す勝者の(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
天高しオリンピックの金メダル(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・凍りつく宙飛ぶジャンプ五輪かな(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
ドローンの描く五輪や冬銀河(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
・平昌五輪眩しく揺るる国旗かな(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・地球儀と眼鏡こたつで見る五輪(ペンネーム「七十爺」さん 74歳)
・五輪空風雪切るやスキー跡(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
聖火冴えオリンピックは万華鏡(ペンネーム「柱時計」さん 75歳)
・氷雪のオリンピックや声熱し(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)

入選B

・地をたたく五輪の壁は俺がこす(ペンネーム「you」さん 10歳)
・日の丸も五輪の旗も皆まんまる(ペンネーム「富士山」さん 31歳)
・スケートや四分ぶんの軌跡の銀(ペンネーム「野良古」さん 31歳)
・何度目のオリンピックかトワエモワ(ペンネーム「櫻井葉子」さん 41歳)
・チマチョゴリオリンピックに花が咲き(ペンネーム「犬蔵の王」さん 43歳)
・悪天候オリンピックの雪吹雪(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 43歳)
・メダル獲るヒーロー達のオリンピック(ペンネーム「武相乱」さん 43歳)
・アメリカ人ショーンホワイトなぜ強い(ペンネーム「わた」さん 44歳)
・一番の敵は寒さだオリンピック(ペンネーム「モモ」さん 46歳)
・極寒の熱き血潮に北の陰(ペンネーム「デンボ」さん 51歳)
・才能と運を引き寄せ初五輪(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・白い息熱気で飛ばす五つの輪(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・オリンピック表彰台へ雪女郎(ペンネーム「中山 月波」さん 54歳)
・雪も無くオリンピックも政治色(ペンネーム「やっぱりダメじゃろ」さん 56歳)
・冬空にビックリ箱のハーフパイプ(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・平和問うオリンピックの北の風(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・冬五輪理科室で観た金銀銅​(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・大会は魔物が潜むオリンピック(ペンネーム「よしやん」さん 60歳)
・梅探しオリンピックもあと少し(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
・オリンピック泣いて笑った夢舞台(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・息白し紅き上衣で五輪開く(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・レジェンドに手合わせ祈る冬五輪(ペンネーム「えんぴつ新ちゃん」さん 63歳)
・オリンピック皆の応援で盛り上がり(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・五輪の輪心と心世界の和(ペンネーム「DIYじじ」さん 65歳)
・極寒のオリンピックや滑る飛ぶ(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・夢を追う孫に期待のオリンピック(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・オリンピック目指せ頂点宇宙一(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・五輪宿老いた伯母いる横浜に(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・東京五輪冥途の土産に観戦じゃ(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・空高く何が友好ふゆ五輪(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・極寒の時差無き五輪花火飛ぶ(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・空仰ぎ男爵の声冬季五輪(ペンネーム「のぶさん」さん 70歳)
・平昌の五輪外交春の鳥(ペンネーム「田中ようちゃん」さん ​70歳)
・天翔り雪上に舞う冬五輪(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・春寒し夜空に五輪ドローン群(ペンネーム「音爺」さん 71歳)
・競技より政治優先冬季五輪​(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・冬晴れや舞うスノーボードオリンピック(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・氷上で極めし技は五色の輪​(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・厳寒の夢から覚めしオリンピック(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・オリンピック希うもれし氷雪に(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・凍てつけど五輪に賭けるレゼンドや(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・ドローンの描く五輪の輪夜寒空に(ペンネーム「古志清右衛門」さん 78歳)
・野火のよう彼女は走るジャンプ台(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)
・滑走路リアカーの後吹雪く坂(ペンネーム「華みづき」さん)

ユニー句(句)

・出てみたいオリンピックにそれが夢(ペンネーム「クランキー」さん 24歳)
・四年越し重圧超えて堂々銅(ペンネーム「しまっかーとにー」さん 40歳)
・玉子酒メダルラッシュに熱上がり(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
・待合のテレビも冬の五輪かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・ゴーグルを取ればイケメン冬の五輪(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
・深夜五輪つまみ犇く炬燵かな(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・オリンピックカーリングまねて庭掃除(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・五輪中家族みんなが評論家(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・オリンピック見たいドラマは録画して(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・インフルのお陰で観戦オリンピック(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・オリンピック出場出来れば金メダル(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・オリンピック迫るテレビの高画質(ペンネーム「小市」さん 67歳)
・年老いた母にあげたい金メダル(ペンネーム「湯浅博明」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年2月9日(金)

第83回 お題「鬼」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「鬼」。
年が変わって、回を重ねるごとにたくさんの投句を頂き、今回もうれしい悲鳴でした。
新しい参加者も確実に増え、うれしく思います。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

今回は「節分の鬼」にとらわれず、とにかくなんらかの「鬼」を詠んでいただければよいことにしました。
よって「鬼瓦・鬼火」など、「鬼」の字が入っていおれば可としました。

大賞句は、ポエティカルな雰囲気ながら人生の滋味の感じられる深い句でした。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。
今回はユニークな俳句も多かったので、クスッとくるようなユニーク俳句欄を設けました。

今回も大変応募数が多かったので、入選句は多めにとらせていただきました。
ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「春の夜やわたしの中の鬼を飼う」(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)

「鬼」といえば、暴れん坊・恐ろしいもの・パワーなどのイメージであるが、思えば、誰の中にも「鬼」はいる。
中の「鬼」が言うこと聞かない、悪さをするのである。
なりたくないのに病気になる、言わなくていいのに余計なこと言ってしまうなど、鬼の仕業かもしれない。
「飼いならす」なら制圧した気分であるが、ただ「飼う」とあるので「共存共栄」の印象である。
どんな「鬼」なのか解釈は読者にゆだねられているが、いずれにせよおぼろげな「春の夜」という背景につつまれたある日、長年言うことを聞いてくれなかったなんらかの暴れん坊の「鬼」と、ようやく分かり合えたというような「悟りの境地」、そんなおだやかな心境が感じ取れれる句である。
このような句が提示されたとき、「鬼」はただ「鬼」と書いてあるのだから「実存の鬼」と解釈すればいいのであるが、「鬼」は想像上の生物だ妖怪だといって、「鬼」をなんらかの比喩と解釈しなければ気の済まない人は多い。
しかし、実景であれ心象であれ、受け取るところはただ「ココロ」であって、作者の「ココロ」が捉えた何らかの実感を詠んだ句と思えばどうということはない。
よって俳句に嘱目も心象もない。
作者が「鬼を飼う」と実感した事情、その心境にただ思いを馳せればいいのである。
「春の夜」というおだやかな舞台にはじまりながら、自身の中に「鬼」がいるという『意外性』。
そしてその「鬼」を追い出すでもなく「飼う」という『意外性』、が鑑賞者を引き込み、イメージを掻き立て詩に仕立て上げている。
どことなくコミカルでポエティカルであるが、滋味を感じる一句。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
俳句に嘱目も心象もない。
ただココロが受け止めた実感をモノに託して詠む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・満月のまだ濡れている鬼の口(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※皆既月食の夜に。赤い月でした。
→名人らしい世界観である。何らかしら妖艶な句でポエジー豊かである。「月食・鬼」なら、共に不穏な雰囲気でつきすぎであるが、「満月・鬼」であるからイメージのつり合いがよい。いうまでもなく「満月・狼」などならつきすぎである。このあたりのイメージのバランスが上手く取れるようになってこられた。

・寒き春風緩みゆく鬼瓦(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※まだまだ寒い春ですが、少し風が緩み、屋根の鬼瓦も若干表情が緩んだように見えました。
→作者にしては少し大人しい句である。「寒き春風」は兄弟喧嘩、「春風緩みゆく」はつきすぎの印象。このようなタイプの句は舌頭千転であろう。たぶん新境地を模索中なのであろう。快作祈念。

入選句

特選

・鬼瓦冬晴れの空にらめっこ(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
→「冬晴れ」とはいえ寒い。なので「鬼瓦・にらめっこ」なのであろう。「鬼瓦・にらめっこ」の関係性が当たり前で少し惜しいが、一句全体の素朴な句姿、空間把握ののびやかなさが気持ちいい。

・凩や鬼の捨てゆく煙草二本(ペンネーム「コバルトブルー」さん 32歳)
→「凩」の中悠然と煙草を吸っているというのは人間であればかなりのつわものであるが「鬼」なので納得できる。「鬼」も実在の「鬼」でいい。「鬼」のタバコ姿とはなんともダンディである。「二本」という時間性も面白い。なんらからのふみ切れぬ思いか何かであろうか、モノに託し心情表出のよくできた句である。

・轍なき空追い回す鬼やらい(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→「地を追い回す」では詩にならない。「空追い回す」と「鬼やらい」の世界観を大きく把握して詩にもっていった。どことなく自分の未来を模索しているような気分の感じ取れる句である。

・鬼の影冷たきままのベッドかな(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→「影・冷たい」の関係性が近しく惜しいのであるが、よくある暴れん坊のイメージの「鬼」ではなく、文字通り静かな冷たいイメージの「鬼」、この静的な世界が非日常感・緊張感をもたらして詩を生んでいる。

・雪溶けて顔をのぞかす鬼瓦(ペンネーム「橋田ちゃげ子」さん 42歳)
冬の間に積もった雪が、春になってとけ始めるという春の季語であれば、「溶」は「解」と書くほうが一般的であろう。あるいは冬の間に積もったりとけたりする雪(冬)のことを詠んだものであろうか。いずれにしても、一面雪に覆われたその寒さや不安感で過ごす中、徐々に雪が解けてきた喜びや安心感を、上手くモノやモノの様子(顔のぞかせる鬼瓦)に託して詠んであり、共感が迫ってくる。「~して~する」などと説明的であったり、詠み方が甘くも感じるのであるが、今年ようなの大寒波を思えば、だれもが共感できる実感の勝った一句であろう。

・鬼火持つ女に心覗かれて(ペンネーム「靖」さん 43歳)
→「鬼火」は「燐火・狐火」のことであろう。その「鬼火」を「持つ」といきなり非日常が展開され引き込まれる。「鬼火をもつ」のは作者とも「女」ともとれる句である。その両方のイメージが伝わってきて、句をひもとく楽しみが読者に与えられている。何かしらの秘密をのぞかれたのか。いずれにしても鬼気迫る心情を上手くモノに託した句である。

・鬼の顔凸凹してる春の闇(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
→鬼の顔はたしかに掘りが深い。しかしそのことを詩にしたという例はありそうであまり聞かない。着眼が光った句である。「春の闇」が「鬼」のイメージにつきすぎともいえるが、「闇」だけに「闇の中の手触りで「鬼の顔」をなぞっているような生々しさが出ており、不気味ではあるがそのリアリティがひきつける。

・鬼の目に目薬さして春隣(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
→「鬼」に比してこの軽やかささわやかさはなんだろう。「鬼」を「鬼」とも思わないようなおおらかさ、それが「春隣」というワクワク感のある季節とよく合っている。童心・ピュアな心を上手く託した。

・立春の雨に打たれる鬼の面(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)
→「賑わった節分の後のさみしさを詠んだ句」というのであれば、理性・論理・理屈で詠んだ句ということになり非常に浅い。反対に「立春の雨に打たれる鬼の面」に、「ただただモノとしての情感・パワーを感じ、無意識からこみあげてきた句」というのであれば実に見事である。俳句は「つぶやきに季語をくっつける」というような安易で乱暴な作り方でも、形式の短さの恩寵にあずかって句に収まるものであるが、大事なのは作者のスピリットである。ぜひ後者と思いたい。

・春の夜ぽんと跳ねおる鬼海星(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
→俳句は何らかの気分が表されておればいいというあたりの呼吸がわかっている方である。絵本の中の世界のようでメルヘンチック。軽みの一句である。

・青鬼の毛布の匂い一つ星(ペンネーム「中山月波」さん 54歳)
→一般的なイメージの「赤鬼」でではなく、「青」「鬼」とチョイスしたところにすでに作者の心情が出ている。「青鬼」はどんな夢を見てどんな涙を流しているのか、「涙の匂い」がイメージされ「一つ星」のさみし気な気分によく合っている。感情移入できる一句である。

・右上の鬼歯のうずく春日かな(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→読者にとっては全くどうでもよい他人の歯のうずく位置をわざわざ説明してくれているところや、いよいよ躍動的な春になったというのに、自分の体の些細な場所の故障が活動のじゃまをしているというところ、こういうところに俳味・滑稽さがにじみ出ている一句である。ユニークさは出そうと思って出すのではなく、結果として出るといういい見本の句である。久しぶりに上質の俳味を感じた。

・探梅や優しき鬼の手紙あり(ペンネーム「かすみ草」さん 59歳)
→「や・あり」が両方強いのでひびきとして気になるし、「やさしき」は少し直接言い過ぎのの印象である。しかして、動的でわくわくとした楽しいイメージを引っ張ってくる「探梅」とは気分がいい。子どもの頃の冒険の楽しさ・下校時の道草などが思い返される。「鬼の手紙」を見つけたのであるからなおさら楽しかろう。好句。

・薄氷の上に転がる鬼の豆(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
→「上・転がる」「転がる・豆」と句の下半身の措辞の斡旋がありきたりで惜しいが、「薄氷・鬼の豆」というモノの関係性はつかず離れずで、句の骨格をしっかりさせている。じっくりモノに託して詠む方向にシフトしてきたので句が堂々としてきた。この方向で。快作祈念。

・冴返る鬼にも名前ありますか(ペンネーム「じゃすみん」さん 65歳)
→このような詠み方は20~30年ほど前のレモン俳句のようで、私は甘く感じるのであるが、上五にシャープなモノ(季語)をもってきて、後半のやわらかさとのバランスを取ろうとしているところに感性の煌きを感じる。直接表現ではなく心情をモノに託した方向の句をもっと見てみたい。

・鬼太鼓の天衝く桴や冴え返る(ペンネーム「彩楓(さいふう)」さん 65歳)
→句意は明瞭。全体的に「太鼓」のイメージでつきすぎなのが惜しいが、かっちりした詠み方で手慣れている。さらに大胆に詠んでみたい。

・満ち潮や鬼の拳のやはらかき(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
満たされた心境かと思えば、やわらかきという意外性。それは「鬼の眼にも涙」のようななんらかの事情を託したものであろうか。このあたりの関連性が程よく飛躍しているので、読者はその事情を探ろうと引き込まれる。こういう飛躍・意外性・フレーズの変容に詩は生まれてくるのである。モノとモノをぶつけて美を生み出す方向にシフトしてきたのであろうか。期待したい。

・福豆に打たれる鬼や冬銀河(ペンネーム「しじみ」さん 69歳)
→中七まではいたってありきたりな句なのであるが、下五でぱっと飛躍して詩になった。散らばる豆と散らばる冬銀河のイメージを重ね見て美しい。こう詠まれるといわゆる俗っぽさが消えて非日常の世界に引き込まれて楽しい。この句中の飛躍の感覚を大切にしたい。

・裏鬼門その延長の春の虹(ペンネーム「比々き」さん 69歳)
→「裏鬼門・春の虹」プラス・マイナスのような異質な取りあわせであるが、ともに実体がぼんやりした神秘的なイメージであり、そのあたりがつかず離れずでイメージをかきたてる。禍福は糾える縄の如しというような気分の句であろうか。しかしいかにも光景が美しい。

・金平糖鬼のばら撒く冬銀河(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
「金平糖・冬銀河」で句になっているようで「鬼」の必然性が乏しいのが惜しい。しかし「金平糖・冬銀河」のイメージを重ね見るような詠み方が幻想的である。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・宿題に心の中から鬼が出る(ペンネーム「うっつー」さん 13歳)
・鬼の目に映るは哀しき孤高かな(ペンネーム「りゅうせいとばらーど」さん 19歳)
・夕暮れの見上げた空に鬼やんま(ペンネーム「けみこ 40歳)
・春永やよく笑う鬼と晩酌し (ペンネーム「櫻井葉子」さん 41歳)
鬼儺夜空に散りし白き豆(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・鬼やんま夕焼け雲に重なりて(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
鬼遣らい面着ける子の通学路(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・立春や小鬼ほっぺにごはん粒(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
追懐や里で春待つ鬼一匹(ペンネーム「cava」さん 49歳)
赤鬼と青鬼落とす氷柱かな(ペンネーム「角森」さん 49歳)
・鬼瓦冬将軍を睥睨す(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・鬼やらい娘の開けない手紙かな(ペンネーム「クローバー」さん 54歳)
節分や身内に飼いし鬼騒ぐ(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
・菫咲く鬼と言われし教師(ペンネーム「砂山恵子」さん 58歳)
荒海に豆まく漁師の鬼やらい(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
絵付けする卒業記念の鬼の面(ペンネーム「ベルまま」さん 60歳)
空一杯鬼が顔だし大寒波(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
・如月のは逃げ込む山の中(ペンネーム「是多」さん 63歳)
舞台立ちすくむ園児やの豆(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・巫女が焼く鰯千匹鬼は外(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・鬼は外園児にはずむ乳母車(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・園庭の冬の陽だまり鬼ごっこ(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・初孫に鬼の目光る根雪解け(ペンネーム「華みづき」さん 69歳)
・マンションの通路にこぼる鬼の豆 田中ようちゃん」さん 70歳)
鬼も出る迷路の如き人の世に(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・鬼酒に言わせて晴らす冬の空(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
・節分や老いたる鬼は杖を持つ(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・床の間のかざし鬼やらい(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・鬼は外豆の飛び出す裏通り(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
・朝まだき鬼怒川温泉冬の月(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・待春や錦を纏う鬼の(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・節分や鬼門に豆をそっと置き(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・暗闇に息ひそめるや鬼やらい(ペンネーム「テッちゃん」さん 80歳)

入選B

・豆まきや鬼の先生走る走る(ペンネーム「むらさき(5さい)」さん 5歳)
・鬼は外投げる先には父の顔(ペンネーム「ゆき」さん 17歳)
・福外に追い出す母の怒り激(ペンネーム「舞ぴょん」さん 17歳)
・鬼の父今年も降る降る豆の雨(ペンネーム「ケロロ」さん 19歳)
・追いかける子どものさきに鬼の影(ペンネーム「ぴょんこ」さん 19歳)
・底深き未来の悩みに鬼笑う(ペンネーム「こたつの精」さん 21歳)
・節分や泣き虫鬼に傘をさす(ペンネーム「トメイト」さん 21歳)
・逃げだしたばあばの部屋の鬼の面(ペンネーム「まめきち」さん 22歳)
・うちに来た0歳の福鬼になる(ペンネーム「新米ママ」さん 27歳)
・鬼役は僕より君が合ってるよ(ペンネーム「やすよ」さん 34歳)
・垂れた目の赤いお面に鬼は外(ペンネーム「豊田すばる」さん 38歳)
・豆つかむ子鬼わらわら福は内(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・来年の春の事言や鬼が笑うかも(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・鬼迷うこの恋人偉いのか(ペンネーム「犬蔵の王」さん 42歳)
・邪気払え鬼が現る毘沙門天(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・テムズ川地獄めぐりか鬼退治(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
・本当はかわりたくない鬼の顔(ペンネーム「スーたん」さん 44歳)
・鬼ごっこ障子破れて顔のあり(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・鬼嫁の手のひらの上で鬼ごっこ(ペンネーム「テイラー伊太郎」さん 46歳)
・振りかぶる青き拳や鬼の豆(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・幼な鬼当たらぬように福は内(ペンネーム「ちーまる」さん 49歳)
・OLの辞表しのばす鬼やらい(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
・豆まきや鬼に持たせるワンカップ(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
・春浅し鬼と泣きたる読み聞かせ(ペンネーム「いようさぎ」さん 54歳)
・鬼の面日々のしがらみ豆に乗せ(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・鬼怒り黒きまなこに雪景色(ペンネーム「雅」さん 55歳)
・豆を撒く心の中の小鬼にも(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・我鬼に駆り立てし物沈む闇(ペンネーム「そら」さん 58歳)
・泣きじゃくる園児も豆で鬼を追う(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・鬼払い福豆数え歳を知る(ペンネーム「やっちゃん」さん 58歳)
・鬼の豆主なくして枡の中(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
・春の息吹鬼の目で見ろ耳で聞け(ペンネーム「ヨシ整体」さん 59歳)
・鬼面つけ寝たきりの母笑顔なり(ペンネーム「呉のカープ女子」さん 59歳)
・鬼の目に涙あふるるむすめ婚(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・初孫や鬼も角折るじじとばば(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・おには外今年一年福は内(ペンネーム「DIYじじ」さん 65歳)
・鬼の籍喪中の葉書冬の旅(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
・節分や鬼のお面の笑い顔(ペンネーム「小市(こいち)」さん 67歳)
・春近し鬼も引っ込み鯉が舞う(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・鬼は外今年も一つ豆が増え(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・鬼役に今年も務め古稀夫(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・ディサービス鬼に向かって豆を投げ(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・じゃんけんポン節分オニ役老夫婦(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・里帰り鬼のいぬまの張るうらら(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・鬼ヶ島追儺の鬼の電話受く(ペンネーム「吞田」さん 71歳)
・鬼やらい父さん鬼になりきれず(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・ストッレチして出番待ちたる鬼は外(ペンネーム「まさる」さん 77歳)
・面面面面兄弟げんかの鬼が泣く(ペンネーム「コンセプシ音6」さん)

ユニー句(句)

・節分やあかおにあおおにみどりおに(ペンネーム「ちま(3才)」さん 3歳)
・豆痛し嫁と書いておにと読む(ペンネーム「富士山」さん 31歳)
・鬼は外まいたお豆でビール飲む(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・赤鬼の青ざめし涙ビットコイン(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
・母が言う私が鬼かそっちだろ(ペンネーム「わた」さん」さん 44歳)
・鬼は外心の中では鬼が好き(ペンネーム「こまちん!」さん 50歳)
・うまいもの鬼のいぬまに盗み食い(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・赤鬼や吠えろよ吠えろ春キャンプ(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・鬼心すべてはカープの日本一(ペンネーム「カーターピーナッツ」さん 63歳)
・鬼嫁をおだてて見たが何も出ず(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
・俺の嫁鬼より強いが外では淑女(ペンネーム「みっちゃん」さん 64歳)
・節分の鬼へ振舞ふ鬼ころし(ペンネーム「桴」さん 65歳)
・鬼が来た家には違う鬼が居る(ペンネーム「やんちゃばば」さん 65歳)
・寄せ鍋の箸止めさせる鬼奉行(ペンネーム「不思議の国の兎」さん 66歳)
・入れ歯抜き鬼の面より怖いじじ(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・鬼嫁の鬼も追い出せ鬼やらい(ペンネーム「音爺」さん 71歳)
・鬼の面はずしたはずがそこにいる(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・豆撒きや鬼役の我ぎっくり腰(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・鬼の面取っても泣かれた父の顔(ペンネーム「なそじい」さん 74歳)
・早春や三たびペナント鬼コーチ(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年1月26日(金)

第82回 お題「雪」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「雪」。
今回はまた非常にたくさんの投句を頂いてうれしい悲鳴でした。
いつもように新しいお名前も見られ、うれしく思いました。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むこと。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は、余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは、現在使われており将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則、テーマ・お題を入れて詠む。

今回は「淡雪」など春の季語や、「風花」などであっても「雪」が入ってあるものは可としました。
しかしどう詠んでもお題が入っていないものは残念ですが選外としました。

大賞句は、「託し詠み」の極致ともいえるモノと一体となった素晴らしい句でした。
入賞句は、ディテールを上手く詠み込んだ句でした。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。

今回は応募数が特に多かったので、入選句をやや多めにとらせていただきました。
ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「雪晴や街を見下ろす風見鶏」(ペンネーム「洒落神戸」さん 50歳)

一読したときから大賞候補であった。
「上五中七」の大パノラマに比するに、下五に何をもってきてもそれなりに成立したであろうが、見渡すような動きの感じられる「風見鶏」を象徴的に配したことで句にさらなる広がりや動きが出て、見事に決まった。
それを思えば、六甲山・異人館などではどうにも大雑把な把握の吟行句のようになり平凡である。
この「風見鶏」」からは日和見主義うんぬんの意味合いは全く感じられない。
「雪晴」だからか「くるくる回っている」イメージでもないし、いかにも悠然とした堂々たる「風見鶏」である。
この「風見鶏」はどう感じても作者自身であろう。
その見渡すすがすがしさやのびやかさが圧倒的な共感を誘う。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
詩にならない言葉はない。詩にならない言葉の関係があるだけである。

入賞

「ランドセルの蓋はづませて雪晴れ間」(ペンネーム「不思議の国の兎」さん 66歳)

「はづませて」は旧仮名で書かれているのだが、特に強い主張がないのであれば、ここでは原則「現代仮名遣い」をお勧めしたい。
下校時の児童の様子がイメージされる。
雪晴れの美しい光景に、「ランドセルの蓋」をしめるのも忘れて外に飛び出し、楽しく下校する様子。
うれしいたのしいと直接詠まず、中七のディテールにすべて託して詠んだところが成功し、臨場感やリズム感、イキイキした様子など、様々なプラスのイメージを生み出して詩になった。
観察眼と「託し詠み」の光った句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募下さい!
<作句のポイント>
ディテールを詠む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・湯けむりや首に触れたる夜の雪(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※温泉に行こうかなあと。
→演歌の世界のような光景でなまめかしい。類想がありそうであるがカッチリと句にした。しかしこういう既成の俳句らしさに安住せず、自分の詩を詠っていってほしい。

・うなだれた背広に通す雪明かり(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※雪の重みではないが、くたびれてうなだれたスーツを着て再び頑張って仕事に向かう様子を詠みました。
→「背広に通す腕」ではなく「背広に通す雪明り」だから詩になった。このあたりの感性のきらめきがすばらしい。一方「うなだれた→背広」はありきたりの語の関係で惜しい。このあたりをさらに咀嚼したいところである。多くの参加者が写生口であるのに対して、作者は「コトバ口」、つまり言葉の関係性に美を見出す方向であり、私の立場と近い。期待したい。

入選句

特選

・積む雪やチャイコフスキー弾く少女(ペンネーム「コバルトブルー」さん 32歳)
→上手い句であり自分の言葉をもっている方である。どちらかというと頭で詠むタイプのようなので、体から(無意識)の実感を詠むようにしてみていただきたい。

・大雪や声を失う街の空(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→「声を失う」のは作者ではなく「街の空」だから詩になった。しかしこれは俳句の世界では類想が多そうで、そこが少し惜しかった。

・新しき消しゴムの角深雪晴(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→なかなかなのであるが、「新しき」がどうも効いていない。すでに気分の出ている句を添削するのは好きではないが「消しゴムの角濡れている深雪晴」などと比較していただければ何か気づきがあるかもしれない。作者への宿題としたい。

・雪かきに足跡残す明日かな(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
→平凡な「雪かき」の句かと思えば下五に「明日」を置き、詩になった。現在と未来を重ね見ているような次元の句で神秘的である。

・ボタン刺すか細き針や今朝の雪(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→全体的に世界観が平凡というか見なれた日常を日常のまま詠んだようなところが惜しいが、「刺す・細い・針・朝」あたりの繊細な音韻や細やかさが詩を生んでいる。鋭敏な感性を感じる句である。

・放課後のグランドで泣く雪まろげ(ペンネーム「cava」さん 49歳)
→「雪まろげ」は雪転がしのこと。雪の遊びは一般には楽しいものだが「泣いた」から詩になった。句意としては子供が泣いているのであろうが、どうもその顔が見えず「雪まろげ」こそが泣いているように取れる。そのあたりがこの句の面白いところ。

・淡雪や両手で包む缶コーヒー(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
→ドラマのワンシーンのような世界で感情移入して味わってしまう。雪のぬくもり、手のぬくもり、缶コーヒーのぬくもり、心のぬくもりなどが、折り重なって感じられてくるようなあたたかな句である。まずはこのように自分の感じたよう世界を写生的に多作すればいい。その地平に新しい境地が見えてくる。好句。

・細雪空いっぱいの滑り台(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→雪に綺麗に覆われた公園の風景か。白世界に一つ象のように盛り上がる滑り台。一面の雪が「滑り台」を「空いっぱい」に感じさせたという句で共感できる。これが「雪が滑り台のように降ってきた」という句なら「滑り台」は単なる比喩にしか使われておらず存在感が希薄で句にならない。

・雪の朝輪郭のなきぬりえかな(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
→「雪の朝は輪郭のない塗り絵のようだ」という比喩の句であれば詩にならない。「雪の朝」と「輪郭のなき塗り絵」の取り合わせの句と解するべきである「輪郭のなき」などに心情表出が感じられる非日常感のある佳句である。

・過疎の村笑顔を照らす雪明かり(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
→「笑顔を照らす」はよくある表現うんぬんというのは簡単であるが、私はこれはこれでいいと思う。一句に醸し出されているほのぼのとした気分がぬくもりを与えている。

・雪道やおもちゃ屋前のポチ袋(ペンネーム「ヨシ整体」さん 59歳)
→モノを打ち出して象徴的に詠む方向にシフトされてきた。余計なことを言わず「雪道・ポチ袋」に絞って詠んだところがよい。どういう事情と解するかは読者にゆだねられている。

・雪明り主亡き部屋の柱かな(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→伝統的な詠み方であるが、柱にポイントがしぼられてそこに作者の思いが感じ取れる句である。俳句という形式をよくわかっている方なのであるが、さらに飛躍して詠んでみたい。

・雪催いマジックインキの匂いかな(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
→応募句の中では圧倒的にこれがよい。俳句の初心者の方はよく何らかの教条や俳句らしさ小手先のテクニックで詠もうとするのであるが、それが俳句だと思うと先を見誤る。この句のように自分の実感をきちんと詠むことが先決である。そこに詩としての値打ちがあるのである。「雪催い」と「マジックインキの匂い」この関係性がつかず離れずで美を生み出している。何らかの衝動・不穏な心境の感じられる句で共感できる。私は「俳句はモノとモノをぶつけてそこから生まれる芸術」と言ったりもするが、そのような方向の句である。この方向を期待したい。

・雪時雨俺を残して列車ゆく(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→中七が面白い。「我」などと気取らずに「俺」と置いたことで生々しさが出て成功した。ダンディズムというかハードボイルドな雰囲気の詩になり個性が出た。これはこれで一句なのだが、私なら下五を「ゆく列車」としてみたい。重心の置き方が「出来事」よりか「モノ」よりか少し変わる。提案は「モノ寄り」である。

・大雪やアナウンサーの今朝の紅(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→ポイントを絞って詠んで句になった。何があろうとアナウンサーは情報をいち早く伝えるが、このたびは「紅」を差す余裕があったのか、あるいは、いかなる事態でも女性としてキリリとしていたいという作者の心境を重ね見たものか。

・降る雪や宍道湖に立つ三角波(ペンネーム「しじみ」さん 69歳)
→少し盛り込む過ぎなのであるが、何とか「雪の宍道湖」をまとめた。「三角波」になにがしかの作者の心境が投影されているようで共感を覚える。

・春雪や大地ゆつくり弛みゆく(ペンネーム「めがねバーバ」さん 73歳)
→「春」だから「弛む」のはあたりまえなのであるが、大きな把握が効いてそれほどつきすぎが気にならない。これだけ寒い日が続くと本当に春が待ち遠しい。

・手のひらに雪降る午後の根付展(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
→平凡な句のようでいて、しっかりと自分の実感を詠んでいる上手い句である。どこかしら手のひらの「雪」と手に乗るサイズの「根付」を重ね見ているような句で、その幻想性が詩情を生んでいる。奥ゆかしい好句である。この方向を期待する。

・しんしんと雪積む音や墨匂う(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→上手い句である。しかしてこのような句は沢山あるので、どう飛躍するかそこを見てみたいのである。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・雪礫悲鳴をあげるランドセル(ペンネーム「you」さん 10歳)
・雪の窓むかしのレゴを作り出す(ペンネーム「コンスタンチン」さん 12歳)
雪原に白いウサギの絵を描く(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 37歳)
あちこちにこどもの声と雪だるま(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・雪割って咲くものたちや新一年(ペンネーム「櫻井葉子」さん 41歳)
・大雪にペンタウルスの星光り(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
・南天の身震いするやしずる雪(ペンネーム「角森」さん 49歳)
・風花スキップで行く新婦かな(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
・牡丹色埋めつくすビニール傘(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
・牡丹雪受験の朝の音のなき(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・雪あかり手紙の文字のにじみけり(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
用件を伝えぬ電話雪の声(ペンネーム「そら」さん 58歳)
・雪降るや三次に古墳四千基(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・山茶花の花びら散らし赤い雪(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
・クレヨンの白だけ減りし雪景色(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・影ながく一人たたずむ雪だるま(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・夕暮れの吹雪に揺れるビル明かり(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・雪兎別れを告げず去りゐたり(ペンネーム「吞田」さん 71歳)
・公園で雪を蹴散らす園児かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・大雪の母の便りにキップ買う(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・低くジャズ流るるカフェ雪椿(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・降る雪や頁繰るテイータイム(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)
・雪国の窓に温もりあるような(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・降る雪や児の自転車風受けて(ペンネーム「古志清右衛門」さん 77歳)
・雪富士に目元ぬぐうや異国(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
・駅吹雪予期せぬ父の笑顔に泣く(ペンネーム「いっぺい」さん)

入選B

・雪景色一人見ながら春を待つ(ペンネーム「優菜」さん 11歳)
・雪に病む寝ているばかりのうどんかな(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
・雪の日や路面が凍ってすべり台(ペンネーム「ぴょんこ」さん 19歳)
・忘れ柿雪化粧にも紅をさす(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
・極楽だ温泉入って雪見酒(ペンネーム「やすよ」さん 34歳)
・道に落つ雪は白さを失えり(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・しんしんと雪降り積もる冬の空(ペンネーム「けみこ」さん 40歳)
・雪景色綺麗と同時危険あり(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・旦那と子玄関先の雪だるま(ペンネーム「よこたん」さん 41歳)
・かまくらにはしゃぐ子供雪の精(ペンネーム「犬蔵の王」さん 42歳)
・屋根の上うっすら変わる雪化粧(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・窓越しの白をまとった蠟梅愛づ(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
・雪枝さん雪のように亡き祖母が(ペンネーム「わた」さん 44歳)
・しんしんと降る音聞こゆしずり雪(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
・新雪や獣の足跡ぽつりぽつ(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・雪かきで雪解け水に混じる汗(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
・襷巻き無駄汗掻いて雪掻いて(ペンネーム「カープV預金」さん 46歳)
・往診の患者は知らぬ外の雪(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・一夜してスピード美白や雪景色(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・夜の雪警報に笑む高校生(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
・湯けむりに落つむつのはな肌に消ゆ(ペンネーム「きのぴー」さん 49歳)
・赤き実の弾けて揺れる雪しづり(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
・雪掻きをしてる隣で雪合戦(ペンネーム「こまちん!」さん 50歳)
・充電の切れる東京雪野原(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
・その先にすすまぬ童歌雪の道(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
・山道でヘッドライトに雪吹雪(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・雪かきを誰がしたのかありがたき。(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・雪降りてやっと出番のスノ−タイヤ(ペンネーム「彩の介」さん 55歳)
・ツルツルもザラザラもある雪ダルマ(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・しんしんと雪降る朝の静寂さ(ペンネーム「りんの」さん 57歳)
・月曜の都会の朝に雪だまり(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・尾をふりて我に向かいし雪野原(ペンネーム「メリーゴーランド」さん 58歳)
・落葉樹小枝に咲くは雪の華(ペンネーム「やっちゃん」さん 58歳)
・雪ですね旅のをんなが窓を見る(ペンネーム「砂山恵子」さん 58歳)
・南天の赤い実キラリ雪うさぎ(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
・積雪にてんてこ舞いの都心かな(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・前を行くあなたの肩に雪積もる(ペンネーム「バーガー父ちゃん」さん 62歳)
・南国に雪をもたらす憎い奴(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・大雪や気象衛星勇みおり(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・朝おきてまどをあければ大雪だ(ペンネーム「DIYじじ」さん 65歳)
・初雪に孫より先に外に出ん(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・雪が降り見慣れぬ景色風情かな(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・老犬ときゅっきゅっと雪道祈りつつ(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・水玉の世界広がるぼたん雪(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・ライン友福良雀の雪のえさ台(ペンネーム「のぶさん」さん 70歳)
・雪降れば赤貧洗うもふと忘れ(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・ザックザク雪音軽く子等通る(ペンネーム「音爺」さん 71歳)
・降る雪にわき目もふらず太田川(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・雪蹴散らして愛犬はしゃぐ散歩(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・診察は老化現象雪の帰路(ペンネーム「ももちゃん」さん 72歳)
・雪かきで見つけた一輪雪割草(ペンネーム「菜穂ちゃん」さん 73歳)
・ダイエット団地の庭で雪ダルマ(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・校庭が一面靴音初の雪(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・雪を見て風の音は白い息の緒(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年1月19日(金)

第81回 お題「駅伝」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「駅伝」。
前回よりも難しげなお題であるにもかかわらず、皆さん随分と「託し詠み」をされてきて、うれしく思いました。
新しいお名前も見えて、光栄でした。

この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです。
以下①~④を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

①原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
②俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
③仮名遣いは現在使われ将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
④原則テーマ・お題を入れて詠む。

今回は「駅伝」ではなく「タスキ」を詠んだ句が多くありました。
「駅伝」の気分が出ているものは可としましたが、原則お題を入れて詠んでいただければと思います。

大賞句は、詠みに甘さがあるものの、応募の中で着眼が光った一句でした。
入賞句は、過不足なく「箱根駅伝」の気分を伝えるものでした。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「落ち葉舞う駅伝選手の足元で」(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)

「上五中七」に対して「下五」の当たり前感というか全体的に詠みが甘いところが気になるが、無意識的に素直に実感を掬い取って詠んだところがまずよい。
俳句はテクニックや文法や詩の技法を「勉強」すればいい句ができると思っている方も多いであるが、私はそうではない。
とにもかくにも俳句は短いので、技術を駆使したり意識や理屈で作ろうとすればするほど、それが全面に出てうるさく邪魔になるものなのである。
「駅伝選手の足元で」「落ち葉舞う」という倒置法を用いた句ともとれるが、定型のリズム・バネによって結果的にこの型に収まったとみるのが自然であろう。
この句はとにかく、着眼点が光っている。
駆け抜ける選手の足元にズームアップしたようなカメラ目線。
選手が通り抜けるたびに落葉がサーサーと舞い上がる様子が印象的で、駅伝の勢いや臨場感・楽しさがモノ(落葉の様子)に託され、見事に伝わってくる。
「託し詠み」のできた好句である。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
俳句は意識ではなく、無意識から生まれる。

入賞

「富士を背につなぐ襷や息白し」(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)

「駅伝」が題であるから原則入れてほしいのであるが、一読「箱根駅伝」の気分が伝わってきたのでとった。
「箱根駅伝全体の熱さや気分」を、「富士山」の風景と「息白し」という季語の調和に託し、卒なく過不足なく伝えている点が上手かった。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募下さい!
<作句のポイント>
俳句は短いので言いたいことは言えない。モノに託す。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・駅伝の襷這い行く深雪晴れ(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※駅伝の襷の重さとその上の晴れ舞台の様子を詠みました。
→名人らしいなかなか奥ゆかしい一句。

・駅伝や声立ち尽くす冬の空(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※走れなくなることもあり、その光景が時に強く心を打つ、ということもあります。
→意味深な句でいろいろに解釈できる。この句から連想がひろがって「駅伝の空立ち尽くす冬の花」などが浮かんだ。

入選句

特選

駅伝や焚き火ひしめく里なまり(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→句としては少し盛り込み過ぎな印象であるが、全国からの駅伝チームがそれぞれに焚火で暖をとっているような光景が目に浮かび、共感する。

駅伝を消したる母や冬の昼(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→駅伝のテレビを母が消したという句である。ここからなんらかの事情を感じ取ってくださいという句で意味深である。私は何か怒りのような感情がイメージされてくるがさまざまだろう。課題としては日常性をいかに抜け出すか、また出来事ではなくモノを詠む(モノの本質)というあたりになろう。

駅伝や空につなげた糸でんわ(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
→選手とそれに関するいろいろな人々の思いが「糸電話」でつながっているという句であろう。しかしそのまま解釈しても面白く、なんらかの楽し気な気分が感じとれてきて共感を覚える。惜しいのは「つなげた」と自我が強く出すぎているところ。せめて「駅伝の空につながる糸電話」くらいに柔らかく詠んでみたい。

駅伝の空に輪を描くトンビかな(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
→中七下五があまりにも平凡なトンビの表現で惜しいがそこまで気にならない。地上の「必死な駅伝」と空中の「のびやかさ」の対比、人間と自然の対比のよく効いたスケール感ある宇宙流の句でなかなかの佳句である。平凡な語と語の関係を避けることがこれからの課題であろう。

駅伝の背中を包むアスファルト(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→これでよい。選手に道が大波のように迫っているような気分。駅伝のなんらかの緊張感の伝わる句で面白い。佳句。

駅伝や食い縛る歯の白き息(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
→中七下五のディテールに臨場感が出ている。観察の句。

駅伝や汗振り切れば春近し(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→心機一転を詠んだ句か、中七が面白い。季節や空間を広く詠んで懐の広い句である。

駅伝や広島城に冬の虹(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→広島の駅伝風景であろうか。モノを全面的に出した句で堂々として美しい。

駅伝や渡す手もとの白い息(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→中七下五の繊細な表現が魅力的な句。

駅伝のスタートライン息白し(ペンネーム「しじみ」さん 69歳)
→少々あたり前なのが惜しいが、駅伝の気分スタートの緊張感をよく伝えている。

駅伝の練習終えし冬茜(ペンネーム「めがねバーバ」さん 72歳)
→「終えて」などと素直に詠むほうが一般的であろうが、原句のように冬茜が練習を終えたともとれる句だから詩になっているともいえる。いずれにしてもなんらかの気分を「冬茜」に託して詠んでいるところがよい。

冬晴れの足音迫る駅伝かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
→「駅伝・足音」はこの句の場合つきすぎで惜しいが、駅伝を応援する気分の出た句である。

駅伝や冬青空に父母の声(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
→父母の思いや声援を胸に走っている選手の様子が目に浮かぶ。好句。

駅伝のランナー燃やす冬の空(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→少々直接的な表現が惜しく課題であるが、大胆な表現はいつでも詩の心臓である。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

寒空や線上の駅伝選手(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
駅伝や真昼の星の輝ける(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
息白し繋ぐ襷に吹きかかる(ペンネーム「稲葉高飛郎」さん 45歳)
駅伝やお守り付けし空駆ける(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
昆布巻を夫に寄せて観る駅伝(ペンネーム「角森」さん 49歳)
駅伝の近づく背中冬の空(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
淑気満つ箱根駅伝団旗かな(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
冬青空襷が繋ぐ街と山(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
新春につなぐタスキの湯気熱く(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
駅伝ロード音降りそそぐ風冴ゆる(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
駅伝やタスキが繋ぐ滲む汗(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
駅伝の日差しくぐりて鳴れり(ペンネーム「そら」さん 57歳)
駅伝の襷の汗の重さかな(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
駅伝の繰り上げスタート走り出す(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
駅伝の古を語るカレンダー(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
駅伝や背に初東風の力うけ(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
駅伝や足音軽き寒の風(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
駅伝や歓声空にたなびいて(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
冬晴や襷外して握りしめ(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
寒風の箱根路重き駅伝か(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
明日へと襷を渡す白い息(ペンネーム「コスモス」さん 75歳)

入選B

お正月駅伝を見て元気出る(ペンネーム「彩世」さん 11歳)
寒空や湯気立つわがみたすきつく(ペンネーム「悠」さん 11歳)
小春日のたすきときずな重ね合う(ペンネーム「翔夢」さん 11歳)
白い息襷手に取り掴む夢(ペンネーム「かよこんこん」さん 29歳)
駅伝見痩せた気分のテレビ前(ペンネーム「あゆみっくす」さん 33歳)
仲間との思いが詰まるタスキかな(ペンネーム「けみこ」さん 40歳)
タスキには控え選手も走ってる(ペンネーム「呉の親分」さん 42歳)
沿道の声援受ける箱根駅伝(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
汗涙染みたタスキは心の輪(和)(ペンネーム「カープ大好き」さん 42歳)
町などを結ひ襷かな春隣(ペンネーム「桜井まこと」さん 42歳)
箱根行く旅に出たなら駅伝へ(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
駅伝や年の始めのドラマかな。(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
駅伝か全国中継三賀日(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
新春の襷を繋ぐ箱根から(ペンネーム「モモ」さん 46歳)
駅伝や背を見届けし鷺も鵜も(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
北風や駅伝のメビウスの帯(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
駅伝のラジオみかん剥く広き背(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
駅伝やたすきに懸ける泣き笑い(ペンネーム「呉のカープ女子」さん 59歳)
冬街道手渡す襷熱き士気(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
「そうそうそう」箱根駅伝冬の息(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
繋げるぞたすきに宿るきずな力(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
ふるさとの期待を繋ぐ襷かな(ペンネーム「バーガー父ちゃん」さん 62歳)
駅伝で親子の絆深くなり(ペンネーム「まあくんの祖父」さん 64歳)
駅伝の伝をつなげて寒の安芸(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
駅伝の襷は絆重きもの(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
総合力タスキ引継ぐ駅伝で(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
寒風の出身声援熱の駅伝(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
駅伝は絆をはこぶドラマかな(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
駅伝やごぼう抜きをば夢に見て(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
駅伝や痙攣蹴とばし完走す(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
駅伝の繰り上げさせぬ権太坂(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
筋肉を蓄えて箱根駅伝(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
舞う小雪走るメロス継ぐ襷(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
風花の絡む駅伝ハーモニー(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
駅伝やじだんだ踏みタスキまつ(ペンネーム「古志清右衛門」さん 77歳)
つながるタスキ一歩目も千歩目も(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年1月12日(金)

第80回 お題「鏡餅・鏡開」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「鏡餅・鏡開」。
ユニークな句、この道場で推奨している「託し詠み」がしっかりなされた句、さまざな力作をいただきました。
それに新年ということもあってか、今回も新しい方からのご応募を沢山いただきうれしく思っています。

新しい方も増えたので、この俳句道場での方針を改めて書いておこうと思います。
この俳句道場で今年マスターしてほしいことは「託し詠み」です。
「託し詠み」とは、言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠むことです。
以下(1)~(4)を踏まえて「託し詠み」にチャレンジしていただければ何もむずかしいことはありません。
気分が出ておれば、文法・季重なりなど、あまり細かいことを言わないのが私の立場です。

(1)原則有季定型(季語を入れた定型感のある句。多少の字余り字足らずはOK。)
(2)俳句は余白を空けたり多行書きにせず原則一行で書く。
(3)仮名遣いは現在使われ将来も使われるであろう「現代仮名遣い」を原則使用する。
(4)原則テーマ・お題を入れて詠む。

大賞句は、解釈を読者にゆだねた俳句名人らしい奥深い句で見事でした。
入賞句も、やる気を具足餅や靴の軋む音に託して詠みあげた男らしい一句でした。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「鏡餅ふるさとに落つ雲の影」(ペンネーム「あや」さん 49歳)【広島俳句名人】

正月の田舎の田園風景を詠んだ句であろう。
「落つ(終始形)」に軽い切れがあり、「ふるさとにぽつんと座る鏡餅」と「雲の影」という両者の気分を重ね見た句と解釈してもいいが、連体形「落つる」の「る」を省いた形と取るのが自然であろう。
このほうがリズム感や強さなどが出て、気分がより出ているようである。
俳句は何より韻文であるので、一句が醸し出している「気分」が感じ取れれば、文法や活用形の正しさうんぬんはあまりやかましく言う必要はないというのが私の立場。
いずれにしても「ふるさとに落つ雲の影」から感じ取れる作者のなんらかの心境・事情を感じ取りたい。
それは、何らかの決意であろうか、さみしさであろうか、ふるさとを思う気持ちであろうか。
解釈を読者の想像にゆだね、想像をかき立て、ひきつける奥深い詠みになっているところがさすがである。
「俳句は気持ちや言いたい事を直接言葉で伝えるものではない」というあたりのことがよく分かっている方である。
家の内外、鏡餅と雲の大小、動静などの対比も効いた宇宙流の一句でもある。
大賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
俳句は沈黙の芸術。モノに託して詠み、解釈は読者にゆだねる。

入賞

「新しき靴のきしむや具足餅」(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)

「具足餅」というのは、正月に鎧兜を飾って、その前に供える鏡餅のこと。
「具足餅」は「鏡餅」とは別の季語だという方もおられようが、この程度のことはまあ許容範囲であろう。
何より、実感ある世界を詠んでもらうことが大事である。
句は、切れ字の前後のモノの取り合わせが、つかずはなれずよくつりあっていて、「心機一転やるぞ!」というような気分、強い決意が見事に伝わってきて、共感を覚える。
まさに気持ちをモノに託して詠んだ「託し詠み」の一句である。
入賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募下さい!
<作句のポイント>
テーマの説明にならないモノとモノの関係性が詩を生む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・鏡餅開き差し込む子らの声(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※鏡開きの日、始業式があったのか、子どもの声が道路から響いていた様子を句にしました。
→鏡餅を中心とした日常を詠んでいるのであるが、そのまま詠んでしまってはタダゴト句になるので「差し込む」と印象的に詠んだ。そのあたりが平凡をさけたさすがの表現である。「開き」はすこし中途半端な表現。

入選句

特選

・亡き祖父の声が聞こゆる鏡餅(ペンネーム「you」さん 10歳)
→鏡餅に大好きだった祖父のイメージを重ねているのであろう。気分のよく出た句である。10才でこれだけ詠めたらたいしたものである。この方向で。次回も挑戦を!

・鏡餅夕暮に読むニーチェかな(ペンネーム「コバルトブルー」さん 32歳)
→応募句の中ではこれがいい。鏡餅にニーチェでは少し飛躍した印象であるが、日常を日常のまま詠む句よりよっぽどよい。ただし「神は死んだ」というニーチェの言葉と神に供える鏡餅の対比というような理屈で作った句とすれば浅くなる。作者の課題としておこう。

・曇天を切り裂く鏡開きかな(ペンネーム「かつたろー。」さん 42歳)
→気分の出た句であるが、切り裂くは少し直接的で惜しい。というよりも鏡開きのイメメージにつきすぎなようである。そのあたりが課題であろうか。

・鏡割り横目に走る郵便夫(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→いわゆる俳味(滑稽)を感じる句である。面白いシーンをとらえた。

・鏡餅狐に化ける玉三郎(ペンネーム「でこ」さん 51歳)
→全体的に理屈っぽいのが惜しいが、正月の気分を独特の切り口で伝える句で面白い。

・東京の月澄み渡る鏡餅(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
→月の季重なりというよりも、月と鏡餅の丸さの露骨な対比が少しあからさまで惜しい。しかして清々しさのよく伝わる句で気分もよく出ている。これはこれで一句であろう。正月の大きな月が美しかった。

・鏡割り地球の裂け目広がりぬ(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
→あと一歩という句である。「割・裂け」はイメージの重なりなので目をつむってでも避けなければならないところ。たとえば「鏡割り地球まだまだ広がりぬ」など。次回も挑戦を!

・掛軸の落款隠す鏡餅(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
→いいたいい発見の句である。惜しいのは「隠す」。これがしてやったりの表現なのであるが、だからこそ言い過ぎで惜しいのである。「言いたい事は俳句にならない」。ここから素材を活かして句にしたりところである。例えば「掛軸の落款ゆれる鏡餅」くらいなら詩になっている。日常を日常のまま詠んだところで詩にならないが、日常ゆれない「掛軸・鏡餅」が揺れるから詩(非日常)になるのである。参考にされたい。

・寒中の見舞いしたため鏡餅(ペンネーム「9月の雨 順子」さん 61歳)
→寒中見舞いと鏡餅の季重なりが気になるが、余計なことをいわず軽く句にしているところがよい。次回も挑戦を!

・仕込水汲む列長き鏡開(ペンネーム「しじみ」さん 68歳)
→少し盛り込みすぎのようであるが、酒の街らしく気分の出た句で清らかな句である。ポイントをしぼって「仕込水汲み終えている鏡餅」など。次回も挑戦を!

・鏡餅装い脱ぎて星となる(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
→視聴者からの全応募句の中でもっともモダンな句である。中七が説明的でもたついているが、鏡餅を星にするとは詩人である。

・鏡餅老舗の帳場黒光(ペンネーム「吞田」さん 70歳)
→白と黒の対比はわかるが、空間の広がりに乏しく日常を日常のままよんだ平凡な句になっていいて惜しい。内外を対比させるなど攻めてほしい。次回も挑戦を!

・蝋燭に朱く頬染め鏡餅(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
→説明的なのが惜しいが、言いたい事をいわずなんとかモノに託そうとしている姿勢が感じ取れる。少女のイメージが湧き上がる少し幻想的な句である。

・父の背の向こうに大き鏡餅(ペンネーム「めがねバーバ」さん 72歳)
→父と鏡餅の関係性が平凡なのが惜しいが、大きがよく効いていてのびやかな句になっているところがよい。次回も挑戦を!

・朝粥に迫る波濤や鏡餅(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→海辺の光景であろう。この句の場合、朝粥と鏡餅が兄弟喧嘩している印象である。どちらかにポイントを絞りたい。次回も挑戦を!

・御鏡や歳時記胸に入院す(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→出来事を詠んだ句なのが惜しいが、無駄なくまとめたところが見事で慣れている。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

二歳児みかん取り合う鏡餅(ペンネーム「しののかあさん」さん 30歳)
鏡餅かかとのひび割れ比べけり(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
越えて一気に老けた鏡餅(ペンネーム「雅「みやび」」さん 55歳)
貫禄が妻に似ている鏡餅(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
職員室にどっかと据わる鏡餅(ペンネーム「そら」さん 57歳)
膝小僧かさぶたをかく鏡餅(ペンネーム「コンスタンチン」さん 12歳)
ひび割れた地球は春を鏡餅(ペンネーム「ASARINA」さん 29歳)
鏡餅ひびゆく程の夫婦かな(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
隙間から見えし結晶鏡餅(ペンネーム「三滝のべべ」さん 37歳)
病床の空打ち破る鏡割り(ペンネーム「謎の生命体」さん 37歳)
我が頬をそっと撫でるや鏡餅(ペンネーム「ちっちょくんのママ」さん 43歳)
鏡餅前を横切る黒野良猫(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
パック開け餅出す鏡開きかな(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
鏡餅下げてできたる隙間かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
鏡餅白白明けに列車消ゆ(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
鏡餅猫と添い寝の焼け畳(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
鏡開の揚げ餅を食む園児五人(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
鏡餅お椀の中で笑み映す(ペンネーム「やっちゃん」さん 58歳)
鏡開き母のぜんざい描く味(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
鏡餅五百羅漢の隅っこ(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
縁側でカビ取る母の鏡餅(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
鏡餅夫のうたた寝独楽ひとつ(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
球春に夢を託して鏡開き(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
鏡餅開けば小餅の転げ出る(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
戌年も夫婦円満鏡餅(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
竹はじけ真っ赤な頬の子鏡餅(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
眠らない街のモニター鏡餅(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
床の間の三方に載る鏡餅(ペンネーム「古志清右衛門」さん 77歳)
境内にエイッセイッ響く鏡餅(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)

入選B

・鏡餅今年は一層早いひび(ペンネーム「大山悠人」さん 15歳)
・鏡開き来る頃には体重が(ペンネーム「けいとる」さん 18歳)
・鏡餅開き差し込む子らの声(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
・あちこちで蜜柑ころころ鏡餅(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・おやつ時いつ食べれるの鏡餅(ペンネーム「けみこ」さん 40歳)
・プラモデルお年玉から鏡餅(ペンネーム「犬蔵の王」さん 42歳)
・鏡餅浮世絵描く年の頃(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・パック開け餅出す鏡開きかな(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・鏡開きこれがオカンの底力(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・我が腹とどちらが立派?鏡もち(ペンネーム「たるみ」さん 49歳)
・鏡餅七日過ぎたらリサイクル(ペンネーム「なお」さん 50歳)
・今年こそ思うばかりの鏡開き(ペンネーム「アルパカ」さん 53歳)
・鏡餅日々の数だけ幸願う(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・鏡餅パックのおもちは味気ない(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・鏡餅無病息災梅香る(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・ひと年の餅食べ尽くす鏡割(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・鏡餅割られて焼かれ肉となる(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・黴るまでじっと待つ日々鏡餅(ペンネーム「西尾良二」さん 59歳)
・鏡餅目鼻をつけて雪だるま(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・平成の鏡開きは蓋開ける(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・鏡餅持参の人が妻となり(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・孫の手は鏡餅よりお年玉(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・鏡餅プラスチックの香りする(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・スクランブル人波もどり鏡割(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・おしるこをお裾分けして鏡餅(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・わが家にも神の宿って鏡餅(ペンネーム「グリーン マウス」さん 69歳)
・鏡餅試行錯誤に飾りをり(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・小なれど一人前や鏡餅(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
・鏡餅障子に穴の置き土産(ペンネーム「音爺」さん 71歳)
・鏡餅くずす子ら母小豆炊く(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・二段腹一年の計ストレッチ(ペンネーム「かっちゃん」さん 72歳)
・好走の歳時記駅伝鏡餅(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・ひび割れし向き変えつつや鏡餅(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・鏡餅割る我が指もひび割れし(ペンネーム「くみ婆ば」さん 79歳)
・鏡開きは知るまいに百八つの夢(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)
・弾き初めは身を引きしめる鏡餅(ペンネーム「楽弓」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2018年1月5日(金)

第79回 お題「福袋」(選と評 谷村秀格先生)
総評

あけましておめでとうございます。
皆さまのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
本年も俳句道場をよろしくお願いします。

さて、今回のテーマは「福袋」。
新年にふさわしい楽しいお題でした。
それに最近毎回のように、新しい方からのご応募がありうれしく思っています。

言いたい事・ココロ・気持ち、を直接言葉で詠まず、モノに託して詠む「託し詠み」。
それによって、理屈・説明の句から、「感じてもらう句」に、シフトチェンジする。
そして、句から感じ取れてくる豊かなイメージ(宇宙)に心たゆたわせる。
これがこの道場で身につけてほしい俳句観(宇宙流の俳句観)であります。

大賞句は、ユニークなでしたが、街や人々そして楽しさが感じられる明るい句で見事でした。
入賞句も、正統なる「託し詠み(モノに託して詠む)」の句で美しく品のある一句。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、お題がきちんと入っていない、あるいは入選Bに入らなかったもの。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「福袋そごう三越福屋かな」(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)

なんとも華やかな響きの句である。
「福袋」だけにいろいろ言いたくなるのであるが、この句、余計なことを一切いわず、「福袋」と「デパート」に絞って象徴的に句に仕立て上げた手腕に脱帽である。
というよりも無意識からの作句であろう。
それぞれのデパートの個性ある売り場の風景がつぎつぎと浮かんでくるようであるし、いろんな福袋を下げて街を歩いている人々、街の華やかさや行き交う人々の笑顔までもが目に浮かぶようである。
新年の広島の賑やかさ景気のよさ華やかさを「モノに託す」ことによって、象徴的に描いた一句。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください!
<作句のポイント>
俳句に技法も勉強も必要ない。
無意識からの作句を心掛ける。

入賞

「茜空並びつづける福袋」(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)

「茜空」は茜色の空のこと。
福袋の句であるし、朝の空のことであろう。
「並びつづける」のが、早朝から店の前に並んでいる人々とも、店内に並んでいる「福袋」ともとれるが、両方にとっていいであろう。
こういう解釈ができるのが俳句の懐の深さでもある。
いずれにしても「待ち切れなさ・ワクワク感」を直接述べずに、明るい昼に向かってゆく「茜空」やパンパンに膨らんだ「福袋」に、託して詠んでいるところが上手い「託し詠み」の佳句である。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募下さい!
<作句のポイント>
モノに託すことで、大小の対比、色彩美、時間性、などが自然に生じてくる。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・福袋何度も開くエレベーター(ペンネーム「あや」さん 49歳)
※喧騒と期待感。今年もよろしくお願いいたします。
→少し「福袋・エレベーター」の関係性がやや近いが、期待感を上手くモノに託している。今年も名人らしい俳句を!

・東方のあけゆく空や福袋(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※年明け、福袋を買いに並んだ人々の様子と福袋への期待を句に込めました。
→「東・あける・空」の関係系がやや近いが、期待感が上手く感じ取れる託し詠みの句である。今年も名人らしい俳句を!よろしくお願いします。

入選句

特選

・福袋重し街路を抜ける僧(ペンネーム「コバルトブルー」さん 32歳)
→俳句の心得のある方の句であろうか。なかなか手慣れている。作者の意図では僧が福袋をもっている様子のようだが、重しで切れているので、店外で福袋の重たさを散じている作者の前を颯爽と僧が去ってゆくような光景がイメージされてくる。いずれにしても私見では重しがどうにも主張が強すぎる。また福袋ともありきたりの関係である。むしろ「福袋街路を抜ける美僧かな」くらいで詠みたい。このほうが僧のさわやかさが増して非日常的な句になりそうであろう。

・福袋笑顔駆け出す正社員(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→店内の雰囲気がよく伝わる。しかして福袋と社員ではイメージが近く、日常を日常のまま詠んだ句になってしまっているようで惜しい。日常を詠む場合はそこに批評精神がほしいのである。託して詠む方向はよい。

・福袋覆いかぶさる波しぶき(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→俳句は書かれたままを味わえばよい。それが豊かなイメージを導いているかどうかが大事である。この句、人が福袋に襲い掛かる比喩だとすると陳腐であるが、福袋に実際に波がかぶさる実風景か心象風景N取ればなかなか豪快で迫力を感じる句である。葛飾北斎の富岳三十八景の神奈川沖浪裏がイメージされてくる。

・福袋幸せの町やって来る(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
→この方は「うれしい・おいしい・かなしい・たのしい」など気持ちをつい直接言葉にしてしまうのが惜しいのであるが、この場合は成功している。なにかしらのメルヘンチックな気分があたたかい。

・スニーカー静かに並ぶ福袋(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→開店前の行列に並ぶ人々の緊張感のようなものを詠んだ句であろうか。実際の風景なのかもしれないが、どうも「スニーカー・静か・福袋」のイメージのつりあいがちぐはぐで惜しい。そのあたりを整理してほしいところである。

・福袋跡かたもなき流星(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
→上手い方なのであるが、この句は言いたいこと「跡かたもなき」を言ってしまったのが惜しかった。こういうところをモノに託してみたいのである。「福袋影だけのこる流れ星」など。

・ピノキオのあやつる糸や福袋(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→あやつり人形となって買い出しに出かけたという様子を詠んだ句であろうか。「いいなり」というのをなんとかモノに託そうと詠んでいるところがいいが、「ピノキオ・あやつる」はつきすぎ(イメージの重なり)で惜しい。「ピノキオの糸のもつれや福袋」などでは如何。

・福袋死角に座る冬将軍(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→作者によれば福袋が季語でない歳時記もあるので冬将軍という季語を入れたとのことだが、私見では俳句で大事なのは辞書的に季語か無季かということではなく一句全体の芸術性。この句の場合、やはり季重なりのイメージが気になり惜しいが、福袋のプラスイメージの句が多い中、なんらかののっぴきならない事情を伝えている句のようで面白い。

・青い目の女子も並ぶや福袋(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
→留学生を詠んだ句であろうか。外国の方が日本文化を楽しんでいるような和やかな雰囲気があたたかい。しかして全体的に日常を日常のまま詠んでいるので物足りなさが少し残る。日常を詠む場合はそのまま詠むのではなくそこに批評精神がほしいのである。「青き目の女の影や福袋」たとえばこれくらいに詠まむと句に非日常性が生じる。

・海すべる大きな船や福袋(ペンネーム「ありんす」さん)
→海・大きな・舟、このあたりの言葉の関係性が安易なところが惜しいが、日常の光景の中に、夢で見るような宝船の風景を見た句のようで面白い。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

初売や大つづらなる福袋(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
初買いや福袋開く紙の音(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 45歳)
車椅子取っ手下がる福袋(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・福袋椅子にもたれてひと休み(ペンネーム「角森」さん 49歳)
・福袋形とどめぬ社員証(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
色サイズ母娘寄せあう福袋(ペンネーム「雅「みやび」」さん 54歳)
・福袋冬将軍のおきみやげ(ペンネーム「あおいそら」さん 55歳)
・駄菓子屋に並ぶ小さな福袋(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
お気にいり欠けてる笑顔の福袋(ペンネーム「りんの」さん 57歳)
覗いたり破いて見たり福袋(ペンネーム「西尾婆翔」さん 59歳)
・百貨店一億円の福袋(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
・福袋廃線間近汽車をまつ(ペンネーム「9月の雨順子」さん 61歳)
・手をひいてちょっと大きめ福袋(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・ベートーベン第五聞こえる福袋(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
・かき分けてかき分けてゆく福袋(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・福袋また福袋店はしご(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・恋人の両手をふさぐ福袋(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・福袋の重み知る始めの手(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)

入選B ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・福袋福がこぼれて笑み残る(ペンネーム「にぃ」さん 19歳)
・福袋買っときゃよかった隣のを(ペンネーム「寒い日はだらだらしたい」さん 27歳)
・福袋子どもも欲しいな私たち(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
・福袋ブランド物が大当たり(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
身の丈に合うた幸せ福袋(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・福袋浮かぶは雀の葛籠なり(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
・白い息夢が膨らむ福袋(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・開けるまで夢が膨らむ福袋(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
新年のエネルギー満ち福袋(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・福袋ハンター運を手でつかむ(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
電車賃取り戻したい福袋(ペンネーム「西尾良二」さん 59歳)
・縁起もの夢は大きな福袋(ペンネーム「安田蝸牛」さん 61歳)
・福袋両手に抱え夢一夜(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
断捨離を標榜するも福袋(ペンネーム「のんちゃん5」さん 67歳)
・体力で狙は一つ福袋(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・福袋相思相愛千に三つ(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・福袋中身のみえぬ戦利品(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
事始め店店回り福袋(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・福袋今年の運を使ったか(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・福袋世界一周古希の夢(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・福袋海老で鯛釣る恵比寿様(ペンネーム「ふー」さん 71歳)
争わず敢て小さき福袋(ペンネーム「めがねバーバ」さん 72歳)
似合う娘の手に届きたい福袋(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・福袋大地引き摺るやじろべえ(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
今時や吊るして見せる福袋(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
1年の夢はち切れそうな福袋(ペンネーム「tokusann」さん 83歳)
我れ先に押し問答の福袋(ペンネーム「天然法師」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年12月15日(金)

第78回 お題「クリスマス(聖夜など)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「クリスマス」。
久しぶりの文字だけのお題でした。
こういう時は、クリスマスに思いを凝らしたり、思いっきり飛躍したり、のびのびと自分の世界を詠っていただければと思います。
何より今回は新しい参加者のお名前もたくさん見受けられて光栄でした。

大賞句は、意外なモノの選択でしたが、ユニークかつイメージの広がる句になっており見事でした。
入賞句も、綺麗な「託し詠み(モノに託して詠む)」の句で、印象的なものした。
特選は原則、芸術性の高いもの。
入選Aは原則、詩情は感じられるが、直接表現などが気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句。
選外は、入選Bに入らなかったもの。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!
「なお、次回放送は2018年1月5日(金)です」

大賞

「それぞれの聖夜奏でる食洗機」(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)【広島俳句名人】

句にならない語はない、句にならない語と語の関係があるだけである。
「食洗機」が出てきたことで面食らう方もおられるかもしれないが、そんなことはない。
大事なのは、何が詠まれてあるかではなく、それがどういう効果を上げているか、である。
「聖夜・食洗機」、このようなモノの選択の場合、楽しかった「聖夜」の後の日常的な「食洗機」であるから、さみしさのようなもの。
あるいは、非日常の華やぎから日常へ戻ったむなしさのようなもの、がイメージされてくるものなのであるが、そうではない。
むしろ、いつまでも続く楽しさの余韻のようなものが感じ取れてくる。
それは作者が「モノに託して」詠んでいるだけでなく、「それぞれの→聖夜→奏でる→食洗機」と「モノを動かしている・ありきたりの語と語の関係を避けている(フレーズの変容)」からにほかならない。
これが、単にモノを並べるのと、「動かす(フレーズの変容)」の違いである。
いずれにしても、「それぞれ」の家庭での「聖夜」、その楽しさを、「食洗機の奏でる音」に託して印象的に伝えてあるところが見事で共感を誘う。
俳句名人らしいずば抜けた一句である。
大賞おめでとうございます。次回ぜひご応募ください!
<作句のポイント>
ありきたりの語と語の関係を避ける。

入賞

「靴並ぶ学習塾の聖夜かな」(ペンネーム「めがねバーバ」さん 72歳)

「聖夜」の「学習塾」を詠んだ句で明瞭である。
句からはまずもって、「聖夜」真剣に勉強する子どもたちの「静けさ」が美しく感じ取れる。
この「靴並ぶ」というこの整然としたイメージがよく効いていて、子どもたち、ひいては「聖夜」の街そのものの「澄み切った気分」をよく伝えていて共感を誘う。
変わった表現をしているわけではないのだが、語と語の織りなす関係性が実に美しいイメージを引っ張ってきている「聖夜」の気分のよく出た透明感あふれる見事な句である。
俳句は表面で何かをするものではないといういい見本のような句でもある。
入賞おめでとうございます。次回もぜひご応募下さい!
<作句のポイント>
日常を詠みつつ、非日常を表現する。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・ポッキーのクルクル廻るクリスマス(ペンネーム「あや」さん)
※昔はクリスマスにポッキーを買ってコークハイを混ぜるというのが青春だったのですよ
→いずれにしても象徴的によんであり中七の調子で楽しい気分が伝わり共感を誘う一句である。。

入選句

特選

・銅像のはにかむ空やクリスマス(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→クリスマスのなにがしかの気分を伝えている。モノに託して詠むこの方向でよい。

・黒猫の耳の毛白しクリスマス(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→「黒・白」が意図的・作為的で惜しいが、「クリスマス・猫」でその気分を伝えていて上手い。俳句は何かを伝えるものではない、ということが分かってきただけでも進歩であろう。

・クリスマスクレヨンで塗る夜の街(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→全体的につきすぎの印象ではあるが、中七から下五にかけての心情表出が充分で、気分のでた句である。少し屈折した心情の句であろうか。若々しい句である。

・クリスマス烏の瞳は時計台(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
→こういう句のよさが全く分からないという方は意外に多いが、「クリスマス、烏の瞳が時計台を向いている、そこになんらかの感情移入をしている作者の事情」を感じ取ればよいだけである。何らかの満たされぬ思いのようなものが感じ取れてきて同情する。

・聖夜来て単身赴任の夫帰る(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→「亭主元気で留守がいい」という言葉があるが、「聖夜」にひょっこり帰ってきた「夫」への恨み節か。これはこれで俳味のある一句なのであるが説明的なので、「聖樹の灯単身赴任の夫帰る」などとしてみてもよい。このようにモノをデンと据えると句がイメージ豊かになる。この句の場合、ユニーク俳句から一転「愛の句」になる。

・クリスマス街の匂いのエアメール(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→カナダの娘さんからの手紙を詠んだという。少し類想が多そうなのが気になるが、大変気分の出た句で、この方向でいい。

・カーテンの隙間こぼれる聖夜かな(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
→なるほど、こう詠まれてみると、聖夜はきちんと聖夜を感じようとしているところにこそあるものだということを思い知らされる。いうなれば、事実ではなく真実を射止めた句。納得。

・闘病の犬まとわりつくクリスマス(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→これでいい。中七のリズムをなにかしらに整えればいい。「犬・クリスマス」ではあたり前だが、「闘病の犬」を詠んだから詩になった。日常を詠む場合は固定概念にとらわれず、このように批評精神をもって詠むべきである。ご家庭の犬であろうか。回復を祈念します。

・ソプラノが森駆けてゆくクリスマス(ペンネーム「ハイカー」さん 60歳)
→俳句は何らかの気分が出せておれば意味などはどうでもよいのであるが、その見本である。無意識からの実感を忠実に詠んだ句である。ただし「が」だと全体が説明的になるので軽い切れとのとれる「の」の方がよい。

・聖樹灯や小児科棟の夜明け前(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
→「夜明け前」とは実体験を詠んだ句であろうか。それがよく効いていて、句に並々ならぬ非日常性を与えている。この句が惜しいのは、「灯・明」とイメージが重なっているところ。せめて「聖樹ゆれだす小児科棟や夜明け前」くらいにしたい。

・配達の路地に舞い込むクリスマス(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
面白い詠み方である。しかしてクリスマスの豊かで楽しい気分をよく伝えている。この方向で。

・瞬かぬ電飾まじる聖夜かな(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
→発見の句である。「まじる」は少し言いすぎなので「もある」くらいか。この塩梅がつかめるようになっていただければ進歩である。

・クリスマスイブ深々と星零す(ペンネーム「ありんす」さん)
→「イブ・星」は固定概念の範疇を出ておらず惜しいが、さらりとモノに託して詠んで見せたところは上手い。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

眠る子の静かな夜にサンタ飛ぶ(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)
・雪乗せて車到来クリスマス(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
・聖夜来て明日の夢みる子供たち(ペンネーム「コロケロゲロス」さん 36歳)
・幼子の笑みに佇むサンタかな(ペンネーム「ポケっち」さん 39歳)
・クリスマス街を彩る子供達(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
・星満ちて笑顔こぼるるクリスマス(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
・クリスマス曇りガラスの向こう側(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・テーブルを笑顔で囲む聖なる夜(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
宝石の降るあたたかき聖夜かな(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
・クリスマス聴こえしビング・クロスビー(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
・地下街の黒人霊歌聖夜かな(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
星空とトナカイ探す聖夜かな(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
十四万球天地を照らす聖樹かな(ペンネーム「ヨシ整体」さん 59歳)
シャンシャンとお寺の屋根にもサンタ来る(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・クリスマスカレー掻っ込む受験生(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・大通りの肩押され合う聖夜星(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
・独り居の友に客ありクリスマス(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・協会が見守る町やクリスマス(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
仏壇にケーキ供えるクリスマス(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
孫たちの満面の笑みクリスマス(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・薄闇の街路に映える星聖夜(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・指長き子等に夢有り聖夜かな(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・聖夜来る星と交信天主堂(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
・窓明かりかすかに聞こゆ聖夜かな(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
何処にか自爆テロあり聖夜かな(ペンネーム「古志清右衛門」さん 77歳)

入選B ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

サンタ待つこどもの瞳電飾に(ペンネーム「ゆきんこ」さん 32歳)
・火照る頬窓をも曇らすクリスマス(ペンネーム「三滝のべべ」さん 37歳)
ただいまとスーツ姿のサンタさん(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・クリスマス夜空に煌めき増してけり(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・クリスマス想い出だけが詰まっている(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
・寝息聞きそっとしのばす靴下へ(ペンネーム「ぶー子」さん 44歳)
月並みなプレゼント交換クリスマス(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
子の寝顔横目にそろり親サンタ(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
怪我しても今年の聖夜は最高で〜す♡(ペンネーム「BABAちゃn」さん 46歳)
クリスマスケーキの空き箱を潰す(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・オーブンに火照る頬杖クリスマス(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・雑貨屋のそっくりそのままクリスマス(ペンネーム「雅「みやび」」さん 54歳)
レジかごに高価なシャンプークリスマス(ペンネーム「鯉こころ」さん 54歳)
・クリスマスサンタ来てねと手紙書く(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
子へ贈る赤いマフラー聖夜待つ(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・子の願い空に届けよ聖夜の灯(ペンネーム「もり」さん 57歳)
・クリスマス君の寝顔はもう笑顔(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
・クリスマス手ぶらのパパは手酌酒(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
まだかなぁ母子で待ってるパパサンタ(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
家々が電飾競うクリスマス(ペンネーム「バーガー父ちゃん」さん 62歳)
ひとりぼっち連れて帰ってクリスマス(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・クリスマス夫婦早めの薬風呂(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
再会は流星群の降るイブに(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
来るを待つ歳は老いてもクリスマス(ペンネーム「いいジーヤ」さん 68歳)
・幼子のお手紙受けてクリスマス(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
腕まくるエプロンの婿クリスマス(ペンネーム「しじみ」さん 68歳)
・イブの夜ケーキも無しに一人酒(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
孫の夢おもちゃ屋そっとクリスマス(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
高英男雪降る町を聖夜なり(ペンネーム「あこうちゃん」さん 71歳)
折込で押しかけて来るクリスマス(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
・サンタの訪い絶えて久や老夫婦(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
ジングルベルケーキ片手の家路かな(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)
何億のサンタと金舞うクリスマス(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
妻病みて我も老いけりクリスマス(ペンネーム「呆け人」さん 77歳)
・クリスマス1日だけのキリスト狂(ペンネーム「tokusann」さん 83歳)
曇るメガネラーメン一杯ホワイトクリスマス(ペンネーム「コンセプシオン6」さん)
・反射した聖夜のネオン足を止め(ペンネーム「松中加代」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年12月8日(金)

第77回 お題「宝くじを買い求める人々(動画をみて)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは宝くじを買い求める人々(動画をみて)」。
「10億円を夢を見る」思いのつまった句がたくさん寄せられました。
しかし、俳句は「言いたい事が言えない」詩。
つまり、ココロ「夢見る」を、コトバ「夢見る」で表現できない詩なのです。
ココロ「夢見る」を、言葉で直接いわずどう皆さんが「モノに託して」気分を伝えるか。
それが今回クリアしていただきたかった大事なポイントでした。

句を一覧でご覧いただければわかりますが、特選以上に「夢」はありません。
入選以下は「夢」ばかりです。
どなたも入賞句や特選を選評とともに見ていただければ幸いです。
今回ほど、俳句がどういう詩なのか、ありありと分かる回はないでしょう。

この俳句道場で、動画から詠む場合のポイントは原則3つあります。
1. 動画から安易に飛躍せず、作者と動画が一体となって詠まれていること。
2. 動画の気分が出ていること。
3. 作者の解説や動画なしに句を詠んでも、詩として成立(自立)していること。

大賞句は、ココロ「当選への希望や悲観」を、「懐に抱く冬の空」に託して伝えてあり見事でした。
特選は原則、動画の気分を上手くとらえたもの・飛躍しているものに関しては芸術性の高いもの。
入選Aは原則、動画の気分を伝えるが、直接表現が気になる句。
入選Bは原則、直接表現や思いが先行しすぎた句、句の自立「上記3」が弱い句。
選外は、飛躍のしずぎ、気分に乏しいもの。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「宝くじ懐に抱く冬の空」(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)

私の師も言っていたことだが、『俳句の一番の特徴は「短さ」で、「定型」や「季語」は短さを補完するもの』、私も同感である。
俳句は「短い」ので、必然的に「言いたい事が言えない」「一で多を表現する」「言外の意味に頼る」ことになる。
ココロ・出来事・気持ちを「モノに託して」表現する。
そのために言葉を、散文的・論理的・文法的な領域を越えて、フルに働かせる必要がある。
日本に住む人々は「俳句」によって、日本語を追い詰めているのである。
巷の俳句の先生方は「俳句における日本語の美、季語の意味やすばらしさ、文法的知識」を語るのであるが、俳句形式そのものはそのような「あまい世界」をとうに通り越しているものなのである。
そして、句であるが、心に浮かんだ「期待と悲観の入り混じった気持ち」を、コトバで「宝くじ買う期待と悲観の冬の空」などと直接詠むことなく、「宝くじ・懐・冬の空」に託し、その気分を醸し出しているところが上手い。
さらに言えば、俳句では「対象を詠むことが私を詠むこと」なのであるが、動画の中の人物と一体となっているような詠み方も素晴らしい。
よくあるのは、私(実感・一体感)がないのに対象を詠もうとするから、句にならないのである。
俳句の手法がよくわかってきている方で将来が楽しみである。
大賞おめでとうございます。次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
ココロに浮かんだ言葉をそのまま俳句の言葉にせず、モノに託す。

入賞

「ジャンボくじ並ぶみんなの息白し」(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)

よい切り口の句である。
季語「息白し」に託して動画の気分や季節感、そして高揚感・期待感がよく伝わる。
やや俳句慣れしていないようなリズム感であるが、古今の名句を詠まれ、自身の句を「舌頭千転」されればこれくらいはすぐによくなるであろう。
<作句のポイント>
ココロに浮かんだ言葉をそのまま俳句の言葉にせず、モノに託す。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・宝くじ売り場の猫や春招く(ペンネーム「あや」さん)
※招き猫がいるなあと思って詠んだ句。
→「招き猫」か動物の「猫」かぼかして詠んでいる詠み方がユニーク。

・大空へコート膨らむ宝くじ(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※コートが膨らむように宝くじの夢が空のように大きくひろがる事を句にしました。
→期待感を直接詠まずモノに上手く託して詠んである。「宝くじ・大空」の「小・大」の対比のよく効いたひろがりある宇宙流の一句である。

入選句

特選

・ジャケットの懐ぬくし宝くじ(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
→道場で力をつけている十代の方。ココロ「わくわく」をコトバ「わくわく」と直接詠んでいないところがよい。問題は「ジャケット・懐・ぬくし」のつきすぎ(イメージの重なり)。自己添削してみるとよい。

・寒空やくじ売り場には招き猫(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
→ココロ「あやかりたい」をコトバ「あやかりたい」とせず、モノ「寒空・招き猫」に上手く気分を託して詠んでいるところがよい。普段はあまり気に留めない「招き猫」であるが、こういうシーンでは気になるのが人情である。

・宝くじ売り場に浮かぶ冬の虹(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
→ココロ「期待と悲観」をコトバ「期待と悲観」とせず、モノ「冬の虹」に託して詠んでいるところが上手い。この方向で。

・宝籤買う列進む師走かな(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
→作者は俳句形式がよくわかっている方なのであるが、伝統的な詠み方にどっぷりつかっているようで、どうしても素材が平凡・月並みになってしまう。それを抜け出すことがここでの課題である。日常を詠む場合はそこに批評精神がなければならない。それがアドバイスである。

・宝くじ窓にいすわる招き猫(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「俳句は何かを言うものではない」「モノを二つ並べるとそれだけで気持ちが出せる」ことをよくわかっている方である。読者のイメージを掻き立て楽しませる詠み方である。

・宝くじポケット詰め込む冬銀河(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
→定型というのは日本語の生理に従った詩の「バネ」なので、意味が通ること・伝わること(散文の論理)を優先して非定型に崩すのはよくない。この方向でいい。しかしてこの句の場合、中七がやや窮屈なので、「宝くじ詰め込んでいる冬銀河」くらいにしたい。気分やムードが出せているのなら窮屈にせず定型のバネを活かしシンプルに詠むほうが自然である。「舌頭千転」、「宇宙流は自然流」である。

・宝くじに並ぶ背中やしぐれ虹(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→だんだん俳句の世界に入ってこられた印象である。俳句で大事なのは「説明して伝えること」ではなく、「句の世界をただ感じてもらうこと」である。その意味からすれば「に」が不要である。「宝くじ並ぶ背中やしぐれ虹」、この一文字の有無によって「背中を説明した句」から「宝くじ・並ぶ背中・しぐれ虹」の織りなす事情・気分を「感じとる句に激変する。

・年の瀬にくじ買う人や招き猫(ペンネーム「音爺」さん 70歳)
→どことなく平凡なところが惜しいが、定型の力を分かっている方である。詠み方などというより「映像と一体となる・批評精神をもつ」このあたりが課題であろう。

・ジャンボくじぬくもりひとつ師走かな(ペンネーム「成智さと子」さん 70歳)
→面白い詠み方である。「ぬくもりひとつ」が直接表現のようでそうではない。「ジャンボくじ」を楽しんでいる気分がよく出た句である。この方向でよい。

・ジャンボ籤十億円の寒さかな(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
→「ジャンボ籤・十億円」がつきすぎ(イメージの重なり・近い関係)で惜しいが、「十億円の寒さ」というユニークな把握が生きた句である。十億を夢見て買うが、当たると人生が激変するという話もよく聞く。そのようなこともイメージされ意味深である。

・宝くじ売り場に列す十二月(ペンネーム「ありんす」さん)
→平凡な句のようであるが、「十二月」という収め方がキリリとした若々しさでよく効いている。いわれてみれば「年の瀬・暮・冬」は「宝くじ」の句にはむしろありきたりな印象である。このような言葉の選択に進境が見られる。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・着ぶくれて夢に並ぶや十億円(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)
・悴む手擦りて向かう夢売場(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・暮れのくじ大団円を空にみる(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・胸ポッケに夢膨らませ冬ジャンボ(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
エコバッグの中並んで買った宝くじ(ペンネーム「普通にありちゃんが好っきー」さん 47歳)
夢買いに目の前に立つ白髪かな(ペンネーム「角森」さん 49歳)
・宝くじ冬日透かしてマイホーム(ペンネーム「雅「みやび」」さん 54歳)
・冬帝の行列の空夢のくじ(ペンネーム「蓮子」さん 56歳)
日本中ゴールドラッシュの師走かな (ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
眠らずに見る夢高し年の暮(ペンネーム「西尾婆翔」さん 59歳)
家建てる夢や霜夜のジャンボくじ(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・十枚の宝くじ手に年納め(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・ジャンボくじ計画立てて列並び(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
・寒風に宝くじ買う夢ふうせん(ペンネーム「グラングラン」さん 69歳)
・着ぶくれて夢買いに行く宝くじ(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・冬銀河年末ジャンボぱんどらへ(ペンネーム「うり、ぴーママ」さん 69歳)
カバンからサマージャンボや冬温し(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・冬の夜に流れる星や宝くじ(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
・列寒し僥倖あるや宝くじ(ペンネーム「明生(めいせい)」さん 71歳)
・宝くじ夢が膨らむ師走かな(ペンネーム「あしながおじさん」さん 72歳)
・ポケットに大きな夢や年の暮れ(ペンネーム「めがねバーバ」さん 72歳)
・年の瀬に長蛇の列や宝くじ(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・年の瀬の夢ささやかに宝くじ(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・寒風に夢買う列やジャンボくじ(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・ジャンボくじ一の小窓の群千鳥(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
マイホーム夢見て並ぶ年の暮れ(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
なけなしのボーナスつぎ込む宝くじ(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)

入選B ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・紙切れに並ぶ人込み未来ある(ペンネーム「舞ピョン」さん 17歳)
ハレの日に舞うやちりぢり紙吹雪(ペンネーム「じぇぴお」さん 24歳)
今度こそ諭吉舞う舞うおおみそか(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・年の瀬の夢思いきれずにバラ10枚(ペンネーム「ままここ」さん 40歳)
・やって来た年末ジャンボに魅せられり(ペンネーム「HK」さん 41歳)
運任せ天の神様宝クジ(ペンネーム「詩人たこらいす」さん 42歳)
前の列当たりそうだな宝クジ(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
ボーナスで夢を買うや宝くじ(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
籤運で全てを無駄に冬紅葉(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
気合い入れ三億当てる列ならぶ(ペンネーム「こたつでみかん」さん 45歳)
・懐の願いはひとつ我先に(ペンネーム「しゅうまっは」さん 45歳)
・元旦の厚き新聞もどかしく(ペンネーム「脳トレ4回息子の母」さん 47歳)
ぼんやりと願うは3等年の暮れ(ペンネーム「もじこ」さん 48歳)
・年の瀬の世相を映すくじ売場(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
・煤払い年末ジャンボで夢招く(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・宝くじ当たらないかと運試しー(^o^)(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
ぬっくぬく宝くじより猫を飼う(ペンネーム「魔女っ子ひーちゃん」さん 55歳)
買う人も皆忙しげに12月(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
夢かなえハワイ旅行冬の朝(ペンネーム「もり」さん 57歳)
・宝くじ夢への切符を買う十枚(ペンネーム「りんの」さん 57歳)
・年の暮れ当たっておくれ宝くじ(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
夢いだき心幸せ暖かい(ペンネーム「くまさん」さん 59歳)
・凩や金の財布に夢を飼う(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
・大晦日までのひと月大富豪(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
家くるま夢が広がる宝くじ(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・大晦日現に返る夢追い人(ペンネーム「バーガーとうちゃん」さん 62歳)
財布見てコインばかりで凍てつく手(ペンネーム「パタパタ親父」さん 63歳)
・大晦日夢見て並ぶ七億円(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
有り金を財布に詰むる冬の陣(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
・年末ジャンボどうせ夢でも10億円(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・寒風に列して夢をわしづかみ(ペンネーム「不思議の国の兎」さん 66歳)
・初夢やまた来年もくじ任せ(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
はや地球眼下年末ジャンボ買ふ(ペンネーム「しじみ」さん 68歳)
・宝くじ一獲千金初夢に(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・年の瀬の夢は宇宙へ宝くじ(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・宝くじ寒さも夢のコート着て(ペンネーム「さくら」さん 71歳)
楔して年末ジャンボ七年目(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・くじ買うてせめて夢でも年の暮れ(ペンネーム「呆け人」さん 77歳)
十億に化ける300円習う(ペンネーム「ワイ」さん)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年12月1日(金)

第76回 お題「パレード・カープ優勝パレード」(選と評 谷村秀格先生)
<谷村秀格(たにむらしゅうかく)プロフィール>

句の「スケール感」や句の背後の「詩情の広がりや深さ」を重要視する『宇宙流俳句』のパイオニア。『宇宙流俳句会』主宰。1976年広島県東広島市安芸津町木谷生まれ、同町在住。句歴26年

総評

今回のテーマは「パレード・カープ優勝パレード」。
タイムリーなお題で、「カープ優勝パレード」に駆け付け詠まれた方、テレビ放送をご覧になって詠まれた方がほとんどだったようです。
よって選句基準も従来の動画で詠む場合と同様とさせていただきました。

何より「カープ俳句」ということで、句数も多く、応援や感謝の気持ちのこもった句を沢山いただきました。
よって、従来より若干、特選句・入選句の掲載を増やしました。

この俳句道場で、動画から詠む場合のポイントは原則3つあります。
1. 動画から安易に飛躍せず、作者と動画が一体となって詠まれていること。
2. 動画の気分が出ていること。
3. 作者の解説や動画なしに句を詠んでも、詩として成立(自立)していること。

大賞句は、パレードの気分を華やかに伝える一句でした。
入賞句は、選手たちへの気分をうまく季語に託して詠んだものでした。
特選は原則、動画の気分を上手くとらえたもの・飛躍しているものに関しては芸術性の高いもの。
入選Aは原則、動画の気分を伝えるような句。
入選Bは原則、思いがやや先行しすぎた句、句の自立「上記3」が弱い句。
選外は、飛躍のしずぎ、気分に乏しいもの。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!
来期もともにカープ日本一を願って応援してゆきましょう。

大賞

「Vパレード六十万の紅葉ふる」(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)

カープの優勝パレードの「気分」がよく伝わる句である。
事実としては、平和大通りは、「紅葉」というよりは、銀杏などの黄葉のイメージである。
しかして、作者の心には、カープの赤やカープへの燃える思いが「紅」となって迫ったのである。
以前にも申し上げたが、俳句は「事実を詠むことではなく真実を詠むこと」、そして「正しさよりも気分が出ていること」が大事である。
その意味で「詩」として全く問題ないし、むしろこれこそが「詩」なのである。
「気分」という意味では「紅葉ふる」も見事である。
普通の感覚では「紅葉散る」である。
しかし、これだと「無残・さみしげ」なイメージでもある。
「紅葉ふる」のほうが、落慶法要などで撒かれるきらびやかな散華のようなイメージで、おめでたく明るい。
この動詞の選択も「気分・実感」からであろうが、見事に成功している。
「カープ優勝パレード」の賑やかで楽しくおめでたい「気分」がイメージされてくる一句です。
おめでとうございます。
<作句のポイント>
俳句は詩。事実ではなく真実を詠む。正しさではなく気分が出ることを大事にする。

入賞

「パレードの生まれるところ神渡し」(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)

「神渡し」は陰暦10月に吹く西風。神々を出雲に運ぶ風とされる。選手の神々しさなどの気分の感じ取れるなかなかの句である。
少し惜しいのは「ところ」抽象的に詠んでいるところ。
俳句はモノに託して詠む詩なので、「生まれる道や」などと具体的に詠んだほうがイメージが湧きやすい。
入賞おめでとうございます。
次回もせひご応募下さい。
<作句のポイント>
つりあった季語を詠む。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・パレードや空まで続く紅葉川(ペンネーム「あや」さん)
→平和大通りが赤に染まる気分を詠んだ伸びやかな句である。

・パレードや大動脈の騒ぐ秋(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※カープ優勝パレードに血が騒ぐ様子と街の大動脈の平和大通りが騒ぐ様子を詠みました。
→パレードでのドキドキ感というか高揚感を大胆に表現した一句。

入選句

特選

・冬ざれや遠ざかるカープパレード(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
→「冬ざれ」は寂しい冬の風物の様子。この季語の選択というよりも 安易な倒置が惜しい。リズムが悪い。私なら素直に「冬ざれやカープパレード遠ざかる」とする。何度も申し上げているが俳句は上手さではなく無意識からこみ上げてくるものなのである。

・パレードの過ぎゆく空や残り菊(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→パレードの賑わいではなく余韻の句か。詠み方は悪くないが、パレードのシーンからすると、賑わいを詠む方が気分が出そうである。

・優勝パレード笑顔はためく空の青(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
→「笑顔はためく」これがよい。下五は「小春空・秋の空」など季語にするとより時期のイメージが出てよい。

・パレードの音近づくや冬の部屋(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→楽しみにしていた選手たちが近づいてくるドキドキ感がよく伝わる一句。

・パレードの街ゆすられて秋うらら(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→「~して~」という説明的なところが惜しいが、パレードに沸く街の気分、それもただにぎわっているというのではなく、感謝の気分の感じられるやや落ち着いた賑わいのような空気感がよく出ていてよい実感の句である。

・冬日和パレードに沸く爆心地(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん)
→広島・カープと直接言わず、「冬・パレード・爆心地」の関連で、「カープ優勝パレード」だなと、なんとなくイメージされてくる奥ゆかしい詠み方が憎いし、「爆心地」が印象的。これによって、戦後から今日の優勝にいたる広島の復興の象徴としてのカープの歴史の積み重ねや、市民球団として今に至る市民・選手との「繋がり」などが自然とイメージされてきて、共感を誘う。

・小春空声ふりしきる優勝パレード(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→「小春空」は小春の時期の穏やかに晴れた空のこと。「声ふりしきる」が気分の出た表現で上手い。

・冬木立ちパレードの赤突き進む(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
→選手たちの勇ましさをよく伝える気分の句。「下五」がよく効いている。

・冬晴れのパレード平和大通り(ペンネーム「⑦パパ」さん 61歳)
→ざっくりとした把握の句であるが、説明したり演説したりごちゃごちゃこねくり回す詠み方よりよっぽどよい。大らかな気分の句でなかなかである。課題はもう少し実感ある世界を詠むようにすることだろうか。

・パレードに高層ビルも踊りだす。(ペンネーム「真夏のクリスマスローズ」さん 66歳)
→「高層ビルも踊り出す」は陳腐でもなんでもなく実感の世界でこれでよい。惜しいのは「~に~も~する」と説明的なところ。「パレードや高層ビルの踊り出す」などとすれば、ぐっと良くなる。「舌頭千転」である。

・パレードの通り過ぎたる秋の空(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
→「パレード」が終わったむなしさがよく出ている。この詠み方でよい。だたしお題と一体となるとう点では、その賑やかな実感を詠んでみたい。

・秋晴れやみんな笑顔のVパレード(ペンネーム「あしながおじさん」さん 71歳)
→「みんな笑顔」など少々直接的なところが惜しいが、パレードの気分がよく;伝わる素直な句である。

・パレードに山茶花一輪カープ女子(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
→選手と一緒にバスに乗っていたカープ女子たちを詠んだ句とのこと。しかし句からはそれが伝わらず惜しい。詩にならないと思えば、詠む切り口をかえることも大事である。

・パレードの歓喜の余韻冬ぬくし(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
→俳句形式には収まっているのであるが、「歓喜の余韻」がどうにもいけない。このような説明・概念は極力避け、せめて「歓喜の声や」くらいにしたい。

・パレード車まったり過ぐや冬麗(ペンネーム「テッちゃん」さん 79歳)
→おもしろい把握である。パレードの賑わいや嬉しさを直接詠んでいるわけではないのであるが、「パレード」の「気分」がよく伝わる句である。「まったり過ぐや」が真実を射止めている表現ということになろう。

・パレードのカープロードや神渡(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→「神渡し」は陰暦10月に吹く西風。神々を出雲に運ぶ風とされる。神様と選手を重ね見て気分の出た句である。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・照紅葉パレードの歌エンドレス(ペンネーム「ふくろう」さん 39歳)
・パレードや寒空に雄叫びこだませり(ペンネーム「HK」さん 41歳)
・パレードのバス包む声風冴ゆる(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
・パレードの熱気に怯む冬将軍(ペンネーム「Dr.でぶ」さん 45歳)
・大通り真っ赤に染めるカープファン(ペンネーム「桃色リボン」さん 45歳)
ピンボケのカープパレード小春かな(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
・赤色に染まる紅葉パレード(ペンネーム「やんちゃん」さん 56歳)
・パレードの選手の笑み秋の空(ペンネーム「りんの」さん 57歳)
黄葉を真っ赤に染めしパレードかな(ペンネーム「バーガーとうちゃん」さん 62歳)
・パレードに子供手袋鯉の旗(ペンネーム「是多」さん 63歳)
・百万の人も小旗も冬紅葉(ペンネーム「痺麻人」さん 64歳)
V連覇赤一色の優勝パレード(ペンネーム「DIYじじ」さん 65歳)
・パレードに30万の秋萌える(ペンネーム「真冬のクリスマスローズ」さん 66歳)
・パレードのビルの窓にもVマーク(ペンネーム「八重桜」さん 67歳)
・V8パレード最終応援初冬の下(ペンネーム「リュー」さん 68歳)
・パレードや拳の吼ゆる冬の陣(ペンネーム「高屋の園」さん 68歳)
・冬浅し若鯉追うてスマホ駆け(ペンネーム「きいたん」さん 68歳)
・小春日の天にとどけパレードの声(ペンネーム「若っ貴(わかったか)」さん 69歳)
・パレードに思いは一つ日本一(ペンネーム「キートン」さん 70歳)
・パレード紅葉深める平和(ペンネーム「西やん」さん 70歳)
・パレードや笑む目と合うて小春風(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
・パレードの初夢をみる三連覇(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
・寒風やカープパレード雲脱がす(ペンネーム「コスモス」さん 74歳)
・漢らの優勝パレ−ド紅葉濃し(ペンネーム「みなと」さん 74歳)
・パレードや広島中が紅葉し(ペンネーム「めぐちゃん」さん 77歳)
・パレード銀杏散る中紅燃ゆる(ペンネーム「浜辺の天使」さん 77歳)
・パレードや憧れ人を見詰める目(ペンネーム「東広島のなそじい」さん 74歳)
・赤き太陽落ちることないパレードの(ペンネーム「ワイ」さん)
・パレードや銀杏も真っ赤四十度(ペンネーム「華みづき」さん)

入選B ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・優勝の押しくら饅頭トマト色(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)
来季こそ掴みとりたい日本一(ペンネーム「GUPPY」さん 26歳)
・紅葉も羨むほどの赤き軌跡(ペンネーム「豆太」さん 30歳)
・沿道の鯉を引き連れ3連覇(ペンネーム「優子先生」さん 34歳)
・たくさんのスマホ画面に新井さん(ペンネーム「しまっかーとにー55」さん 40歳)
・秋風になびく手旗は祝優勝(ペンネーム「やまちゃん!」さん 42歳)
晴れやかにパレード祝うカープ達(ペンネーム「武相乱」さん 42歳)
・手を振れ笑顔あふれるありがとう(ペンネーム「エベレスト」さん 43歳)
・FFのパレード参加や気分よし(ペンネーム「叔父ちゃん」さん 44歳)
揺らいでも揺るがざる勝ち冬パレエルド(ペンネーム「ギザギザ仮面」さん 45歳)
・肩車の振れる小旗やうつ田姫(ペンネーム「菊池洋勝」さん 46歳)
・ヒーローの視線に打たれ落ち椿(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
・小春日や赤の弾ける大通り(ペンネーム「あやまこみち」さん 49歳)
・真っ赤みち平和の道はカープ℃℃℃(ペンネーム「たもつくん」さん 50歳)
・小春日やこぼれる笑顔バスの上(ペンネーム「雅(みやび)」さん 54歳)
・鯉の群れ喜び分かつ三十万(ペンネーム「山きよ」さん 54歳)
・パレードに還暦ティシャツ着てはしゃぐ(ペンネーム「やまかぜファイブ」さん 55歳)
・赤ヘルのパレード拡散山紅葉(ペンネーム「たけの子」さん 58歳)
馬場さんに応えるヒーロー照紅葉(ペンネーム「ベルまま」さん 59歳)
・ありがとう喝采のシャワー秋の道(ペンネーム「ゆきんこ」さん 59歳)
龍宮か鯉のパレード街をゆく(ペンネーム「桐山榮壽」さん 61歳)
・パレードに℃℃℃と歓喜わかちあう(ペンネーム「孫4人じぃじ」さん 61歳)
・ヒロシマのパレードがぞううらやまし(ペンネーム「カミデキザン」さん 63歳)
・冬日和汗だくで運転する監督車(ペンネーム「ひなじいさん」さん 63歳)
・小春日や目指せパレード日本一(ペンネーム「猫またぎ65」さん 65歳)
・小春日や赤き戦士ら破顔せる(ペンネーム「不思議の国の兎」さん 66歳)
・三十万人歓声渦巻く赤車列(ペンネーム「ヒロリン」さん 69歳)
・小春日和手を振り枯れバスも真っ赤(ペンネーム「グラン グラン」さん 69歳)
・冬並木それ行けカープ山車が行く(ペンネーム「おちえもん」さん 70歳)
・冬晴れや赤の車列と赤の波(ペンネーム「音爺」さん 70歳)
カンナより燃ゆるパレード火は消せぬ(ペンネーム「泰平楽」さん 70歳)
こいねがう鯉の花道三たび見ん(ペンネーム「明生(めいせい)」さん 71歳)
覇者を待つ平和の道は冬日和(ペンネーム「「コウちゃん」のじいじ」さん 72歳)
・Vカープ目線飛び交う冬の川(ペンネーム「だいさん」さん 74歳)
・秋高しボリュウムいっぱいに鯉の列(ペンネーム「呆け人」さん 77歳)

入賞入選の皆様おめでとうございます。

放送日:2017年11月24日(金)

第75回 お題「ボジョレ・ヌーボー解禁に集まった人々(動画を見て)」(選と評 谷村秀格先生)
総評

今回のテーマは「ボジョレ・ヌーボー解禁に集まった人々 (動画を見て)」。
今回の動画の特長は何と言っても「はるばる海外から運ばれてきたボジョレ・ヌーボー、その待ち遠しさ、期待感、喜び」でしょう。
その気分が如何に伝わる句にするか、それがポイントでした。

この俳句道場で、動画から詠む場合のポイントは原則3つあります。
1. 動画から安易に飛躍せず、作者と動画が一体となって詠まれていること。
2. 動画の気分が出ていること。
3. 作者の解説や動画なしに句を詠んでも、詩として成立(自立)していること。

多くは動画のシーンを詠んだ句でしたが、その中の多くは動画の「気分」というよりも「事実」をそれらしく述べている句が多く、ニュースを聞いているようでやや物足りませんでした。

大賞句は、最近参加された方のようです。
句は、ワインが「空輸されるシーン」を詩的に詠むことによって、映像から感じ取れる「期待感・ワクワク感・喜び」を、スケール感とともにのびやかに伝えており見事でした。
特選は原則、動画の気分を上手くとらえたもの・飛躍しつつも句として芸術性の高いもの。
入選Aは原則、動画の気分を伝えるような句。
入選Bは原則、思いがやや先行しすぎた句、句の自立「上記3」が弱い句。
選外は、飛躍のしずぎ、気分に乏しいもの、などとしました。

動画を題とする場合は、原則そこに思いをこらすことが大事ですが、キーワード(今回の場合「ボジョレヌーボー・ワイン」など)をただ入れただけの句、事実をそれらしく詠んだだけの「形だけの句」にならないようにしたいものです。
「俳句は詩」ですから、ニュース(報告・説明)にならないよう、ご自身の何らかの「感動・衝動」をモノに託して(寄物陳思)詠んでほしいと思います。

ご投句いただいた皆さま、放送をご覧いただいた皆さま、どうもありがとうございます。
目先の結果に一喜一憂することなく、毎週の感性を磨く機会を楽しんでいただければ幸いです。
お一人様、5句程度まで。
どなた様も「テレビ派ホームページ」トップ画面のバナーからお気軽にご応募ください!

大賞

「ボジョレー・ヌーボー一万キロの空を飛ぶ」(ペンネーム「⑦パパ」さん)

「一万キロの空をとぶ」のは、第一義的には、フランス発で空輸される「ボジョレヌーボー」である。
「ボジョレー・ヌーボー」が、「一万キロ」彼方のフランスから飛行機によってわずか一日で日本に運ばれてくる「感動」。
その「フレッシュな味わい」が、世界でもっともはや味わえる「喜び」。
それらを「一万キロの空を飛ぶ」シーンに託し、見事に伝えている句である。
しかし、この句の解釈はそれだけではない。
動画とともに句を眺めてみるとよくわかるが、「ボジョレヌーボー」を味わう人々の「思い」が「一万キロの空」を越えフランスの地を思っている句、ともとれるし、さらに「ボジョレヌーボー」を味わう喜びと、「一万キロの空をとぶ」心地を重ね見た句、とも解釈できる。
むしろ、これらの解釈の側面に動画の気分が反映されているようである。
いずれにしても、日仏の「一万キロの空」に託して、「ボジョレー・ヌーボーそのもの」や「それを味わう人々の思い」などが行き来しているのびやかさが感じられるところが見事な、共感を呼ぶ一句である。
大賞おめでとうございます。
次回もぜひご応募ください。
<作句のポイント>
空間を大きくつかむ。

広島俳句名人詠(無鑑査) ※入賞10回を経た俳句名人の句を本人のコメント(※印)とともにご紹介(→は選者評)。

・淑女らの揺らめく冬のグラスかな(ペンネーム「あや」さん)
※映像より、豪奢さとワインの揺らめき、わずかに退廃的な空気を。
→ムーディな気分がよく出た一句。グラスの輝きがたしかに印象的であった。

・赤ワイン夜空を包む宇津田姫(ペンネーム「リリーアルビデオ」さん 37歳)
※ボジョレーヌーボーのまろやかさとロマンチックな夜空が包み込んでいく様子を句に込めました。
→映像の気分というには飛躍であろうが、ワインに冬の女神宇津田姫とはユニークな取りあわせ。

入選句

特選

・ボジョレ・ヌーボー一斉に傾くグラス(ペンネーム「かつたろー。」さん 41歳)
解禁パーティというと全体的には「楽しさ・賑わいという単なるプラスイメージ」で捉えてしまいがちであるが、「どんな味わいかな」というような、プラスマイナス入り混じったドキドキ感を静けさとともに上手くつかんだ。

・赤ワインクラッカー飛ぶ冬銀河(ペンネーム「スネイク」さん 14歳)
→パ-ティの煌き・おいしそうな気分、すなわち映像の気分がよく出ている。この方向で。

・ボジョレーのグラス傾く夜の街(ペンネーム「じゅんこバズ」さん 37歳)
→「傾く夜」がミソ。しかしこう詠むとさみしい気分で少し合わない。もう少し映像の気分が感じられるよう攻めてみたい。

・口紅とボジョレーヌーボーひしめく夜(ペンネーム「ブルージャスニン」さん 47歳)
→赤つながりが妖艶さを醸し出している。とはいっても少し平凡なので、事実にとらわれず感動を大胆に詠むようにしたい。

・冬ワイン笑顔とともに解き放ち(ペンネーム「日向ぼっこ」さん 47歳)
→「笑顔」がこの句のミソ。素直に「ボジョレーヌーボー笑顔とともに解き放つ」でいい。このほうが賑やかさも出て、気分がでそうである。

・解禁のワインはじけるペアグラス(ペンネーム「角森」さん 49歳)
→「はじける」という実感・把握が上手い。素直に「ボジョレーヌーボーはじけるペアグラス」でよさそう。

・星空にボジョレヌーボー香りたつ(ペンネーム「カープ女子黒ちゃん」さん 50歳)
→上手い人なのだが今回はややイメージがつきすぎ。やはり事実ではなく、おそれずに感動を詠むようにしたい。

・真夜中のルージュ艶めくボジョレヌヴォ(ペンネーム「モリババと40人の盗賊」さん 52歳)
→女性が動画によく出ていたのでその気分の句か。事実を詠んでいるがどうも感動を詠んでいない。そのあたりが平凡にしているようで惜しい。そこを攻めてほしい。

・ボジョレーの宴張りつく冬の窓(ペンネーム「クローバー」さん 53歳)
→「窓」への着眼の句である。視点が見事だが、映像の気分というには少し伝わりずらい。しかして自分の世界がある方なのでこお方向でよい。

・「乾杯」のボジョレいざなう夜長かな(ペンネーム「すずらん村。」さん 55歳)
→盛り込み過ぎのようである。俳句は説明文ではなく詩なので、「きちんと伝えることではなく、気分を出すこと」が大事である。「ボジョレーヌーボー溢れ出す夜長かな」くらいか。

・冬のワイン日付変更線を超え(ペンネーム「ハラペコ」さん 57歳)
→どうも映像の気分が出ていないのは惜しいが、句だけを味わうとなかなか意味深なものになっている。

・ボジョレヌーボー新しき血の燃え上がる(ペンネーム「是多」さん 63歳)
→少々直接的なのと、動画の気分とは少し違うようなところが惜しいが、感動のない事実を詠むよりは、何らかの衝動を詠む方がよい。この方向で。

・解禁のワインを送り霜の花(ペンネーム「さくら」さん 68歳)
→映像の気分の感じられる句になっていないところが惜しいが、これも一句である。

・真夜に降る星の欠片やボジョレーヌーボー(ペンネーム「高屋の園」さん 68歳)
→「夜・星」「星・降る」「星・欠片」などイメージの重なりが惜しいが、動画のキラキラした気分がよく出ている。言葉やイメージの重なりだけ気をつけられてこの方向で。

・夕星待つビルの谷間やボジョレーヌーボー(ペンネーム「うり・ぴーママ」さん 69歳)
→映像の気分というには少し飛躍しているが、ボジョレーへの期待感をモノに託してよく伝えている。もう少し映像と一体となってこの方向で。

・ボジョレヌーボー女優になりて持つグラス(ペンネーム「パラパラ」さん 71歳)
→中七が直接的なところが惜しいが、パーティでの気分がよく出ている。

・十一月解禁ワイン夜を飛ぶ(ペンネーム「水彩少年」さん 71歳)
→なかなかの句であるが、動画の気分となると少し惜しい。

・豪快に秋を飲み干す赤ワイン(ペンネーム「匿名じいさん」さん 72歳)
→豪快にが直接的であるが意外に気分が出ている。ボジョレヌーボーはフレッシュな軽いワインだからであろうか。このように大胆に詠んでみたい。

・ボジョレーヌーボー水平線を垣間見る(ペンネーム「柱時計」さん 74歳)
→映像の気分というには少し惜しいが、句だけを見るとなかなかムードが出ている。上手い。

・女子会やボジョレー・ヌーボー解禁日(ペンネーム「ありんす」さん 82歳)
→解禁日と事実を伝えるより、下五「溢れ出す」などと女子会の気分を出してみたい。

入選A ※下線部が感情・心情・説明・演説・直接、などの惜しい表現。

・春待つやグラスとワイン並びたる(ペンネーム「コンスタンチン」さん 11歳)
・ボジョレーや葡萄ジュースの受験生(ペンネーム「ルビー」さん 18歳)
酔いしれる秋の夜長に赤い美酒(ペンネーム「豆太」さん 30歳)